説明

粘着シート

【課題】ポリオキシアルキレン系重合体を含有する組成物を硬化させてなる粘着シートを提供する。
【解決手段】一般式(1):
−Z−C(=O)−C(R1)=C(R22(1)
(式中、R1は水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、R2はそれぞれ独立に、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、Zはヘテロ原子、−NR3−(R3は、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基)から選択される基である。)で表される不飽和基を有し、数平均分子量が3,000以上であるポリオキシアルキレン系重合体(A)、および、重合開始剤(B)を含有する組成物を硬化させてなる粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和基を有するポリオキシアルキレン系重合体、および、重合開始剤を含有する組成物を硬化させてなる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やタッチパネルの画像表示部分の液晶モジュール、有機ELモジュール、または、有機TFTモジュールと最上部の透明カバー(PETフィルム、強化ガラス、アクリル板など)の間には、エアギャップを設けることにより、外からの衝撃で、カバーが割れた場合でも、上記モジュールに影響を与えないような構造(エアギャップ構造)になっている。しかしながら、エアギャップ構造では透明カバーと空気層との屈折率の違いにより、良好な視認性が得られないという問題がある。このため、エアギャップを無くすために、画像表示モジュールに粘着シートを貼付し、透明カバーを一体化させる技術が提案されている。例えば、特許文献1では、ヒドロシリル化反応を利用し、組成物を加熱硬化させることにより、フラットパネルディスプレイ用の粘着シートが得られている。しかしながら、ヒドロシリル化反応を利用した加熱硬化による粘着シートの製造方法は、硬化に時間が掛かるため、生産効率が低い傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−191202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、不飽和基を有するポリオキシアルキレン系重合体、および、重合開始剤を含有する組成物を硬化させることによって得られる粘着シートであって、生産効率が高い粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の課題を解決するため鋭意検討した結果、以下のことを見出して本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、
(I)
一般式(1):
−Z−C(=O)−C(R1)=C(R22 (1)
(式中、R1は水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、R2はそれぞれ独立に、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、Zはヘテロ原子、−NR3−(R3は、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基)から選択される基である。)で表される不飽和基を有し、数平均分子量が3,000以上であるポリオキシアルキレン系重合体(A)、および、重合開始剤(B)を含有する組成物を硬化させてなる粘着シート。
【0007】
(II)
一般式(1)のR1およびR2が水素原子である(I)に記載の粘着シート。
【0008】
(III)
一般式(1)のR1がメチル基であり、R2が水素原子である(I)に記載の粘着シート。
【0009】
(IV)
一般式(1)のZが酸素原子である(I)から(III)のいずれかに記載の粘着シート。
【0010】
(V)
一般式(1)のZが−NH−で表される基である(I)から(III)のいずれかに記載の粘着シート。
【0011】
(VI)
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格がポリオキシプロピレン系重合体である(I)から(V)のいずれかに記載の粘着シート。
【0012】
(VII)
重合開始剤(B)が光および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤(C)である(I)から(VI)のいずれかに記載の粘着シート。
【0013】
(VIII)
ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、ラジカル開始剤(C)を0.001から10重量部含有する組成物を硬化させてなる(VII)に記載の粘着シート。
【0014】
(IX)
ラジカル開始剤(C)が光によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤(c1)である(VII)、または、(VIII)に記載の粘着シート。
【0015】
(X)
フラットパネルディスプレイ表示モジュール/透明カバーボード間充填用の(I)から(IX)のいずれかに記載の粘着シート。
【0016】
(XI)
(X)に記載の粘着シートを用いてなるフラットパネルディスプレイを搭載した電気・電子機器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生産効率の高い粘着シートを得ることができる。また、本発明の粘着シートをフラットパネルディスプレイ表示モジュール/透明カバーボード間充填用粘着シートとして使用することで、表示モジュールの耐衝撃性、および、視認性に優れたフラットパネルディスプレイを搭載した電気・電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0019】
本発明の粘着シートに含まれるポリオキシアルキレン系重合体(A)は、一般式(1):
−Z−C(=O)−C(R1)=C(R22 (1)
(式中、R1は水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、R2はそれぞれ独立に、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、Zはヘテロ原子、−NR3−(R3はそれぞれ独立に、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基)から選択される基である。)で表される不飽和基を有する。
【0020】
一般式(1)中のR1およびR2は特に限定されず、例えば、水素原子;メチル基、エチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基が挙げられる。これらの中では、重合体(A)の反応性の高さから、R1およびR2が水素原子、または、R1がメチル基且つR2が水素原子であることが好ましい。
【0021】
一般式(1)中のZは特に限定されず、例えば、酸素原子;硫黄原子;−NH−、−NCH3−などのアミノ基が挙げられる。これらの中では、導入の容易さから、酸素原子、−NH−基が好ましい。
【0022】
ポリアルキレン系重合体に、一般式(1)で表される不飽和基を導入する方法としては、例えば、(イ)水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)と、この水酸基に対して反応性を示す官能基および不飽和基を有する化合物(D)を反応させる方法、(ロ)ポリオキシアルキレン系重合体(a)の水酸基を他の官能基に置換し、この置換基に対して反応性を示す官能基および不飽和基を有する化合物(D)を反応させる方法などが挙げられる。
【0023】
(イ)の方法で、水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)の水酸基と反応させる化合物(D)としては、例えば、塩化(メタ)アクリル酸、臭化(メタ)アクリル酸などの不飽和酸ハロゲン化合物類;(メタ)アクリル酸などのカルボン酸化合物類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ビス(トリフルオロメチル)メチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのエステル化合物類;(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどのイソシアネート基を有する不飽和化合物類などが挙げられる。これらの中でも、重合体(a)の水酸基との反応性から、不飽和酸ハロゲン化合物類の中では、塩化(メタ)アクリル酸が好ましく、カルボン酸化合物類の中では、(メタ)アクリル酸が好ましく、エステル化合物類の中では、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルが好ましく、イソシアネート基を有する不飽和化合物類の中では、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
重合体(a)の水酸基と反応させる化合物(D)の使用量としては、水酸基に対し、0.1モル当量から10モル当量が好ましく、0.5モル当量から5モル当量がより好ましい。使用量が0.1モル当量よりも少ない場合は、反応性が低下する場合があり、10モル当量よりも多い場合は、経済的に不利になることがある。
【0025】
水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)と化合物(D)の反応において、種々の添加剤(E)を使用することができる。
【0026】
重合体(a)の水酸基と不飽和酸ハロゲン化合物類を反応させる場合、生成する酸を捕捉する目的で、アミン化合物などを添加剤(e1)として使用することができる。アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの脂肪族第三級アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族不飽和アミン類;アニリン、ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミンなどの芳香族アミン類;ピリジン、2−アミノピリジン、2−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(ジメチルアミノピリジン)、2−ヒドロキシピリジン、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、2−ピペリジンメタノール、2−(2−ピペリジノ)エタノール、ピペリドン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)、6−(ジブチルアミノ)−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBA−DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(DABCO)、アジリジンなどの含窒素複素環式化合物、および、その他のアミン類として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N'−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ベンジルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、2−(1−ピペラジニル)エチルアミン、キシリレンジアミンなどのアミン類;グアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジンなどのグアニジン類;ブチルビグアニド、1−o−トリルビグアニドや1−フェニルビグアニドなどのビグアニド類などが挙げられる。これらの中では、反応性の観点から第三級アミン類が好ましく、反応後の除去のし易さ、および、入手性の観点からトリエチルアミンが好ましい。アミン化合物などの添加剤(e1)の使用量としては、水酸基に対し、0.1モル当量から10モル当量が好ましく、0.5モル当量から5モル当量が好ましい。使用量が0.1モル当量よりも少ない場合は、十分に酸を捕捉できない場合があり、10モル当量よりも多い場合は、除去が困難になる場合がある。
【0027】
重合体(a)の水酸基とカルボン酸化合物類を反応させる場合、プロトン酸およびルイス酸、アミン化合物とスルホン酸類の塩、リン化合物とスルホン酸類の塩などを添加剤(e2)として併用すると反応性が高くなる場合がある。このような添加剤(e2)としては、例えば、塩酸、臭酸、ヨウ酸、リン酸などの無機酸類;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの直鎖飽和脂肪酸類;ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、ミリストレイン酸、2−ヘキサデセン酸、6−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレピン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、クロトン酸、イソクロトン酸、10−ウンデセン酸などのモノエン不飽和脂肪酸類;リノエライジン酸、リノール酸、10,12−オクタデカジエン酸、ヒラゴ酸、α−エレオステアリン酸、β−エレオステアリン酸、プニカ酸、リノレン酸、8,11,14−エイコサトリエン酸、7,10,13−ドコサトリエン酸、4,8,11,14−ヘキサデカテトラエン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、8,12,16,19−ドコサテトラエン酸、4,8,12,15,18−エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ニシン酸、ドコサヘキサエン酸などのポリエン不飽和脂肪酸類;2−メチル酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、ピバル酸、2,2−ジメチル酪酸、2−エチル−2−メチル酪酸、2,2−ジエチル酪酸、2−フェニル酪酸、イソ吉草酸、2,2−ジメチル吉草酸、2−エチル−2−メチル吉草酸、2,2−ジエチル吉草酸、2−エチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジエチルヘキサン酸、2,2−ジメチルオクタン酸、2−エチル−2,5−ジメチルヘキサン酸、バーサチック酸、ネオデカン酸、ツベルクロステアリン酸などの枝分れ脂肪酸類;プロピオール酸、タリリン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸、7−ヘキサデシン酸などの三重結合をもつ脂肪酸類;ナフテン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルプス酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸などの脂環式カルボン酸類;アセト酢酸、エトキシ酢酸、グリオキシル酸、グリコール酸、グルコン酸、サビニン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、イプロール酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、ヤラピノール酸、ユニペリン酸、アンブレットール酸、アリューリット酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、18−ヒドロキシオクタデカン酸、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸リシノール酸、カムロレン酸、リカン酸、フェロン酸、セレブロン酸などの含酸素脂肪酸類;クロロ酢酸、2−クロロアクリル酸、クロロ安息香酸などのモノカルボン酸のハロゲン置換体;アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルこはく酸、2,2−ジエチルこはく酸、2,2−ジメチルグルタル酸などの鎖状ジカルボン酸;1,2,2−トリメチル−1,3−シクロペンタンジカルボン酸、オキシ二酢酸などの飽和ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、3−メチルイソクエン酸、4,4−ジメチルアコニット酸などの鎖状トリカルボン酸;安息香酸、9−アントラセンカルボン酸、アトロラクチン酸、アニス酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、トルイル酸などの芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、カルボキシフェニル酢酸、ピロメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸;アラニン、ロイシン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンなどのアミノ酸;トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸類;ジメシチルアミンとペンタフルオロベンゼンスルホン酸との塩、ジフェニルアミンとトリフルオロメタンスルホン酸との塩、トリフェニルホスフィンとトリフルオロメタンスルホン酸との塩などが挙げられる。このような添加剤(e2)は使用しても、しなくても良いが、使用する場合は、水酸基に対し、0.001モル当量から10モル当量を使用することが好ましく、0.01モル当量から1モル当量がより好ましい。使用量が0.001モル当量よりも少ない場合は、十分な効果が得られない場合があり、10モル当量よりも多い場合は、除去が困難になる場合がある。
【0028】
重合体(a)の水酸基とイソシアネート基を有する不飽和化合物を反応させる場合は、チタン化合物、錫化合物、ジルコニウム化合物などを添加剤(e3)として併用することにより、反応性が高くなる場合がある。チタン化合物としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセテート)などを挙げることができ、錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物などを挙げることがき、ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)などを挙げることができる。添加剤(e3)は使用しても、しなくても良いが、使用する場合は、重合体(a)に対し、1ppmから1000ppmを使用することが好ましく、5ppmから500ppmがより好ましい。使用量が1ppmよりも少ない場合は、十分な効果が得られない場合があり、1000ppmよりも多い場合は、重合体(A)を硬化させてなる粘着シートに影響を与える場合がある。
【0029】
(ロ)の方法において、水酸基以外の置換基を有するポリオキシアルキレン系重合体としては、アルコキシド基を有する重合体、ハロゲン原子を有する重合体、アミノ基を有する重合体などが挙げられる。
【0030】
アルコキシド基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法としては、重合体(a)と金属アルコキシドを反応させる方法などが挙げられる。使用される金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、カルシウムジエトキシドなどが挙げられる。
【0031】
アルコキシド基を有する重合体と反応させる不飽和基を有する化合物(D)としては、上記の(イ)法で示した不飽和酸ハロゲン化合物類、カルボン酸化合物類などを使用することができる。
【0032】
ハロゲン原子を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法としては、重合体(a)と四塩化炭素、もしくは、四臭化炭素をトリフェニルホスフィンの存在下で反応させる方法、重合体(a)を五塩化リン、塩化チオニル、塩化スルフニルと反応させ、水酸基を塩素原子に置換する方法などが挙げられる。
【0033】
ハロゲン原子を有する重合体と反応させる不飽和基を有する化合物(D)としては、上記の(イ)法で示したカルボン酸化合物類の塩、例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウムなどを使用することができる。
【0034】
アミノ基を有するポリオキシアルキレン系重合体の製造方法としては、重合体(a)とアミノ酸を反応させる方法、重合体(a)の水酸基をハロゲン原子に置換し、ヘキサメチレンテトラミンと反応させる方法、水酸基をハロゲン原子に置換させた重合体に、フタルイミドと水酸化カリウム、もしくは、カリウムフタルイミドを反応させてフタルイミド基を有する重合体とした後、ヒドラジン、もしくは、水酸化カリウムと反応させることによってアミノ基を有する重合体を得る方法などが挙げられる。
【0035】
アミノ基を有するポリオキシアルキレン系重合体と反応させる不飽和基を有する化合物(D)としては、上記の(イ)法で示した化合物(D)と同様のものを使用することができる。また、化合物(D)との反応において、上記の添加剤(E)を使用しても良いし、しなくても良い。
【0036】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などを使用することができる。
【0037】
ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に一般式(2):
−R4−O− (2)
(式中、R4は炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である。)で表される繰り返し単位を有する重合体であり、一般式(2)中に記載のR4は、炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好まく、2から4の直鎖状、もしくは、分岐状アルキレン基がより好ましい。一般式(2)に記載の繰り返し単位としては、特に限定はなく、例えば、
【0038】
【化1】

【0039】
などが挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなっても良いし、2種類以上の繰り返し単位からなっても良い。特に、粘着シートなどに使用される場合には、プロピレンオキシド重合体を主成分とする重合体から成るものが、非晶質であることや比較的低粘度であることから好ましい。
【0040】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、特に限定されず、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号公報に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号などの各公報に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号公報に示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11060722号公報に示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法などが挙げられる。
【0041】
水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)の主鎖の骨格、合成法についても、上記のポリオキシアルキレン系重合体(A)と同様のことが言える。
【0042】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は直鎖状、または分岐を有しても良く、その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において3,000から100,000、より好ましくは3,000から50,000であり、特に好ましくは3,000から30,000である。数平均分子量が3,000未満では、硬化物の伸縮性の点で不都合な傾向があり、100,000を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0043】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、2.00未満が好ましく、1.60以下がより好ましく、1.40以下が特に好ましい。分子量分布が大きくなると、粘度が高くなり、それゆえ作業性が悪くなる傾向がある。
【0044】
本発明の粘着シートを与える組成物には、重合開始剤(B)が含まれる。重合開始剤(B)としては、特に限定されないが、光および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤、光アニオン開始剤、近赤外光重合開始剤、レドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、入手性の点から、光および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤が好ましく、なかでも、反応性の点から光ラジカル開始剤がより好ましい。
【0045】
光ラジカル開始剤(c1)としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。これらの中でも、タック改善性があるという点で、フェニルケトン系化合物が好ましい。
【0046】
また、UV照射時の深部硬化性に優れるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤も配合することができる。アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられ、好ましくは、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドである。上記の光ラジカル開始剤は、単独で用いてもよく2種以上を混合して用いても良い。なかでも、反応性が高いことから、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0047】
本発明の粘着シートを与える組成物では、上記アシルホスフィンオキサイドおよびフェニルケトン系化合物を併用することもできる。
【0048】
光ラジカル開始剤(c1)の添加量は、特に制限されないが、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、0.001重量部から10重量部が好ましい。光ラジカル開始剤(c1)の添加量がこの範囲を下回ると、十分な硬化性が得られない可能性が有り、また、添加量がこの範囲を上回ると硬化物に影響を及ぼす可能性がある。なお、光ラジカル開始剤(c1)の混合物が使用される場合には、混合物の合計量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0049】
熱ラジカル開始剤(c2)としては、特に限定されないが、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤などが挙げられる。
【0050】
アゾ系開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)などが挙げられる。
【0051】
過酸化物開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過酸化ジクミルなどが挙げられる。
【0052】
過硫酸塩開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0053】
熱ラジカル開始剤(c2)は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。上記の熱ラジカル開始剤(c2)の中では、取扱い易さの点から、アゾ系開始剤および過酸化物開始剤からなる群から選ばれるものが好ましい。また、反応性が高いことから、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシピバレート、及びジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、並びに、これらの混合物がより好ましい。
【0054】
熱ラジカル開始剤(c2)の添加量は、特に制限されないが、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、0.01重量部から3重量部が好ましく、0.025重量部から2重量部がより好ましい。熱ラジカル開始剤(c2)の添加量がこの範囲を下回ると、十分な硬化性が得られない可能性が有り、また、添加量がこの範囲を上回ると硬化物に影響を及ぼす可能性がある。なお、熱ラジカル開始剤(c2)の混合物が使用される場合には、混合物の合計量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0055】
本発明の粘着シートを与える組成物には、粘着シートの目的とする物性に応じて、各種の配合剤を添加しても構わない。
【0056】
本発明の粘着シートを与える組成物には、モノマーおよび/またはオリゴマーを添加することができる。ラジカル重合性の基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー、あるいは、アニオン重合性の基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーが、硬化性の点から好ましい。
【0057】
前記ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基などの(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基などが挙げられる。なかでも、反応性の点から、(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
【0058】
前記アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基等の(メタ)アクリロイル系基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基などが挙げられる。なかでも、反応性の点から、(メタ)アクリロイル系基を有するものが好ましい。
【0059】
前記モノマーの具体例としては、特開2006−265488号公報段落[0123]〜[0131]記載のものが挙げられる。
【0060】
前記オリゴマーとしては、特開2006−265488号公報段落[0132]記載のものが挙げられる。
【0061】
上記のうち、(メタ)アクリロイル系基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーが好ましい。また、(メタ)アクリロイル系基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーの数平均分子量は、5000以下であることが好ましい。さらに、表面硬化性の向上や、作業性向上のための粘度低減のために、モノマーを用いる場合には、分子量が1000以下であることが、相溶性の点からより好ましい。
【0062】
重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーの使用量としては、表面硬化性の向上、タフネスの付与、粘度低減による作業性の点から、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、1から200重量部が好ましく、5から100重量部がより好ましい。
【0063】
本発明の粘着シートを与える組成物は、ラジカル捕捉剤を含有していても良い。ここで言うラジカル捕捉剤とは、一般に、酸化防止剤、光安定剤と呼ばれるものなどを含む。
【0064】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系の酸化防止剤が挙げられ、これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARK LA−57,MARK LA−62,MARK LA−67,MARK LA−63,MARK LA−68(以上、いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS−770,サノールLS−765,サノールLS−292,サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上、いずれも三共株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は、特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、ポリオキシアルキレン系重合体重合体(A)100重量部に対して0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが良く、さらに好ましくは0.2重量部から5重量部である。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になるだけでなく、ラジカル開始剤(C)より発生したラジカルを酸化防止剤が補足し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。
【0065】
光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などが挙げられ、この中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。光安定剤の使用量は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対して0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが好ましく、0.2重量部から5重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になる可能性があるだけでなく、ラジカル開始剤(C)より発生したラジカルを酸化防止剤が補足し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも示されている。
【0066】
本発明の粘着シートは、特に限定されないが、以下の方法で製造することができる。
【0067】
本発明の粘着シートを与える組成物を、必要に応じて真空脱泡を行い、各種の支持体上に塗布し、光および/または熱処理してシート化する。光および/または熱処理によって組成物は硬化し、粘着シートが得られる。支持体上への塗布は、例えば、グラビア、キス、コンマなどのロールコーター、スロット、ファンテンなどのダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーターなどの公知の塗布装置によって行うことができる。硬化条件としては、光ラジカル開始剤(c1)を用いる場合、活性エネルギー線源により光、または、電子線を照射して、硬化させることができる。活性エネルギー線源としては、特に限定されないが、使用する光ラジカル開始剤の性質に応じて、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライドなどが挙げられる。光ラジカル開始剤(c1)を用いる場合、その硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、5℃〜120℃がより好ましい。熱ラジカル開始剤(c2)を用いる場合、その硬化温度は、使用する熱ラジカル開始剤、添加される他の化合物の種類により異なるが、通常50℃から250℃が好ましく、70℃から250℃がより好ましい。
【0068】
本発明の粘着シートをフラットパネルディスプレイ表示モジュール/透明カバーボード間充填用粘着シートとして使用する場合、粘着シートの厚みはフラットパネルディスプレイの種類などによっても異なるが、フラットパネルディスプレイの薄型化の点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。ただし、厚みが薄すぎると、十分に高い耐衝撃性が得られ難くなるため、厚みの下限は10μm以上が好ましい。なお、本発明の粘着シートは、透明カバーボードと表示モジュール間の接着用だけでなく、それ単独を表示モジュールに貼り付けて保護シートとして使用することもできる。透明カバーボードと表示モジュール間の接着用に使用する場合、厚みは15〜1000μmが好ましく、25〜500μmがより好ましい。また、保護シートとして使用する場合、厚みは25〜1000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましい。
【0069】
また、フラットパネルディスプレイにおいては、表示モジュールと透明カバーボードの間に他の機能層(例えば、タッチパネル機構における透明電極層を形成したガラスやプラスチックフィルムなど)を介在させて密着一体化させた積層構造が採られる場合があるが、本発明の粘着シートは、機能層と透明カバーボード間の接着や、機能層と表示モジュール間の接着に使用することもできる。
【0070】
本発明の粘着シートは、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機または無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、表面電解ディスプレイ(SED)などの種々のフラットパネルディスプレイに適用することができる。よって、本発明の粘着シートを使用することで、表示モジュールに透明カバーボードが、直接、もしくは、これらの間に他の機能層を介在させて、密着一体化したフラットパネルディスプレイ、あるいは、透明カバーボードを用いることなく、表示モジュールが本発明の粘着シートで直接保護されたフラットパネルディスプレイを得ることができ、高い耐衝撃性と良好な表示画像の視認性が長期に亘って持続するフラットパネルディスプレイを実現することができる。
【0071】
本発明は、上記フラットパネルディスプレイ表示モジュール/透明カバーボード間充填用粘着シートを使用したフラットパネルディスプレイを搭載した電気・電子機器を包含する。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0073】
(合成例1)
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、末端が水酸基である数平均分子量28,500(送液システム:東ソー製HLC−8120GPC、カラム:東ソー製TSK−GEL Hタイプ、溶媒としてTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)のポリプロピレンオキシド(a−1)を得た。
【0074】
(合成例2)
合成例1で得られた水酸基を有するポリプロピレンオキシド(a−1)100重量部に対し、アセトン380重量部、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシ0.01重量部、トリエチルアミン4.1重量部を加え、氷水バスにより冷却した。ここに、塩化アクリロイル3.6重量部を滴下し、3時間攪拌した。攪拌終了後、アセトンを減圧脱揮により除去した。得られた生成物をテトラヒドロフランに溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液によって分液洗浄した。取り出した有機層に、硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、ろ過によって硫酸マグネシウムを除去した後、ろ液に4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシ0.01重量部を加え、100℃に加熱しながら、減圧脱揮を行った。1H−NMR(Bruker製AvanceIII 400MHz NMRシステム)による測定により、ポリプロピレンオキシド(a−1)の水酸基に由来するピークが消失するとともに、アクリロイルオキシ基が結合した炭素上のプロトンに由来するピーク(5.10ppm(多重線))が現れ、アクリロイルオキシ基を有するポリプロピレンオキシド(A−1)が得られたことを確認した。
【0075】
1H−NMRスペクトルにおいて、主鎖中のメチル基に由来するピークの積分値とアクリロイルオキシ基が結合した炭素上のプロトンに由来するピークの積分値の比から算出したアクリロイルオキシ基の導入率は80%であった。これによりポリプロピレンオキシド(A−1)は1分子あたり平均して、1.6個のアクリロイルオキシ基を含有することがわかった。また、GPCにより求めた分子量は28,500であった。
【0076】
(参考例1)
分子量2,000のポリオキシプロピレンジオールを使用し、合成例2と同様の方法で、アクリロイルオキシ基を有するポリプロピレンオキシド(P−1)を得た。合成例2と同様の方法で算出したアクリロイルオキシ基の導入率は80%であり、これによりポリプロピレンオキシド(P−1)は1分子あたり平均して、1.6個のアクリロイルオキシ基を含有することがわかった。また、分子量は2,000であった。
【0077】
(実施例1、比較例1)
表1に示す処方に従い、ポリオキシプロピレン系重合体に、光ラジカル開始剤を加えて、スパチュラで約1分間攪拌し、遠心分離機にて脱泡した。次に、離型処理が施されたポリエステルフィルム(厚さ100μm)からなるベースセパレーター(支持体)上に、組成物の厚みが200μmになるように、アプリケーターを用いて上記の組成物を塗布した。得られたフィルムをフュージョンUVシステム製UV照射装置(機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ、積算光量:3000mJ/cm2)にて照射を行い、粘着シートを作製した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1の実験例1、比較例1の組成物はUV光照射直後に硬化した。実験例1では透明で、柔軟な粘着シートが得られたが、比較例1では脆く、粘着性の低いシートが得られた。このことから、数平均分子量が3,000以上のポリオキシアルキレン系重合体(A)、および、重合開始剤(B)を含有する組成物を用いた場合、粘着シートを高い生産効率で製造でき、尚且つ、良好な物性を示す粘着シートが得られることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
−Z−C(=O)−C(R1)=C(R22 (1)
(式中、R1は水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、R2はそれぞれ独立に、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基、Zはヘテロ原子、−NR3−(R3は、水素原子または置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基)から選択される基である。)で表される不飽和基を有し、数平均分子量が3,000以上であるポリオキシアルキレン系重合体(A)、および、重合開始剤(B)を含有する組成物を硬化させてなる粘着シート。
【請求項2】
一般式(1)のR1およびR2が水素原子である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
一般式(1)のR1がメチル基であり、R2が水素原子である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
一般式(1)のZが酸素原子である請求項1から3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
一般式(1)のZが−NH−で表される基である請求項1から3のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格がポリオキシプロピレン系重合体である請求項1から5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
重合開始剤(B)が光および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤(C)である請求項1から6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、ラジカル開始剤(C)を0.001から10重量部含有する組成物を硬化させてなる請求項7に記載の粘着シート。
【請求項9】
ラジカル開始剤(C)が光によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤(c1)である請求項7、または、請求項8に記載の粘着シート。
【請求項10】
フラットパネルディスプレイ表示モジュール/透明カバーボード間充填用の請求項1から9のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着シートを用いてなるフラットパネルディスプレイを搭載した電気・電子機器。

【公開番号】特開2011−195773(P2011−195773A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66616(P2010−66616)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】