説明

粒子配列体の製造方法

【課題】 短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有する粒子配列体の製造方法の提供。
【解決手段】 粒子配列体の製造方法は、モノマーを含有する水系媒体を用いて単分散の粒子を配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、前記モノマーを硬化させる工程を経ることを特徴とする。この粒子配列体の製造方法においては、前記モノマーの硬化に伴って、当該モノマー1分子当たり少なくとも1個の水分子が、モノマーを硬化させることにより形成されるポリマーに包摂されることが好ましい。また、前記モノマーが、アクリレート系のモノマーであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造色を発現する粒子配列体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単分散の粒子を規則的に配列させることによって形成されるブラッグ反射が得られるコロイド結晶は、フォトニック部材、色材、色表示部材、反射板などとして使用することができることが知られており、最近、このようなコロイド結晶を得るための方法が盛んに研究されている(例えば特許文献1および非特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献2に開示されるように、通常、コロイド結晶における粒子の規則的な配列は、水の存在下に形成される。そして、配列させた粒子の固定化は、まず、水の存在下で固定処理(1段階目の固定処理)を行って粒子の3次元的な位置を固定し、この状態において、水の経時的な蒸発による性能変動を防ぐために水を除去する処理を行い、さらに、水を除去した後の空洞により光散乱などの問題が発生するために、当該空洞を埋めるために新たな固定化剤を充填する処理(2段階目の固定処理)を行わなければならない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−279633号公報
【特許文献2】特開2005−325173号公報
【非特許文献1】「高分子論文集」吉永ら、vol.64、No.1、p.21〜28、2007年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水の除去および新たな固定化剤の充填を含む2段階の固定処理を経る場合は、得られる粒子配列体が粒子の配列乱れが発生したものとなるおそれがある、という問題がある。また、粒子配列体の作製時間の短縮も求められている。
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有する粒子配列体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粒子配列体の製造方法は、モノマーを含有する水系媒体を用いて単分散の粒子を配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、前記モノマーを硬化させる工程を経ることを特徴とする。
【0008】
本発明の粒子配列体の製造方法においては、前記モノマーの硬化に伴って、当該モノマー1分子当たり少なくとも1個の水分子が、モノマーを硬化させることにより形成されるポリマーに包摂されることが好ましい。
【0009】
また、本発明の粒子配列体の製造方法においては、前記モノマーが、アクリレート系のモノマーであることが好ましい。
【0010】
この粒子配列体の製造方法においては、前記モノマーが、エチレングリコールメタアクリレートまたはヒドロキシエチルメタアクリレート、あるいはこれらの混合物であることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粒子配列体の製造方法によれば、コロイド結晶の形成に用いた水系媒体中のモノマーを硬化させて当該コロイド結晶を固定化するために、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶を有する粒子配列体を得ることができる。
特に、モノマーの硬化に伴って、当該モノマー1分子当たり少なくとも1個の水分子がモノマーを硬化させることにより形成されるポリマーに包摂される製造方法によれば、除去すべき水分子の数が低減されるために、水分子の除去スピードを遅いものとすることができ、従って、水の除去に伴う粒子の配列乱れがより一層抑制され、その結果、短時間でより良質なコロイド結晶を有する粒子配列体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
〔粒子配列体の製造方法〕
本発明の粒子配列体の製造方法は、図1および図2に示されるように、モノマー(17)を含有する水系媒体(21)を用いて単分散の粒子(以下、単に「粒子」ともいう。)(12)を配列させて構造色を発現するコロイド結晶(16)を形成させた後、前記モノマー(17)を硬化させて吸水性ポリマー(18)を形成する工程を経る方法である。
【0014】
このような方法によって得られる粒子配列体(10)は、具体的には、例えば図3に示されるように、吸水状態の吸水性ポリマー(18)よりなるマトリックス中に粒子(12)同士が面方向に接触または非接触状態で規則的に形成される粒子層(15)が、厚み方向においても粒子(12)同士が接触または非接触状態で規則的に配されたコロイド結晶(16)が含有された構成を有するものである。
このコロイド結晶(16)は、光が入射する方向に対して一方向に規則的に粒子(12)が配列された構成を有しており、特に、コロイド結晶(16)が最密充填構造を呈するよう粒子(12)が配列された構成を有することが好ましい。
【0015】
粒子配列体(10)においては、粒子(12)の屈折率とマトリックスの屈折率との差の絶対値(以下、「屈折率差」という。)が、0.02〜2.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.6である。
この屈折率差が0.02未満である場合は、構造色が発現しにくくなり、この屈折率差が2.0より大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化するおそれがある。
【0016】
この粒子配列体の製造方法は、具体的には、硬化することにより吸水性ポリマー(18)となるモノマー(17)を含有する水系媒体(21)に粒子(12)を分散させたサスペンジョン液を調製し、基板などの表面に塗布して自己配列させて粒子(12)が規則的に配列されたコロイド結晶(16)を形成させた後、モノマー(17)を硬化させる。
この水系媒体(21)中には、モノマー(17)の硬化に係る反応系において反応系外からの物理的な添加物なしに硬化を開始させることのできる、例えば光、特に紫外線、熱などによって硬化を開始させる硬化剤が、予め含有されていることが好ましい。
【0017】
サスペンジョン液を構成する水系媒体(21)は、少なくとも50質量%以上の水を含有するものであって、0〜50質量%の水溶性の有機溶媒を含有していてもよい。水溶性の有機溶媒としては、粒子を溶解しないものであれば限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどを例示することができ、これらの中ではアルコール系有機溶媒が好ましい。水系媒体(21)としては、100質量%水よりなるものを用いることが特に好ましい。
【0018】
水系媒体(21)中に含有されるモノマー(17)としては、当該水系媒体(21)中において重合反応することができ、かつ、重合して硬化させることによりモノマー(17)1分子当たり少なくとも1個の水分子を包摂する吸水性ポリマー(18)となるものであれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。
ここに、「水分子を包摂する」とは、吸水性ポリマー(18)の軟化点以下の環境温度において、温度変化による含水率の変化幅が10%以内であることをいう。
なお、粒子配列体(10)の水分量は、当該粒子配列体(10)を1g採取し、乳鉢を用いて破砕し、200℃で水を蒸発させた後、カール・フィッシャー水分計「CA−06」(三菱化学社製)を用いてカール・フィッシャー試薬による滴定法によって測定されるものである。
【0019】
このようなモノマー(17)を硬化させて得られる吸水性ポリマー(18)は、具体的には、架橋構造を有し、モノマー(17)1分子当たり少なくとも1個の水分子を包摂して膨潤する性質を有するものである。このような吸水性ポリマー(18)は、モノマー(17)として例えば非架橋性のモノマーと架橋性のモノマー(以下、「架橋性モノマー」ともいう。)とを用いて、これらを重合させることにより形成することができる。
【0020】
〔吸水性ポリマー〕
吸水性ポリマー(18)としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸またはポリ(メタ)アクリル酸塩架橋体、スルホン酸基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリアルキレン鎖を有するポリ(メタ)アクリル酸エステル架橋体、ポリ(メタ)アクリルアミド架橋体、ポリジオキソラン架橋体、架橋ポリエチレンオキシド、架橋ポリビニルピロリドン、スルホン化ポリスチレン架橋体、架橋ポリビニルピリジン、デンプン−ポリ(メタ)アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−ポリ(メタ)アクリル酸およびその塩、グラフト架橋共重合体、ポリビニルアルコールと無水マレイン酸(塩)の反応物、架橋ポリイソブチレン−マレイン酸塩共重合体、ポリビニルアルコールスルホン酸塩、ポリビニルアルコール−アクリル酸グラフト共重合物などを挙げることができる。
【0021】
〔モノマー〕
本発明の粒子配列体の製造方法に用いられるモノマー(17)のうち、非架橋性のモノマーとしては、水溶性のモノマーが好ましい。
水溶性のモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩;N,N’−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級化物、(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ−ト、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコ−ル(メタ)アクリレ−トなどが挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
水溶性のモノマーとしては、メタアクリレート系のモノマーを用いることが好ましく、特に、エチレングリコールメタアクリレートを単独で、またはヒドロキシエチルメタアクリレートを単独で、あるいはこれらを混合して用いることが好ましい。
サスペンジョン液を構成する水系媒体(21)が水と有機溶剤との混合液である場合は、モノマー(17)として、例えば汎用のn−ブチルアクリレートやメタクリル酸メチルなども使用することができる。
【0022】
モノマー(17)として用いられる、吸水性ポリマー(18)の架橋構造を得るための架橋性モノマーとしては、具体例には、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、N,N−メチレンビスアクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタンなどの1分子中にエチレン系不飽和基を2個以上有する化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの1分子中にエチレン系不飽和基を1個と他の反応性官能基とを有する化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ソルビット、グルコース、マンニット、マンニタン、ショ糖、ブドウ糖などの多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルなどのポリエポキシ化合物;およびアルキレンカーボネートなどを挙げることができ、これらは1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
これらの架橋性モノマーのうち、特にトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0023】
架橋性モノマーの使用量は、用いる非架橋性のモノマーの種類や重合条件により異なるが、例えば、吸水性ポリマー(18)を形成するための全モノマー(17)1モルに対して0.05〜0.5モルの範囲内であることが好ましい。架橋性モノマーの使用量が過少である場合は、得られた吸水性ポリマーが、その膨潤状態を安定に維持できないものとなるおそれがある。一方、架橋性モノマーの使用量が過多である場合は、得られる吸水性ポリマーが所望の量の水分子を確実に包摂することができないものとなるおそれがある。
【0024】
〔硬化剤〕
水系媒体(21)に予め含有させる硬化剤としては、従来公知の種々の光硬化剤、紫外線硬化剤、熱硬化剤などを用いることができ、特に水溶性のものが好ましい。具体的には、例えばアミン系およびポリアミド系のエポキシ樹脂、さらに具体的には、例えば2,2’−アゾビス{2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)}プロピオンアミドなどが挙げられる。非水溶性または難水溶性の硬化剤を用いる場合は、添加量を少量とする、あるいは、水系媒体(21)として前記硬化剤を溶解できる溶剤を含有させたものを用いればよい。
【0025】
硬化(重合)温度は、粒子(12)の凝集が発生しない範囲の温度であることが必要であり、例えば50〜90℃の範囲であることが好ましい。
【0026】
水系媒体(21)中におけるモノマー(17)によるモノマー濃度は、例えば、5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。水系媒体(21)中におけるモノマー濃度が上記の範囲内にあることによって、得られる粒子配列体(10)が水分子の蒸発に伴って発生する粒子の配列乱れが抑制されたものとなる。一方、水系媒体(21)中におけるモノマー濃度が過度に低い場合は、吸水性ポリマーに包摂される水分子の割合が相対的に少なくなるために乾燥させて除去すべき水分子の量が多くなり、その結果、得られる粒子配列体が水分子の蒸発に伴って粒子の配列乱れが大きく生じたものとなって、構造色の発現の程度が低いものとなるおそれがあり、また、水系媒体(21)中におけるモノマー濃度が過度に高い場合は、モノマーの硬化によって配列された粒子(12)の3次元的な位置に乱れが生じるおそれがある。
【0027】
以上のような方法によって得られる粒子配列体(10)における吸水性ポリマー(18)によるマトリックスの屈折率は、公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明におけるマトリックスの屈折率は、別個にマトリックスを構成する吸水性ポリマー(18)のみよりなる薄膜を作成し、この薄膜をアッベ屈折率計にて測定した値とされる。
【0028】
〔粒子〕
本発明において、粒子とは、3次元において粒子形状を有する固体の物質のことであり、真球に限定されるものではなく、おおよそ粒子形状を有すればよい。
粒子配列体(10)のコロイド結晶(16)を構成する粒子(12)を形成すべき材料としては、非水溶性であって、その屈折率がマトリックスの屈折率と異なるものであるものを、適宜に選択することができる。
【0029】
粒子配列体(10)のコロイド結晶(16)を構成する粒子(12)としては、種々のものを挙げることができる。
具体的には例えば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(イソ)プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸単量体などの重合性単量体のうちの1種を重合した粒子、または2種以上を共重合した有機粒子を挙げることができる。
また、重合性単量体に架橋性単量体を加えて重合した有機粒子であってもよく、架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
また例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、硫酸バリウム、酸化第二鉄などの無機酸化物および複合酸化物などや、ガラス、セラミックスなどにより形成された無機粒子を挙げることができる。
また例えば、上記の有機粒子または無機粒子をコア粒子として、これの表面に当該コア粒子を構成する材料と異なる材料のシェル層が形成されてなるコア−シェル型粒子を挙げることができる。シェル層は、金属微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物ナノシートなどを用いて形成することができる。
さらに例えば、上記のコア−シェル型粒子から、焼成、抽出などの方法によってコア粒子を除去することにより得られる中空型粒子を挙げることができる。
これらの粒子のうち、有機粒子が好適に用いられる。
【0030】
粒子配列体(10)を構成する粒子(12)は、単一組成の単一物であっても複合物であってもよい。また、屈折率が高い材料によって粒子を形成する場合は低屈折率物質を内添するなどしてもよい。
【0031】
粒子(12)の平均粒径は、当該粒子(12)の屈折率およびマトリックスの屈折率との関係において設定する必要があり、さらに少なくともそのサスペンジョン液が安定したコロイド溶液となる大きさであることが好ましいところ、例えば50〜500nmであることが好ましい。
粒子(12)の平均粒径が上記の範囲にあることにより、そのサスペンジョン液を安定したコロイド溶液とすることができ、また、得られる粒子配列体(10)において発現する構造色が近紫外〜可視〜近赤外域にピーク波長を有する色となる。
一方、粒子の平均粒径が50nm未満である場合は、反射される光が強度の小さいものとなるおそれがあり、粒子の平均粒径が500nmよりも大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって構造色が白濁化するおそれがある。
【0032】
また、粒径分布を表すCV値は10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
CV値が10%より大きい場合は、規則的に配列されるべき粒子層が大きな乱れが生じたものとなって得られる粒子配列体が白濁化してその構造色が認識されにくいものとなることがある。
平均粒径は、粒子(12)について走査型電子顕微鏡「JSM−7410」(日本電子社製)を用いて50,000倍の写真を2枚撮影し、この2枚の写真画像における粒子(12)の100個ずつについて、それぞれ最大長を測定し、その個数平均値を算出することにより、得られるものである。ここに、「最大長」とは、粒子(12)の周上の任意の2点による2点間距離のうち、最大のものをいう。
なお、粒子(12)が凝集体として撮影される場合には、凝集体を形成する一次粒子(粒子)の最大長を測定するものとする。
CV値は、個数基準の粒度分布における標準偏差および上記の平均粒径の値を用いて下記式(CV)より算出されるものである。
式(CV):CV値(%)=((標準偏差)/(平均粒径))×100
【0033】
粒子(12)の屈折率は公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明における粒子(12)の屈折率は、液浸法によって測定した値とする。
粒子(12)の屈折率の具体的な例としては、例えばポリスチレンが1.59、ポリメタクリル酸メチルが1.49、ポリエステルが1.60、フッ素変性ポリメタクリル酸メチルが1.40、ポリスチレン・ブタジエン共重合が1.56、ポリアクリル酸メチルが1.48、ポリアクリル酸ブチルが1.47、シリカが1.45、酸化チタン(アナターゼ型)が2.52、酸化チタン(ルチル型)が2.76、酸化銅が2.71、酸化アルミニウムが1.76、硫酸バリウムが1.64、酸化第二鉄が3.08である。
【0034】
粒子配列体(10)のコロイド結晶(16)を構成する粒子(12)は、コロイド結晶(16)を形成させる際に規則配列させやすいことから、単分散性の高いものであることが好ましい。
単分散性の高い粒子を得るために、粒子(12)が有機物による粒子である場合は、粒子(12)は、通常一般的に用いられるソープフリー乳化重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの重合法によって得ることが好ましい。
【0035】
粒子(12)は、マトリックスとの親和性を高いものとするために、各種の表面処理を行ってもよい。
【0036】
サスペンジョン液における粒子の濃度は、取り扱い性の観点から、例えば20質量%以下とすることが好ましい。
【0037】
サスペンジョン液の基板に対する塗布方法としては、スクリーン塗布法、ディップ塗布法、スピンコート塗布法、カーテン塗布法、LB(Langmuir−Blodgett)膜作成法などを利用することができる。
【0038】
粒子配列体(10)を形成させるための粒子(12)のサスペンジョン液を塗布する基板としては、例えばゴム、ガラス、セラミックスやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のフィルムやシートなどを使用することができる。
基板としては、表面の水に対する接触角はある程度低いものが好ましい。また、表面平滑性は高いものが好ましいことから、基板について適宜の表面処理を行ってもよい。また、ブラスト処理などを行って球体が付着し易い状態にして使用することもできる。
【0039】
〔構造色〕
この粒子配列体(10)において発現される構造色は、当該粒子配列体(10)において観察角に基づいて規定されて選択的に反射される光によって発現される色である。
【0040】
粒子配列体(10)において選択的に反射される光は、ブラッグの法則、スネルの法則より、下記式(1)で表される波長の光とされる。
なお、下記式(1)および下記式(2)は近似式であり、実際上はこれらの計算値に完全には合致しない場合もある。
式(1):λ=2nD(cosθ)
この式(1)において、λは構造色のピーク波長、nは下記式(2)で表される粒子配列体(10)の屈折率、Dは粒子層(15)の層間隔(粒子(12)の表示部材の垂線方向における間隔)、θは表示部材の垂線との観察角である。
式(2):n={na・c}+{nb・(1−c)}
この式(2)において、naは粒子(12)の屈折率、nbはマトリックスの屈折率、cは粒子配列体(10)における粒子(12)の体積率である。
ここに、構造色のピーク波長λは、分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定されるものである。
【0041】
粒子配列体(10)における粒子層(15)の厚みは、例えば0.1〜15μmであることが好ましい。
粒子層の厚みが0.1μm未満である場合は、反射される光が強度の小さいものとなる。
【0042】
粒子配列体(10)における粒子層(15)の周期数は、少なくとも1以上である必要があり、好ましくは5〜150である。
周期数が1未満である場合は、粒子配列体が構造色を発現するものとならない。
【0043】
粒子配列体(10)において発現される構造色は、可視域にピーク波長を有する色に限らず、紫外域または赤外域にピーク波長を有する色(光)であってもよい。
【0044】
粒子配列体(10)における層間隔Dは、50〜500nmであることが好ましい。
層間隔Dが上記の範囲にあることにより、得られる粒子配列体(10)において発現する構造色が近紫外〜可視〜近赤外域にピーク波長を有するものとなる。一方、層間隔Dが500nmよりも大きい場合は、得られる粒子配列体が構造色を発現するものとならないおそれがある。
【0045】
以上のような粒子配列体(10)の製造方法によれば、コロイド結晶(16)の形成に用いた水系媒体(21)中のモノマー(17)を硬化させて当該コロイド結晶(16)を固定化するために、短時間で配列乱れの抑制された良質なコロイド結晶(16)を有する粒子配列体(10)を得ることができる。
特に、モノマー(17)の硬化に伴って、当該モノマー(17)1分子当たり少なくとも1個の水分子がモノマー(17)を硬化させることにより形成される吸水性ポリマー(18)に包摂される製造方法によれば、除去すべき水分子の数が低減されるために水の除去に伴う粒子の配列乱れが抑制され、従って、より良質なコロイド結晶を有する粒子配列体(10)を得ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、粒子の平均粒径およびCV値の測定は、上述の方法と同様の方法によって行った。
【0048】
<実施例1>
イオン交換水に、乳化重合法によって作製したポリスチレン粒子(平均粒径:200nm、CV値:5%)を分散させて、ポリスチレン粒子の濃度が50質量%であるサスペンジョン液を50g調製した。
次いで、非架橋性のモノマー:ヒドロキシエチルメタアクリレート10gと、架橋性モノマー:エチレングリコールジアクリレート10gと、水10gとを混合して混合液を調製し、これにさらに紫外線硬化剤:2,2’−アゾビス{2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)}プロピオンアミド0.1gを添加してモノマー溶液を得た。
このモノマー溶液と上記のサンスペンジョン液とを混合させ、よく撹拌した後、プラズマ放電により親水化処理を行うことにより、塗布液を得た。
この塗布液をガラス板上にバーコーターによって膜厚が20μmとなるように塗布し、紫外線照射を行ってモノマーをポリマー化させ、並行して、室温で乾燥を行うことにより、コロイド結晶を含有する塗膜を得た。この塗膜の水分量を測定した。
この塗膜を目視で観察したところ、鮮明に構造色を呈することが確認され、また、その膜面の状態は乱れがなく良好であることが確認された。
【0049】
さらに、この塗膜を乾燥機に入れて50℃で質量変化がなくなるまで乾燥させることにより、粒子配列体〔1〕を得た。
この粒子配列体〔1〕を目視で観察したところ、鮮明に構造色を呈することが確認され、また、その膜面の状態は乱れがなく良好であることが確認された。また、この粒子配列体〔1〕の水分量を測定した。
【0050】
塗膜および粒子配列体〔1〕の水分量の測定は、以下のように行った。
すなわち、塗膜あるいは粒子配列体〔1〕を1g採取し、乳鉢を用いて破砕し、200℃で水を蒸発させた後、カール・フィッシャー水分計「CA−06」(三菱化学社製)を用いてカール・フィッシャー試薬による滴定法によって水分量を求めた。
【0051】
<実施例2>
実施例1において、非架橋性のモノマーとしてヒドロキシエチルメタアクリレート10gの代わりにアクリルアミドモノマー10gを用いると共に、架橋性モノマーとしてエチレングリコールジアクリレート10gの代わりにメチレンビスアクリルアミドモノマー10gを用いたことの他は同様にして、構造色が発現する粒子配列体〔2〕を得た。
塗膜の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量、並びに粒子配列体の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量についての評価を表1に示す。
【0052】
<実施例3>
実施例1において、非架橋性のモノマーとしてヒドロキシエチルメタアクリレート10gの代わりにポリエチレングリコールアクリレートモノマー10gを用いると共に、架橋性モノマーとしてエチレングリコールジアクリレート10gの代わりにメトキシポリエチレングリコールアクリレートモノマー10gを用いたことの他は同様にして、構造色が発現する粒子配列体〔3〕を得た。
塗膜の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量、並びに粒子配列体の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量についての評価を表1に示す。
【0053】
<比較例1>
実施例1において、非架橋性のモノマー:ヒドロキシエチルメタアクリレート10gおよび架橋性モノマー:エチレングリコールジアクリレート10gの代わりに、疎水性モノマーであるメチルメタクリエートモノマー20gを用いたことの他は同様にして、比較用の粒子配列体〔x〕を得た。
塗膜の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量、並びに粒子配列体の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量についての評価を表1に示す。
【0054】
<比較例2>
比較例1において、疎水性モノマーであるメチルメタクリエートモノマー20gを、ノニオン性界面活性剤「エメルゲン108」(花王社製)を用いて乳化処理した状態で用いたことの他は同様にして、比較用の粒子配列体〔y〕を得た。
塗膜の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量、並びに粒子配列体の膜面の状態、構造色の発現の程度および水分量についての評価を表1に示す。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の粒子配列体の製造方法によって得られる粒子配列体は、フォトニック部材、色材、色表示部材、反射板などとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の粒子配列体の製造方法におけるコロイド結晶の形成する工程を模式的に示す説明用図である。
【図2】本発明の粒子配列体の製造方法におけるモノマーを硬化する工程を模式的に示す説明用図である。
【図3】本発明の粒子配列体の製造方法によって得られる粒子配列体の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 粒子配列体
12 粒子
15 粒子層
16 コロイド結晶
17 モノマー
18 吸水性ポリマー
21 水系媒体
D 層間隔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーを含有する水系媒体を用いて単分散の粒子を配列させて構造色を発現するコロイド結晶を形成させた後、前記モノマーを硬化させる工程を経ることを特徴とする粒子配列体の製造方法。
【請求項2】
前記モノマーの硬化に伴って、当該モノマー1分子当たり少なくとも1個の水分子が、モノマーを硬化させることにより形成されるポリマーに包摂されることを特徴とする請求項1に記載の粒子配列体の製造方法。
【請求項3】
前記モノマーが、アクリレート系のモノマーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粒子配列体の製造方法。
【請求項4】
前記モノマーが、エチレングリコールメタアクリレートまたはヒドロキシエチルメタアクリレート、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項3に記載の粒子配列体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138304(P2010−138304A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316562(P2008−316562)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】