説明

粒度分布測定装置

【課題】画像解析方式の粒度分布測定装置において、撮影画像の精度を大幅に向上させ、粒度分布の測定精度を向上させるとともに、測定値の再現性も向上させることのできる粒度分布測定装置を提供する。
【解決手段】試料9を粒度分布の測定領域に供給する供給手段14と、単一波長の光を前記試料に照射する光源8と、前記試料の投影画像を撮影する画像センサ7と、前記画像センサによって撮影された画像を解析する画像解析手段2,6とを有し、前記画像センサは、撮影対象物までの距離の変化による像の大きさの変化がない特性のレンズ71を備えたものである。2枚重ねの偏光フィルタ81によって、光源からの照射光を略平行光としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試料の粒度分布を測定する粒度分布測定装置に関し、詳しくは、画像解析方式の粒度分布測定装置において撮影画像の精度を大幅に向上させることのできる粒度分布測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、粉体製品の開発時や製造時の性状や品質を確認する手段としては、粒度分析計によって粉体試料の粒度(粒度分布)を測定する方法が広く利用されている。この粒度分布測定には、粉体試料にレーザ光等の平行光線を照射し、粒子によって回折、散乱された光のパターンを測定・解析することによって粒度分布を算出するレーザ散乱・回折方式と、粒子群をCCDカメラ等により撮影して画像解析により粒度分布などを算出する画像解析方式が使用されている。
【0003】
画像解析方式の粒度分布測定装置としては、下記の特許文献1、特許文献2のようなものが公知である。特許文献1、特許文献2には、落下する粒子群をCCDカメラ等により撮影して画像解析と統計的手法から粒度分布測定を行う装置が記載されている。このような画像解析方式の粒度分布測定装置は、コンピュータの高速化、画像撮影装置の高解像度化等により、精度の高い測定が可能となってきた。
【特許文献1】特開平11−258141号公報
【特許文献2】特開平11−316184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像解析方式の粒度分布測定装置では、粒度分布の情報だけでなく短径と長径との比等の粒子形状に関する情報も得られるという利点があるが、以下のような問題点もある。まず、カメラに装着する光学系の特性によって、適正に撮影できない粒子では画像測定データに誤差が生じて測定結果の精度や信頼性が低下してしまう。これは、光学系のピントずれや試料と光学系間の距離等により、画像の拡大・縮小、消失などが起こることも原因である。また、試料粒子によって回折、散乱された光も撮影画像の精度に対して悪影響を与える。
【0005】
そこで、本発明は、画像解析方式の粒度分布測定装置において、撮影画像の精度を大幅に向上させ、粒度分布の測定精度を向上させるとともに、測定値の再現性も向上させることのできる粒度分布測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の粒度分布測定装置は、試料を粒度分布の測定領域に供給する供給手段と、単一波長の光を前記試料に照射する光源と、前記試料の投影画像を撮影する画像センサと、前記画像センサによって撮影された画像を解析する画像解析手段とを有し、前記画像センサは、撮影対象物までの距離の変化による像の大きさの変化がない特性のレンズを備えたものである。
【0007】
また、上記の粒度分布測定装置において、前記光源は、照射光の波長が350〜600nmの範囲内のものであることが好ましい。
【0008】
また、上記の粒度分布測定装置において、前記光源は、略平行光を照射するものであることが好ましい。
【0009】
また、上記の粒度分布測定装置において、前記光源は、偏光方向が90度異なるように重ね合わせた2枚の偏光フィルタを備えたものであることが好ましい。
【0010】
また、上記の粒度分布測定装置において、前記光源は、ストロボ光を発生するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0012】
単一波長の光を照射する光源を使用するとともに、照射光をほぼ平行光とし、画像センサのレンズは撮影する試料粒子からレンズまでの距離が変化しても像の大きさが変わらないものとすることにより、画像解析方式の従来装置より高精度に粒度分布を測定することができ、測定値の再現性も従来装置より向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の粒度分布測定装置1の構成を示す概略図である。粒度分布測定装置1中のコンピュータ2は、粒度分布や粒子形状に関わる種々のデータ処理を行うものである。コンピュータ2には、文字および図形を表示する表示部3、文字および図形を印字するプリンタ5、操作者がデータを入力するための入力部4が接続されている。表示部3としてはCRT、EL表示パネル、液晶表示パネル等が使用でき、入力部4としてはキーボード、マウス、トラックボール等が使用できる。
【0014】
また、コンピュータ2には、CCDカメラ7からの画像信号が画像処理部6を介して入力される。CCDカメラ7のレンズ71は、撮影する試料粒子からレンズ71までの距離が変化しても像の大きさが変わらないもの、例えば、テレセントリックレンズ等を使用する。このような光学特性のレンズ71を使用することにより、試料粒子からレンズ71までの距離に依存せず、試料粒子の大きさを画像から高精度に測定することができる。
【0015】
また、このような光学特性のレンズ71は、通常のレンズに比べて被写界深度が大きくなり、撮影領域の試料粒子の奥行き方向の全体にピントを合わせることが可能となる。実際に疑似粒子を撮影した結果によれば、通常のレンズでの被写界深度が12mmであったのに対し、テレセントリックレンズでの被写界深度は32mmとなった。このように、被写界深度が大きくなることによっても画像精度が向上することになる。
【0016】
画像処理部6は、画像撮影時の画像データを保持し、粒子画像の輪郭線抽出やその他の種々の画像処理を行うものである。コンピュータ2は、この画像処理された画像信号をさらにデータ処理して画像解析方式による試料の粒度分析を行う。すなわち、各粒子ごとの粒径を算出し、その粒径データから粒子の体積を計算し、さらに所定の粒径区分ごとの粒子量を計算して、これらの結果から粒度分布を算出する。算出した粒度分布は、表示部3に表示したりプリンタ5によって印刷することができる。
【0017】
光源8は、CCDカメラ7に対して試料9を挟んで対向する位置に置かれている。CCDカメラ7は、測定領域において透過光により粒子を投影像として画像撮影を行う。この光源8は、コンピュータ2に接続されており、コンピュータ2によって発光タイミングを制御することができる。撮影タイミングに同期して、光源8にストロボ光を発生させる。光源8からの発生光は、画像精度の点からは瞬間的な発光であるストロボ光が望ましい。しかし、定常光撮影による画像精度でも十分な場合には、定常光も使用可能である。
【0018】
光源8は、青色発光ダイオードを多数配列した面発光のものである。青色発光ダイオードは同一特性の単一波長のものが使用される。例えば、発生光の波長が470nmの青色発光ダイオードが使用できる。なお、単一波長光の波長は350〜600nmの範囲が好ましく、波長の範囲が350〜500nmであればさらに好ましい。発生光の波長が短い方が、撮影画像の解像度が大きく(高精細に)なり、画像精度も向上する。
【0019】
また、光源8から照射される光は、撮影領域の全体をカバーする均一な面発光であることが望ましい。さらに、光源8からの照射光は、ほぼ平行光であればさらに画像精度を向上させることができる。光源8からの照射光が、レンズ71の光軸方向の平行光に近ければ、レンズ71のテレセントリック光学系としての特性がより完全なものに近付くことになる。
【0020】
光源8からの照射光をほぼ平行光とするために、光源8の前面に偏光フィルタを利用した平行化フィルタ81が配置されている。偏光フィルタは平板状のフィルタであり、表面と平行な一方向の直線偏光のみを通過させるものである。平行化フィルタ81は2枚の偏光フィルタを重ね合わせたものであり、2枚の偏光フィルタは通過する直線偏光の方向が90度異なるように配置されている。このように偏光フィルタを配置した平行化フィルタ81は、表面に対して垂直でない光はほぼ完全に遮断するが、表面に対して垂直な光はある程度の量が通過するという特性を持つ。したがって、平行化フィルタ81を通過した光はほぼ平行光となる。
【0021】
この平行化フィルタ81を使用すると、簡単かつ低コストの構成でほぼ平行光を得ることができる。なお、平行光を得る手段は平行化フィルタ81に限定されるわけではなく、他の手段により平行光を得るようにしてもよい。例えば、点光源からの照射光をコリメータレンズにより平行化し、さらにビームエクスパンダによりビーム幅を拡大するようにしてもよい。
【0022】
粒度分布の測定を行う試料9は、ホッパー13から振動フィーダ14に供給され、加振装置141によって振動を付与された振動フィーダ14によりその左端部まで搬送される。振動フィーダ14の左端部に到達した試料9は、振動フィーダ14の左端部から測定領域に向かって落下移動する。落下移動としては、自由落下による落下移動でもよいし、空気流等の外部力を付加した落下移動であってもよい。測定領域の試料9に対してCCDカメラ7によって画像撮影が行われ、この画像信号により前述のように画像解析方式の粒度分析が行われる。画像撮影が行われた試料9は、さらに落下して回収部(図示せず)に回収される。
【0023】
図2に、本発明の粒度分布測定装置1により種々の試料の粒度分布を測定した結果を示す。また、比較例として、従来の画像解析方式の粒度分布測定装置での測定結果を合わせて示す。従来装置は、光源として蛍光灯を利用した通常の面光源(白色光、非平行光)を使用し、CCDカメラのレンズはテレセントリックでない通常のレンズを使用したものである。
【0024】
各試料の粒度情報として、所定の累積%径(D10%,D50%,D90%)の測定結果を示している。ここで、累積%径とは、確率密度関数としての粒度分布において体積累積値が所定の百分率になる粒径である。例えば、D50%は体積累積値が50%となる粒径を表す。各試料について、累積%径(D10%,D50%,D90%)の測定を5回繰り返し、その平均値[mm]と、測定値のばらつき率[%]を求めて図示している。ここで、ばらつき率とは、各累積%径の測定値に関して、平均値と測定値のばらつきを表す標準偏差とから、標準偏差/平均値×100[%]によって求めた値である。
【0025】
試料Aは、製品表示径100μmのジルコニアビーズである。本発明による測定結果では、D50%の値がほぼ製品表示径に近い値が得られている。また、測定値の平均値に関しては、従来装置においても本発明に近い値が得られている。ばらつき率に関しては、本発明の方がばらつき率が小さくなっており、測定値の再現性が従来装置よりも向上していることが分かる。
【0026】
試料Bは、市販の粉石けんである。この試料では、累積%径の測定平均値が全体的に、本発明の方が従来装置よりも小さめに求められている。これは、一般的に画像解析方式の粒度分布測定装置では、微小径側の粒子が測定不能となることが多く、実際の粒度分布よりも大きめの粒度分布が得られる傾向があるためと考えられる。本発明では、画像精度の向上により、微小径側の粒子がより多く測定可能となっているために、より実際の粒度分布に近い値が得られていると考えられる。また、ばらつき率に関しては、本発明の方がばらつき率が非常に小さくなっており、測定値の再現性が従来装置よりも大幅に向上していることが分かる。
【0027】
試料Cは、市販の砂糖である。この試料でも、累積%径の測定平均値が全体的に、本発明の方が従来装置よりも小さめに求められている。また、この試料のばらつき率に関しては、本発明と従来装置でほぼ同等である。これは、従来装置でのばらつき率がもともとかなり小さい値となっているためであり、この試料が従来装置での測定に適したものであったためと考えられる。それでも、本発明のばらつき率もほぼ同等の良好な値が得られている。
【0028】
試料Dは、市販の顆粒状のインスタントコーヒーである。この試料でも、累積%径の測定平均値が全体的に、本発明の方が従来装置よりも小さめに求められている。また、ばらつき率に関しては、本発明の方がばらつき率が小さくなっており、測定値の再現性が従来装置よりも向上していることが分かる。
【0029】
試料A〜Dの測定結果から以下の結論が推定される。本発明の方が従来装置よりも微小径側の粒子まで測定可能になっており、より実際の粒度分布に近い値が得られていると考えられる。一般的に、本発明の方が従来装置よりもばらつき率が小さくなり、測定値の再現性が従来装置よりも向上している。従来装置での測定に適した試料の場合でも、本発明のばらつき率もほぼ同等の良好な値が得られる。
【0030】
以上のように、単一波長の光を照射する光源を使用するとともに、照射光をほぼ平行光とし、画像センサのレンズは撮影する試料粒子からレンズまでの距離が変化しても像の大きさが変わらないものとすることにより、従来装置よりも高精度に粒度分布を測定することができ、また、測定値の再現性も従来より向上する。
【0031】
なお、以上の実施の形態では、画像センサ(エリアセンサ)としてCCDカメラを使用しているが、MOS型のエリアセンサなどの他のエリアセンサでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により、撮影画像の精度を大幅に向上させ、粒度分布の測定精度を向上させるとともに、測定値の再現性も向上させることのできる粒度分布測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の粒度分布測定装置1の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の粒度分布測定装置1により種々の試料の粒度分布を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 粒度分布測定装置
2 コンピュータ
3 表示部
4 入力部
5 プリンタ
6 画像処理部
7 CCDカメラ
8 光源
9 試料
13 ホッパー
14 振動フィーダ
71 レンズ
81 平行化フィルタ
141 加振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(9)を粒度分布の測定領域に供給する供給手段(14)と、
単一波長の光を前記試料(9)に照射する光源(8)と、
前記試料(9)の投影画像を撮影する画像センサ(7)と、
前記画像センサ(7)によって撮影された画像を解析する画像解析手段(2,6)とを有し、
前記画像センサ(7)は、撮影対象物までの距離の変化による像の大きさの変化がない特性のレンズ(71)を備えたものである粒度分布測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載した粒度分布測定装置であって、
前記光源(8)は、照射光の波長が350〜600nmの範囲内のものである粒度分布測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載した粒度分布測定装置であって、
前記光源(8)は、略平行光を照射するものである粒度分布測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載した粒度分布測定装置であって、
前記光源(8)は、偏光方向が90度異なるように重ね合わせた2枚の偏光フィルタ(81)を備えたものである
粒度分布測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載した粒度分布測定装置であって、
前記光源(8)は、ストロボ光を発生するものである粒度分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−156595(P2009−156595A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331830(P2007−331830)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】