説明

糖化酵素を大量発現する植物及びそれを用いたバイオマス糖化法

【課題】本発明の目的は、植物体内に糖化酵素遺伝子が導入された形質転換植物を用いて高収率に還元糖を生成させる技術を提供することである。
【解決手段】糖化酵素を植物の葉緑体DNAに組み込んだ形質転換植物を調製し、当該形質転換植物で発現された糖化酵素を用いて当該転換植物中のセルロースを糖化させることにより、効率的に還元糖が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物体内に糖化酵素遺伝子が導入された形質転換植物を用いて、形質転換植物中のセルロースから高効率でグルコース等の還元糖を生成させる糖化方法に関する。また、本発明は、当該糖化方法に使用される形質転換植物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化は人類の生存基盤に関わる最も重要な環境問題であり、その原因である温室効果ガスの排出を抑制することは世界的に課題になっている。現代社会では、主要なエネルギー起源は化石資源であり、化石燃料の使用によって排出される二酸化炭素が温室効果ガスの多くを占めており、化石資源の代替となるエネルギー源の開発が急務になっている。
【0003】
そこで、化石資源に代わるエネルギー源として、カーボンニュートラルなバイオマス資源の導入促進が期待されている。バイオマス資源をエネルギーとして有効に活用することは、温室効果ガスの低減のみならず、エネルギー源の多様化、エネルギー自給率の向上等も期待される。
【0004】
従来、バイオマス資源のエネルギー化は、トウモロコシ等の穀物のデンプンを糖化させ、得られたグルコースをエタノールに変換する手法が主流である。しかしながら、エネルギー源として穀物を使用すると、却って食料や飼料との競合問題を生じさせるため、エネルギー源としての穀物の使用量の増大は、食料や飼料の安定供給を損なうことになる。そこで、食料や飼料と競合しないセルロース系バイオマスを原料としてエネルギーを創出する技術の実用化が望まれている。
【0005】
セルロース系バイオマスからのエネルギーの創出技術として、セルラーゼ等の糖化酵素をセルロース系バイオマスに添加して還元糖を生成させた後に、還元糖をエタノールに変換する手法が提案されている。従来、セルロース系バイオマスの糖化に使用される糖化酵素として、カビが細胞外に放出した複数の酵素を回収することにより製造された酵素製剤が知られている。しかしながら、カビ由来の酵素製剤を用いる手法は、効率の高い糖化反応を行うには大量の酵素が必要とされ、かかるコストの問題から実用化されていないのが現状である。また、セルロース系バイオマスの糖化には、大腸菌等を用いて作製した高い活性の組換え酵素を使用する方法も検討されている。しかしながら、セルロースの糖化反応には、少なくとも3種の糖化酵素、即ち、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、及びβ-グルコシダーゼが必要であるため、高活性の人工酵素セットを見出すことが困難である。さらに、必要酵素が複数種にまたがるため、必然的に酵素生産コストが嵩んでしまうという問題点もあり、実用化の障壁になっている。
【0006】
そこで、近年、セルロース系バイオマスからエネルギーを創出する新たな手法として、植物体内に糖化酵素遺伝子が導入された形質転換植物を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1−2、非特許文献1等参照)。具体的には、当該形質転換植物を栽培することにより、当該形質転換植物内で糖化酵素を製造させ、当該糖化酵素を使用して当該形質転換植物中のセルロースを糖化させる技術である。これにより、セルロース系バイオマスの糖化に、別段に調製された糖化酵素を添加する必要がないため、糖化酵素生産過程にかかるコストの削減が見込まれる。さらに、植物が光合成によって生長するに伴って酵素が生産されるため、温室効果ガスの排出削減にも寄与することが期待される。
【0007】
しかしながら、前述の既存技術では、糖化効率の向上に寄与する酵素種の内、植物で発現可能な酵素種が限られており、生産可能な酵素種についても植物での発現量が少ない等の問題から、糖化反応を高収率で行うことができないのが現状である。
【0008】
このような従来技術を背景として、効率的なセルロースの分解に寄与する複数の酵素種を個別の植物又は同一植物体内で高発現する形質転換植物を用いて、形質転換植物中のセルロースを高効率で還元糖を生成させる技術の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第02/34926号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/11779号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】CallistaRanson et al., Applied Biochemistry and Biotechnology, Vol.136-140, 2007, pages207-219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、植物体内に糖化酵素遺伝子が導入された形質転換植物を用いて高収率に還元糖を生成させる技術、即ち、当該形質転換植物で発現した糖化酵素を利用して、当該形質転換植物中のセルロースを高収率に糖化させて還元糖を生成させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、意外にも、糖化酵素を植物の葉緑体DNAに組み込んだ形質転換植物を調製し、当該形質転換植物で発現された糖化酵素を用いて当該転換植物中のセルロースを糖化させることにより、効率的に還元糖が生成されることを見出した。また、グリコシドヒドロラーゼファミリー(Glycoside
Hydrolase Family; GHF)48に属する、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼIは、大腸菌等の細菌に形質転換すると、活性を保持した状態で発現できないにも拘わらず、植物の葉緑体DNAに組み込むと、活性を保持した状態で高発現でき、当該酵素を葉緑体DNAに組み込んだ形質転換植物を利用することにより、一層効率的に還元糖の生成が可能になることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0013】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.下記工程を含有することを特徴とする、植物系セルロースの糖化方法:
糖化酵素をコードする遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれている形質転換植物の少なくとも1種を抽出溶媒で抽出処理し、糖化酵素を含む液体画分と、セルロースを含む不溶性画分に分離する分離工程、及び
前記液体画分と前記不溶性画分を混合し、セルロースを糖化させて還元糖を生成させる糖化工程。
項2.前記分離工程に供される形質転換植物として、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、及びβグルコシダーゼをコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物4種を少なくとも含む、項1に記載の糖化方法。
項3.前記分離工程に供される形質転換植物として、更に、キシラナーゼ、及びキシロシダーゼをコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物2種を含む、項2に記載の糖化方法。
項4.前記セロビオヒドロラーゼIが、グリコシドヒドロラーゼファミリー48に属する、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼIである、項2に記載の糖化方法。
項5.前記分離工程後且つ前記糖化工程前に、前記分離工程で得られた不溶性画分を軟化させる糖化前処理工程を含む、項1乃至4のいずれかに記載の糖化方法。
項6.前記糖化前処理において、不溶性画分の軟化が、アルカリ処理、酸処理、熱水処理、及び爆砕処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理により行われる、項5に記載の糖化方法。
項7.形質転換植物がタバコである、項1乃至6のいずれかに記載の糖化方法。
項8.糖化酵素をコードする遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれていることを特徴とする、形質転換植物。
項9.前記糖化酵素が、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ、及びキシロシダーゼよりなる群から選択される少なくとも1種である、項8に記載の形質転換植物。
項10.前記糖化酵素が、グリコシドヒドロラーゼファミリー48に属する、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼIである、項8又は9に記載の形質転換植物。
項11.植物がタバコである、項8乃至10のいずれかに記載の形質転換植物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、植物体内に糖化酵素遺伝子が導入された形質転換植物を利用することにより、当該形質転換植物中で発現した糖化酵素で、当該形質転換植物中のセルロースを効率的に糖化することができる。
【0015】
また、本発明は、食料や飼料と競合しないセルロース系バイオマスを原料として使用することにより、バイオ燃料や化学製品製造時の原材料として使用されるグルコース等の還元糖を簡便且つ効率的に供給することができ、新たなグリーンビジネス創出技術として有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1において、目的の糖化酵素遺伝子を葉緑体DNAの特定領域(trnIとtrnAとの遺伝子間領域)に相同組み換えにより導入するための葉緑体形質転換用ベクターの構造を示す図である。geneXの位置に目的遺伝子を挿入することで、psbA遺伝子のプロモーター(PpsbA)および3’-非翻訳領域(TpsbA)の制御下で大量発現を実現する。また、aadA遺伝子はスペクチノマイシン耐性遺伝子であり、形質転換体の選抜マーカーとして用いた。
【図2】(A)には、実施例1において、目的の糖化酵素遺伝子を葉緑体DNAの特定領域(trnIとtrnAとの遺伝子間領域)に相同組み換えにより導入した形質転換タバコ(KAT)の葉緑体DNA構造の一部、形質転換していないタバコ(WT)の葉緑体DNA構造の一部を示す。(B)には、当該形質転換タバコ(KAT)と形質転換していないタバコ(WT)について、目的の糖化酵素遺伝子を検出した結果を示す。なお、WTのレーンは、形質転換していないタバコ;KAT1B-3のレーンは、改変黄色蛍光タンパク質(cpVnus)を融合させたクロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼを葉緑体内に組み込んだタバコ;KAT3-1のレーンは、クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼIIを葉緑体内に組み込んだタバコ;KAT4-1のレーンは、クロストリジウム・サーモセラム由来のβグルコシダーゼを葉緑体内に組み込んだタバコ;KAT5-4のレーンは、クロストリジウム・サーモセラム由来のキシラナーゼを葉緑体内に組み込んだタバコ;KAT9-6のレーンは、サーモトガ・マリティマ由来のキシロシダーゼを葉緑体内に組み込んだタバコ;KAT11-5のレーンは、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼIを葉緑体内に組み込んだタバコを各々サンプルとしている。図3についても、これらの表記は同様である。
【図3】実施例1で作成した各形質転換植物(タバコ)において、各糖化酵素が発現していることをSDS-PAGEで確認した結果を示す図である。図2中、TSP(total soluble proteins)は植物細胞から抽出した全可溶性タンパク質を示し、HeatedとはTSPを60℃で20分間加熱後の上清を示す。
【図4】実施例1で得られた形質転換植物(タバコ)の緑葉を使用して、当該緑葉中のセルロースの糖化実験を行った結果を示す図である。図3中の「enz」の後に表示する括弧内の数値(μg)は、添加した液体画分に含まれる糖化酵素の総量である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の糖化方法は、下記の分離工程及び糖化工程を含むことを特徴とする:
糖化酵素をコードする遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれている形質転換植物の少なくとも1種を抽出溶媒で抽出処理し、糖化酵素を含む液体画分と、セルロースを含む不溶性画分に分離する分離工程、及び
前記液体画分と前記不溶性画分を混合し、セルロースを糖化させて還元糖を生成させる糖化工程。
【0018】
以下、本発明について詳述する。
【0019】
(1)形質転換植物
本発明の糖化方法は、糖化酵素をコードする遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれている形質転換植物の少なくとも1種を利用して行われる。葉緑体形質転換技術の利点としては、圧倒的な葉緑体DNAのコピー数(1細胞当たり最大10,000コピー)を背景とした導入遺伝子の大量発現が挙げられる。これにより、糖化酵素の発現量が、既存の糖化酵素発現植物よりも飛躍的に向上することが期待される。また、葉緑体形質転換技術では、発現させた糖化酵素は葉緑体内に局在化され、葉緑体内に基質となるセルロースが存在しないため、形質転換植物の生育に悪影響を与えることなく、目的の糖化酵素の高発現が可能になる。更に、葉緑体DNAは母性遺伝するため、花粉を介した導入遺伝子の環境中への飛散(遺伝子汚染)のリスクがない、等の利点もある。当該形質転換植物は、外来遺伝子(糖化酵素をコードする遺伝子)が葉緑体DNAに導入されているため、花粉を通じた当該遺伝子の環境中へ飛散を抑制し、環境の遺伝子汚染を回避することができる。
【0020】
本発明で使用される糖化酵素としては、セルロースのD-グルコース間のβ-1,4-グリコシド結合を加水分解してグルコースやセロビオース等の還元糖を生成させ得るカルボヒドラーゼや、セルロース線維を取り囲むヘミセルロースやリグニン等の分解に関与する酵素が挙げられる。その種類については特に制限されないが、例えば、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、ラッカーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、ペクトリアーゼ、リパーゼ、エクスパンシン等が挙げられる。
【0021】
これらの糖化酵素の中でも、本発明では、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、及びβグルコシダーゼの中の少なくとも1種、好ましくは、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、及びβグルコシダーゼの4種を必須とすることが望ましい。更に、これらの糖化酵素と共に、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、ラッカーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、ペクトリアーゼ、リパーゼ、及びエクスパンシンの中の少なくとも1種、好ましくは、キシラナーゼ及びキシロシダーゼの2種を併用することが望ましい。とりわけ、本発明において、糖化酵素として、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ及びキシロシダーゼの6種を併用することが、効率的な糖化を行う上で特に有効である。
【0022】
糖化酵素の中でも、耐熱性を示すものは、高温条件下で糖化反応を行うことができるため、セルロースの溶解度の増加、反応速度の向上、反応系への細菌混入のリスクの低下等の利点もあり、本発明において好適に使用できる。また、耐熱性の糖化酵素を使用する場合、後述する分離工程を、糖化酵素以外の酵素を失活させる高温条件で行うことができ、当該分離工程で得られる液体画分において、糖化酵素が活性を保持した状態で回収することが可能になる。耐熱性の糖化酵素の由来としては、例えば、カルディセルロシルブター属(Caldicellulosiruptor)、サーモトガ属(Thermotoga)、クロストリジウム属(Clostridium)、パイロコッカス属(Pyrococcus)、アエロパイラム属(Aeropyrum)、サーモプラズマ属(Thermoplasma)、サーモプロテイウス属(Thermoproteus)、アシドサーマス属(Acidothermus)、サーモコッカス属(Thermococcus)、バチルス属(Bacillus)、シネココッカス属(Synechococcus)、サーマス属(Thermus)等の好熱性細菌が挙げられるが、好ましくはカルディセルロシルブター属(Caldicellulosiruptor)、サーモトガ属(Thermotoga)、クロストリジウム属(Clostridium)、バチルス属(Bacillus)、更に好ましくはカルディセルロシルブター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、特に好ましくはカルディセルロシルブター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)が挙げられる。
【0023】
本発明に使用される糖化酵素の内、グリコシドヒドロラーゼファミリー48に属する、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼI及びクロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼIは、大腸菌等の細菌を宿主にして組み換え酵素として発現させると、その大部分は不溶性となり、活性を保持した状態で発現できないことが知られているが、これらの遺伝子を植物の葉緑体内のDNAに組み込んで形質転換すると、活性を保持した可溶性タンパク質として大量発現が可能である。それ故、本発明において、グリコシドヒドロラーゼファミリー48に属する、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼI及びクロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼIを使用する場合、従来技術では実現できていなかった当該酵素の大量生産という観点からも利点がある。グリコシドヒドロラーゼファミリー48に属するセロビオヒドロラーゼIは、(α/α)バレルフォールド構造を有するものであり、グリコシドヒドロラーゼファミリーの分類はHenrissat, B., and A. Bairoch, Updating the sequence-based classification of glycosyl hydrolases. Biochem. J., 316, 695-696 (1996).及びウェブサイト「Carbohydrate-Active Enzymes」(URL:http://www.cazy.org/)に従う。
【0024】
本発明に使用される糖化酵素の好適な具体例として、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼI、クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼII、クロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼ、クロストリジウム・サーモセラム由来のβグルコシダーゼ、クロストリジウム・サーモセラム由来のキシラナーゼ、サーモトガ・マリティマ由来のキシロシダーゼ、クロストリジウム・サーモセラム由来のフェルラ酸エステラーゼ、クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼI、及びバチルス・ズブチリス由来のエクスパンシンが挙げられる。
【0025】
本発明において、一層効率的な糖化を行うために、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼI、クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼII、クロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼ、及びクロストリジウム・サーモセラム由来のβグルコシダーゼの4種の酵素を組み合わせて使用することが好ましく;とりわけ、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼI、クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼII、クロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼ、クロストリジウム・サーモセラム由来のβグルコシダーゼ、クロストリジウム・サーモセラム由来のキシラナーゼ、サーモトガ・マリティマ由来のキシロシダーゼの6種の酵素を組み合わせて使用することが好ましい。
【0026】
本発明に使用される糖化酵素の具体例として、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼI)、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼII)、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(クロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼ)、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(クロストリジウム・サーモセラム由来のβグルコシダーゼ)、配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(クロストリジウム・サーモセラム由来のキシラナーゼ)、配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(サーモトガ・マリティマ由来のキシロシダーゼ)、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(クロストリジウム・サーモセラム由来のフェルラ酸エステラーゼ)、配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼI)、及び配列番号9で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(バチルス・ズブチリス由来のエクスパンシンが例示される。 配列番号1−9で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、糖化酵素活性(好ましくは天然型のポリペプチドと実質的に同等の糖化酵素活性)を保持していることを限度として、アミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されていてもよい。配列番号1−9で示されるアミノ酸配列において、アミノ酸残基の欠失、置換及び/又は付加の数としては、1又は数個、或いは1〜20個、好ましくは1〜10個、更に好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個が例示される。
【0027】
また、上記糖化酵素は、他のタンパク質又はペプチドが融合した融合タンパクであってもよい。融合させる他のタンパク質又はペプチドについては、糖化酵素の葉緑体内での発現増強、糖化酵素の安定化等に寄与し得るものであれば特に制限されない。融合させる他のタンパク質又はペプチドの具体例として、黄色蛍光タンパク質(Venus)を葉緑体での発現に適した形に改変した改変黄色蛍光タンパク質(cpVnus)が挙げられる。当該改変黄色蛍光タンパク質(cpVnus)は、葉緑体内で糖化酵素の発現増強に有効であり、とりわけβ1,4-エンドグルカナーゼ(特にクロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼ)のN末端に融合させることにより、当該酵素の葉緑体内での発現を増強に有効である。当該改変黄色蛍光タンパク質(cpVnus)の具体例としては、配列番号10で示されるアミノ酸配列が例示される。また、改変黄色蛍光タンパク質(cpVnus)を融合させたクロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼの具体例としては、配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが例示される。配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、β1,4-エンドグルカナーゼ活性(好ましくは配列番号11のポリペプチドと実質的に同等の、β1,4-エンドグルカナーゼ活性)を保持していることを限度として、アミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加されていてもよい。アミノ酸残基の欠失、置換及び/又は付加の数としては、前記と同様である。
【0028】
糖化酵素をコードする遺伝子は、公知の手法により取得することができる。例えば、糖化酵素をコードする遺伝子は、当該遺伝子を保有している細菌のゲノムDNAを鋳型として、当該糖化酵素をコードする遺伝子の全長を増幅可能なように設計したプライマーを用いてPCR法により取得することができる。
【0029】
PCR法による糖化酵素をコードする遺伝子の増幅は、鋳型となるポリヌクレオチド、PCRバッファー、プライマーセット(フォワードプライマー及びリバースプライマー)、dNTP
mixture(デオキシヌクレオシド三リン酸の混合物)、及びDNAポリメラーゼを含む反応液中で、温度の上下のサイクルを繰り返すことによって実施される。フォワードプライマー及びリバースプライマーは、例えば、糖化酵素をコードする遺伝子の5’末端又はその周辺及び3’末端又はその周辺に位置する任意の約10〜50bpのヌクレオチド配列に基づき設計され、常法に従って合成される。増幅させる配列が開始コドンを含んでいない場合、開始コドンをin-frameで含むようにフォワードプライマーを設計するか、後述の発現ベクターにin-frameで開始コドンを導入しておく。PCRバッファーは、使用するDNAポリメラーゼ等に応じて適宜選択され、市販品を用いることができる。dNTP mixture及びDNAポリメラーゼについても、市販品を用いることができる。PCRの反応は、慣用的な手順に従うか又はDNAポリメラーゼの指示書に従って行うことができ、必要に応じて反応温度、反応時間、反応サイクル、反応組成等を適宜変更して実施することもできる。
【0030】
糖化酵素をコードする遺伝子として、具体的には、配列番号12で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号1で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、配列番号13で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号2で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、配列番号14で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号3で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、配列番号15で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号4で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、配列番号16で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号5で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、配列番号17で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号6で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、配列番号18で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号7で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、配列番号19で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号8で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)、及び配列番号20で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号9で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)が例示される。また、改変黄色蛍光タンパク質(cpVnus)を融合させたクロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼをコードする遺伝子として、具体的には、配列番号21で示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(配列番号11で示されるアミノ酸配列のポリペプチドをコード)が例示される。これらの遺伝子には、配列番号12−21で示される塩基配列を含むポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、糖化酵素活性(好ましくは天然型のポリペプチドと実質的に同等の糖化酵素活性)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用することもできる。ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、65℃で5×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)中でハイブリダイズさせ、更に0.1%のSDSを含有する0.5×SSC溶液で65℃で洗浄する条件を意味する。ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションの各操作は、「Molecular Cloning(Third
Edition)」(J. Sambrook & D. W.Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、通常、プローブとして使用するポリヌクレオチドの塩基配列と一定以上の相同性を有し、その相同性は、例えば70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。塩基配列の相同性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができる。具体的には、BLAST(J.Mol.Biol., 215, 403, 1990)やFASTA(Methods in Enzymology, 183, 63-69)等の解析ソフトを用いて計算される。
【0031】
本発明で使用される形質転換植物は、糖化酵素をコードする遺伝子を植物の葉緑体DNAに組み込むことにより作製される。具体的には、糖化酵素をコードする遺伝子を増幅させ、これを植物の葉緑体内で発現可能なベクターに組み込んだ後に、植物の葉緑体に形質転換することにより、形質転換植物が作製される。糖化酵素をコードする遺伝子の葉緑体DNAへの導入は、相同組み換えによって行うことが望ましい。
【0032】
形質転換に使用されるベクターは、葉緑体DNAに当該遺伝子を導入して、葉緑体内で糖化酵素を発現させ得る限り特に限定されない。
【0033】
形質転換に使用されるベクターに糖化酵素をコードする遺伝子を挿入するには、糖化酵素をコードする遺伝子の5’末端側に葉緑体内で機能するプロモーターを連結すればよい。葉緑体内で機能するプロモーターとしては、例えば、葉緑体psbA遺伝子、rrn16-rrn23オペロン、rbcL遺伝子、psbEFLJオペロン、psbDCオペロン、psbB-Hオペロン、accD遺伝子、atpB遺伝子等の葉緑体遺伝子由来のプロモーター;lacプロモーターなどの細菌由来の原核生物型プロモーター等が挙げられる。
【0034】
また、当該ベクターには、プロモーター及び糖化酵素をコードする遺伝子以外に、転写後調節に関わる塩基配列が含まれる。具体的には、翻訳開始制御に関わる配列として、psbA、rbcL、atpB、rps2、psbL、等の葉緑体遺伝子由来の5'-UTR や、T7 ファージ由来のgene10リーダー配列等が挙げられる。転写産物の安定化又は翻訳終結に関わる塩基配列としては、psbA、rbcL、petD、rps16等の葉緑体遺伝子由来の3'-UTRが挙げられる。また、葉緑体への遺伝子導入を確認するために、当該ベクターには、選択マーカー遺伝子の発現カセットが含まれていてもよい。選択マーカー遺伝子としては、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子、ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等の抗生物質耐性を与える遺伝子;セト酪酸合成酵素遺伝子等の除草剤耐性を与える遺伝子;ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等のメソトレキセート(MTX)耐性を与える遺伝子;GFP遺伝子等の蛍光を指標とした選択を可能にする遺伝子等が挙げられる。選択マーカー遺伝子の発現制御配列(プロモーター、転写後制御配列)としては、糖化酵素の発現に用いたものと同様のものが利用可能である。
【0035】
糖化酵素をコードする遺伝子を導入する葉緑体DNA中の領域は、葉緑体ゲノムに存在する遺伝子間領域であれば特に限定されるものではないが、好適な例として、trnIとtrnAの遺伝子間領域、trnVとrps12/7の遺伝子間領域、rbcLとaccDの遺伝子間領域、rps7とndhBの遺伝子間領域等が挙げられる。また、遺伝子導入領域に対する目的遺伝子の発現カセット及び選抜マーカーの方向は、発現効率等に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
糖化酵素をコードする遺伝子の葉緑体DNAへの導入は、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法等の公知の植物細胞の形質転換法により実施される。好適な形質転換法はパーティクルガン法である。
【0037】
パーティクルガンによる形質転換は、一定段階まで成長したこれらの植物の葉に対して行うことが望ましい。例えば、タバコに導入する場合は、播種後1ヶ月程度の葉(栄養生長期にある第5葉〜第9葉)に対して行うことが望ましい。
【0038】
パーティクルガン法により糖化酵素をコードする遺伝子を導入した植物の葉を5mm × 5mm程度に切り分け、導入された選抜マーカー遺伝子の種類に応じた適当な選抜用薬剤の存在下で、脱分化又はシュート再生が可能な培地で培養することで、形質転換体の選抜を行う。次いで、形質転換体の候補を、再分化用の培地に移すことによって発根を促し、植物体に再生することにより、形質転換植物が作製される。これらの形質転換植物の作製方法、脱分化、再分化は、公知の手法によって行うことができる。
【0039】
作製された形質転換植物の葉緑体DNAに糖化酵素をコードする遺伝子が組み込まれていることは、再生した植物体の葉から細胞内の全DNAを調製し、その全DNAから、PCR法又はサザン分析法等により、導入した糖化酵素をコードする遺伝子を検出することにより確認できる。また、作製された形質転換植物の葉緑体DNAに糖化酵素をコードする遺伝子が組み込まれていることは、形質転換植物の葉から可溶性タンパク質を抽出し、当該抽出液に導入した糖化酵素が含まれているか否かを測定することにより確認することもできる。
【0040】
本発明で使用される形質転換植物の宿主植物種類については、特に制限されないが、例えば、タバコ(Nicotiana tabacum);ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ペチュニア(Petunia)等のナス科植物(Solanaceae);イネ(Oryza sativa)等のイネ科植物(Poaceae);ダイズ(Glycine max)等のマメ科植物(Fabaceae);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.)等のアブラナ科植物(Brassicaceae);レタス(Lactuca sativa)等のキク科植物(Asteraceae);ニンジン(Daucus carota)等のセリ科植物(Apiaceae);ワタ(Gossypium spp.)等のアオイ科植物(Malvaceae);アオウキクサ(Spirodela perpusilla)等のウキクサ科植物(Lemnaceae);ポプラ(Populus alba)等のヤナギ科植物(Salicaceae);テンサイ(Beta vulgaris L.)等のアカザ科植物(Chenopodiaceae);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.)等のゼニゴケ科植物(Marchantiaceae);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)等のヒョウタンゴケ科植物(Funariaceae)等は、葉緑体形質転換が可能であり、世界的に作付面積の広い作物でもあることから、本発明において好適に使用される。
【0041】
(2)分離工程
本発明の糖化方法では、先ず、上記形質転換植物の少なくとも1種を抽出溶媒で抽出処理し、糖化酵素を含む液体画分と、セルロースを含む不溶性画分に分離する分離工程に供する。
【0042】
優れた効率で糖化を行うために、複数種の糖化酵素を後述する糖化工程で使用することが望ましく、利用する糖化酵素の組み合わせに対応するように、複数種の形質転換植物を当該分離工程に供することが望ましい。即ち、糖化酵素毎に形質転換植物を選択し、選択された複数種の形質転換植物が当該分離工程に供される。例えば、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、及びβグルコシダーゼの4種の糖化酵素を使用する場合には、これらの糖化酵素をコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物4種が、当該分離工程に供される。また、例えば、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ及びキシロシダーゼの6種の糖化酵素を使用する場合には、これらの糖化酵素をコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物6種が、当該分離工程に供される。本発明において使用される糖化酵素の組み合わせについては、前述の通りである。
【0043】
当該分離工程では、使用する複数種の形質転換植物を混合した状態で一つの分離工程を行うことが好ましいが、形質転換植物の種類毎に各々別個に分離工程を行ってもよい。
【0044】
当該分離工程に複数種の形質転換植物を供する場合、各形質転換植物の比率については、各形質転換植物が発現する糖化酵素の種類、糖化酵素の発現量等に応じて適宜設定される。例えば、当該分離工程において、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、及びβグルコシダーゼをコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物4種を使用する場合であれば、β1,4-エンドグルカナーゼ形質転換植物を10〜30重量%、セロビオヒドロラーゼI形質転換植物を20〜60重量%、セロビオヒドロラーゼII形質転換植物を1〜20重量%、及びβグルコシダーゼ形質転換植物を10〜30重量%の割合で当該分離工程に供すればよい。また、例えば、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ及びキシロシダーゼをコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物6種を使用する場合であれば、β1,4-エンドグルカナーゼ形質転換植物を10〜30重量%、セロビオヒドロラーゼI形質転換植物を20〜60重量%、セロビオヒドロラーゼII形質転換植物を1〜20重量%、βグルコシダーゼ形質転換植物を10〜30重量%、キシラナーゼ形質転換植物とキシロシダーゼ形質転換植物の合計量を1〜10重量%の割合で当該分離工程に供すればよい。
【0045】
当該分離工程に供される形質転換植物は、乾燥状態及び非乾燥状態のいずれであってもよい。乾燥状態の形質転換植物は、減量されており、運搬や保管に要するコストを低減できるので、工業的実施の上で有利になる。
【0046】
また、当該分離工程に供される形質転換植物は、葉部を含むことを限度として、全草又は全木、地上部、葉部のいずれであってもよいが、好ましくは葉部が挙げられる。また、当該分離工程に供される形質転換植物は、糖化酵素を効率的に抽出して液体画分に含有させるために、細切化や粉末化処理したものを使用することが望ましい。
【0047】
当該分離工程で使用される抽出溶媒は、形質転換植物の葉部で発現している糖化酵素を抽出可能であることを限度として、その組成については制限されないが、例えば、水、各種緩衝液、生理食塩水等が挙げられる。
【0048】
また、抽出溶媒のpHについては、糖化酵素を失活させない範囲であることを限度として制限されるものではないが、例えば3〜10、好ましくは4〜9、更に好ましくは5〜8が挙げられる。
【0049】
当該分離工程における抽出処理については、従来公知のタンパク質抽出手段により行うことができる。具体的には、当該抽出処理は、形質転換植物と抽出溶媒を混合し、通常1分以上、好ましくは2〜30分間、更に好ましくは3〜10分間、静置又は撹拌を行えばよい。また、抽出処理時の温度条件については、糖化酵素を失活させない範囲で適宜設定されるが、糖化酵素が耐熱性酵素である場合には、60℃以上に設定することにより、糖化酵素の活性を維持しつつ、宿主植物由来の酵素を失活させることができるので、宿主植物由来のプロテアーゼ等の作用により、糖化酵素が失活するのを防止でき、ひいては最終的な糖化率を向上せしめることが可能になる。
【0050】
当該抽出処理で使用される形質転換植物と抽出溶媒の量比としては、例えば、抽出処理に供される形質転換植物1重量部当たり、抽出溶媒を0.5〜200重量部、好ましくは1〜100重量部、更に好ましくは1〜20重量部となるように設定すればよい。
【0051】
斯くして抽出処理を行った後に、固液分離を行って液体画分と不溶性画分に分離する。液体画分には糖化酵素が含まれ、不溶性画分には形質転換植物に由来するセルロースが含まれる。固液分離は、ろ過や遠心分離等の公知の方法で行うことができる。
【0052】
当該分離工程で得られた液体画分は、そのまま後述する糖化工程に使用してもよく、また必要に応じて濃縮した後に後述する糖化工程に使用してもよい。また、当該分離工程で得られた不溶性画分は、そのまま後述する糖化工程に使用してもよいが、後述する糖化前処理工程に供し、不溶性画分に含まれるセルロースが糖化酵素による反応を受け易くなるように軟化処理しておくことが望ましい。
【0053】
(3)糖化前処理工程
糖化前処理工程では、不溶性画分を軟化させることにより、不溶性画分に含まれるセルロース、ヘミセルロース、及びリグニンの交絡を解いて、セルロースが糖化酵素による反応を受け易くする。
【0054】
不溶性画分を軟化させる処理としては、セルロースを覆っているリグニンやヘミセルロースの一部を剥離させ、糖化酵素がセルロースに接触させる頻度を向上させ得る処理であればよく、具体的には、アルカリ処理、酸処理、熱水処理、爆砕処理等が挙げられる。これらの軟化処理は、1種の処理を単独で実施してもよく、2種以上の処理を組み合わせて実施してもよい。
【0055】
アルカリ処理としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性物質でpHを12〜14に調整した水溶液中に、上記不溶性画分を浸漬させて、1〜30分間、80〜121℃で処理する方法が例示される。
【0056】
酸処理としては、具体的には、硫酸等の酸性物質でpHを0.5〜2に調整した水溶液中に、上記不溶性画分を浸漬させて、5〜30分間、100〜230℃で処理する方法が例示される。
【0057】
熱水処理としては、具体的には、100〜250℃の熱水中に、上記不溶性画分を浸漬させた状態で5〜30分間処理する方法が例示される。熱水処理は、必要に応じて加圧条件で行うこともできる。
【0058】
爆砕処理としては、具体的には、上記不溶性画分を、高温高圧処理後、瞬時に大気圧又はその付近の低温低圧条件下に放出する方法が例示される。
【0059】
上記軟化処理の中でも、アルカリ処理は、簡便且つ効率的に不溶性画分の軟化が行えるため、好適である。
【0060】
斯くして糖化前処理工程に供された不溶性画分は、必要に応じて、pH調整、洗浄、乾燥を行った後に、後述する糖化工程に使用される。
【0061】
(4)糖化工程
糖化工程では、上記液体画分と上記不溶性画分を混合し、セルロースを糖化させて還元糖を生成させる。即ち、糖化工程では、上記液体画分に含まれる糖化酵素を、上記不溶性画分に含まれるセルロースに作用させて、グルコース等の還元糖を生成させる。
【0062】
当該糖化工程は、具体的には、上記液体画分の全量又は一部と、上記液体画分の全量又は一部とを混合し、上記液体画分に含まれる糖化酵素が作用可能な条件でインキュベートすることにより行われる。上記液体画分と上記不溶性画分の混合比については、液体画分に含まれる糖化酵素の量や活性、不溶性画分に含まれるセルロースの量等に応じて適宜設定される。
【0063】
上記分離工程で形質転換植物の葉部を使用した場合、当該糖化工程において、形質転換植物の葉部以外の部位(例えば、茎部、根部、枝部等)についても、上記液体画分及び不溶性画分と共に混合して、葉部以外の部位のセルロースを糖化させてもよい。この場合、当該糖化工程に供する葉部以外の部位については、前述する糖化前処理工程に供しておくことが望ましい。
【0064】
また、上記液体画分と上記不溶性画分以外に、必要に応じて、糖化酵素を別途添加し、糖化効率を高めることもできる。
【0065】
更に、上記液体画分と上記不溶性画分以外に、必要に応じて、緩衝液、水、pH調整剤等を添加して、糖化が効率的に進行するように条件を調整することができる。
【0066】
当該糖化工程は、糖化酵素反応の開始時の上記不溶性画分の濃度が乾燥重量換算で0.1〜15重量%程度、上記液体画分に含まれる糖化酵素の総量の濃度が0.002〜1重量%程度に設定しておくことが望ましい。
【0067】
当該糖化工程において、糖化酵素を作用させる際のpH及び温度については、当該糖化酵素の作用可能なpH範囲や温度範囲に基づいて適宜設定される。また、当該糖化工程において、糖化酵素を作用させる時間については、糖化酵素の活性や量、セルロースの量、セルロースの糖化の進行状況等に応じて適宜設定すればよい。
【0068】
斯くして糖化工程を行うことにより、グルコース等の還元糖が生成される。本発明の糖化方法によって生成した還元糖は、アルコール産生微生物を用いたバイオエタノールの製造のための基質として好適に使用される。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0070】
実施例1:形質転換植物の作製
1.葉緑体形質転換用ベクターの作製法
葉緑体形質転換基本ベクター
(p16S-23S-aadA)の作成
本実験で用いた葉緑体形質転換用ベクターは、Plant Biotechnol J. (2003) 71-79に記載されているpLDApsbAHSAに類する、公知のベクターを基に設計した。まず、相同組み換えに必要な領域として、葉緑体rrn16-rrn23オペロンに相当するDNA断片を取得した。具体的には、タバコ(Nicotiana tabacum cv. Xanthii)から抽出した全DNAを鋳型として、プライマーセット(ADLF: CACTCTGCTGGGCCGACACTGACAC(配列番号22)、 ADLR: CACTAGCCGACCTTGACCCCTGTT(配列番号23))を用いてPCRを行い、タバコ葉緑体DNA の103,441-107,302(Gene Bank accession number Z00044)に相当するDNA断片を増幅した。これを、制限酵素PvuIIで処理したpBluescript II KS+に挿入し、p16S-23Sを得た。
【0071】
形質転換体の選抜に利用するスペクチノマイシン耐性遺伝子(aadA)の発現カセットは、pPrrn-G10L-Aから調整した。pPrrn-G10L-aadAでは、タバコ葉緑体rrn16-rrn23オペロンのプロモーター領域(102,553-102,728(GeneBank accession number Z00044))とT7バクテリオファージ由来の翻訳調節配列(gene10 Leader)により、aadA遺伝子(葉緑体形質転換ベクターpKH3(Plant Cell Physiol (2003) 44, 334-341)より取得)の発現がコントロールされる遺伝子カセットが、pBluescript II KS-のSacI-PstI間領域にクローニングされている。 pPrrn-G10L-aadAをSacIおよびXhoIで切断し、(Takara)DNA blunting Kitにより平滑末端化した後、Prrn:G10L:aadA発現カセットに相当するDNA断片を回収して、PvuII処理したp16S-23Sにクローニングした(p16S-23S-aadA)。p16S-23S-aadAでは、Prrn:G10L:aadA発現カセットが、タバコ葉緑体rrn16-rrn23オペロン中のtrnIとtrnAの遺伝子間領域(105,332位(Gene Bank accession number Z00044))に挿入されている。
【0072】
目的遺伝子発現のための基本カセット(pPA-TA(R))の作成
タバコ葉緑体psbA遺伝子の5’-非翻訳領域に相当するDNA断片(1811-1595(GeneBank accession number Z00044))がクローニングされたpMIK1を鋳型として、プライマーセット(Pst-PpsbA-Fd: CTGCAGCTAGCATATCGAAATTCTAATTTT(配列番号24)、Xba-PpsbA-Rv: TCTAGATGCATGCTCGAGCGGC(配列番号25))を用いてPCRを行い、psbA遺伝子の5’-非翻訳領域とそれに連なるマルチクローニングサイト(MCS)が含まれるDNA断片を増幅した。これを、pGEM-T vector(Promega)にクローニングし、pGEM-PpsbAを得た。また、タバコ葉緑体psbA遺伝子の3’-非翻訳領域に相当するDNA断片(535-142(GeneBank accession number Z00044))を、タバコの全DNAを鋳型として、プライマーセット (Xba-TpsbA-Fd: TCTAGAGGATCCTGGCCTAGTCTATAGGAG(配列番号26)、Sal-TpsbA-Rv: GTCGACCGAATATAGCTCTTCTTTCTTATT(配列番号27))を用いてPCRにより増幅し、得られたDNA断片をpGEM-T vectorにクローニングした(pGEM-TpsbA)。pGEM-TpsbAをNcoIで切断した後、klenow fragment(NEB)により平滑末端化して、ライゲーションした。これにより、pGEM-T上のNcoIサイトを欠損させた(pGEM-TpsbA-dNc)。 さらに、pGEM-PpsbAをPstIおよびXbaI処理することで、psbA遺伝子の5’-非翻訳領域及びそれに続くMCSを切り出し、同じ制限酵素の組み合わせで切断したpGEM-TpsbA-dNcに挿入した。これにより、psbA遺伝子の5’-非翻訳領域(PpsbA)、MCS、psbA遺伝子の3’-非翻訳領域(TpsbA)が連なる、発現用カセットが得られた(pPA-TA)。さらに、pPA-TAをSalIで切断し、得られた二本のDNA断片を再ライゲーションすることによって、pGEM-Tベクターに対するPpsbA-MCS-TpsbAの方向性が逆転した、pPA-TA(R)を得た。
【0073】
耐熱性糖化酵素発現ベクターの作成
個々の目的遺伝子の取得法については、後述する。目的遺伝子をコードするDNAの両端をNcoIとXbaIで切断し、同じ組み合わせの制限酵素により処理したpPA-TA(R)にクローニングした(pPA-geneX)。さらに、pPA-geneXを特異的な制限酵素(SalI等)で処理し、得られた発現カセット(PpsbA-geneX-TpsbA)を同じ酵素の組み合わせで切断したp16S-23S-aadAに挿入することで、目的の耐熱性酵素を葉緑体DNAに導入するための葉緑体形質転換用ベクター(pKATシリーズ)を構築した。当該葉緑体形質転換用ベクターの構造を図1に示す。
【0074】
(4)目的酵素遺伝子の取得
<改変黄色蛍光タンパク質(cpVnus)を融合させたクロストリジウム・サーモセラム由来のβ1,4-エンドグルカナーゼ(配列番号11のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Clostridium thermocellum ATCC27450 Cthe_2812
Clostridium thermocellum ATCC 27450のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(EGL-Fd1: CCATGGAATACAATTATGCAAAGGCGCTG(配列番号28)、EGL-Rv1: TCTAGAATTATCCATATACAATTTGCGTATCAGG(配列番号29))を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-EGLI)。pGEM-EGLIをNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-EGL1を得た。さらに、pPA-EGL1をSalI処理することで得られる発現カセットPpsbA-EGL1-TpsbAを、同じくSalIで切断したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT1Aを作出した。
第一試行の結果、pKAT1Aを導入した形質転換タバコ(KAT1A)における、目的のエンドグルカナーゼ(EGL1)の発現量は低レベルであった。そこで、発現を増強するための工夫として、エンドグルカナーゼを、葉緑体での大量発現が可能な黄色蛍光タンパク質(Venus)との融合タンパク質として発現させることを試みた。Venusは、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)の変異体の1種であるが、GFPよりも熱安定性が高いことが報告されている(Nature biotechnology (2002) 20, 87-90)。そこで、Venus遺伝子のコドンを葉緑体での発現に適した形に改変した人工遺伝子(cpVnus)を作成し、pGEM-Tベクターにクローニングした。これを、NcoIで処理することでcpVenus断片を回収し、同じくNcoIで切断したpPA-EGL1とライゲーションすることで、pPA-cpVenus-EGL1を得た。さらに、pPA-cpVenus-EGL1をSalI処理することで得られる発現カセットPpsbA-cpVenus-EGL1-TpsbAを、同じくSalIで切断したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT1Bを作出した。
【0075】
<クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼII(配列番号2のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Clostridium thermocellum ATCC 27450 Cthe_0412
Clostridium thermocellum ATCC 27450のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(Nco-CBHII-Fd1: CCATGGAAGACAAGTCTCCAAAGTTGCCGGATTA(配列番号30)、CBHII-Rv1: GGCTAGTCTAGAATTAACCATAAATAACCTCCGGTTCTTCTGGG(配列番号31))を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-CBHII)。pGEM-CBHIIをNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-CBHIIを得た。さらに、pPA-CBHIIをSalI処理することで得られる発現カセットPpsbA-CBHII-TpsbAを、同じくSalIで切断したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT3を作出した。
【0076】
<クロストリジウム・サーモセラム由来のβグルコシダーゼ(配列番号4のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Clostridium thermocellum ATCC 27450 Cthe_1256
Clostridium thermocellum ATCC 27450のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(BGL1-Fd1: CCATGGCGGTAGATATCAAGAAAATAATAA(配列番号32)、BGL1-Rv1: TCTAGAATTATTCCACGTTGTTTATTTTGTCAACC(配列番号33))を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-BGL1)。pGEM-BGL1をNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-BGL1を得た。さらに、pPA-BGL1をSalI処理することで得られる発現カセットPpsbA-BGL1-TpsbAを、同じくSalIで切断したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT4を作出した。
【0077】
<クロストリジウム・サーモセラム由来のキシラナーゼ(配列番号5のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Clostridium thermocellum ATCC 27450 Cthe_2972
Clostridium thermocellum ATCC 27450のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(Nco-XYN-Fd1: CCATGGTAGTAATTACGTCAAACCAGACGGGTACTCATG(配列番号34)、XYN1-M1-Rv: CCGTCTTTGAGGACCATAGTTCCGTTTCCG(配列番号35))を用いてPCRを行い、目的遺伝子のN-末端側に相当するDNA断片(XYN1-N)を得た。更に、プライマーセット(XYN1-M1-Fd: CGGAAACGGAACTATGGTCCTCAAAGACGG(配列番号36)XYN1-Rv1: GGCTAGTCTAGAATTAATTTACGCCATTCGAGTCGAATATGAAGTAGTCA(配列番号37))を用いてPCRを行い、目的遺伝子のC-末端側に相当するDNA断片(XYN1-C)を得た。
【0078】
XYN1-N及びXYN1-Cを混合し、プライマーセット(Nco-XYN-Fd1: CCATGGTAGTAATTACGTCAAACCAGACGGGTACTCATG(配列番号38)、XYN1-Rv1: GGCTAGTCTAGAATTAATTTACGCCATTCGAGTCGAATATGAAGTAGTCA(配列番号39))を用いてPCRを行い、目的遺伝子の全長に相当するDNA断片を増幅し、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-XYN1)。2段階のPCRにより目的遺伝子の全長を取得したのは、後のクローニング作業にとって不都合な、コーディング領域内のNcoI認識サイトに変異を加えるためである。pGEM-XYN1をNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-XYN1を得た。さらに、pPA-XYN1をSalI処理することで得られる発現カセットPpsbA-XYN1-TpsbAを、同じくSalIで切断したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT5を作出した。
【0079】
<クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼI (CelS)(配列番号8のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Clostridium thermocellum ATCC 27450 Cthe_2089
Clostridium thermocellum ATCC27450のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(CelS-Fd1: CCATGGGTCCTACAAAGGCACCTACAAAAG(配列番号40)、CelS-Rv1: TCTAGAATTAGTATAATTTAGTAGAAGGAGTACCAGGT(配列番号41))を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-CelS)。pGEM-CBHIIをNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-CelSを得た。さらに、pPA-CelSをSacI処理後平滑末端化し、さらにPstIで処理することによって得られる発現カセットPpsbA-CelS-TpsbAを、同じくSalIで切断後平滑末端化し、さらにPstIで切断したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT6を作出した。
【0080】
<クロストリジウム・サーモセラム由来のフェルラ酸エステラーゼ(配列番号7のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Clostridium thermocellum ATCC27450 Cthe_1963
Clostridium thermocellum ATCC 27450のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(FAE1-Fd1: CCATGGTCACAATAAGCAGTACATCAGCGGCATC(配列番号42)、FAE1-Rv1: TCTAGAATCAAACGCCAAAAGTGAACCAGTCTATG(配列番号43))を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-FAE1)。pGEM-FAE1をNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-FAE1を得た。さらに、pPA-FAE1をPstIおよびSalIで切断することで得られる発現カセットPpsbA-FAE1-TpsbAを、同じ組み合わせの制限酵素で処理したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT7を作出した。
【0081】
<サーモトガ・マリティマ由来のキシロシダーゼ(配列番号6のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Thermotoga maritime MSB8 TM_0076
Thermotoga maritima MSB8のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(TM76-Fd1: CCATGGAACTGTACAGGGATCCTTCGCAAC(配列番号44)、TM76-Rv1: TCTAGAATTATTCCACGTTGTTTATTTTGTCAACC(配列番号45))を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-XYL1)。pGEM-XYL1をNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-XYL1を得た。さらに、pPA-XYL1をSacI処理後、平滑末端化し、さらにPstIで切断することで得られる発現カセットPpsbA-XYL1-TpsbAを、同じくSalI処理後平滑末端化し、さらに、PstIで切断したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT9を作出した。
【0082】
<バチルス・ズブチリス由来のエクスパンシン(配列番号9のアミノ酸配列のポリペプチド)>
Bacillus subtilisのゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(BsEXP-Fd1: CCATGGCTTATGACGACCTGCATGAAGG(配列番号46)、BsEXP-Rv1: TCTAGAATTATTCAGGAAACTGAACATGGCCCGG(配列番号47)を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-EXP)。pGEM-EXPをNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-EXPを得た。さらに、pPA-EXPをPstIおよびSalIで切断することで得られる発現カセットPpsbA-EXP-TpsbAを、同じ組み合わせの制限酵素で処理したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT10を作出した。
【0083】
<カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼI CelA (GeneBank L32742.1)(配列番号1のアミノ酸配列のポリペプチド)>
由来生物およびORF: Caldicellulosiruptor saccharolyticus DSM 8903 CelA(GeneBank L32742.1)
Caldicellulosiruptor saccharolyticus DSM8903のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセット(CsCBH-Fd1: CCATGGAATATGGGCAGAGGTTTATGTGGTTGTG(配列番号48)、CsCBH-Rv1: TCTAGAATTATTGATTACCGAACAGAATTTCATATGTT(配列番号49))を用いてPCRを行い、得られたDNA断片を、pGEM-Tにクローニングした(pGEM-CBHI)。pGEM-CBHIをNcoI, XbaI切断して得られた目的遺伝子断片を、同様の制限酵素で切断したpPA-TA(R)に挿入し、pPA-CBHIを得た。さらに、pPA-CBHIをPstIおよびSalIで切断することで得られる発現カセットPpsbA-CBHI-TpsbAを、同じ組み合わせの制限酵素で処理したp16S-23S-aadAとライゲーションすることで、葉緑体形質転換用ベクターpKAT11を作出した。Caldicellulosiruptor saccharolyticus CelA中のCBHIドメイン(CD2)を大腸菌で発現させても酵素活性が検出されなかったことは、Appl Microbiol Biotechnol (1995) 43: 291-296に記載されている。
【0084】
2.葉緑体形質タバコの作製法
タバコの葉緑体形質転換は、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1993) 90, 913-917及びMethods in Molecular Biology vol.286: Transgenic Plants 111-137を参考にした。25℃、16時間明 (光照度:30 mmolm-2sec-1)/8時間暗の周期で、タバコ(Nicotiana tabacum cv. Xanthi)を3%ショ糖含有RM寒天培地(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1990) 87, 8526-8530)にて無菌的に生育させた。
【0085】
播種後1ヶ月程度の植物体から若い緑葉(長径4〜5cm程度)を切除し、パーティクルガン(BIO-RAD: PDS1000He)による遺伝子導入に供した。形質転換用ベクターを導入する粒子には、金粒子(0.6μm)を用いた。
【0086】
パーティクルガン処理後のタバコ葉を、25℃、暗所にて3日間インキュベーションした後、葉を切片化して、スペクチノマイシン(200mg/L)入りの3%ショ糖含有RMOP寒天培地に移した。その後、25℃、16時間明 (光照度:30 mmolm-2sec-1)/8時間暗の周期下で培養した。4〜6週でスペクチノマイシン耐性シュート(あるいはカルス)が得られた。
【0087】
スペクチノマイシン耐性シュート/カルスを、スペクチノマイシン(500mg/L)入りの3%ショ糖含有RMOP寒天培地に植え継ぎ、1ヶ月程度無菌培養した段階で一部組織を採取し、細胞内の全DNAを調整した。その全DNAを鋳型として特異的プライマーセットを用いてPCRを行うことによって、葉緑体DNAの所定の領域に目的遺伝子が導入されていることを確認した。
【0088】
目的遺伝子の導入が確認された形質転換体系統のシュートを、スペクチノマイシン(500mg/L)入りの3%ショ糖含有RM培地に移植することによって、発根及び植物体の増殖を促した。再生した植物体の緑葉から全DNAを調整し、サザンブロティングにより、遺伝子導入型葉緑体DNAの量(ホモプラズミシティー)を調べた。
【0089】
サザンブロティングの具体的な方法としては、得られた形質転換体について、1μgの細胞内全DNAを制限酵素XmnIで処理し、1%アガロース電気泳動で分離した後、ナイロンメンブレンHybond-N (GE Healthcare)へと転写した。プローブは、プライマーセット(ADL-2F: CCCCTTTTTTACGTCCCCATGTTCC(配列番号50)、ADL-2R: GCCTTTCCTCGTTTGAACCTCGCCC(配列番号51))を用い、PCR DIG Probe Synthesis Kit(Roche)により合成した。ハイブリダーゼションにはDIG Easy Hyb(Roche)を、シグナルの検出にはDIG Luminescent Detection Kit(Roche)を使用した。その結果を図2に示す。野生型タバコ(WT)では、2.3 Kbpのバンドが検出されるのに対し、各種形質転換タバコ(KATs)では、導入遺伝子の鎖長に応じて検出されるバンドの大きさが変化している。なお、クロストリジウム・サーモセラム由来のセロビオヒドロラーゼIIを葉緑体内に組み込んだタバコ(KAT3-1)とサーモトガ・マリティマ由来のキシロシダーゼを葉緑体内に組み込んだタバコ(KAT9-6)については、導入した糖化酵素遺伝子中にXmnIサイトが存在するため、2本のバンドが検出された。また、各形質転換体には、野生型タバコのゲノムに由来する2.3 Kbpのバンドが認められないことから、これらの形質転換体がホモプラズミック系統であることがであることが確認された。
【0090】
3.葉緑体形質転換タバコの表現型
上記で作製された形質転換植物は、いずれの糖化酵素を導入したものでも、3%ショ糖含有RM寒天培地で無菌的に生育させると、形質転換当代における顕著な生育異常は認められなかった。
【0091】
4.各形質転換体での酵素発現量の確認
3%ショ糖含有RM寒天培地で無菌的に生育させた各種形質転換植物(タバコ)から、長径4〜5cm程度(新鮮重量200〜400mg程度)の緑葉を収穫し、新鮮重量200 mgあたり1 mlのタンパク質抽出バッファー(50 mM Sodium acetate(pH6.0), 100 mM NaCl, 0.5 mM EDTA, 10% (V/V) glycerol, 2 mM PMSF)で粉砕した。粉砕には氷冷した乳鉢、乳棒を用いた。破砕液をサンプリングチューブに移し、20,000 g 、10分間、4℃にて遠心分離し、上清(TSP)を回収した。更に、上清(TSP)を60℃にて20分間インキュベ-ションした後、20,000g、5分間、4℃にて遠心分離した。得られた上清が目的酵素の簡易精製画分である(Heated)。これらのサンプルをSDS-PAGE(Mini-PROTEAN TGX Any-kD(Bio-RAD)に供し、CBB染色を行ったところ、各糖化酵素が検出された(図3参照)。
【0092】
5.植物の栽培
3%ショ糖含有RM寒天培地で無菌的に生育させ、高さ10〜15cmに達した各種形質転換植物(タバコ)を、バーミッキュライト入りのポットに移植し、25℃、16時間明 (光照度:50-100mmolm-2sec-1)/8時間暗の環境下で、500倍希釈したHyponex(株式会社ハイポネックスジャパン)を施肥しつつ栽培した。1ヶ月程度経過して、植物が50cm以上の高さに達したところで、緑葉をサンプリングした。
【0093】
又は、無菌的に前培養した各種形質転換植物(タバコ)を、1/2濃度のMurashige & Skoog(MS)液体培地(Physiol. Plant (1962) 15, 493-497)に移植し、25℃、16時間明(光照度:50 mmolm-2sec-1)/8時間暗の環境下で、水耕栽培した。土壌栽培の場合と同様、3週間〜1ヶ月程度経過して、植物が50cm以上の高さに生育したところで、緑葉をサンプリングした。
【0094】
斯くして得られた緑葉を後記する実施例2の実験に使用した。
【0095】
実施例2
上記実施例1で得られた形質転換植物(タバコ)の緑葉を使用して、当該緑葉中のセルロースの糖化実験を行った。
1.糖化酵素を含む液体画分とセルロースを含む不溶性画分の分離
形質転換植物(タバコ)の緑葉143.5g(β1,4-エンドグルカナーゼを導入したタバコ(KAT1B-3)の葉24.5g、セロビオヒドロラーゼIIを導入したタバコ(KAT3-1)の葉7.2g、βグルコシダーゼを導入したタバコ(KAT4-1)の葉33.2g、キシラナーゼを導入したタバコ(KAT5-4)の葉1.9g、キシロシダーゼを導入したタバコ(KAT9-6)の葉1.7g、セロビオヒドロラーゼIを導入したタバコ(KAT11-5)の葉75g)をドライアイスと共にブレンダーにより凍結・粉砕した。この粉砕物を290mlの50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.6)に懸濁し、氷上で20 分間緩やかに攪拌した後、遠心分離(25000 x g、20分)し、上清を粗抽出液、沈殿を不溶性画分として回収した。上清は60℃で20分間処理した後に、遠心分離(25000 x g、20分間)し、その上清は、酵素を含む液体画分として回収した。当該液体画分は0.22μmのメンブランフィルターでろ過し、4℃で保存した。当該液体画分中のタンパク質量をプロテインアッセイキット(BIO-RAD社)を用いて、BSAをスタンダードとして測定したところ、タンパク質量の総量は688mgであった。
【0096】
2.不溶性画分の糖化前処理
上記分離処理で得た不溶性画分を、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて600mlに定容し、撹拌することにより完全に懸濁した。懸濁液を121℃5分間のオートクレーブ処理した後、遠心分離(25000 x g、20分)した沈殿を回収した。沈殿に1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を600ml加え、再度懸濁した。得られた懸濁液を再度121℃5分間のオートクレーブ処理した後、遠心分離(25000 x g、20分)した沈殿を回収した。得られた沈殿を蒸留水に懸濁し、遠心分離(25000 x g、20分)した(蒸留水による洗浄)。蒸留水による洗浄を更に2回繰り返し、得られた沈殿(34 g)を糖化対象試料とした。得られた沈殿の一部を、60℃の乾燥器中で乾燥させ、乾燥前後の重量から、水分含量を測定したところ、93.1 %であった。また、得られた乾燥物について、下記の硫酸加水分解法によりグルコース、キシロースの含有率を測定したところ、グルコース48.6重量%、キシロース3.4重量%であった。
【0097】
<硫酸加水分解法>
前処理後の乾燥物約0.2 gを怦量し、72%硫酸を3 ml加え適宜撹拌しながら30℃で60分間インキュベートし、これに蒸留水84 mlを混合した後、121℃で60分間処理した。室温に冷却後、蒸留水で100 mlとし、炭酸カルシウム(粉末)を加え中和した。この溶液を遠心分離(20000 x g、10分間)した上清をHPLCで解析し、グルコース量及びキシロース量を測定した。また、標品としてグルコース、キシロースをそれぞれ約0.2 g怦量したものを同様に処理、測定し、回収率を算出した。前処理後の乾燥物での測定結果と得られた回収率から、前処理後の乾燥物中のグルコース、キシロースの含有率を測定した。
【0098】
回収率(%)=
{標品グルコース(又はキシロース)でのHPLCによる測定結果(mg/ml)
× 100}/グルコース(キシロース)の怦量値(mg)
グルコース含有率(%)=
HPLCでのグルコース濃度(mg/ml)/グルコースの回収率(%)
キシロース含有率(%)=
HPLCでのキシロース濃度(mg/ml)/キシロースの回収率(%)
【0099】
3.糖化
上記糖化前処理で得た沈殿を終濃度50mg/mlになるように、上記分離処理で得た液体画分と1 mMアジ化ナトリウムとを含む0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.6)に懸濁し、反応液(総量1ml)を調製した。液体画分は、反応液中のタンパク質量が0.02〜1mgになるように含有量を調整した。当該反応液を50℃で2日間反応を行い、上清中のグルコース、セロビオース、セロトリオース量、及びキシロース、キシロビオース、キシロトリオース量をHPLCで測定した。HPLCは、日立製D-2000 Elite糖分析システム(リン酸-フェニルヒドラジンポストカラム誘導体化法)を用い、カラムはSHODEX NH2P-50 4Eを用いた。
【0100】
下記の算出式に従って、基質(上記糖化前処理で得た沈殿)50 mg中に含まれるグルコース量及びキシロース量から、酵素反応によって遊離したグルコース、セロビオース、セロトリオース、キシロース、キシロビオース、キシロトリオースの回収率を算出し、糖化率とした。
【0101】
糖化率(グルコース:%)=糖化液上清のグルコース[1〜3量体量(mg/ml)]/
糖化試料量(50mg/ml)×固形分率(6.9%)×グルコース含有率(48.6%)
×100
糖化率(キシロース:%)=糖化液上清のキシロース[1〜3量体量(mg/ml)]/
糖化試料量(50mg/ml)×固形分率(6.9%)xキシロース含有率(3.4%)
×100
総糖化率(%)=糖化液上清のグルコース[1〜3量体量(mg/ml)]+キシロース
[1〜3量体量(mg/ml)]/50mg中に含まれるグルコース、キシロ
ースの総量(mg)×100
【0102】
また、陽性コントロールとして、上記分離処理で得た液体画分の代わりに0.2 mg(タンパク質量)の糖化酵素製剤GC220(genencor社製)を加えた以外は上記と同条件で、反応・測定を行った。
【0103】
4.結果
得られた結果を図4に示す。この結果から、上記分離処理で得た液体画分の添加量に依存して、タバコ葉に含まれるセルロースの糖化率が向上しており、特にタンパク質量1
mgに相当する量の液体画分を使用した場合には、総糖化率が50%を超えており、より一層効率的な還元糖の生成が可能になることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含有することを特徴とする、植物系セルロースの糖化方法:
糖化酵素をコードする遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれている形質転換植物の少なくとも1種を抽出溶媒で抽出処理し、糖化酵素を含む液体画分と、セルロースを含む不溶性画分に分離する分離工程、及び
前記液体画分と前記不溶性画分を混合し、セルロースを糖化させて還元糖を生成させる糖化工程。
【請求項2】
前記分離工程に供される形質転換植物として、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、及びβグルコシダーゼをコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物4種を少なくとも含む、請求項1に記載の糖化方法。
【請求項3】
前記分離工程に供される形質転換植物として、更に、キシラナーゼ、及びキシロシダーゼをコードする遺伝子がそれぞれ導入されている形質転換植物2種を含む、請求項2に記載の糖化方法。
【請求項4】
前記セロビオヒドロラーゼIが、グリコシドヒドロラーゼファミリー48に属する、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼIである、請求項2に記載の糖化方法。
【請求項5】
前記分離工程後且つ前記糖化工程前に、前記分離工程で得られた不溶性画分を軟化させる糖化前処理工程を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の糖化方法。
【請求項6】
前記糖化前処理において、不溶性画分の軟化が、アルカリ処理、酸処理、熱水処理、及び爆砕処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理により行われる、請求項5に記載の糖化方法。
【請求項7】
形質転換植物がタバコである、請求項1乃至6のいずれかに記載の糖化方法。

【請求項8】
糖化酵素をコードする遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれていることを特徴とする、形質転換植物。
【請求項9】
前記糖化酵素が、β1,4-エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ、及びキシロシダーゼよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の形質転換植物。
【請求項10】
前記糖化酵素が、グリコシドヒドロラーゼファミリー48に属する、カルディセルロシルブター・サッカロリティカス由来のセロビオヒドロラーゼIである、請求項8又は9に記載の形質転換植物。
【請求項11】
植物がタバコである、請求項8乃至10のいずれかに記載の形質転換植物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147712(P2012−147712A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8045(P2011−8045)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(509349141)京都府公立大学法人 (19)
【出願人】(505057738)株式会社耐熱性酵素研究所 (10)
【Fターム(参考)】