説明

糖衣ソフトキャンディ及びその製造方法

【課題】ハード糖衣の心地よい噛み口で、心地よいチューイング性を有し、かつ生産性に優れた糖衣ソフトキャンディ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】センターであるソフトキャンディ部の表面がハードキャンディ部で被覆され、該ハードキャンディ部の表面がハード糖衣された3層構造の糖衣ソフトキャンディであって、各層がそれぞれ下記の生地を用いてなることを特徴とする糖衣ソフトキャンディ:(a)水分値が6.0〜9.0%であり、アラビアガムを0.5重量%以上かつゼラチンを0.5重量%以上含有するソフトキャンディ生地、(b)水分値が3.0〜6.0%であり、油脂を0.5〜5.0重量%含有し、ネイティブ型ジェランガムを0.05重量%以上含有するハードキャンディ生地、(c)糖類を主成分とするハード糖衣生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖衣ソフトキャンディ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、数多くのチューイング性をもった菓子類が発売されている。ガムやソフトキャンディ、キャラメル類がこれにあたる。中でもソフトキャンディは、チューイング性があり、子供から大人まで楽しめる菓子であり、ガムのようにゴミが出ないため現代ニーズにあった菓子とも言える。ソフトキャンディには大きく2つの課題点がある。温度変化によるべたつき、流れがないという良好な耐熱性と、歯つきがないという心地良いチューイング性である。前者は特に夏季等の高温多湿の環境下において販売すると、高水分であるがために耐熱性が弱く、軟化、変形、吸湿し包装紙に付着しやすかったりする問題がある。そこで、ソフトキャンディの耐熱性に関する様々な研究がなされてきた。ソフトキャンディ生地中にコラーゲンを含有させ耐熱性を有するソフトキャンディが提案されている(特許文献1)。しかしながら、包装紙は必ず必要となり、携帯性に優れているとはいえない。また、ソフトキャンディ生地中にプルラン及びカラギーナンを併用することで保存時の保形性を改善するばかりでなく歯つきも防止されるという提案がなされている(特許文献2)。しかしながら夏季等においてもべたつきが少なくなるがやはり前記同様、包装紙は必ず必要となる。一方で、歯つきがないという心地よいチューイング性に関する様々な研究もなされてきた。前記特許文献2のようなカラギーナンを含むものもあるが、pHやミネラル成分が共存するとソフトキャンディ生地の粘度が高くなってハンドリング等の影響が出るため、風味原料等の副原料が限定されるという問題点がある。分子量1万〜2万のガラクトマンナン分解物を含有する歯つき防止組成物を配合する方法(特許文献3)や、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、及びジグリセリンモノステアレートを含有させる方法(特許文献4)等歯付きに関しては研究がなされてきた。しかしながら、温度変化によるべたつき、流れがないという良好な耐熱性と、歯つきがないという心地良いチューイング性を高いレベルで両立させたものではなかった。
【0003】
そのような現代の状況より耐熱性とチューイング性を両立したものとして糖衣したチューイング性をもった菓子類が注目され、ガム市場においても糖衣ガムが定番化してきている。特に糖衣ソフトキャンディは、前述にあるように糖衣により変形、流れ等も少なく、携帯性に優れ、包装が簡便で食する際に手が汚れないといったメリットもあり現代の消費者ニーズにもっともこたえる菓子となっている。
【0004】
現在の糖衣ソフトキャンディの市場には、旧来からあるペルフェッティファンメレ社「メントス(登録商標)」が世界でも大きな市場を占めている。これはソフトキャンディをハードキャンディで包みさらにハード糖衣を施した商品であり、ソフトキャンディ部、ハードキャンディ部、ハード糖衣部の3層の構造であるが、ソフトキャンディの水分がハードキャンディに移行することでハードキャンディ部がソフトキャンディのような食感になることが特徴である。前記のように3層構造のソフトキャンディにおいて、ソフトキャンディからハードキャンディへの水分移行を調整する手法としては、静置する手法以外には知られていないのが現状であり、例えば、「メントス(登録商標)」の場合には、工場で約60日間寝かしているといわれている。また、このような手法では、ハードキャンディの水分移行状態を判定するのが難しいため、品質を安定に調整することも難しい。
【0005】
また、サンエス社「かむかむレモン(登録商標)」といった商品も日本市場では前記「メントス(登録商標)」に続くよく知られた糖衣ソフトキャンディ商品である。この商品は、ソフトキャンディ部とセミハード糖衣の2層構造であり、ソフトキャンディそのものをセミハード糖衣した商品である。しかし、ソフトキャンディは柔軟な物性を有することからソフトキャンディそのものをハード糖衣施すことは非常に困難であり、また、常温でハード糖衣できる物性は糖化傾向にあり、ソフトキャンディの特徴であるチューイング性が著しく損なわれてしまうため、セミハード糖衣で仕上げているのが現状である。この糖衣ソフトキャンディを食べると、噛み口がソフトであるが、ハード糖衣で仕上げた心地よい特有のパリッとした噛み口はない。また、直接ソフトキャンディにハード糖衣をすることも可能であるが、変形を考慮すると温度管理が難しく基本的には10℃〜15℃で行うことが望ましいとされている。この温度帯でのハード糖衣は水の蒸発もしにくく生産性が著しく低下する。
【0006】
一方、ソフトキャンディ部とハードキャンディ部の2層構造で、一定期間を経るとハードキャンディ部がソフトキャンディ部に変化するという提案がなされている(特許文献2)。特許文献2では、前記ハードキャンディ部にハード糖衣を行ってもよいと記されているが、ハードキャンディ部にアラビアガムが配合されているからか歯つきがある上、ハードキャンディ部のソフトキャンディ化に7日かかるとされており生産性に優れているとはいえない。
【0007】
このように、ハード糖衣の心地よい噛み口で、心地よいチューイング性を有し、かつ生産性に優れた糖衣ソフトキャンディがいまだに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2869324号公報
【特許文献2】特許第3929862号公報
【特許文献3】特許第3485781号公報
【特許文献4】特開2007−124937号公報
【特許文献5】特開平10−80246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ハード糖衣の心地よい噛み口で、心地よいチューイング性を有し、かつ生産性に優れた糖衣ソフトキャンディ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記(a)、(b)及び(c)の生地を用いて3層構造とし、ハード糖衣を行った後、さらに熱処理を行うことで、ハード糖衣のパリッとした心地よい噛み口で心地よいチューイング性を有した食感となり、かつ生産性に優れる糖衣ソフトキャンディとなることを見出した。
詳しくは、本発明は、
(1)ソフトキャンディ部をセンターとし、その表面がハードキャンディ部で被覆され、該ハードキャンディ部の表面がハード糖衣された3層構造の糖衣ソフトキャンディであって、各層がそれぞれ下記の生地を用いてなることを特徴とする糖衣ソフトキャンディ、
(a)水分値が6.0〜9.0%であり、アラビアガムを0.5重量%以上かつゼラチンを0.5重量%以上含有するソフトキャンディ生地。
(b)水分値が3.0〜6.0%であり、油脂を0.5〜5.0重慮%含有し、ネイティブ型ジェランガムを0.05重量%以上含有するハードキャンディ生地
(c)糖類を主成分とするハード糖衣生地
(2)ソフトキャンディ生地をハードキャンディ生地で被覆し、次いでハード糖衣生地で被覆した後、35℃〜45℃で熱処理を行うことを特徴とする前記(1)記載の糖衣ソフトキャンディの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の糖衣ソフトキャンディは、3層構造のうちソフトキャンディ部とハードキャンディ部に特定成分を配合することで、ハード糖衣によるカリッとしたクランチ性のある心地よい噛み口で、歯付きのない心地よいチューイング性を有する構成となる。
【0012】
具体的には、ハードキャンディ部にネイティブ型ジェランガムを含むため工程での成型性が改善され40℃〜70℃の幅広い温度帯でハンドリング可能となり生産性が向上する。また、ネイティブ型ジェランガムを含むハードキャンディ部は歯つきが少なくチューイング性が良好な食感である。
【0013】
また、ソフトキャンディ部にアラビアガム、ゼラチンを組み合わせて使用するため熱処理を行った後でもボソボソとした食感となることなく良好なチューイング性を示す。
【0014】
このように水分値を規定した特定成分を含むソフトキャンディ部、ハードキャンディ部と組み合わせ、更にハード糖衣を行うという3層構造にすることでハード糖衣の心地よい噛み口で、心地よいチューイング性を有する糖衣ソフトキャンディを完成させ、さらには、短期間の熱処理を行うことにより、従来の糖衣ソフトキャンディと比較すると飛躍的な生産性の向上も達成した。
【0015】
従来、ソフトキャンディ部、ハードキャンディ部、ハード糖衣部の三層構造で構成される「メントス(登録商標)」は約60日寝かさないとハードキャンディ部はソフトキャンディ化しないといわれているが、本発明ではハード糖衣後、35℃〜45℃の熱処理を行うことにより、24〜48時間程度でハードキャンディ部をソフトキャンディ化しており、生産性の飛躍的な向上を可能としている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を詳しく説明する。
本発明の糖衣ソフトキャンディは、ソフトキャンディ部をセンターとし、その表面がハードキャンディ部で被覆され、該ハードキャンディ部の表面がハード糖衣された3層構造の糖衣ソフトキャンディであって、3層構造のうちソフトキャンディ部とハードキャンディ部に特定成分を配合していることで、ハードキャンディ部がソフトキャンディの食感に変化し、ハード糖衣の心地よい噛み口で、心地よいチューイング性を有し、かつ生産性に優れた糖衣ソフトキャンディである。
【0017】
ソフトキャンディは、砂糖及び水飴を主成分とし、日本農林規格によれば水分値6%以上20%以下のものとソフトキャンディと定義しているが、本発明におけるソフトキャンディ部に用いるソフトキャンディ生地は水分値が6.0〜9.0%であり、砂糖及び水飴に加えて、アラビアガムを0.5重量%以上かつゼラチンを0.5重量%以上含有する。
【0018】
前記砂糖及び水飴としては、キャンディに使用されているものであればよく、特に限定はない。砂糖及び水飴の含有量は、ソフトキャンディ生地中において70.0〜93.0重量%であればよい。
【0019】
本発明におけるソフトキャンディ生地中のアラビアガムとは、アラビアゴムとも称され、主にマメ科アカシア属の樹木から採取することが出来る水溶性、低粘性の酸性へテロ多糖である。一般的には分子量2×105〜3×105程度であり、L−アラビノース、D−ガラクトース、D−グルクロンサン、L−ラムノース等から構成されている。このアラビアガムを水等の溶媒に溶解後、ろ過、殺菌等の処理を施し、乾燥したスプレードライ品等の加工品が市販されているのでこれらを使用しても良い。
アラビアガムの含有量は、ソフトキャンディ生地中において0.5重量%以上であり、好ましくは0.5〜2.5重量%である。前記含有量が0.5重量%未満であると熱処理後チューイング性を失ってぼそぼそとした食感となり、0.5重量%を超えると口どけ悪くなるという傾向がある。
【0020】
本発明におけるソフトキャンディ生地中のゼラチンとは、牛の骨や豚の皮のコラーゲン含有物と水を煮沸して不可逆的に水溶性に変化させた蛋白質である。ゼラチンの種類は、特に限定されるものではなく、市販の食用ゼラチン等であってもよい。上記ゼラチンには、コラーゲン含有物を酸で処理したものとアルカリで処理したものがあるが、本発明にはそのどちらも使用可能である。また、ゼラチンのブルーム強度は、100〜300ブルームのものを用いることが望ましい。この範囲から逸脱すると、ソフトキャンディの生地が硬い噛み心地になり、チューイング性の食感が得られにくい傾向にある。
ゼラチンの含有量は、ソフトキャンディ生地中において0.5重量%以上であり、好ましくは0.5〜5.0重量%である。前記含有量が0.5重量%未満であると熱処理後チューイング性を失ってぼそぼそとした食感となり、5.0重量%を超えると食感が硬くなるという傾向がある。
【0021】
本発明の糖衣ソフトキャンディにおいて心地のよいチューイング性が奏されるためには、ソフトキャンディ生地中に前記アラビアガムとゼラチンとを共に含有していることが必要である。
【0022】
また、ハードキャンディは、砂糖及び水飴を主成分とし、日本農林規格によれば水分値6%以下のものをハードキャンディと定義としているが、本発明におけるハードキャンディ部に用いるハードキャンディ生地は、水分値が3.0%〜6.0%であり、砂糖及び水飴に加えて、油脂を0.5〜5.0重量%含有し、ネイティブ型ジェランガムを0.05重量%以上含有する。
【0023】
前記砂糖及び水飴としては、キャンディに使用されているものであればよく、特に限定はない。前記砂糖及び水飴の含有量は、ハードキャンディ生地中において80.0〜96.5重量%であればよい。
【0024】
本発明における油脂は、乳脂、魚鯨油、ヤシ油、パーム脂、カカオ脂、ごま油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油及びオリーブ油その他動物性油脂ならびにこれらの硬化油脂が挙げられる。
油脂の含有量は、ハードキャンディ生地中において0.5〜5.0重量%であり、好ましくは2.0〜3.0重量%である。前記含有量が0.5重量%未満であると、熱処理後、歯付きをする食感となり、心地よいチューイング性が得られなくなる傾向があり、5.0重量%を超えるとチューイング性が持続しなくなるという傾向がある。
【0025】
本発明におけるハードキャンディ生地中のネイティブ型ジェランガムとは、スフィンゴモナス エロデア(Sphingomonas elodea)が産出する発酵多糖類であり、β−D−グルコース、β−D−グルクロン酸、β−グルコース、α−L−ラムノースの繰り返し構造をモノマーとし、モノマーの末端グルコースのC6位にアセチル基(置換度0.5)、及びC2位にはグリセリル基を有している。単にジェランガムという場合は、これらの官能基をアルカリ処理によって除去したものを指し、ネイティブ型ジェランガムと区別するために脱アシル化ジェランガムと呼ぶ場合がある。ネイティブ方ジェランガムは、食品工業の分野でデザートゼリーの基盤基剤及びドレッシング、ソース、ココア飲料等における不溶性固形分の分散安定化剤等として使用されている。
ネイティブ型ジェランガムの含有量は、ハードキャンディ生地中において0.05重量%以上であり、好ましくは0.05〜0.2重量%である。前記含有量が0.05重量%未満であるとチューイング性が乏しくなるという傾向があり、0.2重量%を超えるとハードキャンディの粘度が上がり作製時のハンドリングが困難となる傾向がある。
本発明の糖衣ソフトキャンディにおいて心地のよいチューイング性が奏されるためには、ハードキャンディ生地中にネイティブ型ジェランガムを含有することが必要である。
【0026】
本発明において、ハードキャンディ部は、ハードキャンディ生地を固形で本質的にアモルファスとしたものを作製し成型したものである。そして、前記ソフトキャンディをハードキャンディ生地で被覆し、更にハード糖衣した後に、熱処理することにより、ハードキャンディ部が柔軟性をもったソフトキャンディ様の生地となる。
【0027】
本発明におけるハード糖衣とは、前記ハードキャンディ生地の層の表面に糖質層の被覆を施すことであり、そのなかでも糖衣層の構成原料が結晶質であるものを言う。
このハード糖衣は、ソフト糖衣やセミハード糖衣と呼ばれるものに比べて、原料中に含まれている水が蒸発し、糖衣層を形成することで、軽いパリッとした食感となるものである。
【0028】
糖衣に使用するハード糖衣生地は、糖類を主成分とし、水で溶解したシロップとして使用される。糖類としては、砂糖、ぶどう糖、トレハロース等が用いられるが、中でも結晶質となりやすい糖質が好ましい。また、結晶障害が起こらないレベルでこれら糖類を組み合わせることも可能である。糖類のハード糖衣生地中の含有量としては、80〜100重量%が好ましい。また、ハード糖衣生地には、食感を阻害しない限り結合剤を使用することもできる。結合剤としては、アラビアガム、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、澱粉、ゼラチンが例示される。味調整として、酸味料、香料、果汁等も適宜添加することができる。定法に従って、表面をシェラック等の光沢剤を用いて艶出しを行ってもよい。
【0029】
また、ハード糖衣特有のパリッとした食感を損なわない範囲でハードキャンディ部の表層に、ハード糖衣する前の下地をつくるための下掛け層、染み出しを防ぐ等のバリア性を持たせたり、保形性を高めるためのプレコーティング層を設けても良い。
下掛け層は、前記糖類を主成分とするものであればよい。プレコーチィング層は、アラビアガム、澱粉、光沢剤を主成分とするものであればよい。
【0030】
なお、本発明の糖衣ソフトキャンディにおいて、各部の量としては特に限定はないが、ソフトキャンディ部20〜40重量%、ハードキャンディ部35〜55重量%、ハード糖衣部10〜30重量%であるのが好ましい。
【0031】
前記のような構成を有する本発明の糖衣ソフトキャンディの製造方法としては、前記ソフトキャンディ生地を前記ハードキャンディ生地で被覆し、次いで前記ハード糖衣生地で被覆した後、35℃〜45℃で熱処理を行うことを特徴とする。
【0032】
センターとなるソフトキャンディ生地は、常法に従って、所望の形状に成形させたものを使用する。
【0033】
成型したソフトキャンディ生地の表面をハードキャンディ生地で被覆する手法としては、手作業では、ソフトキャンディ生地を適当な長さのロープ状に伸ばし、ハードキャンディ生地で被覆し球断器で切断しスタンピングし成型する方法が挙げられる。また、2軸の口金を有する成型機を使用して成型することも可能である。内側の口金からソフトキャンディ生地を溶融して押し出し、同時に外側の口金からハードキャンディ生地を同じく融解して押し出す。内側にソフトキャンディ生地を有し、ハードキャンディ生地が外側を包んだロープ状生地を切断しキャンディの型に成型する方法等が挙げられる。
【0034】
次に、前記ハードキャンディ被覆物の表面を前記ハード糖衣生地で被覆する手法としては、例えば、レボーリングパン等の回転式の混合装置に前記ハードキャンディ被覆物を入れ、前記混合装置を作動させながらシロップ状のハード糖衣生地を掛け20〜50℃で乾燥し、これを繰り返す方法、ハード糖衣生地を掛ける前に一般的なソフト糖衣シロップを用い粉糖等使用し下掛けした後、ハード糖衣を行うこと等が挙げられる。
【0035】
次に、得られたハード糖衣物を35〜45℃で熱処理する。本発明では、この熱処理を施すことで、24時間〜48時間という短時間でハードキャンディ部をソフトキャンディ化することが可能になる。
熱処理の方法としては、前記の温度に調整した保温庫等の装置内にハード糖衣物を入れる方法、自動糖衣パンでハード糖衣する場合はハード糖衣が終了した後に前記の温度に保温しジョギング運転する方法等が挙げられる。
【0036】
熱処理後、常温にまで冷却することで本発明の糖衣ソフトキャンディが得られる。
【実施例】
【0037】
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。なお、以下の実施例の記載中、「部」は重量部、「%」は重量%を表す。
【0038】
(1)ソフトキャンディ生地の調製
砂糖44.7部、酸糖化水飴50.9部、植物油脂4.2部、乳化剤0.2部を真空クッカーで水分3%まで煮詰め生地飴を得た。ついで得た生地飴90.1部に予め1.4倍量の水で膨潤させておいたゼラチン(250ブルーム、以下同じ)1.1部、1倍量の水で膨潤させておいたアラビアガム(分子量2.5×105、以下同じ)5部を加圧ミキサーで混合した。フォンダン0.9部をニーダーで混和し、調味としてクエン酸2.7部、グレープフレーバー0.2部を添加し、水分値6.5%のソフトキャンディ生地を得た。また、生地中のゼラチンの含有量は0.5%であり、アラビアガムの含有量は2.5%である。
【0039】
(2)ハードキャンディ生地の調製
砂糖53.2部、酸糖化水飴43.5部、植物油脂2.7部、乳化剤0.4部、ネイティブ型ジェランガム0.1部を真空クッカーで水分3%まで煮詰め生地飴を得た。ついで先ほど得た生地飴98.1部に調味としてグレープ濃縮果汁0.2部、クエン酸1.6部、グレープフレーバー0.1部を添加し、水分値4.5%のハードキャンディ生地を得た。また、生地中のネイティブ型ジェランガムの含有量は0.1%である。
【0040】
(3)被覆工程
(1)で作製したソフトキャンディ生地を適当な長さのロープ状に伸ばし、(2)で作製したハードキャンディ生地で被覆し球断器で切断し平丸型のスタンピング成型を行った。ソフトキャンディ生地とハードキャンディ生地の重量比は4:6となるよう行い、単重2.4gであった。
【0041】
(4)下掛け層形成とハード糖衣
上記の(3)で得られた成型物240g(単重2.4g)をレボーリングパンに入れ、ソフト糖衣を行い、下掛け層を設けた。ソフト糖衣に使用するソフトシロップの組成は、砂糖75.0部、水22.5部、アラビアガム2.2部、グレープフレーバー0.5部であった。レボーリングパンを回転させながらソフトシロップを掛け1.5g掛け、粉糖6.0g掛けこれを2回繰り返し、得られたソフト糖衣生成物は、250g(単重2.5g)であった。次いで、ソフト糖衣生成物にハード糖衣を行った。ハード糖衣に使用するハードシロップの組成は、砂糖75.0部、水24.5部、フレーバー0.5部であった。レボーリングパンを回転させながらハードシロップを1回あたり1.5g掛け、乾燥をおこない、これを300g(単重3.0g)になるまで繰り返し行った。
【0042】
(5)熱処理
ハード糖衣された成型物を40℃の保温庫に入れ30時間熱処理を行った。
常温に戻して得られた糖衣ソフトキャンディは、ハード糖衣の心地よい噛み口で、心地よいチューイング性を有していた。なお、心地よい噛み口とは、カリッとしたクランチ性のある噛み口を示し、心地よいチューイング性とは歯付きのないチューイング性を示す。
【0043】
(比較例1)
実施例1の(2)ハードキャンディ生地の組成を砂糖53.2部、酸糖化水飴43.5部、植物油脂2.7部、乳化剤0.4部とし、そのほかは実施例1と同様にして糖衣ソフトキャンディを作製した。常温に戻して得られた糖衣ソフトキャンディは、ハードキャンディ部がバリバリとした食感となり、ハードキャンディ部がソフトキャンディ化されておらずチューイング性に乏しいものであった。
【0044】
(比較例2)
実施例1の(1)ソフトキャンディ生地の組成を以下のように変えて作製した。
実施例1と同様、砂糖44.7部、酸糖化水飴50.9部、植物油脂4.2部、乳化剤0.2部を真空クッカーで水分3%まで煮詰め生地飴を得た。得た生地飴90.6部に1倍量の水で膨潤させておいたアラビアガム5部、水分値を実施例1と同じようにするため0.6部の水を加え、加圧ミキサーで混合した。フォンダン0.9部をニーダーで混和し、調味としてクエン酸2.7部、グレープフレーバー0.2部を添加し、水分値6.5%のソフトキャンディ生地を得た。なお、生地中のアラビアガムの含有量は2.5%である。
【0045】
この生地を用いてソフトキャンディ部とし、その他は実施例1と同様に行った。常温に戻して得られた糖衣ソフトキャンディはソフトキャンディ部がボソボソとした食感となりチューイング性に乏しいものであった。
【0046】
(比較例3)
実施例1と同様、砂糖44.7部、酸糖化水飴50.9部、植物油脂4.2部、乳化剤0.2部を真空クッカーで水分3%まで煮詰め生地飴を得た。得た生地飴92.6部に予め1.4倍量の水で膨潤させておいたゼラチン1.1部、水分値を実施例と同じようにするため2.5部の水を加え、加圧ミキサーで混合した。フォンダン0.9部をニーダーで混和し、調味としてクエン酸2.7部、グレープフレーバー0.2部を添加し、水分値6.5%のソフトキャンディ部を得た。また、生地中のアラビアガムの含有量は2.5%である。
【0047】
この生地を用いてソフトキャンディ部とし、その他は実施例1と同様に行った。常温に戻して得られた糖衣ソフトキャンディはソフトキャンディ部がボソボソとした食感となりチューイング性に乏しいものであった。
【0048】
(比較例4〜8)
また、表1に示す組成とした以外は、実施例1と同様にして糖衣ソフトキャンディを得た。
【0049】
【表1】

【0050】
比較例4では、熱処理後のソフトキャンディ部がボソボソとした食感となり、チューイング性が乏しいものであった。
【0051】
比較例5では、熱処理後のソフトキャンディ部がボソボソとした食感となりチューイング性が乏しいものであった。
【0052】
比較例6では、熱処理後、ハードキャンディ部の柔軟性がなくなり、チューイング性に乏しいものであった。
【0053】
比較例7では、熱処理後のハードキャンディ部が歯つきする食感となり心地よいチューイング性が得られなかった。
【0054】
比較例8では、熱処理後、歯つきはしないが、噛んでいるとすぐになくなってしまい心地よいチューイング性が得られなかった。
【0055】
(比較例9)
30℃で48時間処理をする以外は、実施例1と同様にして糖衣ソフトキャンディを作製した。得られた糖衣ソフトキャンディはハードキャンディ部が柔軟性を持っていない上、歯つきがする食感となった。また、柔軟性を持つまでに7日間(168時間)がかかった。
【0056】
(比較例10)
50℃で熱処理をする以外は、実施例1と同様にして糖衣ソフトキャンディを作製しようとした。しかし、24時間もしないうちにハード糖衣層にヒビが入りハードキャンディ部が溶け出す等製品としての価値がなくなるといった現象が起こった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターであるソフトキャンディ部の表面がハードキャンディ部で被覆され、該ハードキャンディ部の表面がハード糖衣された3層構造の糖衣ソフトキャンディであって、各層がそれぞれ下記の生地を用いてなることを特徴とする糖衣ソフトキャンディ。
(a)水分値が6.0〜9.0%であり、アラビアガムを0.5重量%以上かつゼラチンを0.5重量%以上含有するソフトキャンディ生地
(b)水分値が3.0〜6.0%であり、油脂を0.5〜5.0重量%含有し、ネイティブ型ジェランガムを0.05重量%以上含有するハードキャンディ生地
(c)糖類を主成分とするハード糖衣生地
【請求項2】
ソフトキャンディ生地をハードキャンディ生地で被覆し、次いでハード糖衣生地で被覆した後、35℃〜45℃で熱処理を行うことを特徴とする請求項1記載の糖衣ソフトキャンディの製造方法。

【公開番号】特開2011−109999(P2011−109999A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271076(P2009−271076)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】