説明

粘着シート

【課題】単純な構造であるにもかかわらず、被着体への貼付の際の空気の抱き込みを大幅に抑え、さらに、大面積の被着体へ貼付する際にも空気の抱き込みが少ない粘着シートを提供する。
【解決手段】粘着シートの粘着剤層が、エステル部分に炭素数が12以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位を含むアクリル系樹脂と、ガラス転移点が0℃以下のアクリルオリゴマーと、を含む。粘着剤層が、(メタ)アクリレートモノマーと、アクリルオリゴマーと、を質量比で1:1から3:7で配合してなる粘着剤層であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に貼り付ける際に、被着体と粘着シートとの間に空気溜りが生じにくい粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着シートは、基材と、その表面に形成された粘着剤層と、必要に応じてその上に設けられる剥離シートから構成されており、使用に際しては、剥離シートが設けられている場合には、該剥離シートを剥がし、粘着剤層を被着体に当接させて貼付することが行われている。
【0003】
しかしながら、識別・装飾用粘着シート、塗装マスキング用貼着シート、マーキングシート、金属板等の表面保護用貼着シート等、貼着シートの面積がある程度広い場合には、貼着剤層と被着体との間に空気の溜まりが生じやすく、その部分が膨れとなって、貼着シートを被着体にきれいに貼付できにくいという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、粘着剤層面に空気の流通経路を設け、粘着シートの貼付時に、空気をこの流通経路を介して逃がし、空気の溜まりが生じないようにすることが種々試みられている。例えば独立した多数の小凸部を散点状に配置した粘着剤層を有する粘着加工シート(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、粘着面に空気の流通経路を有する易貼付性粘着シート(例えば、特許文献3参照)、複数の凸部と、隣接する凸部間に溝部を形成した粘着剤層を有する粘着シート(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
【0005】
これらの粘着シートは、貼付する際、空気が抜けやすく、被着体に容易に貼付することができるとされているが、貼付する際の空気の抱き込みについてはさらなる改善が求められている。特に大面積の被着体への貼付の際の空気の抱き込みを改善することが求められている。
【0006】
また、上記粘着シートは、複雑な構造を持つため、複雑な表面形状加工を施すことなく、被着体への貼付の際に空気の抱き込みを抑えることができる粘着シートが求められている。
【特許文献1】実用新案登録第2503717号公報
【特許文献2】実用新案登録第2587198号公報
【特許文献3】特開昭63−223081号公報
【特許文献4】特開平11−209704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複雑な表面形状加工を施すことなく、被着体への貼付の際の空気の抱き込みを大幅に抑えて粘着シートの粘着剤層と被着体との接触面積を増大させ、さらに、大面積の被着体へ貼付する際にも空気の抱き込みが少ない粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、粘着シートの粘着剤層に含まれる材料により、粘着剤層のタック、柔軟性等を調整することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 基材層と粘着剤層とを備える粘着シートであって、前記粘着剤層が、エステル部分に炭素数が12以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位を含むアクリル系樹脂と、ガラス転移点が0℃以下のアクリルオリゴマーと、を含む粘着シート。
【0010】
(2) 前記粘着剤層が、前記(メタ)アクリレートモノマーと、前記アクリルオリゴマーと、を質量比で1:1から3:7で配合してなる粘着剤層である(1)に記載の粘着シート。
【0011】
(3) 前記粘着剤層は、進入速度30mm/min、加圧力5kN/m、加圧時間2秒、引き離し速度30mm/min、温度25℃における5.0mmΦプローブ測定によるタックが、25kN/mから90kN/m、ガラス転移点が5℃以下であり、25℃における貯蔵弾性率が2.5×10Pa以下、損失正接tanδが0.3以下である(1)又は(2)に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着シートであっても被着体への貼付直後には空気の抱き込みが生じる。この空気の抱き込みにより、粘着剤層と被着体との間には空気が入り込み空気溜まりになる。空気溜まり部分において、粘着剤層と被着体との間には空気が存在し、粘着剤層と被着体とは接していないが、本発明の粘着剤層は、柔軟性、タック等の粘着剤層の物性を調整しているため、空気溜まり部分の粘着剤層が被着体へ接触していく。この接触により空気溜まりを粘着シートの周縁部へ追いやり、最後には、この粘着剤層の特殊な性質により、粘着シートの周縁部から空気が追い出される。その結果、粘着剤層と被着体との接触面積が大幅に増加するので、空気溜まりを大幅に抑えることができる。粘着剤層の変形により粘着剤層が自ら被着体へ貼り付く性質を利用して空気溜りの空気を追い出すため、大面積の被着体であっても容易に空気を抜くことができる。
【0013】
本発明の粘着シートは、上記の通り粘着剤層に用いる材料や配合に特徴があるため、複雑な表面形状加工を施すことなく、空気の抱きこみを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
本発明の粘着シートは、粘着剤層の柔軟性、タック等を調整した点に特徴がある。本発明は、粘着剤層の柔軟性、タック等の物性を調整することにより、上述のような、空気溜まり部分での空気の追い出しの効果が得られる。物性の調整は様々な要素が複雑に絡み合っているが、粘着剤層が、エステル部分に炭素数が12以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位を含むアクリル系樹脂と、ガラス転移点が0℃以下のアクリルオリゴマーと、を含むことで、本発明の粘着シートの粘着剤層は、本発明の効果が得られるような物性に調整される。以下、本発明について、粘着剤層、基材の順で説明する。
【0016】
<粘着剤層>
本発明の粘着剤層は、エステル部分に炭素数が12以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位を含むアクリル系樹脂と、ガラス転移点が0℃以下のオリゴマーと、を含む。
【0017】
[(メタ)アクリレートモノマー]
(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートモノマーとメタクリレートモノマーの両方を含む。本発明に使用する(メタ)アクリレートモノマーは、エステル部分の炭化水素基の炭素数が12以下である。これらのモノマーに由来する繰り返し単位を含むアクリル系樹脂を粘着剤層が含むことで、粘着剤層の物性が調整される。これにより様々な物性が変動するが、例えば、エステル部分の炭化水素基の炭素数により粘着性等を調整することができる。より好ましい上記炭素数は粘着剤層のTgを考慮すると4から12である。
【0018】
本発明の粘着シート製造の際に使用可能な(メタ)アクリレートモノマーとしては、エステル部分の炭化水素基の炭素数が12以下のものであれば使用可能である。このような(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−ペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも特に、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレートが好ましい。なお、多官能モノマーも使用可能である。
【0019】
本発明に用いる(メタ)アクリレートモノマーを含むアクリル系樹脂の調製方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。調製方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合の他、重合開始剤を用いて熱や活性エネルギー線による硬化を利用する重合方法が挙げられる。これらの中でも、活性エネルギー線による硬化を利用する方法が好ましい。
【0020】
なお、本発明の効果を害さない範囲であれば、アクリル系樹脂中に(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでもよいが、アクリル系樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位からなるアクリル系樹脂であることが好ましい。また、アクリル系樹脂には、さらに架橋剤を配合してもよい。架橋剤を配合することで、粘着剤層の凝集力の調整も可能であり、一度粘着剤層に貼り合わせた被着体を再剥離しても粘着剤層の凝集破壊を抑えることができるからである。架橋剤としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができるが、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート架橋剤等が挙げられる。
【0021】
[アクリルオリゴマー]
本発明において粘着剤層に含まれるアクリルオリゴマーは、ガラス転移点が0℃以下である。ガラス転移点が0℃以下のアクリルオリゴマーを粘着剤層に含むことで、粘着剤層が柔軟になる等して、他の物性との組み合わせで本発明の効果を発現する粘着剤層を実現することができる。なお、ガラス転移点は、後述する方法で測定したガラス転移点を採用する。
【0022】
本発明に使用可能なアクリルオリゴマーは、ガラス転移点が0℃以下であれば特に限定されないが、例えばウレタン、ポリエステル、エーテル等の骨格が含まれるアクリルオリゴマーが使用可能である。
【0023】
一般的に分子量が10000未満の重合体をオリゴマー、それ以上のものをポリマーと表現するが、粘着層として十分な凝集力が必要であることから本発明に使用可能なアクリルオリゴマーとは、重量平均分子量(Mw)が1,000から100,000のものをいう。好ましくは5,000から80,000である。
【0024】
粘着剤層は、上記の(メタ)アクリレートモノマーと、アクリルオリゴマーと、を質量比1:1から3:7で配合してなる粘着剤層であることが好ましい。(メタ)アクリレートモノマー、アクリルオリゴマーの配合比が上記範囲内にあれば、粘着剤層の柔軟性等の物性が、特に好ましい範囲に調整され、粘着シートを被着体に貼付した際に生じる空気溜まり部の粘着剤層が、変形して被着体に貼り付いていきやすくなる結果、空気溜まりの追い出しの効果がより高まるので好ましい。
【0025】
本発明に使用されるアクリルオリゴマーは、アクリル系モノマー又はメタクリル系モノマーを従来公知の重合方法により重合させることにより調製することができる。使用可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、エチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
本発明の効果を害さない範囲内であれば、アクリルオリゴマーには、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0027】
[その他の成分]
粘着剤層には、必要に応じて粘着剤に通常使用される粘着付与剤、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤等の従来公知の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤は一種類のみを用いてもよいし二種類以上を併用してもよい。これら添加剤の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜設定すればよい。
【0028】
[粘着剤層の物性]
本発明の粘着シートの粘着剤層は、上記(メタ)アクリレートモノマーと上記アクリルオリゴマーとを含むことで、粘着剤層の柔軟性等の物性が調整される。その結果、粘着シートを被着体に貼付した直後に生じる空気溜まり部分において、粘着剤層は空気を押しのけて、被着体と密着していき、最後には被着体と粘着剤層との間から空気を追い出すことができる。本発明の粘着シートの持つ粘着剤層の物性は上記のような本発明の効果が得られるものであれば特に限定されない。
【0029】
上記のように、粘着剤層と被着体との間の空気溜まり部分において、空気を押しのけて被着体と密着するような粘着剤層の実現には、粘着剤層の様々な物性が複雑に絡み合っており、これらの物性が上記効果を発現するように調整されることが必要である。粘着剤層に上記材料を用いることで、このような特殊な性質を持つ粘着剤層を実現することができる。
【0030】
上記の通り、本発明の効果を発現する粘着剤層の実現には、粘着剤層の様々な物性が関係する。それらの物性の中でも、特に粘着剤層の表面のタックと柔軟性が重要な物性である。
【0031】
粘着剤層の表面のタックとは、粘着剤層の表面のべたつきのことであり、このべたつきが、粘着剤層の被着体へのなじみやすさに大きく影響する。このなじみやすさが調整されることで、空気溜まり部分において、粘着剤層が空気を押しのけ被着体へなじむように貼り付く。粘着剤層の表面タックが大きすぎると、最初に被着体に接触した部分のみが貼り付き、空気溜まりの部分の空気は追い出されずそのまま残ってしまう。一方、粘着剤層の表面タックが小さ過ぎると、充分な濡れが生じず、粘着剤層が被着体になじみにくくなり、本発明の効果が得られなくなる。
【0032】
粘着剤層の柔軟性は、粘着剤層の変形のしやすさであり、この粘着剤層の柔軟性が、空気溜まり部分において、粘着剤層が空気を押しのけて被着体へ貼り付いていく際の粘着剤層の変形に大きく影響する。この柔軟性を調整することで、粘着剤層は、空気溜まり部分において、スムーズに変形し空気を押しのけ被着体と貼り付いていき、空気を粘着剤層と被着体との間から追い出すことで粘着剤層と被着体との接触面積を広げることができる。粘着剤層が柔らか過ぎると、粘着剤層に凝集力がなく被着体と粘着剤層との間に充分な密着性が得られなくなる。一方、粘着剤層が硬過ぎると、粘着剤層は変形しづらいので、上記のような空気溜まり部分において見られる粘着剤層の被着体への貼り付きが困難になり、粘着剤層と被着体との接触面積を広げることができない。
【0033】
本発明は、材料選択により粘着剤層の多数の物性が調整されることで、粘着剤層に特殊な性質を付与するものであるため、各物性値の好ましい範囲を容易に決めることはできないが、本発明の効果をより高めるためには、進入速度30mm/min、加圧力5kN/m、加圧時間2秒、引き離し速度30mm/min、温度25℃における5.0mmΦプローブ測定による粘着剤層のタックが、25kN/mから90kN/mガラス転移点が5℃以下であり、25℃における貯蔵弾性率が2.5×10Pa以下であり、損失正接(tanδ)が0.3以下であり、表面自由エネルギーが26mJ/m以下になるように調整することが好ましい。
【0034】
ガラス転移点については、後述する方法で測定して得られた値を採用する。上記の本発明の効果の発現にかかわる物性は温度の影響を受ける。そのため、実際に使用する常温環境において、本発明の効果が発現されるように調整しなければならない。ガラス転移点が高過ぎると、常温での柔軟性が失われ、粘着剤層の表面タックが低下する傾向にあり、粘着剤層がわれてしまう傾向にあり、ガラス転移点が低すぎると物性のバランスが悪くなり、特に柔軟性が低下する傾向にある。特に好ましいガラス転移点の範囲は、他の物性の影響も受けて変動するが、およそ−50℃から5℃である。
【0035】
貯蔵弾性率については、後述する方法で測定した値を採用する。貯蔵弾性率が高過ぎると粘着剤層が硬くなりすぎ傾向にあるので好ましくない。また、貯蔵弾性率が低すぎると粘着剤層の凝集力が低下し、粘着剤層と被着体との充分な密着性が得られ難いので好ましくない。特に好ましい貯蔵弾性率の範囲は、他の物性にも影響を受けてその範囲は変動するが、常温(25℃)での貼付性を考慮すると、5.5×10Paから2.5×10Paである。この範囲であれば、充分な表面タックが得られる。
【0036】
tanδは、後述する方法で測定して、得られた値を採用する。tanδが低すぎると粘着剤層は硬くなりすぎて、空気溜まり部において、粘着剤層が被着体へ自ら貼り付き難くなる。一方、tanδが高すぎると、粘着剤層は軟らかくなりすぎて、被着体と粘着剤層との間に充分な密着性が得ら難い。特に好ましいtanδの範囲は、他の物性の影響も受けて、その範囲は変動するが、tanδは、0.3以下であることが好ましく、より好ましくは0.1から0.3である。
【0037】
粘着剤層の表面自由エネルギーは、低い方が好ましい。表面自由エネルギーが低ければ、濡れ性が向上し、空気溜まり部分において、粘着剤層が被着体へ貼り付きやすくなるため好ましい。好ましい表面自由エネルギーの範囲は、他の物性の影響を受けて変動するが、26mJ/m以下であることが好ましい。なお、表面自由エネルギーは後述する方法で測定した表面自由エネルギーを採用するものとする。
【0038】
<基材>
基材としては特に制限はなく、粘着シートの基材として慣用されているものの中から、任意のものを適宣選択して用いることができる。この基材としては、例えば上質紙、グラシン紙、コート紙、無塵紙等の紙類、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン、)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、アクリル系樹脂、オレフィン系(TPO)、ポリウレタン系、ポリスチレン系等の熱可塑性エラストマー、アイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体等のプラスチックシート、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セロハン等のセルロース系シート等が挙げられる。基材は、単層でも積層したものでもよい。この基材の厚さは、使用目的や状況に応じて適宣定めればよい。
【0039】
<粘着シートの製造方法>
先ず、粘着剤層に含まれる材料を混合して粘着剤を製造する。混合の順序、混合の方法は特に限定されない。混合する方法としては、従来公知の撹拌装置、分散装置を用いる方法が挙げられる。
【0040】
基材に上記粘着剤を塗布し、基材表面に粘着剤層を形成する。粘着剤の塗布方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の塗布方法を用いることができる。具体的には、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレ−コート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法、ダイコート法、ドクターブレ−ド法、コンマコート法等を挙げるコートができる。また、塗布された粘着剤層の乾燥方法としては、例えば熱風乾燥法、赤外線乾燥法等を挙げることができる。なお、本発明の粘着シートは、必要に応じて、基材と粘着剤層との間に他の層を設けてもよい。
【0041】
粘着剤を塗布する際の塗工量は特に限定されないが、粘着剤層が厚すぎると粘着力が強くなりすぎて、粘着剤層の変形等がスムーズにいかず、空気溜まり部分の空気の追い出しがスムーズにいかなくなる傾向にあり、粘着剤層が薄すぎると、粘着力が弱くなり、被着体と粘着剤層との密着性が弱くなる傾向にあるので好ましくない。好ましい粘着剤層の厚みは、10μmから100μmである。10μm未満では基材の影響を無視することができず、粘着層が充分に柔軟性を発揮できない。また、100μmより厚い場合では、再剥離時に糊残等の問題が発生することがあるからである。
【0042】
<被着体>
本発明の粘着シートは様々な被着体に使用することができるが、ガラス製の被着体に好ましく使用することができる。例えば、住宅やビル等の窓ガラス、ガラス製のドア、ガラス棚、ガラスケース、自動車や列車等に用いられるガラスも含まれる。ガラスの表面は、平らであっても良いし、凹凸があってもよい。また、ガラスは透明であっても良いし不透明であっても良い。
【0043】
被着体の面積は特に限定されないが、面積が大きすぎて従来の粘着シートでは、空気溜り部分の空気が上手く抜けず、貼り付け困難な大きさの被着体に対して好ましく適用することができる。具体的にはおよそ、5cmから6000cmの貼り付け面積であっても、粘着シートを被着体に貼り付けた直後に生じる空気溜り部分の空気が粘着剤層の変形により、粘着シートの外側へ追いやられ、最後には被着体と粘着剤層との間から追い出されるので、結果的に被着体と粘着剤層との接触面積が向上する。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0045】
<材料>
[(メタ)アクリレートモノマー]
ブチルアクリレート
2−エチルヘキシルアクリレート
ラウリルアクリレート
ステアリルアクリレート
2−オクチルドデカノールアクリレート
1、6ヘキサンジオールジアクリレート
[アクリルオリゴマー]
紫光UV3700(日本合成化学工業社製):ガラス転移点−43℃、ウレタンアクリルオリゴマー Mw:38,000
NK−オリゴ U−108A(新中村化学工業社製):ガラス転移点35℃、ポリエステルアクリルオリゴマー Mw:1600
LA2140e(クラレ社製):ガラス転移点−45℃、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-メチルメタクリルレートトリブロック共重合体 Mw:78,000
アクリル系重合組成物1:ガラス転移点−40℃
アクリル系重合組成物2:ガラス転移点5℃
[光重合開始剤]
イルガキュア184 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン社製
【0046】
[アクリル系重合組成物1の製造]
撹拌器、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、2−エチルヘキシルアクリレート99部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、酢酸エチル150部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル0.4部を加え、窒素ガス気流中70℃にて8時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し固形分30%に調整した重量平均分子量60万のアクリル系重合組成物1を得た。
【0047】
[アクリル系重合組成物2の製造]
撹拌器、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート95部、アクリル酸4部、メチルメタアクリレート1部、酢酸エチル180部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル0.4部を加え、窒素ガス気流中70℃にて8時間重合反応を行った。反応終了後、酢酸エチルにて希釈し固形分25%に調整した重量平均分子量60万の重合体溶液1を得た。
【0048】
重合体溶液1と同じ反応装置にトルエン100部を仕込み、窒素気流中90℃に昇温する。メチルメタクリレート99部、ジメチルアミノエチルメタクリレート1部、アゾビスイソブチロニトリル1部を滴下ロートより、2時間かけて滴下し、さらにアゾビスイソブチロニトリル1部を追加してリフラックスさせて5時間重合した。反応終了後トルエンにて希釈し固形分45%に調整した重量平均分子量2万の重合体溶液2を得た。
【0049】
100質量部の重合体溶液1に対して、10質量部の重合体溶液2を加え、アクリル系重合組成物2を得た。
【0050】
<粘着シートの製造>
表1に示す材料を表1に示す割合で、撹拌することで、それぞれの実施例及び比較例に使用する粘着剤を製造した。
【0051】
上記粘着剤を厚さ38μmのPETフィルム上に、UV照射後(300mJ/cm)の厚みが30μmとなるようにアプリケーターを用いた塗工することで、実施例及び比較例の粘着シートを作製した。
【0052】
<評価>
[貼り付け性]
150mm×150mmのガラス板(日本タクト社製)に100mm×100mmに裁断した上記実施例及び比較例の粘着シートをガラス板中央に貼り付け、その直後に200gの錘(φ50×高さ120mm)で粘着シート中央に圧力を与えた。60秒後の粘着シートの状態を観察し、ガラスと被着体との接触面積が90%以上のものを○、ガラスと被着体との接触面積が80%以上90%未満のものを△、ガラスと被着体との接触面積が80%未満のもの×として、実施例及び比較例の粘着シートの被着体への貼り付け性を評価した。評価結果を表1に示した。
【0053】
[タック]
レスカ社製、TAC−IIを用い、下記条件にて測定し、得られた粘着力測定結果のピーク値(最大値)を、タック(表面粘着力)とした。なお、サンプルの作製方法としては、厚さ38μmのPETの上に粘着剤溶液をUV照射後膜厚が30μmとなるようにアプリケーターで塗工し、粘着層を形成した。その粘着層の表面に38μmPETセパレーターをラミネートし、UV照射処理をして粘着フィルムを作製する。次いで、PETセパレーターを剥がし、50mm程度となるようにカットした粘着フィルムをサンプルとした。
プローブ材質:ステンレス φ5.0
進入速度:30mm/min
加圧力:5kN/m
加圧時間:2秒
引き離し速度:30mm/min
温度:25℃
【0054】
[粘着力の評価]
実施例及び比較例の粘着シートを25mm×150mmに切り出し、粘着剤層の粘着力をJIS Z0237の規格に準拠した方法で、剥離角180°、剥離速度300mm/min、23℃の条件で、粘着サンプルの長さ方向にはがすことにより、剥離強度(粘着力)を測定した。粘着力測定には、エーアンドディ社製、引張試験機TENSILON RTF−11550−Hを用いた。評価結果を表1に示した。
【0055】
[保持力の評価]
実施例及び比較例の粘着シートの粘着剤層と被着体(SUS304)との保持力をJIS Z0237の規格に準拠した方法で、貼り付け面積25mm×25mm、荷重9.8Nにて、80℃×24h後のズレを確認した。評価結果を表1に示した。
【0056】
[貯蔵弾性率、tanδ]
貯蔵弾性率、tanδ点は、レオメトリックス社製、固体粘弾性アナライザーRSA−IIを用い、圧縮モードにて測定周波数1Hz、測定温度を−50℃〜150℃、昇温速度5℃/minで測定した値を元にして求めた。また、ガラス転移はtanδの最大値から求めた。
【0057】
なお、サンプルの作製方法としては、厚さ38μmの2次剥離PETセパレーターの上に粘着剤溶液をUV照射後膜厚が25μmとなるようにアプリケーターで塗工し、粘着層を形成する。その粘着層表面に38μm厚の1次剥離PETセパレーターをラミネートし、UV照射処理をして粘着フィルムを作製する。1次剥離PETセパレーターを剥がした後、上記粘着層を、2次剥離PETセパレーターから剥離しつつ、気泡が混入しないようにロール状に巻取り、直径4.57mm程度、高さ2mm〜4.75mm程度の円柱状とした粘着層をサンプルとした。評価結果を表1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1の結果から明らかなように、粘着剤層が、エステル部分に炭素数が12以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位を含むアクリル系樹脂と、ガラス転移点が0℃以下のアクリルオリゴマーと、を含むことで、良好な貼り付け性を示し、被着体と粘着剤層との接触面積が増大することが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層とを備える粘着シートであって、
前記粘着剤層が、エステル部分に炭素数が12以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーに由来する繰り返し単位を含むアクリル系樹脂と、ガラス転移点が0℃以下のアクリルオリゴマーと、を含む粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層が、前記(メタ)アクリレートモノマーと、前記アクリルオリゴマーと、を質量比で1:1から3:7で配合してなる粘着剤層である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、進入速度30mm/min、加圧力5kN/m、加圧時間2秒、引き離し速度30mm/min、温度25℃における5.0mmΦプローブ測定によるタックが、25kN/mから90kN/mであり、
ガラス転移点が、5℃以下であり、
25℃における貯蔵弾性率が、2.5×10Pa以下、損失正接tanδが0.3以下である請求項1又は2に記載の粘着シート。

【公開番号】特開2010−59240(P2010−59240A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223647(P2008−223647)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】