説明

粘着剤及びこれを用いた粘着シート

【課題】シート状に加工した際に柔軟性及び粘着性の何れの特性も損なうことなく、熱伝導性等の諸特性を向上させることのできる粘着剤を提供する。
【解決手段】(A)活性水素含有基を有し、質量平均分子量が800〜20,000の範囲である(メタ)アクリル系樹脂と(B)官能基当量が200〜1500g/eqの範囲であるアクリル系架橋剤、及び、所望により用いられる(C)活性水素含有基を有し、質量平均分子量が20万〜200万の範囲である(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤及びこれを用いた粘着シートに関する。具体的には、熱伝導剤、難燃剤、発泡剤、導電剤といったフィラーを粘着剤層中に高充填した粘着剤及び粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤に求められる基本特性として、粘着力、タック、保持力の3つの特性を挙げることができるが、これらをバランスよく調整することができる点から、アクリル系粘着剤の開発が盛んに行われている。電子機器の高機能化を図るため、その部材である粘着シートに対しても高機能化が求められており、これを実現するための一つの手段として、熱伝導剤、難燃剤、導電剤等のフィラーを粘着剤中に多量に配合させる方法が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。これらのものは粘着力を維持するためには熱伝導剤、難燃剤等の配合量を増やすことができず、熱伝導性、難燃性等の効果がいまだ不十分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−105295号公報
【特許文献2】特開2004−217833号公報
【特許文献3】特開2001−279196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した従来の粘着剤及び粘着シートが有する欠点を克服し、柔軟性及び粘着性の何れの特性を維持しつつフィラーを高充填可能な粘着剤及びこれを利用した粘着シートを提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、粘着剤にフィラーを高充填させた場合においても、柔軟性と粘着性を同時に満足するためには、活性水素含有基を有し、所定の分子量からなる(メタ)アクリル系樹脂及び特定の(メタ)アクリル系架橋剤からなる粘着剤及びこれを用いた粘着シートであることが必要であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の粘着剤及び粘着シートを提供するものである。
【0007】
[1](A)活性水素含有基を有し、質量平均分子量が800〜20,000の範囲である(メタ)アクリル系樹脂と(B)官能基当量が200〜1500g/eqの範囲である(メタ)アクリル系架橋剤からなる粘着剤。
【0008】
[2]更に、(C)活性水素含有基を有し、質量平均分子量が20万〜200万の範囲である(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする[1]に記載の粘着剤。
【0009】
[3](A)成分の酸価が25〜150mgKOH/g、(C)成分の酸価が3〜20mgKOH/gであることを特徴とする[2]に記載の粘着剤。
【0010】
[4](A)成分の水酸基価が25〜150mgKOH/g、(C)成分の水酸基価が3〜20mgKOH/gであることを特徴とする[2]に記載の粘着剤。
【0011】
[5]更に(D)フィラーを含有し、粘着剤中の配合割合が50体積%〜80体積%の範囲であることを特徴とする[1]〜[4]何れかに記載の粘着剤。
【0012】
[6][1]〜[5]何れかに記載の粘着剤をシート状若しくはフイルム上に成形した粘着シート。
【0013】
[7]JIS P8113に準拠して測定した引張破断伸びが30%以上であることを特徴とする[6]に記載の粘着シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粘着剤中にフィラーを多量に配合することが可能であるという特徴を有するため、この粘着剤をシート状に形成したものは、使用するフィラーの性能を向上させ、かつ、柔軟性や粘着性を損なうことがない粘着シートとすることができる。例えば、フィラーとして熱伝導剤を使用した場合にはICパッケージ、トランジスタ若しくはダイオード等の電子部品又は、プラズマディスプレイパネル若しくは液晶ディスプレイパネル等のパネル自体から発生した熱をヒートシンクや放熱金属板等の放熱体に効率よく伝達させるために使用し得る高熱伝導粘着シートを得ることができる。また、フィラーを多量に配合することができるため、複合機能を有する粘着シートも容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の粘着剤及びこれを用いた粘着シートの形態について具体的に説明するが、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲のものである。
【0016】
[粘着剤]
[A成分]
本発明で使用される(A)成分は、活性水素含有基を有し、かつ、質量平均分子量が800〜20,000である(メタ)アクリル系樹脂である。(A)成分は、(D)成分表面との濡れ性を向上させ、(D)成分の表面処理を行うことなく(A)成分と(D)成分の親和性を高めるという効果を有する。(A)成分の質量平均分子量が800未満である場合には、(B)成分と架橋した場合においても分子量がいまだ低く凝集力を確保することができず、また(B)成分の添加量等を変化させ高架橋化した場合には柔軟性を維持することが難しくなる。質量平均分子量が20,000を超えた場合には、(D)成分の間隙に効率的に入り込むことが難しくなる。
尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。活性水素含有基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、チオール基、シアノ基、スルホン酸基、リン酸基、第4級アンモニウム(塩)基等を挙げられる。尚、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
カルボキシル基としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸又はこれらの単量体から誘導される官能性単量体等が挙げられる。尚、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
水酸基としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラクジル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸カプロラクトン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。尚、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
アミド基としては、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル−p−スチレンスルホンアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。尚、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いいてもよい。
【0020】
本発明の(A)成分は、前記活性水素含有基を有する単量体と炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる共重合体であり、その配合比を通常質量比で10:90〜2.5:97.5の範囲としたものが好ましい。
【0021】
炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0022】
本発明の(A)成分は、前記活性水素含有基を有する単量体と炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる共重合体であることが好ましいが、これらに加えて任意的な他の単量体成分からなる共重合体とすることもできる。任意的な他の単量体成分としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。その使用量は単量体全量に対して0〜30質量%、好ましくは0〜10質量%の範囲で用いられる。
【0023】
(A)成分の共重合体は、上記の単量体成分をラジカル共重合させることによって得ることができる。この場合の共重合法としては、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、光重合法など通常用いられている公知の共重合法の中から任意に選ぶことができる。また、(A)成分のガラス転移温度としては、−70℃〜−10℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が−70℃未満であると、耐熱性が低下し、ガラス転移温度が−10℃を超えた場合には、室温における粘着力が低下するからである。耐熱性と室温における粘着力という観点から、−60〜−25℃の範囲内であることが好ましい。
【0024】
(A)成分として、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂の場合に酸価は、10mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が10mgKOH/g未満である場合には(B)成分と十分に反応することができず凝集力が低下し被着体に対する粘着力が低下するからである。
【0025】
[B成分]
本発明で使用される(B)成分は、官能基当量が200〜1500g/eqであるアクリル系架橋剤である。具体的には、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基から選択される少なくとも一種の官能基を有するアクリル樹脂が挙げられる。官能基当量が200未満であると得られる粘着剤の靱性、柔軟性が低下するため好ましくなく、官能基当量が1500より大きい場合には架橋密度が低下し、凝集力、耐熱性が得られないため好ましくない。靱性、耐熱性等の観点から400〜750の範囲であることが好ましい。尚、(B)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(B)成分の添加量は前記(A)成分100質量部又は(C)成分を併用している場合には(A)成分と(C)成分の合計添加量100質量部に対して0.5〜100質量部の範囲内であることが好ましい。0.5質量部未満の場合には粘着剤の凝集力を確保することができなくなり、100質量部を超えた場合には粘着剤層の柔軟性が低下するからである。凝集力と柔軟性との観点から5〜80質量部の範囲であることが更に好ましい。
【0027】
(B)成分のガラス転移温度は、−70℃〜70℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が−70℃未満であると、耐熱性が低下し、ガラス転移温度が70℃を超えた場合には、室温における粘着力が低下するためである。
【0028】
(B)成分の質量平均分子量は、1000〜20,000の範囲内であることが好ましい。質量平均分子量が1000未満であると、耐熱性が低下し質量平均分子量が20,000を超えた場合には、室温における粘着力が低下するためである。
【0029】
(B)成分には、本発明の目的を損なわない範囲において従来公知の他の架橋剤を併用することができる。具体的には、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤の配合割合は(B)成分に対し、10質量%〜50質量%の範囲内で配合することが好ましい。
【0030】
[C成分]
(A)、(B)成分のみでも本発明の目的を達成できるものであるが、(C)成分として質量平均分子量20万〜200万の(メタ)アクリル系樹脂を配合することが好ましい。(C)成分を配合することにより、粘着剤に靭性を付与することができ、これからなる粘着剤を柔軟、かつ、形態安定性に優れたものとすることができるからである。(C)成分の質量平均分子量が20万未満である場合には、粘着剤の靭性を向上させる効果に乏しく、質量平均分子量が200万を超えた場合には、粘着剤の柔軟性が低下し、被着体に対する粘着力が低下することになるからである。
【0031】
(C)成分は先に(A)成分として挙げた活性水素含有基を有する単量体、炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、任意的な他のモノマー成分からなる共重合体であることが好ましい。
【0032】
(C)成分の共重合体は、前記(A)成分と同様の方法により上記の単量体成分を重合させることによって得ることができる。また、(C)成分のガラス転移温度としては、前記(A)成分と同様−70℃〜−10℃の範囲内であることが好ましい。ガラス転移温度が−70℃未満であると、耐熱性が低下し、ガラス転移温度が−10℃を超えた場合には、室温における粘着力が低下するためである。尚、(A)、(C)各成分を構成する単量体中のアルキル鎖は同じものであることが好ましい。アルキル鎖が異なる場合には、相溶性が低下し均一な粘着剤を得ることが困難となるからである。
【0033】
前記(A)成分と(C)成分の配合比が95:5〜30:70の範囲で配合することが好ましい。(C)成分の配合比が前記範囲より少ない場合には粘着剤の靭性が低下し、これからなる粘着剤層はもろくなる場合がある。また、(C)成分の配合比が前記範囲より多い場合には粘着剤層の柔軟性を確保することができず、被着体に対する接触面積が下がり、粘着力が低下するからである。
【0034】
(A)、(C)成分を併用しそれぞれ、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂の場合には、(A)成分は酸価が35〜150mgKOH/gの(メタ)アクリル系樹脂、(C)成分は酸価が3〜20mgKOH/gの(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。(A)成分の酸価が35mgKOH/g未満である場合には(D)成分に対する親和性が低下する。酸価が150mgKOH/gを超える場合には、(B)成分との反応が進行した結果、得られる粘着体の柔軟性が低下し粘着力が低下する。(C)成分の酸価が3mgKOH/g未満である場合には(B)成分と十分に架橋することができず、凝集力が低下し、所望の粘着力を得ることが困難となり、酸価が20mgKOH/gを超えた場合には(C)成分の架橋が進行する結果、(A)成分の架橋が阻害され粘着剤としての凝集力が不足することになる。また、(C)成分の架橋が進行する結果、得られる粘着剤層の柔軟性が低下し、シート状に成形された粘着剤がもろいものとなり、粘着シートの取扱性が低下する。また、凹凸表面を持つ被着体に追従することができないために粘着シートの貼付時の空気等の噛みこみ量が多くなり求める機能性が低下する要因となる。
【0035】
(A)成分として、水酸基、アミノ基、アミド基等の塩基性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂の場合に水酸基価は、10mgKOH/g以上であることが好ましい。水酸基価が10mgKOH/g未満である場合には(B)成分と十分に反応することができず凝集力が低下し被着体に対する粘着力が低下するからである。
【0036】
(A)、(C)成分を併用しそれぞれが、水酸基、アミノ基、アミド基等の塩基性官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂の場合には、(A)成分は水酸基価が35〜150mgKOH/gの(メタ)アクリル系樹脂、(C)成分は水酸基価が3〜20mgKOH/gの(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましい。(A)成分の水酸基価が35mgKOH/g未満である場合には(C)成分に対する親和性が低下する。水酸基価が150mgKOH/gを超える場合には、(B)成分との反応が進行し、得られる粘着シートの柔軟性が低下し粘着力が低下する。(C)成分の水酸基価が3mgKOH/g未満である場合には(B)成分と十分に架橋することができず、凝集力が低下し、所望の粘着力を得ることができず、水酸基価が20mgKOH/gを超えた場合には(C)成分の架橋が進行する結果、(A)成分の架橋が阻害され粘着剤としての凝集力が不足することになる。また、(C)成分の架橋が進行する結果、得られる粘着剤層の柔軟性が低下し、被着体に対する粘着力が低下するからである。
【0037】
本発明において、粘着付与樹脂を併用することができ、テルペン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。この成分を使用することで、粘着力を所望の範囲に調整することが容易になるとともに、粘着剤としての凝集力を高めることもできる。
【0038】
粘着付与樹脂の配合量は、(A)成分100質量部又は(C)成分を併用している場合には(A)成分と(C)成分の合計添加量100質量部に対して、5〜150質量部の範囲内で配合することが好ましい。配合量が5質量部未満であると粘着力向上の効果が表れないため好ましくなく、配合量が150質量部より多い場合には粘着剤の靱性が低下するためである。粘着力向上と靱性低下防止の観点から10〜50質量部の範囲であることが好ましい。
【0039】
[D成分]
本発明で使用される(D)成分としては、特に制限されず、従来公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、熱伝導剤、難燃剤、発泡剤、導電剤、磁性剤、抗菌剤等が挙げられる。尚、(D)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
熱伝導剤としてはアルミナ、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化棚素、窒化珪素、マイカ、シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、銀、銅、アルミニウム、炭化珪素、ダイヤモンド粉末、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
難燃剤としては有機リン酸エステル系難燃剤、ハロゲン化リン酸エステル系難燃剤、無機リン系難燃剤、ハロゲン化ビスフェノール系難燃剤、ハロゲン化合物系難燃剤、アンチモン系難燃剤、窒素系難燃剤、ほう素系難燃剤、金属塩系難燃剤、無機系難燃剤、珪素系難燃剤等が挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類等の無機系発泡剤;トリクロロモノフルオロメタンやジクロロモノフルオロメタンの如き塩フッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルやアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートの如きアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)の如きヒドラジン系化合物、p−トルイレンスルホニルセミカルバジドや4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)の如きセミカルバジド系化合物、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールの如きトリアゾール系化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンやN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドの如きN−ニトロソ系化合物等の有機系発泡剤等が挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
導電剤としては、例えば、銀、銀合金、金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、錫、錫合金などの導電性金属、酸化インジウム、五酸化アンチモン、アルミン酸亜鉛、アンチモン酸亜鉛等の導電性無機酸化物、アルミナ、ガラスなどの無機絶縁体や、ポリエチレン、ポリスチレンなどの有機高分子化合物などの表面を導電性物質でコートしたもの、ポリアニリンやポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子、さらにカーボン、グラファイト等の他に、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル等が挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
磁性剤としては、例えば、ヘマタイト、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
抗菌剤としては、銀、亜鉛、銅、チタン、モリブデン等の金属;これらの金属イオンをシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、セラミック、アルミナシリコン、チタンゼオライト、アパタイト、炭酸カルシウム等の無機質微粒子に担持させたもの;ゾルーゲル法により無機化合物粒子の表面を他の無機酸化物、複合酸化物等により積層又は被覆等したもの等の無機系抗菌剤、イソチオシアン酸アリル、ポリオキシアルキレントリアルキルアンモニウム、塩化べンザルコニウム、へキサメチレンビグアニド塩酸塩、有機シリコーン第4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩類、フェニルアミド系化合物、ビグアニド系化合物、スルホイソフタル酸テトラアルキルホスホニウム塩、安息香酸、安息香酸塩類、サリチル酸、サリチル酸塩類、フェノール、ソルビン酸及びその塩類、デヒドロ酢酸及びその塩類、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、ポリリジン又はポリリジン塩、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基、フェニルアミド基、ビグアニド基等の抗菌活性基を主鎖又は側鎖に有する高分子化合物等の有機系抗菌剤が挙げられる。これらの成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(D)成分の配合割合はその使用目的に応じて適宜選択することができる。(D)成分の粘着剤中の配合割合が50体積%〜80体積%であることが好ましい。50体積%未満である場合には、目的とする機能を発現することが困難となるし、80体積%を超える場合には、粘着剤の粘度が上昇し、シート状に成形することが困難となるからである。
【0047】
(D)成分の形状は、球状又は擬球状であることが好ましい。平板状、針状などアスペクト比の高いものは、粘着剤層の厚み方向の柔軟性が低下し、被着体に対する粘着力を低下させる要因となるからである。
【0048】
また、(D)成分が球状又は擬球状である場合、その平均粒子径は0.01〜50μm程度であることが好ましい。平均粒子径が0.01μm未満では粒子の自己凝集性の制御が困難であること、フィラーが高価でありコストが増大することとなるからである。平均粒子径が5μmを超えると前記(A)成分中に充填させることが困難となるからである。自己凝集性の制御と充填性の観点から0.02〜20μmの範囲であることが好ましい。
尚、粘着剤層の平滑性を確保することが困難となるため、(D)成分が球状又は揮球状である場合、その最大粒子径が粘着剤層の厚みより小さい粒子径のものを使用することが好ましい。
【0049】
さらに、(D)成分が球状又は擬球状である場合、平均粒子径の異なるものを組み合わせて用いることが好ましい。このようにして平均粒子径の異なるものを数種類組み合わせ、粘着剤中に混在させることによって、得られる粘着剤の粘度を低下させることが可能となり、同じ平均粒子径のものを組み合わせるより高充填することが可能となる。具体的には、(D1)平均粒子径が10〜50μm、(D2)平均粒子径0.01〜5μmのものを70:30〜50:50の範囲で組み合わせることが好ましい。(D1)成分が上記範囲より多い場合には、粘着剤層の平滑性を維持することが困難となり、上記範囲より少ない場合には、(D)成分同士の接触頻度が低下し、機能性が低下するためである。尚、(D1)、(D2)成分とも先に(D)成分で挙げたものを使用することができ、上記平均粒子径を満足する限りにおいては、2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0050】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、本発明の粘着剤そのものをフイルム状ないしシート状に形成するか、フイルム状ないしシート状の基材の片面若しくは両面に本発明の粘着剤を設けることにより実現することができる。
【0051】
本発明の粘着シートは、その構成要素として、基材及び/又は粘着剤層を備える。以下、各要素について説明する。
【0052】
[基材]
本発明にいう「基材」とは、粘着剤層を支持するための部材であって、フイルム状ないしシート状を呈するものである。本明細書において「フイルム状ないしシート状」というときは、薄膜状ないし薄板状の形状を意味し、通常は4〜250μmの厚さのものが用いられる。
【0053】
基材の構成材料については特に限定されず、従来、粘着シート用の基材として用いられてきた材料の中から、粘着シートの用途に応じて適宜選択することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、セロハン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリアミド、若しくはポリスルホン等の合成樹脂、金属等の中から選択することができる。尚、基材は透明であっても、着色せしめたものであってもよい。着色は、基材の構成材料に各種顔料や染料を配合する方法等により行うことができる。また、基材の表面は平滑であるものに限定されず、その表面がマット状に加工されているものであってもよい。
【0054】
基材は、その構成材料中に、従来公知の添加剤、具体的には、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐侯安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を含有するものであってもよい。また、粘着層との密着性を向上させることを目的として、表面処理を施したものを用いることが好ましい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理・グロー放電処理等の放電処理、プラズマ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理・電子線処理・放射線処理等の電離活性線処理、サンドマット処理・アンカー処理・へアライン処理・エンボス加工等の粗面化処理、化学薬品処理、易接着層塗布処理等が挙げられる。
【0055】
[粘着剤層]
本発明にいう「粘着剤層」とは、基材の少なくとも一方の表面を被覆するように形成された層であり、(A)活性水素含有基を有する(メタ)アクリル系樹脂及び(B)所定の官能基当量を有するアクリル系架橋剤を含有する粘着剤からなるものである。
【0056】
粘着剤層の厚さはその使用目的に応じ適宜選択されるものであるが、一般に10〜150μmとすることが好ましい。10μm未満の場合には、被着体に対する充分な粘着力が得られなくなるため好ましくなく、150μmを超える場合には乾燥不良を起こすおそれがある点において好ましくない。被着体に対する粘着力と乾燥不良を防止する点から20〜80μmとすることが更に好ましく、30〜60μmとすることが特に好ましい。
【0057】
[粘着シート]
本発明の粘着シートは、前記(A)及び(B)成分、所望により(C)、(D)成分等のその他の成分を適当な溶剤に溶解し、或いは分散させて、固形分濃度を30〜90質量%程度の粘着剤層形成塗工液とし、この粘着剤層形成塗工液を常法に従って、基材の片面若しくは両面の表面を被覆するように塗布し、これを乾燥する方法により得ることができる。尚、基材に代えて離型性を有するフイルムを用い、離型性を有する表面に粘着剤層形成塗工液を塗布・乾燥させフイルム状ないしシート状に形成して粘着剤層のみからなる粘着シートとすることができる。
【0058】
この際、粘着剤層形成塗工液には、従来慣用されている各種添加剤、例えば、重合反応禁止剤、架橋促進剤、酸化防止剤、安定剤、カップリング剤等を添加してもよい。
【0059】
前記架橋促進剤としては、例えば、トリエチルアミン系、ナフテン酸コバルト系、スズ系の架橋促進剤が挙げられ、特に、塩化第−スズ、テトラーn−ブチルスズ、水酸化トリメチルスズ、塩化ジメチルスズ、ジラタリン酸ジーn−ブチルスズ等のスズ系架橋促進剤を使用することが好ましい。架橋促進剤を使用することでより低温・短時間で架橋することが可能となる。この他、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0060】
塗布の方法については特に制限はなく、ワイヤーバー、アプリケー夕―、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコー夕ー、ダイコーター、リップコー夕ー、コンマコー夕ー、ナイフコー夕―、リバースコー夕ー、スピンコー夕ー等を用いた従来公知の塗布方法を利用することができる。尚、粘着剤層形成塗工液を塗布する基材や離型性を有するフイルムの面には、必要に応じて予め表面処理を施しておいてもよい。
【0061】
乾燥方法についても特に制限はなく、熱風乾燥、減圧乾燥等の従来公知の乾燥方法を利用することができる。乾燥条件については、粘着剤の種類や塗工液で使用した溶剤の種類、粘着剤層の膜厚等に応じて適宜設定すればよいが、60〜200℃程度の温度で乾燥を行うことが一般的である。
【0062】
本発明の粘着シートにおいて、フィラーとして熱伝導剤を使用した場合の熱伝導度は、熱の放散性を十分発現させるため、0.8W・m−1・K−1以上であることが好ましい。3.0W・m−1・K−1以上であると更に好ましく、5.0W・m−1・K−1以上であることが特に好ましい。
【0063】
本発明の粘着シートにおいて、フィラーとして熱伝導剤を使用した場合の23℃における180°粘着力は、アルミニウムを被着体とした際に1.0N/25mm以上であることが好ましい。被着体に対する密着性を確保し、熱の放散性を十分発現させるためである。粘着力が1.5N/25mm以上であると更に好ましく、3.0N/25mm以上であることが特に好ましい。
【0064】
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層の引張破断伸びは5.0%以上であることが好ましい。引張破断伸びが5.0%未満であると粘着剤層がもろく、柔軟性を損ない被着体に対する密着性を確保できないからである。30%以上であることが更に好ましく、100%以上であることが特に好ましい。
【0065】
本発明の粘着シートにおいて、フィラーとして難燃剤を使用した場合の難燃性は、着火延焼の危険性を排除する観点からUL94−VTM−0の規格を満足する必要がある。
【0066】
[使用方法]
本発明の粘着シートにおいて、フィラーとして熱伝導剤を使用した場合には、ICパッケージやトランジスタ、ダイオード等の電子部品又はプラズマディスプレイや、液晶ディスプレイのパネル等の発熱体とヒートシンクや放熱金属板等の放熱体との間に介在することにより、放熱体から発生する熱を効率的に外部に放出させる熱伝導粘着シートとして使用することができる。更に、フィラーとして難燃剤を使用した場合には難燃性シートとして、発泡剤を使用した場合には、被着体間に粘着シートを挟み加熱発泡させることにより、隙間充填性シートとして使用することができる。導電剤を使用した場合には導電性シートとして使用することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の粘着シートにつき実施例を用いて具体的に説明するが、本発明の粘着シートはこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例、比較例中の粘着剤については均一性を、粘着シートについては粘着力、柔軟性の各項目を評価した。尚フィラーとして熱伝導剤を使用した場合には熱伝導度の評価を、難燃剤を使用した場合には難燃性の各評価を追加し評価した。尚、これらの項目については、以下の方法により評価した。
【0068】
(均一性)
後述する粘着剤層形成塗工液の状態を目視にて評価した。
評価基準は以下の通りである。
O:分離・沈殿等が見られない。
×:分離・沈殿等が見られる。
【0069】
(粘着力)
粘着剤層形成塗工液を基材厚み100μmのPETフイルム上に粘着剤層の厚みが100μmとなるよう塗布・乾燥させ、厚さ10Oμmの剥離フイルム(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート)と貼着し、40℃で7日間養生することにより粘着シートを作製した。このシートをJIS Z0237の規定に基づき、試験片幅を25mm、被着体をアルミ板(番手:A1050)として23℃における180°粘着力を測定した。このものの物性を表1に示す。
【0070】
(柔軟性)
JIS P8113の規定の基づき、熊谷理機工業社製横型引張強度試験機(卓上型)を用いて測定を行った。粘着剤層形成塗工液を基材厚み100μmの剥離フイルム(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート)上に粘着剤層の厚みが100μmとなるよう塗布・乾燥させ、厚さ10Oμmの剥離フイルムと貼着し、40℃で7日間養生することにより粘着シートを作製した。このシートを、幅10mm、長さ40mmに切断し、剥離フイルムを取り除き試験片とした。この試験片をチャック間距離30mm、速度20mm/minの条件で水平方向に引っ張り、引張破断伸びを測定した。
【0071】
(熱伝導度)
フィラーとして、熱伝導剤を使用し、粘着剤層形成塗工液を基材厚み100μmの剥離フイルム(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート)上に粘着剤層の厚みが100μmとなるよう塗布・乾燥させ、厚さ10Oμmの剥離フイルムと貼着し、40℃で7日間養生することにより熱伝導粘着シートを作製した。このシートを、幅10mm、長さ40mmに切断し、剥離フイルムを取り除き試験片とした。この試験片をISO22007−3の規定に基づき、株式会社アイフェイズ製アイフェイズモバイル1Uにより、熱拡散率を測定した。また、JIS K7112に規定に基づき熱伝導性粘着剤の密度を、JIS K7123の規定に基づき比熱を測定し、これらのパラメータから熱伝導度を算出した。
【0072】
(難燃性)
UL94難燃性規格に準拠して、実施例の粘着シートの難燃性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:UL94VTM−0基準を満足する難燃性を示した場合。
×:UL94VTM−0基準を満足しなかった場合。
【0073】
各実施例、比較例で用いた各成分は以下のとおりである。
【0074】
(A1成分)
質量平均分子量3000、酸価98mgKOH/g、ガラス転移温度−30℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸ブチル、アクリル酸を含むものである。
【0075】
(A2成分)
質量平均分子量3000、酸価60mgKOH/g、ガラス転移温度−54℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸を含むものである。
【0076】
(A3成分)
質量平均分子量3000、酸価98mgKOH/g、ガラス転移温度−54℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸を含むものである。
【0077】
(A4成分)
質量平均分子量2000、水酸基価110mgKOH/g、ガラス転移温度−60℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを含むものである。
【0078】
(B1)成分
エポキシ基含有アクリル樹脂(エポキシ当量710g/eq、分子量2900、ガラス転移温度―57℃)である。
【0079】
(B2)成分
エポキシ基含有アクリル樹脂(エポキシ当量1430g/eq、分子量3000、ガラス転移温度―61℃)である。
【0080】
(B3)成分
エポキシ基含有アクリル樹脂(エポキシ当量480g/eq、分子量11000、ガラス転移温度63℃)である。
【0081】
(B4)成分
イソシアネート基含有アクリル樹脂(イソシアネート当量850g/eq、分子量4,500、ガラス転移温度−57℃)である。
【0082】
(C1成分)
質量平均分子量130万、酸価8mgKOH/g、ガラス転移温度−40℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸ブチル、アクリル酸を含むものである。
【0083】
(C2成分)
質量平均分子量27万、酸価15mgKOH/g、ガラス転移温度−30℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸を含むものである。
【0084】
(C3成分)
質量平均分子量81万、酸価23mgKOH/g、ガラス転移温度−30℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸を含むものである。
【0085】
(C4成分)
質量平均分子量90万、水酸基価6.5mgKOH/g、ガラス転移温度−60℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを含むものである。
【0086】
(C5成分)
質量平均分子量52万、水酸基価15mgKOH/g、ガラス転移温度−65℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを含むものである。
【0087】
(D1−1)成分
平均粒子径20μm、球状のアルミナ粒子である。
【0088】
(D1−2)成分
平均粒子径18μm、水酸化アルミニウム(製品名ハイジライトH31、昭和電工社製)である。
【0089】
(D2−1)成分
平均粒子径2μm、球状のアルミナ粒子である。
【0090】
(D2−2)成分
平均粒子径0.2μm、球状のアルミナ粒子である。
【0091】
(D2−3)成分
平均粒子径0.2μmのシリカである。
【0092】
(粘着付与樹脂)
軟化点150℃のテルペンフェノール樹脂である。
【0093】
(その他の樹脂成分)
質量平均分子量30,000、酸価74mgKOH/g、ガラス転移温度65℃のアクリル系樹脂である。構成モノマーとして、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸を含むものである。
【0094】
(その他の架橋剤1)
ダイマー酸ジグリシジルエーテル(エポキシ当量430g/eq、官能基数:2)である。
【0095】
(その他の架橋剤2)
TETRAD−C(三菱ガス化学社製、エポキシ当量100、官能基数:4)である。
【0096】
(その他の架橋剤3)
エポキシ基含有アクリル樹脂(エポキシ当量1570g/eq、分子量3000、ガラス転移温度―58℃)である。
【0097】
(その他の架橋剤4)
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量183g/eq、官能基数:3)である。
【0098】
(その他の架橋剤5)
ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(エポキシ当量229g/eq、官能基数:4)である。
【0099】
(その他の架橋剤6)
エポキシ基含有アクリル樹脂(エポキシ当量150g/eq、分子量3000、ガラス転移温度―58℃)である。
【0100】
実施例1
(A1)成分60質量部、(B3)成分10質量部からなる粘着剤組成物にメチルエチルケトン100質量部、トルエン30質量部を加え、撹拌、混合することにより粘着剤層形成塗工液を調製した。次に、この塗工液を、厚さ10Oμmの剥離フイルム(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート)の表面に、ベーカー式アプリケー夕−を用いて塗布し、80℃で1分、次に100℃で3分乾燥することにより膜厚100μmの粘着層を形成した。この粘着層の前記剥離フイルムとは反対側に厚さ100μmの別の剥離フイルム(シリコーン処理ポリエチレンテレフタレート)を貼着し、40℃で7日間養生することにより粘着シートを作製した。このものの物性を表1に示す。
【0101】
実施例2〜13
表1に示す各成分をそれぞれ用い、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。これらの粘着シートの物性を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
比較例1〜8
表2に示す各成分をそれぞれ用い、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。これらの粘着シートの物性を表2に示す。尚表中「−」は測定もしくは評価できなかったことを示す。
【0104】
【表2】

【0105】
「評価」
表1で示したように、実施例1は粘着力及び柔軟性に富んだ粘着シートであることが理解できる。実施例2においては実施例1にフィラーを添加したものであるが、この場合においても柔軟性に富んでいることが理解できる。実施例3は架橋剤のガラス転移温度が高いので、柔軟性が低下していることが理解できる。実施例5の熱伝導粘着シートは、官能基当量が大きいものであるため凝集力がやや不足しているため、粘着力が低下したものと推測できる。実施例7はフィラーの充填量が低いため熱伝導度が低いことが理解できる。実施例8においては、フィラーの充填量が多いため、柔軟性は維持しているものの粘着力が低下していることが理解できる。実施例11においては、難燃剤と熱伝導剤を添加したものであるが、この場合においても柔軟性を確保しつつ熱伝導性と難燃性の双方の特性を有していることが理解できる。実施例13においてアクリル系架橋剤の官能基をイソシアネートのものに変更した場合でも同様の特性を有していることが理解できる。一方、比較例1においては、エポキシ当量は規定の範囲内にはいっているものの相溶性が悪く粘着力等の評価に供することができなかった。また、比較例2、8においては、架橋後に得られた塗膜は柔軟性に劣り、粘着剤層がもろく基材に対する密着性が低いことが理解できる。比較例3はエポキシ当量が大きいため、凝集力が低く粘着力が不足していることが理解できる。比較例4〜7においては粘着力が低下していることが理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の粘着シートにおいてフィラーとして、熱伝導剤を使用した場合には、熱伝導度と柔軟性に優れるとともに、粘着性も有しているため、半導体集積回路(IC)パッケージ、トランジスタ若しくはダイオード等の電子部品又は、プラズマディスプレイパネル若しくは液晶ディスプレイパネル等のパネル自体から発生した熱をヒートシンクや放熱金属板等の放熱体に効率よく伝達させるために使用することができる。フィラーを充填した状態で柔軟性に富むものであるため、難燃性と熱伝導性といった複合機能を有する粘着シートとしても利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)活性水素含有基を有し、質量平均分子量が800〜20,000の範囲である(メタ)アクリル系樹脂と(B)官能基当量が200〜1500g/eqの範囲である(メタ)アクリル系架橋剤からなる粘着剤。
【請求項2】
更に、(C)活性水素含有基を有し、質量平均分子量が20万〜200万の範囲である(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
(A)成分の酸価が25〜150mgKOH/g、(C)成分の酸価が3〜20mgKOH/gであることを特徴とする請求項2に記載の粘着剤。
【請求項4】
(A)成分の水酸基価が25〜150mgKOH/g、(C)成分の水酸基価が3〜20mgKOH/gであることを特徴とする請求項2に記載の粘着剤。
【請求項5】
更に(D)フィラーを含有し、粘着剤中の配合割合が50体積%〜80体積%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の粘着剤。
【請求項6】
請求項1〜5に何れかに記載の粘着剤をシート状若しくはフィルム上に成形した粘着シート。
【請求項7】
JIS P8113に準拠して測定した引張破断伸びが30%以上であることを特徴とする請求項6に記載の粘着シート。



























【公開番号】特開2012−21124(P2012−21124A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162308(P2010−162308)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000108454)ソマール株式会社 (81)
【Fターム(参考)】