説明

粘性液状物のためのガン式ディスペンサ

【課題】複数の押出口から等しい分量の粘性液状物を同時に押し出すことができるように改良されたガン式ディスペンサを提供する。
【解決手段】パウチPに開口を形成する切断刃13と押出口を有した閉鎖部材14との間ま閉鎖部材14に到達するがない。そして、第2の滞留部Sに移動して滞留している粘性液状に介装されている仕切部材30は、パウチPの開口から押し出された粘性液状物の流れを一旦せき止めて第1の滞留部S1に滞留させるので、粘性液状物の偏った流れA,Bがそのま物は、その圧力上昇に伴って複数の押出口から均等に押し出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヨネーズやケチャップ、からし等の粘性液状物を所定量ずつ押し出すために用いるガン式ディスペンサに関し、より詳しくは、ガン式ディスペンサに設けられている複数の押出口から等しい分量の粘性液状物を同時に押し出すことができるように改良する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンバーガーやピザ等のファーストフード店あるいはファミリーレストラン等の厨房においては、マヨネーズ、ケチャップ、からし等の各種クリーム類、又はこれらの各種クリーム類に玉ねぎ、パプリカ等の野菜や、ゆで卵の細片、香辛料等を予め調合する等して容器に密封充填した粘性液状食材が重用されている。
そして、このような粘性液状食材を効率的にかつ所定量ずつ取り出すために、ガン式ディスペンサが広く用いられている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、下記特許文献1に記載されているガン式ディスペンサは、その明細書の第1図および第2図に描かれているような特殊形状の容器を用いるものであるため、容器のコストがかさむという経済的な問題があった。
また、このような容器をその第4図に描かれているガン状押出器の収容部にセットした後、各容器の先端に螺合しているキャップを取り外し、あるいは容器の先端に嵌合している栓を切断して除去する必要があるため、その作業が繁雑であるばかりでなく、除去の際に粘性液状食材が指先、切断用のはさみ、カッタ等に付着し易く、作業場を汚して不衛生になるという問題があった。
【0004】
そこで、本願発明の発明者らは、本願明細書の図23および図24に示したようなガン式ディスペンサを開発し先に特許出願している(特願2006−107929号)。
【0005】
このガン式ディスペンサのガン本体1は、略半円形断面の湾曲部材2の前後端にそれぞれ環状の端部材3a,3bを同軸に固定して形成した凹状の保持部4を有している。
また、後側の端部材3aに取り付けられた固定ハンドル5には、前後の端部材3a,3bと同軸に延びるロッド6が前後動自在に支持されており、かつこのロッド6の先端にはピストン7が取り付けられている。
これにより、固定ハンドル5と、この固定ハンドル5に支軸8を介して揺動自在に支持されている可動ハンドル9とを一体に握ると、ロッド6に形成されているラック6aと可動ハンドル9とが係合してロッド6およびピストン7が所定距離ずつ前進し、粘性液状食材が密封充填されているパウチPを押出口に向かって押動することができる。
【0006】
また、保持部4に保持される収容手段10は、円筒状の筒状体11と、この筒状体11の先端に螺合する固定部材12と、この固定部材12によって筒状体11の先端開口部分に固定される切断刃13および複数の押出口が形成された円板状のフィルム部材14とを有している。
【0007】
これにより、パウチPを筒状体11の内部に挿入した後に、可動ハンドル9を操作してピストン7を前進させると、ピストン7によって前方に押動されたパウチPの前端が切断刃13の切れ刃に当接して切開され、パウチPに充填されている粘性液状食材を取り出すための開口が自動的に形成される。
そして、可動ハンドル9を操作してピストン7をさらに前進させると、パウチPに充填されている粘性液状食材が前方に押し出され、筒状体11の前端内部に形成されている流路Sを介してフィルム部材14に到達し、このフィルム部材14にスリット状に形成されている複数の押出口から外側に押し出すことができる。
【0008】
すなわち、この先願のガン式ディスペンサは、粘性液状食材を密封充填する容器として一般に市販されている安価な袋状の平パウチを用いることができるものであるため、前述した経済的な問題を解消することができる。
また、パウチPの前端を切開して開口を形成する切断刃13を内蔵しているので、パウチPの前端を切り取る作業が不要であり、粘性液状食材が周囲に付着して不衛生になることもない。
【0009】
【特許文献1】特許第2944116号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した先願のガン式ディスペンサにおいては、可動ハンドル9を操作してパウチPを前方に押動すると、パウチPの前端が切断刃13の切れ刃に当接して切開され、粘性液状食材を取り出すための開口が自動的に形成される。
ところが、切断刃13によってパウチPの前端に形成された開口は、連続するパウチPの押動やパウチPの変形に起因して、切断刃13の一端側に偏ってずれる場合がある。
【0011】
この場合、パウチPの開口から押し出される粘性液状食材の流れは、図24中に大小の矢印A,Bで示したように、粘性液状食材の流路Sの軸線に対して半径方向外側に偏ることになる。
すると、図24中に大小の矢印C,Dで示したように、フィルム部材14に形成されている複数の押出口から押し出される粘性液状食材の量にも偏りが生じ、等しい分量の粘性液状物を同時に押し出すことができない場合があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、複数の押出口から等しい分量の粘性液状物を同時に押し出すことができるように、先願のガン式ディスペンサをさらに改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
その複数の押出口から粘性液状物を所定量ずつ同時に押し出すためのガン式ディスペンサであって、
前記粘性液状物が密封充填されている袋を収容する筒状の収容部と、
前記収容部に収容された前記袋を前記押出口に向かって押動するピストンと、
前記ピストンを前記押出口に向かって所定距離ずつ前方に変位させる変位手段と、
前記袋の前端部に当接して前記袋を切開し、前記粘性液状物を取り出すための開口を形成する開口形成手段と、
前記開口から押し出された前記粘性液状物の流路の前端を閉鎖する、前記複数の押出口を有した閉鎖部材と、
前記切開手段と前記閉鎖部材との間の前記流路を前記切開手段の側の第1の滞留部と前記閉鎖部材の側の第2の滞留部とに仕切るとともに、前記第1および第2の滞留部を連通させる連通孔を有している仕切部材と、を備えることを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明のガン式ディスペンサは、上述した先願のガン式ディスペンサに対し、その開口形成手段(切断刃)と閉鎖部材(フィルム部材)との間に仕切部材を追加した構成となっている。
この仕切部材は、パウチの開口から押し出された粘性液状物の流れを一旦せき止めて、開口形成手段の側の第1の滞留部に滞留させるので、粘性液状物の偏った流れがそのまま閉鎖部材に到達することを防止できる。
そして、ピストンによるパウチの連続した押動によって第1の滞留部に滞留している粘性液状物の圧力が高まると、この粘性液状物は仕切部材に設けられている連通孔を介して閉鎖部材の側の第2の滞留部に移動する。
このとき、仕切部材に設けられている連通孔は、粘性液状物の流路の軸線と同軸にあるいはその近傍に配設されているから、第2の滞留部に向かう粘性液状物は流路の軸線と同軸にあるいはこの軸線に沿って移動することになり、第2の滞留部に対して偏った状態で移動することがない。
また、連通孔を介して第2の滞留部に移動する粘性液状物の量は、ピストンの所定距離ずつの移動に合わせて一定な量となる。
そして、第2の滞留部に滞留して充満している粘性液状物は、ピストンによるパウチの押動によってその圧力が高まると、閉鎖部材に設けられている複数の押出口から均一に押し出されるから、等しい分量の粘性液状物を同時に押し出すことが可能となる。
【0015】
このとき、仕切部材は、パウチから押し出された粘性液状物の流路の軸線に対して垂直に延びる平板として形成することができる。
さらに、この仕切部材には、開口形成手段の形状に応じて、流路の軸線と同軸な段差部やテーパ部を設けることもできる。
【0016】
また、仕切部材に設ける連通孔は、流路の軸線と同軸に配設された単一の孔とすることもできるし、流路の軸線の近傍に配設された複数の孔とすることもでき、さらには格子状に形成することもできる。
また、連通孔の孔の形状は円形には限定されず、閉鎖部材に設ける複数の押出口の配置に合わせて四角形や三角形とすることもできる。
【0017】
なお、仕切部材に設ける連通孔の総断面積は、粘性液状物の流路の断面積の10〜80%の大きさに設定することが好ましい。
これは、80%を超えると、仕切部材による粘性液状物の流れの制御が不十分となり、粘性液状物を第1の滞留部に滞留させることが困難になるからである。
また、10%未満にすると、ピストンを前進させてパウチから粘性液状物を押し出すために大きな力を必要とし、作業効率が低下するからである。
【0018】
また、閉鎖部材に設ける複数の押出口は、仕切部材に設けられている連通孔の外周線よりも半径方向外側に位置するように配設することが好ましい。
さらに好ましくは、複数の押出口が流路の軸線に対して半径方向に等しい距離となるように配設する。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、複数の押出口から等しい分量の粘性液状物を同時に押し出すことができるように改良されたガン式ディスペンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1乃至図22を参照し、本発明に係る粘性液状物のためのガン式ディスペンサの各実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分には同一の符号を用いて重複する説明を省略するとともに、粘性液状物を押し出す方向を前方と言う。
【0021】
第1実施形態
まず最初に図1〜図5を参照し、第1実施形態のガン式ディスペンサについて詳細に説明する。
【0022】
図1に示したガン式ディスペンサ100におけるガン本体1は、先に説明した図23に示したものと同一であるのでその説明は省略する。
【0023】
粘性液状食材(粘性液状物)が密封充填されているパウチPをその内側に収容する収容手段20は、図24に示した収容手段10とは異なり、パウチPを収容する円筒状の筒状体21と、この筒状体21の先端に外嵌する環状部材22とに分離している(図2および図3を参照)。
【0024】
筒状体21は、円筒状の本体部分21aと、その先端に垂設されたフランジ21bとを有し、その前端には開口21cが設けられている。
環状部材22は、筒状体21の前端に外嵌する筒状部分22aと、その筒状部分22aの前端に連接された雄ねじ部分22bと、この雄ねじ部分22bの内周に設けられた固定部22cとを有している。
なお、この固定部22cの内側は、パウチPから押し出された粘性液状食材が移動する流路Sとなる。
【0025】
切断刃13は、側面視でL字形の両端部13aと、パウチPに向かって後方に突出する側面視で「く」字形、言い換えるとブーメラン形の刃部分13bとを有している。
そして、この刃部分13bは、パウチPに向かって後方に突出する尖端13cと、この尖端13cの両側の2辺にそれぞれ形成されてパウチPに対向する鋭利な切れ刃13dとを有している。
さらに、切れ刃13dの裏側、言い換えると刃部分13bの前側で流路Sに臨む部分には三角形状の空隙(空間)13eが存在している。
なお、この切断刃13は、ステンレス等の金属や、硬質ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料から製作することができる。
【0026】
仕切部材30は、有底円筒状の本体部分31と、その外周に立設されたフランジ部32とを有しており、本体部分31の円板状の底壁には連通孔33が同軸に貫設されている。 この仕切部材もまた、ステンレス等の金属や、硬質ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料から製作することができる。
【0027】
閉鎖部材14は、ポリエチレンやナイロン等の樹脂の薄板から円板状に成形したもので、粘性液状食材を押し出すための、スリットを組み合わせて形成した3つの押出口14aを有している。
なお、これらの押出口14aは、図4に示したように、連通孔33の外周縁よりも半径方向外側に、かつ流路Sの軸線から半径方向に等距離に位置するように配設されている。
【0028】
このような構成により、環状部材22の雄ねじ部分22bをガン本体1の前側の端部材3bに挿通した後、切断刃13,仕切部材30、閉鎖部材14を環状部材22の固定部分22cに取り付け、固定部材23の雌ねじ部分23aを雄ねじ部分22bに螺合させて締め付けると、これらの部材をガン本体1に対し一体に固定することができる。
このとき、図5に示したように、環状部材22の前端内部に形成される流路Sには、仕切部材30の切断刃13の側の第1の滞留部S1と、閉鎖部材14の側の第2の滞留部S2とがそれぞれ形成される。
【0029】
また、筒状体21と環状部材22とが分離しているので、粘性液状食材が密封充填されている新品のパウチPをガン本体1に装着する際には、この新品のパウチPを筒状体21に挿入した後、筒状体21をガン本体1の凹状の保持部4にはめ込み、その前端を環状部材22の筒状部分22aに挿入すれば良い。
このとき、筒状体21の前端と環状部材22との間の隙間から両者の内部に存在している空気が流出するので、環状部材22および固定部材23の内部に残留している粘性液状食材が空気の圧力によって不用意に前方に押し出されて漏れ出ることがない。
【0030】
なお、パウチP内の粘性液状食材の全量を押し出したときには、空になったパウチPと筒状体21とを一体に環状部材22の筒状部分22aから取り外した後、空になったパウチPを筒状体21から容易に取り出すことができる。
このとき、筒状体21の内周面には粘性液状食材が付着しにくく、かつ付着しても容易に洗浄することができるから、衛生的に作業を行うことができる。
【0031】
新品のパウチPを装着した後、ガン本体1の可動ハンドル9を操作してピストン7を前進させると、ピストン7によって前方に押動されたパウチPの前端が切断刃13の切れ刃13dに当接し、粘性液状食材を取り出すための開口が形成される。
このとき、図5に拡大して示したように、切断刃13のうちパウチPに向かって後方に突出する「く」字形の刃部分13bの尖端13cがパウチPに突き刺さった状態となり、かつパウチPの袋体の前端が刃部分13bの前側の空隙(空間)13eに位置するので、粘性液状食材を取り出すための開口が閉塞することはない。
これにより、パウチPに充填されている粘性液状食材を確実に取り出すことができる。
【0032】
ところで、切断刃13によってパウチPの前端に形成された開口は、連続するパウチPの押動やパウチPの袋体の変形に起因し、切断刃13の一端側にずれる場合がある。
この場合、パウチPの開口から押し出される粘性液状食材の流れは、図5中に大小の矢印A,Bで示したように、粘性液状食材の流路の軸線に対して半径方向外側に偏る。
しかしながら、本第1実施形態のガン式ディスペンサ100においては、パウチPの開口から前方に押し出された粘性液状食材の流れが、仕切部材30によって一旦せき止められて第1の滞留部S1に滞留する。
これにより、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れがそのまま閉鎖部材14に到達することを防止できる。
【0033】
そして、ピストン7によるパウチPの押動により、第1の滞留部S1内に滞留している粘性液状食材の圧力が高まると、この粘性液状食材は仕切部材30に設けられている連通孔33を介して閉鎖部材14の側の第2の滞留部S2に順次移動する。
このとき、仕切部材30に設けられている連通孔33は、粘性液状食材の流路Sの軸線と同軸に配設されているから、第2の滞留部S2に向かう粘性液状食材は流路Sの軸線と同軸に移動することになり、第2の滞留部S2に対して偏った状態で移動することがない。
【0034】
また、連通孔33を介して第2の滞留部S2に移動する粘性液状食材の量は、ピストン7の所定距離ずつの前進に応じて一定量となる。
したがって、第2の滞留部S2に滞留して充満している粘性液状食材は、ピストン7によるパウチPの押動に伴ってその内部の圧力が高まる毎に、図5中に矢印Eで示したように、閉鎖部材14に設けられている複数の押出口14aのそれぞれから等しい分量でかつ同時に押し出されることになる。
【0035】
なお、本第1実施形態のガン式ディスペンサ100における仕切部材30は、粘性液状食材の流路Sの軸線と同軸な単一の連通孔33を有している。
これに対して、図6に示した仕切部材34のように連通孔35を格子状に形成することもできるし、図7に示した仕切り部材36のように複数の円形孔37の組み合わせから形成することもできる。
ただし、このような連通孔35,37は、図5中に大小の矢印A,Bで示したような粘性液状食材の偏った流れを一旦せき止めて、第1の滞留部S1に滞留させる機能を持つように、その各部の寸法が設定されなければならない。
【0036】
次に、図8〜図12を参照し、本第1実施形態のガン式ディスペンサ100の変形例について説明する。
【0037】
第1変形例
図8に示した第1変形例のガン式ディスペンサ110においては、その仕切部材38の中央部分38aが切断刃13に向かって後方に先細りな円錐テーパ状に形成され、その先端に連通孔38bが貫設されている。
この場合も、仕切部材38の切断刃13の側には第1の滞留部S1が形成され、閉鎖部材14の側には第2の滞留部S2がそれぞれ形成される。
さらに、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bは、仕切部材38によって一旦せき止められた後、中央部分38aのテーパ面に案内されつつパウチPに向かって逆流し、それから連通孔38bに入り込む。
これにより、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bを、仕切部材38の中央部分に確実に案内することができる。
【0038】
第2変形例
図9に示した第2変形例のガン式ディスペンサ120においては、その仕切部材39の中央部分が切断刃13に向かって突出する有底円筒状の段差部39aとして形成され、その底壁部分に連通孔39bが貫設されている。
この場合も、仕切部材39の切断刃13の側に第1の滞留部S1が形成され、閉鎖部材14の側に第2の滞留部S2がそれぞれ形成される。
さらに、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bは、仕切部材39によって一旦せき止められた後、段差部39aの外周円筒壁に邪魔されつつ、パウチPに向かって逆流してから連通孔39bに入り込む。
これにより、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bを、仕切部材39の中央部分に確実に案内することができる。
【0039】
第3変形例
図10に示した第3変形例のガン式ディスペンサ130においては、仕切部材40が押出方向前方に突出する有底円筒状に形成され、その底壁40aに連通孔40bが貫設されている。
また、閉鎖部材50もまた押出方向前方に向かって突出する有底円筒状に形成され、その底壁50aに3つの押出口が形成されている。
これにより、仕切部材40の切断刃13の側に第1の滞留部S1が形成され、閉鎖部材50の側に第2の滞留部S2がそれぞれ形成されるが、第1の滞留部S1の容積は前述したものよりも大きくなっている。
これにより、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bは、第1の滞留部S1に滞留している多量の粘性液状食材によってせき止められるので、偏った流れのまま連通孔40bに入り込むことを防止できる。
【0040】
第4変形例
図11に示した第4変形例のガン式ディスペンサ140においては、仕切部材41の中央部分のほぼ全体が押出方向前方に突出する円錐テーパ状に形成され、そのテーパ面41aの先端に連通孔41bが貫設されている。
また、閉鎖部材51は押出方向前方に向かって突出する有底円筒状に形成され、その底壁51aに3つの押出口が形成されている。
これにより、仕切部材41の切断刃13の側に第1の滞留部S1が形成され、閉鎖部材50の側に第2の滞留部S2がそれぞれ形成されるが、第1の滞留部S1の容積は前述したものよりも大きくなっている。
これにより、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bは、第1の滞留部S1に滞留している多量の粘性液状食材によってせき止められた後、仕切部材41のテーパ面41aによって案内されつつ仕切部材41の中央部に向かい、流路Sと同軸な連通孔41bを介して第2の滞留部S2に流入するから、偏った流れA,Bのまま第2の滞留部S2に入り込むことを防止できる。
【0041】
第5変形例
次に図12を参照し、第5変形例のガン式ディスペンサについて説明する。
上述した第1実施形態においては、ガン本体1の保持部4にパウチPを収容する収容手段20が、パウチPを収容する円筒状の筒状体21と、この筒状体21の先端に外嵌する環状部材22とに分離されていた。
これに対して、図12に示した本第5変形例のガン式ディスペンサ150のように、環状部材と一体化させた筒状体25を用いることもできる。
この場合には、円筒状の本体部分25aと雄ねじ部分25bとの境界部分の付近に、複数の空気抜き用の孔25cを貫設することが好ましい。
これは、新しいパウチPを本体部分25aの内部に挿入すると、これらの孔25cを介して本体部分25aの内部の空気が排出され、仕切部材30の部分に残留している粘性液状食材が空気の圧力によって前方に押し出されることがないからである。
【0042】
次に図13〜図17を参照しつつ、切断刃の変形例について説明する。
【0043】
上述した第1実施形態のガン式ディスペンサ100、およびその変形例のガン式ディスペンサ110〜150は、いずれもその刃部分がブーメラン形の切断刃13を用いている。
しかしながら、本発明のガン式ディスペンサに用いる切断刃の形状は、刃部材の押出方向前側に空隙(空間)を設けることができる限りにおいて様々に変更することができる。 これは、刃部材の押出方向前側に空隙(空間)が存在すれば、パウチPの押動に伴ってその袋体に発生した撓み部が前方に変位しても、この空隙(空間)の全てを塞ぐことにはならず、パウチPの前端の開口から取り出された粘性液状食材がこの空隙(空間)を通って前方に移動し、押出口に到達できるからである。
【0044】
例えば、図13に示した切断刃60は、パウチPに向かって押出方向後方に山形に突出する刃部分60aを有しており、粘性液状食材の流路Sの軸線に対して垂直にかつ直線状に延びる切れ刃60bを有しているが、その裏側(押出方向前側)には空隙(空間)60cが形成されている。
また、図14に示した切断刃61のように、その刃部分61aを3つ叉状に形成することもできるが、その切れ刃61bの裏側には空隙(空間)60cが形成されている。
すなわち、これらの切断刃60,61においては、切断刃13と同様に、流路Sの中央部分に空隙(空間)が形成される。
【0045】
さらに、図15に示した切断刃62においては、その刃部分62aが粘性液状食材の流路Sの軸線に対して垂直にかつ直線状に延びるように形成されているが、L字形に形成された両端部62bによって、その切れ刃62cの裏側に空隙(空間)62dが形成されている。
加えて、図16に示した切断刃63のように、その刃部分63aを4つ叉状に形成することもできるが、L字形に形成された両端部63bによって、その切れ刃63cの裏側に空隙(空間)63dが形成されている。
すなわち、これらの切断刃62,63においても、流路Sの直径方向に延びる空隙(空間)が形成される。
【0046】
さらにまた、図17に示した切断刃64は、図13の切断刃60の形状を変更したもので、パウチに向かって押出方向後方に山形に突出する刃部分64aの先端に、粘性液状食材の流路Sの軸線に対して垂直に延びる突出部64bが連接されている。
そして、この連接部64bの先端に、流路Sの軸線に対して垂直に延びる切れ刃64cが形成されており、その裏側(押出方向前側)に空隙(空間)64dが形成されている。
【0047】
しかしながら、切断刃の特に好ましい形状は、平板から「く」字形に切り取った後にその尖端13cの両側の2辺に切れ刃13dをそれぞれ形成してなる、その尖端13cがパウチPに向かって後方に突出するブーメラン形の切断刃13である。
その理由は、切断刃13がこのような形状であると、筒状体21の内部で前方に押動されたパウチPの前端が、この切断刃13の尖端13cに当接して破断し開口が形成されるとともに、尖端部13cの裏側(前側)に三角形状の空隙(空間)13eが設けられていることにより、この開口が環状部材22の前端内部に形成された粘性液状食材の流路Sに対峙するからである。
【0048】
これにより、ピストン7によってパウチPを前方に押動するときに、パウチPの袋体に撓み部が発生して前方に変位しても、前述した三角形状の空隙(空間)13eの全てを塞ぐことにならないから、パウチPに封入されている粘性液状食材は、パウチPの前端に形成された開口からこの三角形状の空隙(空間)13eを通って前方に移動することができる。
また、パウチPの破断開口にこのブーメラン形状の切断刃13の尖端13cが突き刺さった状態となるので、筒状体21の内部でパウチPの袋体が捩れても、パウチPの開口と粘性液状食材の流路Sとが位置ずれすることはなく、パウチPから粘性液状食材を取り出せなくなることがない。
【0049】
第2実施形態
次に図18を参照し、第2実施形態のガン式ディスペンサについて説明する。
【0050】
本第2実施形態のガン式ディスペンサ200は、図15に示した切断刃62を用いるものであるが、それに合わせて仕切部材42が平坦な円板状に形成され、その中央部分に連通孔42aが貫設されている。
また、閉鎖部材52は押出方向前方に向かって突出する有底円筒状に形成され、その底壁52aに3つの押出口が形成されている。
この場合においても、仕切部材42の切断刃62の側には第1の滞留部S1が形成され、閉鎖部材52の側には第2の滞留部S2がそれぞれ形成されるので、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bがそのまま閉鎖部材52に到達することを防止できる。
【0051】
第3実施形態
次に図19を参照し、第3実施形態のガン式ディスペンサについて説明する。
【0052】
本第3実施形態のガン式ディスペンサ300においては、切断刃65の刃部分65aが押出方向前方に突出する「く」字形に形成されている。
そして、この刃部分65aのパウチPに対向する2辺に凹状の切れ刃65bがそれぞれ形成されている。
すなわち、この切断刃65においては、その両端部の側に空隙(空間)が形成されている。
これに伴い、仕切部材40は押出方向前側に突出する有底円筒状に形成され、その底壁40aに連通孔40bが貫設されている。
合わせて、閉鎖部材50は押出方向前方に向かってさらに突出する有底円筒状に形成され、その底壁50aに3つの押出口が形成されている。
この場合においても、仕切部材60の切断刃65の側には第1の滞留部S1が形成され、閉鎖部材50の側には第2の滞留部S2がそれぞれ形成されるので、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bがそのまま閉鎖部材50に到達することを防止できる。
【0053】
第4実施形態
次に図20を参照し、第4実施形態のガン式ディスペンサについて説明する。
【0054】
本第4実施形態のガン式ディスペンサ400は、第3実施形態と同様に、切断刃65の刃部分65aが押出方向前方に突出する「く」字形に形成されている。
これに伴い、仕切部材41は、その中央部分41aが押出方向前側に先細りな円錐テーパ状に形成され、その先端に連通孔41bが貫設されている。
合わせて、閉鎖部材51は押出方向前方に向かってさらに突出する有底円筒状に形成され、その底壁51aに押出口が形成されている。
この場合においても、仕切部材41の切断刃65の側に第1の滞留部S1が形成され、閉鎖部材51の側に第2の滞留部S2がそれぞれ形成される。
さらに、パウチPからの粘性液状食材の偏った流れA,Bが、仕切部材41のテーパ面に案内されてその中央部分の連通孔41bに向かうから、偏った流れA,Bがそのまま閉鎖部材51に到達することを防止できる。
【0055】
以上、本発明に係る粘性液状物のためのガン式ディスペンサの各実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、前述した第1実施形態のガン式ディスペンサ100においては、図4に示したように、その閉鎖部材14に3つの押出口14aが設けられているが、より多数の押出口を設けることができることは言うまでもない。
【0056】
なお、図21に示したように、パウチPは、粘性液状食材が密封充填されている部分71の隅角部71aが直角ではなく斜めに形成されていることが好ましい。
これは、図22に示した従来のパウチ72のように、この隅角部が直角に形成されていると、ガン式ディペンサの収容手段20に挿入するためにその本体部分73を握持したときに、その左右の隅角部73a,73bが角状に突出するようにその先端形状が変化し、筒状体21への挿入作業が困難になるからである。
【0057】
さらに、上述した各実施形態のガン式ディスペンサは、ファーストフード店やファミリーレストラン等の厨房において用いる粘性液状食材ばかりでなく、その他の粘性液状物の押出に用いることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態のガン式ディスペンサを示す要部断面側面図。
【図2】図1に示したガン式ディスペンサの要部を分解して示す断面側面図。
【図3】図2に示した構成部品を示す分解斜視図。
【図4】図1に示したガン式ディスペンサを押出口の側から見た側面図。
【図5】第1実施形態のガン式ディスペンサの作動を示す縦断面図。
【図6】仕切部材の第1変形例を示す正面図。
【図7】仕切部材の第2変形例を示す正面図。
【図8】第1実施形態のガン式ディスペンサの第1変形例を示す縦断面図。
【図9】第1実施形態のガン式ディスペンサの第2変形例を示す縦断面図。
【図10】第1実施形態のガン式ディスペンサの第3変形例を示す縦断面図。
【図11】第1実施形態のガン式ディスペンサの第4変形例を示す縦断面図。
【図12】第1実施形態のガン式ディスペンサの第5変形例を示す分解断面側面図。
【図13】第1変形例の切断刃を斜め前方から見た斜視図。
【図14】第2変形例の切断刃を斜め前方から見た斜視図。
【図15】第3変形例の切断刃を斜め前方から見た斜視図。
【図16】第4変形例の切断刃を斜め前方から見た斜視図。
【図17】第5変形例の切断刃を斜め前方から見た斜視図。
【図18】第2実施形態のガン式ディスペンサの作動を示す縦断面図。
【図19】第3実施形態のガン式ディスペンサの作動を示す縦断面図。
【図20】第3実施形態のガン式ディスペンサの変形例を示す断面側面図。
【図21】本発明のガン式ディスペンサに使用可能なパウチの構造を示す平面図。
【図22】従来のパウチにおける問題点を示す要部斜視図。
【図23】先願に係るガン式ディスペンサを示す要部断面側面図。
【図24】図23に示したガン式ディスペンサの作動を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0059】
P パウチ
1 ガン本体
7 ピストン
10 収容手段
13,60,61,62,63,64,65 切断刃(開口形成手段)
14,50,51,52 閉鎖部材
20 収容手段
21 筒状体
22 環状部材
23 固定部材
25 筒状体
30,34,36,38,39,40,41,42 仕切部材
33,35,37,38b,39b,40b,41b,42a 連通孔
100 第1実施形態のガン式ディスペンサ
110 第1変形例のガン式ディスペンサ
120 第2変形例のガン式ディスペンサ
130 第3変形例のガン式ディスペンサ
140 第4変形例のガン式ディスペンサ
150 第5変形例のガン式ディスペンサ
200 第2実施形態のガン式ディスペンサ
300 第3実施形態のガン式ディスペンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その複数の押出口から粘性液状物を所定量ずつ同時に押し出すためのガン式ディスペンサであって、
前記粘性液状物が密封充填されている袋を収容する筒状の収容部と、
前記収容部に収容された前記袋を前記押出口に向かって押動するピストンと、
前記ピストンを前記押出口に向かって所定距離ずつ前方に変位させる変位手段と、
前記袋の前端部に当接して前記袋を切開し、前記粘性液状物を取り出すための開口を形成する開口形成手段と、
前記開口から押し出された前記粘性液状物の流路の前端を閉鎖する、前記押出口を有した閉鎖部材と、
前記切開手段と前記閉鎖部材との間の前記流路を前記切開手段の側の第1の滞留部と前記閉鎖部材の側の第2の滞留部とに仕切るとともに、前記第1および第2の滞留部を連通させる連通孔を有している仕切部材と、
とを備えることを特徴とするガン式ディスペンサ。
【請求項2】
前記仕切部材は、前記流路の軸線に対して垂直に延びる平板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガン式ディスペンサ。
【請求項3】
前記仕切部材は、前記流路の軸線と同軸な段差部又は前記流路の軸線と同軸なテーパ部を有していることを特徴とする請求項2に記載のガン式ディスペンサ。
【請求項4】
前記連通孔は、前記流路の軸線と同軸に配設された単一の孔又は前記流路の軸線の近傍に配設された複数の孔であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガン式ディスペンサ。
【請求項5】
前記連通孔は、前記仕切部材に格子状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガン式ディスペンサ。
【請求項6】
前記連通孔の総断面積は、前記流路の断面積の10〜80%の大きさに設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガン式ディスペンサ。
【請求項7】
前記閉鎖部材は、前記単一の連通孔の外周線よりも半径方向外側に位置するように配設された複数の押出口を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のガン式ディスペンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2008−30800(P2008−30800A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206286(P2006−206286)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】