説明

粘着剤組成物、粘着剤層、および粘着剤シート

【課題】チタン系ナノ粒子が安定に分散されており、機械的特性がより増強され、屈折率および接着力にも優れている粘着剤層を形成することができる粘着剤組成物、それを用いた粘着剤シート等を提供すること。
【解決手段】モノマー成分として、CH=C(R)COOR(但し、Rは、水素またはメチル基、Rは、炭素数1から20までの無置換のアルキル基または置換されたアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリレートを50重量%以上含有し、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が50万以上300万以下の実質的に酸成分を含有しない(メタ)アクリル系ポリマー;
該(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、120〜400重量部の、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が200以上900以下の芳香族系ポリマー;および
該(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、150〜600重量部の、平均粒径5〜100nmのチタン系ナノ粒子を含有してなる粘着剤組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々に応用され得る、チタン系ナノ粒子を含有する粘着剤組成物および当該粘着剤組成物から得られる粘着剤層、およびこのような粘着剤層を支持体の少なくとも片面に有する粘着剤シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射防止フィルムや導電性フィルムなどの各種光学フィルムを、液晶表示装置等の表示パネルへ貼り合せるときに使用する粘着剤としては、アクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物が使用されている。
【0003】
一般的に、光学フィルムや光学用部材に使用されている材料の屈折率は、例えば、ガラスの場合は、1.52程度、メタクリル系樹脂の場合には、1.51程度、ポリカーボネートの場合は、1.60程度である。
【0004】
しかしながら、従来の粘着剤組成物は、乾燥後または硬化後の屈折率が1.47程度である。その為、光学フィルムや光学用部材と粘着剤層の界面に屈折率差が生じ、浅い角度の光で全反射が起こり、光の取り出し効率を低下させることがある。
【0005】
従来の芳香族環を有する共重合性モノマーを共重合させたアクリル系重合体を主成分として含有する粘着剤組成物では、従来のアクリル系粘着剤組成物に比べ、屈折率は高くなるが、他の特性との望むバランスが取れるものではない。
【0006】
幅広い応用範囲のある粘着剤やポリマー組成物に、各種の微粒子を混合することで、粘着剤やポリマー組成物の機械的強度を始めとする物性の改良を行う試みがなされている。微粒子の表面処理を行ったり、各種の分散機にて組成物を処理したりすることにより、微粒子を組成物中に均一に分散させる方法が一般に採用されている。
【0007】
例えば、30nm以下のコロイド状シリカゲルに各種のシランカップリング剤を加えてシリカ表面を修飾処理してポリマー溶液と混合して粘接着剤を作成し、微粒子の存在で体積収縮率を小さくすることで、接着力自体を高くする効果の発現が期待されている(特許文献1)。
【0008】
また、ナノ粒子を拡散粘着剤として混合してコントラスト向上や視野角を大きくすることが提案されているが、ここでの具体的な安定分散方法は明らかではない(特許文献2)。
【0009】
あるいは、200nm以下の金属酸化物粒子を、表面改質剤としての長鎖脂肪族酸やオルガノシラン類などで表面処理して、モノマーなどに分散させ、接着剤シロップを作成する方法も開示されている(特許文献3)。
【0010】
酸性官能基を生成しない有機溶媒を用いて、水酸基を有するモノマーを共重合したアクリル系ポリマーに0.2μm以下の酸化亜鉛微粒子を混合し、塗布した紫外線遮蔽性粘着剤も提案されている(特許文献4)。
【0011】
しかし、表面処理する方法を用いて作成した微粒子を各種の組成物に分散させた場合には、ポリマーの種類によっては微粒子が凝集して複合物が白濁し、ヘイズが発生する場合があり、そのポリマーの組成に合わせて、溶剤の種類や表面改質剤、あるいはカップリング剤の種類を適時変更する必要があった。さらに、実際には、各種検討を行い、最適化するというスクリーニングの煩雑さがあった。また、場合により、汎用性のある溶媒が使用できないなどの弊害があった。
【0012】
さらに、粘着剤組成物中に、一定割合の金属系微粒子と芳香族環含有モノマーから構成される芳香族系ポリマーを混合したものも開示されている(特許文献5)。
【0013】
【特許文献1】特開2005−255706号公報
【特許文献2】特開2005−301213号公報
【特許文献3】特開2003−513122号公報
【特許文献4】特開2005−213482号公報
【特許文献5】特開2010−43156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、チタン系ナノ粒子が安定に分散され、複雑な工程を経ずに、所望の物性を得ることができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0015】
また本発明は、前記粘着剤組成物により形成された粘着剤層、該粘着剤層を有する粘着剤シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち本発明は、モノマー成分として、CH=C(R)COOR(但し、Rは、水素またはメチル基、Rは、炭素数1から20までの無置換のアルキル基または置換されたアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリレートを50重量%以上含有し、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が50万以上300万以下の実質的に酸成分を含有しない(メタ)アクリル系ポリマー;
該(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、120〜400重量部の、不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有しかつ芳香族環を有する芳香族環含有モノマーから構成される、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が200以上900以下の芳香族系ポリマー;および
該(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、150〜600重量部の、平均粒径100nm以下のチタン系ナノ粒子を含有してなることを特徴とする粘着剤組成物、に関する。
【0018】
上記粘着剤組成物において、上記(メタ)アクリル系ポリマーが、さらにモノマー成分として、CH=C(R)COOC2nOH(但し、Rは、水素またはメチル基、nは、1から10までの整数を表す)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートを0.05〜10重量%含有してなる共重合体であることが好ましい。
【0019】
上記粘着剤組成物において、上記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤を、0.02から2重量部含有することが好ましい。
【0020】
上記粘着剤組成物において、上記(メタ)アクリル系ポリマーが、幹部を構成する主鎖とは異なる組成からなる側鎖を有するグラフトポリマーであり得る。
【0021】
本発明はまた、上記のいずれかに記載の粘着剤組成物から得られることを特徴とする粘着剤層、に関する。
【0022】
上記粘着剤層は、ゲル分率が40〜90重量%であることが好ましい。
【0023】
上記粘着剤層は、ヘイズ値が20%以下であることが好ましい。
【0024】
本発明はまた、支持体の少なくとも片側に、上記いずれかの粘着剤層が形成されていることを特徴とする粘着剤シート、に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の粘着剤組成物は、多量のチタン系ナノ粒子が安定に分散されており、機械的特性がより増強され、屈折率および接着力にも優れている為、幅広い用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、モノマー単位として、CH=C(R)COOR(但し、Rは、水素またはメチル基、Rは、炭素数1から20までの無置換のアルキル基または置換されたアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリレートを50重量%以上含有し、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が50万以上300万以下の実質的に酸成分を含有しない(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む。
【0027】
ここで、Rとしての、炭素数1から20までの無置換のアルキル基または置換されたアルキル基は、直鎖、分岐鎖のアルキル基、あるいは環状のシクロアルカンを指す。置換されたアルキル基の場合は、置換基としては、炭素数3−8個のアリール基または炭素数3−8個のアリールオキシ基であることが好ましい。アリール基としては、限定はされないが、フェニル基が好ましい。
【0028】
このようなCH=C(R)COORで表されるモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独または組み合わせて使用できる。
【0029】
本発明において、前記CH=C(R)COORで表されるモノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーの全モノマー成分に対して、50重量%以上であり、50〜98重量%であることが好ましい。このうち、ブチル(メタ)アクリレートが50重量%以上、より好ましくは、60〜99.5重量%であることが、重合性とチタン系ナノ粒子の分散安定性の面で好ましい。
【0030】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーには、この他に、さらに、CH=C(R)COOC2nOHで示される水酸基含有モノマーが含まれていてもよい。すなわち、このモノマーは、炭素数1以上および水酸基1個のヒドロキシアルキル基を含むモノマーである。
【0031】
このようなモノマーとして、例えば、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;4−ヒドロキシメチルシクロへキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
水酸基含有モノマーは、含まれる場合には、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分の全量に対して、0.05〜10重量%の割合で用いられる。水酸基含有モノマーの割合は、好ましくは、0.05〜5重量%、より好ましくは、0.1〜1重量%である。
【0033】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分として、本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合モノマーを単独でまたは組み合わせて用いてもよい。しかし、本発明において、前記(メタ)アクリル系ポリマーは実質的に酸成分を含有しない。ここで、「実質的に酸成分を含有しない」とは、全ポリマー中、全く含まないか、含まれていても0.1重量%未満であることを指す。
【0034】
ここで、他の共重合モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマー;アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなども使用することができる。
【0035】
さらに、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0036】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は50万以上であることが必要であり、好ましくは60万以上である。重量平均分子量が50万よりも小さい場合には、粘着剤層の耐久性が乏しくなったり、粘着剤層の凝集力が小さくなって糊残りが生じやすくなる。一方、重量平均分子量が300万よりも大きくなると貼り合せ性、粘着力が低下するため好ましくない。さらに、粘着剤組成物が溶液系において、粘度が高くなりすぎ、塗工が困難になる場合がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0037】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0038】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0039】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0040】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0042】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
【0043】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0044】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(ADEKA社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0046】
このようにして得られるアクリル系ポリマー100重量部に、このポリマーとは異なる組成のモノマーを10〜200重量部加えて、必要に応じて溶媒を調製し、過酸化物0.02〜5重量部使用して、グラフト重合反応を行って、物性を調整することもできる。
【0047】
ここで、組成の異なるモノマーとは、特に限定はされず、各種の(メタ)アクリル系モノマーであって、好ましくは、幹部のポリマー構成には10重量%以下でしか含まれないモノマー;スチレンやαスチレンなどのスチレン誘導体;ビニルトルエンやαビニルトルエンなどの誘導体;などが挙げられる。
【0048】
グラフト重合の方法は、当業者に公知の方法であれば特に限定はされないが、例えば、溶液重合の場合、幹部構成の為の反応後のアクリル系ポリマーの溶液に、グラフト重合させるモノマーと粘度調整の為の溶媒を加えて、窒素置換した後、過酸化物0.02〜5重量部加え、50℃〜80℃で、4〜15時間加熱して行うことができる。
【0049】
乳化重合であれば、幹部を構成するアクリル系ポリマーの水分散液に、固形分量を調整する水を加えて、さらに必要な単量体を加え、撹拌しながら窒素置換して、アクリル系ポリマー粒子に、グラフト重合のためのモノマーを吸収させた後に、水溶性の過酸化物水溶液を加えて、50〜80℃で、4〜15時間加熱して反応を終了させる。
【0050】
このように、アクリル系ポリマーの存在下にモノマーを重合させることで、このモノマーによるホモポリマーも生成するが、グラフト重合も起こる。グラフト重合に供されるモノマーによるホモポリマーは、アクリル系ポリマー中に均一に存在する状態になる。
【0051】
グラフト重合の際の開始剤として使用される過酸化物が少ないと、グラフト重合反応の時間がかかり、多すぎるとホモポリマーが多くなり好ましくない。
【0052】
得られるグラフトポリマーは、良好な耐熱性を有する。特に幹ポリマーに水酸基含有アクリル系モノマーが存在する場合には、水素引き抜きが起こる位置やグラフトポリマー、または生成するホモポリマーの相溶性が複合的に関与することで、より良好な耐熱性が付与される。
【0053】
本発明においては、通常の重合体であるアクリル系ポリマー、あるいはグラフト重合体の場合には幹ポリマーを構成するアクリル系ポリマーは、ガラス転移温度が250K以下であることが好ましい。このようなポリマーを用いることで、得られる最終的な粘着剤組成物が耐熱性の良好なものとなる。さらには、グラフト重合体の場合の枝部を構成する部位は、ガラス転移温度が300K以上であることが好ましい。
【0054】
本発明の粘着剤組成物は、このような(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、120〜400重量部の、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重合平均分子量が200以上900以下の芳香族系ポリマーを含有し、さらに、150〜600重量部の、平均粒径が、100nm以下、好ましくは、平均粒径が、5〜100nmのチタン系ナノ粒子を含有する。
【0055】
芳香族系ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ芳香族環を有する芳香族環含有モノマーがあげられる。芳香族環含有モノマーの具体例としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−ナフトエチル(メタ)アクリレート、2−(4−メトキシ−1−ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等があげられる。この他、スチレンやαメチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルトルエンやαビニルトルエンなどが挙げられる。
【0056】
芳香族系ポリマーの重合平均分子量は、200以上900以下であり、好ましくは、300以上800以下である。900より大きい場合には、接着性がなくなる場合がある。また、200未満の場合は、チタン系ナノ粒子を分散安定化する効果が得られない。
【0057】
低分子の重合体を合成する方法としては、通常のラジカル重合にてメルカプタンやαメチルスチレンダイマーを用いて分子量を調整する方法、遷移金属、配位子の存在下で、重合開始剤を用いるリビングラジカル重合法、アニオン重合法など任意の方法を採用することができる。
【0058】
芳香族低分子ポリマーの含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、120〜400重量部であり、好ましくは、150〜350重量部である。含有量がこの量より少ないと接着性の低下があり、また多過ぎるとアクリル系ポリマーの物性を変化させる為、好ましくない。
【0059】
本発明の粘着剤組成物に含まれるチタン系ナノ粒子は、チタンを含むナノ粒子であり、その具体例として、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸カリウム、チタン酸リチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、窒化チタン、およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0060】
チタン系ナノ粒子の形状は、球形状、直方体形状、またはそれらの異形形状などのバルク形状、針形状、または板形状であり得る。
【0061】
チタン系ナノ粒子の平均粒径は、5〜100nmであり、好ましくは、5〜50nmであり、より好ましくは、5〜20nmである。針形状または板形状の場合は、最大長長さが5〜100nm、好ましくは、5〜50nmであり、より好ましくは、5〜20nmである。ここで平均粒径の測定は、MALVERN社製「ZetasizerNANO ZS型」を用いた動的光散乱法にて行い、数平均粒径で表示した。
【0062】
これらのナノ粒子は、必須ではないが、表面をシランカップリング剤などの分散安定剤で処理されることで、安定化されてもよい。
【0063】
分散安定剤としては、オクチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、ラウリン酸、オレイン酸などの長鎖脂肪酸、各種の有機物で変性されたシリコーン化合物などを挙げることができる。
【0064】
前記分散安定剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としてのチタン系ナノ粒子を処理するのに必要な量は、チタン系ナノ粒子100重量部に対し、1〜100重量部である。
【0065】
チタン系ナノ粒子の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、150〜600重量部であり、好ましくは、200〜550重量部である。
【0066】
含有量がこの量より少ないと望む屈折率を達成できず、多過ぎると粘着剤層を形成することが困難となるために好ましくない。
【0067】
ここで、チタン系ナノ粒子の含有量と芳香族系ポリマーの含有量の比は、チタン系ナノ粒子/芳香族系ポリマーで、1.0〜2.0、好ましくは、1.2〜1.8である。比率がこれより多い場合では、粘着剤層を形成することができず、この範囲以下であれば、屈折率の増加は望めない。
【0068】
本発明の粘着剤組成物においては、さらに、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、過酸化物などの架橋剤が含まれる。特に本発明においては、イソシアネート系架橋剤あるいは過酸化物系架橋剤およびその併用が好ましく用いられる。
【0069】
架橋剤として用いられるイソシアネート系架橋剤とは、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。
【0070】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
【0071】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが、反応速度が速い為に好ましい。
【0072】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート化合物架橋剤を0.01〜2重量部含有してなることが好ましく、0.05〜1重量部含有してなることがより好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0073】
なお、乳化重合にて作成した変性アクリル系ポリマーの水分散液では、イソシアネート系架橋剤を用いなくても良いが、必要な場合には、水と反応し易いために、ブロック化したイソシアネート系架橋剤を用いることもできる。
【0074】
過酸化物の架橋剤としては、加熱によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0075】
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0076】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0077】
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.02〜2重量部であり、0.05〜1重量部含有してなることが好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0078】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0079】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0080】
また、架橋剤として、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを併用してもよい。有機系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤(エポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう)があげられる。エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート、スピログリコールジグリシジルエーテルなどがあげられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0081】
多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0082】
前記架橋剤により、粘着剤層を形成するが、粘着剤層の形成にあたっては、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮する必要がある。
【0083】
粘着剤層の製造にあたり、架橋された粘着剤層のゲル分率は、40〜90重量%となるように架橋剤の添加量を調整することが好ましく、より好ましくは50〜85重量%である。このようなゲル分率は、過酸化物やイソシアネート系架橋剤およびその併用によって好ましく達成される。ゲル分率は、小さい場合には凝集力に劣り、大きすぎると接着力に劣る場合がある。さらに、好ましくは、架橋割合は、過酸化物単独でのゲル分率を測定した場合に10〜75%である。
【0084】
所定のゲル分率の調整は、イソシアネート系架橋剤量や他の架橋剤の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や時間などの条件を考慮することにより行うことができる。
【0085】
具体的には、過酸化物を使用する場合には、過酸化物の分解量が50%以上、好ましくは60%以上になるように架橋処理時間と時間を設定することが目安となる。過酸化物の分解量が小さいと残存する過酸化物が多くなり、経時での架橋反応が起こるためにこのましくない。
【0086】
より具体的には、例えば架橋処理温度が1分間半減期温度であれば、1分で分解量は50%、2分で75%となり、1分以上の加熱処理が必要となる。架橋処理温度での過酸化物の半減期時間が30秒であれば、30秒以上の架橋処理が必要となり、架橋処理温度での過酸化物の半減期時間が5分であれば、5分以上の架橋処理が必要となる。
【0087】
このように、使用する過酸化物によって架橋処理温度や時間は、過酸化物が一次比例すると仮定して半減期時間から比例計算され、調整されるが、副反応を回避する為に最高170℃までで加熱処理することが必要である。当然、この温度は乾燥時の温度をそのまま使用しても良いし、乾燥後に処理してもよい。処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定されるが、0.2〜20分、好ましくは、0.5〜10分が用いられる。
【0088】
このようにして得られた粘着剤は、被着体に貼付後の接着力の上昇が非常に小さく、長時間貼り付けた後でも糊残りすることなく、容易に再剥離できるという特徴が発揮される。
【0089】
特に光学部材に用いられる場合には、粘着剤層はヘイズ値が20%以下であることが好ましい。ヘイズ値が20%を超える場合には、光学部材に積層された際に透過率が大きく低下し、好ましくない。本発明の粘着剤層は、限定はされないが、通常ヘイズ値が20%以下である。ヘイズ値が20%以下であるということは、チタン系ナノ粒子が配合されているにも関わらず、得られた粘着剤層に白濁がなく、チタン系ナノ粒子が均一に分散されているということを意味する。従って本発明の粘着剤ではヘイズ値は大きくならず、透過率の低下も殆どない。
【0090】
近年、光学フィルムおよび光学部材には、屈折率の高いものが用いられるようになっており、例えば、屈折率1.60程度のポリカーボネートに輝度向上フィルムを貼り合せる際に粘着剤が用いられる場合には、粘着剤層の屈折率が1.60程度、もしくは1.60以上であることが好ましく、それ以下であれば、部材およびフィルムの特性を低下させる場合がある。本発明の粘着剤層の屈折率もこの範囲であることが好ましい。
【0091】
さらに、本発明の粘着剤組成物あるいは粘着剤層を有する粘着シートを、ガラスなどの親水性被着体に適用する場合には、界面での耐水性をあげる為にシランカップリング剤を、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.6重量部配合してもよい。多過ぎると液晶セルへの接着力が増大し再剥離性に劣り、少なすぎると耐久性が低下するため好ましくない。
【0092】
好ましく用いられ得るシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン 、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0093】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0094】
本発明の粘着剤シートは、光学部材などの支持体の少なくとも片面に、前記粘着剤により粘着剤層を形成したものである。
【0095】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレーターなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し架橋処理して粘着剤層を形成した後に光学部材に転写する方法、または光学部材に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去し架橋処理して粘着剤層を光学部材に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0096】
剥離処理したセパレーターとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を加熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0097】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0098】
また、光学部材の表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0099】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0100】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0101】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレーター)で粘着剤層を保護してもよい。
【0102】
セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0103】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0104】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0105】
なお、上記の粘着型光学部材の作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学部材のセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0106】
光学部材などの支持体としては、液晶表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学部材としては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0107】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0108】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0109】
本発明の粘着型光学部材に使用される光学部材としては、例えば、偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0110】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0111】
また、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、例えば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/または非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。これらのフィルムは位相差が小さく、光弾性係数が小さいため偏光板の歪みによるムラなどの不具合を解消することができ、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0112】
透明保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。透明保護フィルムは、5〜150μmの場合に特に好適である。
【0113】
なお、偏光子の両側に透明保護フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる保護フィルムを用いてもよい。
【0114】
本発明の透明保護フィルムとしては、セルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂および(メタ)アクリル樹脂から選ばれるいずれか少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0115】
セルロース樹脂は、セルロースと脂肪酸のエステルである。このようセルロースエステル系樹脂の具体例としでは、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリプロピオニルセルロース、ジプロピオニルセルロース等があげられる。これらのなかでも、トリアセチルセルロースが特に好ましい。トリアセチルセルロースは多くの製品が市販されており、入手容易性やコストの点でも有利である。トリアセチルセルロースの市販品の例としては、富士フィルム社製の商品名「UV−50」、「UV−80」、「SH−80」、「TD−80U」、「TD−TAC」、「UZ−TAC」や、コニカ社製の「KCシリーズ」等があげられる。一般的にこれらトリアセチルセルロースは、面内位相差(Re)はほぼゼロであるが、厚み方向位相差(Rth)は、〜60nm程度を有している。
【0116】
なお、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムは、例えば、上記セルロース樹脂を処理することにより得られる。例えばシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤を塗工したポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ステンレスなどの基材フィルムを、一般的なセルロース系フィルムに貼り合わせ、加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、基材フィルムを剥離する方法;ノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂などをシクロペンタノン、メチルエチルケトン等の溶剤に溶解した溶液を一般的なセルロース樹脂フィルムに塗工し加熱乾燥(例えば80〜150℃で3〜10分間程度)した後、塗工フィルムを剥離する方法などがあげられる。
【0117】
また、厚み方向位相差が小さいセルロース樹脂フィルムとしては、脂肪置換度を制御した脂肪酸セルロース系樹脂フィルムを用いることができる。一般的に用いられるトリアセチルセルロースでは酢酸置換度が2.8程度であるが、好ましくは酢酸置換度を1.8〜2.7に制御することによってRthを小さくすることができる。上記脂肪酸置換セルロース系樹脂に、ジブチルフタレート、p−トルエンスルホンアニリド、クエン酸アセチルトリエチル等の可塑剤を添加することにより、Rthを小さく制御することができる。可塑剤の添加量は、脂肪酸セルロース系樹脂100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
【0118】
環状ポリオレフィン樹脂の具体的としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
【0119】
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
【0120】
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性当の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロものフィルムを得ることができる。
【0121】
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
【0122】
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル樹脂系があげられる。
【0123】
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
【0124】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
【0125】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは下記一般式(化1)で表される環擬構造を有する。
【0126】
【化1】

【0127】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の有機残基を示す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0128】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になるおそれがある。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂の構造中の一般式(化1)で表されるラクトン環構造の含有割合が90重量%より多いと、成形加工性に乏しくなるおそれがある。
【0129】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、質量平均分子量(重量平均分子量と称することも有る)が、好ましくは1000〜2000000、より好ましくは5000〜1000000、さらに好ましくは10000〜500000、特に好ましくは50000〜500000である。質量平均分子量が上記範囲から外れると、成型加工性の点から好ましくない。
【0130】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、Tgが好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることから、例えば、透明保護フィルムとして偏光板に組み入れた場合に、耐久性に優れたものとなる。上記ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定されないが、成形性などの観点から、好ましくは170℃以下である。
【0131】
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、射出成形により得られる成形品の、ASTM−D−1003に準じた方法で測定される全光線透過率が、高ければ高いほど好ましく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は透明性の目安であり、全光線透過率が85%未満であると、透明性が低下するおそれがある。
【0132】
前記透明保護フィルムは、接着剤を塗工する前に、偏光子との接着性を向上させるために、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理などがあげられる。また適宜に帯電防止層を形成することができる。
【0133】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0134】
また光学フィルムなどの支持体としては、例えば反射板や反透過板、前記位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0135】
本発明の粘着剤シートは、限定はされないが、液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着剤シート、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着剤シートを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプなどの任意なタイプのものを用いうる。
【0136】
液晶セルの片側又は両側に粘着剤シートを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0137】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RH(1時間あるいは1週間)である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0138】
<重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエー
ション・クロマトグラフィー)により測定した。サンプルは、試料をテトラヒドロフランに溶解して0.1重量%の溶液とし、これを一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、(メタ)アクリル系ポリマー:GM7000HXL+GMHXL+GMHXL
芳香族系ポリマー:G3000HXL+2000HXL+G1000HXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm 計90cm
・溶離液:テトラヒドロフラン(濃度0.1重量%)
・流量:0.8ml/min
・入口圧:1.6MPa
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度:40℃
・ 注入量:100μl
・ 溶離液:テトラヒドロフラン
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準試料:ポリスチレン
【0139】
<ゲル分率の測定>
乾燥・架橋した粘着剤(最初の重量W1)を、酢酸エチル溶液に浸漬して、室温で1週間放置した後、不溶分を取り出し、乾燥させた重量(W2)を測定し、下記のように求めた。
ゲル分率=(W2/W1)×100
【0140】
実施例1
(アクリル系ポリマーの調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルアクリレート100重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル100重量部とトルエン100重量部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って15時間重合反応を行い、重量平均分子量60万のアクリル系ポリマー溶液を調製した。
【0141】
次に、酸化チタン(石原産業製TTO−51C)100重量部にシリコーン化合物(信越化学製KR−9706)15重量部を加え、メチルエチルケトン460重量部を分散媒として、ビーズミル(寿工業製ウルトラアペックスミル)にて2時間処理して、40nmのチタニア分散液を得た。
【0142】
得られた粘着剤ポリマー溶液に、ポリマーの固形分100重量部に対して、上記のチタニア分散液を固形分量にして500重量部、およびトルエンに溶解したスチレン低分子量ポリマーピコラスチックA5(Mw350 イーストマンケミカル社製)を固形分にして300重量部となるように加えて、さらに、ベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を配合した。ついで、得られた組成物を、シリコーン処理を施した38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(DIAFOIL MRF38、三菱化学ポリエステルフィルム社製)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、150℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着剤シートを作成した。
【0143】
実施例2
(アクリル系ポリマーの調製)
実施例1において、スチレン低分子量ポリマーを固形分にして200重量部に、チタニアナノ粒子を固形分にして300重量部に変えた以外は、全く同じ操作を行い、実施例2の粘着剤シートを得た。
【0144】
比較例1
実施例1において、スチレン低分子量ポリマーを固形分にして60重量部に、チタニアナノ粒子を固形分にして60重量部に変えた以外は全く同じ操作を行い、比較例1の粘着剤シートを得た。
【0145】
比較例2
実施例2において、スチレン低分子量ポリマーをクリスタレックス3085(Mw950、イーストマンケミカル社製)に変えた以外は全く同じ操作を行い、比較例2の粘着剤シートを得た。
【0146】
比較例3
実施例2において、スチレン低分子ポリマーをピコテックスLC(Mw1110、理化ファインテク社製)に変えた以外は全く同じ操作を行い、比較例3の粘着剤シートを得た。
【0147】
比較例4
実施例2において、スチレン低分子量ポリマーをクリスタレックス1120(Mw2250、イーストマンケミカル社製)に変えた以外は全く同じ操作を行い、比較例4の粘着剤シートを得た。
【0148】
上記実施例および比較例で得られた、粘着剤シート(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0149】
<接着力>
実施例および比較例で得られたサンプルを、幅20mm×長さ約100mmに裁断し、厚さ0.5mmの無アクリルガラス板(コーニング社製、1737)に、2kgのロール一往復で貼付け、次いで50℃、0.5MPaで30分間オートクレーブ処理して完全に密着させた後、剥離角度90°、剥離速度300mm/分で剥離接着を測定した。
【0150】
<屈折率>
実施例および比較例で得られたサンプルに、25℃の雰囲気で、ナトリウムD線を照射し、アッベ屈折率計(ATAGO社製DR−M2)にて屈折率を測定した。
【0151】
<ヘイズ>
実施例および比較例で得た幅10mmの粘着シートサンプルを用いて、25℃の雰囲気温度で、村上色彩技術研究所製反射・透過率計HR−100型にて、D−65光を用いてJISK−7136に準じて測定した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー成分として、CH=C(R)COOR(但し、Rは、水素またはメチル基、Rは、炭素数1から20までの無置換のアルキル基または置換されたアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリレートを50重量%以上含有し、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が50万以上300万以下の実質的に酸成分を含有しない(メタ)アクリル系ポリマー;
該(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、120〜400重量部の、不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有しかつ芳香族環を有する芳香族環含有モノマーから構成される、ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が200以上900以下の芳香族系ポリマー;および
該(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、150〜600重量部の、平均粒径100nm以下のチタン系ナノ粒子を含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、さらにCH=C(R)COOC2nOH(但し、Rは、水素またはメチル基、nは、1から10までの整数を表す)で表される水酸基含有(メタ)アクリレートによる単位を0.05〜10重量%含有してなる共重合体であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
さらに、前記(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して、架橋剤を、0.02から2重量部含有することを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、幹部を構成する主鎖とは異なる組成からなる側鎖を有するグラフトポリマーであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の粘着剤組成物から得られることを特徴とする粘着剤層。
【請求項6】
ゲル分率が40〜90重量%であることを特徴とする請求項5記載の粘着剤層。
【請求項7】
ヘイズ値が20%以下であることを特徴とする請求項5または6記載の粘着剤層。
【請求項8】
支持体の少なくとも片側に、請求項5から7までのいずれかに記載の粘着剤層が形成されていることを特徴とする粘着剤シート。

【公開番号】特開2012−41385(P2012−41385A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180960(P2010−180960)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】