説明

粘着テープ用基布

【課題】
手切れ性に優れ、かつ切り口が美しく、表面が滑らかで外観が良好な粘着テープ基布用織物を提供する。
【解決手段】
経糸の一部が溶融し、緯糸に適度に固定された粘着テープ基布用織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ用基布に関する。より詳しくは、経糸が適度な強度を有し、緯糸に適度に固定されていることから、手切れ性に優れ、かつ切り口が美しく、表面が滑らかで外観が良好な粘着テープ用基布に関する。
【背景技術】
【0002】
梱包や固定、仮止め等に使用される粘着テープ、または医療用に用いられるにサージカルテープにとって、手切れ性が非常に重要である。古くからはレーヨン紡績糸やビニロン繊維が用いられてきたが、湿潤時の寸法安定性や強度低下の問題から、ポリエチレン繊維やポリエステル繊維が用いられるようになってきた。しかしながら手切れ性が課題であり、手切れ性を向上させるためのポリマー改質技術や仮撚り加工などの糸加工技術、さらには織物にフィルムなどをラミネートする後加工技術が検討されている。
【0003】
ポリエステルの改質技術としては、金属スルホネート基を有するイソフタル酸成分を共重合させた高収縮で低融点に改質したポリエステルポリマーからなる繊維を用いた仮撚り加工糸を経糸に用いた織物を熱処理することにより、経糸の強度を低下させ、粘着テープとしたときに優れた手切れ性を得る技術(特許文献1、2)が知られている。
また共重合ポリエステルのマルチフィラメントを経糸に用いた織物を用いて、高次加工時の熱で強度を低下させ、粘着テープとしたときに優れた手切れ性を得る技術(特許文献3)も開示されている。
しかしながらこれら技術においては、加工時の熱で経糸全てが強度低下してしまうため、経糸の強度が安定せず、強度が不足し、粘着テープとしての形態保持性や作業性が損なわれる問題があった。また経糸と緯糸が融着するほど加熱することができないため、緯糸による経糸の拘束力が弱く、経糸が切断され難くいため、手切れ性を均一に得ることができないことから、手切れ性が著しく悪い部分ができ、作業者が粘着テープの切断を失敗することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−222240号公報
【特許文献2】特許第2903723号公報
【特許文献3】特許2010−95821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑み、優れた手切れ性と適度な機械的強度を両立し、作業性に優れる手切れテープまたはサージカルテープ等に用いられる基布とそれを用いた手切れテープ、サージカルテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために本発明は、次の(1)〜(9)の構成を特徴とするものである。
(1)経糸が融点の10℃以上異なる少なくとも2種類の成分からなり、経糸の低融点成分が溶融することにより、経糸と緯糸の少なくとも1箇所が融着されていることを特徴とする粘着テープ用基布。
(2)前記経糸がポリエステル100%からなる異収縮混繊マルチフィラメントであることを特徴とする(1)に記載の粘着テープ用基布。
(3)前記経糸において低融点成分の重量比率が、20%以上90%以下であること特徴とする(1)または(2)に記載の粘着テープ用基布。
(4)前記経糸の総繊度が100デシテックス以下のマルチフィラメントであり、フィラメント数が10以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
(5)前記経糸と前記緯糸の総繊度の差が30デシテックス以上であることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
(6)該緯糸が仮撚り加工糸であることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
(7)該経糸の密度が66本/2.54cm以上で、かつ前記緯糸の密度が70本/2.54cm以上であることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着テープ用基布を使用した粘着テープ。
(9)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着テープ用基布を使用したサージカルテープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、経糸の一部が溶融し、緯糸に適度に固定されていることから、適度な強度と、優れた手切れ性を有する粘着テープ用基布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明の粘着テープ基布用織物は、経糸と緯糸の少なくとも1箇所が融着されてなる。粘着テープを素手で切断する際、経糸と緯糸の融着点が支点となり経糸が切断しやすくなるため、優れた手切れ性が発現する。
本発明の粘着テープ用基布は、経糸が、融点の差が10℃以上である少なくとも2種類の成分から構成されていることを特徴とする。融点の差が10℃未満であると融点の差が小さすぎるので、低融点成分だけでなく、高融点成分の強度も弱くなり、粘着テープとして使用に耐えられる十分な強度が得ることができず、また経糸の全ての成分が緯糸と融着してしまうため、風合いが硬くなり、粘着テープとして作業性が悪くなり、好ましくない。
本発明の「経糸が融点の10℃以上異なる少なくとも2種類の成分からなる」場合とは、融点の異なる2種類以上の繊維を経糸に使用する場合と、融点の異なる2種類以上の成分から構成される繊維を経糸に使用する場合の両方が含まれる。
2種類以上の繊維を経糸に使用する方法としては、融点の異なる繊維を2種類以上引きそろえて整経し、低融点成分を有する繊維と高融点成分の繊維を互い違いに配列させ、織物組織を構成することが好ましい。織物組織は特に限定されないが、平織、綾織、朱子織やその変化組織、製織する際に低融点成分を有する繊維と高融点成分の繊維を絡ませた絡み織組織やドビー織機やジャガード織機で製織された特殊な組織も使用できる。中でも粘着テープの基布とした場合の強度や風合い、また軽量で生産性も高いことから平織物が最適である。
また、融点の異なる2種類以上の成分から構成される繊維を経糸に使用する方法としては、低融点成分を鞘部に高融点成分を芯部とした芯鞘糸やサイドバイサイド糸を用いる方法、低融点成分の短繊維と高融点成分の短繊維を混紡した紡績糸を経糸に使用する方法、低融点成分の長繊維と高融点成分の長繊維を合撚、または仮撚り加工する方法、高融点成分を有する繊維を芯に低融点成分を有する繊維を巻き付けたカバードヤーンとする方法、低融点成分と高融点成分を同時に紡糸して引きそろえ、延伸する異収縮混繊糸等を使用することができる。中でも異収縮混繊糸は、生産性が高く、低コストであるだけでなく、低融点成分が溶融して繊維の形状が無くなっても高融点成分が繊維の状態で残るので、適度な強度を有することができ、また低融点成分からなる単糸と高融点成分からなる単糸が絡み合って両成分が緯糸と接しているため、経糸と緯糸が接している全面で接着されず、不連続に接着(点接着)されるため、十分な接着力で融着されているにも関わらず、手切れテープとして重要な風合いが損なわれないので最適である。
本発明の粘着テープ基布用織物の経糸としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリイミド繊維、ポリアセタール繊維、ポリエーテル繊維、ポリスチレン繊維、ポリカーボネート繊維、ポリエステルアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエーテルエステル繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルブチラール繊維、ポリフッ化ビニリデン繊維、エチレン−酢酸ビニル共重合繊維、フッ素樹脂系繊維、スチレン−アクリル共重合繊維、アラミド繊維などの合成繊維や、木綿、麻、羊毛等の天然繊維などを挙げることができる。なかでも吸湿安定性や熱安定性等に優れることからポリエステル100%からなる繊維が好ましく用いられる。
本発明の織物の経糸に使用できるポリエステル100%の繊維としては、テレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート樹脂を高融点成分とし、それよりも10℃以上融点の低い共重合ポリエステル樹脂を低融点成分とする繊維が好ましく使用できる。共重合ポリエステル樹脂としては、特に限定されるものではないが、テレフタル酸とエチレングリコールを基本骨格とし、共重合成分としてイソフタル酸等やポリアルキレングリコールやビスフェノールA等を1種類または2種類以上組み合わせて共重合させ、融点を低下させた樹脂が好ましく用いられる。
本発明の粘着テープ用基布の緯糸を構成する成分は、経糸の低融点成分と同種類の樹脂からなることが好ましい。経糸と同種類の樹脂であれば、融着したときに十分な接着強度を得ることができるためであり、例えば経糸がポリエステル繊維ならば、緯糸もポリエステル繊維であることが好ましい。また、緯糸の融点は、経糸の低融点成分の融点より高いことが好ましい。経糸の低融点成分を溶融させるとき、緯糸が溶融しないので、緯糸の強度低下が少なく、素手で経糸を切断する際に緯糸が支点として作用し、良好な手切れ性を得ることができる。
【0009】
本発明の経糸においては、高融点成分と低融点成分の重量比率により、融着後の経糸の強度と経糸と緯糸の融着強度を調整することができ、優れた手切れ性を有する経糸を得ることができる。低融点成分の重量比率としては、20%以上90%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、低融点成分重量比率が30%以上60%以下、更に好ましくは45%以上55%以下であることが好ましい。低融点成分が20%未満になると緯糸と融着面積や融着点が少なく、十分な強度で経糸と緯糸を固定できないがないことから経糸を切断する支点となりにくく、良好な手切れ性を得ることができない場合がある。また、低融点成分が90%を超えると、溶融した際に、繊維強度が大きく低下し、風合いも硬くなるため、粘着テープとしての作業性が損なわれてしまう傾向がある。
【0010】
本発明の経糸は、100デシテックス以下のマルチフィラメントであることが好ましい。100デシテックスを超えると、織物が厚くなり、目付けが重くなり、風合いも硬くなるため、粘着テープ基布としての作業性が悪くなる場合がある。
【0011】
また、本発明の粘着テープ基布用織物の経糸は、フィラメント数が10以上のマルチフィラメントであることが好ましい。フィラメント数を10以上にすることで、単糸が細く、素手で切断しやすいため、良好な手切れ性を得ることができる。また繊維がしなやかであり、粘着テープ基布として好適な風合いのしなやかな織物を得ることができる。
【0012】
また、経糸と緯糸の繊度の差が30デシテックス以上あることが好ましい。更に好ましくは、経糸と緯糸の繊度の差が60デシテックス以上である。経糸と緯糸の繊度の差が30デシテックス以上ある場合は、緯糸は経糸と比較して、十分強い強度と高い剛性を有することから、素手で経糸を切断する際の支点となり、良好な手切れ性を得ることができるが、経糸と緯糸の繊度の差が30デシテックス未満である場合は、緯糸と経糸の強度と剛性の差が小さいことから、素手で経糸を切断する際、緯糸が支点とならない上に、経方向にも緯方向にも裂け易くなるため、良好な手切れ性を得にくくなる傾向がある。
本発明の緯糸は、仮撚り加工糸であることが好ましい。仮撚り加工糸の捲縮による凸凹に経糸の融着成分が入り込むアンカー効果により、経糸と緯糸の融着強度を高くすることができる。また、仮撚り加工糸は嵩高で繊維断面が大きいことから、剛性が高く、素手で経糸を切断する際の支点としての効果が高くなり、良好な手切れ性を得ることができる。
【0013】
本発明の経糸密度は66本/2.54cm以上、かつ緯糸密度は70本/2.54cm以上であることが好ましい。経糸の密度を66本/2.54cm以上にすることにより、手切れテープとして必要な形態安定性と強度を達成できる。緯糸の密度を70本/2.54cm以上にすることにより、経糸の拘束性が高くなり、素手で経糸を切断する際の支点としての効果が高くなり、良好な手切れ性を得ることができる。
本発明基布の経糸と緯糸を融着する方法としては、織物に経糸の低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満の熱を与え、低融点成分を溶融させて経糸と緯糸を融着させる方法が挙げられる。熱を付与する方法は特に限定されないが、熱風乾燥機やテンターやスチームセッター、熱ロールやカレンダーロールによる熱の付与が可能である。その中でも連続して高速で熱を付与することができるテンターが最適である。
【0014】
本発明の基布は、少なくとも片面が撥水処理されていることが好ましい。粘着テープにする際、粘着剤を塗布するが、粘着剤が織物塗布面の反対側に裏抜けして、織物の外観を損なうことや加工機を汚してしまうという問題を防ぐことができる。撥水処理の方法として、撥水剤の分散液に織物を浸漬し、ニップロールで絞り、テンターで乾燥する方法(Dip−nip法)やロールコーターやナイフコーターでコーティングする方法が好ましく使用できる。
本発明の粘着テープ用基布は、粘着テープまたはサージカルテープ用の基布として好適に用いられる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本実施例で用いる各種特性の測定方法および総合評価の判断基準は、以下のとおりとした。
[特性の測定方法]
以下の測定方法の内、特に断りのないものは、試料の調整、及び測定は、JIS L 0150の標準状態(20±2℃、相対湿度65±4%)で行った。
(1)厚さ(mm)
JIS−L−1096.8.5に準じて、織物の任意の場所5箇所から5×5cmの試験片を採取し、測定径10mmφ、測定力2.4Nのダイヤルシックネスゲージ(H−2.4N、株式会社尾崎製作所製)を用いて試験片の5箇所を測定し、平均値を算出した。
(2)織密度(繊維布帛が織物の場合)
JIS−L−1096.8.6.1に準じて、織物の経糸密度および緯糸密度を、2.54cm(1インチ)の区間にて測定した。
(3)引張強力(N/19mm)
JIS L 10968.12.1に準じて、織物の意の場所から経、緯それぞれ5箇所から試験片を採取しそれぞれの方向ごとに幅19×長さ300mmの試験片を採取し、定速引張試験を用いて、引張長200mm、引張速度200mm/分の条件で引張試験を行い、その平均値を算出した。
(4)引き裂き強力(N)
JIS−L−1096.8.15.1に規定される引き裂き強力(シングルタング法)に準拠した方法により求めた。測定は織物の任意の場所5箇所から試験片を採取し、その測定結果の平均値を算出した
(5)融点(℃)
JIS−K−7121に準じて、 示差走査熱量計DSC(DSC−60、島津製作所社製)を用い測定を行った。測定は試料2.0mgを昇温速度10℃/min、目標温度300℃、ホールド時間5分間にて行い、得られた融解吸熱曲線(昇温時)の極値の温度を融点(℃)とした。試験回数は5回とし、その平均値より算出した。
(6)手切れ性
織物を手で引き裂き、引き裂き面をマイクロスコープで100倍に拡大して観察して判定した。判定は粘着テープの全幅にわたって、切れ残った経糸(髭)が見られなかった場合を“○”、切れ残った経糸(髭)が1〜2本ある場合は、“△”、切れ残った経糸(髭)が3本以上あったり、切れなかった場合は、“×”とした。
(7)粘着テープの総厚(mm)
JIS−Z−0237に準じて、粘着テープの任意の場所3箇所を測定径10mmφ、測定力2.4Nのダイヤルシックネスゲージ(H−2.4N、株式会社尾崎製作所製)を用いて測定し、平均値を算出した。
(8)粘着テープの粘着力(ステンレス板との粘着力、N)
JIS−Z−0237(引きはがし方向および方法は方法1)に準じて、幅19mmの粘着テープをステンレス板に貼り、手動式圧着装置にて圧着し、温度23±1℃、湿度50±5%で12時間養生し、試験片を得た。引張試験機を用いて、チャックの一方に粘着テープをもう一方にステンレス板を固定し、ステンレス板に対して180度の方向(粘着テープの背面同士が重なる方向)に5±1mm/minで引張り、引きはなし粘着力を測定した。
(9)粘着テープの粘着力(テープ背面との粘着力、N)
JIS−Z−0237(引きはがし方向および方法は方法2)に準じて、幅19mmの粘着テープをもう一方の粘着テープの背面に貼り、手動式圧着装置にて圧着し、試験片を得た。圧着後1分以内に引張試験機を用いて、粘着テープの背面同士が重なる方向に5±1mm/minで引張り、引きはなし粘着力を測定した。
(10)粘着テープの引張強さ(経方向、N/mm)および伸度(経方向、%)
JIS−Z−0237に準じて、幅19mmの粘着テープから、長さ400mmの試験体を5個採取し、直径約100mmのドラム型チャックに巻きつけ、引張速度5mm/minで引張り、その平均値より求めた。
[実施例1]
総繊度84デシテックス、フィラメント数36本のマルチフィラメントであって、36本の単糸のうち18本がポリエチレンテレフタレート(融点255℃)樹脂からなり、他の18本の単糸が共重合ポリエステル樹脂(テレフタル酸・イソフタル酸・ビスフェノールA・エチレングリコール重縮合物、融点233℃)からなる異収縮混繊糸を経糸に用いて、緯糸に総繊度150デシテックスのポリエステル仮撚り加工糸を用いて、経密度69本/2.54cm、緯密度78本/2.54cmの平織物を得た。この織物を240℃に設定したピンテンターで30秒間、熱セットし、経糸の共重合ポリエステル成分を溶融させ、経糸と緯糸の一部を融着させ、粘着テープ用基布を得た。
【0016】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
ポリエチレンテレフタレート(融点255℃)樹脂からなるポリエステル繊維と共重合ポリエステル(テレフタル酸・イソフタル酸・ビスフェノールA・エチレングリコール重縮合物、融点233℃)からなるポリエステル繊維を60t/mで合撚した総繊度44デシテックス、フィラメント数18本の合撚糸を経糸とし、緯糸に総繊度150デシテックスのポリエステル仮撚り加工糸を用いて、経密度69本/2.54cm、緯密度78本/2.54cmの平織物を得た。この織物を240℃に設定したピンテンターで30秒間過熱し、経糸の共重合ポリエステル成分を溶融させ、経糸と緯糸の一部を融着させ、粘着テープ用基布を得た。
【0017】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1で得た粘着テープ用基布の片面に水系アクリルエマルジョン粘着剤をロールコーターでコーティングし、ピンテンターで乾燥して粘着層を形成し、粘着テープを得た。
【0018】
得られた粘着テープの評価結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1の平織物を熱セットせず、そのままの織物を粘着テープ用基布とした。
【0019】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[比較例2]
ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点255℃)からなる総繊度84デシテックス、フィラメント数36本のマルチフィラメントを経糸に用いて、緯糸に総繊度150デシテックスのポリエステル仮撚り加工糸を用いて、経密度69本/2.54cm、緯密度78本/2.54cmの平織物を得た。この織物を240℃に設定したピンテンターで30秒間、熱セットし、粘着テープ用基布を得た。
【0020】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[比較例3]
共重合ポリエステル樹脂(テレフタル酸・イソフタル酸・ビスフェノールA・エチレングリコール重縮合物、融点233℃)からなる総繊度84デシテックス、フィラメント数36本のマルチフィラメントを経糸に用いて、緯糸に総繊度150デシテックスのポリエステル仮撚り加工糸を用いて、経密度69本/2.54cm、緯密度78本/2.54cmの平織物を得た。この織物を220℃に設定したピンテンターで30秒間、熱セットし、経糸の共重合ポリエステル成分を溶融させ、経糸と緯糸の一部を融着させ、粘着テープ用基布を得た。
【0021】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[比較例4]
比較例3の平織物を240℃に設定したピンテンターで30秒間、熱セットしたところ、経糸の共重合ポリエステル成分が溶融し、織物に穴が開いたため、粘着テープ用基布を得ることができなかった。
【0022】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[比較例5]
ジアセテート樹脂(融点260℃)からなる総繊度75デシテックス、フィラメント数21本のマルチフィラメントを経糸に、経糸と同じジアセテート樹脂からなる総繊度150デシテックス、フィラメント数48本のマルチフィラメントを緯糸に用いて、経密度178本/2.54cm、緯密度62本/2.54cmの平織物とし、粘着テープ用基布を得た。
【0023】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[比較例6]
ジアセテート樹脂(融点260℃)からなる総繊度75デシテックス、フィラメント数21本のマルチフィラメントを経糸に用い、緯糸にトリアセテート樹脂(融点290℃)からなる総繊度150デシテックス、フィラメント数48本のマルチフィラメントを緯糸に用いて、経密度178本/2.54cm、緯密度62本/2.54cmの平織物を得た。この織物を240℃に設定したピンテンターで30秒間、熱セットし、粘着テープ用基布を得た。
【0024】
得られた基布の評価結果を表1に示す。
[比較例7]
比較例5で得た粘着テープ用基布の片面に水系アクリルエマルジョン粘着剤をロールコーターでコーティングし、ピンテンターで乾燥して粘着層を形成し、粘着テープを得た。
【0025】
得られた粘着テープの評価結果を表2に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1によれば、実施例1、2においては、適度な機械的強度と優れた手切れ性を両立し、かつ切り口が美しく、表面が滑らかで外観が良好な粘着テープ基布用織物が得られた。
しかし、比較例1〜6では、適度な機械的強度と優れた手切れ性を両立することが、できなかった。比較例1〜2、および5〜6においては、機械的強度には優れるが、良好な手切れ性を得ることはできなかった。比較例3では、容易に手で切断することができるが、機械的強度と形態安定性に問題があるものとなった。比較例4では、経糸が溶融して織物に穴が開き、所望の織物が得られなかった。
【0028】
【表2】

【0029】
表2によれば、実施例3において、粘着テープとして、薄く優れた粘着性能(粘着力が高い)と引き出しやすさ(テープ背面との粘着力が低い)を有し、適度な機械的強度と優れた手切れ性を両立し、かつ切り口が美しく、表面が滑らかで外観が良好な粘着テープが得られた。しかし、比較例7においては、粘着テープとして十分な粘着力を有するが、実施例3と同程度に粘着剤を塗布した場合、実施例3と比較して粘着力が低いにも関わらず、引き出しやすさが悪化(テープ背面との粘着力が高い)し、手切れ性も劣るものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸が融点の10℃以上異なる少なくとも2種類の成分からなり、経糸の低融点成分が溶融することにより、経糸と緯糸の少なくとも1箇所が融着されていることを特徴とする粘着テープ用基布。
【請求項2】
前記経糸がポリエステル100%からなる異収縮混繊マルチフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ用基布。
【請求項3】
前記経糸において低融点成分の重量比率が、20%以上90%以下であること特徴とする請求項1または2に記載の粘着テープ用基布。
【請求項4】
前記経糸の総繊度が100デシテックス以下のマルチフィラメントであり、フィラメント数が10以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
【請求項5】
前記経糸と前記緯糸の総繊度の差が30デシテックス以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
【請求項6】
該緯糸が仮撚り加工糸であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
【請求項7】
該経糸の密度が66本/2.54cm以上で、かつ前記緯糸の密度が70本/2.54cm以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の粘着テープ用基布。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の粘着テープ用基布を使用した粘着テープ。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の粘着テープ用基布を使用したサージカルテープ。

【公開番号】特開2012−97373(P2012−97373A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245886(P2010−245886)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】