説明

粘度発現性を改良した増粘用組成物

【課題】水を含む目的物に少量添加し、速やかに粘性を発現する事が可能であり、消費者の作業時間を大幅に短縮できる増粘用組成物を提供すること。
【解決手段】キサンタンガム100重量部に対して、該キサンタンガムの粉末表面に金属塩が0.5重量部以上結着したキサンタンガムを含有することを特徴とする増粘用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含む目的物に添加して簡便に粘性を発現させる増粘用組成物に関わり、特に清涼飲料、たれ、ソース、ドレッシング、汁物、ムース、ゼリー等を簡便に増粘させる食品用途や、摂食障害により咀嚼・嚥下困難となった患者の食事等に少量添加して粘性を発現させる用途に適した粘度発現性を向上した増粘用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キサンタンガムは冷水可溶性で、得られた溶液は強いシュードプラスチック粘性を示す。この溶液はゲルに似た弱いネットワークを形成していると考えられ、そのため比較的低粘度で不溶性固形分や油脂の分散・乳化安定性に非常に優れている。また、耐熱・耐酸・耐凍結性に優れている。各種耐性が高いためキサンタンガムは食品・化粧品・薬品等様々な業界で使用されている。
【0003】
キサンタンガムを効果的に使用するためには、まず完全に水和させることが必要であり完全に水和して初めて粘度が発現する。一般消費者等がキサンタンガムを食品等に使用する際には、キサンタンガムの表面のみが溶解し、内部は粉末の状態で残る、いわゆる“ダマ”の状態になりやすく、ダマになったキサンタンガムは水和が不完全で、その機能を発揮できない状態になりやすい。
【0004】
キサンタンガムを水和した際、粘度の発現する速度は、キサンタンガムの粒径が細かくなるほど速く、粒径が大きくなるほど遅くなる傾向にある。また、粒径が細かいキサンタンガムは表面積が大きくなり、水に分散させる際顕著にダマになり易い性質となるため完全に水和させる為には分散溶解するための器具等が必要になる。このように、キサンタンガムを確実に分散・溶解させることは困難を伴う。
【0005】
通常キサンタンガムを水に分散・溶解する技術として、エタノールに分散し、水等の目的物に分散・溶解する技術や、ディスパー等の撹拌・溶解装置を用いて強く撹拌することでダマにならずに溶解する方法が知られている。これは、工業的に用いられる方法であり、ある程度の熟練が必要な上に、家庭等の設備がない環境下では困難であった。
【0006】
また、水溶性多糖類と乳化剤をバインダー溶液として顆粒化し溶解性を向上させる技術(例えば特許文献1)も発表されているが、投入方法によってはダマが発生し、また必ずしも簡単に溶解できるものではなく、さらに簡単に分散・溶解しすばやく所望の粘度が得られる組成物が要望されていた。
【特許文献1】特許第3186737号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、従来の粉末のようにダマになることがなく、また所望の粘度がすばやく発現する組成物が求められている。特に咀嚼・嚥下困難者の介護食や訓練食に粘性を与えるキサンタンガムとして、そのような特性が強く求められる。本発明は、水を含む目的物に少量添加し、速やかに粘性を発現する事が可能であり、消費者の作業時間を大幅に短縮できる増粘用組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような状況に鑑みキサンタンガムの粘度発現性の向上及び溶解性の改善に鋭意検討を行なった結果、キサンタンガムを溶解させる場合に、塩類濃度によって溶解が抑制する点に着目し、キサンタンガム表面に金属塩を結着すること、例えば金属塩溶液を噴霧・乾燥することによりキサンタンガムの表面が改質し表面の溶解が抑制されることで、キサンタンガムの水への分散性が著しく向上し、水に分散したキサンタンガムはすばやく粘性が発現することを発見した。この現象は、キサンタンガム表面に金属塩を結着することによるものと推定され、キサンタンガムに金属塩粉末を単に粉体混合する程度では粘度発現性の向上効果は見られない。
【発明の効果】
【0009】
キサンタンガムの粉体表面に金属塩を結着させることによりキサンタンガム表面の水濡れ性が改善され、水への分散性が著しく向上し、ピーク粘度への到達速度も著しく改善することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明には、食品添加物に認可されているキサンタンガムと、食品や医薬品等に添加することができる金属塩が用いられる。
【0011】
本発明におけるキサンタンガムとは、微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)がブドウ糖等を発酵して、その菌体外に蓄積した多糖類を精製し粉末にした天然のガム質である。
【0012】
本発明における金属塩とは、一般的に食品等に使用されるものでカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であれば特に限定するものではない。
【0013】
カリウム塩は、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、DL−酒石酸水素カリウム、L−酒石酸水素カリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸四カリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、グルコン酸カリウム、L−グルタミン酸カリウム、酢酸カリウム、臭化カリウム、臭素酸カリウム、硝酸カリウム、ソルビン酸カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であれば特に限定するものではないが、カリウム塩は特有の苦味を有することから後述する結着量となるように添加すればよい。
【0014】
ナトリウム塩は、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、臭化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、フマル酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であれば特に限定するものではない。
【0015】
カルシウム塩は、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、L−グルタミン酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、骨未焼成カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であれば特に限定するものではない。
【0016】
マグネシウム塩は、塩化マグネシウム、L−グルタミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上であれば特に限定するものではない。
【0017】
これらの中では、より溶解性が向上する観点より、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウムが好ましく、塩化カリウムがより好ましい。
【0018】
本発明における結着は、キサンタンガム粒子表面への金属塩の粒子結合状態をいい、キサンタンガム粒子表面に金属塩が結晶状態で粒子結合した状態で、すなわち、キサンタンガム表面に金属塩がバインダーとして結合、またはコーティング剤として結合している状態を含む。具体的には、60メッシュ上で30秒間振動させても粒子結合を維持している状態であり、振動により崩された60メッシュの篩をパスする微粉末が20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。なお、一般的なキサンタンガムや金属塩の粉末の粒子サイズは、各々60メッシュよりも細かいものであり、単にキサンタンガムと金属塩の粉末を混合した粉末を60メッシュで篩った場合、理論的には100%の粉末が篩を通過することになる。
【0019】
結着の方法として特に限定するものではないが、キサンタンガムと金属塩粒子を湿潤することにより結着させ乾燥する方法や、金属塩溶液をキサンタンガム粉末に均一噴霧し乾燥する方法等が挙げられ、キサンタンガム粒子表面へ金属塩を均一に結着させることができる点でキサンタンガムに金属塩溶液を噴霧後流動乾燥することが好ましい。流動乾燥の方法については特に限定するものではないが、金属塩1から20重量%水溶液をバインダーとして噴霧後流動乾燥することが望ましい。金属塩の結着量は金属の価数に関係なく、本発明の組成物に含有されるキサンタンガムはキサンタンガム100重量部に対して金属塩が0.5重量部以上結着しているが、0.5重量部未満では金属塩の結着量が少なく、粘度発現が促進されない。また、10重量部を越えると粒子の吸湿性が高くなるために、粘度発現が遅くなる。これらの観点から、キサンタンガム100重量部に対して金属塩が0.5重量部以上10重量部以下結着していることが好ましく、0.5重量部以上7重量部以下結着していることがより好ましい。また、金属塩がカリウム塩である場合は、カリウム塩が特有の苦味を有する観点から、キサンタンガム100重量部に対してカリウム塩が0.5重量部以上10重量部以下結着していることが好ましく、0.5重量部以上7重量部以下結着していることがより好ましい。
【0020】
本発明におけるピーク粘度とは、キサンタンガムが理想的な状態で分散・溶解した際に発する粘度数値のことである。具体的にはキサンタンガムの一定量を水一定量に分散溶解させた際、キサンタンガムを水に投入した直後から時間の経過とともに粘度は上昇する傾向がみられるが、この上昇傾向は一定時間経過後認められなくなり、その時の粘度をピーク粘度とした。例えば、キサンタンガム1gを20℃の水99gに添加し、一定時間攪拌後(30秒間、600r/min)静置させると、粘度は上昇を開始し30分程度経過時に一定粘度で安定化する。この粘度をピーク粘度と称した。本発明では、金属塩の結着したキサンタンガムを用いた場合にピーク粘度の90%以上に達するまでの所要時間が添加後2分以内であり、ピーク粘度の90%以上に達するまでの所要時間が添加後10分以上かかる表面処理をしていない顆粒キサンタンガムと比較すると、実際に消費者が手撹拌でトロミ剤を調製した場合の作業時間は大幅に短縮される。また、金属塩の結着したキサンタンガムと、表面処理をしていない顆粒キサンタンガムとを比較すると、ダマにならずに分散・溶解するため、すばやく粘度が発現する事実を実感することが可能となる。
【0021】
本発明の増粘用組成物は、金属塩が結着した改質キサンタンガムを含有するものであれば特に限定するものではないが、例えばグアーガム、酵素分解グアーガム、カラギナン、カラヤガム、CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、加工澱粉、デキストリンより選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。使用されるデキストリンは特に限定されるものではないが、分散性の観点からDE(Dextrose Equivalent)が6から30が好ましく、6から25がより好ましい。
【0022】
また、本発明は、前記増粘用組成物を含有する飲食品を提供する。飲食品としては、本発明の増粘用組成物を含有していれば、特に限定されるものではなく、また、その含有量も特に限定されるものではない。飲食品は、当業者に公知の製造方法により、本発明の増粘用組成物を適宜加えて製造することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。また、実施例及び比較例で使用したキサンタンガムは、100g中、塩類としてカリウム1000mg、ナトリウム2400mg、カルシウム60mg、マグネシウム40mgを含有するものである。
【0024】
実施例1
<バインダー溶液の調製>
50℃のイオン交換水95gに塩化カリウム5gを撹拌溶解し、塩化カリウム溶液を調製した。
【0025】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gを流動状態に調整し、塩化カリウム溶液50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物94.3gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は41gであり、かさ比重は0.41g/mLであった。また、得られた顆粒20gを内径150mmの60メッシュJIS標準篩上で30秒間振動(OCTAGON200型、(株)飯田製作所製、振動幅2〜3mm、3600回/分)させ粒子の結着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中2.04gであり、結着度の低いキサンタンガムと塩化カリウムの割合は10.2重量%であった。残る89.8重量%は結着していることが確認された。一方、原子吸光光度法で、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのカリウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には1600mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には1600mg(キサンタンガム中に含まれるカリウム塩1000mgを差し引くと結着しているカリウム塩の量は600mgであり、キサンタンガム100重量部に対し0.6重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には1600mgのカリウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物にはカリウムが均一に結着していることが確認された。
【0026】
実施例2
<バインダー溶液の調製>
50℃のイオン交換水95gに塩化ナトリウム5gを撹拌溶解し、塩化ナトリウム溶液を調製した。
【0027】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gを流動状態に調整し、塩化ナトリウム溶液50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物93.4gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は46gであり、かさ比重は0.46g/mLであった。また、得られた顆粒20gについて、実施例1と同様にして、結着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中2.26gであり、結着度の低いキサンタンガムと塩化ナトリウムの割合は11.3重量%であった。残る88.7重量%は結着していることが確認された。一方、原子吸光光度法で、実施例1と同様に、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのナトリウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には3400mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には3400mg(キサンタンガム中に含まれるナトリウム塩2400mgを差し引くと結着しているナトリウム塩の量は1000mgであり、キサンタンガム100重量部に対し1.0重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には3400mgのナトリウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物にはナトリウムが均一に結着していることが確認された。
【0028】
実施例3
<バインダー溶液の調製>
50℃のイオン交換水95gに乳酸カルシウム5gを撹拌溶解し、乳酸カルシウム溶液を調製した。
【0029】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gを流動状態に調整し、乳酸カルシウム溶液50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物92.8gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は48gであり、かさ比重は0.48g/mLであった。また、得られた顆粒20gについて、実施例1と同様にして、結着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中2.45gであり、結着度の低いキサンタンガムと乳酸カルシウムの割合は12.3重量%であった。残る87.7重量%は結着していることが確認された。一方、原子吸光光度法で、実施例1と同様に、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのカルシウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には600mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には600mg(キサンタンガム中に含まれるカルシウム塩60mgを差し引くと結着しているカルシウム塩の量は540mgであり、キサンタンガム100重量部に対し0.54重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には600mgのカルシウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物にはカルシウムが均一に結着していることが確認された。
【0030】
実施例4
<バインダー溶液の調製>
50℃のイオン交換水95gに塩化マグネシウム5gを撹拌溶解し、塩化マグネシウム溶液を調製した。
【0031】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gを流動状態に調整し、塩化マグネシウム溶液50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物91.1gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は49gであり、かさ比重は0.49g/mLであった。また、得られた顆粒20gについて、実施例1と同様にして、着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中2.51gであり、結着度の低いキサンタンガムと塩化マグネシウムの割合は12.6重量%であった。残る87.4重量%は結着していることが確認された。一方、原子吸光光度法で、実施例1と同様に、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのマグネシウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には600mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には600mg(キサンタンガム中に含まれるマグネシウム塩40mgを差し引くと結着しているマグネシウム塩の量は560mgでありキサンタンガム100重量部に対し0.56重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には600mgのマグネシウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物にはマグネシウムが均一に結着していることが確認された。
【0032】
比較例1
実施例1と同様の条件で塩化カリウム溶液をイオン交換水に代替し比較品を調製した。
【0033】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gと実施例1の塩化カリウムと同量の塩化カリウムの粉末2.5gを流動状態に調整し、イオン交換水50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物92gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は45gであり、かさ比重は0.45g/mLであった。また、得られた顆粒20gについて、実施例1と同様にして、結着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中4.18gであり、結着度の低いキサンタンガムと塩化カリウムの割合は20.9重量%であった。一方、原子吸光光度法で、実施例1と同様に、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのカリウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には1600mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には1400mg(キサンタンガム中に含まれるカリウム塩1000mgを差し引くと結着しているカリウム塩の量は400mgであり、キサンタンガム100重量部に対し0.4重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には2500mgのカリウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物には均一にカリウムが結着していないことから、結着の弱い塩化カリウムが過剰に60メッシュを通過することが確認された。
【0034】
比較例2
実施例2と同様の条件で塩化ナトリウム溶液をイオン交換水に代替し比較品を調製した。
【0035】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gと実施例2の塩化ナトリウムと同量の塩化ナトリウムの粉末2.5gを流動状態に調整し、イオン交換水50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物91.5gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は49gであり、かさ比重は0.49g/mLであった。また、得られた顆粒20gについて、実施例2と同様にして、結着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中4.25gであり、結着度の低いキサンタンガムと塩化ナトリウムの割合は21.3重量%であった。一方、原子吸光光度法で、実施例2と同様に、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのナトリウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には3400mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には2600mg(キサンタンガム中に含まれるナトリウム塩2400mgを差し引くと結着しているナトリウム塩の量は200mgであり、キサンタンガム100重量部に対し0.2重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には6200mgのナトリウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物には均一にナトリウムが結着していないことから、結着の弱い塩化ナトリウムが過剰に60メッシュを通過することが確認された。
【0036】
比較例3
実施例3と同様の条件で乳酸カルシウム溶液をイオン交換水に代替し比較品を調製した。
【0037】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gと実施例3の乳酸カルシウムと同量の乳酸カルシウムの粉末2.5gを流動状態に調整し、イオン交換水50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物90.8gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は49gであり、かさ比重は0.49g/mLであった。また、得られた顆粒20gについて、実施例3と同様にして、結着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中4.38gであり、結着度の低いキサンタンガムと乳酸カルシウムの割合は21.9重量%であった。一方、原子吸光光度法で、実施例3と同様に、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのカルシウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には600mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には400mg(キサンタンガム中に含まれるカルシウム塩60mgを差し引くと結着しているカルシウム塩の量は340mgであり、キサンタンガム100重量部に対し0.34重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には1200mgのカルシウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物には均一にカルシウムが結着していないことから、結着の弱い乳酸カルシウムが過剰に60メッシュを通過することが確認された。
【0038】
比較例4
実施例4と同様の条件で塩化マグネシウム溶液をイオン交換水に代替し比較品を調製した。
【0039】
<噴霧工程>
キサンタンガム100gと実施例4の塩化マグネシウムと同量の塩化マグネシウムの粉末2.5gを流動状態に調整し、イオン交換水50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物90.5gを得た。容量100mLの容器にすりきり1杯組成物を充填し、充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は49gであり、かさ比重は0.49g/mLであった。また、得られた顆粒20gについて、実施例4と同様にして、結着度合いを確認した結果、60メッシュを通過した粉末は20g中4.2gであり、結着度の低いキサンタンガムと塩化マグネシウムの割合は21.0重量%であった。一方、原子吸光光度法で、実施例4と同様に、流動乾燥後の顆粒、60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末、それぞれのマグネシウム含量を測定した。結果、キサンタンガム100gに対して、流動乾燥後の顆粒には600mg、60メッシュの篩上に残存した顆粒には400mg(キサンタンガム中に含まれるマグネシウム塩40mgを差し引くと結着しているマグネシウム塩の量は360mgであり、キサンタンガム100重量部に対し0.36重量部の結着量である)、60メッシュを通過した粉末には1300mgのマグネシウムが各顆粒及び粉末中に含有されており、上記キサンタンガム組成物には均一にマグネシウムが結着していないことから、結着の弱い塩化マグネシウムが過剰に60メッシュを通過することが確認された。
【0040】
試験例1
低回転ディスパー(特殊機化工業製)を使用し、20℃のイオン交換水99gに対して、実施例1及び比較例1で得られた顆粒1gを600r/minで撹拌中に一気に投入し30秒間撹拌を続けた。その後、静置して2分、5分、10分、30分経過時点の粘度をB形粘度計(東京計器製:回転速度12r/min、30秒後、No.3ローター)で測定した。測定結果は、30分後の粘度測定結果を100%として“測定結果÷30分後の粘度×100”で粘度到達率の100分率で表した。実施例1〜4及び比較例1〜4の測定結果を表1に、粘度到達率を図1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1〜4ではキサンタンガムと金属塩の結着度合が高く、キサンタンガム粉末表面が改質されている割合が高い為水への分散性が優れ、弱い撹拌条件でもダマの発生が無く均一に分散・溶解しすばやく粘度が発現した。比較例1〜4では金属塩の結着度合いが低く、キサンタンガム粉末表面が改質されている割合が低い為分散性が劣り、攪拌時にダマが発生し30分経過後にほぼピーク粘度に達する程度であった。
【0043】
試験例2[飲食品への使用例]
実施例1〜3で調製したキサンタンガム組成物を用い、表2に示した配合で実施例5〜7のフレンチドレッシングを調製した。全ての実施例において、各種の原料を簡単に混ぜ合わせることで混合後すぐに粘性が発現・安定し、溶解30分経過後も粘度の変化は認められなかった。
【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、キサンタンガムの溶解にかかる時間を著しく短縮したことに加え、従来熟練を要した溶解作業を、家庭等で特別の技術、設備を必要とせずに溶解できる事を可能にした発明である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1〜4及び比較例1〜4についての粘度到達割合を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンタンガム100重量部に対して、該キサンタンガムの粉末表面に金属塩が0.5重量部以上結着したキサンタンガムを含有することを特徴とする増粘用組成物。
【請求項2】
結着の方法がキサンタンガムに金属塩溶液を噴霧後流動乾燥することを特徴とする請求項1記載の増粘用組成物。
【請求項3】
金属塩の結着量が0.5重量部以上10重量部以下である請求項1または2記載の増粘用組成物。
【請求項4】
請求項1から3いずれかにおいて記載の金属塩の結着したキサンタンガムを、20℃のイオン交換水99重量部に対して1重量部添加した際に、ダマにならずに分散・溶解し添加後2分でピーク粘度の90%以上に達することを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の増粘用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の増粘用組成物を含有することを特徴とする飲食品。


【図1】
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【公開番号】特開2008−43249(P2008−43249A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221951(P2006−221951)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【特許番号】特許第3930897号(P3930897)
【特許公報発行日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】