説明

糖含有ハイドロゲルにおけるオリゴヌクレオチド及びタンパク質の固定化

【解決手段】 センサー応用のためにオリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、抗原、抗体、多糖、或いは他の生体分子を固定化するための高度に多孔性で水性の支持体物質としての糖含有ハイドロゲルの使用。異常に大きいサイズの相互連結した孔は、大きな標的分子が、前記ゲルへ或いはゲルを素早く通過し、固定化生体分子へ結合することを可能にする。糖含有ハイドロゲルの付加的な利点は、それらの著しく低い標識化標的分子の非特異的吸収であり、これは低いバックグラウンドレベルを提供するものである。従来技術のハイドロゲルは、このタイプの均一な相互連結したマクロ多孔度を有しておらず、大きな標的分子はそれらを素早く拡散できない。さらには、それらはほぼ毎回、標的化標識分子の非特異的吸収を経験し、センサー応用におけるそれらの有用性を制限する。本発明は、オリゴヌクレオチド及びペプチドに共有結合した官能性化学基を有する、糖ポリアクリル酸ハイドロゲルを調合する方法を提供する。糖アクリル酸モノマー及びジアクリル酸架橋剤を有する、アクリル酸末端化オリゴヌクレオチドを共重合する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な固体基質、一般的にはガラス上でのデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、タンパク質、抗原、及び他の生体分子の固定化は、アレイ−ベースバイオアッセイの基礎を提供する。そのような技術の例としては、臨床診断、薬剤送達、及び病原体検出用のハイブリダイゼーションアッセイにおけるDNAプローブのパターニング、及びタンパク質及び抗原の配列化を含む。
【背景技術】
【0002】
ガラス基質へのオリゴマー付着のための多くの戦略が開発されている。一本鎖DNA(ssDNA)プローブは、フォトリソグラフィーを用いて表面上に共通して合成され(Pease et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1994,91,5022〜5026)、静電気的に前記基質へ吸収される(Schena et al,Science 1995,270,467〜470)、若しくは自己組織化単層へ共有結合で接着される(Chrisey et al,Nucleic Acid Res.1996,24,3031〜3039;Zammatteo et al,AnalBiochem.2000,280,143〜150)。
【0003】
病原体検出においてマイクロアレイを使用することの主要な制限は、プローブDNAが前記基質表面に限局する場合に観察される低シグナルレベルである。代替としては、3次元ハイドロゲルにおける固定化ssDNAであり、これはより高い密度と感受性を可能にする(Timofeev et al,Nucleic Acid Res.1996,24,3142〜3149)。米国特許番号第5,981,734号において、アリル置換化オリゴヌクレオチドの共重合、或いは修飾オリゴヌクレオチドと共有結合で連結され得る機能基の取り込みを通じた、ポリアクリルアミドゲルにおけるオリゴヌクレオチドなどの生体分子の固定化の方法が記載されている。米国特許番号第6,180,770号において、末端重合可能アクリルアミドで誘導体化したオリゴヌクレオチドを調製する方法が記載されている。これらのモノマーは次に、アクリルアミドハイドロゲルへ共重合化され、共有結合したssDNAを含有する重合性層を産生することができる。この技術は、Apogent Discoveriesにライセンスされ、商業的に利用可能である。
【0004】
従来のハイドロゲルは、多くの制限に悩まされている。一般的に、約95重量%以上の水分含有量を得ることは難しい。これは、ゲルの細かいメッシュサイズのためであり、大きな高分子或いは粒子の拡散を制限する。例えば、約200ヌクレオチド以上の長さを有する標的ssDNAは、標準5%ポリアクリルアミドゲルを透過することができない(Guschin et al,Anal.Biochem.1997,250,203〜211)。このネットワークはしばしば不均一であり、前記モノマーは毒性(例えばアクリルアミド)となり得る。この開示において記載された重合体ハイドロゲル、例えば単量体糖アクリル酸或いはメタクリル酸に基づいた重合体ハイドロゲルは、上述した欠点を起こさない。酵素的アクリロイル化は、高い位置選択性を有するモノマーを形成する簡単な方法を提供する(Martin et al,Macromolecules,1992,25,7081〜7085)。これらのハイドロゲルは、約95%の平衡水分含有量を有し、500nm以上の孔サイズを生じる(Martin et al,Biomaterials,1998,19,69〜76)。米国特許番号第5,854,030号において、前記モノマーの化学酵素合成及びその後のハイドロゲル形成のための方法論が提供される。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0005】
本発明は、ポリマー糖含有ハイドロゲル、及びヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、及び他の生体分子の固定のための3次元高度マクロ多孔性基質としてのそれらの使用について詳細に述べるものである。これらのハイドロゲルは、重合可能な二重結合を含む化合物から形成される。そのような化合物の例としては、これに限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド及びメタクリルアミドを含む。糖化合物は、ヘキソース、ペントース、四炭糖或いはトリオース、若しくは単糖、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−、或いはデカサッカライドである。グリコシドが使用される場合、それらは、アルファ或いはベータアグリコン結合を含む。前記ハイドロゲルは、マトリックスを通じた生体分子接着のための活性化された機能基を有する支持体を提供する。前記糖含有ハイドロゲルの高多孔度は、大きな(直径2ミクロンまで)分子或いは粒子の素早い拡散を可能にする。これは、長いDNA配列(例えば、100,000ヌクレオチド塩基以上)及び大きな抗体、機能的マイクロビーズ、さらには超高感度光学検出器に対する従来のフルオロフォアの代替物として現在検討されている半導体及び金属ナノ粒子を含む。前記ハイドロゲルマトリックスの更なる利点は、その高度に低い標識化生体分子標的の非特異的吸収、及び分子接着に利用可能である多くの反応部位である。多量のゲルを通じた固定化プローブの高密度は、同様に誘導されたフラット固体基質に対してより優れた検出感受性を導く。
【0006】
生体分子を前記糖含有ハイドロゲルへ取り込むための3つの方法が開示される。全ての方法は、前記3次元ゲルマトリックスへの前記生体分子の共有結合を生じる。第1の場合において、末端アクリジンユニットを有するオリゴヌクレオチドは、糖アクリル酸或いは糖メタクリル酸モノマーなどの重合可能な二重結合、及びアクリル酸バックボーンへ直接的な共有結合を提供する、少なくとも2つの重合可能な二重結合を有する架橋剤を有する糖化合物で重合化される。
【0007】
第2の場合において、糖アクリル酸或いは糖メタクリル酸モノマーなどの重合可能な二重結合を有する糖化合物は、少なくとも2つの重合可能な二重結合、及び重合可能な二重結合とオリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、或いは他の生体分子の共有接着を可能にするように選択された基とを有する第3の化合物を有する架橋剤で重合化される。前記架橋剤及び第3の化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、或いはメタクリルアミド部位を含む。1つの例において、アミノ基は、モノマーとしてN−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドを用いることによって前記ゲルへ導入される。多くの戦略が、前記ゲルポリマーへの生体分子アミノ基を接着するために利用可能である。アルデヒド末端化オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、或いは他の生体分子は、還元剤の存在下でアミンと反応し、共有結合を形成する。リン酸化或いはカルボキシル化オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、或いは他の生体分子は、EDCなどの化合物によって仲介されるカルボジアミン縮合を用いてアミノ基へと共有結合され得る。アミノ末端化オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、或いは他の生体分子は、ジイソチオシアネート、或いはビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸(BS)などのホモ二官能性(機能性)架橋剤を用いて共役され得る。第3の場合において、カルボキシル基は、ターモノマー(termonomer)としてN−(3−カルボキシルプロピル)メタクリルアミドを導入することによって前記ゲルへ導入される。アミノ末端化オリゴヌクレオチドは、カルボジイミド縮合を通じてカルボキシル基へ共有結合され得る。最後の例において、アルデヒド基は、ターモノマーとしてN−(5,6−ジ−O−イソプロピリデン)ヘキシルアルクルアミドを用いることによって前記ゲルへ導入される。アルデヒドは次に、酢酸を用いてイソプロピリデン保護基を除去することによって産生される(Timofeev et al,1996)。アミノ化オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、或いは他の生体分子は、次に、アルデヒド基と反応され、共有結合を形成する。本発明において記載されたゲルは、少なくとも90重量%の水分含有量を有し、好ましい実施形態においては、94重量%以上の水分含有量を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実験結果
ガラクトースアクリル酸モノマーであり、RはCHである、6−アクリロイル−β−O−メチルガラクトピラノシド(1)は、Martinら(1992)の手順を用いて化学酵素的に調合される。シュードモナスセパシア菌からのリパーゼは、無水ピリジンにおけるβ−O−メチルガラクトピラノシドの6−ヒドロキシ部位で位置選択的なアクリロイル化を触媒し、モノアクリル酸を提供する。前記アクリル酸(1)は、α及びβアノマーとして存在し、そのどちらか或いは両方は、本発明の糖ヒドロゲルを作成するために使用される。
【0009】
【化1】

【0010】
構造(1)及び本発明において使用された全ての糖アクリル酸或いは糖メタクリル酸において、Rは、好ましくはメチル基であり、R〜Rは、好ましくはH或いはOHである。糖アクリル酸に対しては、RはHであり、糖メタクリル酸に対しては、Rはメチルである。しかしながら、Rは、限定されることなく、H、アルキル、芳香族、糖、及びアクリルやアクリルアミドでもありえる。R〜Rは、H或いはOHに加えて、イソプロピル、アルキル、芳香族である。本発明の範囲から逸脱することなしに、R、R、及びRに対して他の基を選択できることが理解されるべきである。本発明の糖化合物(1)は、モノ、ジ、或いは多糖である。
【0011】
本発明において記載されたゲルの1つの有力な一般化ポリマー構造は、図1に示されている。これにおいて、選択された糖アクリル酸或いはメタクリル酸(1)は、少なくとも2つの重合可能な二重結合を有し、重合可能な二重結合、及びオリゴヌクレオチド及び/若しくはタンパク質と共有結合を形成することができるアミノ基、カルボキシル基、あるいは他の基を有する第3の化合物多機能ビス架橋剤で重合化される。架橋化合物は、ビス−アクリルアミド、ビス−アクリル酸、及びビス−ビニル化合物(図2)から選択される。前記第3の化合物は、前記糖ハイドロゲルポリマーが形成された場合、前記第3の化合物のアミノ基或いはカルボキシル基が、カップリング剤との反応のためにポリマーバックボーン上に反応部位を提供するように選択され(図3)、これによってオリゴヌクレオチド、及び目的のタンパク質や他の生体分子の共有結合を可能になる。目的の化合物との前記ポリマー反応部位の共有結合は、目的の標的分子に対するアッセイの基礎を提供する。
【0012】
糖アクリル酸でのアクリジンNDAの共重合
それらの5’末端に直接連結されたアクリル酸基を有するオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologiesから購入した。サンプルは、以下の手順を用いて、メタクリル酸基で官能性化(機能化)されたガラススライド上に調合した。ガラススライドは、硫酸の後、塩酸/メタノール混合物における浸漬によって浄化し、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MTPTS)の4%(v/v)溶液(93mLメタノール、2.7mL水、0.3mL氷酢酸、4mLのシラン)で、60℃、1時間処理した。次に前記スライドは、メタノール、水、及びメタノールで再びすすいだ。前記スライドは、120℃で5分間焼いた。スライドは、活性の損失なしに、何週間かデシケーターに貯蔵した。
【0013】
ガラクトースアクリル酸(1)は、モノマー濃度の3〜4%(w/w)で架橋剤N,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド、及びビス−アクリルアミド濃度の0.1〜1モル%の濃度でアクリジンDNAと共に、脱イオン化水に20〜40%(w/v)の濃度で溶解した。この手順は、1mL合成に対して少ないnmolのDNAを用いる。重合化は、ポリ(アクリルアミド)ゲルマトリックスの形成には共通している、フリーラジカル重合化を介して達成される。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)及び過硫酸ナトリウムは、重合化を開始するために使用される。この図式は、以下に記載した。
【0014】
【化2】

【0015】
本発明者らはこの技術を、5’末端上にアクリル酸基、及び3’末端上にフルオロフォア(Cy3)を有する20塩基を含むオリゴヌクレオチドに適用した。図2は、固定化DNAの蛍光強度(丸)を示している。強度は、繰り返しの洗浄では変化せず、これはDNAが共有結合的に固定化されたことを示している。一方、非アクリル酸化DNAを用いた場合(四角)、蛍光強度は、2回洗浄後、バックグラウンドレベル(菱形)まで減少する。これは、非常に低い糖アクリル酸ゲルへの標的分子の非特異的吸収が存在することを示している。これは、超高感度検出に必要な低バックグラウンドレベルを提供する。
【0016】
アミノ−修飾糖アクリル酸ハイドロゲルの形成
薄いハイドロゲル(〜100ミクロン厚)は、上述の手順を通じてアクリル基によって官能性化されたガラススライド上に形成した。ガラクトースアクリル酸(1)は、モノマー濃度の3〜4%(w/w)でのN,Nメチレンビス−アクリルアミド架橋剤、及び糖アクリル酸モノマー濃度の4〜5%(w/w)でのN−(3−アミノプロピル)メタクリルアミドと共に、脱イオン化した水に濃度20〜40%(w/v)で溶解した。重合化は、イニシエーターTEMED及び過硫酸ナトリウムを用いて、フリーラジカル重合化を介して達成された。
【0017】
糖アクリル酸ゲルの多孔度を検討するために、本発明者らは、未修飾糖アクリル酸ハイドロゲルを通過する蛍光標識されたビーズの受動性拡散を測定した。図3は、0.25MのPBSにおいて膨張したポリ(6−アクリロイル−β−O−メチルガラクトピラノシド)ハイドロゲルを通過するFITC−標識化2ミクロン直径ポリスチレンビーズの拡散を示している。前記ゲルは、94重量%水溶液含有量を有している。曲線適合(curve fit)は、t=∞において384,000以下のビーズがゲルから受取チェンバーへ通過したことを示している。定位置にゲルがない実験を行った場合、平衡で2,110,000以下のビーズが前記受取チェンバーへ通過した。従って、ゲルに入った3.84/21.1或いは18%以下のビーズは、実際それを通って完全に通過し、残りの82%は、捕獲され、これは、大きな孔は相互連結され、ゲル容積を通過する2ミクロン球の有意な拡散が可能であることを示している。前記ゲルは、以前に記載された最初の合成条件(Martin,1998)を用いて、孔サイズが直径0.1ミクロン〜直径0.6ミクロンの範囲となるように調合され、本明細書で記載された合成条件を用いることによって、直径2ミクロン以上の孔サイズが明らかに達成され得る。
【0018】
アミノ糖ゲルへのオリゴヌクレオチドの連結
前記ゲルへ連結されたアミノ部位は、反応性n−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS−エステル)を含む水溶性ホモ二官能性架橋剤であるビス(スルホスクシンイミジル)スベラート(BS)を用いて、アミノ化されたオリゴヌクレオチド断片へ接着することによって活性化される。前記架橋剤は、酸性条件下(10mMリン酸ナトリウム、pH6.0)において、2.5mMのBS濃度で、前記ゲルへ添加し、1時間反応させ、安定性共有アミド結合を形成させた。これは、前記ゲルのバックボーン上にアミノ反応基を生成する。全体の図式は、以下に説明した。
【0019】
【化3】

【0020】
アミノ末端化DNAは次に、BioChip非接触マイクロ分注システムを用いて、スポット−ワイズ(spot‐wise)を活性化ゲルへ添加した。マイクロアレイは、スポット直径が300μmで、素子間距離が500μmを導くオリゴヌクレオチドのアレイ(900pL/スポット)を表示した。オリゴヌクレオチドの濃度は、6.25μM〜100μMであった。DNAは、活性化基質と12時間反応させた。前記ゲルは次に、4Xクエン酸ナトリウム生理食塩緩衝液(0.60M NaCl、60mMクエン酸ナトリウム)で4回すすぎ、未接着DNA断片を除去した。本発明者らは、3’末端にアミノ基を、5’末端にフルオロフォア(Cy3)を有する24ベースを含むオリゴヌクレオチドにこの技術を適用した。次に結果生じたアレイを、従来の蛍光アレイリーダーを用いて視覚化させた。以下の図4は、この方法で作成された10x5アレイの写真を示しており、ここにおいて列はDNAの一連の希釈度である。各列は、列間で2倍希釈(最上列=100μM、第2の列=50μM、第3の列=25μM、第4の列=12.5μM、最下列=6.25μM)を有する10スポットの反復を含んでいる。これらのアレイは、同じ架橋手順を用いてフラットアミノシラン基質上へスポットされた同濃度と比較して、約100倍明るく見えることに留意する。
【0021】
カルボキシル化修飾した糖アクリル酸ハイドロゲル
薄いハイドロゲル(〜100ミクロン厚)は、上述した手順を用いてアクリル酸基官能性化されたガラススライド上に形成した。ガラクトースアクリル酸(1)は、モノマー濃度の3〜4%(w/w)での架橋N,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド、及び糖アクリル酸モノマー濃度の4〜5%(w/w)での2−アクリルアミドヒドロキシアセチル酸と共に、脱イオン化された水において20〜40%(w/v)の濃度で溶解した。重合化手順は、アミノ修飾ハイドロゲルの場合と同じである。
【0022】
カルボキシ糖ゲルへのオリゴヌクレオチドの連結
5μモルの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド−HCl(EDC)は、pH7.2〜7.4でアミノ末端化オリゴヌクレオチド溶液へ添加した。DNA/EDC溶液は次に、非接触マイクロ分注システムを用いて、スポット−ワイズにゲルへ添加した。DNAは、室温で12時間ゲルと反応させた。次に前記ゲルは、4Xクエン酸ナトリウム生理食塩緩衝液で3回すすぎ、未接着DNA断片を除去した。本発明者らは、上述した同じアミノ修飾オリゴヌクレオチドへこの技術を適用した。本発明者らは、25μMから始まる一連の希釈度でこれらのオリゴをカルボキシル化修飾したゲル上へ配列した。図5は、DNAの固定化は生じているが、蛍光強度はBS架橋剤を用いて観察されたものより低いことを示している。この場合において、本発明者らは1/4の密度で開始しているため、ここの最上列は、上の第3の列と比較されるべきであることは留意されるものである。
【0023】
アミノ糖ゲルへのタンパク質の連結
アミノ官能性化糖アクリル酸は、上述した手順を用いて、BSで活性化した。10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)において調製されたタンパク質であるブドウ球菌エントロトキシンB(SEB)は、NHS−エステルゲル支持体と反応させた。タンパク質のリジン部位との前記エステルの反応は、前記ゲル基質への最終的なアミド結合を提供した。
【0024】
カルボキシ糖ゲルへのタンパク質の連結
カルボキシ−官能性化糖アクリル酸は、上述したようなカルボジイミド化学を用いて活性化した。10mMリン酸ナトリウム(pH7.4)において調製されたタンパク質であるCy3−標識化ブドウ球菌エントロトキシンB(SEB)は、EDCの存在下で、カルボン酸部位と反応させた。タンパク質の第一級アミンとのカルボン酸基の反応は、タンパク質とゲル基質との間に安定な共有アミド結合を提供する。前記SEB溶液(濃度範囲は0.1μg/mL〜200μg/mL)は、BioChipマイクロアレイを用いて前記修飾ゲルの上へ15の反復で置いた。各プリント成分は、300μmスポット直径、900pLプリント容積、及び500μm素子間距離を有していた。タンパク質修飾ゲルスライドは、PBS(pH7.4)、HOで簡単にすすぎ、乾燥し、4℃で保存した。以下の図6は、本発明者らがカルボキシル化糖アクリル酸ゲルを用いたCy5−標識化SEBの有意な固定化を得たことを示している。
【0025】
目的の生体分子をアッセイする方法は、既知である光学、蛍光、及び放射能手段及びその同等物を含み、これはアッセイのために選択された特異的な分子に依存するものである。
【0026】
上の記載は、本発明の好ましい実施形態である。様々な修正及び変更は、上述の教示の観点において可能である。従って、添付された請求項の範囲内で、本発明は具体的に記載されたもの以外の他の方法で実行されることが理解されるであろう。例えば冠詞"a"、"an"、"the"、或いは"said"などの単数において構成要素を主張するあらゆる参照は、前記構成要素を単数に限定するものとして解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明のこれら及び他の目的、特徴及び利点、更には本発明自体は、詳細な説明、添付された請求の範囲、及び付随する図面を参照することによって、より理解されるようになるものである。
【図1】図1は、本発明の糖含有ハイドロゲルの前記ポリマーネットワーク構成成分の1つの有力な一般化化学構造を示したものである。好ましい実施形態において、Rは、H、アルキル、或いはフェニルであり、R〜Rは、H、OH、O−フェニル、或いはO−メチルであり、Rは、H或いはメチルであり、Rは、OH、プロパン、1,3ジアミン、或いはアミノヒドロキシ酢酸であり、R10は、H或いはメチルである。Rは、アミン結合を介して共有結合している生体分子でもあり得る。この図において、繰り返し単位m、n、及びpは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、或いはメタクリルアミドモノマーから由来する残基である。
【図2】図2は、ポリマーネットワークを形成するために使用され得る、ビス−架橋剤を含有するいくつかの炭素−炭素二重結合の化学構造を示したものである。
【図3】図3は、アミン結合を介した、DNA、ペプチド、タンパク質、或いは他の生体分子を接着するために使用された2つの架橋剤の構造、BS(上)及びEDC(下)を示したものである。
【図4】図4は、ゲルポリマーネットワークにおけるカルボキシル化部位のEDC−仲介性活性化、及び後者の共有結合を生じる、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、或いは他の生体分子のアミノ基での前記活性化された部位の更なる反応を示した反応図である。
【図5】図5は、本発明の糖ヒドロゲルへの標的分子の微小非特異的結合が存在することを示したものである。
【図6】図6は、未修飾糖ポリ(アクリル酸)ヒドロゲルにおける蛍光性2−ミクロン直径ビーズの時間依存性移動を示したものである。白丸は実験データ、黒丸は拡散理論である。
【図7】図7は、5’末端をフルオロフォア(Cy3)で標識化されたアミノ末端化DNAと、支持体上の本発明の活性化アミノ糖ハイドロゲルとの反応を用いて形成されたマイクロアレイを示したものである。
【図8】図8は、支持体上のカルボキシル化修飾されたハイドロゲルとの反応後の、図4のDNAのマイクロアレイを示したものである。
【図9】図9は、カルボキシル化修飾された糖ハイドロゲルに連結したフルオロフォア標識化タンパク質のマイクロアレイを示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
糖を含有するハイドロゲルポリマーであって、前記ハイドロゲルは、重合可能な二重結合を有する糖化合物の重合化反応産物である、ハイドロゲルポリマーと、
2若しくはそれ以上の重合可能な二重結合を有する架橋剤と、
重合可能な二重結合、及びアミノ基或いはカルボキシル基から成る群から選択された基を有する第3の化合物と
を有する組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物において、
前記ポリマーは、図1の構造によって一般的に表されるものである。
【請求項3】
請求項1の組成物において、
前記架橋剤は、ビス−アクリルアミド、ビス−アクリル酸、或いはビス−ビニル化合物から成る群から選択されるものである。
【請求項4】
請求項1の組成物において、
前記第3の化合物は、アクリル−置換オリゴヌクレオチドである。
【請求項5】
請求項1の組成物において、
前記糖化合物は、(1)によって表されたような、糖アクリル酸或いはメタクリル酸から成る群から選択された糖である。
【請求項6】
請求項1の組成物において、
前記糖化合物は、アクリル−単糖、二糖、オリゴ糖、或いは多糖から成る群から選択されるものである。
【請求項7】
請求項1の組成物において、
前記糖化合物は、オリゴヒドロキシ化合物のアクリル酸誘導体である。
【請求項8】
請求項1の組成物において、
前記糖化合物は、6−アクリロイル−β−O−メチルガラクトピラノシドである。
【請求項9】
請求項1の組成物において、
前記糖化合物は、フラノース或いはピラノース糖から成る群から選択されるものである。
【請求項10】
請求項1の組成物において、
前記糖化合物は、α或いはβアノマーである。
【請求項11】
請求項5の組成物において、
前記糖アクリル酸(1)のRは、H、脂肪族、芳香族、脂環式、或いは糖から成る群から選択された置換基を有するものである。
【請求項12】
請求項1の組成物において、
前記ハイドロゲルポリマーは、少なくとも90%の水分含有量を有するものである。
【請求項13】
請求項1の組成物において、
前記ハイドロゲルポリマーは、0.1〜10μ或いはそれ以上の孔サイズを有するものである。
【請求項14】
請求項1の組成物において、
前記ハイドロゲルポリマーは、サイズで2ミクロンの分子の前記ハイドロゲルへの拡散を可能にする孔サイズを有するものである。
【請求項15】
請求項1の組成物において、
前記第3の化合物は、アクリル酸或いはメタクリル酸、アミド、或いはそれらの誘導体から成る群から選択されるものである。
【請求項16】
請求項1の組成物において、
前記第3の化合物は、図1のRがOH、アミノ、或いはアミノアルキルアミンである群から選択されるものである。
【請求項17】
請求項15の組成物において、
前記第3の化合物は、N−プロピルアミノ−アクリルアミド、或いはN−プロピルアミノ−メタクリルアミドから成る群から選択されるものである。
【請求項18】
請求項1の組成物において、
前記第3の化合物は、2−アクリルアミドヒドロキシアセチル酸である。
【請求項19】
組成物であって、
糖を含有するヒドロゲルポリマーであって、前記ヒドロゲルポリマーは、糖アクリル酸の重合化反応産物である、ヒドロゲルポリマーと、
ビス−アクリルアミド架橋剤と、
請求項17の群から選択されたアミノアクリルの第3の化合物と
を有する組成物。
【請求項20】
組成物であって、
糖を含有するハイドロゲルポリマーであって、前記ハイドロゲルは糖アクリル酸の重合化反応産物である、ハイドロゲルポリマーと、
ビス−アクリルアミド架橋剤と、
アクリルアミドグリコール酸と
を有する組成物。
【請求項21】
請求項1の組成物において、
前記ハイドロゲルポリマーは、前記ポリマーのバックボーン上にアミノ基を有するものである。
【請求項22】
請求項1の組成物において、
前記ハイドロゲルポリマーは、前記ポリマーの前記バックボーン上にカルボキシル基を有するものである。
【請求項23】
オリゴヌクレオチド、或いはタンパク質からなる群のメンバーと共に、請求項21の前記ポリマーの前記バックボーン上に前記アミノ基の反応産物を有する組成物。
【請求項24】
請求項23の組成物において、
前記オリゴヌクレオチドは、アミノ、アルデヒド、カルボキシル、或いはホスホロ基から成る群から選択された5’置換基を有するものである。
【請求項25】
請求項23の組成物において、
前記タンパク質は、CY−3標識ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)を有するものである。
【請求項26】
オリゴヌクレオチド、或いはタンパク質から成る群と共に、請求項22の前記ポリマーの前記バックボーン上に前記カルボキシル基の反応産物を有する組成物。
【請求項27】
生体分子をアッセイするための方法であって、
A.アクリル酸基で支持体を官能性化する工程と、
B.請求項1、18、或いは19の組成物から成る群から選択されたハイドロゲルポリマーと前記支持体の前記アクリル酸基とを反応させる工程であって、前記ハイドロゲルは、前記アクリル酸基を通じて前記ガラスプレートに連結しているものである、反応させる工程と、
C.前記生体分子と前記ハイドロゲルとの間に共有結合を形成するために、前記ハイドロゲルとアッセイされる前記生体分子とを反応させる工程と、
D.前記ハイドロゲルへ共有結合した前記生体分子をアッセイする工程と
を有する方法。
【請求項28】
請求項27の方法において、
前記生体分子は、DNA分子である。
【請求項29】
請求項28の方法において、
前記DNAは、100,000ヌクレオチド塩基ユニットまでを有するものである。
【請求項30】
請求項27の方法において、
前記生体分子は、タンパク質である。
【請求項31】
請求項27の方法において、
前記生体分子アッセイは、フルオロフォア基を有する生体分子に基づくものである。
【請求項32】
請求項27の方法において、
前記生体分子は、CY3−ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)である。
【請求項33】
請求項24の方法において、
前記生体分子アッセイは、一般に使用される蛍光、原子力、磁性、或いは光学方法に基づくものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−528778(P2006−528778A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521816(P2006−521816)
【出願日】平成16年5月20日(2004.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/016082
【国際公開番号】WO2005/017180
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(500238790)アメリカ合衆国 (13)
【Fターム(参考)】