説明

粒子製剤

【課題】平均粒子径が小さい場合でも、薬物粒子の溶出特性が有効に制御された粒子製剤を提供する。
【解決手段】薬物粒子と、上記薬物粒子を被覆する被覆層とを有する粒子製剤であって、上記被覆層は、水不溶性高分子2.4重量部に対して、無機粒子を0.5〜2.4重量部含有することを特徴とする粒子製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬固形製剤においては、薬物粒子の溶出特性等を制御するために、薬物原末を結合剤、賦形剤等を加えて造粒したり、薬物原末を水不溶性の被覆物質で被覆されたりしている。
例えば、特許文献1には、粒子コーティング・造粒装置を用いて、水不溶性高分子でコーティングされた薬物コーティング粒子とその製造方法が開示されており、薬物重量に対して0.1〜2%の水不溶性高分子を使用し、製剤粒径が17μmであることが開示されている。
また、例えば、特許文献2には、薬物をエチルセルロースやHPMCで被覆した被覆層に、1〜5%の酸化チタンを含有させ、製剤粒子200〜300μmとすることが開示されている。
また、例えば、特許文献3には、HPC、エチルセルロースでの薬物を被覆し、タルク、二酸化ケイ素等を用いること、製剤粒径が161μmであることが開示されている。
【0003】
しかしながら、一般的に、薬物は、粒子径が小さくなるにつれて表面積が大きくなるため、薬物含有粒子を粒子化しつつ、薬物の溶出を制御(特に溶出抑制、苦みマスキング)は非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−013480号公報
【特許文献2】特許第3317444号公報
【特許文献3】特開2008−81448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、平均粒子径が小さい場合でも、薬物粒子の溶出特性が有効に制御された粒子製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、薬物粒子を被覆する被覆層を、所定の重量比の水不溶性高分子と無機粒子とを含むものとすることで、薬物粒子の溶出制御を好適にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、薬物粒子と、上記薬物粒子を被覆する被覆層とを有する粒子製剤であって、上記被覆層は、水不溶性高分子2.4重量部に対して、無機粒子を0.5〜2.4重量部含有することを特徴とする粒子製剤である。
本発明の粒子製剤において、上記無機粒子の平均粒子径が1〜1000nmであることが好ましい。
また、上記無機粒子は、シリカ及び/又は二酸化チタンであることが好ましい。
また、上記水不溶性高分子は、腸溶性高分子を含むことが好ましい。
また、上記無機粒子は、疎水性化処理されたものであることが好ましい。
また、本発明の粒子製剤は、薬物粒子2.4重量部に対して、無機粒子を0.5〜2.4重量部含有することが好ましい。
また、本発明の粒子製剤は、噴霧乾燥法により得られることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明は、薬物粒子と該薬物粒子を被覆する被覆層とを有する粒子製剤である。
このような構成の本発明の粒子製剤は、平均粒子径が小さい場合でも、薬物粒子の溶出を有効に制御できるという特色を有する。
上記薬物粒子における薬物としては、生理学的又は薬理学的に活性な活性成分であれば特に制限されず、例えば、生理活性を有するポリペプチド及び核酸、解熱・鎮痛・抗炎症薬、痛風・高尿酸血症治療薬、催眠・鎮静薬、睡眠導入剤、抗不安薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗パーキンソン剤、自律神経系作用薬、脳循環代謝改善薬、アレルギー治療薬、抗アレルギー薬、抗狭心症薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、血管収縮薬、血管拡張薬、高脂血症用薬、昇圧薬、気管支拡張薬・喘息治療薬、鎮咳薬、去痰薬、消化性潰瘍治療薬、健胃・消化薬、下剤、整腸薬、制酸薬、糖尿病薬、ホルモン製剤、ビタミン製剤、抗生物質、骨粗しょう症薬、抗菌薬、化学療法剤、抗ウィルス薬、抗腫瘍剤、筋弛緩剤、抗凝血剤、止血剤、抗結核剤、麻薬拮抗剤、骨吸収抑制剤、血管新生抑制剤、中枢神経系用薬、局所麻酔剤、鎮暈剤、循環器官用薬、呼吸促進剤、止しゃ剤、利胆剤、消化器官用薬、泌尿器官用剤、肝臓疾患用剤等が挙げられる。上記薬物は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0009】
上記薬物粒子は、公知の粉砕技術(ハンマーミル、サンプルミル、ピンミル、ジェットミル、ビーズミル等)によって製造することができる。
また、上記薬物粒子として、例えば、流動層造粒装置、撹拌型流動層装置、転動流動層装置、遠心転動装置、噴霧乾燥装置を用いて、生理的又は薬理的に許容可能な製剤助剤と混和して形成した薬物含有粒子や、適当な材料の核粒子の表面に薬物を被覆して形成した薬物含有粒子を用いてもよい。
【0010】
本発明の粒子製剤において、上記薬物粒子は、平均粒径が1〜200μmであることが好ましい。1μm未満であると、本発明の粒子製剤の表面積が大きくなり、薬物粒子の溶出制御が困難になることがある。一方、200μmを超えると、本発明の粒子製剤を服用したときに口腔内でのザラツキ感や異物感を感じる可能性がある。上記薬物粒子の平均粒径のより好ましい範囲は1〜15μmである。
なお、上記薬物粒子の平均粒径は、後述する粒子製剤の平均粒径と同じ意味である。
【0011】
本発明の粒子製剤は、上記薬物粒子が被覆層で被覆された構成を有する。
上記被覆層は、水不溶性高分子と無機粒子とを含有する。
なお、以下の説明において、上記薬物粒子とともに本発明の粒子製剤に用いられる成分を、まとめて製剤化成分ともいう。
上記水不溶性高分子としては、生理的又は薬理的に許容可能な種々の材料が使用できる。このような水不溶性高分子としては、具体的には、徐放性高分子、胃溶性高分子及び腸溶性高分子等が挙げられる。
【0012】
上記徐放性高分子としては、例えば、エチルセルロース等の水不溶性セルロース誘導体、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体(例えば、オイドラギットRS、オイドラギットRL、いずれもEvonik Industries社製)、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル共重合体(例えば、オイドラギットNE、Evonik Industries社製)等の水不溶性アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
また、上記胃溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等のポリビニル誘導体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体(例えば、オイドラギットE、Evonik Industries社製)等の(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
また、上記腸溶性高分子としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体、メタクリル酸コポリマーL(オイドラギットL、Evonik Industries社製)、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットLD、Evonik Industries社製)、メタクリル酸コポリマーS(オイドラギットS、Evonik Industries社製)等の(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
これらの水不溶性高分子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましくは、水不溶性セルロース誘導体、水不溶性アクリル酸系共重合体、胃溶性高分子、腸溶性高分子等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
なお、上記(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0013】
本発明の粒子製剤では、上記水不溶性高分子は、腸溶性高分子を含むことがより好ましい。上記被覆層が腸溶性高分子と後述する無機粒子とを含むことで、薬物粒子をより効果的に腸特異的に溶出させることが可能となる。
なお、上記腸溶性高分子とは、pH5未満の水溶液では溶解せず、pH5〜7の範囲内のあるpH値以上の水溶液では溶解するポリマーを意味する。
上記腸溶性高分子としては、上述したものが挙げられるが、なかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマーSが好適に用いられる。これらの腸溶性高分子としては、例えば、HP55(商品名、信越化学工業社製)、オイドラギットS100(Evonik Industries社製)として商業的に入手可能である。
【0014】
上記被覆層を構成する無機粒子としては、生理的又は薬理的に許容可能な種々の材料が使用できる。
このような無機粒子としては、例えば、シリカ(含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸)、二酸化チタン、タルク、カオリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、軽質酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの無機粒子は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの無機粒子は、公知の破砕・分散技術(ハンマーミル、サンプルミル、ピンミル、ジェットミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波破砕・分散など)によって製造してもよい。
【0015】
上記無機粒子としては、なかでも、後述する範囲の平均粒子径を有する市販品の入手が容易であることから、シリカ及び/又は二酸化チタンであることが好ましい。特に、疎水処理された軽質無水ケイ酸(例えばAerosil−R972、日本アエロジル社製)、疎水処理された酸化チタン(例えば、Aeroxide−T805、日本アエロジル社製)が好ましい。ここにいう疎水処理されたとは、化学的に表面をアルキル化されることを意味する。
上記疎水性化処理の具体例としては、疎水処理された軽質無水ケイ酸の場合、軽質無水ケイ酸の表面をメチル基で覆って疎水化したものが挙げられ、また、疎水処理された酸化チタンの場合、酸化チタンをオクチルシランで化学的に処理し疎水化したものが挙げられる。
【0016】
上記無機粒子の平均粒子径は、1〜1000nmであることが好ましく、より好ましい下限は100nm、より好ましい上限は500nmである。1nm未満であると、作業中の取扱性が悪くなり、また、医薬品添加物として購入できるものがない等の可能性があり、一方、1000nmを超えると、本発明の粒子製剤に用いると、被覆層に均一かつ密に充填することが難しくなり、薬物粒子の溶出を制御できなくなる可能性がある。
ここにいう無機粒子の平均粒径とは、後述する粒子製剤の平均粒径と同じ意味である。
【0017】
本発明の粒子製剤において、上述した水不溶性高分子に対する無機粒子の含有量は、薬物粒子の種類、所望する薬物粒子の溶出制御の程度等に応じて、水不溶性高分子2.4重量部に対して、0.5〜2.4重量部の範囲で調整する。好ましくは、1.0〜2.0重量部である。上記水不溶性高分子に対する無機粒子の含有量が0.5重量部未満であると、薬物粒子の溶出制御効果が得られなくなり、一方、2.4重量部を超えると、被覆層の脆化の原因となる。
【0018】
また、上述した薬物粒子に対する上記無機粒子の含有量としては、薬物粒子の種類、所望する溶出制御の程度などに応じて適宜調整されるが、好ましくは、薬物粒子2.4重量部に対して、0.5〜2.4重量部であり、より好ましくは1.0〜2.0重量部である。薬物粒子に対する無機粒子の含有量が0.5重量部未満であると、充分な薬物粒子の溶出制御効果が得られなくなることがあり、一方、2.4重量部を超えると、被覆層の脆化の原因となることがある。
【0019】
なお、上記被覆層は、必要により、医薬製剤に使用される公知の成分、例えば、水溶性高分子、結合剤、崩壊剤、ワックス類、可塑剤、糖類、酸味料、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤等を添加剤として含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
上記被覆層は、例えば、コーティング液として、上述した水不溶性高分子、無機粒子及びその他の添加剤(製剤化成分)を含む溶液(有機溶媒溶液等)又は分散液(水分散液等)を使用して形成することができる。
上記コーティング液における溶媒としては、例えば、水、有機溶媒が挙げられ、上記有機溶媒としては、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、炭化水素類(n−ヘキサン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化アルカン類(ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル等)、エーテル類、ニトリル類(アセトニトリル等)等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、2種以上混合して用いてもよく、水混和性の有機溶媒は、水と混合溶媒として用いてもよい。
これら溶媒のうち、アルコール類、ケトン類、水が好ましい。
【0021】
上記コーティング液中の水不溶性高分子の濃度は、コーティング液の粘度、噴霧性等に応じて選択でき、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜40重量%、より好ましくは0.5〜25重量%程度、更に好ましくは1〜10重量%程度である。上記コーティング液には、上述した種々の添加剤を添加してもよい。
【0022】
上記被覆層は、例えば、撹拌型流動層装置、転動流動層装置、ワースター式流動層装置、噴霧乾燥装置を用いた、公知のコーティング技術により薬物粒子の表面に形成させることができる。なかでも、本発明の粒子製剤の製造には、噴霧乾燥装置を用いた噴霧乾燥法が適している。
上記噴霧乾燥法では、まず、薬物粒子と被覆層を構成する各材料を混和若しくは懸濁させたコーティング液を調製し、ノズルを用いてスプレードライヤーの乾燥室内へ噴霧する。噴霧により形成された微粒子化液滴内の水又は有機溶媒が、極めて短時間に揮発することにより薬物粒子が被覆層で被覆された粒子製剤が製造される。
上記ノズルとしては、二流体ノズル型、多流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型等が挙げられる。
上記ノズルの型、噴霧条件は、上記のように調製されたコーティング液が噴霧される条件であれば特に制限されない。かかる条件は、粒子製剤の組成や用いるスプレードライヤーに応じて適宜選択することができる。例えば、二流体ノズル型スプレードライヤーでは、吸気温度は、使用する溶媒により適宜調整されるが、通常30〜200℃であり、好ましくは約40〜150℃である。また、噴霧液量は、装置のスケールにより適宜調整されるが、例えば、実験室用スケール(チャンバー径15.5cm)レベルでは、通常約1〜30mL/minである。噴霧ガス流量は、製造しようとする粒子製剤の粒子径やノズル径にもよるが、通常約50〜900L/hrで調整される。
上記粒子製剤は、必要であれば減圧下で薬物粒子中の水分又は溶媒の除去を完全に行うこともできる。
【0023】
本発明の粒子製剤の平均粒径は、口腔内でのザラツキ感が軽減される範囲であれば特に制限されないが、好ましくは1〜200μm、より好ましくは1〜100μm、更に好ましくは1〜50μm、最も好ましくは1〜15μmである。上記平均粒径が1μm未満であると、本発明の粒子製剤の表面積が大きくなり、薬物粒子の溶出制御が困難になることがある。一方、上記平均粒径が200μmを超えると、口腔内でのザラツキ感や異物感を感じる可能性がある。
なお、ここにいう「平均粒径」とは、全粒子体積の50%に相当する粒子径を指し、「自動粒子画像分析装置」(粒子画像分析装置は、撮影した粒子の画像から、粒子径を測定する装置)や「レーザー回析式粒度分布測定装置」(又は「レーザー回折散乱式粒度分布測定装置」)を用いて測定することができる。
【0024】
本発明の粒子製剤は、そのまま細粒剤として生体に投与することができるが、種々の製剤に成型して投与することもでき、そのような製剤を製造する際の原料物質としても使用され得る。
上記製剤としては、例えば、注射剤、経口投与製剤(例、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、口腔内崩壊錠、ドライシロップ剤、懸濁剤・乳剤、フィルム剤)、経鼻投与製剤、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤)等が挙げられる。
これらの製剤中、含有させる薬物粒子の量は、薬物の種類、投与剤型、対象とする疾患等により変化し得るが、通常は、1製剤当たり0.001mg〜5gであることが好ましく、より好ましく約0.01mg〜2gである。
【0025】
上記製剤は、一般に用いられる公知の方法により製造することができる。
具体的には、例えば、本発明の粒子製剤は、分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO60(日光ケミカルズ社製)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等)、保存剤(例、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジールアルコール、クロロブタノール等)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖等)等と共に、水性懸濁剤に、或いは、オリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、綿実油、コーン油等の植物油やプロピレングリコール等に分散させて油性懸濁剤に成形し、注射剤とすることができる。
【0026】
また、上記経口製剤は、公知の方法に従い、本発明の粒子製剤と慣用の製剤助剤とで構成できる。
上記製剤助剤としては、経口製剤に慣用の成分、例えば、水溶性高分子又は結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン等)、賦形剤(結晶セルロース、コーンスターチ等のデンプン類、ショ糖、乳糖、粉糖、グラニュー糖、ブドウ糖、マンニトール等の糖類、軽質無水ケイ酸、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ等のデンプン類、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等)、脂質(例えば、炭化水素、ワックス類、高級脂肪酸とその塩、高級アルコール、脂肪酸エステル、硬化ひまし油等の硬化油等)、可塑剤(トリアセチン、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル等)、矯味剤(例えば、甘味剤(ショ糖、乳糖、ブドウ糖、マルトース等の糖、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコール、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア等の人工甘味料);クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの酸味料;レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等の香料等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク等)、流動化剤(例えば、軽質無水ケイ酸等)、着色剤(例えば、食用色素、カラメル、ベンガラ、酸化チタン等)、界面活性剤(例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及び、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等の非イオン系界面活性剤等)、湿潤剤(ポリエチレングリコール(マクロゴール)等)、充填剤、増量剤、吸着剤、防腐剤などの保存剤又は安定化剤、帯電防止剤、崩壊延長剤等を含んでいてもよい。
更に、上記経口製剤は、必要により、味のマスキング、溶性、腸溶性或いは持続性の目的のため公知の方法でコーティングしてもよい。
【0027】
また、例えば、経鼻投与製剤とするには、公知の方法に従い、本発明の粒子製剤を固状、半固状又は液状の経鼻投与剤とすることができる。例えば、上記固状のものとしては、本発明の粒子製剤をそのまま、或いは、賦形剤(例、グルコース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース等)、増粘剤(例、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体等)等を添加、混合して粉状の組成物とする。
【0028】
液状の製剤としては、注射剤の場合とほとんど同様で、油性或いは水性懸濁剤とする。半固状の場合は、軟膏状のものがよい。また、これらはいずれも、pH調節剤(例、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム等)、防腐剤(例、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム等)等を加えてもよい。
【0029】
また、例えば、坐剤とするには、公知の方法に従い、本発明の粒子製剤に油性基剤又は水性基剤を加えて、油性又は水性の固状、半固状或いは液状の座剤とすることができる。
上記油性基剤としては、粒子製剤を溶解しないものであればよく、例えば、高級脂肪酸のグリセリド(例、カカオ脂、ウイテプゾル類等)、中級脂肪酸(例、ミグリオール類等)、植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が挙げられる。また、上記水性基剤としては、例えば、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等が挙げられる。また、上記坐剤とする際には、水性ゲル基剤として、例えば、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等を用いてもよい。
【0030】
また、上記経口投与製剤は、その剤型に応じて慣用の方法、例えば、本発明の粒子製剤を必要により造粒又は練合した後、製剤化することにより得ることができる。
本発明の粒子製剤の造粒には、慣用の造粒法、例えば、転動型造粒法、流動層型造粒法等が採用でき、造粒や練合は、通常、賦形剤や結合剤等の担体を用いて行われる。例えば、錠剤の場合、本発明の粒子製剤と、賦形剤や結合剤等の担体とを混合又は練合し、必要により造粒し、滑沢剤等の添加剤を加えて打錠することにより得ることができる。また、例えば、カプセル剤は、本発明の粒子製剤又はその造粒物を、カプセルに封入することにより得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の粒子製剤は、薬物粒子と、それを被覆する被覆層とを有する構成であり、上記被覆層が2.4重量部の水不溶性高分子に対して、0.5〜2.4重量部の無機粒子を含有することで、薬物粒子の径が小さい場合であっても該薬物粒子を上記被覆層により有効にコーティングでき、薬物粒子の溶出を有効に抑制できる。
また、上記水不溶性高分子が腸溶性高分子を含む好ましい実施態様では、上記被覆層が無機粒子を含むことで、薬物粒子を、より効果的に腸特異的に溶出させることが可能となる。
また、上記被覆層が、疎水性化された無機粒子を含む好ましい実施態様では、被覆層が疎水性化された無機粒子を含むことで、薬物粒子を、より効果的に腸特異的に溶出させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0033】
以下の実施例ならびに比較例では、次の薬物と製剤化成分を用いた。
(薬物)
グアヤコールスルホン酸カリウム
(製剤化成分)
エチルセルロース(Dow Chemical社製、Ethocel 10)
HPMCP;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(信越化学工業社製、HP55)
オイドラギットS100(Evonik Industries社製、Eudragit−S100)
軽質無水ケイ酸(日本アエロジル社製、Aerosil−A200、Aerosil−R972)
酸化チタン(日本アエロジル社製、Aeroxide−P25、Aeroxide−T805)
モノイソステアリン酸グリセリル(日光ケミカルズ社製、NIKKOL−MGIS)
【0034】
また、以下の実施例及び比較例では、次の方法により、粒子製剤を製造、評価した。
(薬物粒子の製造)
グアヤコールスルホン酸カリウム100gを水900gに加えて溶解させて溶液を得た。この溶液を、スプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、BUCHI Labortechnik AG社製)にて、噴霧液量2mL/min、吸気温度120℃、噴霧空気流量190L/hrにて噴霧乾燥して、薬物粒子として、球状のグアヤコールスルホン酸カリウム粒子を得た。
(被覆)
全ての製剤化成分と薬物粒子とを、溶媒に加えて溶解・懸濁させた。この懸濁溶液をスプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、BUCHI Labortechnik AG社製)にて噴霧乾燥して、粒子製剤を得た。各実施例、比較例で用いた製剤化成分の組成、噴霧液量、吸気温度、噴霧空気流量は、表1〜3に示した。
【0035】
(平均粒径の測定)
<粒子製剤の平均粒径>
自動粒子画像分析装置(Malvern Instruments社製、Morphologi(登録商標)−G3)を用いて、粒子数2万個以上から平均粒径を測定した。
<無機粒子の平均粒径>
無機粒子の平均粒径は、粒子製剤の製造に先だって、事前に測定した。
すなわち、無機粒子のエタノール懸濁液を調製し、超音波処理後、粒径測定システムELSZ−1(大塚電子社製、動的及び電気泳動光散乱法)で平均粒径を測定した。実施例で用いた無機粒子の平均粒径を以下に示した。
疎水性化処理されていない無機粒子としてのAerosil−A200(平均粒径400.5nm)、疎水性化処理された無機粒子としてのAerosil−R972(平均粒径218.0nm)、疎水性化処理されていない無機粒子としてのAeroxide−P25(平均粒径128.2nm)、疎水性化処理された無機粒子としてのAeroxide−T805(平均粒径111.4nm)。
【0036】
(溶出試験)
日本薬局方記載のフロースルーセル法に準じて、溶出試験第1液(pH1.2)、溶出試験第2液(pH6.8)の両方で試験を実施し、薬物の溶出率を測定した。
ただし、セルには、Swinnexフィルターホルダー25mm(日本ミリポア社製)を用いた。粒子製剤が流出しないように、フィルターホルダーにサポートスクリーン(25mmステンレス、日本ミリポア社製)、デュラポアメンブレンフィルター(PVDF、Hydrophilic、0.45μm、25mm、日本ミリポア社製)、シリコンガスケット25mm(スウィネクス(Swinnex)フィルターホルダー用、日本ミリポア社製)を順に備え付けた。送液ポンプにMasterflex L/S(型式7524−50、Cole Parmer Instrument COMPANY社製)を用い、2.5mL/minで試験液を送液した。それ以外は、日本薬局方のフロースルーセル法に従った。薬物溶出量は、HPLCにて定量した。
【0037】
(実施例1〜5)
水不溶性高分子として、除放性高分子としてのエチルセルロースを用い、無機粒子の種類を変えて上述した方法で粒子製剤を調製した。組成及び各種試験結果を表1に示した。
【0038】
(比較例1)
無機粒子を加えていない以外は、実施例1と同様にして粒子製剤を調製した。組成及び各種試験結果を表1に示した。
【0039】
【表1】

噴霧液量(5mL/min)、吸気温度(120℃)、噴霧空気流量(470L/hr)
【0040】
表1に示したように、水不溶性高分子としての除放性高分子と、無機粒子とを、所定の重量比で含有する実施例に係る粒子製剤は、薬物溶出を効果的に制御(抑制)することができ、徐放性製剤としての特徴を示した。
一方、無機粒子を含まない比較例1に係る粒子製剤は、薬物の溶出を効果的に制御(抑制)できなかった。
【0041】
(実施例6、7)
水不溶性高分子として、腸溶性高分子としてのHPMCP、無機粒子(Aerosil−R972)を用いて粒子製剤を調製した。組成及び実施例1同様にして測定した各種試験結果を表2に示した。
【0042】
(比較例2)
無機粒子を加えていない以外は、実施例6と同様にして粒子製剤を調製した。組成及び各種試験結果を表2に示した。
【0043】
【表2】

噴霧液量(5mL/min)、吸気温度(80℃)、噴霧空気流量(470L/hr)
【0044】
表2に示したように、水不溶性高分子としての腸溶性高分子と、無機粒子とを所定の重量比で含有する実施例に係る粒子製剤は、pH1.2条件下での薬物溶出を効果的に制御(抑制)することができ、pH6.8条件下では薬物の溶出が促進され、腸溶性剤としての特徴を示した。
一方、無機粒子を含まない比較例2に係る粒子製剤は、薬物の溶出を効果的に制御(抑制)できなかった。
【0045】
(実施例8〜17)
水不溶性高分子として、除放性高分子としてのエチルセルロースと腸溶性高分子としてのオイドラギットS100とを用いて、無機粒子の種類を変えて粒子製剤を調製した。組成及び実施例1同様にして測定した各種試験結果を表3に示した。
【0046】
(比較例3)
無機粒子を加えていない以外は、実施例8と同様にして粒子製剤を調製した。組成及び各種試験結果を表3に示した。
【0047】
【表3】

噴霧液量(5mL/min)、吸気温度(120℃)、噴霧空気流量(470L/hr)
【0048】
表3に示したように、水不溶性高分子と、疎水性処理された無機粒子とを組み合わせて用いた、実施例10、11、15〜17に係る粒子製剤は、水不溶性高分子と、疎水性処理されていない無機粒子とを組み合わせて用いた、実施例8、9、12〜14に係る粒子製剤と比較して、腸溶性効果が特に増強された。
一方、無機粒子を含まない比較例3に係る粒子製剤は、薬物の溶出を効果的に制御(抑制)できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明では、薬物粒子を水不溶性高分子と無機粒子を含む被覆層で被覆することにより、粒子径が小さい場合でも薬物粒子を有効にコーティングでき、薬物の溶出を有効に抑制できる。
そのため、そのまま細粒剤としてそのまま生体に投与できるだけでなく、種々の製剤に成型して投与することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物粒子と、前記薬物粒子を被覆する被覆層とを有する粒子製剤であって、
前記被覆層は、水不溶性高分子2.4重量部に対して、無機粒子を0.5〜2.4重量部含有する
ことを特徴とする粒子製剤。
【請求項2】
無機粒子の平均粒子径が1〜1000nmである請求項1記載の粒子製剤。
【請求項3】
無機粒子は、シリカ及び/又は二酸化チタンである請求項1又は2記載の粒子製剤。
【請求項4】
水不溶性高分子は、腸溶性高分子を含む請求項1、2又は3記載の粒子製剤。
【請求項5】
無機粒子は、疎水性化処理されたものである請求項1、2、3又は4記載の粒子製剤。
【請求項6】
薬物粒子2.4重量部に対して、無機粒子を0.5〜2.4重量部含有する請求項1、2、3、4又は5記載の粒子製剤。
【請求項7】
噴霧乾燥法により得られる請求項1、2、3、4、5又は6記載の粒子製剤。

【公開番号】特開2012−250926(P2012−250926A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123721(P2011−123721)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】