説明

精留塔の連結管

【課題】還流液の偏流が生じない連結管を提供する。
【解決手段】上段精留塔5と下段精留塔6を連結する連結管であり、上段精留塔5の下端に接続される筒状の外筒1と、外筒1の内部に形成された漏斗状の液受部21および、液受部21から下方に延びる案内管22からなる内筒2と、原料液を外部から導入する原料ノズル3とからなり、液受部21の上縁は外筒1の内壁面に液密に接触しており、原料ノズル3は、内筒2の液受部21より上方において外筒1に形成された孔に接続されている。上段精留塔5から降りてくる還流液aは、外筒1の内壁面の一部に沿って降りてきても、漏斗状の液受部21によって貯えられ、原料ノズル3からの原料液bも液受部21の上方から入ってくるので、還流液aと原料液bは液受部21で一緒になり、かつ案内管22を経て下段精留塔6に送られる。還流液aと原料液bは液受部21と案内管22で混合するので、蒸留評価が適正に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精留塔の連結管に関する。さらに詳しくは、上方に配置した上段精留塔からの還流液を下方に配置した下段精留塔へ導入すると共に外部からの原料液を下段精留塔へ供給するための連結管に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留塔の蒸留評価試験を行う場合は、2本の小形の精留塔を用い、上方に配置した上段精留塔からの還流液を下方に配置した下段精留塔へ導入し、さらに外部からの原料液を下段精留塔へ供給するために連結管を用いて実験装置が組立てられている。
そのような実験装置に用いられる連結管の従来例として、非特許文献1に記載のものがある。
【0003】
上記従来技術を図6に基づき説明する。
同図において、100は連結管で上下に配置した小形の精留塔110、120を互いに連結している。この連結管100は、筒状の本体部101の上端に上連結部102が形成され、下端に下連結部103が形成されている。そして、本体部101にはノズル104が結合されている。このノズル104は原料を外部から受けて内部に供給するためのもので、外側パイプ105と内側パイプ106からなる。外側パイプ105は、本体部101から外に延び、外部から原料の供給を受けるようになっている。内側パイプ106は、前記外側パイプ105につながっており、かつ本体部101の内部で下方に延びている。
【0004】
上記従来例では、原料はノズル104を通じて下方の精留塔120の中心部に供給されるが、上方の精留塔110の凝縮液は還流液として本体部101の内壁をつたって降下する。このとき、還流液は内壁の片側に接触して、そのまま降りてくると、いわゆる偏流eが生じやすい。
【0005】
そうすると、下方の精留塔120内では、原料と還流液とが均一に混合しないので、蒸留評価が適正に行い難いという問題がある。
【0006】
【非特許文献1】カタログNo.3000 VIDREX GROOP−4 連結管ビードレックス株式会社 平成15年10月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、還流液の偏流が生じない連結管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の精留塔の連結管は、上方に配置した上段精留塔からの還流液を下方に配置した下段精留塔へ導入すると共に外部からの原料液を前記下段精留塔へ供給する連結管であって、前記上段精留塔の下端に接続される筒状の外筒と、該外筒の内部に形成された漏斗状の液受部および、該液受部から下方に延びる案内管からなる内筒と、原料液を外部から導入する原料ノズルとからなり、前記液受部の上縁は前記外筒の内壁面に液密に接触しており、前記原料ノズルは、前記内筒の液受部より上方において前記外筒に形成された孔に接続されていることを特徴とする。
第2発明の精留塔の連結管は、第1発明において、前記外筒における下方部分の内壁面と前記内筒の外壁面との間には環状の空間が設けられており、前記内筒の液受部には、前記下段精留塔から上昇する蒸気の通過を許容する通孔が形成されていることを特徴とする。
第3発明の精留塔の連結管は、第1または第2発明において、前記内筒の案内管は、前記外筒の軸心と同心に位置しており、該案内管の下端部に開口が形成されていることを特徴とする。
第4発明の精留塔の連結管は、第1または第2発明において、前記内筒の案内管は、前記外筒の軸心と同心に位置しており、該案内管の下端部は閉塞され、その下端部の側壁に複数個の噴射孔が形成されていることを特徴とする。
第5発明の精留塔の連結管は、第1、第2、第3または第4発明において、温度計ノズルが設けられており、該温度計ノズルは、前記内筒の液受部より上方において前記外筒に形成された孔に接続されていることを特徴とする。
第6発明の精留塔の連結管は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記外筒の上端には、上段精留塔の下端部を結合する上端連結部が形成され、前記外筒の下端には、下段精留塔の上端部を結合する下段連結部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、上段精留塔から降りてくる還流液は、外筒の内壁面の一部に沿って降りてきても、漏斗状の液受部によって貯えられ、一方原料ノズルから供給される原料液も液受部に入ってくるので、還流液と原料液は液受部で一緒になり、かつ案内管を経て下段精留塔に送られる。このように、還流液と原料液は液受部と案内管で必ず混合するので、蒸留評価が適正に行える。
第2発明によれば、下段精留塔から上昇する蒸気は液受部の通孔を通って上昇していけるので、液受部上縁が外筒の内壁面に接していても蒸気の上昇が妨げられることがなく、蒸留に必要な流れができる。
第3発明によれば、還流液と原料液が案内管の下端開口を通して下段精留塔の中心部へ供給できる。このため、精留塔の直径が小さい場合は、下段精留塔内での気液接触が充分に行える。
第4発明によれば、還流液と原料液が案内管の側壁に形成された噴射孔を通じて下段精留塔へ分散供給できるので、精留塔の直径が大きい場合であっても、下段精留塔内での気液接触が充分に行える。
第5発明によれば、温度計ノズルを用いて還流液と原料の温度を検知できるので、蒸留評価を適正に行うことができる。
第6発明によれば、外筒の上段連結部によって上段精留塔を結合し、下段連結部によって下段精留塔を結合できるので、蒸留評価試験に際し連結管で上下2段の精留塔を結合できるので実験機器の組立てが容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る連結管Aの縦断面図である。この連結管Aは上方に配置した上段精留塔と下方に配置した下段精留塔を連結するタイプである。
【0011】
1は円筒状の外筒であり、本体部11と、その上端に形成された上段連結部12と、本体部11の下端に形成された下段連結部13とからなる。
本体部11は全長の2/3程度の長さを有し、その内部に後述する内筒2を形成し、また原料ノズル3を接続する部材である。
【0012】
上段連結部12は、上向きに開いたテーパーを有する口部であり、その内部に上段精留塔の下端口部を挿入し密着させることにより、上段精留塔を連結することができる。下段連結部13は、下向きに狭まったテーパーを有する口部であり、それを下段精留塔の上端開口に挿入することにより、下段精留塔に連結することができる。
【0013】
前記内筒2は液受部21と案内管22とからなる。液受部21は漏斗状の形態を有しており、その上縁部の外径は前記外筒1の内径と同じであり、外筒1の本体部11の内壁面に接合されている。このため液受部21の上縁部は液密に上下を区切っている。
前記液受部21のすぼまった底部には案内管22が接続されている。この案内管22はパイプ状であり、外筒1の軸心と同心位置で下方に延びている。そして、下端で開口している。この案内管22の外周面と、外筒1の内周面との間には環状空間14が設けられている。
【0014】
前記液受部21の側壁には、適数個の通孔23が形成されている。この通孔23は蒸気の通り道であり、環状空間14を通って液受部21の内部へ入り、そこから上方へ抜けるようになっている。
【0015】
3は原料ノズルであり、概ねL字形に湾曲したパイプ状の筒部31とその上端に形成された接続口32からなる。この原料ノズル3の筒部31の末端は、外筒1の本体部11に形成された孔15に接続されている。
この原料ノズル3の外筒1に対する取付位置は、前記通孔23とは円周方向においてズレた位置とされている。このため、原料ノズル3を経て導入された原料液が直接通孔23を通って落下することがない。
【0016】
上記連絡管Aの材料は、ガラスや鉄などの金属、ポリテトラフルオロエチレン(登録商標:テフロン)などの合成樹脂などを用いることができる。
【0017】
図2は第1実施形態の連結管Aを用いた実験装置の説明図である。
同図に示すように、連結管Aは上方に配置した上段精留塔5と下方に配置した下段精留塔6を連結している。また、原料ノズル3にはタンク7内の原料液がポンプ8を介して供給されるようになっている。
このように、外筒1の上段連結部12によって上段精留塔5を結合し、下段連結部13によって下段精留塔6を結合できるので、蒸留評価試験に用いる実験機器の組立てが容易に行える。
なお、51は冷却器、52はフラスコ、53はジャッキ、54は真空計、55は温度調節器である。
【0018】
図3は第1実施形態の連結管Aの使用状態説明図である。
図2に示す実験装置に使用した場合、上段精留塔5から降りてくる還流液aは、外筒1の内壁面の一部に沿って降りてきても、漏斗状の液受部21によって貯えられる。また、原料ノズル3から供給される原料液bも液受部21の上方から入ってくるので、還流液aと原料液bは液受部21で一緒になり、かつ案内管22を経て下段精留塔6に送られる。このように、還流液aと原料液bは液受部21と案内管22で必ず混合するので、蒸留評価が適正に行えることになる。
また、下段精留塔6から上昇する蒸気cは液受部21の通孔23を通って上昇していけるので、蒸気cの上昇が妨げられることがなく、蒸留に必要な流れができる。
さらに、還流液aと原料液bが案内管22の下端開口を通して下段精留塔6の中心部へ供給される。このため、下段精留塔6の直径が小さい場合は、下段精留塔6内での気液接触が充分に行える。
【0019】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態に係る連結管Bの縦断面図である。
本実施形態の連結管Bは、第1実施形態の連結管Aに温度計ノズル4を付加したものに相当する。その余の構成は変らないので同一部分に同一符号を付し説明を省略する。
前記温度計ノズル4は、真直ぐなパイプ状の筒部41とその先端の挿入口42からなる。
この挿入口42から温度計を挿入すると、外筒1の本体部11内における液受部21より上方に温度計の検知部を固定できるので、外筒1内の温度を正確に検出することができる。
この実施形態でも、原料液と還流液を均一に混合できる点は、第1実施形態と同様である。
【0020】
(第3実施形態)
図5は本発明の第3実施形態に係る連結管Cの縦断面図である。
この連結管Cは上下段の精留塔を連結する機能は無くてもよく、上段精留塔5からの還流液と外部からの原料液を下段精留塔6へ供給する機能を有するものであればよい。
なお、上段精留塔5と下段精留塔6との連結は、上下精留塔の構成部材で行えばよい。
【0021】
本実施形態の連結管Cは、外筒1が本体部11と同一直径のままで上下に延びているが、これは内径の大きい上段精留塔5の下端部内壁面に接触した状態で固定するためである。
また、外筒1は、下方へも本体部11と同一直径で延びているが、この部分は、下向きに細くなるテーパーが付いていてもよい。
【0022】
内筒2の液受部21は第1実施形態と同様に漏斗状であり、通孔23も形成されている。案内管22は液受部21の下部から下方に延びている。この案内管22は下端が閉塞され、側壁に多数の噴射孔26が形成されている。
原料ノズル3は真直ぐなパイプ状のものが取付けられている。
【0023】
本実施形態の連絡管Cは、第1、第2実施形態のものより大形になるので、材料としては、SUS304,SUS316Lなどのステンレス鋼管などを用いるのが好ましい。
【0024】
本実施形態の連絡管Cにおいても、上段精留塔5から降りてくる還流液は、外筒1の内壁面の一部に沿って降りてきても、漏斗状の液受部21によって貯えられる。または原料ノズル3から供給される原料液も液受部21の上方から入ってくるので、還流液と原料液は液受部21で一緒になる。このように、還流液aと原料液bは液受部21と案内管22で必ず混合するので、蒸留評価が適正に行えることになる。
【0025】
また、下段精留塔6から上昇する蒸気は液受部21の通孔23を通って上昇していけるので、蒸気cの上昇が妨げられることがなく、蒸留に必要な流れができる。
そして、還流液と原料液は、案内管22の噴射孔25を通して放射状に噴射され、その結果、広がりをもって散布されるので、下段精留塔6の直径が大きくても、下段精留塔6内で気液接触が充分に行える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る連結管Aの縦断面図である。
【図2】第1実施形態の連結管Aを用いた実験装置の説明図である。
【図3】第1実施形態の連結管Aの使用状態説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る連結管Bの縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る連結管Cの縦断面図である。
【図6】従来の連結管と、その問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 外筒
2 内筒
3 原料ノズル
4 温度計ノズル
11 本体部
12 上段連結部
13 下段連結部
21 液受部
22 案内管
23 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に配置した上段精留塔からの還流液を下方に配置した下段精留塔へ導入すると共に外部からの原料液を前記下段精留塔へ供給する連結管であって、
前記上段精留塔の下端に接続される筒状の外筒と、
該外筒の内部に形成された漏斗状の液受部および、該液受部から下方に延びる案内管からなる内筒と、
原料液を外部から導入する原料ノズルとからなり、
前記液受部の上縁は前記外筒の内壁面に液密に接触しており、
前記原料ノズルは、前記内筒の液受部より上方において前記外筒に形成された孔に接続されている
ことを特徴とする精留塔の連結管。
【請求項2】
前記外筒における下方部分の内壁面と前記内筒の外壁面との間には環状の空間が設けられており、
前記内筒の液受部には、前記下段精留塔から上昇する蒸気の通過を許容する通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の精留塔の連結管。
【請求項3】
前記内筒の案内管は、前記外筒の軸心と同心に位置しており、該案内管の下端部に開口が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の精留塔の連結管。
【請求項4】
前記内筒の案内管は、前記外筒の軸心と同心に位置しており、該案内管の下端部は閉塞され、その下端部の側壁に複数個の噴射孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の精留塔の連結管。
【請求項5】
温度計ノズルが設けられており、
該温度計ノズルは、前記内筒の液受部より上方において前記外筒に形成された孔に接続されている
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の精留塔の連結管。
【請求項6】
前記外筒の上端には、上段精留塔の下端部を結合する上端連結部が形成され、
前記外筒の下端には、下段精留塔の上端部を結合する下段連結部が形成されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の精留塔の連結管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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