説明

粘着転写性液体現像剤、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】潜像担持体上に形成されたトナー像をトナーの粘着力で転写する画像形成方法に用い、転写時に画像が欠けることを防止することができる粘着転写性液体現像剤、その画像形成方法および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】液体キャリア中に分散した、着色剤及び樹脂を含有するトナー粒子を静電潜像に静電気的に付着させて可視像化し、形成されたトナー像を該トナー粒子の粘着力により転写基材上に非加熱で転写を行う画像形成方法に使用される粘着転写性液体現像剤であって、前記トナー粒子の樹脂成分として、特定の5種のモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD、モノマーEを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤と樹脂を含有するトナーと、該トナーを分散させる液体とからなり、該トナーを静電潜像担持体上の潜像に付着させて潜像を現像し、該静電潜像担持体上に形成されたトナー像を該トナーの粘着力で転写基材上に非加熱で転写する画像形成方法に使用される液体現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者のニーズが多様化している今日、印刷物の製造分野においても、少量かつ多品種の製造が要求される傾向が顕著になってきている。そこで、このような要求に対応するための方法として、費用と時間がかかる製版工程を必要としない電子写真法が着目されている。
【0003】
電子写真法におけるLED、レーザビーム等のデジタル的な潜像形成技術の発達により、例えば1200DPI等の高精細なドット像の書き込みが可能になっており、このような潜像形成技術を採用した高精細、高画質な画像を形成することができる画像形成方法及び装置が望まれている。
【0004】
このような高画質なプリントを得るためには、ドット面積の正確な再現性が必要で、トナー像を潜像担持体や中間転写体から、中間転写体や記録媒体に転写する際のトナー飛散や潰れ(加熱・加圧定着でも生じる)は特にカラープリントにおいて主要な課題となる。使用するトナーの粒径を微細化すれば、高解像度トナー像を実現できる。又、微細な粒径のトナーを使用すれば、トナー像の厚さも薄くなり色重ねでカラープリントを得る場合の色表現性も向上する他、最終記録体である転写紙上に転写されたトナー像の厚みが粒径に応じて薄くなる分、転写紙のカールやトナー像のヒビわれの程度も改善される。
【0005】
トナーとしては粉体キャリア等と摩擦帯電させて乾式現像方式に用いられる粉体トナーと、液体キャリアである溶剤に分散して液体現像方式に用いられるトナー(以下、液体トナーという)とがある。このうち粉体トナーでは粒径が5ミクロン〜サブミクロンのオーダの微粉トナーである場合、トナー飛散抑制や転写処理後の潜像担持体である感光体上の残留トナーの除去が困難になるという問題がある。一方、液体トナーは溶剤に分散して使用されるため、このような問題も生じないで微細化トナーとしての取扱いが容易である。そのため、粉体トナーを用いた乾式電子写真法と比較して、グラビア印刷方式やオフセット印刷方式などのような高精細な画像の印刷が可能な方式と同程度の高精細性を達成することができる。又、トナーの溶融温度が低いほど消費電力や高速化に有利であるが、溶融温度が低い粉体トナーではブロッキングを起こすという問題がある。一方、液体のトナーでは溶剤に分散して使用するので、このような問題も無く、低融点(低軟化点)のトナーを採用できる。
【0006】
従来の液体現像方式では、静電潜像を液体現像で現像してトナー像が形成された感光体(潜像担持体)表面に転写紙を接触させ、転写紙の裏面にコロナ放電器、転写ローラ等で転写電界を形成する。これにより、感光体上のトナー像を転写紙上に転写する静電的な転写方法を用いた場合には、電荷が付与されて帯電した転写紙が静電的に感光体に吸着される場合があった。また、転写ローラ等で加圧したりする結果、トナー像が潰れて例えば細線の幅や網点ドット面積の忠実な再現が困難な場合があった。
【0007】
また、従来の液体現像画像形成装置においては、液体キャリアを用いるがゆえに、像がつぶれて、高精細な画像を得られない場合があった。トナーと液体キャリアとから成る現像液により現像された潜像担持体の表面には、トナーだけではなく液体キャリアも含む現像液層から成るトナー像が形成されている。液体現像によって形成された潜像担持体上のトナー像を電界で記録媒体等に電界を用いて転写するには、転写電界が形成された潜像担持体と記録媒体等の転写相手との間、すなわち転写ギャップには、適正な量の液体キャリアは必要である。
【0008】
しかし、液体キャリアが過剰な場合、ドットやラインなどのトナー像がつぶれ、ライン幅が太くなったり、画像濃度にムラが出たりすることがあり、潜像担持体上に形成されたトナー像を忠実に記録媒体に転写するのは困難である。これは、潜像担持体の表面に液体キャリアが過剰に存在すると、液体キャリアが少ない場合と同じ転写電位差では電界不足となり、転写時に、潜像担持体の表面でトナー像を構成するトナーが、潜像に忠実に移動できないことが原因であると考えられる。多量の液体キャリアに合わせて必要な電界を形成するためには、より高電圧を必要とする不具合が生じる。
【0009】
また、プリントに用いられる記録媒体についても多品種が要求されるようになってきている。普通紙に限らず、紙の表面に光沢を持たせたり、平滑性を良くしたりするためにその表面に「クレー」と呼ばれる白土を塗るコート紙や、樹脂製のフィルム等を記録媒体として用いることが期待されている。コート紙や樹脂製のフィルムは、その表面の平滑性、材料の特徴から、液体キャリアを全く吸収しないか吸収量が普通紙に比較して少ない。このため、転写ギャップの液体キャリアが多い場合のような転写状態となり、画像がつぶれてしまうことがある。
【0010】
このような問題に対して、従来の液体現像画像形成装置においては、潜像担持体の表面から余剰な液体キャリアを除去するスクイズローラを備えたものがある。スクイズローラを備えた構成としては、潜像担持体表面に対して所定距離をとって対向配置し潜像担持体回転方向と表面が逆方向に移動するよう回転させる方法や、画像部のトナーを除去しないような電位差を設けたローラをトナー像に接触させ、液体キャリアを付着させて除去する方法が提案されている。
【0011】
そして、さらにつぶれを防ぐための方法として、電圧を印加したローラを、潜像担持体上のトナー像の表面に、空隙をもって対向させ、潜像担持体上に形成されたトナー像を硬化させた後に該トナー像を記録媒体に転写する方法がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0012】
また、特許文献3には、潜像担持体上や中間転写体上のトナー画像を乾燥させた後、転写時に記録媒体との間に非水溶媒を供給し、静電転写する方法が提案されている。乾燥させることにより、トナー画像を形成するトナー粒子の粒子間に存在する担体液が蒸発し、トナー粒子が凝集し、これによってトナー粒子間の相互作用が高まったところへ、非水溶媒を供給し電界転写するものである。転写基材への転写時に、トナー粒子が個々に挙動しなくなりトナー粒子の凝集体として転写するので、トナー画像のつぶれや、広がりを防止し、高解像力のある、高画質な画像を得ることができる。
【0013】
しかしながら、このようなつぶれを防ぐための方法を用いても、液体現像方式で静電的に転写を行う場合、潜像担持体表面から記録媒体へのトナーの移動はトナーが液中を泳動するため、潜像担持体と記録媒体との間に液が必要である。そして、液があるために潰れたり、液が紙に入っていって紙が膨潤して画像が乱れたりといった不具合が生じる。
【0014】
そこで、液体現像方式で静電的な方法以外で転写を行うものとしては、特許文献4に記載の方法がある。特許文献4では、ガラス転移温度を調整することと、液体キャリアの乾燥程度を調整することによりトナーの粘着性を高め、その粘着力で転写する、粘着転写、オフセット転写等と呼ばれる方法である。トナー像が自己定着することにより、速やかなフィルム形成を行い、フィルム状となり一体的に挙動するトナー像をその粘着力により転写する。このようにトナーの粘着力で転写を行うものであれば、転写前にトナー以外の液を極力無くしておくことができ、つぶれや転写残しがなく、良好に転写することができる。
【0015】
しかしながら、特許文献4に記載の方法であっても、転写時にトナー像の一部が感光体表面に残ることがあった。これは、フィルム形成したトナー像であってもトナー粒子間のつながりが弱く、フィルム状のトナー像からトナー像の一部が剥がれ、感光体表面上に残るために生じる。そして、トナー像の一部が感光体表面に残ると、その部分の画像が欠けた状態となる。
【0016】
【特許文献1】第2990675号公報
【特許文献2】特開平9−204109号公報
【特許文献3】特開平2−272476号公報
【特許文献4】特表2001−501654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、潜像担持体上に形成されたトナー像をトナーの粘着力で転写する画像形成方法に用い、転写時に画像が欠けることを防止することができる粘着転写性液体現像剤を提供することである。特に転写基材の特性(抵抗値など)や表面性(凹凸など)によらず良好な転写性が得られ、かつ、定着も非加熱で現像後スクイズによりトナー層中の液体キャリアを除去して粘着化して転写し、転写ローラの圧で転写基材にトナーを転写、定着を同時に行う、粘着転写性液体現像剤、その現像剤を用いた画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
非加熱での粘着転写を実現するには、液体キャリアが減少した時に、トナー層が粘着性を発現し、トナー層が一体となって転写することが重要となる。トナー層が粘着性をおびていても、トナー層内で分断されてしまうと、転写率が低下し、狙いの画像濃度を得ることができなくなる。
このため、図4の(C)や(D)で示されるようにトナー層が分断されての転写ではなく、AやBのようなトナー層が成膜して転写を行うことが本発明の目的である。
また、本発明においては、定着された最終画像には粘着性が残っていないことも重要である。このため、転写時に液体キャリアが一定量除去されたときに粘着性を発現し、トナー層が一体となり転写し、最終的には粘着性のない画像を形成するための液体現像剤を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、液体キャリア中に分散した、着色剤及び樹脂を含有するトナー粒子を静電潜像に静電気的に付着させて可視像化し、形成されたトナー像を該トナー粒子の粘着力により転写基材上に非加熱で転写を行う画像形成方法に使用される粘着転写性液体現像剤であって、前記トナー粒子の樹脂成分として、下記式(1)〜(5)で表されるモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD、モノマーEを含有することを特徴とする。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、RはH又はCH3を表し、RがHの場合、nは6〜9、RがCH3の場合、nは10〜14を表す。)
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、nは6〜8を表す。)
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、RはH又はCH3を表し、m及びnはともに1以上で、m+nは2〜30を表す。)
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、RはH又はCH3を表す。)
【0027】
【化5】

【0028】
(式中、RはH又はCH3を表す。)
【0029】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の粘着転写性液体現像剤において、前記モノマー成分比がモノマーA/モノマーB/モノマーC/モノマーD/モノマーE=6〜17mol%/49〜79mol%/2〜9mol%/2.5〜15mol%/2.5〜24mol%であることを特徴とする。
【0030】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の粘着転写性液体現像剤において、前記樹脂の重量平均分子量Mwが22000〜47000、数平均分子量Mnが13000〜33000であることを特徴とする。
【0031】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の粘着転写性液体現像剤において、前記樹脂の体積抵抗が7×1012〜4×1014Ω・cmであることを特徴とする特徴とする。
【0032】
請求項5に記載の発明は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項1ないし4のいずれかに記載の粘着転写性液体現像剤を用いて可視像化しトナー像を形成する現像工程と、該トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した液体キャリアの一部を除去する余剰液除去工程と、該液体キャリアの一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写する転写工程とを備えた画像形成方法であることを特徴とする。
【0033】
請求項6に記載の発明は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、請求項1ないし4のいずれかに記載の粘着転写性液体現像剤を用いて可視像化しトナー像を形成する現像手段と、トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した液体キャリアの一部を除去する余剰液除去手段と、該液体キャリアの一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えた画像形成装置であることを特徴とする。
【0034】
請求項1ないし4に記載の粘着転写性液体現像剤が含有するモノマーAは、転写時の粘着性を付与するものであり、モノマーBは、トナーと溶媒との親和性を高め、液体現像剤中のトナーの分散安定性を向上させる。また、モノマーCは、トナー層のフィルム化を促進させ、転写時にトナー層を一体化して転写させるほか、定着後のトナー層被膜を強固にする効果がある。そして、本発明者らの鋭意研究の結果、モノマーAとモノマーBとが共重合しているところにモノマーCがぶら下がってグラフト重合しているポリマーとすることにより、従来の粘着転写性液体現像剤よりもトナー像の欠けが生じにくいフィルム状のトナー像を形成することが出来ることが分かった。しかし、モノマーAとモノマーBとが共重合しているポリマーにモノマーCは直接グラフト重合することができないため、モノマーDとモノマーEとが繋ぎの役割を果たしている。
【0035】
このように、本発明の液体現像剤によれば、トナー粒子の樹脂成分として、モノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD、及びモノマーEを含むことにより、トナー粒子の粘着力でトナー像を非加熱で転写する画像形成方法において、転写時に画像が欠けることを防止することができるという優れた効果を有する。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、トナー粒子の粘着力により、画像を一体化させて転写(トナー層が一体となって転写)することができるため、抵抗の低い転写基材や凹凸のある転写基材に高精細な画像を作像できる液体現像剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の液体現像剤は、液体キャリア中に分散した、着色剤及び樹脂を含有するトナー粒子を静電潜像に静電気的に付着させて可視像化し、形成されたトナー像を該トナー粒子の粘着力により転写基材上に非加熱で転写を行う画像形成方法に使用される粘着転写性液体現像剤であって、前記トナー粒子の樹脂成分として、下記式(1)〜(5)で表されるモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD、モノマーEを含有することを特徴とする。
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、RはH又はCH3を表し、RがHの場合、nは6〜9、RがCHの場合、nは10〜14を表す。)
【0040】
【化7】

【0041】
(式中、nは6〜8を表す。)
【0042】
【化8】

【0043】
(式中、RはH又はCH3を表し、m及びnはともに1以上で、m+nは2〜30を表す。)
【0044】
【化9】

【0045】
(式中、RはH又はCH3を表す。)
【0046】
【化10】

【0047】
(式中、RはH又はCH3を表す。)
【0048】
本発明の液体現像剤におけるモノマーAとしては、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレートなどが、モノマーBとしては、ヘキシルメタアクリレート、ヘプチルメタアクリレート、オクチルメタアクリレート、2エチルヘキシルメタアクリレートなどが、モノマーCとしては、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタアクリレートが、モノマーDとしてはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが挙げられる。また、モノマーEとしてはアクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0049】
モノマーCのエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートは、市販品として、ABE-300(n+m=3)、A-BPE-4(n+m=4)、A-BPE-10(n+m=10)、A-BPE-20(n+m=17)、A-BPE-30(n+m=30)が、エトキシ化ビスフェノールAジメタアクリレートは、BPE-200(n+m=3)、BBE-300(n+m=6)、BBE-500(n+m=10)、BBE-900(n+m=17)、BBE-1300N(n+m=30)(いずれも新中村化学工業社製)などがある。
【0050】
モノマーAは、転写時の粘着性を付与するものであり、合成樹脂の成分中で6mol%未満であると粘着力が不足し粘着転写性が低下しやすい。モノマーAが17mol%よりも多いとトナー層のフィルム化効果を阻害し、粘着転写時にトナー層中で分離したり、定着後も印字面がベトつく不具合が生じやすい。このためモノマーAは樹脂成分中で6mol%〜17mol%が望ましい。
【0051】
モノマーBは、トナー中の溶媒との親和性を高め、トナーの分散安定性を向上さ、定着後の粘着性を抑える効果がある。モノマーBが49mol%未満であると分散安定の効果が低下し、79mol%よりも多いと粘着性が低下し粘着転性を阻害する傾向がある。このため、モノマーBは樹脂成分中で49mol%〜79mol%が望ましい。
【0052】
モノマーCはトナー層のフィルム化を促進させ、転写時にトナー層を一体化して転写させたり、定着後のトナー層皮膜を強固にする効果がある。2mol%未満ではフィルム化効果が少なく転写不良を発生させたり、定着強度を低下させ、9mol%よりも多いと溶媒との親和性が低下し凝集が発生する場合がある。
【0053】
モノマーDは樹脂骨格をグラフト、架橋構造にし、転写時のトナー層膜強度を上げたり、着色剤に吸着、一体化させる効果がある。2.5mol%未満ではその効果が少なく、15mol%よりも多いと溶媒親和性が低下する傾向がある。
【0054】
モノマーEはモノマーDとの反応で架橋構造形成に作用したり、カルボン酸の水素結合によるトナー層のフィルム一体化転写性に効果がある。2.5mol%未満ではその効果が少なく、24mol%よりも多いと溶媒親和性が低下する。
【0055】
これらのモノマーにより得られる樹脂のTg(ガラス転移点)は−20〜30℃が好ましい。−20℃未満では定着後も画像が粘着性を帯び、30℃より高いと粘着転写性が低下する。
【0056】
また、樹脂の構造は重合方法により変わるが、一例として下記式(6)で示すようなものがあげられる。なお、下記式(6)において、a,b,c,d,eはそれぞれモノマーA,B,C,D,Eのモノマー成分比(mol%)である。
【0057】
【化11】

【0058】
樹脂の重量平均分子量Mwは22000〜47000、数平均分子量Mnは13000〜33000が好ましい。Mwが22000未満、Mnが13000未満では粘着転写性や転写時のトナー凝集力が低下し、Mwが47000、Mnが33000を超えては分散安定性が低下する。
ここで、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定は、GPC(ゲルパーメイションクロマトグラフ)(島津製作所製、CBM-20/LC-20A/CTO-20A/RID-10Aシステム)により測定した。
【0059】
また、モノマーD、Eにより樹脂の一部をグラフト化、架橋構造にした方が、トナー層の凝集力が高まり、溶剤があっても良好な粘着転写性を発現できる。
【0060】
樹脂の体積抵抗は、7×1012〜4×1014Ω・cmであることが望ましい。7×1012Ω・cm未満であるとトナーとしたときに現像性が低下する。一方、4×1014Ω・cmよりも高い場合は、トナー帯電不良となり、好ましくない。
ここで、樹脂の体積抵抗の測定は、図5に示す装置を用い、2cm×2cmの電極板、電極間距離5mmセルに合成樹脂を入れ、500Vの電圧をかけた時に流れる電流値より次式により計算して求めた。
体積抵抗(Ω・cm)=(印加電圧(500V)/電流値(I))×(電極面積(2cm×2cm)/電極間距離(0.5cm))
【0061】
着色剤としては、一般の無機・有機顔料、染料を用いることができ、例えば、プリンテックスV、プリンテックスU、プリンテックスG、スペシャルブラック15、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4−B(以上デグサ社製)、三菱#44、#30、MR−11、MA−100(以上、三菱化成社製)、ラーベン1035、ラーベン1252、ニュースペクトII(以上、コロンビアカーボン社製)、リーガル400、660、ブラックパール900、1100、1300、モーガルL(以上、キャボット社製)などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ピーコックブルーレーキ、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY、ナフトールイエローS、ナフトールレッド、リソールファーストイエロー2G、パーマネントレッド4R、ブリリアントファーストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3B、インジゴ、チオインジゴオイルピンクおよびボルド−10Bなどの有機顔料、ディスパースファーストイエローG、ディスパースブルーFFR、ディスパースブルーグリーンB、ディスパースイエロー5G、ディスパースレッドFB、リアクティブオレンジ2R、リアクティブレッド3B、リアクティブブルー3G、リアクティブブリリアントブルーR、リアクティブブラックB等の染料があげられる。
【0062】
これらの着色剤は純度が高いものが望ましく特に80%以上のものが望ましい。また、着色剤の極性や抵抗を制御したい場合は着色剤をフラッシング処理することもトナー粒子の帯電性制御に効果がある。
フラッシング処理とは、色素を水に溶かした含水液に、更に樹脂分散媒を加え、フラッシャーと呼ばれるニーダー中で良く混合し、顔料のまわりに存在する水を後から添加される樹脂分散媒によって置換する処理をいう。この操作により取出される水を排出し、樹脂溶液中に顔料が分散された状態とし乾燥させて、溶剤を除去し、得られた塊を粉砕することにより着色剤の粉末が得られる。フラッシングする際の着色剤と樹脂の割合は、樹脂100重量部に対して着色剤10〜60重量部が適当である。フラッシング処理には、フミン酸、フミン酸塩(Na塩、NH塩など)またはフミン酸誘導体の存在下に行うのが特に有利である。これら添加されるフミン酸類の量は、着色剤含水液の0.1〜30重量%程度が適当である。フラッシング処理で使用する樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂などが望ましい。
【0063】
着色剤と本発明の合成樹脂の質量割合(着色剤/合成樹脂)は1/1〜1/5が望ましい。合成樹脂の割合が1/1未満では粘着転写性が低下し、1/5より多いとトナー着色力が低下する。
【0064】
本発明の液体現像剤に使用される液体キャリアとしては、高抵抗で低誘電率のものが良く、イソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン、ポリアルファオレフィン、シリコーン系オイル等が良好である。イソパラフィン系炭化水素は、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、エクソール100/140、エクソールD30、エクソールD40、エクソールD80、エクソールD110、エクソールD130(以上、エクソンモービル社製)などが、流動パラフィンはクリストールJ52、J72、J102、J142、J172、J202(以上、エッソ石油社製)などが、ポリアルファオレフィンはSyn2、Syn4、Syn6(以上、エクソンモービル社製)などが、シリコーン系オイルとしては、KF96 1〜10000cst(信越シリコーン社製)、SH200、SH344(東レシリコーン社製)、TSF451(東芝シリコーン社製)などがある。
【0065】
トナーのζ電位は10〜200mVが良好である。ζ電位が10mVよりも低いとトナー粒子が凝集したり、電気泳動性が低下し地汚れしたり、濃度が低下する。またζ電位が200mVよりも高いと感光体付着量が低下し濃度が低下する場合がある。
【0066】
トナーの平均粒径は0.1〜3μmが望ましく、0.1μm未満では、十分な濃度が得られない場合やニジミが発生しやすくなる場合があり、3μmを超えては、色彩、解像性が悪くなる場合がある。
【0067】
本発明の液体現像剤は、現像工程や余剰液除去工程で固形分を上げることにより粘着性が発現し、粘着転写が可能になる。粘着転写し転写基材に定着後は溶剤がほとんどなくなるため、粘着性は消失する。
【0068】
次に本発明の液体現像剤が使用される画像形成方法について説明する。
本発明の液体現像剤が使用される画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を上述した本発明の液体現像剤を用いて可視像化しトナー像を形成する現像工程と、該トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した液体キャリアの一部を除去する余剰液除去工程と、該液体キャリアの一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を転写基材上に転写する転写工程とを備えた画像形成方法である。
図1は、本発明の画像形成方法の一例を示すものである。帯電電圧付与部材により、感光体に電荷を与え、露光により非画像部の電荷を消去する。静電潜像担持体である感光体としてはセレン感光体、有機感光体、アモルファスシリコン感光体が使用できる。感光体の表面電位は、400V〜1600Vの範囲が良好である。感光体の電荷の残っている潜像に現像ローラから供給される液体現像剤により現像し、余剰液除去手段であるスクイズローラで余剰の現像液(主として液体キャリア)を除去し、液体キャリアの一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像をトナーの粘着力により記録媒体上に転写させる。転写圧は0.1〜10Kg/cm2が良好である。
【0069】
現像ローラは感光体と順方向に回転し、スクイズローラは逆方向に回転させ、感光体に対する線速は現像ローラが1.2倍〜6倍、スクイズローラの線速は1.2倍〜4倍が効果的である。また、現像ローラと感光体のギャップは50〜250μm、スクイズローラのギャップは30〜150μmが良好である。
【0070】
転写されずに感光体上に残った現像剤をクリーニングブレード、あるいはクリーニングローラで除去後、感光体を除電する。
【0071】
画像形成は、画像部の電荷を消去し非画像部の電荷を残す現像方式でも同様に行うことができる。
【0072】
図2は図1の装置に中間転写体を追加した例を示すものである。中間転写体の材質は、ウレタンゴム、ニトリルゴム、ヒドリンゴム等の耐溶剤性、弾力性のあるものが望ましく、フッ素樹脂等でコーティングされていれば更に良い。
中間転写体によれば、図1の装置よりもさらに高い転写圧力を付与することができる。また、中間転写体に低表面エネルギーの材料を用いることができ、現像液層から成るトナー層の剥離性を良くすることができる。さらにまた、中間転写体へ転写するときにトナー層を高固形分化できるなどの利点があり、図1の装置よりも粘着転写性を向上させることができる。この場合、一次転写は100〜1000Vの静電転写を用い、一次転写圧は0.1〜3Kg/cm2、二次転写圧は0.1〜30Kg/cm2が良好である。
【0073】
図3は液体現像剤を現像ローラ上に薄層にして現像し、粘着転写させる画像形成方法を示すものである。層厚は、1〜15μm程度が良く、望ましくは3〜10μmが良い。層厚1μm以下では、濃度が十分でなく、15μmより厚くては解像度が低下する。
この方法においては、現像ローラに形成した静電荷像用液体トナー層にコロナ放電を行った後に静電潜像を現像することにより、トナーの凝集力を向上させることができ、解像度を高めることができる。コロナ放電はトナーと同極性の場合に効果が高く、電圧は500〜8000V程度が良い。
【0074】
液体現像剤は、着色剤、樹脂、液体キャリアをボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミルなどの分散機に投入、分散、混練を行い得ることができる。一般的な材料の割合は、着色剤5〜10質量%、樹脂5〜30質量%、液体キャリア65〜95質量%、帯電制御剤0.1〜1質量%である。
この現像剤をそのまま、あるいは、適当な割合に希釈して作像機に入れ画像を形成する。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、ここでの部は、質量部である。
【0076】
(樹脂合成例1)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーH300gを仕込み、90℃に加熱し、攪拌しながらラウリルメタアクリレート(モノマーA)0.02mol、2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.25mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.04mol、メタクリル酸(モノマーE)0.01mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、95℃に保ち5時間重合を行った。その後、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPE-300)(新中村化学工業社製)(モノマーC)0.03mol、アズビスイソブチロニトリル(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を1時間かけて滴下し、85℃に保ち1時間重合を行った。
合成された樹脂の重合率は96%、分子量Mnは20000、Mwは38000であった。
【0077】
(樹脂合成例2)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにクリストールJ72 320gを仕込み、105℃に加熱し、攪拌しながらトリデシルメタアクリレート(モノマーA)0.07mol、ヘプチルメタアクリレート(モノマーB)0.20mol、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(A-BPE-10)(新中村化学工業社製)(モノマーC)0.02mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.06mol、メタクリル酸(モノマーE)0.06mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、100℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は98%、分子量Mnは13000、Mwは22000であった。
【0078】
(樹脂合成例3)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにエクソールD130 270gを仕込み、80℃に加熱し、攪拌しながら2エチルヘキシルアクリレート(モノマーA)0.05mol、ヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.30mol、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPE-1300N)(新中村化学工業社製)(モノマーC)0.01mol、グリシジルアクリレート(モノマーD)0.04mol、メタクリル酸(モノマーE)0.02mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は98%、分子量Mnは31000、Mwは46000であった。
【0079】
(樹脂合成例4)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5Lのフラスコにイソドデカン350gを仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながらテトラデシルメタアクリレート(モノマーA)0.03mol、2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.31mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.01mol、メタクリル酸(モノマーE)0.01mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。その後、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(ABE-300)(新中村化学工業社製)(モノマーC)0.03mol、アズビスイソブチロニトリル(反応開始剤)0.3gよりなるモノマー溶液を1時間かけて滴下し、80℃に保ち2時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は98%、分子量Mnは27000、Mwは43000であった。
【0080】
(樹脂合成例5)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーM350gを仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながらデシルメタアクリレート(モノマーA)0.05mol、2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.20mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.05mol、メタクリル酸(モノマーE)0.10mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。その後、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(A-BPE-10)(新中村化学工業社製)(モノマーC)0.01mol、アズビスイソブチロニトリル(反応開始剤)0.4gよりなるモノマー溶液を1時間かけて滴下し、80℃に保ち2時間重合を行った。
合成された樹脂の重合率は97%、分子量Mnは33000、Mwは47000であった。
【0081】
(樹脂合成比較例1)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーL320gを仕込み、105℃に加熱し、攪拌しながらステアリルメタアクリレート(モノマーA)0.10mol、オクチルメタアクリレート(モノマーB)0.20mol、メチルメタアクリレート(該当なし)0.15mol、グリシジルメタアクリレート(モノマーD)0.03mol、メタクリル酸(モノマーE)0.02mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)1gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、100℃に保ち5時間重合を行った。合成された樹脂の重合率は97%、分子量Mnは15000、Mwは27000であった。
【0082】
(樹脂合成比較例2)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーH 290gを仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながら2エチルヘキシルメタアクリレート(モノマーB)0.35mol、スチレン(該当なし)0.02mol、グリシジルアクリレート(モノマーD)0.03mol、メタクリル酸(モノマーE)0.02mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。
合成された樹脂の重合率は95%、分子量Mnは31000、Mwは48000であった。
【0083】
(樹脂合成比較例3)
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた0.5LのフラスコにアイソパーH 290gを仕込み、85℃に加熱し、攪拌しながらブチルメタアクリレート(該当なし)0.36mol、ベンジルアクリレート(該当なし)0.05mol、グリシジルアクリレート(モノマーD)0.04mol、メタクリル酸(モノマーE)0.03mol、ベンゾイルパーオキサド(反応開始剤)0.5gよりなるモノマー溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、85℃に保ち5時間重合を行った。
合成された樹脂の重合率は96%、分子量Mnは20000、Mwは37000であった。
【0084】
〔実施例1〕
フタロシアニンブルー(PB−15:3)(大日精化社製) 14部
樹脂合成例1の樹脂(固形分20.2%) 208部
アイソパーH (エクソンモービル社製) 30部
荷電制御剤(フォスファチジルコリン)(辻製油社製) 3部
をボールミルに入れて72時間分散後、さらにアイソパーHを30部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図1の装置で画像形成を行った。
転写現像剤固形分92%、転写圧力2Kg/cm2でリコー製ペーパー70Wに粘着転写を行った。
【0085】
〔実施例2〕
図2の装置で画像形成、粘着転写を行った以外は実施例1と同様に行った。
一次転写は印加電圧200Vの静電転写、二次転写は転写圧力8Kg/cm2で粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は97%であった。
【0086】
〔実施例3〕
キナクリドンレッド(PR−122)(富士色素社製)/ポリエステル樹脂(三菱レイヨン社製)フラッシング混練物(比率1/1) 30部
合成例2の樹脂(固形分21.0%) 143部
クリストールJ72(エッソ石油社製) 50部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム)(日本化学産業社製) 2部
をボールミルに入れて90時間分散後、さらにクリストールJ72を60部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤を図3の装置で薄層現像し、画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力5Kg/cm2でリコー製OHPシートに粘着転写を行った。二次転写時の現像剤固形分は80%であった。
【0087】
〔実施例4〕
ディスパースブルー60(DB−60)(有本化学社製) 15部
合成例3の樹脂(固形分46.6%) 64部
エクソールD130(エクソンモービル社製) 40部
荷電制御剤(ナフテン酸コバルト)(日本化学産業社製) 3部
をバスケットミルに入れて5時間分散後、さらにエクソールD130を40部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤トナー200gとエクソールD130 1Lを混合した現像剤により図2の装置で画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力10Kg/cm2でポリエステルサテンに粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は96%であった。
【0088】
〔実施例5〕
ナフトールレッド(PR−184)(クラリアント社 18部
合成例4の樹脂(固形分19.3%) 466部
イソドデカン(エクソンモービル社製) 60部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム)(日本化学産業社製) 2部
をボールミルに入れて96時間分散後、さらにイソドデカンを70部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤を図3の装置で薄層現像し、画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力8Kg/cm2で厚さ0.5mmの真鍮版に粘着転写を行った。二次転写時の現像剤固形分は95%であった。
【0089】
〔実施例6〕
ナフトールレッド(PR−184)(クラリアント社製)/エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製)フラッシング混練物(比率1/1) 34部
合成例5の樹脂(固形分28.4%) 180部
アイソパーM(エクソンモービル社製) 45部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム)(日本化学産業社製) 2部
をボールミルに入れて90時間分散後、さらにアイソパーMを50部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤を図3の装置で薄層現像し、画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力6Kg/cm2でハイコート紙に粘着転写を行った。二次転写時の現像剤固形分は96%であった。
【0090】
〔比較例1〕
フタロシアニンブルー(PB−15:3)(大日精化社製) 14部
樹脂合成比較例1の樹脂(固形分22.1%) 190部
アイソパーH(エクソンモービル社製) 30部
荷電制御剤(フォスファチジルコリン)(辻製油社製) 3部
をボールミルに入れて72時間分散後、さらにアイソパーHを30部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図1の装置で画像形成を行った。転写現像剤固形分90%、転写圧力2Kg/cm2でリコー製ペーパー70Wに粘着転写を行った。
【0091】
〔比較例2〕
ディスパースブルー60(DB−60)(有本化学社製) 15部
樹脂合成比較例2の樹脂(固形分25.6%) 117部
エクソールD130(エクソンモービル社製) 40部
荷電制御剤(ナフテン酸コバルト)(日本化学産業社製) 3部
をバスケットミルに入れて5時間分散後、さらにエクソールD130を40部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤トナー200gとエクソールD130 1Lを混合した現像剤により図2の装置で画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力10Kg/cm2でポリエステルサテンに粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は92%であった。
【0092】
〔比較例3〕
ディスパースブルー60(DB−60)(有本化学社製) 15部
樹脂合成比較例3の樹脂(固形分26.6%) 113部
エクソールD130(エクソンモービル社製) 40部
荷電制御剤(ナフテン酸コバルト)(日本化学産業社製) 3部
をバスケットミルに入れて5時間分散後、さらにエクソールD130を40部加え、1時間分散し、これを濃縮液体現像剤とした。
この濃縮液体現像剤トナー200gとエクソールD130 1Lを混合した現像剤により図2の装置で画像形成を行った。一次転写は印加電圧300Vの静電転写、二次転写は転写圧力10Kg/cm2でポリエステルサテンに粘着転写で行った。二次転写時の現像剤固形分は93%であった。
【0093】
上記実施例及び比較例の液体現像剤に用いた樹脂の体積抵抗、得られたトナーの平均粒径並びに該液体現像剤により画像形成を行ったときの帯電制御率、転写率、画像濃度について次の評価方法により評価した。その結果を表1に示す。
(評価方法)
*樹脂の体積抵抗(Ω・cm)は、前述の方法により測定した。
*平均粒径は島津製作所SA-CP3による。
液体現像剤を積分球式濁度計で透過率15%程度になるまでアイソパーで希釈し、SA-CP3用セルに充填する。測定条件はACCEL480、MODE:CENT、3〜16チャンネルで行った。
*帯電制御率は電着法により算出した。
電極間距離:1cm、電極面積:2cm×2cm、電着時間:100秒で測定した。
*転写率はテープ剥離法による濃度から算出した。
転写率=(転写前感光体上濃度−転写後感光体残濃度)/(転写前感光体上濃度)×100%
*画像濃度はX-Riteにより測定した。
【0094】
【表1】

【0095】
表1の結果から、実施例の液体現像剤を用いて静電潜像を現像し、形成されたトナー像を非加熱で転写基材に粘着転写を行う画像形成方法によれば、帯電制御性、非加熱粘着転写性が良好で高画像濃度の印字が可能となることが明らかである。なかでも転写基材の材質(抵抗値など)に制約を受けず、トナー層が一体となり転写するため、凹凸のある基材にも良好な転写を行うことができたことは注目すべきことである。
以下、各実施例比較例の結果について説明する。
実施例1は本発明の液体現像剤を用いているため粘着転写性は良好であるが、感光体からの直接転写のため、実施例2に比べて転写性は落ちる。これは、実施例2の結果からわかるように中間転写体の方が感光体よりも表面エネルギーが低く、トナー層の剥離性が良いこと、転写時に圧力がかけられることが効いていると考えられる。
実施例3は粘着樹脂比率が低いため、転写率はやや下がった。
実施例4は転写基材が凹凸のある布であるにも関わらず画像がフィルム化して一体となり転写した。
実施例5は静電転写が困難な金属の転写基材であるにもかかわらず高い転写率で転写できた。
実施例6はモノマーEの比率が高いため、トナー帯電率がやや低下した。
比較例1は本発明の材料を用いていないため粘着性が発現せず、非加熱粘着転写はできずトナー特性も良くなかった。
比較例2は本発明のモノマーA成分がないため、粘着性が発現せず粘着転写しなかった。また、モノマーC成分がないため、成膜化せずトナー層中で分裂し、樹脂抵抗が低いためトナー現像性も悪かった。
比較例3は合成樹脂の溶媒親和性が低く凝集ぎみでトナー粒径が大きく、現像性が悪いことに加え、転写層が柔らかく、定着後の画像にべとつきが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の液体現像剤を用いる画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の液体現像剤を用いる画像形成装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の液体現像剤を用いる画像形成装置のさらに他の例を示す概略構成図である。
【図4】液体現像剤の転写性の良否を説明する図である。
【図5】樹脂の体積抵抗の測定に用いた装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体キャリア中に分散した、着色剤及び樹脂を含有するトナー粒子を静電潜像に静電気的に付着させて可視像化し、形成されたトナー像を該トナー粒子の粘着力により転写基材上に非加熱で転写を行う画像形成方法に使用される粘着転写性液体現像剤であって、前記トナー粒子の樹脂成分として、下記式(1)〜(5)で表されるモノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD、モノマーEを含有することを特徴とする粘着転写性液体現像剤。
【化1】


(式中、RはH又はCH3を表し、RがHの場合、nは6〜9、RがCH3の場合、nは10〜14を表す。)
【化2】


(式中、nは6〜8を表す。)
【化3】


(式中、RはH又はCH3を表し、m及びnはともに1以上で、m+nは2〜30を表す。)
【化4】


(式中、RはH又はCH3を表す。)
【化5】


(式中、RはH又はCH3を表す。)
【請求項2】
前記モノマー成分比がモノマーA/モノマーB/モノマーC/モノマーD/モノマーE=6〜17mol%/49〜79mol%/2〜9mol%/2.5〜15mol%/2.5〜24mol%であることを特徴とする請求項1に記載の粘着転写性液体現像剤。
【請求項3】
前記樹脂の重量平均分子量Mwが22000〜47000、数平均分子量Mnが13000〜33000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着転写性液体現像剤。
【請求項4】
前記樹脂の体積抵抗が7×1012〜4×1014Ω・cmであることを特徴とする特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の粘着転写性液体現像剤。
【請求項5】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を請求項1ないし4のいずれかに記載の粘着転写性液体現像剤を用いて可視像化しトナー像を形成する現像工程と、該トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した液体キャリアの一部を除去する余剰液除去工程と、該液体キャリアの一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を転写基材上に転写する転写工程とを備えたことを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像担持体上に形成された静電潜像を、請求項1ないし4のいずれかに記載の粘着転写性液体現像剤を用いて可視像化しトナー像を形成する現像手段と、トナー像が形成された静電潜像担持体に付着した液体キャリアの一部を除去する余剰液除去手段と、該液体キャリアの一部が除去された静電潜像担持体上のトナー像を転写基材上に転写する転写手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107749(P2010−107749A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279901(P2008−279901)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】