説明

粘膜ワクチンの送達のためのペプチド

本発明は、アジュバントペプチド、並びに粘膜、特に鼻組織における抗原吸収を促進するための使用に関する。粘膜送達のためのワクチン組成物には、アジュバントペプチド、及び免疫応答を誘導するための抗原が含まれる。本発明の第一の実施形態は、哺乳動物において抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、アミノ酸配列FCIGRL(配列番号1)を有するペプチド又はその機能的誘導体及び該抗原を該動物に投与することを含み、該哺乳動物が該抗原に対する該免疫応答を上昇させる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2005年1月14日に出願された米国仮特許出願第60/643,606号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/643,606号の内容は、参考として本明細書中に具体的に援用される。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明は、国立保健研究所の補助金DK 048373に基づき、米国政府の基金を使用して実施された。従って、米国政府は、補助金の条件に従い、本発明に一定の権利を留保する。本発明は、イタリア保健省の補助金“Ricerca Finalizzata”補助金“3AIF”及びIstituto Superiore di Sanitaの内部研究補助金“C3MJ”に基づき、イタリア政府の基金を使用して実施された。
【0003】
(技術分野)
本発明は、ワクチン及び免疫療法の分野に関する。特に、本発明は、アジュバントペプチド及び抗原を含む経鼻組成物、並びに粘膜ワクチン接種のための該組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
ワクチンは、感染症の予防のために、成功裏に使用される、極めて容認性の高い方法であることが立証されている。これらは費用対効果が大きく、標的病原体に対する抗生物質抵抗性を誘発せず、宿主内に存在する正常細菌叢に影響を及ぼさない。多くの場合、例えば抗ウイルス免疫を誘発するときに、ワクチンは、実行可能な治療又は改善処置がないような疾患を予防することができる。
【0005】
当該分野で周知である通り、ワクチンは、免疫原性物質、又は抗原(抗原性物質)、一般的には非感染性又は非病原性の形態で身体に導入される感染性生物又はその一部に対する応答を増加させるように免疫系を誘発することによって機能する。いったん免疫系が「初回抗原刺激」を受けるか、生物に対して感作されると、後に感染性病原体としてのこの生物に免疫系が曝されたときに、病徴を引き起こすのに十分な宿主生物中の細胞を増殖及び感染させる前に病原体を破壊する、迅速且つ強力な免疫応答を引き起こす。免疫系を誘発するために使用される物質又は抗原は、弱毒化された生物として知られる、より感染力の少ない状態にある全体の生物であってもよく、場合によっては、生物の種々の構造成分を表わす炭水化物、タンパク質又はペプチド等の生物の構成成分であってもよい。
【0006】
多くの場合、ワクチンを有効にするのに、即ち免疫力を与えるのに十分な程度に免疫系を刺激するためには、ワクチン中に存在する抗原に対する免疫応答を増強する必要がある。単独で投与された多くのタンパク質並びに殆どのペプチド及び炭水化物は、免疫力を与えるのに十分な抗体を誘発しない。このような抗原は、異物として認識され免疫応答を誘導するように、免疫系に存在する必要がある。この目的のために、免疫応答を刺激するアジュバントが考案された。
【0007】
最も周知のアジュバントであるフロイント完全アジュバントは、水中油型エマルジョン中のミコバクテリアの混合物からなる。フロイントアジュバントは、2つの方法、第一に細胞及び体液性免疫を増強することにより、第二に抗原チャレンジ(蓄積効果)の急速な分散を妨害することによって機能する。しかし、この物質に対してしばしば起こる有毒な生理学的及び免疫学的応答により、フロイントアジュバントをヒトに使用することができなかった。免疫賦活又はアジュバント活性を有することが明らかとなっている別の分子には、リポ多糖類(LPS)としても知られるエンドトキシンがある。LPSは、「先天性」の免疫応答、即ち生物を予め曝す必要なく、生物がエンドトキシン(及びエンドトキシンを一成分とする浸潤性細菌)を認識できるように進化した応答を誘発することによって、免疫系を刺激する。LPSは非常に有害なため生存可能なアジュバントではないが、モノホスホリルリピドA(MPL)等のエンドトキシンと構造的に関連する分子が、臨床試験においてアジュバントとして試験されている。しかし、現在のところ、ヒトに使用するアジュバントとしてFDAに承認されているのは、抗原の沈殿による抗原の「蓄積」に使用されるアルミニウム塩(Alum)のみである。Alumも又、抗原に対する免疫応答を刺激する。
【0008】
従って、抗原を単独で又はalumと共に注射した場合に見られるよりも、抗原に対する更に強力な抗体応答を起こすように免疫系を刺激するに、抗原と共に投与できる化合物の必要性が当該分野において認められている。更に、粘膜ワクチンの開発には特定のアジュバントの使用が必要であるため、alum等の全身免疫化において作用するアジュバントは、一般的に粘膜ワクチンには有効でない。最近10年間に粘膜ワクチンのためのアジュバントに関する集中的な研究が行われているにもかかわらず、今のところ、ヒトに使用するためのアジュバントは登録されていない。アジュバント研究における主な問題は有効性と毒性であり、候補となる粘膜アジュバントは、高い有効性を有しながら毒性を有さないという基準を完全には満たしていない。更に、提案されている粘膜アジュバントの殆どは、作用機序が十分に理解されていない複合分子である。本明細書において出願人等は、抗原に対する免疫応答を誘導する、代替となる非毒性のペプチドアジュバントを示す。このペプチドの生物学的活性は既に詳細に定義されており、アジュバントとしての作用機序も研究されている。
【0009】
本発明の粘膜アジュバントの例には、閉鎖帯毒素(ZOT;例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7を参照)のペプチドがある。特許文献8は、治療薬並びに鼻吸収を促進するのに有効な量の、精製されたコレラ菌閉鎖帯毒素を含む、鼻送達のための経鼻投与組成物を説明している。使用されている精製されたコレラ菌閉鎖帯毒素は、SDS−PAGEにより約44kDaの分子量を有すると教示されているが、構造的情報は知られておらず、開示されていない。関連する特許文献9及び特許文献10は、更に、精製されたコレラ菌閉鎖帯毒素受容体を説明している。
【0010】
コレラ菌由来の閉鎖帯毒素(ZOT)は、粘膜ワクチン接種のためのアジュバントとして同定された(非特許文献1)。可溶性抗原と共にZOTをマウスの鼻腔内に投与することは、全身体液性及び細胞性応答、並びに抗原オブアルブミンに特異的な粘膜応答を刺激する(非特許文献2)。ZOTは、上皮細胞の受容体を結合する44.8kDaのタンパク質であり、粘膜関門の透過性の上昇を含む密着結合を調節する。密着結合に対するZOTの効果は、可逆的であり、組織損傷を起こさない(非特許文献3)。上皮細胞のZOTに対する受容体は、部分的に特徴付けられており、最近、ZOTに対して相同性を有する哺乳動物タンパク質が同定され、ゾヌリンと命名されている。興味深いことに、このタンパク質は、上皮細胞によって放出され、ZOTによって使用されるのと同一の受容体に結合する、密着結合の内因性制御因子であることが示されている(非特許文献4)。アジュバントとしてのZOTの機序は、鼻粘膜の受容体との結合、密着結合の調節、粘膜下層の抗原の通過、次いで免疫系細胞への露出を伴う場合がある。
【0011】
感染症の予防のための粘膜ワクチンの開発は、非常に望まれている。粘膜ワクチン接種は、非経口ワクチン接種よりも優れた利点が幾つかある。粘膜ワクチン接種は、感染部位(局所)において免疫応答を誘導する。更に、粘膜免疫系の本質的な特性により、1ヶ所の粘膜部位における免疫化によって、複数の遠位部位(部域)における特異的な応答を誘導することができる。(例えば、性行為感染症に対する)感染防御免疫は実際のところ離れた粘膜部位で誘導される場合があることから、このような柔軟性はワクチン接種に対する文化的及び宗教的障壁を解決する上で重要性を持つ。粘膜より獲得した病原体に対する局所応答に加えて、粘膜ワクチンは、体液性及び細胞性応答を含む全身免疫を誘導する。従って、粘膜ワクチン接種は、他の経路(即ち、血液又は皮膚)を通じて獲得した感染症と戦うために利用できると考えられる。最後に、粘膜ワクチンの投与は針を使用する必要がなく、ワクチンコンプライアンスを向上させ、血液伝播感染との関連性をなくす可能性がある。前述の全ての理由によって、予防又は治療ワクチン接種として癌と戦うためにも使用することができる。これらのワクチンは、感染因子(ピロリ菌、乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス等)によって起こされる癌、及びその他の原因の癌(メラノーマ、大腸癌等)の何れに対しても抵抗性を持つ場合がある。
【0012】
興味深いことに、殆どのヒトの病原体は粘膜経路を通じて獲得されるが、現在使用されている粘膜ワクチンは殆どない。現在使用されているワクチンには、生存する弱毒化された微生物をベースとしたものがある。更に、精製された抗原は、粘膜表面に送達された場合、本質的に免疫応答を刺激/誘導することができない。従って、このようなワクチンは特定のアジュバントの使用を必要とする。残念ながら、今のところ、前述のような安全で有効なアジュバントがないために、粘膜ワクチンの開発は進んでいない。有効な粘膜アジュバントは、抗原(Ag)が粘膜関門を通過することを可能にし、抗原特異的免疫応答の誘導を促進する。
【0013】
出願人等は、アジュバントペプチド、即ちZOTのペプチド、並びにアジュバントペプチドと共に抗原を送達して、抗原に対して特異的な全身及び/又は粘膜の応答を誘導する方法を開示する。粘膜を通じた抗原の送達は免疫応答を誘導しないため、出願人等は、ZOTペプチドの同時投与によって抗原に対する全身及び粘膜応答が誘導されることを見出した。アジュバントペプチドは、粘膜を通じた抗原の送達を促進する。本発明のアジュバントペプチドは、非毒性で、効果が可逆的であり、エンドトキシンの混入がなく、容易に合成でき、産生及び精製を安価に行えるという点で有利である。
【特許文献1】米国特許第5,665,389号明細書
【特許文献2】米国特許第5,908,825号明細書
【特許文献3】米国特許第5,864,014号明細書
【特許文献4】米国特許第5,912,323号明細書
【特許文献5】米国特許第5,948,629号明細書
【特許文献6】米国特許第5,945,510号明細書
【特許文献7】米国特許第6,458,925号明細書
【特許文献8】米国特許第5,908,825号明細書
【特許文献9】米国特許第5,864,014号明細書
【特許文献10】米国特許第5,912,323号明細書
【非特許文献1】Infect. Immun. 1999, 67: 1287;Infect. Immun. 2003, 71: 1897
【非特許文献2】Infect. Immun. 2003, 71: 1897
【非特許文献3】J. Clin. Invest. 1995, 96: 710
【非特許文献4】Ann. NY. Acad. Sci. 2000, 915: 214
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の実施形態は、哺乳動物において抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、アミノ酸配列FCIGRL(配列番号1)を有するペプチド又はその機能的誘導体及び該抗原を該動物に投与することを含み、該哺乳動物が該抗原に対する該免疫応答を上昇させる方法である。
【0015】
本発明の第二の実施形態は、哺乳動物の粘膜を通じて抗原を送達する方法であって、該抗原、及びアミノ酸配列FCIGRLを有するペプチド又はその機能的誘導体を該哺乳動物の粘膜に投与することを含む方法である。
【0016】
本発明の第三の実施形態は、鼻孔組織を通じて抗原を送達する方法であって、該抗原、及びアミノ酸配列FCIGRLを有するペプチド又はその機能的誘導体を該鼻孔組織に投与することを含む方法である。
【0017】
本発明の第四の実施形態は、抗原に対する全身応答を誘導する方法であって、該抗原、及びアミノ酸配列FCIGRLを有するペプチド又はその機能的誘導体を哺乳動物の粘膜を通じて投与することを含む方法である。
【0018】
本発明の第五の実施形態は、抗原に対する粘膜応答を誘導する方法であって、該抗原、及びアミノ酸配列FCIGRLを有するペプチド又はその機能的誘導体を哺乳動物の粘膜を通じて投与することを含む方法である。
【0019】
本発明の第六の実施形態は、免疫応答を誘導するためのワクチン組成物である。該ワクチンは、免疫応答を誘導するための抗原、及びアミノ酸配列FCIGRL(配列番号1)を有するペプチド又はその機能的誘導体を含む。該ワクチンは、粘膜のワクチンであり、哺乳動物の粘膜に送達される。
【0020】
本発明の第七の実施形態は、哺乳動物の粘膜に抗原を送達する方法であって、抗原、及びアミノ酸配列FCIGRL(配列番号1)を有するペプチド又はその機能的誘導体を該哺乳動物に投与することを含む方法である。
【0021】
特定の実施形態において、投与は経鼻、経膣、経口又は腸内送達によるものである。該投与は、エアゾール、吸入薬、ドロップ、クリーム等である場合がある。
【0022】
特定の実施形態において、ペプチドは、Xaa Cys Ile Gly Arg Leu(配列番号2)、Phe Xaa Ile Gly Arg Leu(配列番号3)、Phe Cys Xaa Gly Arg Leu(配列番号4)、Phe Cys Ile Xaa Arg Leu(配列番号5)、Phe Cys Ile Gly Xaa Leu(配列番号6)、及びPhe Cys Ile Gly Arg Xaa(配列番号7)からなる群から選択される配列を含む。該ポリペプチドは、長さ10個未満のアミノ酸残基である。Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp、Tyr及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn、Ala及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Lys及びHisからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択される。
【0023】
他の実施形態において、該ペプチドは、Xaa Xaa Ile Gly Arg Leu(配列番号8)、Xaa Cys Xaa Gly Arg Leu(配列番号9)、Xaa Cys Ile Xaa Arg Leu(配列番号10)、Xaa Cys Ile Gly Xaa Leu(配列番号11)、Xaa Cys Ile Gly Arg Xaa(配列番号12)、Phe Xaa Xaa Gly Arg Leu(配列番号13)、Phe Xaa Ile Xaa Arg Leu(配列番号14)、Phe Xaa Ile Gly Xaa Leu(配列番号15)、Phe Xaa Ile Gly Arg Xaa(配列番号16)、Phe Cys Xaa Xaa Arg Leu(配列番号17)、Phe Cys Xaa Gly Xaa Leu(配列番号18)、Phe Cys Xaa Gly Arg Xaa(配列番号19)、Phe Cys Ile Xaa Xaa Leu(配列番号20)、Phe Cys Ile Xaa Arg Xaa(配列番号21)、及びPhe Cys Ile Gly Xaa Xaa(配列番号22)からなる群から選択される配列を含む。該ポリペプチドは、長さ10個未満のアミノ酸残基である。Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp、Tyr及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn、Ala及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Lys及びHisからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択される。
【0024】
他の実施形態において、該ペプチドアジュバントはSLIGRL(配列番号23)である。他の実施形態において、該ペプチドアジュバントはSLIGKV(配列番号24)である。
【0025】
特定の実施形態において、本発明は、抗原に対する全身又は粘膜応答を誘導する方法であって、抗原、並びに配列番号23及び配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを投与することを含む方法である。
【0026】
特定の実施形態において、本発明は、抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、抗原、並びに配列番号23及び配列番号24からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを投与することを含む方法である。
【0027】
一実施形態において、本発明は、動物において免疫応答を誘導する方法を提供する。このような方法は、1つ以上の抗原、及び1つ以上のペプチドアジュバントを動物の粘膜に投与することを含み得る。一部の実施形態において、少なくとも1種の抗原及び少なくとも1種のペプチドアジュバントは組成物として投与され、例えば、抗原及びアジュバントは溶液(例えば、水溶液、食塩溶液)中に存在する場合がある。組成物は更に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、塩、緩衝液、緩衝塩、糖、界面活性剤、タルク等)を含む場合がある。このような方法は、何れの種類の動物で、例えば、ヒト等の哺乳動物で、実施され得る。本発明において使用されるペプチドアジュバントは、配列FCIGRLを含む場合があり、長さ約6〜約50個のアミノ酸、約6〜約25個のアミノ酸、又は約6〜約15個のアミノ酸である場合がある。何れかの望ましい抗原、例えば、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原、インフルエンザウイルス抗原、及びそれらの組み合わせが使用される場合がある。特定の実施形態において、本発明は、動物(例えば、ヒト等の哺乳動物)において免疫応答を誘導する方法であって、少なくとも1種のペプチドアジュバントが配列FCIGRLを含み、該組成物が水溶液中にあり、該組成物が、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される1種以上の抗原を含む方法を提供する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、粘膜投与のための免疫原性組成物を提供する。このような組成物は、1種以上の抗原及び1種以上のペプチドアジュバントを含む場合がある。このような組成物は更に、1種以上の薬学的に許容される賦形剤(例えば、塩、緩衝液、緩衝塩、糖、界面活性剤、タルク等)を含む場合がある。本発明の一部の組成物において、少なくとも1種の抗原は、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される。本発明の一部の組成物において、少なくとも1種のペプチドアジュバントは配列FCIGRLを含む。ペプチドアジュバントは、長さ約6〜約50個のアミノ酸、約6〜約25個のアミノ酸、又は約6〜約15個のアミノ酸である場合がある。一部の実施形態において、本発明の組成物は水溶液(例えば、食塩溶液)中にある場合がある、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む場合がある。特定の実施形態において、粘膜投与のための免疫原性組成物は、配列FCIGRLを含む少なくとも1種のペプチドアジュバントを含む場合があり、該組成物は水溶液中にあり、該組成物は、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される、少なくとも1種の抗原を含む場合がある。
【0029】
本発明の別の実施形態において、本発明は粘膜投与のためのワクチンを提供する。このようなワクチンは、1つ以上の抗原及び1つ以上のペプチドアジュバントを含む場合がある。何れかの好適な抗原、例えば、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原、インフルエンザウイルス抗原及びそれらの混合物からなる群から選択される抗原が使用される場合がある。一部の実施形態において、粘膜投与のためのワクチンは、配列FCIGRLを含む少なくとも1種のペプチドアジュバントを含む場合がある。好適なペプチドアジュバントは、長さ約6〜約50個のアミノ酸、約6〜約25個のアミノ酸、又は約6〜約15個のアミノ酸である場合がある。粘膜投与のためのワクチンは水溶液(例えば、食塩溶液)中にある場合があり、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む場合がある。特定の実施形態において、粘膜投与のためのワクチンは、配列FCIGRLを含む少なくとも1種のペプチドアジュバントを含む場合があり、該ワクチンは水溶液中にある場合があり、該ワクチンは、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される、少なくとも1種の抗原を含む場合がある。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、抗原提示細胞を刺激する方法を提供する。このような方法は、抗原提示細胞をアジュバントペプチドと接触させることを含む場合がある。本発明の方法を使用して何れかの抗原提示細胞が刺激される場合があり、例えば、単球及び/又はマクロファージが刺激される場合がある。抗原提示細胞がヒト細胞である場合、抗原提示細胞の刺激によって、抗原提示細胞によるヒトの主要な組織適合性クラスI及びクラスII分子及び/又はCD40の発現量が増大する場合がある。抗原提示細胞を刺激するのに好適なアジュバントペプチドには、配列FCIGRLを含むペプチドが含まれるが、これに限定されない。一般的に、アジュバントペプチドは、抗原提示細胞を刺激するのに十分な濃度で存在する場合がある。十分な濃度は、約0.01μg/mL〜約500μg/mL、約0.1μg/mL〜約250μg/mL、約1μg/mL〜約100μg/L、約1μg/mL〜約75μg/mL、約1μg/mL〜約50μg/mL、約1μg/mL〜約40μg/mL、約1μg/mL〜約30μg/mL、又は約1μg/mL〜約20μg/mLである場合がある。
【0031】
本明細書を読むことで当業者に明らかになるこれらの及びその他の実施形態は、疾患を治療及び/又は予防するための試薬及び方法を当該技術分野に提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
定義
本明細書で使用される単数形の「a」又は「an」は、1つ以上を意味する場合がある。本明細書の請求項で使用される単数形の「a」又は「an」は、「含む」という語句と共に使用される場合に、1つ以上を意味する場合がある。本明細書で使用される「別の」という語句は、少なくとも第二又はそれ以上を意味する場合がある。
【0033】
本明細書で使用される「ペプチドアジュバント」又は「アジュバントペプチド」とは、抗原に対する免疫応答を誘導、増強及び/又はブーストすることによって、抗原の作用を促進又は修飾する成分(組成物として)として機能するペプチドを指す。
【0034】
本明細書で使用される「抗原」とは、例えば、抗原に特異的に結合する抗体の産生によって測定することのできる、免疫応答を誘導できる任意の抗原性物質(免疫原)を指す。
【0035】
本明細書で使用される「粘膜」とは、(粘液腺が豊富な)粘膜を指し、具体的にこの粘膜は、外部と直接又は間接的に接触した身体の通路及び空洞に一列に並び;保護、支持、養分吸収並びに粘液、酵素及び塩の分泌の機能を果たし;消化管の大部分に、平滑筋の薄いながら明らかな層と、基礎となる基底膜を有し、種類及び厚みはそれぞれ異なるものの、常に柔軟且つ滑らかであり、細胞からの及び膜に埋め込まれた多数の腺からの分泌物により潤滑が維持されている表層上皮組織を含有する、深い血管結合組織基質からなる。例示的実施形態において、粘膜は、鼻、膣、直腸、口又は腸の粘膜である。
【0036】
本明細書で使用される「ペプチド」とは、例えば、配列番号2〜24を含むがこれらに限定されない、配列番号1(FCIGRL)のアミノ酸配列及びその機能的誘導体を有するZOTのペプチドを指す。特定の実施形態において、本発明のペプチドは、AT1002(FCIGRL、配列番号1)と称する。
【0037】
本明細書で使用される「ワクチン」とは、特定の疾患に対する免疫力を産生する又は人工的に増大させるために対象に投与される調製物を指す。該調製物は、死滅した微生物、生存する弱毒化された生物、生存する完全に有毒の生物、組換えバイオ分子、病原体からの免疫原性タンパク質、抗体、脂質、多糖類、炭水化物等、及びペプチドアジュバントのような抗原を含む。
【0038】
本発明
出願人等は、本明細書に開示されるように、新規のアジュバントペプチドとして機能する、コレラ菌ファージCTXΦ ZOTタンパク質由来のペプチドを開発した。該アジュバントペプチドは、アミノ酸配列FCIGRL(配列番号1)及びその機能的誘導体を含む。該アジュバントペプチドは、10個未満のアミノ酸残基である。該アジュバントペプチドは、6個のアミノ酸FCIGRL(配列番号1)しか含んでいない場合もあれば、追加のアミノ酸を有する場合もある。他のアミノ酸は、他の機能、例えば、精製を容易にする抗原タグを提供する場合がある。
【0039】
例えば、ペプチドFCIGRLの機能的誘導体には、Xaa Cys Ile Gly Arg Leu(配列番号2)、Phe Xaa Ile Gly Arg Leu(配列番号3)、Phe Cys Xaa Gly Arg Leu(配列番号4)、Phe Cys Ile Xaa Arg Leu(配列番号5)、Phe Cys Ile Gly Xaa Leu(配列番号6)、及びPhe Cys Ile Gly Arg Xaa(配列番号7)が含まれる。Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp、Tyr及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn、Ala及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Lys及びHisからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択される。
【0040】
更に、ペプチドの機能的誘導体には、Xaa Xaa Ile Gly Arg Leu(配列番号8)、Xaa Cys Xaa Gly Arg Leu(配列番号9)、Xaa Cys Ile Xaa Arg Leu(配列番号10)、Xaa Cys Ile Gly Xaa Leu(配列番号11)、Xaa Cys Ile Gly Arg Xaa(配列番号12)、Phe Xaa Xaa Gly Arg Leu(配列番号13)、Phe Xaa Ile Xaa Arg Leu(配列番号14)、Phe Xaa Ile Gly Xaa Leu(配列番号15)、Phe Xaa Ile Gly Arg Xaa(配列番号16)、Phe Cys Xaa Xaa Arg Leu(配列番号17)、Phe Cys Xaa Gly Xaa Leu(配列番号18)、Phe Cys Xaa Gly Arg Xaa(配列番号19)、Phe Cys Ile Xaa Xaa Leu(配列番号20)、Phe Cys Ile Xaa Arg Xaa(配列番号21)、及びPhe Cys Ile Gly Xaa Xaa(配列番号22)が含まれる。Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp、Tyr及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択され;Xaaは、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn、Ala及びGlnからなる群から選択され;Xaaは、Lys及びHisからなる群から選択され;Xaaは、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Trp及びMetからなる群から選択される。
【0041】
何れの長さのペプチドアジュバントも使用される場合がある。一般的に、ペプチドアジュバントの大きさは、長さ約6〜約100個、約6〜約90個、約6〜約80個、約6〜約70個、約6〜約60個、約6〜約50個、約6〜約40個、約6〜約30個、約6〜約25個、約6〜約20個、約6〜約15個、約6〜約14個、約6〜約13個、約6〜約12個、約6〜約11個、約6〜約10個、約6〜約9個、又は約6〜約8個のアミノ酸の範囲に及ぶ。本発明のペプチドアジュバントは、長さ約8〜約100個、約8〜約90個、約8〜約80個、約8〜約70個、約8〜約60個、約8〜約50個、約8〜約40個、約8〜約30個、約8〜約25個、約8〜約20個、約8〜約15個、約8〜約14個、約8〜約13個、約8〜約12個、約8〜約11個、又は約8〜約10個のアミノ酸である場合がある。本発明のペプチドアジュバントは、長さ約10〜約100個、約10〜約90個、約10〜約80個、約10〜約70個、約10〜約60個、約10〜約50個、約10〜約40個、約10〜約30個、約10〜約25個、約10〜約20個、約10〜約15個、約10〜約14個、約10〜約13個、又は約10〜約12個のアミノ酸である場合がある。本発明のペプチドアジュバントは、長さ約12〜約100個、約12〜約90個、約12〜約80個、約12〜約70個、約12〜約60個、約12〜約50個、約12〜約40個、約12〜約30個、約12〜約25個、約12〜約20個、約12〜約15個、約12〜約14個のアミノ酸である場合がある。本発明のペプチドアジュバントは、長さ約15〜約100個、約15〜約90個、約15〜約80個、約15〜約70個、約15〜約60個、約15〜約50個、約15〜約40個、約15〜約30個、約15〜約25個、約15〜約20個、約15〜約19個、約15〜約18個、又は約15〜約17個のアミノ酸である場合がある。本発明のペプチドアジュバントは、約6個、約7個、約8個、約9個、約10個、約11個、約12個、約13個、約14個、約15個、約20個、約30個、約40個、約50個、約60個、約70個、約80個、約90個又は約100個のアミノ酸を含む場合がある。
【0042】
ペプチドアジュバントは、High Performance Liquid Chromatography of Peptides and Proteins:Separation Analysis and Conformation, Eds. Mant, et al., C.R.C. Press (1991)に説明されるような周知の技法、及びSymphony(Protein Technologies, Inc)等のペプチドシンセサイザーを使用して;又は組換えDNA技法、即ち、該ペプチドをコードするヌクレオチド配列が適切な発現ベクター、例えば大腸菌又は酵母発現ベクターに挿入され、それぞれの宿主細胞内で発現され、周知の技法を使用してそれらから精製される技法を使用して、化学的に合成及び精製することができる。
【0043】
該ペプチドは、抗原の吸収を促進するために使用される。更に、該吸収は、粘膜、より詳細には鼻粘膜を通じて起こる。該ペプチドは、腸、血液脳関門、皮膚及び鼻粘膜の全体にわたる吸収を促進する(同時係属中の、2004年6月15日に出願され、US20050059593として公開され、全体が本明細書に参考文献として援用される、米国特許出願第10/891,492号を参照)。従って、該ペプチドは、鼻及び/又は鼻粘膜組織を標的とする抗原と共に製剤化してもよければ、一緒に投与してもよい。本発明の医薬組成物は、投与前に予め混合される場合もあれば、2種の抗原を互いに24時間以内に投与する時には生体内で形成されてもよい。好ましくは、前記の2種の抗原は、互いに12、8、4、2又は1時間以内に投与される。
【0044】
「経鼻」送達組成物は一般的に、粘液線毛クリアランスを減少し、経鼻投与される薬物の再現可能なバイオアベイラビリティを達成するため、直径約50μmの水溶性ポリマーを含む。有利な点として、「経鼻」送達組成物は、腸送達に必要とされるような胃の抵抗性を有する必要がない。ポリマーを含む経鼻組成物は好適であるが、ペプチドアジュバントが鼻粘膜に結合できるという条件で、その他の賦形剤も考慮されている。
【0045】
経鼻送達のための経鼻組成物は、当該分野で周知である。このような経鼻投与組成物は一般的に、経鼻投与のためのペプチドの担体として作用できる(Davis, In: Delivery Systems for Peptide Drugs, 125: 1−21 (1986))薬学的投与形態を調製するために広範に使用されている(Martin, et al., In: Physical Chemical Principles of Pharmaceutical Sciences, 3rd Ed., p.592−638 (1983))水溶性ポリマーを含む。ポリマーマトリックスに埋め込まれたペプチドの経鼻吸収は、鼻粘液線毛クリアランスの遅延により増強することが示されている(Illum, et al., Int. J. Pharm., 46: 261−265 (1988))。その他の可能な増強機序には、ペプチド吸収に関する濃度上昇の勾配、又は分散経路の減少が含まれる(Ting, et al., Pharm. Res., 9: 1330−1335 (1992))。しかし、粘液線毛クリアランス速度の減少は、経鼻投与される全身性薬物の再現可能なバイオアベイラビリティ達成への良好な手法であると予想されている(Gonda, et al., Pharm. Res., 7: 69−75 (1990))。直径約50μmの微粒子は鼻腔内に沈着すると予想されている(Bjork, et al., Int. J. Pharm., 62: 187−192 (1990);及びIllum, et al., Int. J. Pharm., 39: 189−199 (1987))が、直径10μm以下の微粒子は、鼻のろ過システムから逃れ、より下の気道内に沈着する可能性がある。又、直径200μmを超える微粒子は、経鼻投与後に鼻内に保持されることはない(Lewis, et al., Proc. Int. Symp. Control Rel. Bioact. Mater., 17: 280−290 (1990))。
【0046】
使用される特定の水溶性ポリマーは、必ずしも本発明に重要ではなく、経鼻投与形態に使用される周知の水溶性ポリマーの何れかから選択することができる。経鼻送達に有用な水溶性ポリマーの代表的な例には、ポリビニルアルコール(PVA)がある。この物質は、その物性が分子量、加水分解の程度、架橋密度及び結晶化度により異なる膨潤性及び親水性ポリマーである(Peppas, et al., In: Hydrogels in Medicine and Pharmacy, 3: 109−131 (1987))。PVAは、相分離、スプレー乾燥、スプレー包埋化、及びスプレー高密度化を介した分散物質のコーティングに使用することができる(Ting, et al., 同上)。
【0047】
従来より使用されている、薬学的に許容される乳化剤、界面活性剤、懸濁剤、酸化防止剤、浸透圧増強剤、増量剤、希釈剤及び防腐剤も添加される場合がある。又、水溶性ポリマーを担体として使用することもできる。その他の薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤も当業者に周知である(例えば、全体が本明細書に参考文献として組み入れられる、Remington’s Pharmaceutical Science, 16th Ed., Osol, Mack Publishing Co., Chapter 89 (1980);Digenis, et al., J. Pharm. Sci., 83: 915−921 (1994);Vantini, et al., Clinica Terapeutica, 145: 445−451 (1993);Yoshitomi, et al., Chem. Pharm. Bull., 40: 1902−1905 (1992);Thoma, et al., Pharmazie, 46: 331−336 (1991);Morishita, et al., Drug Design and Delivery, 7: 309−319 (1991);及びLin, et al., Pharmaceutical Res., 8: 919−924 (1991)を参照)。
【0048】
本発明の方法において有用な組成物は、組成物と粘膜との接触をもたらす吸入薬、液状ドロップ、エアゾール又はその他の製剤として投与される場合がある。液体として投与する場合、本発明の組成物は、食塩溶液等の水溶液として投与される場合がある。溶液のパラメータ(例えば、pH、浸透圧、粘度等)は、本発明の組成物の送達を促進するために、必要に応じて調節される場合がある。例えば、水溶液がAT1002を含む場合には、ペプチドアジュバントの安定性を向上させるためにpHを酸性のpHに調整することが好ましい場合がある。
【0049】
使用される特定の抗原は、必ずしも本発明に重要ではなく、大きさ又は電荷と関係なく、経細胞経路を介してそれ以外の方法では吸収されない、例えば、何れかの生物学的に活性なペプチド、脂質、多糖類、ワクチン又はその他何れかの成分であってもよい。
【0050】
本発明で使用できるワクチンの例には、ペプチド抗原及び弱毒化された微生物、ウイルス、寄生虫及び/又は真菌が含まれる。本発明で使用できるペプチド抗原の例には、毒素原性大腸菌の非耐熱性エンテロトキシンのBサブユニット、コレラ毒素のBサブユニット、ジフテリア毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、腸内病原体の莢膜抗原、腸内病原体の海馬采又は線毛、HIV表面抗原、粉塵アレルゲン、及びダニアルルゲンが含まれるが、これらに限定されない。当該分野で既知のその他の抗原、例えば、インフルエンザ、百日咳、HIV、髄膜炎菌抗原、乳頭腫ウイルス、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌等も使用することができる。本発明に従って調製できるワクチンの更なる例には、癌由来の抗原(例えば、可溶性抗原)、ウイルス、細菌、寄生虫、真菌及び/又はプリオン由来の抗原が含まれるが、これらに限定されない。本発明のワクチンで使用される抗原は、任意の供給源由来のものである場合があり、例えば、組換え体、合成、天然又は修飾抗原である場合がある。抗原は、弱毒化又は不活性化されたウイルス、細菌、寄生虫及び/又は真菌である場合がある。抗原は、組換えウイルス、細菌、寄生虫及び/又は真菌である場合がある。又、抗原は、異種のワクチン抗原を発現する組換えウイルス、最近、寄生虫及び真菌である場合もある。抗原は又、アレルゲンである場合もある。
【0051】
本発明で使用できる弱毒化及び/又は不活性化された微生物及びウイルスの例には、毒素原性大腸菌、腸管病原性大腸菌、コレラ菌、シゲラフレクスネリ、チフス菌及びロタウイルスが含まれる(それぞれ全体が本明細書に参考文献として組み入れられる、Fasano, et al., In: Le Vaccinazioni in Pediatria, Eds. Vierucci, et al., CSH, Milan, p.109−121 (1991);Guandalini, et al., In: Management of Digestive and Liver Disorders in Infants and Children, Elsevior, Eds. Butz, et al., Amsterdam, Chapter 25 (1993);Levine, et al., Sem. Ped. Infect. Dis., 5: 243−250 (1994);及びKaper, et al., Clin. Microbiol. Rev., 8: 48−86 (1995))。癌の例には、感染物質(例えば、ピロリ菌、乳頭腫ウイルス、ヘルペスウイルス)によって引き起こされる癌、及び種々の原因の癌(例えば、メラノーマ、大腸癌、前立腺癌等)が含まれる。
【0052】
防御免疫応答を誘導できる何れかの抗原が、本発明のワクチンにおいて使用される場合がある。好適な抗原の例には、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原、インフルエンザウイルス抗原及び癌抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
使用される抗原の量は、必ずしも本発明に重要ではなく、選択された特定の成分、標的とする疾患又は病状、及び対象の年齢、体重及び性別により変動する。
【0054】
使用されるZOTペプチドの量も又、必ずしも本発明に重要ではなく、対象の年齢、体重及び性別により変動する。一般的に、粘膜による生物学的活性成分の吸収を増強するために本発明で使用されるペプチドの最終濃度は、約10−5M〜10−10M、好ましくは約10−6M〜5.0×10−5Mの範囲となる。一例として、このような最終濃度を達成するために、腸粘膜に投与するような、単一の経口投与組成物中のペプチドの量は、一般的に約4.0ng〜約2.5μg、又は4.0ng〜1000ng、好ましくは約40ng〜80ngである。特定の実施形態において、例えば、約20gの哺乳動物において、抗原の投与量は約2.5μgであり、アジュバントペプチドの量は約22.5μgである(比率1:10)。他の実施形態において、例えば、約20gの哺乳動物において、抗原の投与量は約2.5μgであり、ペプチドの量は約22.5、又は約15、又は約7.5μgである。
【0055】
使用されるペプチドに対する抗原の比率は、必ずしも本発明に重要ではなく、選択された期間内に送達される生物学的活性成分の量、更には標的とする粘膜の種類により変動する。一般的に、本発明で使用されるペプチドに対する治療又は免疫原性物質の重量比は、約1:100〜3:1、又は約1:10〜2:1の範囲となる。出願人等は、抗原に対するアジュバントペプチドの量が多くなる程、全身及び/又は標的となる粘膜において相対的に強い免疫応答が誘導されると予想している。
【0056】
アミノ酸を、同様の特性を有する別のアミノ酸に変換する保存的置換を、配列番号1の配列を有するペプチドにおいて実施してもよい。保存的置換の例には、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、及びPhe⇔Trp⇔Tyrが含まれるが、これらに限定されない。一般的に、アミノ酸の保存的置換は、約1〜2個のアミノ酸残基に起こる。生物学的又は免疫学的活性を無効にすることなくどのアミノ酸残基を置換できるかを決定する目安は、当該分野において周知のコンピュータプログラム、例えば、DNASTARソフトウェアを使用して見出すか、又はDayhoff, et al., (1978)in Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.)に記載されている。
【0057】
アミノ酸置換は、1個のアミノ酸の1個のアミノ酸への置換として定義される。置換アミノ酸が、同様の構造的及び/又は化学的特性を有する時には、本質的に保存的である。保存的置換の例には、ロイシンのイソロイシン又はバリンへの置換、アスパラギン酸のグルタミン酸への置換、又はスレオニンのセリンへの置換がある。
【0058】
特に好ましいペプチド類似体には、本質的に保存的である置換、即ち側鎖において関連性があるアミノ酸ファミリー内に生じる置換が含まれる。具体的には、アミノ酸は一般的に、(1)酸性:アスパラギン酸及びグルタミン酸;(2)塩基性:リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;(4)非電荷極性:グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン及びチロシン;及び(5)芳香族アミノ酸:フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンのファミリーに分類される。例えば、ロイシンのイソロイシン又はバリンへの置換、アスパラギン酸のグルタミン酸への置換、スレオニンのセリンへの分離された置換、又はアミノ酸の構造的に関連性があるアミノ酸への同様の保存的置換は、生物学的活性に重要な効果を及ぼさないことが合理的に予想できる。
【0059】
当該分野において既知の何れかのアッセイを、本発明のペプチドの生物学的活性を測定するために使用することができる。例えば、該アッセイは、(1)Fasano, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 8: 5242−5246 (1991)に記載されるようなUssingチャンバー中に搭載された回腸の組織抵抗(Rt)の減少のアッセイ;(2)後述のようなUssingチャンバー中における腸管上皮細胞単分子膜の組織抵抗(Rt)の減少のアッセイ;(3)WO96/37196;1995年5月24日に出願された米国特許出願第08/443,864号;1996年2月9日に出願された米国特許第08/598,852号、及び1997年1月9日に出願された米国特許第08/781,057号に記載されるような、治療又は免疫原性物質の吸収の腸又は鼻における増強のアッセイを伴う場合がある。
【0060】
本発明のペプチドは、可逆的及び再現可能な方法で密着結合を急速に開くため、ZOTを使用する場合と同じ方法で、抗原の経鼻吸収増強剤として使用することができる(WO96/37196;1995年5月24日に出願された米国特許出願第08/443,864号;1996年2月9日に出願された米国特許第08/598,852号、及び1997年1月9日に出願された米国特許第08/781,057号を参照)。
【0061】
前記の開示内容において本発明が概説されている。本明細書に開示された全ての参考文献は、参考文献として明示的に組み入れられている。更に詳細に理解するには、以下の特定の実施例を参照することで可能となるが、これらの実施例は、説明の目的においてのみ示されるものであり、本発明の適用範囲を限定することを意図していない。
【0062】
以下の実施例は、抗原並びに配列番号1の粘膜アジュバントを投与することによる経鼻免疫が、血清IgGを誘導し、異なる粘膜区域において粘膜IgAを誘導し、その他の粘膜アジュバントよりも非常に有効であることを実証している。従って、AT1002は、粘膜アジュバントとして機能し、対象において抗原に対する免疫応答を誘導する作用を持つ。
【実施例】
【0063】
実施例1
破傷風トキソイド(TT)及びZOTペプチド(AT1002)を使用した鼻腔内免疫化
4頭のC57BL/6メスマウスの群を、2.5μgの破傷風トキソイド(TT)単独で、又はTT及び所定濃度のAT1002で、又は対照としてTT及び既知の非耐熱性エンテロトキシン(LT)アジュバントで、鼻腔内免疫化を行った。
【0064】
図1には、4回免疫化を行った後の抗TT血清IgGの幾何平均力価を示す。結果には、AT1002が、TT単独で免疫化した動物の結果と比べて、TTに対するより高い血清応答を誘導するアジュバントとして作用することが示されている。更に、結果には、30nmolのAT1002が相対的に最も有効であることも示されている。
【0065】
図2には、4回免疫化を行った後の抗TT血清IgGの幾何平均力価を示す。結果には、AT1002によって誘導された抗TT血清応答が、4回免疫後に観察された結果よりも高いこをが示されている。又、30ナノモルのAT1002が相対的に最も有効となっている。
【0066】
TT及び種々の濃度のアジュバントAT1002で6回免疫化した後に誘導された血清抗TT IgA応答を測定した(図4)。4匹のC57BL/6メスマウスの群を、2.5μgの破傷風トキソイド(TT)単独で、又はTT及び所定濃度のAT1002で鼻腔内免疫化を行った。結果には、抗TT血清IgAの幾何平均力価が示されている。又データには、同時に投与された抗原に対する血清IgAをAT1002が誘導することが示されている。出願人等は更に、この観察に基づき、1回、2回、3回、4回又は5回の免疫化の後に、誘導された応答が起こる可能性があることも予想している。
【0067】
出願人等は又、TT及び種々の濃度のアジュバントAT1002で6回免疫化した後の膣分泌物中に、抗TT IgA応答が誘導されることに気づいた(図5)。結果には、抗TT IgAの幾何平均力価が示されており、AT1002が免疫部位から遠い粘膜部位において同時に投与された抗原に対するIgAを誘導することが示されている。出願人等は更に、この観察に基づき、1回、2回、3回、4回又は5回の免疫化の後に、誘導された応答が起こる可能性があることも予想している。
【0068】
市販のペプチドSLIGRL(マウス、配列番号23)及びSLIGKV(ヒト、配列番号24)(何れもSigmaより市販)を、AT1002について前述した方法で使用される場合がある。即ち、配列番号23又は24の一方のアジュバントペプチドを、例えばTT等の抗原と共に投与される場合がある。免疫化回数は1、2、3、4、5又は6回である場合がある。又、免疫応答が測定される場合があり、特にTTを使用する場合は、抗TT IgA及び抗TT IgGの力価が、血清及び/又は膣分泌物中の何れかで測定される場合がある。
【0069】
実施例2
粘膜アジュバントとしてのZOTペプチド
本明細書に示される結果では、ペプチドAT1002が粘膜アジュバントとして作用することが実証されている。より具体的には、哺乳動物の粘膜免疫化において、AT1002を同時投与すると、血清中の血清IgG、IgA、及び膣分泌物中の粘膜IgAが誘導される。
【0070】
実施例3
AT1002は、同時に送達される抗原に対する防御応答を誘導する。
【0071】
マウス(C57BL/6)に破傷風トキソイド(TT;1μg/回)を、AT1002(30μg/回)と共に又は単独で、週1回4週間にわたり経鼻投与し、2ヶ月後、マウスに破傷風トキソイドのDP50(予備実験で確立されたように動物の50%を麻痺させる濃度の50倍)を使用して皮下注射し、麻痺状態及び死亡を1週間記録した。表1の結果には、TT単独で免疫化されたマウスは防御されなかったが、AT1002を有する抗原を受けたマウスは全て防御されたことが示されている。更に、投与の直前に、抗原に特異的な血清IgG力価を個々のマウスで解析した。この表には、測定された力価の範囲が報告されている。
【0072】
【表1】

これらの結果では、a)AT1002が、同時投与された抗原に対する防御応答を誘導し;b)AT1002の鼻(経鼻)免疫化により、全身(皮下)投与に対する防御応答が誘導され;c)最後のワクチン投与から2ヶ月後に投与を行うと、AT1002が「記憶」保護応答を誘導することが実証されている。実際に、2ヶ月後の抗TT血清IgG力価は高かった(2ヶ月はマウスの寿命にとって有意な期間であることに留意されたい)。
【0073】
実施例4
AT1002は細胞性応答を誘導する。
【0074】
図6に関連して、マウス(CL57BL/6)に、破傷風トキソイド(TT;1μg/回)単独(白色の棒)又はTT+AT1002(22.5μg/回、斜線の棒)を、週1回4週間にわたり経鼻投与した。最後の投与から1週間後に脾臓を取り出し、TTを培地に加え、トリチウム化チミジンの取り込みを測定する増殖アッセイを使用して、脾細胞を試験した。刺激指数(TTを加えた培地のcpm÷TTを加えない培地のcpm)値では、TT+AT1002で免疫化されたマウスが抗原に対して増殖するのに対して、TT単独で免疫化されたマウスは増殖しないことが示されている(4以上の値を陽性とした)。
【0075】
これらの結果では、同時に投与された抗原に対する細胞性応答をAT1002が誘導することが実証されている。従って、抗原特異的Tリンパ球は、アジュバントとしてのAT1002による粘膜免疫化によって初回抗原刺激を受ける。
【0076】
実施例5
健康な供与者の末梢血からヒト単球を精製し、完全培地中で培養した。2時間後に培地に刺激を加え、18時間後に細胞を回収し、所定のモノクローナル抗体で染色して、FACSにより解析した。結果を図7に示す。
【0077】
図7では、AT1002が、単球及びマクロファージ等のヒト抗原提示細胞に対する免疫賦活効果を有することが実証されている。又、図7には、AT1002が、単球上でヒトの主要な組織適合性クラスI及びクラスII分子(HLA−I;HLA−DR)の膜発現を上方制御することが示されている(太腺の数字は平均的な蛍光強度値を表す)。興味深いことに、この活性は、20μg/mLにおいて、並びに20倍薄い濃度、即ち1μg/mLにおいて作用する。同時に刺激した分子CD80(B7−1)及びCD86(B7.2)は、単球上で上方制御されない。
【0078】
次いで、ヒトマクロファージに対するAT1002の効果を解析した。健康な供与者の末梢血からヒト単球を精製し、完全培地中で5日間培養し、マクロファージに分化させた。次いで、培地に刺激を加え、18時間後に細胞を回収し、所定のモノクローナル抗体で染色して、FACSで解析した。結果を図8に示す。図8では、AT1002が、HLA−1、HLA−DR及びCD86の膜発現を著しく上方制御することが示されている(太腺の数字は平均的な蛍光強度値を表す)。又、図には示されていないが、同時刺激の分子CD80も上方制御されている。更に、AT1002は、実験未使用の(naive)リンパ球の初回抗原刺激に非常に重要な分子であるCD40の発現を上方制御する。リポ多糖類(LPS)は、マクロファージ活性化の陽性対照として使用された。この点から、AT1002は、HLA−1及びHLA−DR分子の上方制御においてLPSよりも有効であることに留意すべきである。
【0079】
これらの結果では、AT1002が免疫賦活活性を有することが実証されている。これは、抗原特異的免疫応答の刺激に重要な先天免疫の抗原提示細胞である単球及びマクロファージを活性化する作用を持つ。従って、AT1002はワクチンアジュバントとして作用する。更に、単球及びマクロファージ上で上方制御されたこれらの分子は、Tリンパ球の刺激にきわめて重要である。実際に、HLA I分子は、ウイルス及び細胞内細菌(例えば、結核菌)等の細胞内病原体、及び癌細胞と戦うのに重要なCD8+Tリンパ球(細胞毒細胞)を刺激し;HLA−DR分子は、a)全てのクラス(IgM、IgG及びIgA)の抗原特異的抗体を産生するためのBリンパ球を刺激するヘルパー細胞として作用し;b)細胞内及び細胞外の病原体によって引き起こされる感染に対するエフェクター細胞として作用する、CD4+Tリンパ球を刺激するのに重要である。同時刺激の分子CD80及びCD86は、Tリンパ球の最適な刺激にとって重要である。CD40分子は又、抗原特異的Tリンパ球の刺激にとって、特にCD40リガンド分子を発現する実験未使用のTリンパ球の初回抗原刺激にとっても重要である。
【0080】
理論に拘束されるわけではないが、本発明のペプチドの作用機序は、ペプチドが上皮細胞上にある受容体と結合する第一の手順を伴う可能性があると考えられる。この結合により密着結合が調節され、同時に送達される抗原が粘膜下組織に侵入することが可能となる。次に、ペプチドは免疫系細胞と相互作用し、免疫応答を促進/調節する可能性がある。
【0081】
密着結合に対するAT1002の活性、及び抗原提示細胞に対するAT1002の効果は、AT1002が送達系及びアジュバントとして同時に作用することを示す。実際に粘膜下組織における抗原の送達並びに免疫応答の刺激及び増幅という2つの重要な問題点がある粘膜ワクチン接種にとっては、これが極めて重要である。一般的に、これら2つの機能を得るには、粘膜ワクチンに2種の異なる化合物が含まれていなければならないが、AT1002は1つの分子に両方の活性を有する。
【0082】
本明細書中に言及される全ての特許及び出版物は、本発明に関係する分野における当業者のレベルを示すものである。個々の出版物が参考文献として全体が組み入れられることを具体的に且つ個別に示す場合と同程度に、特許及び出版物は全て参考文献として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】4回投与後のアジュバントAT1002(AT1002は配列FCIGRLを有する;配列番号1)の用量応答曲線である。
【図2】5回投与後のアジュバントAT1002の用量応答曲線である。
【図3】4回及び5回の免疫化後のアジュバントAT1002の用量応答曲線である。
【図4】TT及び種々の濃度のアジュバントAT1002で6回免疫化した後に誘導された、血清抗TT IgA応答である。
【図5】TT及び種々の濃度のアジュバントAT1002で6回免疫化した後に膣分泌物中で誘導された、抗TT IgA応答である。
【図6】破傷風トキソイドで刺激した時に、破傷風トキソイド(TT;1μg/回)単独(白色の棒)、又はTT+AT1002(22.5μg/回、斜線の棒)で4週間、経鼻投与を受けたマウス(CL57BL/6)由来の脾細胞の増殖性応答を示す棒グラフである。
【図7】指示された濃度のAT1002(配列番号1)で刺激したヒト単球のFACS解析の結果を示す。18時間後、細胞を回収し、指示されたモノクローナル抗体で染色し、FACSで解析した。
【図8】指示された濃度のAT1002(配列番号1)で刺激したヒトマクロファージのFACS解析の結果を示す。18時間後、細胞を回収し、指示されたモノクローナル抗体で染色し、FACSで解析した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物において免疫応答を誘導する方法であって、1種以上の抗原及び1種以上のペプチドアジュバントを動物の粘膜に投与することを含む、方法。
【請求項2】
少なくとも1種の抗原及び少なくとも1種のペプチドアジュバントが組成物として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが配列FCIGRLを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが約6〜約50個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが約6〜約25個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが約6〜約15個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の抗原が、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が水溶液中にある、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が1種以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが配列FCIGRLを含み、前記組成物が水溶液中にあり、該組成物が、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される1種以上の抗原を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
1種以上の抗原及び1種以上のペプチドアジュバントを含む、粘膜投与のための免疫原性組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の抗原が、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが配列FCIGRLを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記ペプチドアジュバントが約6〜約50個のアミノ酸を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ペプチドアジュバントが約6〜約25個のアミノ酸を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記ペプチドアジュバントが約6〜約15個のアミノ酸を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が水溶液中にある、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が1種以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが配列FCIGRLを含み、前記組成物が水溶液中にあり、該組成物が、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される少なくとも1種の抗原を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
1種以上の抗原及び1種以上のペプチドアジュバントを含む、粘膜投与のためのワクチン。
【請求項23】
少なくとも1種の抗原が、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される、請求項22に記載のワクチン。
【請求項24】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが配列FCIGRLを含む、請求項22に記載のワクチン。
【請求項25】
前記ペプチドアジュバントが約6〜約50個のアミノ酸を含む、請求項24に記載のワクチン。
【請求項26】
前記ペプチドアジュバントが約6〜約25個のアミノ酸を含む、請求項24に記載のワクチン。
【請求項27】
前記ペプチドアジュバントが約6〜約15個のアミノ酸を含む、請求項24に記載のワクチン。
【請求項28】
前記ワクチンが水溶液中にある、請求項22に記載のワクチン。
【請求項29】
前記ワクチンが1種以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項28に記載のワクチン。
【請求項30】
少なくとも1種のペプチドアジュバントが配列FCIGRLを含み、前記ワクチンが水溶液中にあり、該ワクチンが、麻疹ウイルス抗原、ムンプスウイルス抗原、風疹ウイルス抗原、ジフテリア菌抗原、百日咳菌抗原、破傷風菌抗原、炭疽菌抗原及びインフルエンザウイルス抗原からなる群から選択される少なくとも1種の抗原を含む、請求項22に記載のワクチン。
【請求項31】
抗原提示細胞を刺激する方法であって、該抗原提示細胞をアジュバントペプチドと接触させることを含む、方法。
【請求項32】
前記抗原提示細胞が単球を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗原提示細胞がマクロファージを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
刺激がヒト主要組織適合性クラスI分子及びクラスII分子の発現の上方制御をもたらす、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
刺激がCD40の発現の上方制御をもたらす、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記アジュバントペプチドが配列FCIGRLを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記アジュバントペプチドが約1μg/mL〜約20μg/mLの濃度で存在する、請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−526985(P2008−526985A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551404(P2007−551404)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/001254
【国際公開番号】WO2006/076587
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(301033248)ユニバーシティ オブ メリーランド, ボルチモア (7)
【出願人】(507241403)インスティテュート スペリオレ デ サニタ (1)
【Fターム(参考)】