説明

精製糖液の製造方法

【課題】産業廃棄物の量を著しく減容化でき、しかも、操作性および収率に優れた精製糖液の製造方法を提供する。
【解決手段】固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造するに当り、先ず、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給し、以下の式(I)に定義する濃縮倍率が10〜60倍の条件下で濾過を行って濃縮液と透過液とに分離し、次いで、フィルタープレスにて上記の濃縮液を圧搾して当該濃縮液から糖液を回収する。
[数1]
濃縮倍率=供給液量/(供給液量−透過液量)・・・(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精製糖液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造する方法として、糖液をダイアフィルトレーション濾過して濃縮液と透過液とに分離し、得られた濃縮液をプレコート濾過する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、プレコート濾過を採用した方法では、大量のプレコート廃材が産業廃棄物として排出されるため、その搬送および処理コストの負担が大きいという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−102519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、産業廃棄物の量を著しく減容化でき、しかも、操作性および収率に優れた精製糖液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、膜濾過システムによる濾過とフィルタープレスによる圧搾とを巧みに組み合せることにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造するに当り、先ず、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給し、以下の式(I)に定義する濃縮倍率が10〜60倍の条件下で濾過を行って濃縮液と透過液とに分離し、次いで、フィルタープレスにて上記の濃縮液を圧搾して当該濃縮液から糖液を回収することを特徴とする精製糖液の製造方法に存する。
[数1]
濃縮倍率=供給液量/(供給液量−透過液量)・・・(I)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、産業廃棄物の量を著しく減容化でき、しかも、操作性および収率に優れた精製糖液の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、原料糖液としては、デンプン糖、甜菜糖、甘蔗糖、甘藩糖および多糖類の溶液である糖液などが挙げられる。これらの原料糖液には固形分が含有されており、従って、当該固形分を除去することによりブドウ糖やその異性化糖の精製糖液が得られる。例えば、ブドウ糖の場合、原料デンプン(コーンスターチ等)を酵素液化した後、酵素糖化してブドウ糖溶液(糖液)を製造するが、この糖液中には、コーン等の原料由来の固形分が混入している。この固形分は、マッドと呼ばれ、蛋白質、脂質、繊維質などから成っている。このマッドを除去することにより、精製糖液が得られる。
【0009】
先ず、本発明においては、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給し、濾過を行って濃縮液と透過液とに分離する。
【0010】
上記の膜濾過システムの膜としては、一般に、限外濾過(UF)膜または精密濾過(MF)膜が使用されるが、MF膜が好適である。また、膜素材としては、テフロン(登録商標)、ポリスルホン、セラミック、金属など使用される。
【0011】
また、膜濾過装置としては、膜を振動させることにより、膜表面付近の流体に大きな剪断力を与えることの出来る振動膜分離装置を使用することも出来る。斯かる振動膜分離装置の市販品としては、例えば、米国のNEW LOGIC RESEARCH,INC製の「VSEP Series L/P」が挙げられる。また、膜を回転させる膜分離装置を使用することも出来る。斯かる膜分離装置としては、例えば、株式会社日立プラントテクノロジー製の「回転平膜分離装置」が挙げられる。
【0012】
通液方式による濾過の種類としては、クロスフロー(連続式)又はデッドエンド(回分式)の何れでもよい。クロスフロー濾過法は、原理的には、膜フィルター表面に濾過対象液を平行に流しながら濾過を行い、平行流によるせん断力により堆積ケーク層を最小に保持する濾過法であり、従って、濾過膜に包囲された流路の一端から供給された濾過対象液(原液)は、流れながら濾過され、濾液は、濾過膜を通過して流路と直交する方向に排出され、濃縮液は、流路の一端から排出される。
【0013】
本発明において、前記の濾過は、以下の式(I)に定義する濃縮倍率が10〜60倍の条件下で行う必要がある。
【0014】
[数2]
濃縮倍率=供給液量/(供給液量−透過液量)・・・(I)
【0015】
膜濾過システムにおける濃縮倍率が10倍未満の場合は、フィルタープレスにて濃縮液を圧搾する際に固形分が十分に捕捉される透明な糖液を回収することが出来ない。その理由は、膜濾過システムにおける濾過の際に濃縮倍率が高くなるに従って濃縮液中の固形分が徐々に凝集すると考えられるが、濃縮倍率が10倍未満の場合は、凝集体(フロック)が十分な大きさにまで成長していないことによるためと推測される。一方、膜濾過システムにおける濃縮倍率が60倍超過の場合は、濃縮液の粘性が高くなり過ぎて膜濾過システムの操作性が低下する。すなわち、濾過効率が低下し濾過圧力が高くなる。膜濾過システムにおける濃縮倍率の好ましい範囲は20〜50倍である。膜濾過システムの運転条件は特に制限されないが、濾過温度(原料糖液の温度)は通常50〜80℃、濾過圧力は膜濾過システムの種類により適宜選択される。振動膜分離装置の場合の濾過圧力(膜入口圧力)は通常0.1〜1MPaである。
【0016】
次いで、本発明においては、フィルタープレスにて上記の濃縮液を圧搾して当該濃縮液から糖液を回収する。フィルタープレスは、複数並設された濾板の間に一対の濾布を配置した状態で濾板相互を締め付けて密着させ、濾板間に濾室を形成すると共に、濾布間にスラリーを供給し、液分を濾布を介して排出させて濾布間にケーキを形成し、その後、濾板相互および濾布相互を離間させ、濾布間に形成されたケーキを落下排出する装置である。本発明においては、例えば、合成繊維マルチフィラメント糸を主体に構成された濾布を備えた通常のフィルタープレスを使用することが出来る。
【0017】
本発明においては、濾布の表面に珪藻土などによるプレコート層を形成する必要はないが、濃縮液に濾過助剤を添加して圧搾性を高めることが出来る。濾過助剤としては、珪藻土の他、活性炭、セルロース、パーライト等を使用することが出来、その使用量は、濃縮液中の固形分に対する割合として、通常1〜100重量%、好ましくは5〜50重量%である。フィルタープレスの運転条件は特に制限されないが、濾過温度(濃縮液の温度)は通常50〜80℃、濾過圧力は通常0.1〜2MPaである。圧力は多段階に高めてもよい。
【0018】
本発明においては、フィルタープレスの濾布間に形成されたケーキに水を供給して当該ケーキに付着した糖液を回収することが出来る。斯かる操作は、洗浄機構を備えた市販のフィルタープレスを使用することにより、容易に行うことが出来る。
【実施例】
【0019】
実施例1:
先ず、澱粉原料を糖化して得られたブドウ糖原液(糖濃度28重量%、固形分濃度0.3重量%)650Lを、循環式の供給タンク(液温53〜55℃)から、濾過膜(テフロン(登録商標)製、孔経0.1μm、膜面積1.7m)を装填した振動膜分離装置(米国のNEW LOGIC RESEARCH,INC製の「VSEP Series L/P」)に供給し、濾過温度(ブドウ糖原液温度)53〜55℃、濾過圧力0.55MPa(膜入口圧力)にてクロスフロー法で濾過し、濃縮液(固形分濃度6.1重量%)26Lと透過液(ブドウ糖濃度28重量%)624Lを得た。循環液流量は1.2m/h、濃縮倍率は650/(650−624)=25倍である。
【0020】
次いで、上記の濃縮液を、供給タンク(液温59〜62℃)から、濾過面積100cmの濾布(ポリプロピレン製二重織り)を装填した内容積150cm(178mm×178mm×1室)のフィルタプレス(株式会社栗田機械製作所製の試験機)に0.4MPaの圧力で供給し、0.7MPaの圧力で圧搾した。この操作により、濃縮液476mlに対し、濾液(ブドウ糖濃度28重量%)418mlと廃ケーキ(含水率39.4重量%)67.6gが得られた。計算により求めたブドウ糖の回収率は99.5重量%であった。また、ブドウ糖原液1m当りに換算した廃ケーキ量は5.7kg/mであった。
【0021】
実施例2:
実施例1と同様にして得られた濃縮液3.3Lに対し、珪藻土105g(固形分濃度に対して57重量%)を添加し、実施例1と同様にフィルタプレスで処理した。この操作により、濃縮液762mlに対し、濾液(ブドウ糖濃度28重量%)661mlと廃ケーキ(含水率29.1重量%)131.4gを得た。計算により求めたブドウ糖の回収率は99.5重量%であった。また、ブドウ糖原液1m当りに換算した廃ケーキ量は6.9kg/mであった。
【0022】
比較例1:
澱粉原料を糖化して得られたブドウ糖原液(糖濃度28重量%、固形分濃度0.3重量%)1000Lを、プレコート濾過装置で濾過した。プレコートに使用した珪藻土の量は5kgとした。廃ケーキ(含水率30.6重量%)は11.5kgであった。計算により求めたブドウ糖の回収率は99.5重量%であった。また、ブドウ糖原液1m当りに換算した廃ケーキ量は11.5kg/mであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分を含有する原料糖液から当該固形分を除去して精製糖液を製造するに当り、先ず、連続式または回分式の膜濾過システムに原料糖液を供給し、以下の式(I)に定義する濃縮倍率が10〜60倍の条件下で濾過を行って濃縮液と透過液とに分離し、次いで、フィルタープレスにて上記の濃縮液を圧搾して当該濃縮液から糖液を回収することを特徴とする精製糖液の製造方法。
[数1]
濃縮倍率=供給液量/(供給液量−透過液量)・・・(I)
【請求項2】
膜濾過システムがクロスフロー通液による連続式である請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
【請求項3】
膜濾過システムが振動膜分離装置である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
膜濾過システムで得られた濃縮液に濾過助剤を添加して濃縮液の圧搾を行う求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−284133(P2010−284133A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142135(P2009−142135)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000232863)日本錬水株式会社 (75)
【Fターム(参考)】