説明

粒状物質の製造方法

【課題】粉立ちが少なく取扱いが容易である下記式(1)で示される化合物を含有する粒状物質を提供すること。
【解決手段】下記(i)及び(ii)の工程を含むことを特徴とする式(1):


(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)で示される化合物を含有する粒状物質の製造方法:
(i)式(1)で示される化合物を溶融する工程、(ii)工程(i)で得られた溶融物を水中に滴下して、粒状物質を回収する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブタジエン等のポリマーの加工安定性を向上させるために、ポリマーに式(1−1)で示される化合物を配合することが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−168643号公報(製造実施例1)
【特許文献2】特開平4−264051号公報(実施例1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記式(1−1)で示される化合物は、粉末状の結晶として得られるため、例えば、当該化合物のポリマーへの配合作業において、粉立ちが生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、以下の〔1〕〜〔7〕で示される本発明に至った。
〔1〕下記(i)及び(ii)の工程を含むことを特徴とする式(1):

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示される化合物を含有する粒状物質の製造方法:
(i)式(1)で示される化合物を溶融する工程、
(ii)工程(i)で得られた溶融物を水中に滴下して、粒状物質を回収する工程。
〔2〕工程(ii)で用いられる水が、界面活性剤を含有することを特徴とする前記〔1〕記載の製造方法。
〔3〕界面活性剤のHLB値が、2〜6であることを特徴とする前記〔2〕記載の製造方法。
〔4〕工程(ii)が、20℃以上、かつ、式(1)で示される化合物の融点未満の温度範囲にて、溶融物の滴下物を保温することを含むことを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の製造方法。
〔5〕得られる粒状物質1粒当りの重量が、5mg〜100mgであることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の製造方法。
〔6〕式(1)で示される化合物が、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート又は2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレートであることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の製造方法。
〔7〕得られる粒状物質の形状が、円板状、略球状又は略半球状であることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、粉立ちが少なく取扱いが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の製造方法から得られる粒状物質は、式(1)で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)を含有する。

【0008】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基などが例示され、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3−メチルシクロペンチル、4−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロヘキシル基などが例示される。
【0009】
3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3のアルキル基としては、R1で例示されたアルキル基などが具体的に例示される。
【0010】
Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。
ここで、アルキリデン基としては、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが例示され、シクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基などが例示される。
【0011】
化合物(1)の融点は、通常、70〜220℃、好ましくは、100〜140℃である。
【0012】
化合物(1)としては、例えば、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル メタクリレート、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルベンジル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル メタクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル メタクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−エチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−プロピルフェニル)エチル〕−4−プロピルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)エチル〕−4−イソプロピルフェニル アクリレートなどが例示される。
好ましくは、例えば、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−プロピルフェニル)エチル〕−4−プロピルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)エチル〕−4−イソプロピルフェニル アクリレートなどが挙げられる。
とりわけ好ましくは2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート又は2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレートである。
【0013】
前記化合物(1)は、例えば、特開昭59−144733号公報、特開平1−168643号公報、特開平4−264051号公報、米国特許第4,525,514号明細書、同第4,562,281号明細書、及び同第4,365,032号明細書等に記載の方法にしたがって、製造することができる。
【0014】
本発明の粒状物質の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
(i)式(1)で示される化合物を溶融する工程、
(ii)工程(i)で得られた溶融物を水中に滴下して、粒状物質を回収する工程。
【0015】
前記工程(i)は、化合物(1)を溶融する工程である。具体的には、化合物(1)を、化合物(1)の融点Tm℃以上で加熱して溶融する。化合物(1)を加熱して溶融する温度としては、Tm℃以上であれば特に限定されるものではないが、Tm℃〜(Tm+50)℃の範囲が好ましく、(Tm+5)℃〜(Tm+40)℃の範囲がより好ましく、(Tm+10)℃〜(Tm+30)℃の範囲が特に好ましい。
【0016】
前記工程(ii)は、工程(i)で得られた溶融物を、水中に滴下して固化(冷却)させて粒状物質を得る工程である。当該工程(ii)において使用する水は、界面活性剤を含有することが好ましい。
【0017】
本発明に使用される界面活性剤としては、公知であるプロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等、各種非イオン系界面活性剤が例示される。
【0018】
具体的には、プロピレングリコール モノラウレート、プロピレングリコール モノパルミテート、プロピレングリコール モノステアレート、プロピレングリコール モノオレート、プロピレングリコール モノベヘネート、ソルビタン モノステアレート、ソルビタン パルミテート、ソルビタン トリステアレート、ソルビタン トリオレート、ソルビタン モノオレート、グリセリン モノステアレート、グリセリン モノパルミテート、グリセリン モノベヘネート、グリセリン モノジステアレート等が例示される。
【0019】
前記界面活性剤のなかでも、そのHLB値が2〜6であるもの、特に3〜5であるものが好ましい。HLB値が2以上であると水への分散性にすぐれ、6以下であると溶融物を滴下した際に、溶融物同士が互着するのを防止し、固化した時に形状を保持できるので好ましい。
【0020】
なお、本発明における界面活性剤のHLB値は、乳化剤の親水基と親油基のバランスを表す指標の一つであり、20〜0の間の値で表され、数値が大きい程に親水性が大きい。 具体的には、脂肪酸エステルについてはアトラス法で決定され、以下の式で求めることができる。
HLB=20×(1−SV/NV)
(式中、SVは脂肪酸エステルのケン化価、NVは構成する脂肪酸の中和価を示す。)
【0021】
本発明において、特に好ましい界面活性剤としては、グリセリン モノステアレート(HLB:2.8〜3.8)、ソルビタン モノステアレート(HLB:約4.7)等が挙げられる。
【0022】
前記工程(ii)における水中の界面活性剤の濃度は、例えば0.1〜3重量%等を挙げることができ、好ましくは0.3〜1重量%等を挙げられる。0.1重量%以上であれば、得られる粒状物質同士の互着を防ぐ傾向があることから好ましく、3重量%以下であれば排水処理の負荷が軽減される傾向があることから好ましい。
【0023】
前記工程(ii)における固化温度は式(1)で示される化合物の融点未満の温度であれば特に限定されるものではないが、経済性の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは20〜50℃、特に好ましくは20〜45℃である。
【0024】
前記工程(ii)における固化時間は特に限定されるものではないが、好ましくは、上述の温度範囲になった直後から1分以上、特に好ましくは2分以上保持(保温)する。また、生産性の観点から固化時間は24時間以下であることが好ましい。
【0025】
前記溶融した化合物(1)を噴霧或いは滴下する方法としては、具体的には、前記溶融した化合物(1)を、例えば、滴下管から滴下する方法などが挙げられる。
【0026】
前記工程(ii)は、滴下物は混合液中へ滴下され固化するが、その際生成した粒状物の液中のスラリー濃度としては、例えば、液全体100重量部に対して、5〜40重量部、好ましくは10〜30重量部である。
【0027】
前記工程(ii)においては、通常、滴下物は液中にて冷却されて固化するが、その際、これらに化合物(1)の結晶などを種晶として混合して固化させてもよい。
【0028】
前記工程(ii)において水中で固化した溶融物(粒状物質)は、通常、必要に応じて水等で洗浄後、遠心濾過器、フンダー濾過器等の濾過器等によって回収することができる。また、回収された粒状物質を、必要に応じて、真空乾燥機、通風乾燥機、振動流動乾燥機等の乾燥機を用いて乾燥させることもできる。
【0029】
かくして得られる粒状物質は、例えば、円板状、略球状、略半球状等の粒状物である。円板状、略球状又は略半球状の粒状物質は、化合物(1)を含む溶融物を滴下して得られる形状である。粒径が小さいと通常、球状となり、大きくなると通常、自重により扁平して半球状となる。
当該粒状物質が球状である場合、通常、その粒径は1mm〜5mmであり、略半球状である場合、その粒径は1mm〜4mm、その高さは1mm〜4mmである。また、熱可塑性ポリマーへの分散性の観点から、球状である場合、その粒径が1mm〜4mmであることが好ましく、略半球状である場合、その粒径が2mm〜4mm、その高さが1mm〜3mmであることが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、該粒状物質1粒あたりの重量が、例えば、5mg〜100mg、好ましくは6mg〜50mgである。また、前記範囲であると粉立ちが抑制され、該粒状物質同士の互着が抑制される傾向があることから好ましい。
粒状物質の重量は、固化させる工程において滴下する場合、滴下管の場合には、孔の大きさや、溶融物の粘度などにより、溶融物の滴下量を制御すればよい。
【0031】
本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、結晶性粒状物である。すなわち、本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、示差走査熱量測定装置(DSC)にて、10℃/分の割合で昇温させたときに、110〜130℃にて吸熱ピークを有する。
【0032】
本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、化合物(1)を含有するものであり、熱可塑性ポリマーなどのポリマーの安定剤として好適に使用することができる。当該粒状物質は、通常、化合物(1)を95重量%以上、好ましくは99重量%以上含有する。
また、当該粒状物質は、110〜130℃にて吸熱ピークを示し得るものを含有することができ、例えば、フェノール系酸化防止剤などを含有していてもよい。
【0033】
本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、粉立ちが少なく取り扱いが容易であり、また、結晶化されているため長期間保存してもブロッキング(固結)が生じない、いわゆる耐ブロッキング性に優れる。さらに、本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、ポリプロピレンなどの熱可塑性ポリマーに溶融混練する際に配合する場合、粒状物質が粒状のままであっても、従来の粉末状の粒状物質と同様の優れた分散性を示す。
【0034】
ここで、熱可塑性ポリマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂(高密度ポリエチレン(HD−PE)、低密度ポリエチレン(LD−PE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)など)、メチルペンテンポリマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン類(ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)などのポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、特殊アクリルゴム−アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体など)、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などが挙げられ、特に、成形加工性の良さから、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン類が好ましく、とりわけ、ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
【0035】
ここで、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構造単位を含有するポリオレフィンを意味し、具体的には、結晶性プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0036】
本発明において熱可塑性ポリマーとしてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、ポリプロピレン系樹脂としては1種類で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0037】
α−オレフィンとしては、通常、炭素原子数4〜12のα−オレフィンであり、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられ、さらに好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0038】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体などが挙げられる。
【0039】
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。
【0040】
プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体における主にプロピレンからなる共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分などが挙げられ、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分などが挙げられる。なお、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分におけるエチレン及び/又は炭素原子数4〜12のα−オレフィンの含有量は、通常、0.01〜20重量%である。
【0041】
また、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体などが挙げられる。
【0042】
また本発明において熱可塑性ポリマーとしてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、好ましくは、結晶性プロピレン単独重合体、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又は炭素原子数4〜12のα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体である。さらに好ましくは、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又は炭素原子数4〜12のα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体である。
【0043】
本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、粒状ポリマー安定剤として、通常、熱可塑性ポリマー100重量部に対して、該粒状物質を2重量部以下配合させればよく、具体的には、0.01重量部以上、2重量部以下、好ましくは0.01重量部以上、1重量部以下配合させればよい。2重量部以下であると熱可塑性ポリマー組成物表面に安定剤が現れる、いわゆる、ブリード現象が抑制される傾向があることから好ましい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0045】
以下の実施例及び比較例において、化合物(1)として、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート(以下、化合物(1−1)と記載する。融点>115℃)を使用した。また、粒状物質の特性を、以下のように測定及び評価した。
【0046】
[粒度分布測定方法]
セイシン企業製自動乾式音波ふるい分け測定器RPS−105を用いて測定した。74μm以下(表1中、75μmPass)を微粉とみなし、この数値が低いほど、粉立ちが少なくなり、粉塵爆発の危険性が低いことを表す。
【0047】
[重量測定方法]
メトラー・トレド社製精密天秤を用いて得られた粒状物質一粒の数値を読み取った。同様の測定を各試料20回繰り返して測定し、その平均値をそれぞれ粒状物質一粒の重量とした。
【0048】
[示差走査熱量分析]
粒状物質を、示差走査熱量測定装置(DSC)島津製作所製DSC−60Aにて、10℃/分の割合で昇温させ、吸熱ピーク(℃)を測定した。
【0049】
(比較例1)
温度計、撹拌機及び冷却管を備えた4つ口フラスコに、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ペンチルフェノール)494.8g(1.0モル)、アクリル酸72.1g(1.0モル)、n−ヘプタン400g及びトリエチルアミン212.5g(2.1モル)を仕込み、容器内を窒素置換した後、撹拌しながらオキシ塩化リン107.3g(0.7モル)を滴下した。滴下終了後80℃で1時間保温し、次に水500gを仕込み、60℃で水洗、分液した。油層部分の水洗と分液を中性になるまで繰り返し、油層を5℃まで撹拌冷却して、結晶を析出させた。同温度においてさらに撹拌を実施し、結晶を析出させた後、結晶を濾別し、冷n−ヘプタンで洗浄、減圧乾燥して結晶性粉末状の化合物(1−1)235.6gを得た。得られた粉末をターボ工業製ローラーコンパクターで圧接力7.3MPaにて圧接、粉砕し造粒物を得た。得られた造粒物は120.5℃に吸熱ピークを有していた。この造粒物一粒の重量は、1.2mg/粒であった。粒度分布の結果を表1に示す。また、当該粉末は、激しく粉立ちした。
【0050】
(実施例1)
比較例1で得られた粉末状の化合物(1−1)を、容器内で140℃まで加熱撹拌して溶融させた後、化合物(1−1)の溶融物を、45℃に調整した水100重量部、グリセリン モノステアレート(花王株式会社製エレクトロストリッパーTS−5;HLB値3.8)0.5重量部との混合液中に滴下し、液中で15時間攪拌した。その後、水で洗浄し、漏斗を用いて濾過し、次いでギヤオーブンを用いて80℃にて乾燥することで、略球状の化合物(1−1)35重量部を得た。得られた粒状物質は、121.2℃に吸熱ピークを有していた。この粒状物質一粒の重量は、24.3mg/粒であった。当該粒状物質の粒度分布測定の結果を表1に示す。また、当該粒状物質は、全く粉立ちせず、取扱いが容易であった。
【0051】
【表1】

【0052】
(実施例2)
実施例1において、比較例1で得られた粉末状の化合物(1−1)を、容器内で140℃まで加熱撹拌して溶融させた後、化合物(1−1)の溶融物を、45℃に調整した水100重量部、ソルビタン モノステアレート(和光純薬SPAN60;HLB値4.7)0.5重量部との混合液中に滴下したこと以外は実施例1と同様にして、略球状の化合物(1−1)15重量部を得た。得られた粒状物質は、約121℃に吸熱ピークを有する。この粒状物質一粒の重量は、20.4mg/粒であった。得られた当該粒状物質は、実施例1と同様、全く粉立ちせず、取扱いが容易であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の製造方法によって得られる粒状物質は、粉立ちが少なく取扱いが容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)及び(ii)の工程を含むことを特徴とする式(1):

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示される化合物を含有する粒状物質の製造方法:
(i)式(1)で示される化合物を溶融する工程、
(ii)工程(i)で得られた溶融物を水中に滴下して、粒状物質を回収する工程。
【請求項2】
工程(ii)で用いられる水が、界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
界面活性剤のHLB値が、2〜6であることを特徴とする請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
工程(ii)が、20℃以上、かつ、式(1)で示される化合物の融点未満の温度範囲にて、溶融物の滴下物を保温することを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
得られる粒状物質1粒当りの重量が、5mg〜100mgであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。
【請求項6】
式(1)で示される化合物が、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート又は2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
【請求項7】
得られる粒状物質の形状が、円板状、略球状又は略半球状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−285380(P2010−285380A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141146(P2009−141146)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】