説明

糖鎖分析による膵臓がんの診断方法

【課題】本発明は、膵臓がんの新しい診断方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明者らは血清中糖鎖発現量の定量的発現プロファイルをもとに健康な状態と膵臓がんを持った状態とを比較解析して、膵臓がんを持つことに伴って変動する糖鎖を見出し、新たなバイオマーカーとなる血清糖鎖を提供した。すなわち、被験者において、以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48などの存在量等を測定することによって、上記課題が解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖分析を用いた膵臓がんの診断方法および関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓は、胃の裏側にある長さ20cm程度の細長い臓器で、頭部、体部、尾部から構成されている。膵臓の働きは外分泌と内分泌の二つに分けられる。そのうち外分泌は、トリプシン(タンパク質を分解)、アミラーゼ(澱粉を分解)、リパーゼ(脂肪を分解)などの消化酵素を含む膵液を分泌する働きを有し、膵液は膵臓の中を網目のように走る膵管に分泌された後、主膵管に集まり、総胆管と合流して十二指腸へと流出する。他方、内分泌は膵臓のランゲルハンス島から血糖値を調整するホルモンとしてインシュリンやグルカゴンを作って、血液の中に分泌するもので、内分泌の働きは糖尿病と密接な関係がある。
【0003】
膵臓の疾患には、大きく分けて膵臓がんと膵炎とがあり、膵炎は急性膵炎と慢性膵炎に分類される。膵臓がんは、近年日本人の死亡率が上昇してきているがんの一つである。膵臓がんの原因は明らかではないが、食生活の欧米化による動物性脂肪やタンパク質、アルコールなどの過剰摂取、或いは喫煙などがリスクファクターと言われている。その他に、慢性膵炎、膵石症、糖尿病、急性膵炎の既往のある人も膵臓がんの高危険群と考えられている。
【0004】
膵臓がんのうち、約95%は外分泌に関係した細胞、特に膵液が流れる膵管の細胞から発生し、これを特に膵管がんという。内分泌機能を営むランゲルハンス島等にできる膵内分泌腫瘍は膵全体の約5%を占める。
【0005】
膵臓がんの罹患率は60歳ころから増加して、高齢になるほど高くなる。国内で毎年22000人以上が膵臓がんで死亡している。死亡率の男女比は、男性が女性の約1.7倍と高い傾向を示し、罹患率の国際比較では日本は欧米諸国と同等であり、国際的に高いレベルにあるが、最も高いのはアメリカ黒人である。国内においては、北日本で死亡率が高い傾向にある。罹患数と死亡数はほぼ等しいことから、膵臓がん罹患者の生存率の低さを示している。膵臓は、胃や十二指腸、脾臓、小腸、大腸、肝臓、胆嚢など多くの臓器に囲まれているため、がんが発生しても発見することが困難である。また膵臓がんは、小さいうちから他の臓器に拡がったり、転移を起こしたりするという性質があるため、膵臓がんとわかった時点で手遅れであることが多い極めて難治性のがんである。
早期の段階の膵臓がんには特徴的な症状はほとんどない。がんの進行に伴い、体重の急激な減少や背中の痛み、腹部の腫れ、みぞおちの辺りの痛みが認められる。膵頭部がんの場合には胆管が詰まることによって白目や黄疸が認められることがある。また内分泌の制御ができなくなって糖尿病に罹患する場合もある。
【0006】
膵臓がんの検査に使用される血液検査として、血清アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1、CEA、CA19−9、Span−1、DUPAN−2、補体C3前駆体などがあり、また、腫瘍細胞に特異的に発現している遺伝子に基づいて、膵がんを検出可能な各種膵がん検出用マーカーが開発されている(例えば、特許文献1、2および3)。しかし、血液検査はがんが進行してから上昇することが多く、小さながんの発見にはほとんど役に立っていないのが実情である。
【0007】
画像診断では、スクリーニング検査として腹部超音波検査(体外式)が挙げられるが、2cm以下の早期がんを検出することは困難である。膵臓がんが疑われる場合には、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、超音波内視鏡(EUS)、血管造影などが行われる。
【特許文献1】特開2004−248585号公報
【特許文献2】特開2004−248575号公報
【特許文献3】特開2007−51880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、膵臓がんの早期診断は画像診断、血液検査ともに現段階では極めて困難であり、このことが膵臓がんの生存率の低さの要因となっている。膵臓がんでも早期に発見された場合には切除が可能になり、切除できない場合に比べて5年生存率が大幅に改善されることがわかっている。十分な特異性および感度を有した早期に膵臓がんを診断可能な診断技術が渇望されている。
【0009】
本発明の目的は、低侵襲性の血液検査によって、特異性および感度高く膵臓がんを検出する膵臓がんの検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、本発明において、被験者(とくに、その血液(たとえば、血清))における特定の糖鎖の存在量または特定の複数の糖鎖の存在比を測定することによって、十分な特異性および感度をもって、膵臓がん患者を検出することができることを見出したことによって解決された。
【0011】
したがって、本発明は、以下を提供する。
【0012】
(1)被験者において、以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在量、ならびに/または、以下の群:PC19とPC15との存在比、PC30とPC10との存在比、PC21とPC15との存在比、PC44とPC10との存在比、PC38とPC19との存在比、PC38とPC10との存在比、PC35とPC26との存在比、PC30とPC21との存在比、PC15とPC10との存在比、PC10とPC09との存在比、PC20とPC19との存在比、PC28とPC19との存在比、PC15とPC13との存在比、PC19とPC01との存在比、PC19とPC14との存在比、PC38とPC21との存在比、PC30とPC19との存在比、PC19とPC12との存在比、PC27とPC10との存在比、PC35とPC19との存在比、PC44とPC19との存在比、PC27とPC21との存在比、PC15とPC12との存在比、PC22とPC15との存在比、PC19とPC09との存在比、PC28とPC10との存在比、PC27とPC06との存在比、PC26とPC15との存在比、PC42とPC19との存在比、PC19とPC07との存在比、PC21とPC14との存在比、PC30とPC22との存在比、PC19とPC11との存在比、PC30とPC26との存在比、PC38とPC22との存在比、PC30とPC12との存在比、PC30とPC29との存在比、PC29とPC15との存在比、PC35とPC10との存在比、PC14とPC13との存在比、PC21とPC20との存在比、PC48とPC43との存在比、PC29とPC19との存在比、PC10とPC07との存在比、PC38とPC29との存在比、PC19とPC05との存在比、PC11とPC09との存在比、PC32とPC10との存在比、PC44とPC21との存在比、PC21とPC09との存在比、PC38とPC26との存在比、PC30とPC13との存在比、PC42とPC10との存在比、PC13とPC09との存在比、PC21とPC11との存在比、PC30とPC06との存在比、PC30とPC28との存在比、PC10とPC01との存在比、PC38とPC12との存在比、PC27とPC11との存在比、PC44とPC26との存在比、PC30とPC24との存在比、PC27とPC19との存在比、PC22とPC14との存在比、PC29とPC27との存在比、PC21とPC18との存在比、PC13とPC08との存在比、PC27とPC24との存在比、PC19とPC16との存在比、PC49とPC15との存在比、PC14とPC12との存在比、PC27とPC22との存在比、PC48とPC10との存在比、PC21とPC07との存在比、PC44とPC41との存在比、PC14とPC06との存在比、PC19とPC08との存在比、PC30とPC11との存在比、PC22とPC09との存在比、PC27とPC26との存在比、PC42とPC21との存在比、PC14とPC10との存在比、PC24とPC15との存在比、PC44とPC22との存在比、PC34とPC10との存在比、PC48とPC22との存在比、PC27とPC12との存在比、PC49とPC44との存在比、PC49とPC27との存在比、PC30とPC23との存在比、PC44とPC29との存在比、PC48とPC19との存在比、PC28とPC15との存在比、PC11とPC10との存在比、PC16とPC10との存在比、PC49とPC09との存在比、PC32とPC19との存在比、PC27とPC13との存在比、PC44とPC13との存在比、PC27とPC16との存在比、PC10とPC05との存在比、PC21とPC16との存在比、PC20とPC13との存在比、PC28とPC26との存在比、PC38とPC05との存在比、PC28とPC21との存在比、PC19とPC18との存在比、PC38とPC13との存在比、PC42とPC26との存在比、PC12とPC07との存在比、PC44とPC12との存在比、PC20とPC10との存在比、PC22とPC11との存在比、PC48とPC39との存在比、PC16とPC15との存在比、PC27とPC18との存在比、PC15とPC05との存在比、PC30とPC05との存在比、PC39とPC15との存在比、PC15とPC01との存在比、PC16とPC09との存在比、PC44とPC39との存在比、PC45とPC30との存在比、PC49とPC30との存在比、PC19とPC13との存在比、PC21とPC01との存在比、PC24とPC09との存在比、PC27とPC01との存在比、PC27とPC23との存在比、PC22とPC20との存在比、PC51とPC49との存在比、PC26とPC18との存在比、PC22とPC07との存在比、PC42とPC22との存在比、PC30とPC01との存在比、PC18とPC09との存在比、PC27とPC05との存在比、PC49とPC35との存在比、PC36とPC10との存在比、PC23とPC15との存在比、PC35とPC22との存在比、PC13とPC07との存在比、PC20とPC09との存在比、PC28とPC22との存在比、PC20とPC14との存在比、PC49とPC38との存在比、PC35とPC21との存在比、PC45とPC44との存在比、PC45とPC27との存在比、PC48とPC45との存在比、PC49とPC34との存在比、PC48とPC26との存在比、PC26とPC20との存在比、PC44とPC23との存在比、PC49とPC20との存在比、PC09とPC01との存在比、PC16とPC14との存在比、PC29とPC10との存在比、PC42とPC29との存在比、PC32とPC22との存在比、PC24とPC14との存在比、PC29とPC14との存在比、PC42とPC13との存在比、PC34とPC19との存在比、PC35とPC13との存在比、PC27とPC15との存在比、PC11とPC07との存在比、PC24とPC19との存在比、PC36とPC19との存在比、PC32とPC21との存在比、PC35とPC12との存在比、PC51とPC22との存在比、PC49とPC32との存在比、PC42とPC12との存在比、PC09とPC05との存在比、PC15とPC09との存在比、PC29とPC28との存在比、PC14とPC01との存在比、PC28とPC13との存在比、PC29とPC21との存在比、PC38とPC15との存在比、PC45とPC15との存在比、PC38とPC01との存在比、PC39とPC34との存在比、PC44とPC28との存在比、PC18とPC14との存在比およびPC28とPC12との存在比からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在比を測定する工程を包含する、該被験者の膵臓がんの診断方法。
(2)前記存在比は、前記糖鎖の存在量の強度比を指標とすることを特徴とする、項1に記載の膵臓がんの診断方法。
(3)前記測定は、前記被験者の血液を対象として行われることを特徴とする、項1〜2のいずれかに記載の膵臓がんの診断方法。
(4)前記測定は、前記被験者の血清を対象として行われることを特徴とする、項1〜3のいずれかに記載の膵臓がんの診断方法。
(5)前記測定は、血清中の糖鎖の存在量を指標とする項1〜4のいずれかに記載の膵臓がんの診断方法。
(6)前記被験者は、中高年(たとえば、40代〜60代)男性である、項1〜5のいずれかに記載の膵臓がんの診断方法。
(7)前記診断は、通常診断、予後診断および早期診断からなる群より選択される診断を含む、項1〜6のいずれかに記載の膵臓がんの診断方法。
(8)前記測定は、
A)グリコブロッティング(GlycoBlotting)法により、全N−結合型糖鎖を回収する工程;および
B)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)−飛行時間型(TOF)質量スペクトル(MS)法により定量的プロファイルを取得する工程
を包含する、項1〜7のいずれかに記載の膵臓がんの診断方法。
(9)被験者由来のサンプルにおいて、以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在量、ならびに/または、以下の群:PC19とPC15との存在比、PC30とPC10との存在比、PC21とPC15との存在比、PC44とPC10との存在比、PC38とPC19との存在比、PC38とPC10との存在比、PC35とPC26との存在比、PC30とPC21との存在比、PC15とPC10との存在比、PC10とPC09との存在比、PC20とPC19との存在比、PC28とPC19との存在比、PC15とPC13との存在比、PC19とPC01との存在比、PC19とPC14との存在比、PC38とPC21との存在比、PC30とPC19との存在比、PC19とPC12との存在比、PC27とPC10との存在比、PC35とPC19との存在比、PC44とPC19との存在比、PC27とPC21との存在比、PC15とPC12との存在比、PC22とPC15との存在比、PC19とPC09との存在比、PC28とPC10との存在比、PC27とPC06との存在比、PC26とPC15との存在比、PC42とPC19との存在比、PC19とPC07との存在比、PC21とPC14との存在比、PC30とPC22との存在比、PC19とPC11との存在比、PC30とPC26との存在比、PC38とPC22との存在比、PC30とPC12との存在比、PC30とPC29との存在比、PC29とPC15との存在比、PC35とPC10との存在比、PC14とPC13との存在比、PC21とPC20との存在比、PC48とPC43との存在比、PC29とPC19との存在比、PC10とPC07との存在比、PC38とPC29との存在比、PC19とPC05との存在比、PC11とPC09との存在比、PC32とPC10との存在比、PC44とPC21との存在比、PC21とPC09との存在比、PC38とPC26との存在比、PC30とPC13との存在比、PC42とPC10との存在比、PC13とPC09との存在比、PC21とPC11との存在比、PC30とPC06との存在比、PC30とPC28との存在比、PC10とPC01との存在比、PC38とPC12との存在比、PC27とPC11との存在比、PC44とPC26との存在比、PC30とPC24との存在比、PC27とPC19との存在比、PC22とPC14との存在比、PC29とPC27との存在比、PC21とPC18との存在比、PC13とPC08との存在比、PC27とPC24との存在比、PC19とPC16との存在比、PC49とPC15との存在比、PC14とPC12との存在比、PC27とPC22との存在比、PC48とPC10との存在比、PC21とPC07との存在比、PC44とPC41との存在比、PC14とPC06との存在比、PC19とPC08との存在比、PC30とPC11との存在比、PC22とPC09との存在比、PC27とPC26との存在比、PC42とPC21との存在比、PC14とPC10との存在比、PC24とPC15との存在比、PC44とPC22との存在比、PC34とPC10との存在比、PC48とPC22との存在比、PC27とPC12との存在比、PC49とPC44との存在比、PC49とPC27との存在比、PC30とPC23との存在比、PC44とPC29との存在比、PC48とPC19との存在比、PC28とPC15との存在比、PC11とPC10との存在比、PC16とPC10との存在比、PC49とPC09との存在比、PC32とPC19との存在比、PC27とPC13との存在比、PC44とPC13との存在比、PC27とPC16との存在比、PC10とPC05との存在比、PC21とPC16との存在比、PC20とPC13との存在比、PC28とPC26との存在比、PC38とPC05との存在比、PC28とPC21との存在比、PC19とPC18との存在比、PC38とPC13との存在比、PC42とPC26との存在比、PC12とPC07との存在比、PC44とPC12との存在比、PC20とPC10との存在比、PC22とPC11との存在比、PC48とPC39との存在比、PC16とPC15との存在比、PC27とPC18との存在比、PC15とPC05との存在比、PC30とPC05との存在比、PC39とPC15との存在比、PC15とPC01との存在比、PC16とPC09との存在比、PC44とPC39との存在比、PC45とPC30との存在比、PC49とPC30との存在比、PC19とPC13との存在比、PC21とPC01との存在比、PC24とPC09との存在比、PC27とPC01との存在比、PC27とPC23との存在比、PC22とPC20との存在比、PC51とPC49との存在比、PC26とPC18との存在比、PC22とPC07との存在比、PC42とPC22との存在比、PC30とPC01との存在比、PC18とPC09との存在比、PC27とPC05との存在比、PC49とPC35との存在比、PC36とPC10との存在比、PC23とPC15との存在比、PC35とPC22との存在比、PC13とPC07との存在比、PC20とPC09との存在比、PC28とPC22との存在比、PC20とPC14との存在比、PC49とPC38との存在比、PC35とPC21との存在比、PC45とPC44との存在比、PC45とPC27との存在比、PC48とPC45との存在比、PC49とPC34との存在比、PC48とPC26との存在比、PC26とPC20との存在比、PC44とPC23との存在比、PC49とPC20との存在比、PC09とPC01との存在比、PC16とPC14との存在比、PC29とPC10との存在比、PC42とPC29との存在比、PC32とPC22との存在比、PC24とPC14との存在比、PC29とPC14との存在比、PC42とPC13との存在比、PC34とPC19との存在比、PC35とPC13との存在比、PC27とPC15との存在比、PC11とPC07との存在比、PC24とPC19との存在比、PC36とPC19との存在比、PC32とPC21との存在比、PC35とPC12との存在比、PC51とPC22との存在比、PC49とPC32との存在比、PC42とPC12との存在比、PC09とPC05との存在比、PC15とPC09との存在比、PC29とPC28との存在比、PC14とPC01との存在比、PC28とPC13との存在比、PC29とPC21との存在比、PC38とPC15との存在比、PC45とPC15との存在比、PC38とPC01との存在比、PC39とPC34との存在比、PC44とPC28との存在比、PC18とPC14との存在比およびPC28とPC12との存在比からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在比を測定する工程を包含する、サンプルの選別方法。
(10)前記存在比は、前記糖鎖の存在量の強度比を指標とすることを特徴とする、項9に記載のサンプルの選別方法。
(11)前記測定は、前記被験者の血液を対象として行われることを特徴とする、項9〜10のいずれかに記載のサンプルの選別方法。
(12)前記測定は、前記被験者の血清を対象として行われることを特徴とする、項9〜11のいずれかに記載のサンプルの選別方法。
(13)前記測定は、血清中の糖鎖の存在量を指標とする項9〜12のいずれかに記載のサンプルの選別方法。
(14)前記被験者は、中高年(たとえば、40代〜60代)男性である、項9〜13のいずれかに記載の膵臓がんの診断方法。
(15)前記診断は、通常診断、予後診断および早期診断からなる群より選択される診断を含む、項9〜14のいずれかに記載のサンプルの選別方法。
(16)前記測定は、
A)グリコブロッティング(GlycoBlotting)法により、全N−結合型糖鎖を回収する工程;および
B)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)−飛行時間型(TOF)質量スペクトル(MS)法により定量的プロファイルを取得する工程
を包含する、項9〜15のいずれかに記載のサンプルの選別方法。
(17)以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48、ならびに/または、以下の群:PC19とPC15との存在比、PC30とPC10との存在比、PC21とPC15との存在比、PC44とPC10との存在比、PC38とPC19との存在比、PC38とPC10との存在比、PC35とPC26との存在比、PC30とPC21との存在比、PC15とPC10との存在比、PC10とPC09との存在比、PC20とPC19との存在比、PC28とPC19との存在比、PC15とPC13との存在比、PC19とPC01との存在比、PC19とPC14との存在比、PC38とPC21との存在比、PC30とPC19との存在比、PC19とPC12との存在比、PC27とPC10との存在比、PC35とPC19との存在比、PC44とPC19との存在比、PC27とPC21との存在比、PC15とPC12との存在比、PC22とPC15との存在比、PC19とPC09との存在比、PC28とPC10との存在比、PC27とPC06との存在比、PC26とPC15との存在比、PC42とPC19との存在比、PC19とPC07との存在比、PC21とPC14との存在比、PC30とPC22との存在比、PC19とPC11との存在比、PC30とPC26との存在比、PC38とPC22との存在比、PC30とPC12との存在比、PC30とPC29との存在比、PC29とPC15との存在比、PC35とPC10との存在比、PC14とPC13との存在比、PC21とPC20との存在比、PC48とPC43との存在比、PC29とPC19との存在比、PC10とPC07との存在比、PC38とPC29との存在比、PC19とPC05との存在比、PC11とPC09との存在比、PC32とPC10との存在比、PC44とPC21との存在比、PC21とPC09との存在比、PC38とPC26との存在比、PC30とPC13との存在比、PC42とPC10との存在比、PC13とPC09との存在比、PC21とPC11との存在比、PC30とPC06との存在比、PC30とPC28との存在比、PC10とPC01との存在比、PC38とPC12との存在比、PC27とPC11との存在比、PC44とPC26との存在比、PC30とPC24との存在比、PC27とPC19との存在比、PC22とPC14との存在比、PC29とPC27との存在比、PC21とPC18との存在比、PC13とPC08との存在比、PC27とPC24との存在比、PC19とPC16との存在比、PC49とPC15との存在比、PC14とPC12との存在比、PC27とPC22との存在比、PC48とPC10との存在比、PC21とPC07との存在比、PC44とPC41との存在比、PC14とPC06との存在比、PC19とPC08との存在比、PC30とPC11との存在比、PC22とPC09との存在比、PC27とPC26との存在比、PC42とPC21との存在比、PC14とPC10との存在比、PC24とPC15との存在比、PC44とPC22との存在比、PC34とPC10との存在比、PC48とPC22との存在比、PC27とPC12との存在比、PC49とPC44との存在比、PC49とPC27との存在比、PC30とPC23との存在比、PC44とPC29との存在比、PC48とPC19との存在比、PC28とPC15との存在比、PC11とPC10との存在比、PC16とPC10との存在比、PC49とPC09との存在比、PC32とPC19との存在比、PC27とPC13との存在比、PC44とPC13との存在比、PC27とPC16との存在比、PC10とPC05との存在比、PC21とPC16との存在比、PC20とPC13との存在比、PC28とPC26との存在比、PC38とPC05との存在比、PC28とPC21との存在比、PC19とPC18との存在比、PC38とPC13との存在比、PC42とPC26との存在比、PC12とPC07との存在比、PC44とPC12との存在比、PC20とPC10との存在比、PC22とPC11との存在比、PC48とPC39との存在比、PC16とPC15との存在比、PC27とPC18との存在比、PC15とPC05との存在比、PC30とPC05との存在比、PC39とPC15との存在比、PC15とPC01との存在比、PC16とPC09との存在比、PC44とPC39との存在比、PC45とPC30との存在比、PC49とPC30との存在比、PC19とPC13との存在比、PC21とPC01との存在比、PC24とPC09との存在比、PC27とPC01との存在比、PC27とPC23との存在比、PC22とPC20との存在比、PC51とPC49との存在比、PC26とPC18との存在比、PC22とPC07との存在比、PC42とPC22との存在比、PC30とPC01との存在比、PC18とPC09との存在比、PC27とPC05との存在比、PC49とPC35との存在比、PC36とPC10との存在比、PC23とPC15との存在比、PC35とPC22との存在比、PC13とPC07との存在比、PC20とPC09との存在比、PC28とPC22との存在比、PC20とPC14との存在比、PC49とPC38との存在比、PC35とPC21との存在比、PC45とPC44との存在比、PC45とPC27との存在比、PC48とPC45との存在比、PC49とPC34との存在比、PC48とPC26との存在比、PC26とPC20との存在比、PC44とPC23との存在比、PC49とPC20との存在比、PC09とPC01との存在比、PC16とPC14との存在比、PC29とPC10との存在比、PC42とPC29との存在比、PC32とPC22との存在比、PC24とPC14との存在比、PC29とPC14との存在比、PC42とPC13との存在比、PC34とPC19との存在比、PC35とPC13との存在比、PC27とPC15との存在比、PC11とPC07との存在比、PC24とPC19との存在比、PC36とPC19との存在比、PC32とPC21との存在比、PC35とPC12との存在比、PC51とPC22との存在比、PC49とPC32との存在比、PC42とPC12との存在比、PC09とPC05との存在比、PC15とPC09との存在比、PC29とPC28との存在比、PC14とPC01との存在比、PC28とPC13との存在比、PC29とPC21との存在比、PC38とPC15との存在比、PC45とPC15との存在比、PC38とPC01との存在比、PC39とPC34との存在比、PC44とPC28との存在比、PC18とPC14との存在比およびPC28とPC12との存在比からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在比の膵臓がんのマーカーとしての使用。
(18)前記存在比は、前記糖鎖の存在量の強度比を指標とすることを特徴とする、項17に記載の使用。
(19)前記測定は、前記被験者の血液を対象として行われることを特徴とする、項17〜18のいずれかに記載の使用。
(20)前記測定は、前記被験者の血清を対象として行われることを特徴とする、項17〜19のいずれかに記載の使用。
(21)前記測定は、血清中の糖鎖の存在量を指標とする項17〜20のいずれかに記載の使用。
(22)前記被験者は、中高年(たとえば、40代〜60代)男性である、項17〜21のいずれかに記載の使用。
(23)前記診断は、通常診断、予後診断および早期診断からなる群より選択される診断を含む、項17〜22のいずれかに記載の使用。
(24)前記測定は、
A)グリコブロッティング(GlycoBlotting)法により、全N−結合型糖鎖を回収する工程;および
B)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)−飛行時間型(TOF)質量スペクトル(MS)法により定量的プロファイルを取得する工程
を包含する、項17〜23のいずれかに記載の使用。
(25)
以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48、ならびに/または、以下の群:PC19とPC15との存在比、PC30とPC10との存在比、PC21とPC15との存在比、PC44とPC10との存在比、PC38とPC19との存在比、PC38とPC10との存在比、PC35とPC26との存在比、PC30とPC21との存在比、PC15とPC10との存在比、PC10とPC09との存在比、PC20とPC19との存在比、PC28とPC19との存在比、PC15とPC13との存在比、PC19とPC01との存在比、PC19とPC14との存在比、PC38とPC21との存在比、PC30とPC19との存在比、PC19とPC12との存在比、PC27とPC10との存在比、PC35とPC19との存在比、PC44とPC19との存在比、PC27とPC21との存在比、PC15とPC12との存在比、PC22とPC15との存在比、PC19とPC09との存在比、PC28とPC10との存在比、PC27とPC06との存在比、PC26とPC15との存在比、PC42とPC19との存在比、PC19とPC07との存在比、PC21とPC14との存在比、PC30とPC22との存在比、PC19とPC11との存在比、PC30とPC26との存在比、PC38とPC22との存在比、PC30とPC12との存在比、PC30とPC29との存在比、PC29とPC15との存在比、PC35とPC10との存在比、PC14とPC13との存在比、PC21とPC20との存在比、PC48とPC43との存在比、PC29とPC19との存在比、PC10とPC07との存在比、PC38とPC29との存在比、PC19とPC05との存在比、PC11とPC09との存在比、PC32とPC10との存在比、PC44とPC21との存在比、PC21とPC09との存在比、PC38とPC26との存在比、PC30とPC13との存在比、PC42とPC10との存在比、PC13とPC09との存在比、PC21とPC11との存在比、PC30とPC06との存在比、PC30とPC28との存在比、PC10とPC01との存在比、PC38とPC12との存在比、PC27とPC11との存在比、PC44とPC26との存在比、PC30とPC24との存在比、PC27とPC19との存在比、PC22とPC14との存在比、PC29とPC27との存在比、PC21とPC18との存在比、PC13とPC08との存在比、PC27とPC24との存在比、PC19とPC16との存在比、PC49とPC15との存在比、PC14とPC12との存在比、PC27とPC22との存在比、PC48とPC10との存在比、PC21とPC07との存在比、PC44とPC41との存在比、PC14とPC06との存在比、PC19とPC08との存在比、PC30とPC11との存在比、PC22とPC09との存在比、PC27とPC26との存在比、PC42とPC21との存在比、PC14とPC10との存在比、PC24とPC15との存在比、PC44とPC22との存在比、PC34とPC10との存在比、PC48とPC22との存在比、PC27とPC12との存在比、PC49とPC44との存在比、PC49とPC27との存在比、PC30とPC23との存在比、PC44とPC29との存在比、PC48とPC19との存在比、PC28とPC15との存在比、PC11とPC10との存在比、PC16とPC10との存在比、PC49とPC09との存在比、PC32とPC19との存在比、PC27とPC13との存在比、PC44とPC13との存在比、PC27とPC16との存在比、PC10とPC05との存在比、PC21とPC16との存在比、PC20とPC13との存在比、PC28とPC26との存在比、PC38とPC05との存在比、PC28とPC21との存在比、PC19とPC18との存在比、PC38とPC13との存在比、PC42とPC26との存在比、PC12とPC07との存在比、PC44とPC12との存在比、PC20とPC10との存在比、PC22とPC11との存在比、PC48とPC39との存在比、PC16とPC15との存在比、PC27とPC18との存在比、PC15とPC05との存在比、PC30とPC05との存在比、PC39とPC15との存在比、PC15とPC01との存在比、PC16とPC09との存在比、PC44とPC39との存在比、PC45とPC30との存在比、PC49とPC30との存在比、PC19とPC13との存在比、PC21とPC01との存在比、PC24とPC09との存在比、PC27とPC01との存在比、PC27とPC23との存在比、PC22とPC20との存在比、PC51とPC49との存在比、PC26とPC18との存在比、PC22とPC07との存在比、PC42とPC22との存在比、PC30とPC01との存在比、PC18とPC09との存在比、PC27とPC05との存在比、PC49とPC35との存在比、PC36とPC10との存在比、PC23とPC15との存在比、PC35とPC22との存在比、PC13とPC07との存在比、PC20とPC09との存在比、PC28とPC22との存在比、PC20とPC14との存在比、PC49とPC38との存在比、PC35とPC21との存在比、PC45とPC44との存在比、PC45とPC27との存在比、PC48とPC45との存在比、PC49とPC34との存在比、PC48とPC26との存在比、PC26とPC20との存在比、PC44とPC23との存在比、PC49とPC20との存在比、PC09とPC01との存在比、PC16とPC14との存在比、PC29とPC10との存在比、PC42とPC29との存在比、PC32とPC22との存在比、PC24とPC14との存在比、PC29とPC14との存在比、PC42とPC13との存在比、PC34とPC19との存在比、PC35とPC13との存在比、PC27とPC15との存在比、PC11とPC07との存在比、PC24とPC19との存在比、PC36とPC19との存在比、PC32とPC21との存在比、PC35とPC12との存在比、PC51とPC22との存在比、PC49とPC32との存在比、PC42とPC12との存在比、PC09とPC05との存在比、PC15とPC09との存在比、PC29とPC28との存在比、PC14とPC01との存在比、PC28とPC13との存在比、PC29とPC21との存在比、PC38とPC15との存在比、PC45とPC15との存在比、PC38とPC01との存在比、PC39とPC34との存在比、PC44とPC28との存在比、PC18とPC14との存在比およびPC28とPC12との存在比からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在比のうちの、少なくとも1つの糖鎖の存在量または複数の糖鎖の存在比を測定する手段を含む、膵臓がんの診断デバイス。
(26)前記存在比は、前記糖鎖の存在量の強度比を指標とすることを特徴とする、項25に記載の膵臓がんの診断デバイス。
(27)前記測定は、前記被験者の血液を対象として行われることを特徴とする、項25〜26のいずれかに記載の膵臓がんの診断デバイス。
(28)前記測定は、前記被験者の血清を対象として行われることを特徴とする、項25〜27のいずれかに記載の膵臓がんの診断デバイス。
(29)前記測定は、血清中の糖鎖の存在量を指標とする項25〜28のいずれかに記載の膵臓がんの診断デバイス。
(30)前記被験者は、中高年(たとえば、40代〜60代)男性である、項25〜29のいずれかに記載の膵臓がんの診断デバイス。
(31)前記診断は、通常診断、予後診断および早期診断からなる群より選択される診断を含む、項25〜30のいずれかに記載の膵臓がんの診断デバイス。
(32)前記手段は、抗体、アプタマー、レクチン、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)−飛行時間型(TOF)質量スペクトル(MS)測定装置からなる群より選択される、項25〜31のいずれかに記載の膵臓がんの診断デバイス。
(33)前記手段は、A)グリコブロッティング(GlycoBlotting)法により、全N−結合型糖鎖を回収する手段;およびB)MALDI−TOF MS測定装置を備える、項25〜32のいずれかに記載の膵臓がんの診断デバイス。
(34)前記PC1〜PC56として表示される糖鎖は、以下の表
【0013】
【表1−1】

【0014】
【表1−2】

【0015】
(表中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Hexはヘキソース、HexNAcはN−アセチルヘキソサミン、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す。(Man)3(GlcNAc)2というのは、N型糖鎖に共通のコア構造であり、糖鎖の多様性はコア構造以外の部分にあることから、コア構造とそれ以外の部分を分ける意味で、「+」という表記を用いて、「(それ以外の部分)+(コア構造)」との表記をした。したがって、+(Man)3(GlcNAc)2との表記を用いた。また、本明細書では、以下の表記も用いられ、指標としても用いられる。)に示される対応する、MALDI−TOF MSにおいて測定されたm/zで示す質量(たとえば、PC01については、1362.4805)を指標として用いることができることが理解される。なお、表1のm/zはベンジルオキシアミンを用いた数値である。したがって表1で使用のタグを用いた場合においてはこの数値をそのまま用いることができ、PC01として示す(Hex)2+(Man)3(GlcNAc)2という組成を同定することなく、m/z値(この場合、1362.4805)をそのまま使用することができることが理解される。また、他のタグを用いた場合は、上記の表にPC01〜PC56として記載されている糖鎖のm/zの値は、実際の糖鎖のm/zの値とは異なっている。この値の差は、糖鎖捕捉ビーズで捕捉した糖鎖のMS測定を容易にするために、糖鎖捕捉ビーズにベンジルオキシアミンを反応させて得られた、糖鎖の末端がベンジルオキシアミンで修飾された糖鎖をMS測定していることによる。したがって、ベンジルオキシアミン以外の試薬で糖鎖捕捉ビーズと交換した場合は、糖鎖の末端がその試薬で修飾された糖鎖の分子量が検出されることから、用いた試薬に応じて上記表のm/zの値が異なることになる(WO2006/030584を参照のこと。)。なお、式で表すと、
m/z (apparent、見かけの、表1の)= m/z (糖鎖の残基の分子量)+タグの分子量+水の分子量(タグが結合して遊離する水分子が存在する場合)
と表すことができる。上記表の場合,m/z (糖鎖の残基の分子量) というのはシアル酸を持つ場合,メチル化された分子量であることに留意すべきである。
【0016】
また、本発明では、線形判別を用いて診断することも可能である。その場合、代表的には、PC09、PC10、PC14、PC19およびPC38からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在量、および/もしくはPC12/PC09、PC12/PC11、PC16/PC14、PC18/PC14、PC19/PC01、PC21/PC01、PC28/PC12、PC35/PC26、PC38/PC29、PC39/PC34およびPC49/PC09からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖群の存在比に基づく線形判別式のパラメータを算出する工程によって実施することができる。
【0017】
また、糖鎖の存在量もしくは糖鎖群の存在比については、2つ以上、3つ以上、あるいはそれより多数の組み合わせを用いて診断することができる。
【0018】
これらのすべての局面において、本明細書に記載される各々の実施形態は、適用可能である限り、他の局面において適用されうることが理解される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、膵臓がん患者と健常人を識別することができ、膵臓がんの早期診断のためのスクリーニング検査を提供することができる。特に本法の優れた点として、一度の測定で得られた解析結果から、診断に用いる項目(糖鎖の種類)を任意に選べることが挙げられ、いくつも検査を行い、組み合わせる必要がないので、被験者の負担も極めて少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に関して、発明の実施の形態を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0022】
本明細書において使用される「PC1」-[PC56」との表記は、以下の表
【0023】
【表2−1】

【0024】
【表2−2】

【0025】
(表中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Hexはヘキソース、HexNAcはN−アセチルヘキソサミン、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す。表中、「+」との表記は、本明細書においてすでに記載したとおりである。)において、中央に記載される糖または糖鎖の組成をいう。その分子量は、MALDI−TOF MSにおける数値は、表の右側において、m/zとして示されている値が計算値である。実際の測定値は、使用したタグの種類に応じて変動し、測定誤差等があることから、表の値より2.0 m/z程度ずれることがあることが理解され、これは、当業者の技術常識の範囲内である。したがって、実際の測定値と上記計算値との誤差が2.0 m/zの範囲内にあれば、その相当する糖鎖であると理解される。ベンジルオキシアミン以外のタグを用いた場合の計算は、実際に使用したタグの分子量を算出してベンジルオキシアミンのものに置き換えればよい(WO2006/030584を参照のこと。)。
【0026】
本明細書において「N−型糖鎖」とは、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドのアスパラギン残基に結合している糖鎖(すなわち、N(窒素)含有側鎖に結合した糖鎖)をいう。糖鎖が結合しているアスパラギン残基の2つ隣りのアミノ酸はセリンかスレオニンであることが多く、通常糖鎖は、N−アセチルグルコサミン2個とマンノース3個の基本構造からなり、それにさらなる特徴的な糖鎖が結合している。
【0027】
本明細書において、「被験者」は、任意の動物を指し、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長類、さらに好ましくはヒトを指す。ヒトの中の特定集団が被験者であることもある。たとえば、そのような特定集団としては、中高年(たとえば、40代〜60代)男性などを挙げることができるが、本発明は必ずしもそのような特定集団に限定される趣旨ではない。
【0028】
本明細書において「被験者」の「サンプル」とは、被験者から得られる任意の生体試料をいい、好ましくは、たとえば、血液、血清、血漿などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書において「存在量」とは、糖鎖などの物質について、存在する量をいい、本明細書では、特に断らない限り、モルであらわされるが、任意の他の単位(たとえば、グラム等)などを用いることもできることが理解される。グリコブロッティング法(Glycoblotting法)により捕捉された量を存在量と解する場合もある。通常は、生体中のタンパク質および翻訳後修飾による糖鎖の存在に関する場合、そのようなタンパク質は遺伝子の発現を経て実現されるものであるから、「発現」と称することがあり、本明細書では、格別に言及しない限り同じ意味で用いることとすることが理解される。
【0030】
本明細書において「存在比」とは、糖鎖などの2つの物質について、一方の存在量の他方の存在量に対する比率をいう。本明細書では、特に断らない限り、モル比を意味するが、これに限定されず、任意の他の単位(たとえば、グラム等)の比などを用いることもできることが理解される。存在比の場合は、本明細書において使用される測定方法である質量分析の結果で得られる強度(たとえば、ピーク強度)の比(たとえば、ピーク強度比)を用いることができる。例示的には、たとえば、実施例に記載されるように、直接測定されるピーク強度を用いて計算して算出された「ピーク強度比」を用いることができる。当業者は、当該分野における技術常識を考慮して、このようなピーク強度比から、ELISA等によって検出される指標をピーク強度として、本件で存在量(存在比)と記述しているものを算出することもできることが理解される。
【0031】
本明細書において「測定」は、存在量、存在比などが対象であり、測定する方法としては、グリコブロッティング(Glycoblotting)法等により血中のN−型糖鎖を回収し、その後質量分析(たとえば、MALDI−TOF MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを挙げることができる。測定はまた、抗体、アプタマーなどの特異的分子を用いて実施することができることが理解される。測定時に内部標準として既知量糖鎖を添加しておけば、たとえば、質量分析ではそのスペクトル上の面積などを算出することにより、他の血清由来糖鎖量を容易に算出できる。
【0032】
グリコミクス技術関連の特許は以下のものを参照することができる。たとえば、高速網羅的糖鎖エンリッチ技術〔西村等(Nishimura, S, K Niikura, M Kurogochi, T Matsushita, M Fumoto, H Hinou, R Kamitani, H Nakagawa, K Deguchi, N Miura, K Monde, and H Kondo)「ハイスループット・プロテイングリコミクス:化学選択的グリコブロッティングとマルディトフ/トフ質量分析との併用」 “High−Throughput Protein Glycomics: Combined Use of Chemoselective Glycoblotting and Maldi−Tof/Tof Mass Spectrometry.” Angew Chem Int Ed Engl 44, no. 1 (2004): 91−96〕に基づいて調製された血清中糖鎖にMALDI−TOF MS等の質量分析技術を用いることができる。適宜Furukawa, J. I. et al. Comprehensive Approach to Structural and Functional Glycomics Based on Chemoselective Glycoblotting and Sequential Tag Conversion. Anal Chem. 80(4), 1094−101 (2008)も参考にすることができる。また、このほか、国際公開番号WO2008/001888;国際公開番号WO2007/099856;国際公開番号 WO2005/025155;国際公開番号 WO2006/030584;国際公開番号WO02004/058687などを参酌することができる。たとえば、血清処理は、国際公開番号WO2007/099856に記載された技術を利用することができる。
【0033】
このほかの測定方法としては、実施例に記載したもの以外にも以下が例示されるがそれに限定されない。すなわち、このような検出は、本明細書に記載される糖鎖配列に特異的に結合する分子によって行うことができる。好ましい分子は、アプタマー、レクチン、遺伝子工学的に作製したレクチン、抗体、モノクローナル抗体、抗体の断片、特定構造の糖鎖を認識する酵素(例えばグリコシダーゼやグリコシル基転移酵素) および遺伝子工学的に作製したそれらの改変体である。標識した細菌、ウイルスまたは細胞、あるいは重合体の表面であって、特定の糖鎖配列構造を認識する分子を有するものを検出に用いることができる。糖鎖は、エンドグリコシダーゼ酵素によってがん細胞から遊離することができる。また、糖鎖をプロテアーゼ酵素により糖脂質として遊離することができる。糖鎖またはその誘導体を遊離させるための化学的方法の具体例には、糖脂質の音波分解法、および糖タンパク質から糖鎖を遊離させるためのβ-脱離法またはヒドラジン分解法などを挙げることができる。その他の方法としては、糖脂質画分の単離が挙げられる。がん特異的オリゴ糖配列に特異的に結合する結合性物質は、細胞表面上の該配列の分析に用いることもできる。糖鎖は、例えば糖結合体あるいは遊離のおよび/または単離した糖鎖画分として検出することができる。種々の形態の糖鎖の分析に用いることができる方法としては、NMR 分光法、質量分析法およびグリコシダーゼ分解法が挙げられる。特に、特異性が制限される方法を用いる場合には、少なくとも二種の分析法を用いることが好ましい。
【0034】
本明細書において開示されたがん特異的糖鎖あるいはその類似体または誘導体を用いて、糖鎖構造を認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の製造は、当該分野において公知の方法を用いておこなうことができる。本明細書で開示する糖鎖配列あるいはその類似体または誘導体を多価の形態で含んでいる結合体を、化学的または生化学的に合成することができる。これらを用いて、免疫応答活性化物質と共に多価結合体で動物またはヒトを免疫することができる。糖鎖は免疫応答活性化物質に多価の形態で結合していることが好ましく、結合体は単独、またはさらなる免疫応答活性化物質と共に免疫に用いる。より好ましい態様においては糖鎖結合体を、少なくとも一種のアジュバンド分子と共に抗体産生生物に注射または粘膜投与する。抗体産生のためには、糖鎖配列あるいはその類似体または誘導体をタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、スカシガイ(keyhole limpet) ヘモシアニン、リポペプチド、ペプチド、細菌の毒素、ペプチドグリカンまたは免疫活性多糖の一部、あるいは他の抗体産生活性化分子に多価の形態で結合させることができる。当該分野で周知のように、抗体産生法での抗体の誘導は、多価結合体をアジュバンド分子と共に動物に注射することによって実施することができる。抗体を用いた測定方法にはELISAなどがある。ELISAを利用してタンパク質の発現程度およびN−結合型糖鎖変化を測定する方法は、以下の工程:1)プレートに本発明の糖鎖に対する抗体を吸着させる工程、2)このプレートに検体の血清等を添加して反応させ、その後それを洗浄する工程、3)このプレートを洗浄した後、発色酵素または蛍光物質が結合された2次抗体を添加して反応させる工程、および4)発色基質液を添加して発色させた後、ELISAリーダーで吸光度を測定する工程を含む。
【0035】
本明細書において測定後に、評価をする場合、正常被験者との対比を行って、診断することもできるし、本明細書において示されるような正常被験者の値と比較することによって、正常または異常を特定することができる。この場合において、以下のデータを参酌することができる。
【0036】
【表3−1】

【0037】
【表3−2】

【0038】
【表3−3】

【0039】
(表中、Xで始まる数値は、4桁ごとに区切ってあり、2つ4桁の数字が存在する場合は、1つの糖鎖に関連するm/zを、4つの4桁の数字が存在する場合は、2つの糖鎖に関連するm/zが併記されていると読む。
【0040】
本発明では、上記の指標に基づき、適宜指標を用いた上でがんを診断することができる。
【0041】
理論に束縛されることを望まないが、本発明のマーカーを用いる場合、がんとしてよい値については、何らかのがんの基準値を決定しようとする場合、「感度」と「特異度」とについては、表中に記載された、感度と特異度で判定できるのかを総合的に表す指標であるAUCを用いて判断することができる。そして、実際の臨床で使用する場合には、これらの指標から容易に導きだすことのできる基準値を用いるか、あるいはさらなる事項を考慮して何らかの基準を作成し、その上で感度と特異度とをさらに明確にすることが考えられるが、このような応用は当該分野における技術常識の範囲内であり、当業者は適宜実施することができる。
【0042】
本明細書において「線形判別式」とは、分類処理を行なうときに用いられる関数において使用される式をいい、多数のパラメータから判別に有用なパラメータを選択して、クラス分けを行う方法をいう。線形判別式を使用した判定方法は、具体的には以下のように計算を行う。はじめに、全ての糖鎖の存在量および全ての二つの糖鎖の組み合わせに関する存在量比をパラメータとして準備する。次にこれらのパラメータの相互相関を計算し、特に高いものに関しては任意の指標で代表させ残りのパラメータは使用しない。使用可能な全てのパラメータを初期パラメータセットとして、線形結合式をモデルとして用い、赤池情報量基準を最小化する最適パラメータセットをsequential forward selectionを用いて選択する。最適パラメータセットを用いて推定される線形判別式は、Leave−one−out交差検定法によってその判別性能を推定することができる。
【0043】
本明細書において「膵臓がん」とは、膵臓の悪性新生物、腫瘍またはがんをいう。膵臓がんは、膵管がん、膵内分泌腫瘍などに分類される。膵管がんは外分泌に関係した細胞、特に膵液が流れる膵管の細胞から発生するものであり、約95%を占める。膵内分泌腫瘍は、内分泌機能を営むランゲルハンス島等にできるものであり膵全体の約5%を占めるといわれる。本発明は、いずれも診断することができる。
【0044】
(例示的な実施形態)
本発明によれば、被験者血清からグリコブロッティング(Glycoblotting)法により血中のN−型糖鎖を回収し、MALDI−TOF MSにより定量的プロファイルを取得する。このとき、内部標準として既知量の糖鎖を添加しておけば、そのスペクトル上の面積より、他の血清由来糖鎖量を容易に算出できる(内部標準糖鎖を用いた絶対濃度の推定に関しては、Miura, Y. et al. BlotGlycoABCTM: An integrated glycoblotting technique for rapid and large−scale clinical glycomics. Mol Cell Proteomics (2007)が参照され、これは本明細書において参考として援用される。)。検出される糖鎖は例えば以下の表に示すとおりである。
【0045】
【表4−1】

【0046】
【表4−2】

【0047】
(表中、Manはマンノース、GlcNAcはN−アセチルグルコサミン、Hexはヘキソース、HexNAcはN−アセチルヘキソサミン、NeuAcはN−アセチルノイラミン酸を表す。)
【0048】
その後、一つまたは二つ以上の糖鎖発現量または糖鎖発現量の増減から膵臓がんの罹患を推定し、診断に有用な方法を得ることができる。そのような方法は、実施例等において例示されている。
【0049】
例えば、PC19、PC15、PC30、PC35、PC14、PC09、PC38、PC27、PC44、PC48が膵臓がんで血清中の量が上昇する傾向にある。特にPC19は特異性が高く、膵臓がんを効果的に診断できるマーカー候補となる。(後記実施例1参照)。
【0050】
本発明は好ましくは血液で診断することになるところ、血液診断においても、従来達成できなかった早期の診断が可能である。なぜなら、これまでの血液の成分測定などでは十分に診断できなかった膵臓がんが、グリコミクス解析によって診断できるようになったからである。
【0051】
本明細書において使用されうる具体的な糖鎖は、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
A)糖鎖一つで有意差あり:PC19、PC15、PC30、PC35、PC14、PC09、PC38、PC27、PC44、およびPC48
B)糖鎖二つの比で有意差あり(なお、”/”は、存在比(強度比)をあらわす):PC19/PC15、PC30/PC10、PC21/PC15、PC44/PC10、PC38/PC19、PC38/PC10、PC35/PC26、PC30/PC21、PC15/PC10、PC10/PC09、PC20/PC19、PC28/PC19、PC15/PC13、PC19/PC01、PC19/PC14、PC38/PC21、PC30/PC19、PC19/PC12、PC27/PC10、PC35/PC19、PC44/PC19、PC27/PC21、PC15/PC12、PC22/PC15、PC19/PC09、PC28/PC10、PC27/PC06、PC26/PC15、PC42/PC19、PC19/PC07、PC21/PC14、PC30/PC22、PC19/PC11、PC30/PC26、PC38/PC22、PC30/PC12、PC30/PC29、PC29/PC15、PC35/PC10、PC14/PC13、PC21/PC20、PC48/PC43、PC29/PC19、PC10/PC07、PC38/PC29、PC19/PC05、PC11/PC09、PC32/PC10、PC44/PC21、PC21/PC09、PC38/PC26、PC30/PC13、PC42/PC10、PC13/PC09、PC21/PC11、PC30/PC06、PC30/PC28、PC10/PC01、PC38/PC12、PC27/PC11、PC44/PC26、PC30/PC24、PC27/PC19、PC22/PC14、PC29/PC27、PC21/PC18、PC13/PC08、PC27/PC24、PC19/PC16、PC49/PC15、PC14/PC12、PC27/PC22、PC48/PC10、PC21/PC07、PC44/PC41、PC14/PC06、PC19/PC08、PC30/PC11、PC22/PC09、PC27/PC26、PC42/PC21、PC14/PC10、PC24/PC15、PC44/PC22、PC34/PC10、PC48/PC22、PC27/PC12、PC49/PC44、PC49/PC27、PC30/PC23、PC44/PC29、PC48/PC19、PC28/PC15、PC11/PC10、PC16/PC10、PC49/PC09、PC32/PC19、PC27/PC13、PC44/PC13、PC27/PC16、PC10/PC05、PC21/PC16、PC20/PC13、PC28/PC26、PC38/PC05、PC28/PC21、PC19/PC18、PC38/PC13、PC42/PC26、PC12/PC07、PC44/PC12、PC20/PC10、PC22/PC11、PC48/PC39、PC16/PC15、PC27/PC18、PC15/PC05、PC30/PC05、PC39/PC15、PC15/PC01、PC16/PC09、PC44/PC39、PC45/PC30、PC49/PC30、PC19/PC13、PC21/PC01、PC24/PC09、PC27/PC01、PC27/PC23、PC22/PC20、PC51/PC49、PC26/PC18、PC22/PC07、PC42/PC22、PC30/PC01、PC18/PC09、PC27/PC05、PC49/PC35、PC36/PC10、PC23/PC15、PC35/PC22、PC13/PC07、PC20/PC09、PC28/PC22、PC20/PC14、PC49/PC38、PC35/PC21、PC45/PC44、PC45/PC27、PC48/PC45、PC49/PC34、PC48/PC26、PC26/PC20、PC44/PC23、PC49/PC20、PC09/PC01、PC16/PC14、PC29/PC10、PC42/PC29、PC32/PC22、PC24/PC14、PC29/PC14、PC42/PC13、PC34/PC19、PC35/PC13、PC27/PC15、PC11/PC07、PC24/PC19、PC36/PC19、PC32/PC21、PC35/PC12、PC51/PC22、PC49/PC32、PC42/PC12、PC09/PC05、PC15/PC09、PC29/PC28、PC14/PC01、PC28/PC13、PC29/PC21、PC38/PC15、PC45/PC15、PC38/PC01、PC39/PC34、およびPC44/PC28。
【0053】
C)線形判別で変数として選択された糖鎖:PC09、PC10、PC14、PC19、PC38、PC12/PC09、PC12/PC11、PC16/PC14、PC18/PC14、PC19/PC01、PC21/PC01、PC28/PC12、PC35/PC26、PC38/PC29、PC39/PC34、およびPC49/PC09。
【0054】
A)、B)およびC)の群に列挙された糖鎖または糖鎖群は、任意のものを使用することができる。好ましくは、2つ以上、より好ましくは、3つ以上、さらに好ましくは、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、11以上、…すべての組み合わせを使用することができる。これらは、本発明のグリコブロッティングおよびMALDI−TOF MSを用いる場合は、測定された数値を採用するかどうかの問題であり、なんらの格別の労力を追加せずに実施することができる。そして、そのような複数採用した場合の試験は、従来技術では達成できなかったかまたは抗体、レクチンなどを用いた場合には非常に複雑かつ困難な技術を必要とするものであり、本発明ではこれらを問題なく行うことができるという点で優れているということができる。
【0055】
なお、C)に挙げた線形判別のもののみを使用した場合は、選択された糖鎖どれか一つとかいくつかの組み合わせで判断するのではなく、これら全てを使った式で判定するのが最良の方法であるといえることに留意すべきである。
【0056】
したがって、別の局面において、本発明は、これらA)、B)およびC)からなる群より選択される少なくとも一つの糖鎖またはその存在量、あるいは少なくとも1組の糖鎖またはその存在比を膵臓がんのマーカーとしての使用を提供する。その使用形態については、本発明の診断方法において詳述した任意の形態を使用することができることが理解される。そして、その判定方法については、たとえば、PC19/PC15についてみると、この指標の値が20を上回ればがんで下回ればがんではないという基準を下にすると、感度がおよそ80%、特異度がおよそ80%で診断ができるということになる。そして、これらの数値は、表3の数値に基づき、当業者が算出することができる。
【0057】
別の局面において、本発明は、本発明の上記マーカー(すなわち、A)、B)およびC)の群に列挙された糖鎖または糖鎖群)を測定する工程を包含する、サンプルの選別方法を提供する。本発明の選別方法は、この測定方法に続き、膵臓がんの可能性が高いと判断されたサンプルとそれ以外とを選別する工程を包含しうる。そのような方法は、たとえば、サンプルの標識(番号等をラベルする)をして、その標識を測定結果と照合することによって実施することができる。膵臓がんの可能性が高いと判断する方法は、本明細書の他の部分に記載された事項、実施例に記載された事項等を参酌することができる。
【0058】
他の局面において、本発明は、本発明の上記マーカー(すなわち、A)、B)およびC)の群に列挙された糖鎖または糖鎖群)を測定する手段を含む、膵臓がんの診断デバイスを提供する。この手段としては、抗体、アプタマー、レクチン、および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)−飛行時間型(TOF)質量スペクトル(MS)測定装置などを挙げることができるがそれに限定されない。好ましくは、本発明のデバイスは、A)グリコブロッティング(GlycoBlotting)法により、N−結合型糖鎖を回収する手段;およびB)MALDI−TOF MS測定装置を備える。網羅的に糖鎖を検出することができ、効果的な診断を行うことができるからである。
【0059】
以下に実施例を記載して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
(実施例1:有用な糖鎖または糖鎖の組み合わせの選別)
(分析方法)
高速網羅的糖鎖エンリッチ技術〔西村等(Nishimura, S, K Niikura, M Kurogochi, T Matsushita, M Fumoto, H Hinou, R Kamitani, H Nakagawa, K Deguchi, N Miura, K Monde, and H Kondo)「ハイスループット・プロテイングリコミクス:化学選択的グリコブロッティングとマルディトフ/トフ質量分析との併用」 “High−Throughput Protein Glycomics: Combined Use of Chemoselective Glycoblotting and Maldi−Tof/Tof Mass Spectrometry.” Angew Chem Int Ed Engl 44, no. 1 (2004): 91−96〕に基づいて調製された血清中糖鎖にMALDI−TOF MS等の質量分析技術を用いて、解析を行った。適宜Furukawa, J. I. et al. Comprehensive Approach to Structural and Functional Glycomics Based on Chemoselective Glycoblotting and Sequential Tag Conversion. Anal Chem. 80(4), 1094−101 (2008)も参考にした。
【0061】
そして各患者の血清中糖鎖の定量的発現プロファイルをもとに各罹患状態を結びつけ、変動する糖鎖を見出し、新たなバイオマーカーとなる血清糖鎖あるいは、変動する糖鎖を有する糖タンパク質あるいは変動する糖鎖の生合成経路に関わる分子群を同定し、感度および特異度の高い診断方法を確立した。
【0062】
具体的には、膵臓がん患者計15名(40代3名、50代7名、60代5名)および健常人計22名(40代5名、50代10名、60代7名)の血清の網羅的糖鎖解析を行った。今回用いた血清はすべて性別が男性の血清を使用し、西村らのグリコブロッティング(GlycoBlotting)法(上記文献参照)により血中のN−結合型糖鎖を回収し、MALDI−TOF MS(上記文献参照)により定量的プロファイルを取得した。
【0063】
内部標準として加えた既知量の糖鎖のスペクトル上の面積より、表1で示した各血清由来糖鎖量を算出した。(内部標準糖鎖を用いた絶対濃度の推定に関しては、Miura, Y. et al. BlotGlycoABCTM: An integrated glycoblotting technique for rapid and large−scale clinical glycomics. Mol Cell Proteomics (2007)が参考として援用される。
【0064】
次いで、各検体における各糖鎖の定量値を糖鎖の存在量とし、膵臓がん患者血清において存在量の変化する糖鎖の存在について統計学的手法により検討した結果、PC19、PC15、PC30、PC35、PC14、PC09、PC38、PC27、PC44、PC48の糖鎖において膵臓がん患者血清で有意に発現量が変化する傾向を見出した。その中でも特に顕著な有意差が確認されたPC19糖鎖について箱ひげ図とROC曲線を示す(図1、2)。また、他の糖について、有意差が出たものについてのデータを以下に示す。
【0065】
【表5−1】

【0066】
【表5−2】

【0067】
【表5−3】

【0068】
(表中、Xで始まる数値は、4桁ごとに区切ってあり、2つ4桁の数字が存在する場合は、1つの糖鎖に関連するm/zを、4つの4桁の数字が存在する場合は、2つの糖鎖に関連するm/zが併記されていると読む。)
【0069】
(実施例2:強度比を用いた診断)
次いで、表5に記載されたデータからも明らかなように、各検体における検出された糖鎖の強度比をパラメータとして統計学的手法によって検討した結果、PC19/PC15、PC30/PC10、PC21/PC15、PC44/PC10、PC38/PC19、PC38/PC10、PC35/PC26、PC30/PC21、PC15/PC10、PC10/PC09、PC20/PC19、PC28/PC19、PC15/PC13、PC19/PC01、PC19/PC14、PC38/PC21、PC30/PC19、PC19/PC12、PC27/PC10、PC35/PC19、PC44/PC19、PC27/PC21、PC15/PC12、PC22/PC15、PC19/PC09、PC28/PC10、PC27/PC06、PC26/PC15、PC42/PC19、PC19/PC07、PC21/PC14、PC30/PC22、PC19/PC11、PC30/PC26、PC38/PC22、PC30/PC12、PC30/PC29、PC29/PC15、PC35/PC10、PC14/PC13、PC21/PC20、PC48/PC43、PC29/PC19、PC10/PC07、PC38/PC29、PC19/PC05、PC11/PC09、PC32/PC10、PC44/PC21、PC21/PC09、PC38/PC26、PC30/PC13、PC42/PC10、PC13/PC09、PC21/PC11、PC30/PC06、PC30/PC28、PC10/PC01、PC38/PC12、PC27/PC11、PC44/PC26、PC30/PC24、PC27/PC19、PC22/PC14、PC29/PC27、PC21/PC18、PC13/PC08、PC27/PC24、PC19/PC16、PC49/PC15、PC14/PC12、PC27/PC22、PC48/PC10、PC21/PC07、PC44/PC41、PC14/PC06、PC19/PC08、PC30/PC11、PC22/PC09、PC27/PC26、PC42/PC21、PC14/PC10、PC24/PC15、PC44/PC22、PC34/PC10、PC48/PC22、PC27/PC12、PC49/PC44、PC49/PC27、PC30/PC23、PC44/PC29、PC48/PC19、PC28/PC15、PC11/PC10、PC16/PC10、PC49/PC09、PC32/PC19、PC27/PC13、PC44/PC13、PC27/PC16、PC10/PC05、PC21/PC16、PC20/PC13、PC28/PC26、PC38/PC05、PC28/PC21、PC19/PC18、PC38/PC13、PC42/PC26、PC12/PC07、PC44/PC12、PC20/PC10、PC22/PC11、PC48/PC39、PC16/PC15、PC27/PC18、PC15/PC05、PC30/PC05、PC39/PC15、PC15/PC01、PC16/PC09、PC44/PC39、PC45/PC30、PC49/PC30、PC19/PC13、PC21/PC01、PC24/PC09、PC27/PC01、PC27/PC23、PC22/PC20、PC51/PC49、PC26/PC18、PC22/PC07、PC42/PC22、PC30/PC01、PC18/PC09、PC27/PC05、PC49/PC35、PC36/PC10、PC23/PC15、PC35/PC22、PC13/PC07、PC20/PC09、PC28/PC22、PC20/PC14、PC49/PC38、PC35/PC21、PC45/PC44、PC45/PC27、PC48/PC45、PC49/PC34、PC48/PC26、PC26/PC20、PC44/PC23、PC49/PC20、PC09/PC01、PC16/PC14、PC29/PC10、PC42/PC29、PC32/PC22、PC24/PC14、PC29/PC14、PC42/PC13、PC34/PC19、PC35/PC13、PC27/PC15、PC11/PC07、PC24/PC19、PC36/PC19、PC32/PC21、PC35/PC12、PC51/PC22、PC49/PC32、PC42/PC12、PC09/PC05、PC15/PC09、PC29/PC28、PC14/PC01、PC28/PC13、PC29/PC21、PC38/PC15、PC45/PC15、PC38/PC01、PC39/PC34、PC44/PC28の強度比(存在比)によって健常人血清と膵臓がん患者血清とを判別できることを見いだした。その中でも特に顕著な有意差が確認されたPC19/PC15の強度比(存在比)について箱ひげ図とROC曲線を示す(図3、4)。
【0070】
本実施例の結果から、適宜指標を用いた上でがんを診断することができる。
【0071】
理論に束縛されることを望まないが、本発明のマーカーを用いる場合、がんとしてよい値については、何らかのがんの基準値を決定しようとする場合、「感度」と「特異度」とについては、表中に記載された、感度と特異度で判定できるのかを総合的に表す指標であるAUCを用いて判断することができる。そして、実際の臨床で使用する場合には、これらの指標から容易に導きだすことのできる基準値を用いるか、あるいはさらなる事項を考慮して何らかの基準を作成し、その上で感度と特異度とをさらに明確にすることが考えられるが、このような応用は当該分野における技術常識の範囲内であり、当業者は適宜実施することができる。
【0072】
たとえば、PC19/PC15についてみると、この指標の値が20を上回ればがんで下回ればがんではないという基準を下にすると、感度がおよそ80%、特異度がおよそ80%で診断ができるということになる。そして、これらの数値は、表5の数値に基づき、当業者が算出することができる。
【0073】
(実施例3:線形判別を用いた診断)
次いで、各検体における各糖鎖の定量値(存在量)と強度比(存在比)をパラメーターとして、線形判別を試みた。Sequential Floating Forward Selectionを用いてパラメータ選択を行った結果、PC09、PC10、PC14、PC19、PC38、PC12/PC09、PC12/PC11、PC16/PC14、PC18/PC14、PC19/PC01、PC21/PC01、PC28/PC12、PC35/PC26、PC38/PC29、PC39/PC34、PC49/PC09が線形判別式のパラメータとして選択された。これらのすべてのパラメータからなる線形判別式の判別能をLeave−one−out交差テストで評価したところ、正答率は95.2%であった。
【0074】
なお、これらのパラメータについては、単独の糖鎖をマーカーとして用いることができることが理解されるが、線形判別式を用いる場合は、すべてのパラメータを用いるべきことが理解される。
【0075】
(実施例4:診断方法)
本実施例では、罹患状態が不明の被験者に対して、本発明の方法を適用する。
【0076】
すなわち、実施例1において記載されるように、被験者から、血清を採取する。得られた血清を、実施例1に記載されたグリコブロッティングにより血中の全N-結合型糖鎖を回収し、MALDI−TOF MS(上記文献参照)により定量的プロファイルを取得する。
【0077】
内部標準として加えた既知量の糖鎖のスペクトル上の面積より、表1の各血清由来糖鎖量を算出する。あるいは、実施例1において有意差がでた糖鎖の存在量または実施例2において有意差が出た強度比または実施例3において有意差が出た線形判別式のパラメータを算出する。
【0078】
そして、実施例1の表5において示されたデータを下に、被験者ががんに罹患しているか、正常であるかを判断する。
【0079】
たとえば、PC19/PC15を指標にした場合、10の値がでた場合は、膵臓がんであると判断することができる。
【0080】
このように、本発明における開示に基づけば、膵臓がんのバイオマーカーとして使用されうる基準を満たしていることが理解される。
【0081】
また、本発明のバイオマーカーの有用性については、疾患と健常との比較でAUCが高いことも重要であり、本発明はこれも満たしているが、これ以外にも、測定の簡便さおよび精度、結果のロバストネス等が期待でき、また新たな診断の手法の開発が可能となったといえ、その有用性の範囲は広く、かつ、高いものであるといえる。
【0082】
判断が困難な場合は、複数のマーカー糖鎖を用いることができ、複数の糖鎖を用いることによって診断の精度が上昇することが理解される。
【0083】
本発明では、単独のよいマーカー候補が複数あることが見出されたことが特徴である。また、他の局面では、グリコブロッティング法を用いることによって、複数のマーカー候補を同時に精度よく測定できることができるようになったことも利点であり、その点も必要に応じて診断法において活用することができる。
【0084】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみ、その範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、血清から膵臓がんの有無の診断が可能となる。その結果、適確な医療処置を施すことで、治療効果および予後の改善に貢献することが大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】膵臓がん患者血清においてPC19糖鎖の発現量が上昇していることを示す図である。PC19の濃度は、濃度既知の内部標準糖鎖のピーク強度との比で算出した。
【図2】PC19糖鎖の発現量によって膵臓がんの有無を判定した際のROC曲線である。判別能を示すAUC(Area Under Curve)は0.785と良好な値を示している。
【図3】膵臓がん患者血清においてPC19糖鎖とPC15糖鎖の強度比が低下していることを示す図である。値はPC19糖鎖のピーク強度をPC15糖鎖のピーク強度で割った値である。
【図4】PC19糖鎖とPC15糖鎖の強度比によって膵臓がんの有無を判定した際のROC曲線である。判別能を示すAUC(Area Under Curve)は0.929と高い値を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者において、以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在量、ならびに/または、以下の群:PC19とPC15との存在比、PC30とPC10との存在比、PC21とPC15との存在比、PC44とPC10との存在比、PC38とPC19との存在比、PC38とPC10との存在比、PC35とPC26との存在比、PC30とPC21との存在比、PC15とPC10との存在比、PC10とPC09との存在比、PC20とPC19との存在比、PC28とPC19との存在比、PC15とPC13との存在比、PC19とPC01との存在比、PC19とPC14との存在比、PC38とPC21との存在比、PC30とPC19との存在比、PC19とPC12との存在比、PC27とPC10との存在比、PC35とPC19との存在比、PC44とPC19との存在比、PC27とPC21との存在比、PC15とPC12との存在比、PC22とPC15との存在比、PC19とPC09との存在比、PC28とPC10との存在比、PC27とPC06との存在比、PC26とPC15との存在比、PC42とPC19との存在比、PC19とPC07との存在比、PC21とPC14との存在比、PC30とPC22との存在比、PC19とPC11との存在比、PC30とPC26との存在比、PC38とPC22との存在比、PC30とPC12との存在比、PC30とPC29との存在比、PC29とPC15との存在比、PC35とPC10との存在比、PC14とPC13との存在比、PC21とPC20との存在比、PC48とPC43との存在比、PC29とPC19との存在比、PC10とPC07との存在比、PC38とPC29との存在比、PC19とPC05との存在比、PC11とPC09との存在比、PC32とPC10との存在比、PC44とPC21との存在比、PC21とPC09との存在比、PC38とPC26との存在比、PC30とPC13との存在比、PC42とPC10との存在比、PC13とPC09との存在比、PC21とPC11との存在比、PC30とPC06との存在比、PC30とPC28との存在比、PC10とPC01との存在比、PC38とPC12との存在比、PC27とPC11との存在比、PC44とPC26との存在比、PC30とPC24との存在比、PC27とPC19との存在比、PC22とPC14との存在比、PC29とPC27との存在比、PC21とPC18との存在比、PC13とPC08との存在比、PC27とPC24との存在比、PC19とPC16との存在比、PC49とPC15との存在比、PC14とPC12との存在比、PC27とPC22との存在比、PC48とPC10との存在比、PC21とPC07との存在比、PC44とPC41との存在比、PC14とPC06との存在比、PC19とPC08との存在比、PC30とPC11との存在比、PC22とPC09との存在比、PC27とPC26との存在比、PC42とPC21との存在比、PC14とPC10との存在比、PC24とPC15との存在比、PC44とPC22との存在比、PC34とPC10との存在比、PC48とPC22との存在比、PC27とPC12との存在比、PC49とPC44との存在比、PC49とPC27との存在比、PC30とPC23との存在比、PC44とPC29との存在比、PC48とPC19との存在比、PC28とPC15との存在比、PC11とPC10との存在比、PC16とPC10との存在比、PC49とPC09との存在比、PC32とPC19との存在比、PC27とPC13との存在比、PC44とPC13との存在比、PC27とPC16との存在比、PC10とPC05との存在比、PC21とPC16との存在比、PC20とPC13との存在比、PC28とPC26との存在比、PC38とPC05との存在比、PC28とPC21との存在比、PC19とPC18との存在比、PC38とPC13との存在比、PC42とPC26との存在比、PC12とPC07との存在比、PC44とPC12との存在比、PC20とPC10との存在比、PC22とPC11との存在比、PC48とPC39との存在比、PC16とPC15との存在比、PC27とPC18との存在比、PC15とPC05との存在比、PC30とPC05との存在比、PC39とPC15との存在比、PC15とPC01との存在比、PC16とPC09との存在比、PC44とPC39との存在比、PC45とPC30との存在比、PC49とPC30との存在比、PC19とPC13との存在比、PC21とPC01との存在比、PC24とPC09との存在比、PC27とPC01との存在比、PC27とPC23との存在比、PC22とPC20との存在比、PC51とPC49との存在比、PC26とPC18との存在比、PC22とPC07との存在比、PC42とPC22との存在比、PC30とPC01との存在比、PC18とPC09との存在比、PC27とPC05との存在比、PC49とPC35との存在比、PC36とPC10との存在比、PC23とPC15との存在比、PC35とPC22との存在比、PC13とPC07との存在比、PC20とPC09との存在比、PC28とPC22との存在比、PC20とPC14との存在比、PC49とPC38との存在比、PC35とPC21との存在比、PC45とPC44との存在比、PC45とPC27との存在比、PC48とPC45との存在比、PC49とPC34との存在比、PC48とPC26との存在比、PC26とPC20との存在比、PC44とPC23との存在比、PC49とPC20との存在比、PC09とPC01との存在比、PC16とPC14との存在比、PC29とPC10との存在比、PC42とPC29との存在比、PC32とPC22との存在比、PC24とPC14との存在比、PC29とPC14との存在比、PC42とPC13との存在比、PC34とPC19との存在比、PC35とPC13との存在比、PC27とPC15との存在比、PC11とPC07との存在比、PC24とPC19との存在比、PC36とPC19との存在比、PC32とPC21との存在比、PC35とPC12との存在比、PC51とPC22との存在比、PC49とPC32との存在比、PC42とPC12との存在比、PC09とPC05との存在比、PC15とPC09との存在比、PC29とPC28との存在比、PC14とPC01との存在比、PC28とPC13との存在比、PC29とPC21との存在比、PC38とPC15との存在比、PC45とPC15との存在比、PC38とPC01との存在比、PC39とPC34との存在比、PC44とPC28との存在比、PC18とPC14との存在比およびPC28とPC12との存在比からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在比を測定する工程を包含する、該被験者の膵臓がんの診断方法。
【請求項2】
前記存在比は、前記糖鎖の存在量の強度比を指標とすることを特徴とする、請求項1に記載の膵臓がんの診断方法。
【請求項3】
前記測定は、前記被験者の血液を対象として行われることを特徴とする、請求項1に記載の膵臓がんの診断方法。
【請求項4】
前記測定は、血清中の糖鎖の存在量を指標とする、請求項1に記載の膵臓がんの診断方法。
【請求項5】
前記測定は、
A)グリコブロッティング(GlycoBlotting)法により、N-結合型糖鎖を回収する工程;および
B)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)−飛行時間型(TOF)質量スペクトル(MS)法により定量的プロファイルを取得する工程
を包含する、請求項1に記載の膵臓がんの診断方法。
【請求項6】
被験者由来のサンプルにおいて、以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在量、ならびに/または、以下の群:PC19とPC15との存在比、PC30とPC10との存在比、PC21とPC15との存在比、PC44とPC10との存在比、PC38とPC19との存在比、PC38とPC10との存在比、PC35とPC26との存在比、PC30とPC21との存在比、PC15とPC10との存在比、PC10とPC09との存在比、PC20とPC19との存在比、PC28とPC19との存在比、PC15とPC13との存在比、PC19とPC01との存在比、PC19とPC14との存在比、PC38とPC21との存在比、PC30とPC19との存在比、PC19とPC12との存在比、PC27とPC10との存在比、PC35とPC19との存在比、PC44とPC19との存在比、PC27とPC21との存在比、PC15とPC12との存在比、PC22とPC15との存在比、PC19とPC09との存在比、PC28とPC10との存在比、PC27とPC06との存在比、PC26とPC15との存在比、PC42とPC19との存在比、PC19とPC07との存在比、PC21とPC14との存在比、PC30とPC22との存在比、PC19とPC11との存在比、PC30とPC26との存在比、PC38とPC22との存在比、PC30とPC12との存在比、PC30とPC29との存在比、PC29とPC15との存在比、PC35とPC10との存在比、PC14とPC13との存在比、PC21とPC20との存在比、PC48とPC43との存在比、PC29とPC19との存在比、PC10とPC07との存在比、PC38とPC29との存在比、PC19とPC05との存在比、PC11とPC09との存在比、PC32とPC10との存在比、PC44とPC21との存在比、PC21とPC09との存在比、PC38とPC26との存在比、PC30とPC13との存在比、PC42とPC10との存在比、PC13とPC09との存在比、PC21とPC11との存在比、PC30とPC06との存在比、PC30とPC28との存在比、PC10とPC01との存在比、PC38とPC12との存在比、PC27とPC11との存在比、PC44とPC26との存在比、PC30とPC24との存在比、PC27とPC19との存在比、PC22とPC14との存在比、PC29とPC27との存在比、PC21とPC18との存在比、PC13とPC08との存在比、PC27とPC24との存在比、PC19とPC16との存在比、PC49とPC15との存在比、PC14とPC12との存在比、PC27とPC22との存在比、PC48とPC10との存在比、PC21とPC07との存在比、PC44とPC41との存在比、PC14とPC06との存在比、PC19とPC08との存在比、PC30とPC11との存在比、PC22とPC09との存在比、PC27とPC26との存在比、PC42とPC21との存在比、PC14とPC10との存在比、PC24とPC15との存在比、PC44とPC22との存在比、PC34とPC10との存在比、PC48とPC22との存在比、PC27とPC12との存在比、PC49とPC44との存在比、PC49とPC27との存在比、PC30とPC23との存在比、PC44とPC29との存在比、PC48とPC19との存在比、PC28とPC15との存在比、PC11とPC10との存在比、PC16とPC10との存在比、PC49とPC09との存在比、PC32とPC19との存在比、PC27とPC13との存在比、PC44とPC13との存在比、PC27とPC16との存在比、PC10とPC05との存在比、PC21とPC16との存在比、PC20とPC13との存在比、PC28とPC26との存在比、PC38とPC05との存在比、PC28とPC21との存在比、PC19とPC18との存在比、PC38とPC13との存在比、PC42とPC26との存在比、PC12とPC07との存在比、PC44とPC12との存在比、PC20とPC10との存在比、PC22とPC11との存在比、PC48とPC39との存在比、PC16とPC15との存在比、PC27とPC18との存在比、PC15とPC05との存在比、PC30とPC05との存在比、PC39とPC15との存在比、PC15とPC01との存在比、PC16とPC09との存在比、PC44とPC39との存在比、PC45とPC30との存在比、PC49とPC30との存在比、PC19とPC13との存在比、PC21とPC01との存在比、PC24とPC09との存在比、PC27とPC01との存在比、PC27とPC23との存在比、PC22とPC20との存在比、PC51とPC49との存在比、PC26とPC18との存在比、PC22とPC07との存在比、PC42とPC22との存在比、PC30とPC01との存在比、PC18とPC09との存在比、PC27とPC05との存在比、PC49とPC35との存在比、PC36とPC10との存在比、PC23とPC15との存在比、PC35とPC22との存在比、PC13とPC07との存在比、PC20とPC09との存在比、PC28とPC22との存在比、PC20とPC14との存在比、PC49とPC38との存在比、PC35とPC21との存在比、PC45とPC44との存在比、PC45とPC27との存在比、PC48とPC45との存在比、PC49とPC34との存在比、PC48とPC26との存在比、PC26とPC20との存在比、PC44とPC23との存在比、PC49とPC20との存在比、PC09とPC01との存在比、PC16とPC14との存在比、PC29とPC10との存在比、PC42とPC29との存在比、PC32とPC22との存在比、PC24とPC14との存在比、PC29とPC14との存在比、PC42とPC13との存在比、PC34とPC19との存在比、PC35とPC13との存在比、PC27とPC15との存在比、PC11とPC07との存在比、PC24とPC19との存在比、PC36とPC19との存在比、PC32とPC21との存在比、PC35とPC12との存在比、PC51とPC22との存在比、PC49とPC32との存在比、PC42とPC12との存在比、PC09とPC05との存在比、PC15とPC09との存在比、PC29とPC28との存在比、PC14とPC01との存在比、PC28とPC13との存在比、PC29とPC21との存在比、PC38とPC15との存在比、PC45とPC15との存在比、PC38とPC01との存在比、PC39とPC34との存在比、PC44とPC28との存在比、PC18とPC14との存在比およびPC28とPC12との存在比からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在比を測定する工程を包含する、サンプルの選別方法。
【請求項7】
以下の群:PC09、PC10、PC14、PC15、PC19、PC27、PC30、PC35、PC38、PC44およびPC48ならびに/または、以下の群:PC19とPC15との存在比、PC30とPC10との存在比、PC21とPC15との存在比、PC44とPC10との存在比、PC38とPC19との存在比、PC38とPC10との存在比、PC35とPC26との存在比、PC30とPC21との存在比、PC15とPC10との存在比、PC10とPC09との存在比、PC20とPC19との存在比、PC28とPC19との存在比、PC15とPC13との存在比、PC19とPC01との存在比、PC19とPC14との存在比、PC38とPC21との存在比、PC30とPC19との存在比、PC19とPC12との存在比、PC27とPC10との存在比、PC35とPC19との存在比、PC44とPC19との存在比、PC27とPC21との存在比、PC15とPC12との存在比、PC22とPC15との存在比、PC19とPC09との存在比、PC28とPC10との存在比、PC27とPC06との存在比、PC26とPC15との存在比、PC42とPC19との存在比、PC19とPC07との存在比、PC21とPC14との存在比、PC30とPC22との存在比、PC19とPC11との存在比、PC30とPC26との存在比、PC38とPC22との存在比、PC30とPC12との存在比、PC30とPC29との存在比、PC29とPC15との存在比、PC35とPC10との存在比、PC14とPC13との存在比、PC21とPC20との存在比、PC48とPC43との存在比、PC29とPC19との存在比、PC10とPC07との存在比、PC38とPC29との存在比、PC19とPC05との存在比、PC11とPC09との存在比、PC32とPC10との存在比、PC44とPC21との存在比、PC21とPC09との存在比、PC38とPC26との存在比、PC30とPC13との存在比、PC42とPC10との存在比、PC13とPC09との存在比、PC21とPC11との存在比、PC30とPC06との存在比、PC30とPC28との存在比、PC10とPC01との存在比、PC38とPC12との存在比、PC27とPC11との存在比、PC44とPC26との存在比、PC30とPC24との存在比、PC27とPC19との存在比、PC22とPC14との存在比、PC29とPC27との存在比、PC21とPC18との存在比、PC13とPC08との存在比、PC27とPC24との存在比、PC19とPC16との存在比、PC49とPC15との存在比、PC14とPC12との存在比、PC27とPC22との存在比、PC48とPC10との存在比、PC21とPC07との存在比、PC44とPC41との存在比、PC14とPC06との存在比、PC19とPC08との存在比、PC30とPC11との存在比、PC22とPC09との存在比、PC27とPC26との存在比、PC42とPC21との存在比、PC14とPC10との存在比、PC24とPC15との存在比、PC44とPC22との存在比、PC34とPC10との存在比、PC48とPC22との存在比、PC27とPC12との存在比、PC49とPC44との存在比、PC49とPC27との存在比、PC30とPC23との存在比、PC44とPC29との存在比、PC48とPC19との存在比、PC28とPC15との存在比、PC11とPC10との存在比、PC16とPC10との存在比、PC49とPC09との存在比、PC32とPC19との存在比、PC27とPC13との存在比、PC44とPC13との存在比、PC27とPC16との存在比、PC10とPC05との存在比、PC21とPC16との存在比、PC20とPC13との存在比、PC28とPC26との存在比、PC38とPC05との存在比、PC28とPC21との存在比、PC19とPC18との存在比、PC38とPC13との存在比、PC42とPC26との存在比、PC12とPC07との存在比、PC44とPC12との存在比、PC20とPC10との存在比、PC22とPC11との存在比、PC48とPC39との存在比、PC16とPC15との存在比、PC27とPC18との存在比、PC15とPC05との存在比、PC30とPC05との存在比、PC39とPC15との存在比、PC15とPC01との存在比、PC16とPC09との存在比、PC44とPC39との存在比、PC45とPC30との存在比、PC49とPC30との存在比、PC19とPC13との存在比、PC21とPC01との存在比、PC24とPC09との存在比、PC27とPC01との存在比、PC27とPC23との存在比、PC22とPC20との存在比、PC51とPC49との存在比、PC26とPC18との存在比、PC22とPC07との存在比、PC42とPC22との存在比、PC30とPC01との存在比、PC18とPC09との存在比、PC27とPC05との存在比、PC49とPC35との存在比、PC36とPC10との存在比、PC23とPC15との存在比、PC35とPC22との存在比、PC13とPC07との存在比、PC20とPC09との存在比、PC28とPC22との存在比、PC20とPC14との存在比、PC49とPC38との存在比、PC35とPC21との存在比、PC45とPC44との存在比、PC45とPC27との存在比、PC48とPC45との存在比、PC49とPC34との存在比、PC48とPC26との存在比、PC26とPC20との存在比、PC44とPC23との存在比、PC49とPC20との存在比、PC09とPC01との存在比、PC16とPC14との存在比、PC29とPC10との存在比、PC42とPC29との存在比、PC32とPC22との存在比、PC24とPC14との存在比、PC29とPC14との存在比、PC42とPC13との存在比、PC34とPC19との存在比、PC35とPC13との存在比、PC27とPC15との存在比、PC11とPC07との存在比、PC24とPC19との存在比、PC36とPC19との存在比、PC32とPC21との存在比、PC35とPC12との存在比、PC51とPC22との存在比、PC49とPC32との存在比、PC42とPC12との存在比、PC09とPC05との存在比、PC15とPC09との存在比、PC29とPC28との存在比、PC14とPC01との存在比、PC28とPC13との存在比、PC29とPC21との存在比、PC38とPC15との存在比、PC45とPC15との存在比、PC38とPC01との存在比、PC39とPC34との存在比、PC44とPC28との存在比、PC18とPC14との存在比およびPC28とPC12との存在比からなる群より選択される少なくとも1つの糖鎖の存在比の膵臓がんのマーカーとしての使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63139(P2012−63139A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319022(P2008−319022)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成18年度、文部科学省、科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】