説明

粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法

【課題】従来以上の引っ張り強力を有しながら手切れ性にも優れた粘着テープ基布用ポリエステル繊維を安定かつ安価に製造する製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸した未延伸糸を一旦巻き取った後、2段または3段で延伸して延伸糸を製造するに際して、固有粘度0.62〜0.68の共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸速度が1200〜2000m/分で、かつ2段での延伸において、1段目が1.1〜1.5倍、2段目が2.0〜3.0倍の倍率で、または3段での延伸において1段目が1.1〜1.3倍、2段目が1.3〜1.5倍、3段目が1.8〜2.5倍の倍率で延伸して、強度4.0〜6.0cN/dtex、伸度12〜22%、沸収6.5〜10%の延伸繊維とする粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来以上の引っ張り強力を有しながら手切れ性にも優れた粘着テープ基布を提供するための、ポリエステル繊維の安定かつ安価な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は、その取扱いの容易さ、耐久性等から、現在一般的に衣料用途において広く使用されており、また近年では粘着テープ、濾過膜などに代表される産業資材用途にも多く用いられている。
【0003】
中でもポリエチレンテレフタレ―トからなる繊維は高強度、高ヤング率、熱寸法安定性に優れた繊維であり、上記用途の中でもとりわけ需要が多い。
【0004】
しかしながら、粘着テープの基布に用いるポリエステル繊維は、その用途から特殊な要求特性があり、生産性、品質上の課題が残されているのも事実である。
【0005】
一般的に溶融紡糸により製造されるポリエステル繊維において、それよりなる布帛に引っ張り強力を持たせるためには、ポリエステル繊維そのものの強力を高める必要があるが、他方において要求される粘着テープ基布の手切れ性が低下する、という課題を有する。
【0006】
かかる問題を解決するために、溶融紡糸における紡糸速度を高くし、これを高い倍率で1段延伸することで高強度、低伸度の繊維を得て粘着テープ用基布とする提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では粘着テープ基布としての引っ張り強力は得られるものの、手切れ性については考慮されておらず、このため粘着テープ基布としては不十分である。
【0007】
また、固有粘度の高いポリマーを用い、超高速紡糸により高強度、低伸度、低沸収の繊維を得て粘着テープ基布とする提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。しかしながらこの方法では、低伸度、低沸収とすることで手切れ性はある程度向上しているものの、実用的なレベルとしては十分なものではない。
【0008】
また、ポリエステル繊維の伸度および沸収を一定範囲とすることで手切れ性に優れた粘着テープ基布を得る方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法では手切れ性は向上するものの、引っ張り強力が不十分なものとなり、粘着テープ基布としてさらなる改善が必要なレベルである。
【特許文献1】特開昭61−218676号公報(第1頁)
【特許文献2】特開昭62−33821号公報(第1頁)
【特許文献3】特開昭62−28436号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来以上の引っ張り強力を有しながら手切れ性にも優れた粘着テープ基布を得るための、ポリエステル繊維の安定かつ安価な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸した未延伸糸を一旦巻き取った後、2段または3段で延伸して延伸糸を製造するに際して、固有粘度0.62〜0.68の共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸速度が1200〜2000m/分で、かつ2段での延伸において、1段目が1.1〜1.5倍、2段目が2.0〜3.0倍の倍率で、または3段での延伸において、1段目が1.1〜1.3倍、2段目が1.3〜1.5倍、3段目が1.8〜2.5倍の倍率で延伸して、強度4.0〜6.0cN/dtex、伸度12〜22%、沸収6.5〜10%の延伸繊維とすることを特徴とする粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法によって達成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法によれば、従来以上の引っ張り強力を有しながら手切れ性にも優れた粘着テープ基布用ポリエステル繊維を安定かつ安価に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法において、用いるポリエステルは共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートであって、固有粘度0.62〜0.68である必要がある。固有粘度が0.62未満の場合は得られるポリエステル繊維の強力が低いため、粘着テープ基布とした場合の引っ張り強力に劣るものとなる。また固有粘度が0.68を越える場合は、ポリエチレンテレフタレートを得る重合工程において重合時間が長くなるなど、コスト増となるだけでなく、得られる粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度が所望の範囲より高くなるため、粘着テープとした際に手切れ性が悪化する。
【0013】
本発明の粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法において、ポリエステル繊維を得るための溶融紡糸工程では、紡糸速度を1200〜2000m/分とする必要がある。紡糸速度が1200m/分未満の場合は得られる未延伸糸の配向が不十分であり、経時変化が大きく延伸工程に供するまでの時間が制約されるなど、コスト増の要因となる他、得られる粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度が所望の範囲より高くなるため、粘着テープとした際に手切れ性が悪化する。また紡糸速度が2000m/分を越える場合は、続く延伸工程における延伸倍率を所望の倍率とすることができず、得られるポリエステル繊維の強力が低くなるため、粘着テープ基布とした場合の引っ張り強力に劣るものとなる。
【0014】
本発明の粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法において、溶融紡糸された未延伸糸を一旦巻き取った後、延伸する際は2段または3段延伸とする必要がある。延伸工程を経ないまたは1段延伸では、得られるポリエステル繊維の強力が低くなるため、粘着テープ基布とした場合の引っ張り強力に劣るものとなる。また、4段以上の延伸とすると、設備が大型化し、工程も複雑化するためコスト増の要因となる。また2段延伸する場合は、1段目倍率を1.1〜1.5倍、2段目倍率を2.0〜3.0倍とする必要があり、3段延伸する場合は1段目倍率を1.1〜1.3倍、2段目倍率を1.3〜1.5倍、3段目倍率を1.8〜2.5倍とする必要がある。この比率を外れた場合、得られる粘着テープ基布およびそれよりなる粘着テープの引っ張り強力あるいは手切れ性のいずれかが劣る。2段延伸の場合の倍率は、1段目が1.2〜1.4倍、2段目が2.3〜2.7倍であることが好ましい。また3段延伸の場合の倍率は、1段目が1.1〜1.2倍、2段目が1.3〜1.4倍、3段目が2.0〜2.3倍であることが好ましい。また操業性、設備費、ランニングコストの観点から、3段延伸よりは2段延伸のほうがさらに好ましい。
【0015】
また、2段延伸の際の延伸ローラーの温度は、1段目を80〜95℃、2段目を100〜120℃とすることが好ましく、3段延伸の際の延伸ローラーの温度は、1段目を75〜85℃、2段目を85〜110℃、3段目を110〜130℃とすることが好ましい。上記温度より高い場合は巻き付きによる断糸が発生する場合があり、また上記温度より低い場合は延伸不良により得られる粘着テープ基布用ポリエステル繊維の品質が悪化する、特に強度が低下あるいはばらつきが大きくなる場合があり、粘着テープとした際の手切れ性もばらつきが大きくなる場合がある。
【0016】
本発明の粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法において、得られる粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度は4.0〜6.0cN/dtexとする必要がある。強度が4.0cN/dtex未満の場合、このポリエステル繊維を用いてなる粘着テープ基布の引っ張り強力は不十分なものとなる。また強度が6.0cN/dtexを越える場合は引っ張り強力は十分であるものの手切れ性に劣るものとなる。
【0017】
本発明の粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法において、得られる粘着テープ基布用ポリエステル繊維の伸度は12〜22%とする必要がある。伸度が12%未満の場合、手切れ性には優れるものの沸収も同時に低下してしまうため、粘着テープとする際の熱処理後の強力低下が大きくなる。また22%を越える場合は手切れ性に劣ったものとなる。
【0018】
本発明の粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法において、得られる粘着テープ基布用ポリエステル繊維の沸収は6.5〜10%とする必要がある。6.5%未満では手切れ性には優れるものの沸収も同時に低下してしまうため、粘着テープとする際の熱処理後の強力低下が大きくなる。また10%を越える場合は粘着テープとする際の熱処理時の収縮が大きすぎるため、仕上がった粘着テープの寸法のバラツキが大きくなる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)延伸糸切れ
各実施例および比較例中の条件にて、64錘建て延伸機を用いて800m/分の延伸速度で10時間延伸を行い、糸切れが1回以下の場合を◎、2〜3回を○、4〜5回を△、6回以上を×と判定した。
(3)強度および伸度
ORIENTEC社のTENSILON RTC−1210Aを用い、試長200mm、引張速度200mm/分で測定した。
(4)沸収
得られたフィラメントの各サンプルをカセ取り機にて10回巻き取り、0.09cN/dtexの荷重をかけて処理前試料長S1(cm)を測定し、100℃の沸騰水中で15分処理する。これを8時間以上自然乾燥した後、0.09cN/dtexの荷重をかけて処理後試料長S2(cm)を測定し、次式より算出した。
沸騰水収縮率={(S1−S2)/S1}×100
(5)粘着テープ基布および粘着テープの引っ張り強力
JIS規格L0105−1994「物理試験方法通則」中の5.(試料及び試験片の採取及び準備)5.3(布状の試料及びその試験片)(1)(織物の場合)に従い試料を準備する。この試料を用い、長さ30cm、幅5cmの試験片に調製し、3枚重ねて、JIS規格L1096−1999「一般織物試験方法」中の8.12(引張強さ及び伸び率)8.12.1(標準時)a)(A法(ストリップ法))に記載の「ラベルドストリップ法」に従って、つかみ間隔20cm、引張速度20cm/分(定速伸長型)にて3回試験して得られた切断時の強さ(N)の平均を引っ張り強力とした。
(6)粘着テープの手切れ性評価
得られた粘着テープを用い、幅方向に手で裂く操作を実施する。その結果、切り口が一様で容易に裂けた場合を◎、切り口は一様であるが裂くのに多少の力を要した場合、あるいは裂くのは容易だったが切り口が部分的に乱れる場合があったものを○、一応裂けたが多少力を要し、かつ切り口が部分的に揃っていない場合を△、裂けない場合あるいは裂けてもまったく直線状になっていない場合を×と判定した。
【0020】
実施例1
ポリマーの固有粘度IVが0.65のポリエチレンテレフタレートのホモポリマーペレットを乾燥し、水分率を30ppm以下とする。この乾燥ペレットを溶融し24孔の口金からポリマー温度290℃で溶融吐出し、1重量%の油剤を付与した後、紡糸速度1600m/分で引き取り、一旦巻き取って未延伸糸とする。この未延伸糸を1段目倍率1.3倍、温度80℃、2段目倍率2.7倍、温度110℃で2段延伸し、44dtex24フィラメントの粘着テープ基布用ポリエステル繊維を得た。延伸時の糸切れおよび得られた粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収は表1のとおりとなった。延伸糸切れが少なく安定な操業状況であることがわかる。
【0021】
得られた粘着テープ基布用ポリエステル繊維を経糸および緯糸として用い、経糸密度および緯糸密度を54本/inchでウォータージェットルームを使用して製織し、粘着テープ基布とした。これの引っ張り強力は表1のとおりとなった。
【0022】
得られた粘着テープ基布を、粘着テープ製造工程にて幅5.5cmの粘着テープとしたものについて引っ張り強力および手切れ性を評価した結果を表1に示す。優れた引っ張り強力、および手切れ性を達成している。
【0023】
実施例2
紡糸速度を1450m/分とし、延伸を3段にて実施し、その延伸倍率を1段目1.2倍、2段目1.4倍、3段目2.3倍、延伸温度を1段目80℃、2段目95℃、3段目120℃とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れが少なく、優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0024】
実施例3
ポリマーのIVを0.62、紡糸速度を1600m/分、3段延伸の延伸倍率を1段目1.2倍、2段目1.5倍、3段目2.0倍とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れが少なく、優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0025】
実施例4
ポリマーのIVを0.68、紡糸速度を1200m/分、3段延伸の延伸倍率を1段目1.3倍、2段目1.5倍、3段目2.4倍とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れが少なく、優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0026】
実施例5
紡糸速度を2000m/分とし、2段延伸の延伸倍率を1段目1.1倍、2段目2.2倍とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れが少なく優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0027】
実施例6
紡糸速度を2000m/分とし、3段延伸の延伸倍率を1段目1.1倍、2段目1.3倍、3段目1.8倍とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れが少なく、優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0028】
実施例7
2段延伸の延伸倍率を1段目1.5倍、2段目2.1倍とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れが少なく、優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0029】
比較例1
2段延伸の延伸倍率を1段目1.2倍、2段目3.1倍とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れおよび手切れ性が劣ることがわかる。
【0030】
比較例2
3段延伸の延伸倍率を1段目1.1倍、2段目1.2倍、3段目2.8倍とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れおよび手切れ性が劣ることがわかる。
【0031】
比較例3
3段延伸の延伸倍率を1段目1.4倍、2段目1.6倍、3段目1.7倍とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れおよび手切れ性が劣ることがわかる。
【0032】
比較例4
ポリマーのIVを0.61とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れ、引っ張り強力および手切れ性のいずれについても充分ではないことがわかる。
【0033】
比較例5
ポリマーのIVを0.70、3段延伸の倍率を1段目1.2倍、2段目1.4倍、3段目2.3倍とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、引っ張り強力には優れるものの、延伸糸切れが多く、手切れ性についても大きく悪化した。
【0034】
比較例6
紡糸速度を1000m/分、延伸段数を4段とし、各段の延伸倍率を1段目1.2倍、2段目1.4倍、3段目2.0倍、4段目1.1倍とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れ、引っ張り強力および手切れ性のいずれについても充分ではないことがわかる。
【0035】
比較例7
紡糸速度を2200m/分、延伸段数を1段とし、その延伸倍率を2.8倍とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表1のとおりとなり、延伸糸切れ、引っ張り強力および手切れ性のいずれについても大きく悪化したことがわかる。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例8〜10
2段延伸の1段目延伸温度を75℃(実施例8)、95℃(実施例9)、105℃(実施例10)とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表2のとおりとなり、特に実施例9が優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0038】
実施例11〜13
2段延伸の2段目延伸温度を90℃(実施例11)、120℃(実施例12)、130℃(実施例13)とした以外は実施例1と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表2のとおりとなり、特に実施例12が優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0039】
【表2】

【0040】
実施例14〜17
3段延伸の1段目延伸温度を65℃(実施例14)、75℃(実施例15)、85℃(実施例16)、90℃(実施例17)とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表3のとおりとなり、特に実施例15および16が延伸糸切れが少なく、かつ優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0041】
実施例18〜21
3段延伸の2段目延伸温度を80℃(実施例18)、85℃(実施例19)、110℃(実施例20)、120℃(実施例21)とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表3のとおりとなり、特に実施例19および20が延伸糸切れが少なく、かつ優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0042】
実施例22〜25
3段延伸の3段目延伸温度を100℃(実施例22)、110℃(実施例23)、130℃(実施例24)、140℃(実施例25)とした以外は実施例2と同様の方法で粘着テープ基布用ポリエステル繊維、粘着テープ基布および粘着テープを得た。延伸糸切れおよび粘着テープ基布用ポリエステル繊維の強度、伸度、沸収、粘着テープ基布の引っ張り強力、粘着テープの引っ張り強力および手切れ性は表3のとおりとなり、特に実施例23および24が延伸糸切れが少なく、かつ優れた引っ張り強力および手切れ性を有することがわかる。
【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸した未延伸糸を一旦巻き取った後、2段または3段で延伸して延伸糸を製造するに際して、固有粘度0.62〜0.68の共重合成分を含まないポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸速度が1200〜2000m/分で、かつ2段での延伸において、1段目が1.1〜1.5倍、2段目が2.0〜3.0倍の倍率で、または3段での延伸において、1段目が1.1〜1.3倍、2段目が1.3〜1.5倍、3段目が1.8〜2.5倍の倍率で延伸して、強度4.0〜6.0cN/dtex、伸度12〜22%、沸収6.5〜10%の延伸繊維とすることを特徴とする粘着テープ基布用ポリエステル繊維の製造方法。

【公開番号】特開2008−31566(P2008−31566A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203068(P2006−203068)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】