説明

精子採取装置

【課題】 容器が硬直した構成であるために変形できない場合に、ペニス摺擦のための操作中にゲル状樹脂材料から成るコア部材(内装材)内部のペニスに加わる圧力が全長に亘ってほぼ均一となり、ペニスに対する刺激が単純化する不具合を解消して、健常者は勿論、健常な青年男子に比べて強い刺激に弱い老人、身体障害者等がこの種の採取装置を使用する場合であっても、十分な刺激を与えて採取目的を達成できるようにする。
【解決手段】 長手方向一端面が開口した筒状の容器本体3と、該容器本体の開口部4に着脱して開閉するキャップ5と、から成る容器2と、容器本体内に収容され、長手方向一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製のコア部材10と、を備えた精子採取装置において、容器本体は、長手方向中間部適所に他の部位よりも変形が容易な変形容易箇所3Cを少なくとも一箇所備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精子採取装置に関し、特に医学的な研究、治療のための要請や、性犯罪防止、売春防止、及び性病の蔓延防止等の社会的な要請に基づいて従来から使用されてきた精子採取装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学的な研究や治療上の必要から、男性の精子を採取するための精子採取装置が種々提案されている。例えば、夫婦間の不妊の原因を究明するために採取した精子から夫の性機能を検査したり、性機能障害を治療したり、人工授精のために精子を確保、保管する等の医学的な必要性のために精子採取装置が使用される。更に、個人的な性的欲求を解消させることによる性犯罪の予防、売春防止、性病感染者数の減少等の種々の社会的なニーズを満たすためにも、従来から低廉に入手することができ、しかも使い捨てタイプであるために衛生上、健康上の問題も惹起しない簡易な精子採取装置が知られている。
例えば、実用新案登録第3076627号には、円筒状の容器本体内に、内部に深い凹部空間を有するゲル状の合成樹脂製(スチレン系熱可塑性エラストマー)の内装材を設け、当該内装材の内側には凹部空間へ突出した複数の小突起及び、襞状部を設けると共に、上記内装材の周囲を覆う状態に、ウレタン樹脂からなる外装材を設けた精子採取器が提案されている。
この精子採取器は、上下端面が平坦な円筒状の容器本体の一端を開口し、この開口から容器内部に、内装材の周囲を覆うように外装材を組み付けた組付け体を挿入し、容器開口側に位置する内装材の挿入口を円盤状のスポンジ蓋によって塞いでから、該容器開口をキャップによって封止している。スポンジ蓋の中央部には十字状の切り込みを設けておき、この切り込みを内装材の挿入口と連通させることによって、スポンジ蓋を経由して内装材内部にペニスを挿入できるようにしている。
【0003】
上記従来の容器本体は、全体の肉厚、硬度、弾性がほぼ均一なプラスチックを用いて構成された円筒体であり、その直径(5〜6.5cm程度)が全長に亘って均一で、硬度が比較的高いために弾性変形が困難となっている。従って、ペニス摺擦のための操作を行っている期間中、外装体を介して容器本体内壁から挿入体内部のペニスに加わる圧力がほぼ均一となり、ペニスに対する刺激が単純化する傾向にあった。健常な青年男子に比べて強い刺激に耐えられない老人、身体障害者等がこの種の採取装置を使用する場合には、刺激が強すぎて苦痛が増大し、採取目的を達成できないことが多くなる。つまり、個々人の反応、好みに応じた刺激の調整が困難であった。逆に、通常の刺激では反応しない使用者が、好みに応じた強い刺激を加えることにも、容器の構造上から限界があった。
特に、容器本体の外形が全長に亘って均一径の円筒体であり、且つ部分的な変形が困難であるため、容器本体を把持して長手方向へ進退させる以外に、容器本体の一部を他の方向へ揺動させることが容易でなく、容器本体を掌によって把持してペニスを容器本体内(内装材の凹部空間内)に挿入して摺擦を行いつつ採取作業を実施する際に、容器本体の一部を揺動させることによってペニス、特に亀頭部に加わる圧力、刺激を調整することが困難であった。
また、内装材の凹部空間はその挿入口以外は密閉されているため、該挿入口からペニスを挿入した際に、内装材内壁とペニスとの間に空間が形成され、両者間の密着度が低下し易くなる。特に、最も敏感なペニス先端と凹部空間の奥部との間に空気が溜まりやすいため、如何に強く摺擦作業を繰り返したとしても溜まった空気を抜気することが困難であり、射精のための十分な刺激が発生しないという問題を生じていた。仮に、容器本体を強く握って抜気を試みたとしても、全長に亘って同径(即ち円筒形)の容器本体内壁と内部の内装材との間には2cm近くの距離があるため、十分、且つ適度な圧力を加えることができず、ペニスに苦痛を与えることなく抜気することは困難であった。
【0004】
また、容器が全長に亘って同径の円筒形であることによって、内装材の周囲を覆う外装材も同形の円筒形となり、しかも外装材の内壁は凹凸を有しないストレート形状であるため、外装材内部に配置された内装材を係止、保形する力が十分に発揮されず、外装材内での内装材の変形が必要以上に自由となり、ペニスの挿入時、摺擦時に、内装材が挫屈、変形し易くなり、挫屈を起こすと正常な使用が困難となる。
また、内装材を構成するエラストマーは高価であるため、内装材の肉厚を薄くして材料費を低減することがトータルのコストダウンに有効ではあるが、内装材の肉厚を薄くするとペニスの挿入時、及び摺擦操作中に内装材が挫屈し易くなり、使用不能に陥ることがある。
また、エラストマーから成る内装材の凹部空間内壁とペニスとの潤滑性を高めるために凹部空間内には潤滑液(ローション)が適量充填されるが、この採取装置を運搬したり、保管、陳列する場合に円筒状容器本体のキャップ側を下向きにして立設しておくと、内装材の挿入口側が常時下向きになるため、挿入口、スポンジ蓋の切り込みを経由して多量の潤滑液が容器本体の開口側、キャップの内部に溜まった状態にある。この状態でキャップを外すと、潤滑液が容器開口から外部にあふれ出て容器外面に垂れたり、手や衣服に付着して不快感を催したり、実使用時に内装材の凹部空所内の潤滑液量が不足するという事態をもたらす。
このような不具合に対処するため、上記の如き構成の採取装置にあっては、容器本体の開口部とは反対側の底部を下向きにして容器を立設して保管、陳列する必要があるが、そのように開口部を上向きにして立設すると、潤滑液が内装材の凹部空所の内底部(奥部)のみに溜まった状態となるため、使用に際して凹部空所の入口(挿入口)、及び内壁の潤滑液が乾いた状態となり易く、ペニス挿入に対する障害となったり、ペニスと凹部空所内壁との摩擦抵抗の過剰な増大によって内装材を挫屈、変形させたり、ペニスを損傷させる原因となる。
また、従来、使用時に容器本体の開口部周縁がペニスの基部や、ペニス周辺の皮膚に繰り返し当接するため、これらの部位を痛めたり、不快感を与えるという不具合があった。
【特許文献1】実用新案登録第3076627号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、容器が全長に亘って略均一径、均一硬度(均一弾性)の円筒体であるために部分的な変形が困難な場合に、ペニス摺擦のための操作中にゲル状樹脂材料から成るコア部材(内装材)内部のペニスに加わる圧力が全長に亘ってほぼ均一となり、ペニスに対する刺激が単純化する不具合を解消して、健常者は勿論、健常な青年男子に比べて刺激に弱い老人、身体障害者等がこの種の採取装置を使用する場合であっても、本人に適した最適、且つ必要十分な刺激を与えて採取目的を達成できるようにすることを一つの目的としている。また、通常の使用者よりも強い刺激、圧力、変形を必要とする使用者にとってもその使用目的を十分に達成させることが可能となる。
特に、容器本体の少なくとも一部に外部からの加圧によって長手方向以外の方向に変形が容易な箇所を設け、当該変形容易箇所を使用者の操作によって弾性変形させることによって、内部のペニスに加わる圧力を調整して刺激を変化させることを他の目的としている。
更に、容器内のゲル状樹脂製コア部材内部にペニスを圧入した際にペニス先端とコア部材内奥部との間に空気が溜まることによって、その後の摺擦操作においてペニス先端とコア部材内壁との間の摺擦が不十分となって、勃起、射精のために必要な刺激が得られなくなるという不具合を解消するために、ペニス挿入時、及び摺擦時に遅滞なく抜気できるようにすることを他の目的としている。
更に、容器が全長に亘って同径の円筒形であるために、外装材の内部に配置された内装材がペニスの挿入時、摺擦時に、挫屈、変形し易くなり、挫屈を起こすと正常な使用が困難となるという不具合を解消することを他の目的としている。
更に、未使用状態にある採取装置を保管、陳列する際に、コア部材内部に充填されている潤滑液(ローション)がコア部材入口側に溜まるように、容器の開口側を下向きにして立設した場合においても、キャップ開放時にコア部材の挿入口から潤滑液が漏れ出すことがない精子採取装置を提供することを他の目的としている。
更に、使用時に容器本体の開口部周縁がペニスの基部や、ペニス周辺の皮膚に繰り返し当接することによる当接部位へのダメージや、不快感を与えるという不具合を無くすることを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、長手方向一端面が開口した筒状の容器本体と、該容器本体の開口部に着脱して開閉するキャップと、から成る容器と、前記容器本体内に収容され、長手方向一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製のコア部材と、を備えた精子採取装置において、前記容器本体は、長手方向中間部適所に他の部位よりも変形が容易な変形容易箇所を少なくとも一箇所備えていることを特徴とする。
請求項2の発明は、長手方向一端面が開口した筒状の容器本体と、該容器本体の開口部に着脱して開閉するキャップと、から成る容器と、前記容器本体内に収容され、長手方向一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製のコア部材と、前記コア部材と前記容器本体内壁との間に介在するスポンジ層と、を備えた精子採取装置において、前記容器本体は、長手方向中間部適所に他の部位よりも変形が容易な変形容易箇所を備えていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記キャップの上面は定置に適した平坦面であり、前記開口部と反対側の容器本体端部は定置に適さない円弧状面であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2、又は3において、前記変形容易箇所は、前記容器の長手方向一端側に対して他端側を揺動可能に支持することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一項において、前記変形容易箇所は、前記容器の長手方向一端側に対して他端側を、長手方向へ伸縮自在に支持することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れか一項において、前記変形容易箇所は、ジャバラ形状部、薄肉部、軟質材料部、メッシュ部、或いは凹凸部の何れかから成ることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項2乃至6の何れか一項において、前記コア部材は、その外周面に突出したリブを備え、前記スポンジ層は、前記リブを挟み込んで前記コア部材の挫屈を防止する挟圧部を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れか一項において、前記コア部材の挿入口に、該コア部材と密着して挿入口を閉止する蓋板を配置したことを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れか一項において、前記コア部材の挿入口側端面と、前記キャップとの間に切り込みを有したスポンジ蓋を介在させ、該スポンジ蓋の一部を前記容器本体開口部端縁よりも外側に突出させたことを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れか一項において、前記コア部材の先端部の適所に逆止弁として機能する抜気用の切り込み線を形成したことを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項1乃至10の何れか一項において、前記コア部材の挿入口側端面と、前記キャップとの間にスポンジ蓋を介在させ、前記スポンジ蓋の中心部に貫通孔を形成すると共に、該貫通孔内にこれを閉止する嵌合部材を嵌合し、前記容器本体開口部側からの押し込み力によって該嵌合部材が前記貫通孔から脱落して前記コア部材の挿入口から挿入空所内に移動し得るように構成したことを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項1乃至11の何れか一項において、前記キャップの上面は定置に適した平坦面であり、前記開口部と反対側の容器本体端部は定置に適さない円弧状面(球面)であることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項1乃至12の何れか一項において、前記スポンジ層とは別体の底部スポンジ層を、前記容器本体の内底面と前記コア部材先端面との間に介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器が全長に亘って略均一径の円筒体でなく(非円筒体であり)、しかも中間部適所に少なくとも一つの変形容易箇所を有しているため、ペニス摺擦のための操作中にコア部材内部のペニスに加わる圧力、その方向を任意に変化させることができ、ペニスに対する刺激が多様化する。このため、健常者は勿論、健常な青年男子に比べて刺激に弱い老人、身体障害者等がこの種の採取装置を使用する場合であっても、本人に適した必要最低限の刺激を与えて採取目的を達成できる。
また、外部からの加圧、操作によって変形が容易な箇所を設け、当該変形容易箇所を中心として容器の一部を長手方向以外の方向に前後、左右、及び回転方向に揺動させることを可能としたので、内部のペニスに加わる圧力を調整したり、圧力の加わる箇所を変化させて刺激を変化させることができる。また、コア部材内部に溜まりやすい空気を除去し易くなる。
また、コア部材先端部に逆止弁として機能する切り込み線を設けることにより、コア部材内部に溜まりやすい空気を、ペニス挿入時、及び摺擦時に遅滞なく抜気することが可能となる。
更に、容器の中間部に設けた変形容易箇所をジャバラ状に構成した場合には、ジャバラ部を介してコア部材を径方向に加圧できるので、内部のコア部材が容器内部で移動、変形することを防止でき、コア部材の挫屈を防止できる。
更に、未使用状態にある採取装置を保管、陳列する際に、コア部材内部に充填されている潤滑液(ローション)がコア部材入口側に溜まるように、容器の開口側を下向きにして立設することができるので、キャップ開放時にそのままペニスをスムーズに挿入することが可能となるばかりでなく、コア部材の挿入口から潤滑液が漏れ出すことがなくなる。
更に、使用時に容器本体の開口部周縁がペニスの基部や、ペニス周辺の皮膚に繰り返し当接することによる当接部位へのダメージや、不快感を与えるという不具合を無くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る精子採取装置の外観斜視図、図2(a)及び(b)は当該精子採取装置の正面図、及び底面図、図3は縦断面図、図4(a)及び(b)は各構成要素の分解斜視図、及びコア部材の外観斜視図、図5は図3のA−A断面図である。
この精子採取装置1は、長手方向一端面が開口した非円筒状の容器本体3、及び容器本体3の開口部4に着脱してこれを開閉するキャップ5から成る容器2と、容器本体3内に収容され、長手方向一端面の挿入口11から内部に延びる挿入空所12を有したゲル状樹脂製のコア部材10と、コア部材10と容器本体内壁との間に介在するスポンジ層20と、を備えている。
更に、この精子採取装置1は、容器本体内底面に配置されるスポンジ部材(底部スポンジ層)30と、コア部材の挿入口11に添設されてこれを閉止する蓋板35と、コア部材10の挿入側端面に添設されると共に外周面にて容器本体内壁と密着することによりコア部材10の位置決め固定等の役割を果たすスポンジ蓋40と、を備えている。
容器本体3は、所要肉厚の樹脂材料から構成されており、長手方向中間部3Cが、長手方向(軸方向)両端部3A、3Bよりも変形が容易な変形容易箇所となっている。
変形容易箇所3Cは、容器2の長手方向一端部3Aに対して他端部3Bを揺動(傾倒、回転)可能に支持したり、長手方向へ伸縮自在に支持する箇所である。
この実施形態では、変形容易箇所3Cがジャバラ形状部となっているため、ジャバラ形状部の伸縮により長手方向両端部3A、3B間の距離を接近離間自在にできるばかりでなく、長手方向と交差(直交)する方向への揺動が可能となっている。具体的には、揺動とは前後、左右、その他の横方向への傾倒、回転方向への動作、ねじり方向への動作を全て含む概念である。
変形容易箇所3Cの構成としては、ジャバラ形状部以外にも、中間部の肉厚を弾性変形が容易となるように薄くしたり(薄肉部)、中間部の材質を弾性変形が容易な材質(軟質材料部)とする方法が考えられる。
更に、中間部をメッシュ状に構成したり、微小な凹凸部、微小な溝部を配置することにより、伸縮、揺動可能に構成してもよい。
【0010】
容器本体3と同様の樹脂材料から成るキャップ5の上面5aは平坦な面上への定置に適した平坦面であり、開口部4と反対側の容器本体3の端部3aは定置に適さない円弧状面(球面)である。従って、キャップ5により閉止した容器本体3は、キャップ5の上面5aを下向きにして平坦な面上に立設させることが可能である。一方、容器本体の他端部3aを平坦な面上に安定して立設させることは困難であるので、未使用状態において潤滑液が挿入空所12の奥部に溜まって、入口側の潤滑液が枯渇するという不具合がなくなる。
容器本体の他端部3aには必要に応じて抜気用の小孔3bを形成しておき、未使用時には図示しないシールにより封止しておく。使用時には、シールを除去し、使用中に指で小孔3bを閉じたり開放することにより、コア部材内壁とペニスとの間の密着度、密着感を調整することができる。即ち、小孔3bを塞いだ状態ではペニスがコア部材内壁に密着するため締め付け力が強くなり、小孔を開放した状態では締め付け力が弱くなる。このように小孔を開閉するだけの簡単な操作によって、締め付け力を変化させて刺激を変化させることが可能となる。また、ペニスに痛みを感じる場合には、小孔を開けばよい。
コア部材10は、エラストマーのような粘性を有したゲル状の樹脂、或いはゲル状のシリコン樹脂や、ゴム等から構成された袋状体であり、その挿入側端面には大径のフランジ13を備えると共に、小径の挿入口11の内部には挿入口よりも大径の挿入空所12が連通して形成されている。挿入空所12内には任意の配置にて突起、襞等が形成されている。挿入空所12内には潤滑液としてのローション等を適量予め充填しておく。
コア部材の挿入空所12の内径は、容器本体3の長手方向中間部に設けた変形容易箇所3Cに対応する部分12Mが他の部位の内径よりも狭くなっている。このため、ペニスを挿入口11から挿入空所12内に圧入した際は勿論、摺擦作業時にペニス先端がこの狭幅部を繰り返し通過することとなり、ペニスに対する圧力が変化し、その結果与える刺激を変化、増大させることができる。また、コア部材10の長手方向中間部が容器本体の変形容易箇所3Cを構成するジャバラ部の内径部より常時押圧されているので、コア部材の保形力が高まり、ペニス圧入時、摺擦時のコア部材の挫屈が防止される。
また、挿入空所12の入口側内径(締め付け力)を内奥部の内径よりも小さくして、ペニスの根元部を抑えてコア部材の無駄な遊動を阻止することにより、刺激が亀頭部に集中し得るようにしてもよい。
【0011】
更に、コア部材10の外周面には長手方向へ延びる板状のリブ14を一体的に形成する。リブ14は、周方向へ延びるリブであってもよい。
コア部材10の先端部適所には、逆止弁として機能する抜気用の短い切り込み線15を切り込み形成しておく。この切り込み線15はペニスの未挿入時にはコア部材自体の弾性力によって完全に閉止されているために内部の潤滑液が漏出することを防止する一方で、ペニスの挿入によって内圧が高まった場合には開口することによってペニス先端と挿入空所12の内底面との間に溜まろうとする空気を抜気させることができる。空気が除去された後は、ペニスを摺擦させる動作が行われても切り込み線15は閉じ続けるため、潤滑液が外部へ流出する量は使用に際して支障が生じない程度である。つまり、仮に切り込み線15から多少の潤滑液が漏れ出したとしても、本装置の使用に支障を来す程度に内部の潤滑液が不足する事態は想定できない。
コア部材10の挿入口11に、挿入口11周縁のコア部材端面と密着して挿入口を開閉自在に閉止する蓋板35を配置して閉止することにより、挿入空所12内に充填された潤滑液が漏出しないようにしている。従って、キャップ5側を下向きにして容器2を立設させたとしても挿入口から潤滑液が漏出せずに、挿入空所12の挿入口側を十分に潤滑させた状態に保持することができる。また、蓋板35の存在により内部の潤滑液の乾燥による減少が防止される。スポンジ蓋40に潤滑液を含ませることによってもコア部材内部の乾燥が防止される。蓋板35はコア部材10の材質と同じゲル状樹脂から成るため、コア部材の挿入側端面に密着して挿入口11を密閉することができる一方で、ペニスを挿入する場合にはペニス先端によって挿入口内部に押し込まれて、その後の摺擦操作に対する障害となることがない。逆に、ペニス先端部と挿入空所内奥部との間に蓋板35が介在した状態での摺擦が行われるので、イレギュラーな刺激を得ることができる。
【0012】
コア部材のフランジ13面に添設するスポンジ蓋40には、ペニス挿入用の切り込み線41を形成しておくが、蓋板35を用いて挿入口11を外側から閉止する場合には、スポンジ蓋40の中心部に予め蓋板35を嵌合させる貫通孔、或いは凹所42を形成しておいてもよい。このようにすれば、スポンジ蓋40の内側面をフランジ13面に密着させることができ、スポンジ蓋によるコア部材の位置決め、固定力が高まる。また、蓋板35を固定する力が高まる。
更に、スポンジ蓋の中心部に形成した貫通孔42内にこれを閉止する嵌合部材45を嵌合し、容器本体開口部側からペニスを挿入した際の押し込み力によって嵌合部材45が貫通孔42から脱落してコア部材の挿入口から挿入空所12内に移動し得るように構成してもよい。嵌合部材45としてはウレタン等のスポンジ材料から成る小ブロック等、任意の材料を使用する。ペニスによって挿入空所12内奥部に押し込まれた嵌合部材45は、ペニスの摺擦操作時に亀頭部と当接してイレギュラーな刺激を与えることが出来る。
また、コア部材10の挿入口側端面と、キャップ5との間に切り込み線41を有したスポンジ蓋40を介在させる場合、図3にも示すようにスポンジ蓋の一部を容器本体開口部端縁よりも外側に所定量(例えば、3mm〜5mm)突出させる。このように構成することにより、使用時に容器本体の開口部周縁がペニスの基部や、ペニス周辺の皮膚に繰り返し当接することによる当接部位へのダメージや、不快感を与えるという不具合を無くすることができる。
【0013】
次に、スポンジ層20は、発泡樹脂シートから構成されているが、単純なシートではなく、コア部材外周に形成したリブ14を挟み込んでコア部材の挫屈を防止するための挟圧部21を備えている。本実施形態では軸方向へ延びる2つの板状のリブ14を例示したが、このようなリブ14を挟み込むために、スポンジ層20の周方向中間部には軸方向へ延びる切り込み線としての挟圧部21を設け、この挟圧部21によって一方のリブ14を挟み込むと共に、他方のリブ14はスポンジ層20の周方向両端面間に挟み込むようにしてコア部材10とスポンジ層20を一体化した状態で容器本体3内に、開口部4側から挿入する(図5)。
リブ14の本数が3個以上の場合には挟圧部21の個数もそれに応じて増大する。また、リブ14の形成方向が周方向、その他の方向である場合にも同様に挟圧部の形成方向を変更する。
スポンジ層20の肉厚をコア部材10の長手方向に沿って異ならせたり、周方向に異ならせたり、更にスポンジ層20の内面に突部を設ける等の工夫により、コア部材10に対する周面からの圧力を変化させて、ペニスに対する刺激を変化、増大させることが可能となる。
また、ジャバラ部と対面するスポンジ層20に、周方向に沿って所定のピッチにて小開口20aを複数形成することにより、ジャバラ部を中心とした揺動が阻害されないように構成してもよい。
図3の断面図では、スポンジ層20をコア部材10の先端部にまで延在させることによってこれを被覆しているが、図4の例ではスポンジ層20によるカバー範囲をコア部材10の先端部を除いた部位に極限すると共に、コア部材の先端部に対しては別部材のスポンジ部材(底部スポンジ層)30を添設させるように構成している。
何れの例においても、コア部材先端部と容器本体内底面との間に弾性的に収縮するスポンジ材料が配置されているので、ペニス長の大小に対応することが可能となる。即ち、ペニス長が標準より短い場合にはコア部材先端側に位置するスポンジがコア部材先端を受けてコア部材先端形状のつぶれ変形を防止してペニス先端に対する摺擦力を維持する一方で、ペニス長が標準よりも長い場合にはコア部材先端側に位置するスポンジがペニス先端によって圧縮されて変形してコア部材先端とペニス先端との摺擦力を十分に維持することができる。
【0014】
以上の構成を備えた精子採取装置を使用する際には、容器2のキャップ5を取り外して、容器本体3の開口部から露出するスポンジ蓋40に設けた切り込み線を利用してペニス先端を押し込む。この押し込み動作により、コア部材10の挿入口11から挿入空所12内部にスムーズにペニスが挿入される。挿入後の摺擦操作においては、使用者の手により容器本体外面を把持してペニスの長手方向に沿ってピストン運動を行うが、その際に、変形容易箇所3Cよりも先端側に位置する他端部3Bは変形容易箇所3Cを中心として揺動(傾倒、屈曲、回転、回動)できるため、内部に位置するペニスの亀頭部を含む前半部分がコア部材10の内壁、特に内壁に突設した突起や襞との間で変化に富んだ摺擦による刺激を受ける。このため、精子採取効率を高めることができる。
変形容易箇所3Cは揺動のみならず、長手方向への伸縮も可能であるため、使用者の創意工夫に根ざしたバリエーションある操作が可能となり、興趣を高めることができ、商品価値を高めることができる。
なお、この精子採取装置の販売に際しては、全体をシュリンクフィルム等によりシーリングするが、変形容易箇所のみをシーリングしないで店頭に陳列することにより、これを手にした購入者が操作感覚を試すことが可能となり、商品特性を普及させて知らしめることができ、購買意欲を刺激することができる。
また、コア部材10の内壁、特に内奥部の内壁に、亀頭部の頂部を外した位置に突起を任意の方向へ向けて突設することにより、先端部3Bの揺動に伴う刺激を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る精子採取装置の外観斜視図。
【図2】(a)及び(b)は精子採取装置の正面図、及び底面図。
【図3】精子採取装置の縦断面図。
【図4】(a)及び(b)は各構成要素の分解斜視図、及びコア部材の外観斜視図。
【図5】図3のA−A断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 精子採取装置、2 容器 3 容器本体、3C 変形容易箇所、4 開口部、5 キャップ、10 コア部材、11 挿入口、12 挿入空所、14 リブ、20 スポンジ層、30 スポンジ部材(底部スポンジ層)、35 蓋板、40 スポンジ蓋、41 切り込み線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向一端面が開口した筒状の容器本体と、該容器本体の開口部に着脱して開閉するキャップと、から成る容器と、
前記容器内に収容され、長手方向一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製のコア部材と、
を備えた精子採取装置において、
前記容器本体は、長手方向中間部適所に他の部位よりも変形が容易な変形容易箇所を少なくとも一箇所備えていることを特徴とする精子採取装置。
【請求項2】
長手方向一端面が開口した筒状の容器本体と、該容器本体の開口部に着脱して開閉するキャップと、から成る容器と、
前記容器本体内に収容され、長手方向一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製のコア部材と、
前記コア部材と前記容器本体内壁との間に介在するスポンジ層と、
を備えた精子採取装置において、
前記容器本体は、長手方向中間部適所に他の部位よりも変形が容易な変形容易箇所を備えていることを特徴とする精子採取装置。
【請求項3】
前記キャップの上面は定置に適した平坦面であり、前記開口部と反対側の容器本体端部は定置に適さない円弧状面であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の精子採取装置。
【請求項4】
前記変形容易箇所は、前記容器の長手方向一端側に対して他端側を揺動可能に支持することを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の精子採取装置。
【請求項5】
前記変形容易箇所は、前記容器の長手方向一端側に対して他端側を、長手方向へ伸縮自在に支持することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項6】
前記変形容易箇所は、ジャバラ形状部、薄肉部、軟質材料部、メッシュ部、或いは凹凸部の何れかから成ることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項7】
前記コア部材は、その外周面に突出したリブを備え、
前記スポンジ層は、前記リブを挟み込んで前記コア部材の挫屈を防止する挟圧部を備えていることを特徴とする請求項2乃至6の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項8】
前記コア部材の挿入口に、該コア部材と密着して挿入口を閉止する蓋板を配置したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項9】
前記コア部材の挿入口側端面と、前記キャップとの間に切り込みを有したスポンジ蓋を介在させ、該スポンジ蓋の一部を前記容器本体開口部端縁よりも外側に突出させたことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項10】
前記コア部材の先端部の適所に逆止弁として機能する抜気用の切り込み線を形成したことを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項11】
前記コア部材の挿入口側端面と、前記キャップとの間にスポンジ蓋を介在させ、前記スポンジ蓋の中心部に貫通孔を形成すると共に、該貫通孔内にこれを閉止する嵌合部材を嵌合し、前記容器本体開口部側からの押し込み力によって該嵌合部材が前記貫通孔から脱落して前記コア部材の挿入口から挿入空所内に移動し得るように構成したことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項12】
前記キャップの上面は定置に適した平坦面であり、前記開口部と反対側の容器本体端部は定置に適さない円弧状面(球面)であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の精子採取装置。
【請求項13】
前記スポンジ層とは別体の底部スポンジ層を、前記容器本体の内底面と前記コア部材先端面との間に介在させたことを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の精子採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−340870(P2006−340870A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168906(P2005−168906)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(505167222)株式会社典雅 (8)
【Fターム(参考)】