説明

粘着テープ

【課題】 再生または再利用が可能な部品に対して適切な接着性を発揮し、部品より剥離する際は、加熱等の特別な処理を施すことなく剥離が可能で、プラスチックや金属、ウレタンフォーム等幅広い被着体に対しても有用な粘着剤及び粘着テープを提供する。
【解決手段】 (a)n−ブチルアクリレート50重量部以上、高極性ビニルモノマー1〜5重量部、架橋剤と反応する官能基を持つビニルモノマーを必須成分としてなるアクリル共重合体100重量部と、(b)粘着付与樹脂10〜40重量部からなる粘着剤組成物を架橋した粘着剤であり、前記粘着剤のtanδのピークが5℃以下にあり、50℃での貯蔵弾性率G’が6×10(Pa)を越え2×10(Pa)以下、130℃でのtanδが1以下であることを特徴とする強接着再剥離型粘着剤を使用した粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再利用が可能な部品に対して強固な接着性を発揮し、部品より剥離する際は、加熱等の特別な処理なしに糊残りなく剥離が可能で、プラスチックから金属までの幅広い被着体に対しても有用な粘着剤及び粘着テープ類に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープ類は作業性が良好なことから各種産業分野にて利用されている。また近年、地球環境保護の高まりから省資源等を目的として、製品に使用されている再利用可能な部品については使用後に分解して再利用することが多くなってきている。この際、粘着テープ類を使用している場合には、部品に貼付されたテープ類を剥離する作業が必要になることがあるが、一般的に剥離作業は困難であることが多い。例えば不織布を基材とした両面粘着テープの場合、剥離時に両面粘着テープを引っ張るとすぐに切れてしまうという問題があった。また、剥離時に粘着剤が被着体に残ることがあり、溶剤で拭き取らなければならない等作業環境面でも問題が多く剥離作業を困難なものにしていた。
【0003】
上記問題を解決する手段として、特開平9−272850号公報には、不織布の種類及び強度、アクリル粘着剤の貯蔵弾性率を特定した両面粘着テープが提案されている。しかしながら、被着体が金属の場合、剥離時にテープが切れたり、粘着剤が被着体に残る問題があった。また、特開平08−209086号公報には、窒素を含有するビニルモノマーを共重合したアクリル系粘着剤と高強度の不織布の組み合わせた両面粘着テープが提案されている。この両面粘着テープは、プラスチックから金属まで幅広い被着体に対して強接着性と再剥離性を両立できるが、OA機器のシール材等に多く使用されているエーテル系ウレタンフォームへの接着性が不十分といった問題があった。
【特許文献1】特開平9−272850号公報
【特許文献2】特開平08−209086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題とするところは、再利用が可能な部品に対して強固な接着性を発揮し、部品より剥離する際は、加熱等の特別な処理なしに糊残りなく剥離が可能で、接着しづらいエーテル系ウレタンフォームから各種プラスチック、金属までの幅広い被着体に対しても有用な粘着テープ類を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究した結果、(メタ)アクリル共重合体に粘着付与樹脂を添加した粘着剤組成物を架橋した粘着剤が、特定の動的粘弾性の範囲にあるときに、再剥離性、エーテル系ウレタンフォームへの接着性をはじめとする物性を満足できることを見いだした。また本粘着剤を使用した粘着テープ類を用いることにより、再利用が可能なプラスチックや金属製部品に対して強固な接着性を発揮し、部品より剥離する際は加熱等の特別な処理なしに糊残りなく剥離が可能になることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は基材の少なくとも片面に粘着剤が設けられた粘着テープであって、
前記粘着剤が、(a)n−ブチル(メタ)アクリレート50重量部以上、カルボキシル基を持つビニルモノマー又は窒素含有ビニルモノマーの一種以上を1〜5重量部、水酸基含有ビニルモノマー0.01〜5重量部を必須成分として調製されるアクリル共重合体100重量部と、(b)粘着付与樹脂10〜40重量部からなる粘着剤組成物を架橋した粘着剤であり、前記カルボキシル基を持つビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及び(メタ)アクリル酸2量体から選ばれる少なくとも一種であり、前記窒素含有ビニルモノマーが、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド及びジメチルアミノアクリレートから選ばれる少なくとも一種であり、前記粘着剤の周波数1Hzにて測定されるtanδのピークが5℃以下にあり、50℃での貯蔵弾性率G’が6×10(Pa)を越え2×10(Pa)以下、130℃でのtanδが1以下である粘着テープにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の強接着再剥離型粘着剤を用いたテープ類を用いることにより、再利用が可能な部品、ステンレスやプラスチック部品、エーテル系ウレタンフォーム等に対して強固な接着性を発揮し、部品より剥離する際は、加熱等の特別な処理なしに糊残りなく剥離することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いるアクリル共重合体はn−ブチル(メタ)アクリレート、高極性ビニルモノマー、架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーを必須成分としてなる。
【0009】
また、上記以外にも炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーも使用でき、本発明に使用される(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、特に限定されないが、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0010】
また粘着剤を塗工する際の塗工性をあげるために共重合する炭素数1〜3までのメタクリル酸アルキルエステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0011】
高極性ビニルモノマーとしては、カルボキシル基含有ビニルモノマー、窒素含有ビニルモノマー等が挙げられる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2量体等が、窒素含有ビニルモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノアクリレート等が挙げられる。また、必要に応じてアクリル共重合体の凝集力を上げるために、酢酸ビニル等を共重合しても良い。
【0012】
架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーとしては、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有ビニルモノマーや、アミンを含有ビニルモノマー等が挙げられる。
【0013】
アクリル共重合体を100重量部とした場合、炭素数1から14の(メタ)アクリル酸アルキルエステル量が、50重量部より少ない場合は、初期接着性が著しく低下する。高極性ビニルモノマー量が1重量部未満の場合は、凝集力が低下し粘着テープをリサイクル部品より剥離する際に糊残りが生じる。また5重量部を越えると、低温接着性、エーテル系ウレタンフォームへの接着性が損なわれる。
【0014】
架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー量が、0.01重量部未満では、例えば架橋剤としてイソシアネート化合物を用いた場合、架橋反応性が著しく低下し、5重量部を越える場合は感圧接着剤溶液のポットライフが著しく低下する。
【0015】
本発明で使用する粘着付与樹脂としては特に限定されるものではないが、重合ロジンエステル系の粘着付与樹脂を少なくとも1種以上添加することが好ましい。
【0016】
アクリル共重合体100重量部に対する粘着付与樹脂の添加量は10〜40重量部である。10重量部未満ではポリオレフィンに対する接着性が低下し、40重量部を超えると低温性が悪化する。
【0017】
粘着剤を架橋する架橋剤は特に限定されないが、イソシアネート系化合物やエポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。
【0018】
本発明の粘着剤は、tanδのピークが5℃以下にあり、50℃での貯蔵弾性率G’が6×10(Pa)を超え2×10(Pa)以下、50℃でのtanδが0.3から0.7の範囲が好ましい。tanδのピークが5℃を超える場合は、低温性が悪化する。50℃での貯蔵弾性率G’が6×10(Pa)以下では、再剥離性が悪化し、2×10(Pa)を超える場合は耐反撥性、定荷重性が悪化する。また130℃でのtanδが1を超える場合は、再剥離性が低下する。
【0019】
前記の強接着再剥離型粘着剤と不織布を用いて作成した両面粘着テープ類の流れ方向と幅方向の引っ張り強度は、粘着テープを剥離する際の切れにくさや、不織布の硬さによる定荷重剥離性の低下を考慮すると、いずれも23℃で1.5〜4.5kgf/20mmであることが好ましい。
【0020】
不織布の材質は、特に限定されるものではないが、好ましくはパルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等からなり、不織布の引っ張り強度を満足するために、必要に応じて抄紙工程でポリアミドを添加し、乾燥後にコーティングする1工程含浸処理や、ビスコースや、熱可塑性樹脂をバインダーとした2工程含浸処理、等をしてもよい。不織布の厚みは、特に限定されるものではないが、30〜200μm、好ましくは50〜150μmである。坪量は、特に限定されるべきものではないが、10〜100g/m、好ましくは15〜50g/mである。また本発明で使用する不織布として、特に限定されないが一般に23℃での流れ方向(MD)と幅方向(TD)の引っ張り強度がいずれも1.0〜3.5kgf/20mmである不織布を使用することが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
〔実施例〕
(1)アクリル共重合体の調製
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に表1の組み合わせのモノマー配合100重量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100部に溶解し、80℃で8時間重合してアクリル共重合体溶液を得た。
【0023】
(2)強接着再剥離型粘着剤の調製
上記のアクリル共重合体100重量部に対し、ロジンエステル系樹脂A−100(荒川化学社製)を10重量部、重合ロジンエステル系樹脂D−135(荒川化学社製)を20重量部添加し、トルエンで希釈混合し固形分45%の強接着再剥離型粘着剤溶液A,B,C,D,Eを得た。
【0024】
(3)テープの調製
上記(2)の粘着剤溶液100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製コロネートL−45、固形分45%)を表2の通り添加し15分攪拌後、剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム上に乾燥後の厚さが65μmになるように塗工して、80℃で3分間乾燥した。得られた粘着シートを、麻100%の麻原紙にビスコースを含浸してなる坪量15g/m、流れ方向(MD)2.5kg/20mm、及び幅方向(TD)2.3kg/20mmの引っ張り強度である不織布の両面に転写し、80℃の熱ロールで4kgf/cmの圧力でラミネートし、不織布に粘着剤を充分含浸させた。その後40℃で2日間熟成し両面粘着テープを得た。
【0025】
実施例1〜3、比較例1〜2で作成した粘着剤溶液及び両面粘着テープについて、以下に示す方法により試験し、評価結果を表1〜4に示した。
【0026】
(1)重量平均分子量
東ソー社製のGPC、SC−8020、高分子量カラムTSKgelGMHHR−Hで、溶媒はテトラヒドロフランを用いて、スチレン換算で重量平均分子量を測定した。
【0027】
(2)塗工性
コンマコーターで塗工速度30m/minのときの粘着剤の塗工面を目視にて評価した。
◎:塗工面が非常に平滑で良好
○:塗工面は平滑で良好
×:塗工面にロールスジが発生
【0028】
(3)動的粘弾性測定
架橋した粘着剤を5mm厚にまで重ね合わせ試験片とした。レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2KSTDに直径7.9mmのパラレルプレートを装着し、試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃までの貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)、損失正接(tanδ)を測定した。
【0029】
(4)引っ張り強度
標線長さ10mm、幅20mmのダンベル状に打ち抜いたサンプルを、テンシロン引っ張り試験機を用い、23℃で引っ張り速度300mm/minの測定条件で行った。
【0030】
(5)再剥離性25μmのポリエステルフィルムで裏打ちした20mm幅の両面粘着テープ試料を表3記載の各被着体に貼付し爪で充分加圧した。貼付後60℃・90%RH雰囲気下で12日間放置し、23℃下で1日冷却した後、約135°の方向にテープ試料を手剥がしした。不織布層での切断の有無及び剥離後の被着体への粘着剤の残り具合を以下の基準で目視評価した。
◎:全面糊残り無し。 (糊残り:0〜5%未満)
○:剥離きっかけ部に糊残り有り。 (糊残り:5〜10%未満)
△:僅かに糊残り有り。 (糊残り:10〜20%未満)
×:広範囲に糊残り有り。 (糊残り:20%以上)
【0031】
(6)定荷重剥離試験
23℃下で25μmポリエステルフィルムで裏打ちした10mm幅の両面粘着テープ試料を、10mm幅×50mmになるように被着体に貼付し、2kgローラー8往復加圧した。40℃下で1時間熟成後、23℃下で両面テープの一端に300g荷重(被着体がエーテル系ウレタンフォームの場合は40g荷重)を吊し、1時間後の剥がれ距離(mm)を測定した。尚、1時間以内に落下した試料に関しては落下時間を測定した。
【0032】
(7)接着力
23℃下で25μmポリエステルフィルムで裏打ちした20mm幅の両面粘着テープ試料をステンレス板に貼付し、2kgローラー8往復加圧した。23℃下で1時間静置した後、180°方向に300mm/minの速度で引っ張り、接着力(kgf/20mm)を測定した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
上記実施例のとおり、本発明の強接着再剥離型粘着剤を用いたテープは、ステンレスやプラスチック部品、エーテル系ウレタンフォーム等の再利用が可能な部品に対して強固な接着性を発揮し、部品より剥離する際は、加熱等の特別な処理なしに糊残りなく剥離することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に粘着剤が設けられた粘着テープであって、
前記粘着剤が、(a)n−ブチル(メタ)アクリレート50重量部以上、カルボキシル基を持つビニルモノマー又は窒素含有ビニルモノマーの一種以上を1〜5重量部、水酸基含有ビニルモノマー0.01〜5重量部を必須成分として調製されるアクリル共重合体100重量部と、(b)粘着付与樹脂10〜40重量部からなる粘着剤組成物を架橋した粘着剤であり、
前記カルボキシル基を持つビニルモノマーが、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及び(メタ)アクリル酸2量体から選ばれる少なくとも一種であり、前記窒素含有ビニルモノマーが、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド及びジメチルアミノアクリレートから選ばれる少なくとも一種であり、
前記粘着剤の周波数1Hzにて測定されるtanδのピークが5℃以下にあり、50℃での貯蔵弾性率G’が6×10(Pa)を越え2×10(Pa)以下、130℃でのtanδが1以下であることを特徴とする粘着テープ
【請求項2】
粘着付与樹脂として、少なくとも1種以上の重合ロジンエステル系樹脂を含む請求項1に記載の粘着テープ
【請求項3】
架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を含有する請求項1又は2に記載の粘着テープ
【請求項4】
前記架橋剤の含有量が、固形分45%の粘着剤組成物100重量部に対し、0.9〜1.3重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着テープ
【請求項5】
n−ブチル(メタ)アクリレートの含有量が、87.5〜96.5重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の粘着テープ
【請求項6】
前記した基材が不織布基材であって、流れ方向と幅方向の引っ張り強度が23℃で1.5〜4.5kgf/20mmである請求項1〜5のいずれかに記載の粘着テープ。

【公開番号】特開2013−79401(P2013−79401A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10168(P2013−10168)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2009−189100(P2009−189100)の分割
【原出願日】平成11年2月17日(1999.2.17)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】