説明

糖付加インドール化合物の製造方法

【課題】構造が特定されたα体またはβ体のN−ピラノシル−トリプトファンを大量に製造し、それをもとに抗体を作成する方法を提供すること。
【解決手段】ピラノース化合物と3−ピラジル−インドール化合物とを第一の塩基の存在下で反応させて1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得て、さらに上記1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を酸で処理した後に、水素添加触媒で処理し、さらに第二の塩基で処理することによってN−ピラノシル−トリプトファンを合成し、それをもとに抗体を作成すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ピラノシル−トリプトファンを有機合成により構造が特定された形で製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、エポキシドを有し、かつ水酸基が保護されたピラノース化合物と、3−ピラジル−インドール化合物とを反応させた後、得られた1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を塩酸および金属触媒で処理することによってN−ピラノシル−トリプトファンを製造する方法に関する。さらにこれをハプテンとしてN−ピラノシル−トリプトファンに特異的な抗体を製造することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
新規糖タンパク質修飾型として、トリプトファンのインドール窒素原子にマンノースが結合したN−マンノシル−トリプトファンが、ペルオキシダーゼの一種から見出されている(非特許文献1)。しかし、N−マンノシル−トリプトファンの有機合成法はこれまでに知られていない。したがって、量的な限界から、N−マンノシル−トリプトファンのアノマー位の立体構造さえ明らかにされておらず、生物学的機能についても未解明である。
【0003】
一方、果物や漢方医薬においてN−グルコシル−トリプトファンの存在が確認されている。β−N−グルコシル−トリプトファンの製造方法として、N−α−アセチル−D−トリプトファンとグルコースを長時間加熱することにより合成する方法が知られている(非特許文献2〜4)。しかし、この方法により合成されるβ−N−グルコシル−トリプトファンの収率は非常に低く、かつ副生成物が多く生じるため、β−N−グルコシル−トリプトファンの分離・精製が非常に困難であった。さらに、アセトアミド基の除去に起因して、誘導体の合成が困難であった。したがって、N−グルコシル−トリプトファンについても、量的な限界から、生物学的機能は未解明である。
【非特許文献1】Li et al., J. Biol. Chem., 2005, 280, 38513
【非特許文献2】Nyhammer T et al., Food. Chem. 1985, 17, 289-296
【非特許文献3】Gutsche B et al., Biochem. J. 1999, 343, 11-19
【非特許文献4】C. Unverzagt et al., Tetrahedron Lett. 2004, 45, 295-297
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の通り、これまでに構造が厳密に特定された十分な収量のN−マンノシル−トリプトファンおよびN−グルコシル−トリプトファンなどのN−ピラノシル−トリプトファンを得ることができる有用な化学合成法はこれまでに知られていなかった。そこで、生体内での上記化合物の機能を調べるなどのために、上記化合物を大量に製造する方法が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。すなわち、本発明は、特定された構造を有するα体またはβ体のN−ピラノシル−トリプトファン、特にα体またはβ体のN−マンノシル−トリプトファンを大量に製造する方法を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、特定された構造を有するα体またはβ体のN−ピラノシル−トリプトファンを大量に製造するための、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を製造する方法を提供することを解決すべき課題とした。
【0006】
さらに、本発明は、N−ピラノシル−トリプトファンの生物学的機能の解明に寄与し得る、N−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体および上記抗体を製造する方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エポキシドを有し、かつ水酸基が保護されたピラノース化合物と、3−ピラジル−インドール化合物とを塩基の存在下で反応させて1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得て、さらに上記1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を塩酸および2以上の金属触媒で処理することによってN−ピラノシル−トリプトファンを合成することに成功した。
【0008】
すなわち、本発明によれば、下記式(1)
【化1】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表す。)
で表されるピラノース化合物と、下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される3−ピラジル−インドール化合物を第一の塩基の存在下で反応させて下記式(3)
【化3】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得る工程、および
上記1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を酸で処理した後に、水素添加触媒で処理し、さらに第二の塩基で処理して下記式(4)
【化4】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンを得る工程を含む、
N−ピラノシル−トリプトファンの製造方法が提供される。
【0009】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、上記ピラノースと上記ピラノシルの組み合わせが、α−マンノースとα−マンノシル、β−マンノースとβ−マンノシル、α−グルコースとα−グルコシル、およびβ−グルコースとβ−グルコシルからなる群から選ばれる組み合わせである。
【0010】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、上記第一の塩基が、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド(LiTMP)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、カリウムジイソプロピルアミド(KDA)、およびブチルリチウム(BuLi)からなる群から選ばれる塩基である。
【0011】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、および10−カンファースルホン酸からなる群から選ばれる酸である。
【0012】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、上記水素添加触媒が、パラジウム触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒およびプラチナ触媒からなる群から選ばれる触媒である。
【0013】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、上記第二の塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化バリウムからなる群から選ばれる塩基である。
【0014】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、上記水酸基の保護基が、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、およびテトラヒドロピランエーテル基からなる群から選ばれる保護基である。
【0015】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、上記R1がメチル基であり、上記R2がプロピル基であり、かつ上記R3がメチル基である。
【0016】
さらに本発明の別の側面によれば、N−ピラノシル−トリプトファンの製造において使用される1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法であって、下記式(1)
【化5】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表す。)
で表されるピラノース化合物と、下記式(2)
【化6】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される3−ピラジル−インドール化合物を第一の塩基の存在下で反応させて下記式(3)
【化7】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得る工程を含む、
1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法が提供される。
【0017】
好ましくは、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法は、上記ピラノースと上記ピラノシルの組み合わせが、α−マンノースとα−マンノシル、β−マンノースとβ−マンノシル、α−グルコースとα−グルコシル、およびβ−グルコースとβ−グルコシルからなる群から選ばれる組み合わせである。
【0018】
好ましくは、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法は、上記第一の塩基が、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド(LiTMP)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、カリウムジイソプロピルアミド(KDA)、およびブチルリチウム(BuLi)からなる群から選ばれる塩基である。
【0019】
好ましくは、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法は、上記水酸基の保護基が、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、およびテトラヒドロピランエーテル基からなる群から選ばれる保護基である。
【0020】
好ましくは、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法は、上記R1がメチル基であり、上記R2がプロピル基であり、かつ上記R3がメチル基である。
【0021】
さらに本発明の別の側面によれば、下記式4
【化8】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体が提供される。
【0022】
さらに本発明の別の側面によれば、下記式4
【化9】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体の製造方法であって、上記N−ピラノシル−トリプトファンもしくはアミノ基を保護された上記N−ピラノシル−トリプトファン、または上記N−ピラノシル−トリプトファンもしくはアミノ基を保護された上記N−ピラノシル−トリプトファンを含む複合体で哺乳動物を免疫する工程を含む、前記方法が提供される。
【0023】
好ましくは、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体の製造方法は、N−ピラノシル−トリプトファンのアミノ基の保護が、フルオレニルメトキシ基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、およびテトラヒドロピランエーテル基からなる群から選ばれる保護基により達成される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アノマー位であるα体およびβ体が規定された状態でN−グリコシル−トリプトファンやN−マンノシル−トリプトファンなどのN−ピラノシル−トリプトファンを大量に製造する方法が提供される。また、合成して得られたN−グリコシル−トリプトファンやN−マンノシル−トリプトファンにアミノ酸を付加してペプチド伸長を行えば、文献データ(非特許文献1など)と比較解析をすることにより、生体内においてα体またはβ体のいずれが存在しているか知ることができる。さらに、本発明によれば、製造したN−グリコシル−トリプトファンやN−マンノシル−トリプトファンなどのN−ピラノシル−トリプトファンをもとに抗体を製造することができる。これは植物あるいは哺乳動物などの生体内で上記のN−ピラノシル−トリプトファンがどのような分布や生体内機能を有しているか知るための重要な知見となる。さらに、N−ピラノシル−トリプトファンの生体内での動態を解析することにより、N−ピラノシル−トリプトファンに関連する疾患の診断方法およびその疾患に対する薬剤などの開発に結びつきうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法は、ピラノース化合物と3−ピラジル−インドール化合物を第一の塩基の存在下で反応させて1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得る工程、および上記1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を酸で処理した後に、水素添加触媒で処理し、さらに第二の塩基で処理してN−ピラノシル−トリプトファンを得る工程を含む、N−ピラノシル−トリプトファンの製造方法である。
【0026】
さらに本発明の1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法は、ピラノース化合物と3−ピラジル−インドール化合物を第一の塩基の存在下で反応させて1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得る工程を含む、N−ピラノシル−トリプトファンの製造において使用される1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法である。
【0027】
本明細書にいう「ピラノース化合物」とは、下記式(1)
【化10】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表す。)
で表される化合物を意味する。ピラノース化合物の基本骨格は、上記式(1)で表されるピラノース化合物を構築できれば特に制限されないが、例えば、α−マンノース、β−マンノース、α−グルコース、β−グルコースなどである。
【0028】
本明細書にいう「水酸基の保護基」とは、ピラノース化合物の3位、4位および6位の炭素に結合する水酸基を保護することができれば特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、およびテトラヒドロピランエーテル基などがあり、好ましくは、ベンジル基である。さらに、本明細書にいう「Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表す」とは、ピラノース化合物の3位、4位および6位の炭素に結合する水酸基の保護基のそれぞれが各基に依存せず別個に上記したような水酸基の保護基を表すことを意味する。したがって、ピラノース化合物の3位、4位および6位の炭素に結合する水酸基の保護基は、それぞれ別の保護基を表すこともあるし、すべて同一の保護基を表すこともある。
【0029】
ピラノース化合物の製造方法は、上記式(1)で表されるピラノース化合物を構築できれば特に制限されないが、例えば、公知技術を使って、α−マンノース、β−マンノース、α−グルコースまたはβ−グルコースの1位と2位の炭素の間でエポキシドを形成する工程および3位、4位および6位の炭素に結合する水酸基を保護する工程を含む有機合成法により製造することができる。
【0030】
本明細書にいう「3−ピラジル−インドール化合物」とは、下記式(2)
【化11】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される化合物を意味する。
【0031】
本明細書でいう「アルキル基」としては、例えば、炭素数1から6のアルキル基を挙げることができ、直鎖又は分岐鎖の何れでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基を挙げることができる。また、本明細書にいう「R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す」とは、R1、R2およびR3のそれぞれの基が各基に依存せず別個に炭素数1〜6のアルキル基を表すことを意味する。したがって、R1、R2およびR3は、それぞれ別のアルキル基を表すこともあるし、すべて同一のアルキル基を表すこともある。
【0032】
3−ピラジル−インドール化合物は、上記式(2)で示したとおり一般式として表すことができるが、例えば、3−ピラジル−インドール化合物の具体的な態様として、R1がメチル基であり、R2がプロピル基であり、かつR3がメチル基である3−ピラジル−インドール化合物を挙げることができる。
【0033】
3−ピラジル−インドール化合物の製造方法は、上記式(2)で表される化合物を構築できれば特に制限されないが、例えば、実施例で示されているように、(R)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジンとインドール臭化物とを反応させることにより得ることができる。
【0034】
本明細書にいう「第一の塩基の存在下で反応させて」とは、例えば実施例で示されているように、溶媒に溶かした3−ピラジル−インドール化合物溶液に塩基を滴下し、さらにピラノース化合物を加えて反応させることを意味する。
【0035】
第一の塩基としては、例えば、アミンやピリジン等の有機塩基や、アルカリ金属の有機酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及び亜硫酸塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属の有機酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩及び亜硫酸塩等のアルカリ土類金属塩、アルカリ金属の水酸化物、酸化物並びにアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物等の無機塩基が挙げられるが、具体的には、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド(LiTMP)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、カリウムジイソプロピルアミド(KDA)などを用いることができ、好ましくはカリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)またはブチルリチウム(BuLi)を用いることができる。
【0036】
第一の塩基の使用量としては、反応に活性であれば特に制限されないが、3−ピラジル−インドール化合物に対して1〜10モルであり、好ましくは、3〜5モルである。ピラノース化合物と3−ピラジル−インドール化合物の使用量は、ピラノース化合物に対して3−ピラジル−インドール化合物を1〜10モル、好ましくは1〜5モル、より好ましくは1〜3モルに設定する。
【0037】
反応に使用する溶媒は、反応に不活性なものであれば特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶媒および水が挙げられ、これらの混合溶媒も使用できる。溶媒の使用量としては、3−ピラジル−インドール化合物に対して1〜50倍量、好ましくは10〜30倍量である。
【0038】
反応温度は、通常、反応溶媒の融点〜沸点であり、好ましくは0℃〜反応溶媒の沸点であり、より好ましくは0℃〜室温である。反応時間は、0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間である。
【0039】
本明細書にいう「1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物」とは、下記式(3)
【化12】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される化合物を意味する。1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物は、ピラノース化合物と3−ピラジル−インドール化合物を塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。
【0040】
本明細書にいう「1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を酸で処理した後に、水素添加触媒で処理し、さらに第二の塩基で処理して」とは、溶媒に溶かした1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物溶液に酸を加えて反応させた後に、上記溶液に水素添加触媒を添加して反応させ、その後さらに上記溶液に第二の塩基を添加して反応させることを意味する。
【0041】
反応に使用する溶媒は、反応に不活性なものであれば特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶媒および水が挙げられ、これらの混合溶媒も使用できる。溶媒の使用量としては、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物に対して1〜50倍量、好ましくは10〜30倍量である。
【0042】
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、10−カンファースルホン酸などが用いられ、好ましくは塩酸を用いることができる。
【0043】
酸の使用量としては、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物に対して0.001〜0.1モル、好ましくは0.005〜0.05モルである。
【0044】
水素添加触媒としては、例えば、パラジウム、プラチナ、ロジウム、ルテニウムなどの遷移金属触媒およびそれらの酸化物を用いることができ、好ましくはPd/C、Pd black、Pd/Al23およびPd(OH)2/Cを用いることができる。
【0045】
第二の塩基としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウムなどの塩基を用いることができ、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを用いることができる。
【0046】
水素添加触媒および第二の塩基の使用量としては、N−マンノシル−トリプトファン塩酸化合物に対して0.1〜10モル、好ましくは0.2〜5モルである。
【0047】
反応温度は、通常、反応溶媒の融点〜沸点であり、好ましくは0℃〜反応溶媒の沸点であり、より好ましくは室温〜反応溶媒の沸点である。反応時間は、0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間である。
【0048】
本明細書にいう「N−ピラノシル−トリプトファン」とは、下記式(4)
【化13】

で表される化合物を意味する。N−ピラノシル−トリプトファンは、1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を塩酸で処理し、さらに2以上の金属触媒で処理することにより得ることができる。本明細書にいう「ピラノシル」は、合成に用いるピラノース化合物に依存して決定され、例えば、α−マンノシル、β−マンノシル、α−グルコシル、β−グルコシルなどである。
【0049】
本発明の抗体は、下記式(4)
【化14】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体である。本発明の抗体は、上記N−ピラノシル−トリプトファンに特異的に結合すれば特に制限されず、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。本発明の抗体は、N−ピラノシル−トリプトファンを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0050】
本発明のN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体を製造する方法は、下記式4
【化15】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体の製造方法であって、上記N−ピラノシル−トリプトファンもしくはアミノ基を保護された上記N−ピラノシル−トリプトファン、または上記N−ピラノシル−トリプトファンもしくはアミノ基を保護された上記N−ピラノシル−トリプトファン含む複合体で哺乳動物を免疫する工程を含むことを特徴とする。
【0051】
以下に上記N−ピラノシル−トリプトファンに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の製造方法の例を挙げる。
〔モノクローナル抗体の製造〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の製造
N−ピラノシル−トリプトファンを、哺乳動物に対して、投与により抗体産生が可能な部位に、それ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロインドアジュバントや不完全フロインドアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等が挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
【0052】
例えば、抗原で免疫された哺乳動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物のミエローマ細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化N−ピラノシル−トリプトファンと抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。融合操作は、既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495(1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
【0053】
ミエローマ細胞としては、例えば、X63−Ag8−6.5.3、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの哺乳動物のミエローマ細胞が挙げられるが、X63−Ag8−6.5.3が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾細胞)数とミエローマ細胞数との好ましい比率は、1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0054】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、例えば、抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例:マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したN−ピラノシル−トリプトファンを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;などによりスクリーニングすることができる。
【0055】
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。モノクローナル抗体の選別は、通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行うことができる。モノクローナル抗体の選別および育種用培地は、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いてもよい。このような培地としては、例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%のウシ胎仔血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%のウシ胎仔血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5目〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行うことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0056】
このようにして得られたモノクローナル抗体は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例:DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って分離精製することができる。
【0057】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
N−ピラノシル−トリプトファンに対するポリクローナル抗体は、自体公知の方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(N−ピラノシル−トリプトファン)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体を作製し、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行い、当該免疫動物から抗N−ピラノシル−トリプトファン抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
【0058】
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どのようなものをどのような比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプリングさせる方法が用いられる。
【0059】
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤、例えばグルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル碁を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、哺乳動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロインドアジュバントや不完全フロインドアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行われる。
【0060】
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行うことができる。
【0061】
前記した抗N−ピラノシル−トリプトファン抗体は、ヒトまたは他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)におけるN−ピラノシル−トリプトファンまたはその塩の量を測定することができる。
【0062】
本発明のN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体を製造する具体的な方法は、例えば、N−ピラノシル−トリプトファンに対するポリクローナル抗体を製造する場合は、N−ピラノシル−トリプトファンのアミノ基を保護して保護N−ピラノシル−トリプトファンを得る工程、得られた保護N−ピラノシル−トリプトファンをコンジュゲート材料と接触させて(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートを得る工程、および得られた(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートで哺乳動物を免疫する工程を含むことができる。
【0063】
さらに、本発明のN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体を製造する具体的な方法は、例えば、N−ピラノシル−トリプトファンに対するモノクローナル抗体を製造する場合は、上記した工程以外に、(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートで免疫された哺乳動物の脾細胞と上記哺乳動物と異種のミエローマ細胞とを融合して融合細胞集団を得る工程、および得られた融合細胞集団から(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートに対する抗体を産生している細胞を免疫化学的に選択し、かつクローニングする工程をさらに含むことができる。
【0064】
N−ピラノシル−トリプトファンのアミノ基の保護は、アミノ基を保護することができれば特に制限されないが、例えば、フルオレニルメトキシ基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基およびtert-ブチルジフェニルシリル基などの保護基により達成され、好ましくは、フルオレニルメトキシ基、さらに好ましくは9−フルオレニルメトキシ基で達成される。したがって、上記した保護N−ピラノシル−トリプトファンとは、アミノ基が保護されたN−ピラノシル−トリプトファンを意味する。
【0065】
上記したコンジュゲート材料には、保護N−ピラノシル−トリプトファンと複合体(コンジュゲート)を形成する物質であれば特に制限されないが、例えば、タンパク質または有機高分子、好ましくはタンパク質、さらに好ましくはスカシ貝ヘモシアニン(KLH)またはウシ血清アルブミン(BSA)が含まれる。
【0066】
上記した(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートでの哺乳動物の免疫は、例えば、実施例で示す通りに、(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートをウサギに数回投与することにより達成できる。
【0067】
上記した(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートで免疫された哺乳動物の脾細胞と上記哺乳動物と異種のミエローマ細胞とを融合して融合細胞集団を得る工程は、例えば、実施例で示す通りに、(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートで免疫したウサギの脾細胞と、ウサギと異種の哺乳動物であるマウスのミエローマ細胞とを融合することにより、上記融合細胞集団を得ることで達成できる。
【0068】
上記した融合細胞集団から(保護N−ピラノシル−トリプトファン)コンジュゲートに対する抗体を産生している細胞を免疫化学的に選択し、かつクローニングする工程は、例えば、実施例に示してある通りに、上記細胞をELISA法で選択し、かつ限界希釈法でクローニングすることで達成できる。
【0069】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
[実施例1]α−N−Man−Trpの合成
(1)3−ピラジル−インドール化合物中間体の有機合成
テトラヒドロフラン(THF;100mL)およびブチルリチウム(BuLi;1.60M)中の(R)−2,5−ジヒドロ−3,6−ジメトキシ−2−イソプロピルピラジン(図1中の化合物3;3.0g、16.3mmol)の溶液に、ヘキサン(hexane)溶液をアルゴン雰囲気の下、−78℃で加えた。混合物を40分間撹拌した後、THF(30mL)中のインドール臭化物(図1中の化合物2;5.65g、16.1mmol)を排管で(via cannula)移した。フラスコをTHF(10mL)で洗浄した。混合物を一晩、−78℃で撹拌した後、反応を塩化アンモニウム(NH4Cl)飽和溶液で停止した。水相を酢酸エチル(EtOAc)で抽出した。混合相を飽和炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)塩水溶液で洗浄した。混合相を硫酸ナトリウム(Na2SO4)で乾燥し、その後ろ過および蒸発させた。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(hexane:EtOAc 4:1−7:3)で精製し、無色油として4.73gのスルホンアミド3−ピラジル−インドール化合物中間体を得た。
【0071】
【化16】

【0072】
1H-NMR d 7.91 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.78 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.51 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.39 (t, J = 8.3 Hz, 2H), 7.20 (m, 2H), 7.17 (t, J = 8.3 Hz, 2H), 4.30 (dd, J = 8.4 Hz, 4.4 Hz, 1H), 3.64 (s, 3H), 3.63 (s, 3H), 3.17 (m, 3H), 2.07 (m, 1H), 0.86 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.58 (s, J = 6.8 Hz, 3H); 13C-NMR d 163.7 (C), 161.8 (C), 138.1 (C), 134.6 (C), 133.4 (CH), 131.4 (C), 129.0 (CH), 126.4 (CH), 124.3 (CH), 122.7 (CH), 119.9 (CH), 118.5 (C), 113.3 (CH), 60.4 (CH), 55.6 (CH), 52.4 (CH3), 52.3 (CH3), 31.5 (CH), 29.2 (CH2), 19.1 (CH3), 16.6 (CH3); [a]24D −4.8 (c 0.5 CHCl3).
【0073】
(2)3−ピラジル−インドール化合物(図1中の化合物4)の有機合成
メタノール(50mL)中、スルホンアミド3−ピラジル−インドール化合物中間体(3.10g、6.84mmol)とマグネシウム(1.50g、62.5mmol)を窒素雰囲気下で撹拌した。発熱反応を止めた後、飽和NH4Cl溶液を加えた。水相をEtOAcで抽出した。混合相を塩溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。ろ過後、溶媒を減圧して取り除いた。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(hexane:EtOAc 9:1−4:1)で精製し、2.10gの3−ピラジル−インドール化合物(98%)を得た。
【0074】
【化17】

【0075】
1H NMR d 7.83 (bs, 1H), 7.51 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.93 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 6.78 (s, 1H), 4.21 (dd, J = 8.3 Hz, 3.9 Hz, 1H), 3.55 (s, 3H), 3.52 (s, 3H), 3.22 (t, J = 3.4 Hz, 1H), 3.16 (s, 1H), 3.15 (s, 1H), 2.00 (m, 1H), 0.79 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 0.48 (d, J = 6.8 Hz, 3H); 13C NMR d 163 5 (C), 162.7 (C), 135.6 (C), 128.2 (C), 122.6 (CH), 121.5 (CH), 119.3 (CH), 118.9 (CH), 111.6 (C), 110.6 (CH), 60.4 (CH), 56.8 (CH), 52.3 (CH3), 52.2 (CH3), 31.4 (CH), 29.6 (CH2), 19.1 (CH3), 16.6 (CH3); [a]24D +32 (c 1.1 CHCl3).
【0076】
(3)1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物(図1中の化合物6)の有機合成
THF(30mL)中の3−ピラジル−インドール化合物(1.67g、2.99mmol)溶液に、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS;0.5M、トルエン溶液)を窒素雰囲気下、0℃で滴下した。混合物を0℃で30分間撹拌した後、ピラノース化合物(図1中の化合物5;1.67g、3.88mmol)を何回かに分けて加えた。一晩混合物を撹拌した後、混合物を飽和NH4ClおよびEtOAc溶液で希釈した。水相をEtOAcで抽出した。混合相を飽和NaHCO3塩溶液で洗浄した。混合物をNa2SO4で乾燥した後、ろ過および濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(toluene:EtOAc 4:1)で精製し、1.10g(49%)の1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得た。
【0077】
【化18】

【0078】
1H NMR d 7.58 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.36-7.22 (m, 16H), 7.15 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.09 (t, J = 7.1 Hz, 1H), 6.79 (s, 1H), 4.78-4.70 (m, 3H), 4.62-4.57 (m, 2H), 4.49 (m, 1H), 4.45 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.30 (m, 1H), 4.13 (m, 1H), 4.01 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 3.78 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.57 (s, 3H), 3.40 (s, 1H), 3.25 (dd, J = 14.0 Hz, 3.6 Hz, 1H), 3.12 (dd, J = 6.0 Hz, 14.4 Hz, 1H), 2.73 (m, 1H), 2.05 (m, 1H), 0.90 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.59 (d, J = 6.8 Hz, 3H); 13C NMR d 137.9 (C), 137.8 (C), 137.2 (C), 136.4 (C), 129.1 (C), 128.6 (CH), 128.2 (CH), 128.2 (CH), 127.9 (CH), 127.7 (CH), 127.6 (CH), 127.5 (CH), 122.0 (CH), 119.7 (CH), 119.3 (CH), 111.1 (CH), 79.2 (CH), 77.2 (CH), 73.9 (CH), 73.6 (CH2), 73.3 (CH2), 73.0 (CH2), 67.7 (CH), 60.4 (CH), 31.3 (CH), 19.1 (CH3), 16.5 (CH3); [a]24D +95 (c 1.5 CHCl3).
【0079】
(4)N−マンノシル−トリプトファン塩酸化合物(図1中の化合物7)の有機合成
ジオキサン−H2O (10 mL, 1:1)中の1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物溶液(696mg、0.93mmol)に、塩酸(ジオキサン中で4.0Mの溶液、2.5mL)を室温で加え、30分間撹拌した。混合物をジオキサンで希釈した後、溶媒を蒸発させた。残留物はシリカゲルカラムクロマトグラフィ(AcOEt−AcOH:MeOH 20:1)で精製し、N−マンノシル−トリプトファン塩酸化合物(450mg、71%)を得た。
【0080】
【化19】

【0081】
1HNMR (CD3OD) d 7.57 (m, 2H), 7.40-7.16 (m, 18H), 5.89 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.79 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 4.68-4.48 (m, 7H), 4.36 (m, 1H), 4.14-4.06 (m, 3H), 3.83 (s, 3H), 3.67 (m, 1H), 3.50 (dd, J = 14.0 Hz, 3.6 Hz, 1H); 13C-NMR d (CD3OD) 170.3 (C), 139.0 (C), 138.3 (C), 129.4 (CH), 129.3 (CH), 129.3 (CH), 129.2 (CH), 129.0 (CH), 128.9 (CH), 128.8 (CH), 128.6 (CH), 126.2 (CH), 123.5 (CH), 121.4 (CH), 119.1 (CH), 112 3 (CH), 108.9 (C), 79.2 (CH), 77.1 (CH), 75.2 (CH), 74.5 (CH2), 74.1 (CH2), 73.4 (CH2), 68.7 (CH2), 67.8 (CH), 54.3 (CH), 53.8 (CH), 27.4 (CH2); [a]24D +43 (c 0.35 CH3OH).
【0082】
(5)α−N−マンノシル−トリプトファン(図1中の化合物1)の有機合成
酢酸(AcOH;6mL)および水(2mL)中でN−マンノシル−トリプトファン塩酸化合物(206mg、0.30mmol)および20%Pd(OH)2/C(100mg)の混合物を水素雰囲気下、50℃で一晩撹拌した。触媒のろ過後、触媒を水で洗浄した。凍結乾燥後、粗製物を水(1mL)で溶解し、および水酸化リチウム水和物(LiOH・H2O;52mg、1.37mmol)を室温で加えた。2時間後、混合物を逆相カラムクロマトグラフィ(H2O−H2O:MeOH 7:3)で精製し、α−N−マンノシル−トリプトファン(68mg、75%)を得た。
【0083】
【化20】

【0084】
1H NMR D2O (600 MHz, KH2PO4-Na2HPO4 buffer pH 7, dioxane 3.75 ppm as a reference, 25 °C), 7.74 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.72 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.36 (dd, J = 8.1 Hz, 7.1 Hz, 1H), 7.27 (dd, J = 8.1 Hz, 7.1 Hz, 1H), 6.03 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 4.68 (dd, J = 4.5 Hz, 3.5 Hz, 1H), 4.21 (dd, J = 6.5 Hz, 3.5 Hz, 1H), 4.00 (dd, J = 12.6 Hz, 7.6 Hz, 1H), 3.92 (dd, J = 6.5 Hz, 6.5 Hz, 1H), 3.76 (ddd, J = 7.6Hz, 6,5 Hz, 3.0 Hz, 1H), 3.76 (dd, J = 12.6 Hz, 3.0 Hz, 1H), 13C NMR d 175.0 (C), 137.5 (C), 128.5 (C), 123.5 (CH), 125.8 (CH), 121.4 (CH), 119.6 (CH), 112.3 (CH), 110.2 (C), 82.4 (CH), 77.5 (CH), 71.8 (CH), 68.6 (CH), 28.2 (CH), 60.5 (CH2), 55.4 (CH).
【0085】
[実施例2]N−Man−Trp抗体の作成
(1)Fmoc-a-N-Man-Trpの合成
Fmoc-OSu (26 mg, 0.0792 mmol) とa-N-Man-Trp (10.0 mg, 0.0258 mmol) を0.5% NaHCO3 (0.5 mL)−DME(0.5 mL) に溶解し、室温にて終夜撹拌した。反応液を1M HCl 水溶液にてpH4 にし、反応液を直接逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(H2O only/H2O-MeOH 1:1/H2O:MeOH1:9)にて精製し、13.5 mg (89%) のFmoc-a-N-Man-Trpを得た。MS 611(M+Na)
【0086】
【化21】

【0087】
(2)ハプテンとKLHまたはBSAとの結合
前記(1)で得られたハプテン(Fmoc-a-N−Man−Trp)とスカシ貝ヘモシアニン(KLH)またはウシ血清アルブミン(BSA)とを、Imject Immunogen EDC Cojugation Kit (Pierce社, #77602)を用い、常法に従って結合した。具体的には、KLHまたはBSA (2mg/0.2ml H2O)とFmoc-a-N-Man-Trp (2 mg/0.5 ml Conjugation buffer containing 20% DMSO)を調製後、素早く混合し、室温で2時間反応させた。Fmoc基を1M NaOHにより除去し、HCl にて中和した。NAP-10 分子ふるいカラム(GE Biosciences)により脱塩を行い、抗原として使用した。
【0088】
(3)ポリクローナル抗体の作製
雌ウサギ(NZW)(日本SLC社)の背側皮下に、フロインドの完全アジュバント(ICNバイオケミカル社)とa-N-Man-Trp-KLHの等量混合物を0.5 mg/匹で投与した。以後3週毎に、フロインドの不完全アジュバント(ICNバイオケミカル社)とa-N-Man-Trp-KLHの等量混合物を0.2 mg/匹でウサギ背側皮下に2回投与した。その3週間後、同抗原含有混合物0.2 mg/匹で最終免疫を行ない、5日後に全血採血により抗血清を調製した。
【0089】
(4)モノクローナル抗体の作製
8週令の雌Balb/cマウス(日本SLC社)の腹腔に、フロインドの完全アジュバント(ICNバイオケミカル社)とa-N-Man-Trp-KLHの等量混合物を0.2 mg/匹で投与した。以後3週毎に、フロインドの不完全アジュバント(ICNバイオケミカル社)とa-N-Man-Trp-KLHの等量混合物を0.1 mg/匹でマウス腹腔に2回投与した。その3週間後、同抗原含有混合物0.1 mg/匹で最終免疫を行ない、3日後に抗体産生細胞を脾臓より調製した。麻酔下の免疫マウスから脾臓を無菌的に摘出し、血清を含まないRPMI-1640培地(Sigma社)中で組織をほぐし、100ステンレスメッシュ網を通して脾細胞を単細胞化し、その後、血清を含まないRPMI-1640培地で3回洗浄した。一方、マウスミエローマ細胞X63-Ag8-6.5.3(ヒューマンサイエンス研究資源バンクより入手)を、20%ウシ胎仔血清(FCSと略記)を含有するRPMI-1640培地で培養し、対数増殖期の細胞を回収、血清を含まないRPMI-1640培地で3回洗浄した。
【0090】
抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞X63-Ag8-6.5.3を5:1の比率で混合し、遠心分離(900g 5 min)し、培養液を除去した。遠心細胞沈査に1 mlの50%ポリエチレングリコール1500液(Sigma社)を加えながら、細胞融合を開始し、最終的に30 mlの血清を含まないRPMI-1640培地を徐々に加えた。その後、遠心分離(900g 5 min)により、培養液を除去し、遠心細胞沈査をHAT培地(Sigma社)に懸濁し、細胞濃度1X106細胞/mlに調整した。細胞は96穴マイクロプレートに各ウェルあたり0.1 mlずつ分注した。その後、細胞は炭酸ガスインキュベーター(37℃, 5% CO2, 95% air)で培養を継続した。10日後から、ウェル内にハイブリドーマのコロニーが観察された。
【0091】
(5)スクリーニングアッセイ
目的抗体を産生している細胞を含むウェルの選択は以下のように行なった。96穴マイクロプレートをa-N-Man-Trp-BSA (0.01 mg/ ml of 100 mM sodium carbonate buffer)で一晩4℃でコーティングし、アッセイプレートを作製した。a-N-Man-Trp-BSAは前記2)の手順で作製した。アッセイプレートをリン酸緩衝液(PBSと略記)で3回洗浄し、0.1 mlの1%ウシ血清アルブミン(BSAと略記)/PBS溶液を各ウェルに分注し、室温で1時間反応したものを反応用プレートとした。PBSで各ウェルを3回洗浄し、0.5%BSAを含むPBSで2倍希釈した培養上清0.1 mlを入れ、室温で2時間反応させた。反応終了後プレートを0.05% Tween-20を含むPBSで4回洗浄した後、0.05 mlのペルオキシダーゼ標識-抗マウスイムノグロブリンズ-ウサギIgG(DAKO社)を加え、室温で1時間反応させた。反応後、プレートを0.05% Tween-20を含むPBSで4回洗浄した後、0.05 mlのTMB One溶液(Promega社)を加え、室温で30分反応させた。最後に0.05 mlの2N HClを加えて反応を停止し、マイクロプレートリーダー(Biorad社)で450 nmの吸光度を測定した。最終的に陽性反応を示した4ウェルについてクローニングを行なった。
一方、ウサギ抗血清の抗体価についても、上記のアッセイ法により評価した。
【0092】
(6)クローニング
クローニングは限界希釈法で常法に準じて行なった。陽性反応の得られた細胞を1 X 107個/mlの胸腺細胞を含む10%FCS含有RPMI-1640培地で10細胞/mlになるよう希釈し、96穴マイクロプレートに各ウェルあたり0.1 mlずつ分注し、炭酸ガスインキュベーター(37℃, 5% CO2, 95% air)で培養した。培養開始10日後から、生育コロニーが1細胞/ウェルのウェルを選び、さらに選んだウェルの培養上製を上記アッセイ法により測定評価して、目的抗体を産生している細胞株を含むウェルを選択した。
【0093】
(7)a-N-Man-Trpに対する抗体価の評価(ウサギ抗血清)
96穴マイクロプレートをa-N-Man-Trp-BSA (0.01 mg/ ml of 100 mM sodium carbonate buffer)で一晩4℃でコーティングし、アッセイプレートを作製した。0.5%BSAを含むPBSで希釈したウサギ血清0.1 mlを入れ、室温で2時間反応させた。反応終了後プレートを洗浄した後、0.05 mlのペルオキシダーゼ標識-抗ウサギイムノグロブリンズ-ヤギIgG(DAKO社)を加え、室温で1時間反応させた。洗浄した後、0.05 mlのTMB One溶液(Promega社)を加え、室温で30分反応させた。最後に0.05 mlの2N HClを加えて反応を停止し、マイクロプレートリーダーで450 nmの吸光度を測定した。測定した結果を図2に示した。図2にある通り、抗N−Man−Trp血清は、コントロールの免疫前の血清と比べて高い吸光度を示し、N−Man−Trpに対する抗体を多く含むことを示した。
【0094】
(8)抗原による阻害実験(ウサギ抗血清)
a-N-Man-Trp-BSA (0.01 mg/ ml of 100 mM sodium carbonate buffer)でコーティングしたアッセイプレートを用い、抗a-N-Man-Trp血清(2000倍希釈)によるELISAを上記の手順で行った。抗N-Man-Trp血清添加時に同溶液中に種々の濃度のa-N-Man-Trpあるいはa-C-Man-Trpを共存させ、抗血清の抗原結合阻害効果を評価した。その結果を図3に示した。図3にある通り、抗N−Man−Trp血清は、N−Man−Trpに特異的に結合し、阻害された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のN−ピラノシル−トリプトファンの製造方法により、構造が特定されたα体またはβ体のN−ピラノシル−トリプトファンを大量に製造し、かつN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、α−N−マンノシル−トリプトファンの合成経路を示す。
【図2】図2は、a-N-Man-Trpに対する抗体価の評価(ウサギ抗血清)の結果を示す。
【図3】図3は、抗原による阻害実験(ウサギ抗血清)の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表す。)
で表されるピラノース化合物と、下記式(2)
【化2】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される3−ピラジル−インドール化合物を第一の塩基の存在下で反応させて下記式(3)
【化3】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得る工程、および
上記1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を酸で処理した後に、水素添加触媒で処理し、さらに第二の塩基で処理して下記式(4)
【化4】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンを得る工程を含む、
N−ピラノシル−トリプトファンの製造方法。
【請求項2】
上記ピラノースと上記ピラノシルの組み合わせが、α−マンノースとα−マンノシル、β−マンノースとβ−マンノシル、α−グルコースとα−グルコシル、およびβ−グルコースとβ−グルコシルからなる群から選ばれる組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記第一の塩基が、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド(LiTMP)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、カリウムジイソプロピルアミド(KDA)、およびブチルリチウム(BuLi)からなる群から選ばれる塩基である、請求項1また2に記載の方法。
【請求項4】
上記酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、および10−カンファースルホン酸からなる群から選ばれる酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上記水素添加触媒が、パラジウム触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒およびプラチナ触媒からなる群から選ばれる触媒である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記第二の塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化バリウムからなる群から選ばれる塩基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記水酸基の保護基が、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基およびtert-ブチルジフェニルシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、およびテトラヒドロピランエーテル基からなる群から選ばれる保護基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記R1がメチル基であり、上記R2がプロピル基であり、かつ上記R3がメチル基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
N−ピラノシル−トリプトファンの製造において使用される1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法であって、下記式(1)
【化5】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表す。)
で表されるピラノース化合物と、下記式(2)
【化6】

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される3−ピラジル−インドール化合物を第一の塩基の存在下で反応させて下記式(3)
【化7】

(式中、Xはそれぞれ独立に水酸基の保護基を表し、R1、R2およびR3はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表される1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物を得る工程を含む、
1−ピラノシル−3−ピラジル−インドール化合物の製造方法。
【請求項10】
上記ピラノースと上記ピラノシルの組み合わせが、α−マンノースとα−マンノシル、β−マンノースとβ−マンノシル、α−グルコースとα−グルコシル、およびβ−グルコースとβ−グルコシルからなる群から選ばれる組み合わせである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記第一の塩基が、カリウムヘキサメチルジシラジド(KHMDS)、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド(LiTMP)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)、カリウムジイソプロピルアミド(KDA)、およびブチルリチウム(BuLi)からなる群から選ばれる塩基である、請求項9また10に記載の方法。
【請求項12】
上記水酸基の保護基が、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、およびテトラヒドロピランエーテル基からなる群から選ばれる保護基である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記R1がメチル基であり、上記R2がプロピル基であり、かつ上記R3がメチル基である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
下記式4
【化8】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体。
【請求項15】
下記式4
【化9】

で表されるN−ピラノシル−トリプトファンに対する抗体の製造方法であって、上記N−ピラノシル−トリプトファンもしくはアミノ基を保護された上記N−ピラノシル−トリプトファン、または上記N−ピラノシル−トリプトファンもしくはアミノ基を保護された上記N−ピラノシル−トリプトファンを含む複合体で哺乳動物を免疫する工程を含む、前記方法。
【請求項16】
N−ピラノシル−トリプトファンのアミノ基の保護が、フルオレニルメトキシ基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、tert-ブチル基、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、アセチル基、ビバロイル基、ベンゾイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、およびテトラヒドロピランエーテル基からなる群から選ばれる保護基により達成される、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−137885(P2009−137885A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315707(P2007−315707)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】