説明

精算処理システム

【課題】有利な値引きを受けるために必要な情報を顧客に提供できる精算処理システムを提供する。
【解決手段】POSシステムでは、金額を複数の割引ランクに区分し、金額が高くなるほど割引率が高くなるように、割引ランクと割引率とを関連付けた値引テーブルを記憶している。精算処理では、合計販売価格が値引テーブルの金額にあてはめられ、合計販売価格が属する割引ランクの割引率で合計販売価格の割引きがなされる(ステップS5〜S7)。一方で、合計販売価格が属する割引ランクの次に割引率が高くなる割引ランクの最低金額と合計販売価格との差額が導出され、その差額がディスプレイに表示される(ステップS8,S9)。これにより、有利な「割引率」の適用を受けるために必要な差額を顧客に明示することができ、商品を追加購入をする動機付けを顧客に与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客が購入を希望する商品の精算処理を行う精算処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの各種店舗においては、POSシステムやキャッシュレジスタなどと呼ばれる、顧客が購入を希望する商品の精算処理を行う精算処理システムが使用されている。
【0003】
また、このような精算処理システムが導入される店舗では、顧客の商品の購入意欲を高めるため、商品の価格の値引きを行うことが頻繁になされている。このような値引きは、精算処理システムにより商品の精算処理を行う際に行われるようになっている。
【0004】
このような値引きの一手法として、特許文献1に記載の値引き手法が提案されている。特許文献1においては、金額が段階的に複数のランクに分けられており、金額が高くなるほど割引率が高くなるように、金額のランクと割引率とが関連付けられている。そして、一の売買取引に係る商品の価格の合計を合計販売価格として導出し、その合計販売価格が属するランクの割引率で、合計販売価格の割引きが自動的になされるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−192175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の値引き手法においては、合計販売価格が属するランクに基づく割引きが実行されるのみであり、その次に値引きが有利となるランクに関する情報は顧客に提供されない。このため、顧客があと僅かに商品を追加的に購入しておけば、値引きを受けられた場合や有利な割引率が適用された場合であっても、顧客はその旨を認識できず、そのような有利な値引きを享受することができなかった。また、店舗側にとっても、商品を追加的に顧客に販売できるチャンスを逃すことになっていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、有利な値引きを受けるために必要な情報を顧客に提供できる精算処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、顧客が購入を希望する商品の精算処理を行う精算処理システムであって、金額を複数の段階に区分し、前記金額が高くなるほど値引きが有利となるように、前記金額の段階と値引額を規定する値引パラメータとを関連付けたテーブルデータを記憶する記憶手段と、一の売買取引に係る商品の価格の合計である合計販売価格を導出する合計導出手段と、前記合計販売価格を前記テーブルデータの金額にあてはめて前記合計販売価格が属する段階の前記値引パラメータを取得し、取得した前記値引パラメータに基づいて前記合計販売価格の値引きを行う値引手段と、前記合計販売価格が属する段階の次に値引きが有利となる段階の最低金額と、前記合計販売価格との差額を導出する差額導出手段と、前記差額を前記売買取引に係る顧客に報知する報知手段と、を備えている。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の精算処理システムにおいて、前記売買取引ごとに、当該売買取引に係る前記合計販売価格と、当該売買取引を識別する取引コードとを関連付けて記録する記録手段と、過去の売買取引に係る取引コードを入力する入力手段と、入力された前記取引コードに基づいて、前記過去の売買取引に係る合計販売価格を過去販売価格として前記記録手段から取得する取得手段と、新たな売買取引に係る商品の合計販売価格と、前記過去販売価格とを合算した累計販売価格を導出する累計導出手段と、を備え、前記累計販売価格が導出されたとき、前記値引手段は、前記累計販売価格を前記テーブルデータの金額にあてはめて前記累計販売価格が属する段階の前記値引パラメータを取得し、取得した前記値引パラメータに基づいて前記累計販売価格の値引きを行う。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の精算処理システムにおいて、前記売買取引ごとに、当該売買取引の前記取引コードを記載した紙媒体を発行する発行手段、をさらに備えている。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項2または3に記載の精算処理システムにおいて、前記記録手段は、前記売買取引に係る前記合計販売価格と、当該売買取引が行われた取引時間とを関連付けて記録するものであり、前記累計導出手段は、前記過去販売価格に係る前記過去の売買取引の前記取引時間が所定の基準を満たす場合に、前記累計販売価格を導出する。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の精算処理システムにおいて、前記報知手段は、前記差額を紙媒体に印刷する印刷手段を含む。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の精算処理システムにおいて、前記報知手段は、前記差額を表示する表示手段を含む。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし5の発明によれば、有利な値引パラメータの適用を受けるために必要な差額を顧客に提供できる。その結果、商品を追加購入する動機付けを顧客に与えることができる。
【0015】
また、特に請求項2の発明によれば、過去の売買取引と新たな売買取引との双方に係る合計販売価格を合算した累計販売価格に基づいて値引パラメータを適用することができる。その結果、事後的に商品を追加購入する動機付けを顧客に与えることができる。
【0016】
また、特に請求項3の発明によれば、過去の売買取引の取引コードを事後的に容易に特定できる。
【0017】
また、特に請求項4の発明によれば、取引時間が所定の基準を満たす場合に累計販売価格を導出するため、過去の売買取引の合計販売価格が無限に合算されることが防止される。
【0018】
また、特に請求項5の発明によれば、差額を紙媒体に明示することができ、事後的な商品の追加購入が期待できる。
【0019】
また、特に請求項6の発明によれば、表示手段で差額を明示することができ、その売買取引の時点で商品の追加購入が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
<1.構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る精算処理システムであるPOSシステム100の構成を示す図である。このPOSシステム100は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗において採用されるものであり、POSサーバ1と複数のPOSターミナル2とを備えている。POSサーバ1及びPOSターミナル2はそれぞれLAN3に接続され、相互に通信可能とされている。
【0022】
POSサーバ1は、POSシステム100の全体を統括的に制御するものであり、通常は店舗の販売エリアとは別の管理事務所等に配置される。一方、POSターミナル2は、店舗の販売エリアに配置され、商品の売買取引の際に、販売者たる店舗の販売スタッフによって実際に操作される。具体的には、POSターミナル2は、商品の取引価格の演算や売買取引の決済などを行う精算処理に用いられる。
【0023】
図2は、POSサーバ1の構成を機能ブロックにて示す図である。POSサーバ1は、ハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、POSサーバ1は、演算処理を行うCPU11と、基本プログラムを記憶するROM12と、演算処理の作業領域となるRAM13と、各種データを記憶するハードディスク14とをバスライン10に接続した構成となっている。さらに、POSサーバ1は、各種情報の表示を行うディスプレイ15と、キーボード及びマウス等の入力部16と、LAN3を介して通信を行う通信部17とを備え、これらはそれぞれバスライン10に接続される。
【0024】
ハードディスク14には処理プログラムが記憶されており、CPU11がこの処理プログラムに従って演算処理を行うことで、POSサーバ1としての各種機能が実現される。また、ハードディスク14には、さらに、商品マスタなどの精算処理に必要なデータが記憶される。商品マスタは、当該店舗で扱われる各商品についての種々の情報(商品データ)を示すテーブル形式のデータである。商品マスタには、複数のレコードが含まれており、各レコードでは商品を識別する識別コードである「商品コード」に対して、「商品名」及び「価格」などの商品データが関連付けられている。なお、本実施の形態において単に「価格」という場合は、割引きや値引きがなされていない通常価格を意味する。
【0025】
図3は、POSターミナル2の構成を機能ブロックにて示す図である。POSターミナル2は、装置全体を制御する制御部21と、各種情報の表示を行う2つのディスプレイ22,23と、オペレータの操作や入力を受け付ける入力部24と、商品に付されたバーコードなどを読み取るバーコードリーダ25と、レシートを印刷して発行する印刷発行部26と、LAN3を介して通信を行う通信部27とを備えて構成され、これらはそれぞれバスライン20に接続される。入力部24には、精算処理において小計処理を指示するための小計キーや、テンキーなどの各種のボタンが含まれている。
【0026】
制御部21は、各種演算処理を行うCPU201と、制御用プログラム等を記憶するROM202と、演算処理の作業領域となるRAM203と、各種データを記憶する不揮発性メモリであるバッテリーバックアップされたSRAM204と、計時機能を有するタイマ205とを備えている。装置各部の制御機能や精算処理のためのデータ処理機能は、CPU201がROM202内の制御用プログラムに従って演算処理を行なうことで実現される。
【0027】
また、2つのディスプレイ22,23のうち、一方のディスプレイ22は、操作を行うオペレータたる販売スタッフの側に示すべき情報を表示する販売側ディスプレイ22であり、他方のディスプレイ23は、顧客の側に示すべき情報を表示する顧客側ディスプレイ23である。
【0028】
販売側ディスプレイ22の画面は、ドットマトリクス式の液晶で構成されており、文字、図形及び画像などの各種の情報をカラー表示することが可能となっている。一方、顧客側ディスプレイ23の画面は、比較的簡易なVFD(蛍光表示管)で構成されており、2行の文字列の単色表示のみが可能となっている。この顧客側ディスプレイ23の画面は、精算処理において顧客が視認しやすいように、その向きが調整される。
【0029】
<2.値引テーブル>
このPOSシステム100では、精算処理において一定の条件下で商品の価格の合計について値引きがなされるようになっている。このため、値引額を規定する値引パラメータを登録した値引テーブルが、各POSターミナル2のSRAM204に記憶されている。複数のPOSターミナル2のそれぞれに記憶される値引テーブルの内容は同一である。
【0030】
図4は、値引テーブルT1の一例を示す図である。図に示すように、値引テーブルT1は複数のレコードからなるテーブルデータである。
【0031】
図に示すように、値引テーブルT1においては、複数のレコードにより「金額」が複数の段階に区分されている。そして、各レコードにおいては「金額」の段階と、値引額を規定する値引パラメータとしての「割引率」とが関連付けられている。「割引率」は、「金額」が高くなるほど高くなるように、すなわち、値引きが有利となるように設定されている。
【0032】
本実施の形態では、このような「金額」の段階を「割引ランク」と呼び、5つの割引ランクがある。これらの5つの割引ランクは、「金額」が低い順から(すなわち、「割引率」が低い順から)、ランクA,B,C,D,Eと称されている。
【0033】
精算処理においては、一の売買取引に係る商品の価格の合計が合計販売価格として導出される。導出された合計販売価格は、値引テーブルT1の「金額」にあてはめられ、合計販売価格が属する割引ランクが決定される。そして、その割引ランクの「割引率」で、合計販売価格の割引がなされるようになっている。
【0034】
<3.精算処理>
以下、図5を参照して、このようなPOSシステム100の精算処理の流れについて説明する。この図5に示す一連の処理は、一の売買取引ごと(一の顧客が購入を希望する商品群ごと)になされるものである。
【0035】
まず、顧客が購入を希望する商品群のうちの一の商品に付されたバーコードが、POSターミナル2のバーコードリーダ25によって読み取られ、これにより当該商品の「商品コード」がPOSターミナル2に取得される(ステップS1)。
【0036】
取得された「商品コード」は、POSターミナル2からPOSサーバ1に送信される。POSサーバ1では、これに応答して商品マスタのうちから当該「商品コード」を含むレコードが検索され、該当したレコードの内容がPOSターミナル2に返信される。これにより、当該商品の「商品名」及び「価格」などの商品データがPOSターミナル2に取得される。取得された商品データは、RAM203に記憶される。これにより、当該商品の商品登録がなされることになる(ステップS2)。
【0037】
続いて、次の商品に係る商品コードが取得されると(ステップS3にてYes)、再びステップS2の処理がなされ、同様にして当該商品の商品登録がなされる。このような処理が、顧客が購入を希望する全ての商品に関して同様に繰り返されることにより、全ての商品に関しての商品登録がなされる。つまり、全ての商品に係る「商品名」及び「価格」などの商品データがRAM203に記憶されることになる。
【0038】
このようにして全ての商品の商品登録がなされると、販売スタッフにより入力部24の小計キーが押下される。この小計キーが押下されると(ステップS4にてYes)、取得された全ての商品についての「価格」の合計である「合計販売価格」がCPU201により導出される(ステップS5)。
【0039】
次に、SRAM204に記憶された値引テーブルT1の「金額」の欄に対して、導出された「合計販売価格」があてはめられる。これにより、「合計販売価格」が属する割引ランクがCPU201により特定される(ステップS6)。
【0040】
続いて、特定された割引ランクの「割引率」が取得され、その「割引率」に基づいて「合計販売価格」を値引き(「割引率」で割引き)して、実際に顧客が支払うべき金額となる「取引価格」を求める割引処理がCPU201によりなされる。より具体的には、「合計販売価格」と「割引率」とを乗算した結果が「割引額」として導出される。そして、「合計販売価格」からその「割引額」を減算した結果が「取引価格」として導出される(ステップS7)。
【0041】
なお、図4に示すように「合計販売価格」が「1円〜5,000円」の範囲である場合では「合計販売価格」はランクAに属し、その「割引率」は「0%」である。このため、この場合は、「合計販売価格」の割引はなされず、「合計販売価格」がそのまま「取引価格」とされることになる。
【0042】
「取引価格」が求められると、続いて、「合計販売価格」が属する割引ランクの次に割引率が高くなる(すなわち、値引きが有利となる)割引ランクの「金額」の範囲のうちの最低金額が、値引テーブルT1から取得される。例えば、「合計販売価格」が「4,830円」である場合は、その「合計販売価格」が属する割引ランクはランクAである。このため、次に値引きが有利となるランクBの「金額」である「5,001円−7,000円」のうちの最低金額となる「5,001円」が取得される(図4参照。)。そして、取得された最低金額と、「合計販売価格」との差額が、「ランク差額」として導出される。上述例の場合では、「ランク差額」は「5,001円−4,830円=171円」となる(ステップS8)。
【0043】
この「ランク差額」は、次の割引ランクとなるために必要な金額を示すことになる。つまり、顧客が「ランク差額」以上の商品を追加的に購入すれば、次の割引ランクの有利な割引率が適用されるわけである。
【0044】
このようにして「取引価格」及び「ランク差額」が導出されると、これらの「取引価格」及び「ランク差額」の双方が、販売側ディスプレイ22及び顧客側ディスプレイ23に表示され、顧客に「ランク差額」が報知される。
【0045】
図6は、このときの顧客側ディスプレイ23の様子を示す図である。図に示すように、顧客側ディスプレイ23には、「取引価格」23aとともに「ランク差額」23bが表示される。顧客は、このような表示を視認することで、次の有利な割引率が適用されるのに必要な金額である「ランク差額」を明確に認識することができる。したがって、この表示により、その「ランク差額」以上の商品の追加購入をするという動機付けを顧客に与えることができる。
【0046】
顧客が商品の追加的な購入を希望した場合は、当該商品の商品コードを追加的に取得して商品登録を行うことになる。すなわち、追加で商品コードが取得された場合は(ステップS10にてYes)、小計キーが押下された以降になされた割引処理を含む小計処理がリセットされてなされなかったこととみなされ(ステップS11)、再びステップS2に戻り、当該商品の商品登録が追加的になされる。
【0047】
そして、再び小計キーが押下されると(ステップS4にてYes)、その追加的な商品登録を反映した「合計販売価格」が導出され(ステップS5)、その「合計販売価格」に基づいて割引ランクが特定されることになる(ステップS6)。このため、「ランク差額」以上の価格の商品についての商品登録が追加的になされた場合は、より有利な「割引率」での割引処理がなされることになる(ステップS7)。もちろん、この場合であっても、新たな「ランク差額」が導出される(ステップS8)。
【0048】
ステップS9にて「取引価格」及び「ランク差額」を表示した後、追加的な商品登録がなされない場合は、「取引価格」についての決済処理がなされる。すなわち、顧客から受け渡された決済用の現金等の金額が「預り金額」として入力部24を介して入力され、「預り金額」から「取引価格」が差し引かれた結果が「釣銭金額」として導出され、その「釣銭金額」がディスプレイ22,23に表示される。これにより、この売買取引の決済処理が完了する(ステップS12)。
【0049】
次に、この売買取引の内容を示す紙媒体であるレシートが印刷発行部26により印刷されて発行される(ステップS13)。図7は、発行されたレシート5の様子を示す図である。図に示すように、発行されたレシート5には、一般的に記載される商品の「価格」や「取引価格」などの売買取引の内容51とともに、当該売買取引の割引ランク52と「ランク差額」53とが印刷されている。このレシート5は顧客に受け渡されるため、これによっても「ランク差額」が顧客に報知され、顧客は「ランク差額」を明確に認識することができことになる。
【0050】
また、このレシート5には、売買取引の識別コードとなる「取引コード」54も、バーコード形式で印刷されている。この「取引コード」は、当該店舗内で前後数日間に行われた売買取引に関してユニークとなるように、CPU201により決定される。
【0051】
レシート5が発行されると、上記一連の処理の結果として得られた売買取引の内容を示すデータが、POSサーバ1に送信される。送信されるデータには、当該売買取引の「取引コード」や、当該売買取引がなされた時間を示す「取引時間」も含まれている。「取引時間」は、その時点においてタイマ205によって計時される絶対時間が利用される。POSサーバ1のCPU11は、このような売買取引の内容を示すデータを受信すると、販売実績データとしてハードディスク14に記録することになる(ステップS14)。
【0052】
図8は、このようにして記録された販売実績データT2の一例を示す図である。図に示すように、販売実績データT2においては、一の売買取引に係る情報が一のレコードReとして登録されている。
【0053】
各レコードReは、当該売買取引の全般に係る全般データDaと、当該売買取引に係る商品についての商品データDbとから構成される。全般データDaには、「取引コード」、「取引時刻」、「合計販売価格」、「割引額」及び「取引価格」が含まれている。また、商品データDbにおいては、一の商品に係るデータが一のサブレコードSrとして登録されている。サブレコードSrのそれぞれには、「商品コード」、「商品名」及び「価格」などが含まれている。このように、販売実績データT2においては、当該売買取引に係る「取引コード」、当該売買取引に係る「取引時刻」、及び、当該売買取引に係る「合計販売価格」などが相互に関連付けられて記録されることになる。したがって、販売実績データT2を参照することにより、いつにどのような売買取引がなされたかを事後的に把握できることになる。
【0054】
<4.新たな売買取引>
上記では、精算処理中(一の売買取引中)に追加的な商品の購入の希望があったときには、その商品の価格を反映した「合計販売価格」に基づく割引ランクが適用されると説明した。しかしながら、精算処理後にレシート5に記載された「ランク差額」を参照して、顧客が商品の追加的な購入を事後的に希望する場合もある。本実施の形態のPOSシステム100では、このように事後的に新たな売買取引が発生した場合であっても、過去の売買取引の「合計販売価格」に、新たな売買取引の「合計販売価格」を合算し、その結果に基づいて割引ランクを適用できるようになっている。ただし、「合計販売価格」が無限に合算されることを防止するため、過去の売買取引が今回の売買取引と同日である場合に限り、「合計販売価格」が合算されるようになっている。以下、図9及び図10を参照して、このように新たな売買取引が生じた場合の精算処理の流れについて説明する。
【0055】
過去の売買取引は、レシート5に記載された「取引コード」によって特定される。「合計販売価格」の合算を希望する顧客は、精算処理の前に過去の売買取引に係るレシート5を提示する。このように顧客からレシート5が提示されたときには、販売スタッフはレシート5に記載された「取引コード」を示すバーコード54をバーコードリーダ25によって読み取る。これにより、過去の売買取引の「取引コード」がPOSターミナル2に取得される(ステップS21)。
【0056】
「取引コード」がPOSターミナル2に取得されると、次に、その「取引コード」がPOSターミナル2からPOSサーバ1に送信される。POSサーバ1では、これに応答して販売実績データT2のうちから当該「取引コード」を含むレコードReが検索され、該当したレコードReの内容がPOSターミナル2に返信される。これにより、「取引時刻」、「合計販売価格」、「割引額」及び「取引価格」など、過去の売買取引の内容を示すデータがPOSターミナル2に取得される(ステップS22)。
【0057】
続いて、当該過去の売買取引がその時点と同日になされたかが判断される。具体的には、POSサーバ1から得られた「取引時刻」と、その時点においてタイマ205によって計時される絶対時間とが比較され、それらが示す日が同日であるか否かが判断される(ステップS23)。
【0058】
過去の売買取引が同日でない場合は、「合計販売価格」を合算できない。このため、この場合は、その旨を示す警告表示が2つのディスプレイ22,23になされた後(ステップS24)、図5に示すステップS1に進み、前述した通常の精算処理がなされることになる。
【0059】
一方、過去の売買取引が同日である場合は、続いて、今回の新たな売買取引に係る商品の商品登録がなされる。すなわち、顧客が購入を希望する商品から「商品コード」が取得され(ステップS25)、さらに、POSサーバ1から当該商品の商品データが取得され、RAM203に記憶される(ステップS26)。同様の処理が、新たな売買取引に係る全ての商品に関して繰り返され、全ての商品に関しての商品登録がなされる(ステップS26,27)。そして、全ての商品の商品登録がなされると、販売スタッフにより入力部24の小計キーが押下され(ステップS28にてYes)、これに応答して図10に示す処理がなされることになる。
【0060】
まず、新たな売買取引に係る全ての商品についての「価格」の合計である「合計販売価格」がCPU201により導出される(ステップS29)。次に、過去の売買取引に係る「合計販売価格」(以下、「過去販売価格」という。)と、新たな売買取引に係る「合計販売価格」(以下、「今回販売価格」という。)とが合算され、その結果が「累積販売価格」として導出される(ステップS30)。
【0061】
このようにして「累積販売価格」が導出されると、この「累積販売価格」に基づいて割引がなされる。すなわちまず、値引テーブルT1の「金額」の欄に対して「累積販売価格」があてはめられ、「累積販売価格」が属する割引ランクがCPU201により特定される(ステップS31)。続いて、特定された割引ランクの「割引率」が取得され、その「割引率」に基づいて「累積販売価格」を値引き(「割引率」で割引き)して「取引価格」を求める割引処理がCPU201によりなされる(ステップS32)。
【0062】
例えば、「過去販売価格」が「4,830円」であり、「今回販売価格」が「1,000円」であったとする。この場合は、「累計販売価格」が「5,830円」であるため、割引ランクは割引率が5%のランクBとなる。このため、「割引額」は「5,830円×0.05≒291円」となり、「取引価格」は「5,830円−291円=5,539円」となる。
【0063】
このようにして得られた「取引価格」は、過去の売買取引と新たな売買取引との双方について顧客が支払うべき総取引価格を示している。したがって顧客は、今回導出された「取引価格」と過去の売買取引の「取引価格」との差額について決済すればよい。このため、「取引価格」が導出されると、導出された「取引価格」から過去の売買取引の「取引価格」が減算され、その結果が「支払差額」としてCPU201により導出される。上述例の場合では、「支払差額」は「5,539円−4,830円=709円」となる(ステップS33)。
【0064】
なお、この「支払差額」は負の値になることもある。例えば、「過去販売価格」が「4,830円」であり、「今回販売価格」が「200円」であったとする。この場合は、「累計販売価格」が「5,030円」であるため、割引ランクは割引率が5%のランクBとなる。このため、「割引額」は「5,030円×0.05≒251円」となり、「取引価格」は「5,030円−251円=4,779円」となる。その結果、「支払差額」は、「4,779円−4,830円=−51円」と負の値になるわけである。
【0065】
「支払差額」が導出されると、次に、「累計販売価格」に基づいて「ランク差額」が導出され(ステップS34)、「支払差額」と「ランク差額」とが2つのディスプレイ23に表示される(ステップS35)。この時点においても、顧客は商品を追加的に購入可能であり、顧客から追加的な購入の希望があれば、さらなる商品登録がなされることになる(ステップS36,37)。
【0066】
追加的な商品登録がなされない場合は、「支払差額」に関しての決済処理がなされる。すなわち、「預り金額」から「支払差額」が差し引かれた結果が「釣銭金額」として導出され、その「釣銭金額」がディスプレイ22,23に表示される。なお、「支払差額」が負の値の場合は、「預り金額」を0として「支払差額」の絶対額が「釣銭金額」とされ、その額が顧客に払い戻される(ステップS38)。
【0067】
続いて、「取引コード」や「ランク差額」が記載されたレシートが印刷発行部26により印刷されて発行され(ステップS39)、さらに、売買取引の内容を示すデータが、POSサーバ1に送信され、販売実績データT2の一のレコードReとして記録されることになる(ステップS40)。この際、販売実績データT2の「合計販売価格」には、当該売買取引の「累計販売価格」が記載される。したがって、さらなる売買取引があったときに、過去の売買取引に係るデータとして当該レコードReを再び読み出した場合には、「累計販売価格」が「過去販売価格」として利用されることになる。これにより、同日の売買取引に限っては、それら全ての売買取引の「合計販売価格」を合算した「累計販売価格」を導出できるようになっている。
【0068】
<5.まとめ>
以上のように、本実施の形態のPOSシステム100では、「金額」を複数の割引ランクに区分し、「金額」が高くなるほど「割引率」が高くなるように、割引ランクと「割引率」とを関連付けた値引テーブルT1が記憶されている。精算処理においては、「合計販売価格」が値引テーブルT1の金額にあてはめられ、「合計販売価格」が属する割引ランクの「割引率」が取得されて、その「割引率」で「合計販売価格」の割引きがなされるようになっている。そして一方で、「合計販売価格」が属する割引ランクの次に「割引率」が高くなる割引ランクの最低金額と「合計販売価格」との差額である「ランク差額」が導出され、ディスプレイに表示される。
【0069】
これにより、有利な「割引率」の適用を受けるために必要な「ランク差額」を顧客に明示することができる。その結果、「ランク差額」以上の商品の追加購入をするという動機付けを顧客に与えることができ、ひいては、客単価の向上が期待できる。
【0070】
また、POSシステム100では、販売実績データT2において、売買取引ごとに当該売買取引に係る「合計販売価格」と「取引コード」とが関連付けて記録される。そして、過去に売買取引のあった顧客に関して新たな売買取引があったときには、「取引コード」に基づいて過去の売買取引に係る「合計販売価格」が「過去販売価格」として販売実績データT2から取得される。そして、この「過去販売価格」と新たな売買取引に係る「合計販売価格」とが合算されて「累計販売価格」が導出され、この「累計販売価格」に基づいて割引処理がなされる。
【0071】
このため、事後的に商品を追加購入することがあったとしても、今回の売買取引と過去の売買取引との双方に係る合計販売価格を合算した累計販売価格に基づく割引率を適用することができる。これにより、事後的に商品を追加購入する動機付けを顧客に与えることができ、さらなる客単価の向上が期待できる。なお、過去の売買取引に係る「取引コード」は、顧客に受け渡される紙媒体であるレシート5に記録されるため、事後的に容易に特定できる。
【0072】
<6.他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、この発明は上記実施の形態(以下、「代表形態」という。)に限定されるものではなく様々な変形が可能である。以下では、このような他の実施の形態について説明する。
【0073】
代表形態では、値引額を規定する値引パラメータは「割引率」であったが「値引額」そのものであってもよい。この場合は、値引テーブルの各レコードにおいては、「金額」の段階(値引ランク)と絶対的な「値引額」とが関連付けられることになる。このときも、「金額」が高くなるほど値引きが有利となるように、「金額」が高くなるほど「値引額」が高く設定される。精算処理においては、値引テーブルにおいて合計販売価格が属する値引ランクの「値引額」が取得され、合計販売価格からその「値引額」を単に減算した結果が「取引価格」として導出されることになる。
【0074】
代表形態では、過去の売買取引と新たな売買取引とが同日である場合に限り「累計販売価格」を導出していたがこれに限定されるものではなく、過去の売買取引の「取引時刻」が他の基準を満たす場合に「累計販売価格」を導出するようにしてもよい。例えば、過去の売買取引の「取引時刻」が、新たな売買取引の時点から遡って所定の時間以内(例えば、3時間、1日等)であるという条件であってもよい。つまりは、過去の売買取引の「取引時刻」が、新たな売買取引の時点に基づいて規定される所定の基準条件を満足したときのみ、「累計販売価格」を導出すればよい。
【0075】
また、代表形態では、同日の売買取引については全ての「合計販売価格」を合算して「累計販売価格」を導出できるとしたが、合算できる売買取引の数を一定数に制限してもよい。
【0076】
また、代表形態では、ランク差額や取引コードはレシートに印刷されていたが、それら双方あるいはいずれかを示す紙媒体をレシートとは別に印刷して発行するようにしてもよい。
【0077】
また、代表形態では、精算処理システムはPOSサーバ1及び複数のPOSターミナル2を備えたPOSシステム100であるとして説明を行ったが、精算処理システムが単体のキャッシュレジスタなどの単体装置として構成されていても、上記で説明した技術を好適に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】POSシステムの構成を示す図である。
【図2】POSサーバの構成を機能ブロックにて示す図である。
【図3】POSターミナルの構成を機能ブロックにて示す図である。
【図4】値引テーブルの一例を示す図である。
【図5】POSシステムの通常の精算処理の流れを示す図である。
【図6】顧客側ディスプレイの表示を示す図である。
【図7】レシートの記載内容を示す図である。
【図8】販売実績データの一例を示す図である。
【図9】新たな売買取引に係る精算処理の流れを示す図である。
【図10】新たな売買取引に係る精算処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 POSサーバ
2 POSターミナル
3 LAN
5 レシート
23 顧客側ディスプレイ
T1 値引テーブル
T2 販売実績データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が購入を希望する商品の精算処理を行う精算処理システムであって、
金額を複数の段階に区分し、前記金額が高くなるほど値引きが有利となるように、前記金額の段階と値引額を規定する値引パラメータとを関連付けたテーブルデータを記憶する記憶手段と、
一の売買取引に係る商品の価格の合計である合計販売価格を導出する合計導出手段と、
前記合計販売価格を前記テーブルデータの金額にあてはめて前記合計販売価格が属する段階の前記値引パラメータを取得し、取得した前記値引パラメータに基づいて前記合計販売価格の値引きを行う値引手段と、
前記合計販売価格が属する段階の次に値引きが有利となる段階の最低金額と、前記合計販売価格との差額を導出する差額導出手段と、
前記差額を前記売買取引に係る顧客に報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする精算処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の精算処理システムにおいて、
前記売買取引ごとに、当該売買取引に係る前記合計販売価格と、当該売買取引を識別する取引コードとを関連付けて記録する記録手段と、
過去の売買取引に係る取引コードを入力する入力手段と、
入力された前記取引コードに基づいて、前記過去の売買取引に係る合計販売価格を過去販売価格として前記記録手段から取得する取得手段と、
新たな売買取引に係る商品の合計販売価格と、前記過去販売価格とを合算した累計販売価格を導出する累計導出手段と、
を備え、
前記累計販売価格が導出されたとき、前記値引手段は、前記累計販売価格を前記テーブルデータの金額にあてはめて前記累計販売価格が属する段階の前記値引パラメータを取得し、取得した前記値引パラメータに基づいて前記累計販売価格の値引きを行うことを特徴とする精算処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の精算処理システムにおいて、
前記売買取引ごとに、当該売買取引の前記取引コードを記載した紙媒体を発行する発行手段、
をさらに備えることを特徴とする精算処理システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の精算処理システムにおいて、
前記記録手段は、前記売買取引に係る前記合計販売価格と、当該売買取引が行われた取引時間とを関連付けて記録するものであり、
前記累計導出手段は、前記過去販売価格に係る前記過去の売買取引の前記取引時間が所定の基準を満たす場合に、前記累計販売価格を導出することを特徴とする精算処理システム。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の精算処理システムにおいて、
前記報知手段は、前記差額を紙媒体に印刷する印刷手段を含むことを特徴とする精算処理システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の精算処理システムにおいて、
前記報知手段は、前記差額を表示する表示手段を含むことを特徴とする精算処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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