説明

粘着剤組成物、および光学部材、表面保護シート

本発明は、エージング時間が短い結果、高い生産性を有し、良好な帯電防止能を示す粘着層の形成を可能にしうる粘着剤組成物、並びにこれを含む光学部材および表面保護フィルムを提供する。前記粘着剤組成物は、水酸基含有アクリルアミド、水酸基含有メタアクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリレート(a2)と、が共重合されて形成される共重合体(A)、およびイオン性化合物を含む帯電防止剤(B)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、光学部材、および表面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線において見られるように、フラットディスプレイパネル表面においても静電気が帯電しやすい。フラットディスプレイパネル表面に静電気が帯電すると、空気中のほこりがしばしば表示パネルに引き付けられうる。また、静電気は、フラットディスプレイパネルを構成する基材の表示回路、またはパネル中の液晶分子の配向に悪影響を及ぼしうる。これによって、表示不良を引き起こしうる。
【0003】
フラットディスプレイパネルの表示性能の試験を行う場合、光学的に障害となりうる表面保護フィルムを取り除く必要がある。表面保護フィルムを取り除く際には、工程時間を短縮するために、約10m/分の速度で剥離させる。このような比較的速い速度で表面保護フィルムを剥離すると、表示面に静電気が帯電しやすくなる。
【0004】
そこで従来から、光学フィルムの粘着層または表面保護フィルムに帯電防止剤が含有されている、または別個の帯電防止層のフラットディスプレイパネルが提供されている。
【0005】
例えば、従来技術では、片面または両面に帯電防止層、二色性偏光板、および1/4波長板を含む偏光部材を有するコレステリック液晶層が提供される。さらに、他の従来技術では、ベースフィルム、第四級アンモニウム塩を含む帯電防止層、および粘着層をこの順に含む帯電防止性粘着シートを有するフラットディスプレイパネルが提供される。
【0006】
しかしながら、前記従来技術では、別々の工程で帯電防止層および粘着層を形成させるため、これらの従来技術では生産性が低い。
【0007】
一方、最近の技術として、光学フィルムの粘着層または表面保護フィルムに帯電防止剤が含まれると、前記粘着剤が帯電防止能を有するため、粘着性フィルムおよび帯電防止層を別々に形成する工程を省略できる。しかしながら、粘着層を光学フィルムまたは表面保護シート上に粘着剤組成物をコーティングさせて形成する場合、粘着層を形成するためのエージング時間が長くなる結果、不十分な帯電防止性能および生産性の低下の問題が生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来の技術上の問題点を解決するために着想されたものであり、本発明の実施様態では、エージング時間が短い結果、高い生産性を有し、良好な帯電防止能を示す粘着層の形成を可能にしうる粘着剤組成物、並びにこれを含む光学部材および表面保護フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記および他の実施様態は、以下の提供によって達成されうる。
【0010】
本発明の実施様態によれば、粘着剤組成物は、水酸基含有アクリルアミド、水酸基含有メタアクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリレート(a2)と、が共重合されて形成される共重合体(A)、およびイオン性化合物を含む帯電防止剤(B)を含む。
【0011】
前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)は、HC=C(R1)ACONHCHCHOH(式中、R1はHまたはCHであり、Aは(COOCHCH、COOCHCHOOC−CHCH、単結合、および下記化学式1で表される化合物1から選択される1つであり、nは1または2である)でありうる。
【0012】
【化1】

【0013】
前記共重合体(A)は架橋されていてもよい。
【0014】
本発明の他の実施様態によれば、光学部材は、光学シートの片面または両面に塗布された上記項目のいずれか1つによる粘着剤組成物を含む。
【0015】
本発明のさらに他の実施様態によれば、表面保護フィルムは、保護フィルムと、前記保護フィルムの片面または両面に形成された粘着層と、を含み、前記粘着層は、前記保護フィルムの片面または両面に塗布された上記項目のいずれか1つによる粘着剤組成物を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記粘着剤組成物は、エージング時間が短い結果、高い生産性を有し、良好な帯電防止能を示す粘着層の形成を可能にしうる。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、光学部材は、光学シートの片面または両面に塗布される粘着剤組成物を含み、これによってエージング時間が短くなる結果、高い生産性を有し、同時に良好な帯電防止性能を示す。
【0018】
本発明のさらなる実施形態によれば、前記表面保護シートは、保護フィルムと、前記保護フィルムの片面または両面に粘着剤組成物を含む粘着層と、を含み、これによって、エージング時間が短くなる結果、高い生産性を有し、同時に良好な帯電防止性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、粘着剤組成物は、水酸基含有アクリルアミド、水酸基含有メタアクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリレート(a2)と、が共重合されて形成される共重合体(A)、およびイオン性化合物を含む帯電防止剤(B)を含む。
【0020】
前記粘着剤組成物において、前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)は、HC=C(R1)ACONHCHCHOH(式中、R1はHまたはCHであり、Aは(COOCHCH、COOCHCHOOC−CHCH、単結合、および下記化学式1で表される化合物(1)から選択される1つであり、nは1または2である)でありうる。
【0021】
【化2】

【0022】
さらに、前記共重合体(A)は架橋されていてもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態によれば、光学部材は、光学シートの片面または両面に塗布された上記いずれか1つによる粘着剤組成物を含む。
【0024】
さらに、本発明の実施形態によれば、表面保護フィルムは、保護フィルムと、前記保護フィルムの片面または両面に形成された粘着層と、を含む。ここで前記粘着層は、前記保護フィルムの片面または両面に塗布された上記項目のいずれか1つによる粘着剤組成物を含む。
【0025】
以下、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。
【0026】
「粘着剤組成物」
本発明の一実施形態によれば、粘着剤組成物は、水酸基含有アクリルアミド、水酸基含有メタアクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリレート(a2)と、が共重合されて形成される共重合体(A)、およびイオン性化合物を含む帯電防止剤(B)を含む。
【0027】
ベースポリマー(A)は架橋剤によって架橋されていてもよい。前記帯電防止剤は、光学シートまたは保護フィルムなどの基材に粘着剤組成物を塗布することによって形成される粘着層が、例えば、約1×108〜1×1011Ω/cmの表面抵抗値を有するように、前記ベースポリマー(A)に添加される。
【0028】
「ベースポリマー」
本発明の本実施形態によれば、ベースポリマーは、水酸基含有アクリルアミド、水酸基含有メタアクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ(以下、水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)と称する)と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ(以下、(メタ)アクリレート(a2)と称する)と、が共重合されて形成される。
【0029】
本実施形態による粘着剤組成物が光学部材に使用される場合、前記ベースポリマー(A)は、ベースポリマー(A)の全重量に対して、水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)0.1〜5重量%を含みうる。ベースポリマー(A)中の水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)の含量が0.1重量%未満であると、帯電防止性能の向上が不十分である可能性がある。ベースポリマー(A)中の水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)の含量が5重量%を超えると、耐久性が不十分となる可能性がある。
【0030】
さらに、本実施形態による粘着剤組成物が表面保護シートに使用される場合、粘着剤組成物を用いる場合、前記ベースポリマー(A)は、ベースポリマー(A)の全重量に対して、水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)0.1〜10重量%を含みうる。
【0031】
ベースポリマー(A)中の水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)の含量が0.1重量%未満であると、帯電防止性能の向上が不十分である可能性がある。ベースポリマー(A)中の水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)の含量が10重量%を超えると、保護フィルムに対して密着性が不十分となる、または粘着層の透明性が不十分となる可能性がある。
【0032】
前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)の例として、HC=C(R1)ACONHCHCHOH(式中、R1はHまたはCHであり、Aは(COOCHCH、COOCHCHOOC−CHCH、単結合、および下記化学式1で表される化合物(1)から選択される1つであり、nは1または2である)が挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
より具体的には、前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)は、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)などが挙げられる。
【0035】
さらに、前記(メタ)アクリレート(a2)は、ベースポリマー(A)の主成分であり、ベースポリマー(A)の全重量に対して、50〜99.1重量%が含まれうる。ここで、ベースポリマー(A)は1または2以上の(メタ)アクリレート(a2)を含みうる。
【0036】
前記(メタ)アクリレート(a2)の例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0037】
光学部材用粘着剤組成物のベースポリマーには、高い粘着性を実現するために、(メタ)アクリレートの主成分として、n−ブチルアクリレートを含むことが好ましい。
【0038】
さらに、表面保護シート用粘着剤組成物のベースポリマーには、表面保護シートの容易な分離を考慮して、上記の粘着度を示すため、(メタ)アクリレート(a2)の主成分として、2−エチルヘキシルアクリレートを含むことが好ましい。
【0039】
ベースポリマー(A)は、アクリレートポリマーがイオン性化合物と良好な相溶性を示し、並びに優れた粘着特性を付与することから、主成分として、1以上の(メタ)アクリレート(a2)を含むアクリレートポリマーでありうる。
【0040】
本実施形態による粘着剤組成物が光学部材に使用される場合、ベースポリマー(A)の重量平均分子量は1,000,000〜2,000,000の範囲でありうる。ベースポリマー(A)の重量平均分子量が1000,000〜2,000,000の範囲であれば、粘着剤組成物は光学部材の粘着層を構成する組成物として十分な粘着力を付与しうる。
【0041】
さらに、前記ベースポリマー(A)の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィによるポリスチレン換算によって求められる。
【0042】
また、前記ベースポリマー(A)は、0℃以下のガラス転移温度Tgを有しうる。さらに、前記ベースポリマー(A)は、ガラス転移温度Tgが−100℃〜−5℃であることが好ましく、−80℃〜−10℃であることがより好ましい。ガラス転移温度Tgが0℃以下であると、粘着剤組成物は、イオン性化合物を含む際に高い粘着力を付与しうる。
【0043】
別の方法として、前記ベースポリマー(A)は、前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)および(メタ)アクリレート(a2)の代わりに、その他の成分を含んでもよい。
【0044】
前記ベースポリマーのその他の成分として、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物などのような凝集力および耐熱性を向上させる成分、またはカルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類のような粘着力を向上させうる、または架橋化開始剤として作用することができる官能基を有する成分が挙げられる。その他の成分は単独で、または2種以上の成分を組み合わせて用いられうる。
【0045】
前記スルホン酸基含有モノマーの例として、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタアクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0046】
前記リン酸基含有モノマーの例として、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
【0047】
前記シアノ基含有モノマーの例として、アクリロニトリルが挙げられる。
【0048】
前記ビニルエステル類の例として、酢酸ビニルが挙げられる。
【0049】
前記芳香族ビニル化合物の例として、スチレンが挙げられる。
【0050】
前記カルボキシル基含有モノマーの例として、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、2−カルボキシエチルアクリレートなどが挙げられる。
【0051】
前記酸無水物基含有モノマーの例として、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0052】
前記水酸基含有モノマーの例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
【0053】
アミド基含有モノマーの例として、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0054】
前記アミノ基含有モノマーの例として、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0055】
エポキシ基含有モノマーの例として、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0056】
前記ビニルエーテル類の例として、ビニルエチルエーテルが挙げられる。
【0057】
ベースポリマー(A)を重合する方法の例として、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などが挙げられる。
【0058】
前記ベースポリマー(A)の重合には、重合開始剤が用いられうる。前記重合開始剤の例として、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどのような過酸化物、およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスバレロニトリルなどのようなアゾビス化合物が挙げられる。
【0059】
「架橋剤」
本実施形態による粘着剤組成物は、ベースポリマー(A)、特にベースポリマー(A)の主成分であるアクリル系ポリマー(a2)を適切に架橋することにより、優れた耐熱性を有する粘着層を提供しうる。さらに詳細には、架橋は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、および金属キレートのようなアクリル系ポリマーに架橋開始剤として適切に含まれる、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基などと反応するために添加される基を含む化合物、いわゆる架橋剤を用いる方法により行われる。
【0060】
前記イソシアネート化合物の例として、トリレンジイソシアネートおよびキシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート;およびヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。特に、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物は、適度な凝集力の観点から用いられうる。これらの化合物は単独で、また2種以上を組み合わせて用いられうる。
【0061】
さらに具体的には、前記イソシアネート化合物の例として、ブチレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、およびキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;並びにトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名:コロネートHL)、およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:コロネートHX)(いずれも日本ポリウレタン工業株式会社製)などのイソシアネート付加物が挙げられる。
【0062】
前記エポキシ化合物の例として、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名:TETRAD−X)および1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名:TETRAD−C)(いずれも三菱ガス化学株式会社製)などが挙げられる。
【0063】
これらの架橋剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いられうる。架橋剤の使用量は、架橋標的ベースポリマーとのバランス、および光学部材の適用によって適切に選択される。アクリレート粘着剤の凝集力により十分な耐熱性を得るためには、架橋剤の使用量は、通常、前記ベースポリマー100重量部に対して、約0.01重量部以上である。さらに、柔軟性、粘着性の観点から、架橋剤の使用量は、通常、前記ベースポリマー100重量部に対して、約0.05重量部以下である。
【0064】
本実施形態によれば、粘着剤組成物を光学部材に用いる場合、粘着剤組成物のベースポリマー(A)は、架橋度として、ゲル分率50〜80%、より好ましくは架橋度として、ゲル分率約70%を有しうる。
【0065】
ゲル分率がこの範囲であれば、粘着剤組成物の粘着力を増加させることができる。さらに、本発明の本実施形態によれば、粘着剤組成物を表面保護シートに用いる場合、粘着剤組成物のベースポリマー(A)は、架橋度として、ゲル分率90〜100%の範囲を有しうる。この範囲であれば、粘着剤組成物の粘着力は、表面保護シートの剥離を容易にするように十分減少しうる。
【0066】
ここで、ゲル分率は、粘着剤組成物の初期質量(温浸前)、および前記粘着剤組成物を酢酸エチル中に25℃、1日間浸漬した場合の、浸漬乾燥後の質量から、ゲル分率=[浸漬乾燥後の質量/初期質量]×100の式で求められる。
【0067】
「帯電防止剤」
帯電防止剤はイオン性化合物を含みうる。
【0068】
前記イオン性化合物は、粘着剤組成物の調製に用いられるベースポリマーおよび有機溶媒との相溶性を有するように、同時に、イオン性化合物をベースポリマーに添加した場合に粘着剤組成物の透明性を維持するように選択される。さらに、前記イオン性化合物は、粘着剤組成物が光学シートまたは保護フィルムなどの基材に塗布してされる場合、表面抵抗値が1×1011Ω/cm以下となるように選択される。
【0069】
前記イオン性化合物は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジウム塩、およびアルキルホスホニウム塩から選択される少なくとも1つでありうる。
【0070】
前記イミダゾリウム塩の例としてとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−メチルイミダゾリウムクロリド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−メチル−3−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−アリール−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0071】
前記ピリジニウム塩の例として、1−ブチル−3−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、1−ブチルピリジニウムブロミド、1−ブチルピリジニウムクロリド、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチルピリジニウムブロミド、1−エチルピリジニウムクロリドなどが挙げられる。
【0072】
前記アルキルアンモニウム塩の例として、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフェート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラヘプチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。
【0073】
前記アルキルピロリジウム塩の例として、1−ブチル−3−メチルピロリジウムブロミド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムクロリド、1−ブチル−1−メチルピロリジウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。
【0074】
前記アルキルホスホニウム塩の例として、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート、テトラブチルホスホニウムp−トルエンスルホネート、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドなどが挙げられる。
【0075】
イオン性化合物に関しては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩が用いられうる。
【0076】
具体例として、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、およびN−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0077】
「ベースポリマー(A)と帯電防止剤(B)との組成比」
ベースポリマー(A)および帯電防止剤(B)の全重量に対する帯電防止剤(B)の組成比は、0.01重量%〜2重量%の範囲でありうる。組成比が0.01重量%未満だと、十分な帯電防止効果が得られず、組成比が2重量%を超えると、重大な被着体汚染性の可能性がある。
【0078】
「その他の添加剤」
前記粘着剤組成物は、粘着特性を付与するために、その他の公知の添加剤を任意に含みうる。例えば、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、防食添加剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合阻害剤、シランカップリンング剤、無機もしくは有機充填剤、金属粉、粉顔料、または粒子状もしくは成形箔状物質が使用目的に応じて適宜添加されうる。
【0079】
「粘着剤組成物の調製方法」
本発明の一実施形態による、粘着剤組成物の調製方法の例として、以下の2つの方法が挙げられる。
【0080】
第1の方法として、ベースポリマー(A)の原料である各種モノマーを、酢酸エチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、ケトン類、およびアルコール類などの沸点が120℃以下である有機溶媒に混合し、重合開始剤を添加してモノマーを重合させることによってベースポリマーを調製する。得られたベースポリマーは、有機溶媒に溶解状態である、または膨潤されている。
【0081】
次に、イオン性化合物から構成される帯電防止剤を、ベースポリマーを含む有機溶媒に添加して、ベースポリマーと混合する。
【0082】
続いて、架橋剤を添加してベースポリマーを架橋させ、シランカップリング剤などの添加剤を必要に応じてさらに添加する。この結果、粘着剤組成物が調製されうる。
【0083】
得られた粘着剤組成物は、光学シートまたは表面保護フィルムのような基材上に塗布、および乾燥することにより、基材上に粘着層が形成される。
【0084】
第2の方法として、ベースポリマー(A)の原料である各種モノマーを、酢酸エチルなどの有機溶媒に混合し、同時にイオン性化合物から構成される帯電防止剤を添加し、次いで、重合開始剤を添加して、モノマーを重合反応させることで、帯電防止剤を含むベースポリマーを調製する。上記方法のように、得られたベースポリマーは、有機溶媒に溶解状態である、または膨潤されている。
【0085】
次に、ベースポリマーおよび帯電防止剤を含む有機溶媒に、架橋剤を添加してベースポリマーを架橋させ、並びにシランカップリング剤などの添加剤を必要に応じてさらに添加する。この結果、粘着剤組成物が調製されうる。
【0086】
上記方法のように、得られた前記粘着剤組成物は、光学シートや表面保護フィルムのような基材上に塗布、および乾燥することにより、粘着層が形成される。
【0087】
以上のように、本実施形態による、粘着剤組成物を製造する場合、帯電防止剤はベースポリマーを調製した後、もしくは、ベースポリマーの調製中に添加されうる。ベースポリマーに均一に帯電防止剤を添加するためには、帯電防止剤は酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解性であるのが好ましい。
【0088】
「光学部材」
本発明の一実施形態による光学部材は、本発明の実施形態に従い、光学シートの片面または両面に、粘着剤組成物を塗布して形成される。本発明の実施形態における光学部材に対して、前記粘着剤組成物を含む粘着層は、光学シートの片面または両面に、厚さ3〜200μm、好ましくは10〜100μmで形成されうる。前記粘着層の形成は、光学シートに直接塗布する、または別の基材(剥離ライナーなど)に前記粘着剤組成物を塗布して、光学シートに前記塗布された粘着剤組成物を転写することにより行われうる。
【0089】
粘着層を形成させる方法として、粘着テープの調製に用いられる任意の公知の方法が用いられうる。具体的には、前記方法の例として、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、ダイコート法などが挙げられる。
【0090】
本発明によれば、各種のディスプレイの製造に用いられる様々な光学シートが、特定の光学シートに限定されることなく、使用されうる。光学シートの例として、偏光板、位相差板、輝度向上板、およびグレア低減シートなどが挙げられる。さらに、本実施形態における前記光学シートは、偏光板および位相差板の積層、偏光板の積層、位相差板の積層、偏光板および輝度向上板またはグレア低減シートの積層などのように、2以上の光学素材を積層させることによって得られうる。
【0091】
光学シートに形成された粘着層(粘着剤組成物)は、約1〜約15(N/25mm)、より好ましくは、約5〜約10(N/25mm)の粘着力を有しうる。粘着力が1〜15(N/25mm)の範囲であると、光学部材の粘着層としては十分である。さらに、前記粘着力は、JIS Z0237の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して測定されうる。具体的には、粘着層を有する光学部材を23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置し、25mm幅に切り取り、50℃、5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行うことで、例えば、偏光板に接着された状態で粘着力が評価され、並びに引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下、剥離角180度、剥離速度0.3m/分でJIS Z0237に準拠して粘着力が測定される。
【0092】
「表面保護シート」
本発明の実施形態における光学部材用表面保護シートは、保護フィルムと、前記保護フィルムの片面または両面に形成された粘着層と、を含み、前記粘着層は、本発明の実施形態における粘着剤組成物を含む。粘着剤組成物の前記粘着層は、保護フィルムの片面または両面に、3〜200μm、好ましくは10〜100μmの厚さに形成されうる。
【0093】
保護フィルムの例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレンフィルム、およびこれらの混合物のような樹脂フィルムが挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられうる。前記保護フィルムは、例えば、15〜50μmの厚みを有しうる。
【0094】
保護フィルムへの前記粘着層の形成は、保護フィルムに粘着剤組成物を直接塗布する、または別の基材(剥離ライナーなど)に前記粘着剤組成物を塗布して、保護フィルムに前記塗布された粘着剤組成物を転写することにより行われうる。
【0095】
粘着層を形成させる方法として、粘着テープの調製に用いられる任意の公知の方法が用いられうる。具体的には、前記方法の例として、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、ダイコート法などが挙げられる。
【0096】
本発明の実施形態における表面保護シートは、液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルなどの典型的なフラットディスプレイパネルに貼り付けられる光学部材を保護するために用いられうる。
【0097】
本実施形態における前記表面保護シートは、前記光学部材が単独で市場に流通する場合だけでなく、フラットディスプレイパネルに貼り付けられた状態で市場に流通する場合にも使用されうる。
【0098】
保護フィルムに形成される前記粘着層(粘着剤組成物)は約0.05〜約0.2(N/25mm)、好ましくは約0.1(N/25mm)の粘着力を有しうる。前記粘着力が0.05〜0.2(N/25mm)の範囲であると、前記表面保護シートを偏光板などの光学部材から、例えば10mm/分の速さで、比較的容易に剥離しうる。さらに、前記粘着力は、JIS Z0237の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して測定されうる。より詳細には、粘着層を有する光学部材を23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置し、25mm幅に切り取り、50℃、5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行うことで、例えば、偏光板に粘着された状態で粘着力が評価され、並びに、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下、剥離角180度、剥離速度0.3m/分でJIS Z0237に準拠して粘着力が測定される。
【0099】
本発明の実施形態における前記粘着剤組成物は、水酸基含有アクリルアミド、水酸基含有メタアクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリレート(a2)と、が共重合されて形成される共重合体(A)、およびイオン性化合物を含む帯電防止剤(B)を含む。したがって、本実施形態による粘着剤組成物は、エージング時間が短い結果、高い生産性を示し、良好な帯電防止性能を示す粘着層の形成を可能にしうる。
【0100】
具体的には、本実施形態における粘着剤組成物は、光学シートや保護フィルムなどの基材に塗布して粘着層を形成する場合、前記粘着層は、約1×108〜1×1011(Ω/cm)のシート抵抗を示し、良好な帯電防止性能を示す。粘着剤組成物において、帯電防止性能の向上は、水酸基含有アクリルアミドおよび/またはメタアクリルアミドに含まれる窒素原子の孤立電子対の存在により、粘着層中のイオン性化合物の移動が促進されることにより達成される。
【0101】
また、本実施形態における粘着剤組成物の短いエージング時間は、おそらく、水酸基含有アクリルアミドおよび/またはメタアクリルアミドにより、共重合体の末端水酸基が活性化されることによって、共重合体の反応性が向上した結果であると考えられる。
【0102】
さらに、本実施形態における粘着剤組成物は、ベースポリマーが主成分として(メタ)アクリレートを少なくとも1種含むため、透明度が高い。
【0103】
粘着剤組成物のベースポリマーが、重量平均分子量1,000,000〜2,000,000およびゲル分率50〜80%を有する場合、前記粘着剤組成物は、高い粘着力を有し、光学部材の粘着層を形成するのに好適に用いられうる。
【0104】
粘着剤組成物のベースポリマーが、重量平均分子量が300,000〜1,000,000およびゲル分率90〜100%である場合、粘着剤組成物の塗布によって形成される表面保護シートの粘着層は、弱い粘着力を示す。この場合、前記粘着層は、例えば10mm/分の速さで、フラットディスプレイパネル上の偏光板のディスプレイ表面から比較的容易に剥離しうる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明は実施例1〜16を参照して説明されうる。はじめに、実施例1〜16に係る粘着剤組成物を調製し、並びに偏光板に塗布することにより、実施例1〜16の光学部材を製造した。次に、光学部材の性能試験を行った。以下に詳細を説明する。
【0106】
(実施例1における共重合体組成物の調製)
水酸基含有(メタ)アクリルアミドとしてヒドロキシエチルアクリルアミド1重量部、ブチルアクリレート98.99重量部、および溶媒として酢酸エチル120重量部を、還流冷却器および撹拌機が備えられたフラスコに導入し、窒素置換をしながら65℃まで加熱した。次に、重合開始剤としてAIBN0.04重量部を加え、65℃で6時間重合反応を行った。重合反応の完結後、イオン性化合物として1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート0.01重量部を添加し、粘度の調整のために酢酸エチルをさらに280重量部添加した後、室温まで冷却した。これにより、実施例1の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を製造した。
【0107】
共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物は濃度20重量%であり、共重合体組成物溶液の粘度は4500mPa・sであった。表1に、粘着剤組成物の組成比、共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度、および共重合体組成物溶液の粘度を示す。
【0108】
また、ベースポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
(実施例2〜16における共重合体組成物溶液の調製)
水酸基含有(メタ)アクリルアミドとして、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリル酸およびアクリルアミドの少なくとも1つと、ヒドロキシエチルアクリルアミドと、を混合した(または混合しない)混合物は、溶媒である酢酸エチルと好適に混合され、同時に、イオン性化合物である1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、および1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの1つと混合する(または混合しない)ことを除いて、前記実施例1の場合と同様の工程により、実施例2〜10の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。表1および表2に、実施例2〜16の粘着剤組成物の組成比、各共重合体組成物溶液の粘度、各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度、並びにベースポリマーの重量平均分子量を示す。
【0111】
【表2】

【0112】
(実施例1〜16における光学部材の調製)
表1および表2に記載された、実施例1〜16の各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物100重量部に対して、架橋剤(B)としてトリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)と、シランカップリング剤(C)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:信越シリコーンKBM−403)と、を表3および4に示す組成比で添加し、十分に混合して粘着剤組成物溶液を調製した。得られた各粘着剤組成物溶液を剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、商品名:MRF38)に乾燥後25μmの厚さにするように塗布し、並びに90℃で3分間乾燥させ、粘着剤組成物から構成される粘着層を形成した。その後、前記粘着層および剥離PETフィルムを偏光板(株式会社美舘イメージング製、商品名:MLPH)に貼り付けることにより、実施例1〜15の光学部材をそれぞれ調製した。
【0113】
表面抵抗値、金属腐食性、光漏れ、耐久性、粘着力、基材への密着性、被着体汚染性、低温安定性、およびリワーク性などに対して、各光学部材の性能の試験を行った。前記性能試験は以下の通りに行われた。
【0114】
また、それぞれの粘着剤組成物溶液の粘着剤組成物の濃度および粘度を測定した。さらに、ゲル分率とおよびゲル分率安定化期間を測定した。結果を表3および表4に示す。
【0115】
「ゲル分率」
試験サンプル1〜16を、実施例1〜16の光学部材の調製に用いられた偏光板の代わりに、剥離されたポリエステルフィルムを用いて調製し、23℃、相対湿度50%の条件下で放置し、塗布から1、3、5、7、10および15日後に試験サンプルのゲル分率を測定した。
【0116】
前記ゲル分率は、次式により算出した:ゲル分率(重量%)=〔(W3−W2)/W1〕×100
式中、W1は、試験サンプルから得られた粘着層の重量(g)を示す。W2は後述するステンレス製の金網の重量(g)を示す。W3は、試験サンプルから得られた粘着層を含むサンプル容器に、酢酸エチルを30g加え、並びに、粘着層を終夜浸漬させた後、サンプル容器の内容物を200メッシュのステンレス製の金網を用いてろ過し、90℃で1時間乾燥させる工程により得られるステンレス製の金網の重量(g)および金網上の層(ろ過後の残さ)の総重量を示す。
【0117】
「ゲル分率安定化期間」
上述したように、各試験サンプルのゲル分率は、塗布から一定期間後に測定し、前記ゲル分率の安定する期間を、ゲル分率安定化期間またはゲル分率安定化期間と定義した。
【0118】
<性能試験の方法>
「表面抵抗値」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した後、マイクロエレクトロメーター(株式会社川口電機製作所製)を使用して23℃、相対湿度50%の条件下で、前記光学部材の粘着層の表面抵抗値を測定した。
【0119】
「金属腐食性」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した各光学部材の粘着層に、アルミホイルを貼り付け、60℃、相対湿度90%の条件下で2日間放置した。このとき腐食性を観察した。アルミホイルに変化がない場合は○で示し、アルミホイルが白色に変化した場合は×で示した。
【0120】
「光漏れ」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した各光学部材を、120mm(偏光板のMD方向)×60mmのピースおよび120mm(偏光板TD方向)×60mmのピースに切り取り、次にガラス基材の両面に互いに重なり合うように貼り付け、続いて50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、各サンプルを80℃で120時間放置し、その外観を観察した。前記サンプルに光漏れが観察されなかった場合は○で示し、前記サンプルに光漏れが観察された場合は×で示した。
【0121】
「耐久性」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した各光学部材を、120mm(偏光板MD方向)×60mmのピースに切り取り、ガラス基材に貼り付け、50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、各サンプルを80℃および60℃、相対湿度90%の条件下で120時間放置して、外観を観察した。前記サンプルに発泡、緩み、または剥離が観察されなかった場合は○で示し、前記サンプルに発泡、緩み、または剥離が観察された場合は×で示した。
【0122】
「粘着力および基材への密着性」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した各光学部材を、25mm幅のピースに切り取り、ガラス基材に貼り付け、続いて50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下、剥離角180度、剥離速度0.3m/分で、JIS Z0237の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して、前記サンプルの粘着力を測定した。さらに、偏光板(基材)に対する密着性についても評価した。前記サンプルの粘着層が偏光板からまったく剥離していない場合を○で示し、前記サンプルの粘着層が偏光板から剥離した場合を×で示した。
【0123】
「被着体汚染性」
前記粘着力の測定前後において、ガラス基材の表面の接触角を測定した。前記サンプルの測定前後にガラス基材の表面の接触角に変化がなかった場合は○で示し、前記サンプルの測定前後にガラス基材の表面の接触角に変化があった場合は×で示した。一方、前記接触角は、JIS R3257のガラス基材のぬれ性試験方法に準拠して測定した。
【0124】
「低温安定性」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した各光学部材を、120mm(偏光板MD方向)×60mmのピースに切り取り、ガラス基材に貼り付け、続いて50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、前記サンプルを−40℃で120時間放置し、外観を観察した。前記サンプルに発泡、緩み、剥離、または析出物が観察されなかった場合は○で示し、発泡、緩み、剥離、または析出物が観察された場合は×で示した。
【0125】
「リワーク性」
前記粘着力測定時に剥離の状態を観察した。前記サンプルの界面破壊が観察された場合は○で示し、ガラス基材(被着体)への粘着破壊および/またはスティッキングが観察された場合は×で示した。
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
表3に示すように、実施例1〜10の粘着層は、1011Ω/cm以下の表面抵抗値を示し、良好な帯電防止性能を示した。また、実施例1〜10については、ゲル分率安定化期間が短く、3日であった。さらに、実施例1〜10の光学部材は、4〜8N/25mmの適した粘着力を有した。加えて、実施例1〜10の光学部材は、金属腐食性、光漏れ、耐久性、基材への密着性、被着体汚染性、低温安定性およびリワーク性のすべての項目で良好な特性を示した。
【0129】
一方、表4に示すように、実施例11は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドも帯電防止剤も含まないため、1015Ω/cmの表面抵抗値を示し、実施例11は、実施例1〜10よりも帯電防止性能が低かった。さらに、実施例11は、ゲル分率安定化期間が10日であり、実施例1〜10よりも長かった。
【0130】
また、実施例12は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを含まないため、ゲル分率安定化期間が10日であり、実施例1〜10によりも長かった。
【0131】
さらに、実施例13は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを少量しか含まないため、1014Ω/cmの表面抵抗値を示し、帯電防止性能が実施例1〜10よりも低かった。また、実施例13の耐久性およびリワーク性は×と評価された。
【0132】
また、実施例14は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを多量に含むため、耐久性の項目は×と評価された。
【0133】
さらに、実施例15は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを少量しか含まないため、耐久性およびリワーク性はと評価された。
【0134】
また、実施例16は、水酸基を含まず、窒素基含有モノマーであるN,N−ジエチルアクリルアミドを含むため、ゲル分率安定化期間が10日であり、実施例1〜10よりも長く、光漏れおよび耐久性の項目は×と評価された。
【0135】
次に、本発明を実施例17〜32を参照に説明する。はじめに、実施例17〜32による粘着剤組成物を調製し、保護フィルムに塗布することによって、実施例17〜32の表面保護フィルムを製造した。そして、前記表面保護フィルムの性能を試験した。以下に詳細を説明する。
【0136】
(実施例17における共重合体組成物の調製)
水酸基含有(メタ)アクリルアミドとしてヒドロキシエチルアクリルアミド1重量部、ブチルアクリレート40重量部、2−エチルヘキシルアクリレート58.99重量部、および溶媒として酢酸エチル150重量部を、還流冷却器および撹拌機が備えられたフラスコに導入し、窒素置換をしながら65℃まで加熱した。次に、重合開始剤としてAIBNを0.1重量部加え、さらに1時間後、AIBNを0.05重量部加え、65℃で6時間重合反応を行った。重合反応の完結後、イオン性化合物として1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート0.01重量部を添加し、粘度の調整のために酢酸エチルをさらに36重量部添加した後、室温まで冷却した。これにより、実施例16の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を製造した。
【0137】
共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度は35重量%であり、共重合体組成物溶液の粘度は3500mPa・sであった。表5には、粘着剤組成物の組成比、共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度、および共重合体組成物溶液の粘度を示す。
【0138】
また、ベースポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定した。結果を表5に示す。
【0139】
【表5】

【0140】
(実施例18〜32における共重合体組成物溶液の調製)
水酸基含有(メタ)アクリルアミドとして、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アクリル酸およびアクリルアミドの少なくとも1つと、ヒドロキシエチルアクリルアミドと、を混合した(または混合しない)混合物は、溶媒である酢酸エチルと好適に混合され、同時に、イオン性化合物である1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムブロミド、および1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネートの1つを混合する(または混合しない)ことを除いて、前記実施例17の場合と同様の工程により、実施例18〜32の粘着剤組成物を含む共重合体組成物溶液を得た。表5および表6に、実施例18〜32の粘着剤組成物の組成比、各共重合体組成物溶液の粘度、各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度、およびベースポリマーの重量平均分子量を示す。
【0141】
【表6】

【0142】
(実施例17〜32の表面保護シートの調製)
表5および表6に記載された、実施例17〜32の各共重合体組成物溶液中の粘着剤組成物100重量部に対して、架橋剤(B)としてヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアネレート架橋剤、日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートHX)を、表7および表8に示す組成比で添加し、十分に混合して粘着剤組成物溶液を調製した。得られた各粘着剤組成物溶液を剥離PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製、商品名:MRF38)に、乾燥後25μmの厚さに塗布し、並びに90℃で3分間乾燥させ、粘着剤組成物から構成される粘着層を形成した。その後、粘着層および剥離PETフィルムを、PET保護フィルム(東レ株式会社製、商品名:ルミラーS10#25)に貼り付けることにより、実施例17〜32の表面保護シートをそれぞれ製造した。
【0143】
実施例1と同様に、表面抵抗値、金属腐食性、被着体汚染性、および低温安定性に対して、各表面保護シートの性能試験を行った。ここで、前記性能試験は、被着体としてガラス基材を偏光板に変更した。前記性能試験は、粘着力、基材への密着性、粘着層の透明性について、以下に示すように行った。
【0144】
さらに、実施例1と同様にして、各粘着剤組成物溶液中の粘着剤組成物の濃度、および粘度、ゲル分率、並びにゲル分率安定化期間を測定した。結果を表7および表8に示す。
【0145】
「粘着力および基材への密着性」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した各光学部材を、25mm幅のピースに切り取り、偏光板に貼り付け、続いて50℃で5kg/cm×20分のオートクレーブ処理を行った。その後、引張試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下、剥離角180度、剥離速度0.3m/分で、JIS Z0237の粘着テープおよび粘着シート試験の方法に準拠して、前記サンプルの粘着力を測定した。さらに、サンプルの保護フィルム(基材)への密着性についても評価した。前記サンプルの粘着層が保護フィルムから完全に剥離していない場合を○で示し、前記サンプルの粘着層が保護フィルムから剥離した場合を×で示した。
【0146】
「粘着層の透明性」
23℃、相対湿度50%の条件下で7日間放置した各表面保護シートの透明性を、肉眼で確認した。前記サンプルの粘着層の透明性が良好であった場合を○で示し、粘着層に不透明な部分を有するものを×で示した。
【0147】
【表7】

【0148】
【表8】

【0149】
表7に示すように、実施例16〜25の表面保護シートに対して、粘着層は、10〜1011Ω/cmの表面抵抗値を示し、良好な帯電防止性能を示した。また、実施例16〜25の表面保護シートは、0.1〜0.15N/25mmの適した粘着力を示した。加えて、実施例17〜26の表面保護シートは、金属腐食性、基材への密着性、被着体汚染性、低温安定性、および粘着層の透明性のすべての項目で良好な特性を示した。
【0150】
一方、表8に示すように、実施例26の表面保護シートは、水酸基含有(メタ)アクリルアミドも帯電防止剤も含まないため、1015Ω/cm表面抵抗値を示し、実施例26は、実施例17〜26よりも帯電防止性能が低かった。さらに、実施例27は、ゲル分率安定化期間が10日であり、実施例17〜26よりも長かった。
【0151】
さらに、実施例28は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを含まないため、ゲル分率安定化期間が10日であり、実施例17〜26よりも長かった。
【0152】
また、実施例29は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを少量しか含まないため、1014Ω/cmの表面抵抗値を示し、帯電防止性能が実施例17〜26よりも低かった。
【0153】
さらに、実施例30は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを多量に含むため、基材への密着性および粘着層の透明性の項目は×と評価された。
【0154】
また、実施例31は、水酸基含有(メタ)アクリルアミドを少量しか含まないため、被着体汚染性の項目が×と評価された。
【0155】
さらに、実施例32は、水酸基を含まず、窒素基含有モノマーであるN,N−ジエチルアクリルアミドを含むため、ゲル分率安定化期間が10日であり、実施例1〜10よりも長く、基材への密着性および被着体汚染性の項目が×と評価された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有アクリルアミド、水酸基含有メタアクリルアミドおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)と、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される(メタ)アクリレート(a2)とが共重合されて生じる共重合体(A)と、
イオン性化合物を含む帯電防止剤(B)と、
を含む粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)が、HC=C(R)ACONHCHCHOH(式中、R1はHまたはCHであり、Aは(COOCHCH、COOCHCHOOC−CHCH、単結合、および化学式1で表される化合物1から選択される1つであり、nは1または2である)である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【化1】

【請求項3】
前記粘着剤組成物が光学部材に利用される場合、前記共重合体(A)が、前記共重合体(A)全重量に対して、前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)0.1〜5重量%を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着剤組成物が表面保護シートに利用される場合、前記共重合体(A)が、前記共重合体(A)全重量に対して、前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)0.1〜10重量%を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記共重合体(A)が、前記共重合体(A)全重量に対して、前記(メタ)アクリルアミド(a2)50〜99.1重量%を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリルアミド(a2)が、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、およびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記粘着剤組成物が光学部材に利用される場合、前記共重合体(A)が、前記共重合体(A)全重量に対して、前記(メタ)アクリルアミド(a2)としてn−ブチルアクリレー80〜99.89重量%を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記粘着剤組成物が光学部材に利用される場合、前記共重合体(A)が、前記共重合体(A)全重量に対して、前記水酸基含有(メタ)アクリルアミド(a1)としてヒドロキシエチルアクリルアミド0.1〜5重量%を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記粘着剤組成物が表面保護フィルムに利用される場合、前記共重合体(A)が、前記共重合体(A)全重量に対して、前記(メタ)アクリルアミド(a2)として2−エチルヘキシルアクリレート50〜99.89質量%を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
前記粘着剤組成物が光学部材に利用される場合、前記ベースポリマー(A)が、ゲル浸透クロマトグラフィによってポリスチレン換算で求められる重量平均分子量1,000,000〜2,000,000を有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項11】
前記粘着剤組成物が表面保護シートに利用される場合、前記ベースポリマー(A)が、ゲル浸透クロマトグラフィによってポリスチレン換算で求められる重量平均分子量300,000〜1,000,000を有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項12】
前記ベースポリマー(A)が、0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項13】
前記イオン性化合物が、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジウム塩、およびアルキルホスホニウム塩から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項14】
前記共重合体(A)が架橋されている、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項15】
前記粘着剤組成物が光学部材に利用される場合、前記共重合体(A)が、架橋度としてゲル分率50〜80%を有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項16】
前記粘着剤組成物が表面保護シートに利用される場合、前記共重合体(A)が、架橋度としてゲル分率90〜100%を有する、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項17】
前記粘着剤組成物が、0.01〜2.0重量%の帯電防止剤(B)を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項18】
光学シートの片面または両面に塗布された、請求項1〜17のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を含む光学部材。
【請求項19】
前記粘着層が、1×10〜1×1011Ω/cmのシート抵抗を有する、請求項18に記載の光学部材。
【請求項20】
保護フィルムと、前記保護フィルムの片面または両面に形成された粘着層と、を含み、前記粘着層が請求項1〜17のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を含む、表面保護シート。
【請求項21】
前記粘着層が、1×10〜1×1011Ω/cmのシート抵抗を有する、請求項20に記載の表面保護シート。

【公表番号】特表2011−504537(P2011−504537A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534874(P2010−534874)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006501
【国際公開番号】WO2009/066883
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】