説明

精製装置

【課題】精製対象物を劣化させず、また、使用効率が高い精製装置を提供する。
【構成】精製対象物16を供給室10から少量ずつ気化室20に供給し、気化室20で昇華させる。気化室20には複数の凝縮室50a、50bが接続されており、導入バルブ51を開けて所望の凝縮室50a、50bに気化室20で生成された生成気体を導入し、凝縮室50a、50b内に配置された凝縮器52に接触させ、析出させる。凝縮室50a、50b内に導入した生成気体は、温度が順番に低くなる複数の凝縮器52に、高温から低温の順序で接触し、精製対象物の昇華温度よりも低温の凝縮器52に析出させる。析出後、冷却して凝縮器52を取り出すときに、他の凝縮室50a、50b内で凝縮器に析出させれば、気化室20内での精製対象物の昇華を停止させる必要が無く、装置の使用効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は精製装置の技術分野に係り、特に、高純度の物質を得られる精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、有機発光ダイオード(OLED:有機EL)は、有機材料の薄膜を積層させて構成しているが、有機薄膜を形成するための有機材料は、化学合成法によって製造されている。
しかし、化学合成の反応は、溶媒中で行われるため、加熱して溶媒を除去しても、化学反応によって得られた有機材料には溶媒が不純物として混入している。
【0003】
また、化学合成の反応は、理論式通りに進行するとは限らず、目的の化学物質以外の化学物質も微量に合成されてしまうという問題がある。
このような有機材料を薄膜にすると、混入している不純物により、発光性能や寿命が低下してしまう。
そのため、化学合成によって得られた有機材料は、一度真空中で精製して用いる必要がある。
【0004】
図3は、その精製に用いる精製装置101を示しており、この精製装置101は、加熱室150を有している。
加熱室150は、細長い形状であり、一端にはガス導入装置123が接続され、接続部分にガス導入装置123からキャリアガスが供給されるように構成されており、他端は真空排気装置170に接続され、真空排気装置170が動作すると、加熱室150内を真空排気できるように構成されている。
【0005】
加熱室150内には、気化容器115と、凝縮器152と、不純物回収装置159とが、ガス導入装置123に接続された部分の位置から、この順序で配置されている。
加熱室150内を真空排気装置170によって真空排気しながらガス導入装置123によってキャリアガスを導入すると、導入されたキャリアガスは、気化容器115と凝縮器152と不純物回収装置159が配置された位置をその順序で流れ、真空排気される。
【0006】
加熱室150の、気化容器115が位置する部分の外周には、高温加熱装置154が設けられており、凝縮器152が位置する部分と不純物回収装置159が位置する部分の外周には、低温加熱装置155が設けられている。
高温加熱装置154と低温加熱装置155は、それぞれ電源に接続されており、電源から電圧が印加されると、高温加熱装置154は低温加熱装置155よりも高温に昇温する。
【0007】
気化容器115の内部には、精製して純度を向上させる精製対象物が配置されており、精製対象物は高温加熱装置154の発熱によって加熱され、気化温度(昇華温度を含む)以上の温度に昇温されて、精製対象物の気体が生成される。
生成された精製対象物の気体は、キャリアガスによって運搬され、凝縮器152が配置された位置に移動する。
【0008】
凝縮器152は、低温加熱装置155によって、室温よりも高く、精製対象物の昇華温度よりも低い温度に昇温されており、精製対象物の気体は、凝縮器152に接触すると、精製対象物の気体が凝縮器152に析出する。
【0009】
精製対象物に混入している残留溶剤の蒸発温度は、精製対象物が昇華する温度よりも低いが、凝縮器152の温度は、残留溶剤の蒸発温度よりも高温に設定されており、残留溶剤の気体は凝縮器152には凝縮しないようになっている。
【0010】
凝縮器152を通過した精製対象物の気体の進行方向には、残留溶剤の蒸発温度よりも低温の不純物回収装置159が配置されており、精製対象物の気体に混入している残留溶剤の気体が接触すると、精製対象物と残留溶剤とが、凝縮器152の内部で凝縮(固体の析出を含む)する。
【0011】
気化容器115内の精製対象物が全部気化され、凝縮器152に精製対象物が析出された後、高温加熱装置154と低温加熱装置155との発熱を終了させ、凝縮器152が所定温度に低下した後、加熱室150の真空排気とキャリアガス供給を停止し、パージガス供給装置158から加熱室150内にパージガスを供給し、大気圧にした後、扉を開け、付着している精製対象物と共に凝縮器152を加熱室150から取り出す。
気化容器115には精製対象物を配置すると共に、加熱室150内に、精製対象物が付着していない凝縮器152を配置し、精製対象物の精製を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−095992号公報
【特許文献2】特開2005−161251号公報
【特許文献3】特開2007−044592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記精製装置101では、凝縮器152を加熱室から取り出す際の、冷却時間と再加熱時間とが長時間必要で、装置の使用効率が悪い。
また、一回の取り出し作業によって多量の精製対象物が得られるようにするため、加熱室150内に長時間凝縮器152を配置して精製対象物の気体を析出させようとすると、析出した精製対象物のうち、長時間加熱された部分は劣化してしまう。また、多量に析出させると凝縮器152の凝縮部分の温度が変化し純度が下がる。
更に、従来の精製装置101では、精製された精製対象物の純度を向上させることも困難であり、これらの課題を解決する精製装置の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、真空排気可能に構成され、精製対象物が配置される供給室と、前記供給室から前記精製対象物が供給され、真空雰囲気内で前記精製対象物を加熱して前記精製対象物の気体を生成する気化室と、入口側一端が導入バルブを介して前記気化室に接続され、出口側一端が真空排気されながら前記導入バルブが開けられると、前記気化室内で生成された気体である生成気体が内部に導入され、前記生成気体は、前記入口側の一端から、前記出口側の一端に向けて流れるように構成され、並列に配置された複数の細長の凝縮室と、前記凝縮室内に配置され、前記入口側一端と前記出口側一端の間に並んで配置された複数の凝縮器と、前記凝縮室に設けられ、前記入口側一端に近い凝縮器を、遠い凝縮器よりも高温に加熱する加熱装置と、を有する精製装置である。
また、本発明は、前記供給室には漏斗形状の供給容器が設けられ、前記供給容器の漏斗形状の下部の管状部は前記気化室に挿入され、前記管状部には、周囲にネジ溝が設けられた回転軸が挿入され、前記供給容器に配置された粉体状の前記精製対象物は、前記回転軸の回転によって、前記供給室から前記気化室に前記精製対象物が移動される精製装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、供給容器内に多量に配置した精製対象物を、複数台の凝縮室を用いて生成することができるので、一台の凝縮室が冷却中でも、他の凝縮室によって精製を行うことができるので、精製対象物の気体の生成を停止させないで済む。
【0016】
一方の凝縮室では、精製対象物の析出を終了させ、冷却、取り出し、真空排気、凝縮器の再加熱を行っている間、他方の凝縮室で、精製対象物の析出を行うと、多量の精製対象物を供給容器に配置しても、析出を中断させないで済む。
また、凝縮室に複数個の凝縮器を配置し、凝縮器の温度を細かく設定できるようにすると、得られる精製対象物の純度を高めることができる。
【0017】
供給容器内の精製対象物は高温に加熱されず、また、気化室には少量の精製対象物しか供給されないので、精製対象物が加熱される時間が短く、また、凝縮室で析出した精製対象物も長時間加熱されないので、精製対象物は劣化しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の精製装置を説明するための図面
【図2】凝縮器を説明するための図面
【図3】従来技術の精製装置を説明するための図面
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1の符号1は、本発明の一例の精製装置を示している。
この精製装置1は、気体生成装置3と凝縮物生成装置5を有しており、気体生成装置3に合成された有機化合物から成る精製対象物16を配置し、精製対象物16の気体を発生させて凝縮物生成装置5に供給すると、凝縮物生成装置5によって気体が固体にされる。
【0020】
凝縮物生成装置5内では、異なる位置に純度が異なって凝縮物が形成されるように構成されており、低純度の凝縮物を除外し、高純度の凝縮物を集めると、気化(本発明では、昇華も含める)させた精製対象物16よりも純度が向上した精製結果物が得られる。
【0021】
まず、気体生成装置3を説明すると、気体生成装置3は、多量の精製対象物16が配置される供給室10と、供給室10から精製対象物16が少量ずつ供給される気化室20とを有している。供給室10と気化室20とは、真空槽であり真空排気することができる。供給室10と気化室20との間には遮断バルブ31が設けられており、遮断バルブ31が開けられると内部が接続され、閉じられると、供給室10と気化室20の内部雰囲気は分離されるようになっている。
【0022】
供給室10には漏斗形状の供給容器15が設けられている。
気化室20は供給室10の下方に配置されており、供給容器15の漏斗形状の下端である管状部22は気化室20の内部に挿入されている。
【0023】
気化室20の内部と供給室10の内部は外部とは遮断されており、真空雰囲気にできる状態で、気化室20の内部と供給室10の内部は、供給容器15の漏斗下端部分によって接続されている。
【0024】
管状部22には、側面に螺旋状のネジ溝14が形成された回転軸13が挿通されている。供給容器15の下部の管状の部分は、回転軸13によって閉塞されており、粉体は漏斗下部の管状の部分を通って落下しない状態である。
この例では、精製対象物16は粉末状の有機化合物であり、回転軸13が挿入された状態で、成膜対象物16が供給容器15に配置されている。
【0025】
供給容器15の下部の管状の部分では、回転軸13の側面の溝に粉末の精製対象物16が充填された状態になっており、回転軸13がモータ回転すると、精製対象物16は溝内を通って、管状部22から、気化室20の内部に落下する。
【0026】
精製対象物16は、回転軸13の回転量に応じた量だけ落下して、精製対象物16が供給室10から気化室20に落下することで、供給室10から気化室20に精製対象物16が供給される。
気化室20の内部には、容器状の加熱容器21が設けられており、気化室20内に落下する精製対象物16は加熱容器21に供給される。
【0027】
気化室20内を真空排気すると、加熱容器21内も真空排気されるようになっており、供給容器15内と気化室20内とが真空雰囲気にされた状態で、供給された精製対象物16が、気化室20に設けられた気化用加熱装置24によって加熱されると、加熱容器21の内部で精製対象物16が固体の粉体の状態から気体の状態になり、加熱容器21内に充満する。
【0028】
なお、供給室10に配置された精製対象物16には、不純物が混入しているものとし、気化室20内で生成された気体を生成気体とすると、生成気体は精製対象物の気体に不純物の気体が混入された気体である。
【0029】
この例では、供給室10には真空排気装置7が接続されており、その真空排気装置7が動作して供給室10内部は真空排気され、真空雰囲気にされており、供給室10内部の精製対象物16には水分が付着しないようにされている。また、真空雰囲気中で、精製対象物16に水分が付着しない温度に昇温させておくこともできる。
【0030】
気化室20の内部は供給室10を介して、真空排気装置7によって真空排気され、また、加熱容器21の内部は、供給容器15を介して真空排気されている。回転軸13の回転により、供給容器15から加熱容器21には、一定の供給速度になるように、少量の精製対象物が継続して供給され、加熱容器21内では、加熱容器21が気化用加熱装置24によって加熱され、継続して精製対象物16の気体が生成されている。
【0031】
次に、凝縮物生成装置5を説明すると、凝縮物生成装置5は複数の凝縮室50a、50bを有している(ここでは二台)。各凝縮室50a、50bは、細長の筒体53を有しており、筒体53の入口側一端11には、導入バルブ51がそれぞれ設けられている。気化室20内の加熱容器21と各凝縮室50a、50bの導入バルブ51とは、分岐された配管41によって一対多数に接続されており、導入バルブ51を開状態にすると、導入バルブ51を開状態にされた凝縮室50a、50bの筒体53の内部と加熱容器21の内部とが接続される。
【0032】
各凝縮室50a、50bの筒体53の出口側一端12に、冷却装置56を介して真空排気装置7が接続されている。凝縮室50a、50bは気密に形成されており、導入バルブ51が閉じられた状態で真空排気装置7が動作すると、筒体53の内部は真空排気できるように構成されている。ここでは、各凝縮室50a、50bは真空排気され、筒体53の内部は所定圧力以下の真空雰囲気にされている。
凝縮室50a、50bと供給室10とは、同じ真空排気装置7によって真空排気しても、異なる真空排気装置によって真空排気するようにしてもよい。
【0033】
加熱容器21にはキャリアガス供給装置23が接続されており、加熱容器21とキャリアガス供給装置23とを接続する配管26には、供給バルブ25が設けられている。
【0034】
各凝縮室50a、50bの導入バルブ51を閉じておき、真空排気装置7によって、各凝縮室50a、50bの筒体53内を真空排気しながら供給バルブ25を開け、加熱容器21とキャリアガス供給装置23とを接続する。
【0035】
次に、所望の凝縮室(ここでは50aとする)の導入バルブ51を閉状態から開状態にし、供給室10から気化室20内に精製対象物16を供給すると、気化室20内と凝縮室50aの筒体53内の圧力差により、気化室20で生成された生成気体は、キャリアガスと共に、導入バルブ51が開状態にされた凝縮室50aの筒体53の内部に移動する。
【0036】
この例では、凝縮室50aの筒体53内に導入された生成気体及びキャリアガスは、筒体53内を流れ、冷却装置56を通って真空排気される。
凝縮室50aの筒体53の内部には、生成気体が接触する凝縮器52が、入口側一端11と出口側一端12との間に並んで配置されている。ここでは生成気体及びキャリアガスの流れに沿って、一列に並んで配置されている。
【0037】
筒体53の壁面には、筒体53の長手方向に沿って加熱装置54が設けられており、筒体53の壁と筒体53内に配置された各凝縮器52とは、加熱装置54によって加熱されるようにされている。加熱装置54は、筒体53内の凝縮器52を、導入バルブ51に近い位置の凝縮器52は高温に加熱し、それよりも遠い位置の凝縮器52は近い位置よりも低温に加熱する。
【0038】
従って、筒体53内に長手方向に沿って並んで配置された凝縮器52は、内部を流れる気体の上流側から下流側に向けて温度が低くなっている。
上流側では、複数個の凝縮器52が精製対象物16の気化温度(昇華する固体では昇華する温度)よりも高い温度に加熱されており、下流側では、複数個の凝縮器52が精製対象物16の気化温度よりも低い温度に加熱されている。
【0039】
精製対象物16の気化温度よりも高い温度の凝縮器52と、低い温度の凝縮器52の間には、複数の凝縮器52が配置されており、精製対象物16の気化温度よりも高い温度の凝縮器52と、低い温度の凝縮器52が、それぞれ複数個配置されている。
【0040】
精製対象物16に混入された不純物には、精製対象物16が気化する温度よりも高い温度で気化する高温不純物と、低い温度で気化する低温不純物とが含まれている。
凝縮室50aの筒体53内に導入された生成気体には、精製対象物16の気体に加え、高温不純物の気体と、低温不純物の気体とが含まれている。
更に、高温不純物と低温不純物は、それぞれ複数の物質で構成されており、物質毎に異なる気化温度又は昇華温度を有している。
【0041】
気化室20内に導入された生成気体及びキャリアガスは、先ず、入口側の高温の凝縮器52に接触すると、気化する温度が、接触した凝縮器52の温度よりも高い高温の化学物質が凝縮(又は固化)し、その高温不純物の気体が、筒体53内を流れる生成気体から除去又は減少される。
【0042】
各凝縮器52は、図2に示すように、リング形状であり、筒体53内を流れる気体は、各凝縮器52の内側を通過して流れ、内周面に凝縮物が成長するようになっている。
先頭に配置された凝縮器52を最高温度とすると、その凝縮器52の次に配置された二番目の温度の凝縮器52は、二番目に高温であり、先頭の凝縮器52を通過した生成気体が二番目の凝縮器52に接触すると、二番目の温度よりも気化温度が高温の高温不純物の気体が固体又は液体になって凝縮する。
【0043】
このように、凝縮室50aの筒体53内に導入された生成気体が、精製対象物16の気化温度以上の温度に加熱された凝縮器52に、高温の凝縮器52から低温の凝縮器52に向けて順番に接触すると、各凝縮器52の温度に対応した気化温度の高温不純物が凝縮(本発明では、固体が析出される場合も含む)され、高温不純物が生成気体から除去される。
【0044】
その後、高温不純物が除去された生成気体が精製対象物16の気化温度よりも低温の凝縮器52に接触すると、精製対象物16が凝縮されて、精製対象物16はその凝縮器52に析出する。
【0045】
精製対象物16の気体は、気化室20に導入された生成気体中に多量に含有されており、精製対象物16の気化温度よりも低温の凝縮器52のうち、先頭の凝縮器52によって凝縮されずに通過した気体の中にも多量に含有されており、精製対象物16の気化温度よりも低温の凝縮器52のうち、先頭の凝縮器52の次に温度が高い凝縮器52でも精製対象物16は凝縮される。
【0046】
更に、その次に温度が高い凝縮器52でも、精製対象物16は凝縮される。このように、精製対象物16の気化温度よりも低温の凝縮器52には、精製対象物16が凝縮されてしまう。
【0047】
本実施例では、凝縮器52の温度は、上流側から下流側に向けて配置された順序に低下しており、温度が低い凝縮器52には気化温度が低温の不純物も固化しやすいため、精製対象物16の気化温度よりも低温の凝縮器52では、所定の最低温度よりも低温の凝縮器52では、不純物の含有量が多くなる。
従って、精製対象物16の気化温度よりも低温の凝縮器52では、最低温度以上の温度の凝縮器52の凝縮物が、高純度の精製対象物16であることになる。
【0048】
各凝縮器52で凝縮されなかった生成気体とキャリアガスは、筒体53を流れて冷却装置56の内部に進入する。冷却装置56の内部には、室温よりも低温に冷却された冷却装置56が配置されており、冷却装置56と接触した生成気体は凝縮され、キャリアガスが真空排気装置7の内部を通過して真空排気される。
【0049】
そして、各凝縮器52に導入された生成気体の凝縮物が成長すると、導入バルブ51を閉じ、加熱装置54を停止し、凝縮物を冷却させる。
凝縮物が所定温度以下に冷却されたところで、凝縮室50aの真空排気を停止し、凝縮室50aの筒体53内部にパージガス供給装置58からパージガスを導入し、筒体53を大気圧にして凝縮室50aの筒体53の扉(図示せず)を開け、凝縮物が付着した凝縮器52を取り出す。
【0050】
取り出した凝縮器52のうち、所定の温度範囲に加熱されていた凝縮器52の付着物の純度が高く、それらを集めると、精製され、純度が向上された精製対象物16から成る精製結果物が得られる。
【0051】
本実施例では、真空排気された複数の凝縮室50a、50bのうち、一乃至複数の凝縮室50aの導入バルブ51が開けられ、他の一乃至複数の凝縮室50bの導入バルブ51は閉じられて、導入バルブ51が開けられた凝縮室50aに気化室20から生成気体が供給されており、凝縮物が凝縮器52に所定量成長すると、その凝縮室50aの導入バルブ51は閉じられ、凝縮物を冷却する状態に入ると、凝縮物が付着していない凝縮器52が配置された凝縮室50bの導入バルブ51が開けられ、その凝縮室50b内での凝縮物の成長が開始される。
【0052】
他方、凝縮器52を取り出した凝縮室50aでは、凝縮物が付着していない凝縮器52が所定位置に配置され、扉が閉じられて大気から遮断された後、凝縮室50a内部の真空排気が開始される。
【0053】
このように、本発明では、同じ気体生成装置3に複数の凝縮室50a、50bが並列に接続されており、一又は複数台の凝縮室50aでは、導入バルブ51を閉じて冷却、凝縮器52の取り出し、又は、所定圧力への真空排気の途中の状態に置かれており、その間に他の凝縮室50bで、凝縮器52への精製対象物の凝縮を行うことができる。
【0054】
要するに、本発明では、供給容器15に配置された多量の精製対象物16を、一台の気化室20で気化させて生成気体を生成し、複数の凝縮室50a、50bで生成気体を凝縮させる際に、導入バルブ51を開けて凝縮を開始する時刻を異ならせて凝縮物を得ることができるので、冷却時間や真空排気時間中に、凝縮を停止させずに済む。
【0055】
また、少量の凝縮物が付着した段階で、凝縮を停止し、冷却中に他の凝縮室50bで凝縮を開始することができるので、凝縮物を、多量に付着させることによる温度変化を防ぐことができ、純度の低下を抑えられる。
【0056】
また、精製対象物16の気化温度よりも低温であって、最低温度以上の温度に加熱された凝縮器52のうち、温度が高い凝縮器52の凝縮物の純度は高く、温度が低い凝縮器52の凝縮物の純度は低い。
【0057】
精製対象物16の気化温度よりも高温に加熱された凝縮器52の付着物は、廃棄するが、最低温度よりも低温の凝縮器52の凝縮物については、再度気化させて凝縮室50a、50b内に導入して凝縮させれば、純度が高い凝縮物を得ることができるし、最低温度以上に加熱された凝縮器52であっても、比較的低温で凝縮され、純度の低い凝縮物については、それら低純度の凝縮物でも、気化・凝縮がされていない精製対象物16よりも純度は高いので、それら凝縮物を集め、再度気化させて凝縮室50a、50b内に導入して凝縮させれば、高純度の凝縮物が得やすい。
【0058】
また、本発明については、一乃至複数台の凝縮室50a、50bで凝縮物を成長させて、供給容器15に配置された精製対象物16が無くなった場合には、凝縮物が得られた凝縮室50a、50bの導入バルブ51を閉じて、その凝縮室50a、50b内の凝縮器52を冷却している間に、供給室10に精製対象物16を配置することができる。
【0059】
ここでは、供給室10と気化室20との間には遮断バルブ31が設けられており、供給容器15の下部を気化室20から抜き出し、供給室10と気化室20との間を遮断バルブ31を閉じて分離し、供給室10と真空排気装置7との間の排気バルブを閉じて供給室10内の真空排気を停止した状態で大気を導入し、供給室10の扉を開けて精製対象物16を供給室10内に配置することが出来る。
【0060】
精製対象物16を配置し、排気バルブを開けて供給室10を真空排気した後、遮断バルブ31を開け、供給容器15の下部を気化室20内に挿入することができる。
このとき、供給室10には、冷却中の凝縮器52の凝縮物とは異なる物質を精製対象物16として配置し、その精製対象物16を気化室20の加熱容器21に供給して異なる物質の気体を生成して、凝縮物が形成されていない凝縮室50a、50bの導入バルブ51を開け、その凝縮室50a、50b内で異なる物質の凝縮物を生成することができる。
【0061】
なお、上記実施例では、加熱容器21内に導入したキャリアガスによって、生成気体が筒体53内に運搬されたが、気化室20内で生成された生成気体の圧力によって、生成気体を気化室20から筒体53内に移動させることができる。
【符号の説明】
【0062】
10……供給室
11……入口側一端
12……出口側一端
13……回転軸
15……供給容器
16……精製対象物
20……気化室
50a、50b……凝縮室
51……導入バルブ
52……凝縮器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能に構成され、精製対象物が配置される供給室と、
前記供給室から前記精製対象物が供給され、真空雰囲気内で前記精製対象物を加熱して前記精製対象物の気体を生成する気化室と、
入口側一端が導入バルブを介して前記気化室に接続され、出口側一端が真空排気されながら前記導入バルブが開けられると、前記気化室内で生成された気体である生成気体が内部に導入され、前記生成気体は、前記入口側の一端から、前記出口側の一端に向けて流れるように構成され、並列に配置された複数の細長の凝縮室と、
前記凝縮室内に配置され、前記入口側一端と前記出口側一端の間に並んで配置された複数の凝縮器と、
前記凝縮室に設けられ、前記入口側一端に近い凝縮器を、遠い凝縮器よりも高温に加熱する加熱装置と、
を有する精製装置。
【請求項2】
前記供給室には漏斗形状の供給容器が設けられ、前記供給容器の漏斗形状の下部の管状部は前記気化室に挿入され、
前記管状部には、周囲にネジ溝が設けられた回転軸が挿入され、前記供給容器に配置された粉体状の前記精製対象物は、前記回転軸の回転によって、前記供給室から前記気化室に前記精製対象物が移動される請求項1記載の精製装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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