説明

精度管理方法

【課題】ワークの誤差が本溶接後に許容範囲外になるのを防止できる精度管理方法を提供すること。
【解決手段】精度管理方法は、部品を組み立てて溶接した際の精度を管理する。この精度管理方法は、部品同士を位置決めするステップS1と、この位置決めした部品同士を仮溶接するステップS2と、この仮溶接した部品同士を本溶接するステップS3と、この本溶接した部品を測定するステップS4と、この部品の基準位置からの誤差を求めて、この求めた誤差をステップS1にフィードバックするステップS5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精度管理方法に関する。詳しくは、複数の部品で構成される溶接構造物の精度を管理する精度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動二輪車の製造工程には、自動二輪車のフレームを組み立てるフレーム組立工程が設けられている。
このフレーム組立工程では、複数の部品の相対位置を位置決めし、この状態で、これら部品同士の接合部分を仮溶接する。その後、次工程で、仮溶接した接合部分を本溶接し、フレームを完成させる。
【0003】
ここで、フレームを仮溶接する際、仮溶接した後のフレームの基準位置からのずれを計測しておき、このずれに基づいて、部品同士の相対位置を位置決めしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2−286479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶接による歪み量の特性はフレーム毎にばらつきがあるため、フレームの誤差が本溶接前に許容範囲内であっても、本溶接後に許容範囲外となる場合がある。この場合、本溶接により不合格となったフレームの矯正に作業手間がかかる、という問題があった。
【0005】
本発明は、ワークの誤差が本溶接後に許容範囲外になるのを防止できる精度管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の精度管理方法は、複数のワーク(例えば、後述の部品11〜14)を組み立てて溶接した際の精度を管理する精度管理方法であって、複数のワーク同士を位置決めする手順(例えば、後述のステップS1)と、前記位置決めしたワーク同士を仮溶接する手順(例えば、後述のステップS2)と、前記仮溶接したワーク同士を本溶接する手順(例えば、後述のステップS3)と、前記本溶接したワークを測定し、当該ワークの基準位置からの誤差を求めて、当該求めた誤差を前記位置決め手順にフィードバックする手順(例えば、後述のステップS4、S5)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、複数のワーク同士を位置決めし、これら位置決めしたワーク同士を仮溶接する。次に、仮溶接したワーク同士を本溶接して、この本溶接したワークを測定し、さらに、ワークの基準位置からの誤差を求めて、この求めた誤差を位置決め手順にフィードバックする。このように、本溶接後に測定した誤差を位置決め手順にフィードバックしたので、ワークの誤差が本溶接後に許容範囲外になるのを防止できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のワーク同士を位置決めし、これら位置決めしたワーク同士を仮溶接する。次に、仮溶接したワーク同士を本溶接して、この本溶接したワークを測定し、さらに、ワークの基準位置からの誤差を求めて、この求めた誤差を位置決め手順にフィードバックする。このように、本溶接後に測定した誤差を位置決め手順にフィードバックしたので、ワークの誤差が本溶接後に許容範囲外になるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る精度管理方法が適用されたフレーム検査システム1を示す斜視図である。
フレーム検査システム1は、フレーム10を本溶接する際の溶接精度を管理するものである。
このフレーム検査システム1は、フレーム10を支持する支持装置20と、フレーム10の側方に配置された測定装置30と、この測定装置30を制御する制御装置40と、を備える。
【0010】
図2は、フレーム10の斜視図である。
フレーム10は、自動二輪車のフレームであり、ヘッドパイプ11、エンジン上側部12、エンジン下側部13、後部14の4つの部品からなる。
【0011】
ヘッドパイプ11は、前輪およびハンドルを含むフロントフォークを支持するものである。このヘッドパイプ11は、円筒形状であり、上側が後方に向かって傾斜している。
このヘッドパイプ11の上端および下端には、測定点A、Bが設けられている。
【0012】
エンジン上側部12は、ヘッドパイプ11から後方に向かって延びる一対のエンジン上側フレーム121と、これら一対のエンジン上側フレーム121同士を連結する3本の連結フレーム122、123、124と、ヘッドパイプから後方に向かって延びて一対のエンジン上側フレーム121の途中に至る一対のサブフレーム125と、を備える。
【0013】
各エンジン上側フレーム121は、略くの字形状であり、ヘッドパイプ11から後方に向かって略水平に延びた後、屈曲して、下方に向かって延びている。
最も下側に位置する連結フレーム124には、一対の突出片127が形成されている。突出片127には、1つの測定点Cが設けられている。
【0014】
エンジン下側部13は、エンジン上側部12のサブフレーム125から後方かつ下方に向かって延びる一対のエンジン下側フレーム131と、これら一対のエンジン下側フレーム131同士を連結する2本の連結フレーム132、133と、エンジン上側部12のサブフレーム125から一対のエンジン下側フレーム131の途中に至るサブフレーム134と、を備える。
エンジン下側フレーム131は、略U字形状であり、ヘッドパイプ11から下方に向かって延びた後、屈曲して後方に向かって略水平に延びて、その後、屈曲して上方に向かって延びている。
【0015】
このエンジン下側フレーム131には、エンジン上側部12の各エンジン上側フレーム121が突き当たっている。
この付き当たった部分には、それぞれ、ピボット135が形成され、このピボット135には測定点Dが設けられている。
【0016】
最も前側に位置する連結フレーム132には、一対の突出片136が形成され、各突出片136には、2つの測定点E、Fが設けられている。
また、最も下側に位置する連結フレーム133には、一対の突出片137が形成され、各突出片137には、測定点Gが設けられている。
【0017】
後部14は、エンジン上側部12の一対の連結フレーム123から後方に向かって略水平に延びる一対の後部フレーム141と、これら一対の後部フレーム141同士を連結する3本の連結フレーム142、143、144と、を備える。
この後部フレーム141には、エンジン下側部13の各エンジン下側フレーム131が突き当たっている。
一対の後部フレーム141の先端側には、一対の突出片145が形成され、各突出片145には、測定点Hが設けられている。
【0018】
図1に戻って、支持装置20は、フレーム10の一対のピボット135に水平方向から図示しないピンを差し込んで把持する2つの第1支持台21と、フレーム10のヘッドパイプ11を支持する1つの第2支持台22と、を備える。
【0019】
測定装置30は、フレーム10の測定点A〜Hの位置を測定する。
この測定装置30は、撮影装置31と、この撮影装置31の床面からの高さ位置を調整する高さ位置調整機構32と、この高さ位置調整機構32のフレーム10の長さ方向の位置を調整する第1水平位置調整機構33と、この第1水平位置調整機構33のフレーム10の幅方向の位置を調整する第2水平位置調整機構34と、を備える。
【0020】
撮影装置31は、カメラであり、スポット照明311が設けられている。
高さ位置調整機構32は、略鉛直方向に延びるスライドレール321と、撮影装置31を支持しスライドレール321に沿って移動するスライド部322と、を備える。
第1水平位置調整機構33は、フレーム10の長さ方向に略水平に延びるスライドレール331と、高さ位置調整機構32のスライドレール321が設けられスライドレール331に沿って移動するスライド部332と、を備える。
第2水平位置調整機構34は、フレーム10の幅方向に略水平に延びる一対のスライドレール341と、第1水平位置調整機構33のスライドレール331が設けられスライドレール341に沿って移動するスライド部342と、を備える。
【0021】
次に、上述のフレーム10を組み立てる手順について説明する。
図1に示すように、ステップS1では、部品11〜14を組み合わせて相対的な位置や姿勢を調整し、位置決めを行う。
ステップS2では、位置決めした部品11〜14同士を仮溶接する。
ステップS3では、仮溶接した部品11〜14同士を本溶接する。
ステップS4では、図1に示すように、制御装置40により測定装置30を駆動して、本溶接した部品11〜14の測定点A〜Hを測定し、これら部品11〜14の測定点A〜Hの基準位置からの誤差を求めて、この求めた誤差を位置決め手順であるステップS1にフィードバックする。例えば、測定した測定点A〜Hの位置が基準位置より右にずれていた場合には、位置決め手順において、測定点A〜Hが基準位置より左にずらして位置決めする。
【0022】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)複数の部品11〜14同士を位置決めし、これら位置決めした部品11〜14同士を仮溶接する。次に、仮溶接した部品11〜14同士を本溶接して、この本溶接した部品11〜14の測定点A〜Hを測定し、さらに、この測定点A〜Hの基準位置からの誤差を求めて、この求めた誤差を位置決め手順S1にフィードバックする。このように、本溶接後に測定した誤差を位置決め手順S1にフィードバックしたので、部品11〜14の誤差が本溶接後に許容範囲外になるのを防止できる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るフレーム検査システムを示す斜視図である。
【図2】前記実施形態に係るフレームの斜視図である。
【図3】前記実施形態に係るフレームの精度管理方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0025】
11 ヘッドパイプ(ワーク)
12 エンジン上側部(ワーク)
13 エンジン下側部(ワーク)
14 後部(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを組み立てて溶接した際の精度を管理する精度管理方法であって、
複数のワーク同士を位置決めする手順と、
前記位置決めしたワーク同士を仮溶接する手順と、
前記仮溶接したワーク同士を本溶接する手順と、
前記本溶接したワークを測定し、当該ワークの基準位置からの誤差を求めて、当該求めた誤差を前記位置決め手順にフィードバックする手順と、を備えることを特徴とする精度管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−149153(P2010−149153A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330493(P2008−330493)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】