説明

糖鎖含有水溶性ポリマー化合物

単糖残基、オリゴ糖残基あるいは単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介し水溶性ポリマーの側鎖に結合したポリマーであって、該水溶性ポリマー中に(メタ)アクリル酸残基を20〜80モル%含むことを特徴とする糖鎖化合物合成用糖鎖含有ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、糖鎖製造に有用な糖鎖含有水溶性ポリマー化合物またはその製造方法、該化合物を用いた糖鎖の製造方法並びに該化合物からなる糖鎖化合物合成用の水溶性高分子プライマーに関する。
【背景技術】
糖は核酸や蛋白質と並んで生体を構成する主要な成分であるが、核酸や蛋白質と比べ、その構造あるいは機能はあまりよく理解されていない。糖は、通常糖鎖と呼ばれる重合体を形成し、さらにそれらが蛋白質や脂質と結合して糖蛋白質、糖脂質あるいはプロテオグリカンと総称される極めて複雑な複合分子を形成している。さらに、核酸あるいは蛋白質がその構成単位であるヌクレオチドあるいはアミノ酸が直線的に結合した高分子であるのに対して、糖鎖は分子内に複数の分岐点があるばかりでなく、その構成単位である単糖の結合様式も多様であるため、その構造は核酸や蛋白質と比較にならないほど複雑である。これら構造の複雑さは、この分野の研究を遅らせている大きな原因の一つとなっている。
しかし、近年糖鎖が細胞認識、免疫、分化、受精、老化、ガン化などに関与することが徐々にわかってくるにつれて、非常に注目される研究分野となってきた。このような現状より、天然の構造を有する糖鎖や新規な糖鎖を合成する試みが盛んになされている。核酸や蛋白質については自動合成技術が確立されており、このことにより、この分野の研究が著しく進歩したことは誰もが認めるところであり、糖鎖についても、その自動合成技術の確立は切望されている。
これまでに糖鎖の自動合成を試みたいくつかの報告があり、その手法は大きく分けて2つある。1つは化学合成によるものであるが、糖残基と糖残基を立体選択的に結合させる方法が十分確立されておらず、さらに保護基を結合させたり、あるいは脱離させたりと工程が煩雑であるという問題がある。もう1つは酵素合成によるものであり、保護基を必要とせず、また糖残基と糖残基を立体選択的に結合させることができるので化学合成に比べ、非常に有利であり、近年いくつかの方法が提案されるようになってきた。これには、最近各種糖転移酵素の遺伝子が単離され、遺伝子組換え技術による糖転移酵素の大量生産が可能になってきたという背景がある。また、自動合成では通常反応開始点となる糖残基を特定の担体上に特定の条件で開裂することのできるリンカーを介して結合されたもの(プライマーとも呼ばれる)が出発物質として用いられる。リンカーの種類によって製造される糖鎖化合物は異なり、オリゴ糖、配糖体、糖ペプチド、糖脂質など種々の形で担体より遊離される。
糖転移酵素を用いた糖鎖の自動合成の例としては、U.Zehaviらがアミノエチル基あるいはアミノヘキシル基を結合させたポリアクリルアミドゲルを固相担体とした糖転移酵素による固相合成を報告している(例えば、Carbohydr.Res.,124,23(1983);Carbohydr.Res.,228,255(1992)参照)。この方法は、適当な単糖を4−カルボキシ−2−ニトロベンジルグリコシドとした後、上記担体のアミノ基と結合させたものをプライマーとし、糖転移酵素により糖鎖伸長反応を行ない、その後光分解により伸長させた糖鎖をオリゴ糖として遊離させるというものである。しかし、糖転移酵素による糖転移収率は低く、10%にも満たない。これまで糖転移酵素は固相担体上に結合させた糖あるいはオリゴ糖とはあまり反応せず、糖鎖伸長反応を効率よく行うことは困難であるとされてきたが、U.Zehaviらは4−カルボキシ−2−ニトロベンジルグリコシドと固相担体との間をヘキサメチレン基やオクタメチレン基など鎖長の長いリンカーで結合させることにより、糖転移収率を最大51%まで向上したと報告している(例えば、React.Polym.,22,171(1994);Carbohydr.Res.,265,161(1994)参照)。しかしながら、この方法においても収率的には十分なレベルとは言えない。
その他の例として、C.−H.Wongらはアミノ化シリカに下記式

(式中、Acはアセチル基、Bocはt−ブトキシカルボニル基を示す)の基を結合させたものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、α−キモトリプシンの加水分解作用を利用し伸長させた糖鎖を糖ペプチドの形で切り出す方法を報告している(例えば、J.Am.Chem.Soc.,116,1136(1994)参照)。しかしながら、糖転移酵素による糖鎖伸長反応の収率は55〜65%であり、十分なものとは言えない。
また、C.−H.Wongらは、固相担体であるアミノ化シリカに結合させる基を下記式

(式中、Acはアセチル基を示す)に改良し、糖転移酵素により糖鎖を伸長させた後、ヒドラジン分解により糖鎖を遊離させる方法を報告しており、酵素による糖転移反応をほぼ定量的に行うことができたとも報告している(例えば、J.Am.Chem.Soc.,116,11315(1994)参照)。この方法によれば、伸長した糖鎖は6−カルボヒドラジドヘキサノール配糖体として遊離される。
M.Meldalらは、ジアミノ化ポリエチレングリコールのモノおよびジアクリロイル化体の重合体ゲルに、下記式

(式中、Acはアセチル基を示す)の基を結合させたものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、トリフロロ酢酸により糖鎖を糖ペプチドとして遊離させる方法を報告しており、糖転移反応もほぼ定量的に進行したと報告している(例えば、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1849(1994)参照)。この方法で得られる糖ペプチドのペプチド鎖はAsn(アスパラギン)−Gly(グリシン)であり、C末側のグリシン残基はグリシンアミド残基となっており、通常の糖ペプチドとは異なる。さらに、C.−H.Wongらは、アミノ化シリカを固相担体として下記式

(式中、Fmocは9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基を示す)の基を導入したものをプライマーとし、これにFmoc−アミノ酸およびFmoc−Thr(βGlcNAc)−OHを用いてペプチド鎖を伸長させ、次いでペプチド鎖上の保護基を脱離させ、その後上述のN−アセチルグルコサミン残基に糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させ、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムで処理することにより固相担体上で合成した糖ペプチドを遊離させる方法を報告している(例えば、J.Am.Chem.Soc.,119,8766(1997)参照)。得られた糖ペプチドの最初に固相担体に導入したアミノ酸に対する収率は10%以下であり、十分なものとは言えない。
T.NorbergらはSepharose 6B(アマシャムファルマシア社製)に下記式

に示した基を結合させたものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、臭素あるいはアンモニア/硼酸アンモニウムにより伸長させた糖鎖を遊離させる方法を報告している(例えば、Carbohydr.Res.,319,80(1999)参照)。酵素による糖転移反応は定量的に進行しており、収率的には問題はないが、プライマーを製造に高価な3,4−ジエトキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオンを用いており、経済的ではない。上述したこれらの方法は、必ずしも糖転移反応の収率が十分でないことや不溶性担体上で糖鎖伸長反応を行うため、固定化糖転移酵素を利用できないという欠点がある。遺伝子組換えにより糖転移酵素の大量生産が可能になってきたとはいえ、まだまだ非常に高価であり、繰り返して使用できる固定化糖転移酵素の利用が望まれる。固定化糖転移酵素を利用するためには、不溶性担体ではなく、水溶性担体上で糖鎖伸長反応を行う必要がある。
S.Rothらは、以下のような方法を開示している(例えば、特表平5−500905号公報参照)。まず、糖転移酵素の糖受容体を固相担体に結合させ、これをアフィニティ吸着体とし、この糖受容体と結合することのできる糖転移酵素を含む組織抽出液を接触させることにより、糖転移酵素をアフィニティ吸着体に結合させる。次いで、この糖転移酵素が結合したアフィニティ吸着体をこの糖転移酵素が糖供与体として利用できる糖ヌクレオチドを含む溶液と接触させることにより、糖転移酵素をアフィニティ吸着体から遊離させるとともに糖受容体に糖残基を一つ伸長させる。さらに、この糖残基が一つ伸長した糖受容体と結合することのできる糖転移酵素を含む組織抽出液を接触させ、同様のことを繰り返し所望の糖鎖を固相担体上に合成するというものである。しかしながら、この方法の有用性を示す具体的なデータは示されておらず、得られた糖鎖を固相担体から遊離させる方法も開示されていない。
水溶性担体上で糖鎖伸長を行う方法としては、C.−H.Wongらは、アクリルアミド−アクリル酸−N−イソプロピルアクリルアミド共重合体のアクリルアミド残基に下記式

(式中、Acはアセチル基を示す)の基を結合させた水溶性のポリマーをプライマーとし、糖転移酵素により糖鎖を伸長させた後、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)により遊離させる方法を報告している(例えば、Adv.Synth.Catal.,343,675(2001)参照)。このときの共重合体プライマー中に含まれるアクリル酸の割合は4%であり、本発明のプライマーとは異なる。この方法によれば、酵素による糖転移反応は80〜90%の収率で進行し、伸長した糖鎖はp−ホルミルフェノール配糖体として遊離される。しかしながら、この方法では遊離させたp−ホルミルフェノール配糖体を精製するためには、有機溶媒を必要とするカラムクロマトグラフィーが必要であること、得られるp−ホルミルフェノール配糖体が必ずしも安定ではないという欠点を有している。
本発明者らはポリアクリルアミド中のアミド態窒素原子の5個に1個の割合で、下記式

(式中、Acはアセチル基を示す)に示した基を結合させたものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、水素化分解により伸長させた糖鎖をオリゴ糖として遊離させる方法を報告している(例えば、Tetrahedron Lett.,35,5657(1994);Carbohydr.Res.,305,443(1998))参照)。
さらに、本発明者らがポリアクリルアミドのアミド態窒素原子に、下記式

(式中、Acはアセチル基を示す)に示した基を結合させたものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、α−キモトリプシンの加水分解作用を利用して伸長させた糖鎖を6−アミノヘキサノール配糖体として遊離させる方法を報告している(例えば、Tetrahedron Lett.,36,9493(1995);Carbohydr.Res.,305,443(1998)参照)。
これらの方法では、いずれも遊離の酵素を用いて効率よく糖鎖化合物を合成できることを報告しているが、後述するように固定化酵素を用いたときは必ずしも十分効率的とは言えない。また、本発明者らはポリアクリルアミドのアミド態窒素に適当な長さのリンカーおよび特定のプロテアーゼの開裂部位を含むアミノ酸残基あるいはペプチド残基を介して、前記プロテアーゼの開裂部位を含まず、かつその側鎖官能基に糖鎖伸長開始点となる単糖残基が結合しているペプチド残基、例えば下記式

(式中、Acはアセチル基を示す)に示した基、が結合したものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、前記プロテアーゼの加水分解作用を利用して伸長させた糖鎖を糖ペプチドとして遊離させる方法を開示している(例えば、特開2001−220399号公報参照)。
また、本発明者らは水溶性ポリマーの側鎖に一般式(VIII)

(式中、R13およびR14はそれぞれ独立して、Hまたは単糖残基あるいはオリゴ糖残基を示し、R15は炭素数6〜20のアルキル基またはアルケニル基を示し、R16は炭素数5〜19のアルキレン基を示す)が結合したものをプライマーとし、糖転移酵素を用いて糖鎖を伸長させた後、セラミドの存在下、セラミドグリカナーゼを作用させることにより、該糖鎖含有ポリマーから複数の糖残基が伸長したオリゴ糖残基をセラミドに転移させ、スフィンゴ糖脂質として遊離させる方法を開示している(例えば、特開平10−251287号公報参照)。
これらのなかでは、水溶性ポリマーとしてポリアクリルアミドの場合が具体的に例示されているが、アクリル酸が含まれる場合は例示されていない。また、水溶性ポリマーとしてポリアクリルアミドの場合、固定化糖転移酵素を用いて糖転移反応を行った際、後述するように必ずしも十分効率的とは言えない。また、後者のプライマーにおいては、糖転移反応後、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去するためにゲルろ過クロマトグラフィーや限外ろ過を行ったとき、プライマーの回収率が必ずしも十分とは言えない。
本発明の主な目的は、各種糖鎖化合物の自動合成に適したプライマーとして有用な化合物、該化合物を用いた糖鎖の製造方法を提供することにある。
【発明の開示】
本発明者らは前記問題点を解決するために鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸系残基(アクリル酸もしくはその塩およびメタクリル酸もしくはその塩から選ばれる)を20〜80モル%含む水溶性ポリマーの側鎖に選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介して単糖残基、オリゴ残基、あるいは単糖残基もしくはオリゴ糖残基が結合したペプチドを結合させることにより、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
1.単糖残基あるいはオリゴ糖残基が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介して水溶性ポリマーの側鎖に結合したポリマーであって、該水溶性ポリマー中に(メタ)アクリル酸残基を20〜80モル%含み、前記リンカーは(メタ)アクリル酸残基以外の繰り返し単位に結合されることを特徴とする糖鎖含有水溶性ポリマー化合物。
2.単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介し水溶性ポリマーの側鎖に結合したポリマーであって、該水溶性ポリマー中に(メタ)アクリル酸残基を20〜80モル%含み、前記リンカーは(メタ)アクリル酸残基以外の繰り返し単位に結合されることを特徴とする項1に記載の化合物。
3.水溶性ポリマーが、(メタ)アクリル酸20〜80モル%とアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類および脂肪酸ビニルエステル類からなる群から選ばれた1種または2種以上のビニル系単量体80〜20モル%の共重合体である項1または2記載の化合物。
4.リンカーに含まれる選択的に開裂可能な結合が、水素化分解あるいは2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンによる酸化工程により開裂される項1〜3のいずれかに記載の化合物。
5.前記リンカーが、一般式(I)

(式中、Rは単糖残基もしくはオリゴ糖残基を示し、Rはメチレン基4〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、XはO、SまたはNHを示す。)で表される基である項1〜4のいずれかに記載の化合物。
6.RがN−アセチルグルコサミン残基、グルコース残基又はラクトース残基である項5記載の化合物。
7.Rがペンチレン基である項5または6に記載の化合物。
8.前記リンカーが一般式(II)

(式中、Rは単糖残基もしくはオリゴ糖残基を示し、Rは炭素数6〜20の直鎖又は分枝を有するアルキル基またはアルケニル基を示し、Rはメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基を示し、YはO、SまたはNHを示す。)で表される基である項1〜7のいずれかに記載の化合物。
9.Rがグルコース残基またはラクトース残基である項8記載の化合物。
10.前記リンカーが一般式(III)

(式中、Rは単糖残基あるいはオリゴ糖残基を示し、Rはメチレン基2〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、Rはメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基を示し、ZおよびWはそれぞれ独立してO、SまたはNHを示す。)で表される基である項1〜9のいずれかに記載の化合物。
11.RがN−アセチルグルコサミン残基である項10記載の化合物。
12.前記ペプチド残基がアミノ酸残基2〜30個よりなる項2記載の化合物。
13.リンカーに含まれる選択的に開裂可能な結合が、特定の加水分解酵素によって開裂可能な結合である項1〜12のいずれかに記載の化合物。
14.特定の加水分解酵素が、セラミドグリカナーゼ又はα−キモトリプシンである項13記載の化合物。
15.特定の加水分解酵素が、単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合しているアミノ酸残基或いはペプチド残基中に開裂部位を含まないプロテアーゼである項13記載の化合物。
16.単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が連結される選択的に開裂可能な結合を含むリンカーが一般式(IV)

(式中、Rはメチレン基1〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、Rは水溶性ポリマー化合物と結合する。R10は特定のプロテアーゼにより開裂できる部位を有するアミノ酸残基あるいはペプチド残基を示し、R10は単糖残基あるいはオリゴ糖残基と結合する。)で表された基であり、単糖残基あるいはオリゴ糖残基はグリコシド結合により直接又は二価の連結基を介してAsn、Asp、Cys、Gln、Glu、Lys、Ser、ThrまたはTyr残基の側鎖官能基あるいはペプチド残基中の前記アミノ酸残基の側鎖官能基に結合している項15記載の化合物。
17.Rが一般式(V)

(式中、AはO、CH、C=OまたはNHを示し、かつAを介して水溶性ポリマーの側鎖と結合しており、nは1〜18の整数を示す)で表される基である項16記載の化合物。
18.側鎖官能基に結合した二価の連結基がメチレン基1〜20個分の長さを有する基である項16または17記載の化合物。
19.側鎖官能基に結合した二価の連結基が一般式(VI)

(式中、BはO、NHまたはC=Oを示し、かつBを介してアミノ酸残基の側鎖官能基と結合しており、nは1〜18の整数を示す)で表される基である項16〜18のいずれかに記載の化合物。
20.項1〜19のいずれかに記載の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物からなる糖鎖化合物合成用水溶性高分子プライマー。
21.一般式(VII)

(式中、R11は単糖残基あるいはオリゴ糖残基を示し、R12はメチレン基4〜20個分の長さを有する二価の連結基を示す)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体と(メタ)アクリル酸と少なくとも1種類のビニル系単量体とを、(メタ)アクリル酸が全ビニル系共重合体中20〜80モル%になるように共重合することを特徴とする糖鎖含有水溶性ポリマー化合物の製造方法。
22.R11がN−アセチルグルコサミン残基、グルコース残基またはラクトース残基である項21記載の方法。
23.R12がペンチレン基である項22記載の方法。
24.ビニル系単量体がアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン酸、脂肪酸ビニルエステル類からなる群から選ばれる項21記載の方法。
25.糖鎖化合物を製造する方法であって、
(工程1)項1あるいは2に記載の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物に糖ヌクレオチドの存在下に糖転移酵素と接触させることにより、糖ヌクレオチドより糖残基を該ポリマー化合物に転移させる工程、
(工程2)必要に応じて工程1を2回以上繰り返して糖鎖を伸長させる工程、
(工程3)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去する工程、および、
(工程4)工程1〜工程3を複数回繰り返した後、複数の糖残基が転移して糖鎖が伸長した水溶性ポリマー化合物から糖鎖を遊離させる工程、を含むことを特徴とする糖鎖化合物を製造する方法。
26.糖鎖化合物を製造する方法であって
(工程1)項8記載の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物に糖ヌクレオチドの存在下に転移酵素を作用させることにより、糖ヌクレオチドより、糖残基を該水溶性ポリマー化合物に転移させる工程、
(工程2)必要に応じて工程1を2回以上繰り返して、糖鎖を伸長させる工程、
(工程3)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去する工程、および、
(工程4)工程1〜工程3を複数回、繰り返した後、複数の糖残基が転移して伸長した水溶性ポリマー化合物に、セラミドの存在下、セラミドグリカナーゼを作用させ、該水溶性ポリマー化合物より、複数の糖残基が伸長したオリゴ糖残基をセラミドに転移させる工程、を含むことを特徴とする糖鎖化合物を製造する方法。
本発明の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物を、糖鎖化合物合成用水溶性高分子プライマー(以下、単に「プライマー」と略すことがある)として用いることにより、種々の糖鎖化合物を効率よく合成でき、自動合成にも適用することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物(以下、「糖鎖含有ポリマー」と略すことがある)は、単糖残基あるいはオリゴ糖残基が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介して水溶性ポリマーの側鎖に結合したポリマーであって、該水溶性ポリマー中に(メタ)アクリル酸残基を単量体として20〜80モル%、好ましくは30〜70モル%、より好ましくは40〜60モル%含むものである。
即ち、本発明の水溶性ポリマーは、20〜80モル%の以下の(メタ)アクリル酸残基(カルボキシル基の塩を含む)を有する:

(式中Mは、水素原子、アルカリ金属(Na,Li,K)、1/2アルカリ土類金属(1/2Ca,1/2Mg,1/2Ba)、アンモニウムなどを示す。)
ここで、糖鎖は、当該(メタ)アクリル酸残基以外の単量体に由来する繰り返し単位、例えば

の構造を有する繰り返し単位に結合される。
好ましい1つの実施形態において、リンカー(linker)は、エステル結合(COO)、アミド結合(CONH)、チオエステル結合(COS)を介してアクリル酸またはメタクリル酸由来の繰り返し単位と結合され、リンカー(linker)と単糖残基(mono−saccharide)またはオリゴ糖残基(oligo−saccharide)は、グリコシド結合により結合される。
単糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンなどが例示されるが、これらに限定されない。
オリゴ糖としては、上記の単糖が、2〜10個連結されたものを包含し、例えば、ラクトース、キトビオース、N−アセチルラクトサミン、α2,3−シアリルラクトース、3−β−ガラクトシル−(6−β−N−アセチルグルコサミニル)−N−アセチルガラクトサミン等が挙げられる。オリゴ糖は直鎖状であっても良く、1つの糖残基が2つの糖残基と結合した枝分かれ構造を有していても良い。
また、本発明の糖鎖含有ポリマーは、単糖残基(mono−saccharide)またはオリゴ糖残基(oligo−saccharide)が結合したアミノ酸残基(amino acid residue)或いはペプチド残基(peptide residue)が選択的に開裂可能な結合を含むリンカー(linker)を介し水溶性ポリマーの側鎖に結合したポリマーであって、該水溶性ポリマー中に(メタ)アクリル酸残基を単量体として20〜80モル%含む糖鎖含有ポリマーである。該ポリマーは、以下のような部分構造を含み得る:

さらに、これらの中には、前記糖鎖含有ポリマーに糖転移酵素を作用させて、糖鎖を伸長させた糖鎖含有ポリマーであっても、さらに糖転移酵素により糖鎖の伸長の可能性のあるものは全て含まれる。
水溶性ポリマーの(メタ)アクリル酸(20〜80モル%)以外の単量体としては、特に制限されるものではないが、例えばアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類からなる群から選ばれた1種または2種以上のビニル系単量体の重合体などが好適に用いられる。これらのうち、単糖、オリゴ糖等の糖鎖は、好ましくはアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類にリンカー及び必要に応じてアミノ酸残基或いはペプチド残基を介して結合され得る。
なお、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸ヒドロキシエチルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアクリル酸ジメチルアミノアルキルエステル類、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのジメチルアミノアルキルエステル類は、水溶性が高いので、多量(例えば70モル%以上)に使用してもよいが、他のアクリル酸エステル類、他のメタクリル酸エステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類は、ポリマー全体として、水溶性になる量で使用することができる。アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸ヒドロキシエチルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアクリル酸ジメチルアミノアルキルエステル類、メタクリル酸ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのジメチルアミノアルキルエステル類は、(メタ)アクリル酸(20〜80モル%)と糖鎖含有モノマーの合計量を除く割合で使用できる。
前記アクリルアミド類としては、例えばアクリルアミドやN−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−インプロピルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミド類が好適に用いられる。
前記メタクリルアミド類としては、例えばメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミドやN−イソプロピルメタクリルアミドなどのN−アルキルメタクリルアミド類などが好適に用いられる。
前記アクリル酸エステル類としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどが好適に用いられる。
前記メタクリル酸エステル類としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどが好適に用いられる。
前記スチレン類としては、例えばスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどが好適に用いられる。
前記脂肪酸ビニルエステル類としては、例えば酢酸ビニル、酪酸ビニルなどが好適に用いられる。
選択的に開裂可能な結合は、開裂後遊離されてくる糖鎖化合物、例えばオリゴ糖、糖ペプチド、スフィンゴ糖脂質、オリゴ糖配糖体を分解することなく開裂することのできる結合であれば、特に制限はなく、ペプチドやオリゴヌクレオチドなどの固相合成で用いられているリンカー内に含まれる結合のいくつかを利用することができる。例えば、弱酸性あるいは弱アルカリ性で開裂できる結合、水素化分解反応により開裂できる結合、光反応により開裂できる結合あるいは酵素により開裂できる結合などが挙げられる。さらに好ましくは、水素化分解、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンによる酸化、プロテアーゼによる加水分解、セラミドグリカナーゼの転移反応などが挙げられる。
水溶性ポリマーの側鎖に選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介して結合した単糖残基あるいはオリゴ糖残基としては特に制限はなく、例えば一般式(I)(式中、Rは単糖もしくはオリゴ糖残基、Rはメチレン基4〜20個分の長さを有する二価の連結基、XはO、SまたはNHを示す)で表される基、一般式(II)(式中、Rは単糖もしくはオリゴ糖残基を示し、Rは炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示し、Rはメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基を示し、YはO、SまたはNHを示す)で表される基、一般式(III)(式中、Rは単糖残基或いはオリゴ糖残基を示し、Rはメチレン基2〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、Rはメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基を示し、Z及びWはそれぞれ独立してO、S又はNHを示す)で表される基などを挙げることができる。

(一般式(I)では、R−O−以外の部分が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーであり、一般式(II)では、R−O−以外の部分が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーであり、一般式(III)では、R−O−以外の部分が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーである)。
ここで、メチレン基4〜20個分(好ましくは4〜18個分、より好ましくは6〜12個分)の長さを有する二価の連結基、メチレン基5〜19個分(好ましくは5〜15個分、より好ましくは5〜11個分)の長さを有する二価の連結基、メチレン基2〜20個分(好ましくは4〜18個分、より好ましくは6〜12個分)の長さを有する二価の連結基は、全てがメチレン残基で構成されていてもよく、メチレン残基がエーテル結合で連結された基(例えば、−(OCH2CH2)n1−;n1は1〜6の整数)であっても良い(但し、全体としての長さがメチレン基4〜20個分、メチレン基5〜19個分、或いはメチレン基2〜20個分であり、Oは、メチレン基1個分の長さとする)。本明細書中の他の二価の連結基についても上記と同様に理解される。
の単糖残基あるいはオリゴ糖残基としては、特に制限はなく、グルコース残基、ガラクトース残基、マンノース残基、N−アセチルグルコサミン残基、N−アセチルガラクトサミン残基、キシロース残基、ラクトース残基、N−アセチルラクトサミン残基、キトビオース残基などが例示される。
のメチレン基4〜20個分の長さを有する二価の連結基としては、特に制限はなく、例えばC〜C20のアルキレン基などを用いることができる。C〜C20のアルキレン基としては、ブチレン基、ペンチレン基、ヘプチレン基、ドデシレン基などが例示される。
の単糖もしくはオリゴ糖残基としては、特に制限はなく、例えば、グルコース残基またはラクトース残基などが例示され、さらに好ましくはβ−グルコース残基またはβ−ラクトース残基である。
の炭素数6〜20のアルキル基としては、特に制限はなく、例えばヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基などの直鎖又は分枝を有するC〜C20(好ましくはC〜C18)のアルキル基が例示され、C〜C20のアルケニル基も特に制限はないが、シス−9−オクタデセニル基などの直鎖又は分枝を有するC〜C20(好ましくはC〜C18)のアルケニル基が例示される。
のメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基としては、特に制限はく、例えばC〜Cのアルキレン基などを用いることができる。C〜C19のアルキレン基としては、ペンチレン基、ヘプチレン基、ノニレン基、ヘプタデシレン基などが例示される。
の単糖残基あるいはオリゴ糖残基としては、特に制限はなく、例えば、グルコース残基、ガラクトース残基、マンノース残基、N−アセチルグルコサミン残基、N−アセチルガラクトサミン残基、キシロース残基、ラクトース残基、N−アセチルラクトサミン残基、キトビオース残基などが例示され、N−アセチルグルコサミン残基が好ましい。
のメチレン基2〜20個分の長さを有する二価の連結基としては、特に制限はなく、例えば、C〜C20(好ましくはC〜C18)のアルキレン基などを用いることができる。C〜C20のアルキレン基としては、エチレン基、ブチレン基、ヘキレン基、ドデシレン基、オクタデシレン基などが例示される。
のメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基としては、特に制限はなく、例えば、C〜C19(好ましくはC〜C15)のアルキレン基などを用いることができる。C〜C19のアルキレン基としては、ペンチレン基、ヘプチレン基、ウンデシレン基、ヘプタデシレン基などが例示される。
水溶性ポリマーの側鎖に選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介し結合した単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したペプチド残基としては、特に制限はないが、アミノ酸残基2〜30個からなる単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したペプチド残基が好ましく、アミノ酸残基4〜20個からなる単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したペプチド残基がさらに好ましく、構成するアミノ酸残基は分子内にアミノ基とカルボキシル基を有するものであれば特に制限はなく、Gly(グリシン)、Ala(アラニン)、Val(バリン)、Leu(ロイシン)、Ile(イソロイシン)、Tyr(チロシン)、Phe(フェニルアラニン)、Trp(トリプトファン)、Glu(グルタミン酸)、Asp(アスパラギン酸)、Lys(リジン)、Arg(アルギニン)、His(ヒスチジン)、Cys(システイン)、Met(メチオニン)、Ser(セリン)、Thr(トレオニン)、Asn(アスパラギン)、Gln(グルタミン)あるいはPro(プロリン)残基などのα−アミノ酸残基あるいはβ−Ala残基のようなβ−アミノ酸残基などが例示される。また、アミノ酸残基はD体、L体いずれでもよいが、L体の方が好ましい。
結合している単糖残基あるいはオリゴ糖残基は、特に制限はなく、ガラクトース残基、マンノース残基、N−アセチルグルコサミン残基、N−アセチルガラクトサミン残基、グルコース残基、キシロース残基、シアル酸残基、N−アセチルラクトサミン残基、ラクトース残基、キトビオース残基、α2,3−シアリルラクトサミン、3−β−ガラクトシル−(6−β−N−アセチルグルコサミニル)−N−アセチルガラクトサミンなどが例示され、これら単糖残基あるいはオリゴ糖残基はα結合、β結合いずれの結合様式で結合していても構わない。ここでシアル酸とはノイラミン酸のアシル誘導体の総称であり、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸、9−O−アセチル−N−アセチルノイラミン酸などが含まれる。
本発明の好ましいリンカーとしては、一般式(IV)

(式中、Rはメチレン基1〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、R10は特定のプロテアーゼにより開裂できる部位を有するアミノ酸残基あるいはペプチド残基を示す)で表された基例示できる。
単糖残基あるいはオリゴ糖が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基としては、Ser、Thr、Glu,Gln、Asp,Asn、Lys、Cys、Tyrからなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ酸を含む残基が例示され、これらアミノ酸の側鎖官能基と糖残基は直接又は二価の連結基を介して結合することができる。
のメチレン基1〜20個分の長さを有する二価の連結基としては、特に制限はないが、上記一般式(V)

(式中、AはO、CH、C=OまたはNHを示し、かつAを介して水溶性ポリマーの側鎖と結合しており、nは1〜18の整数を示す)で表される基などを挙げることができ、具体的には下記に示すようなものが例示される。

10の特定のプロテアーゼにより開裂できる部位を有するアミノ酸残基あるいはペプチド残基としては、単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基中に開裂する部位が含まれないプロテアーゼにより開裂できる部位を有するアミノ酸残基あるいはペプチド残基であれば、特に制限はないが、例えば特定のプロテアーゼがα−キモトリプシンのときにはフェニルアラニン、トリプトファン、チロシンなどの芳香族アミノ酸残基、プロリン特異的プロテアーゼのときにはプロリン残基、リジン特異的プロテアーゼのときにはリジン残基、グルタミン酸特異的プロテアーゼのときはグルタミン酸残基、トリプシンのときはアルギニンやリジンなどの塩基性アミノ酸残基、ファクターXaのときはIle(イソロイシン)−Glu(グルタミン酸)またはAsp(アスパラギン酸)−Gly(グリシン)−Arg(アルギニン)残基、エンテロキナーゼのときはAsp(アスパラギン酸)−Asp(アスパラギン酸)−Asp(アスパラギン酸)−Asp(アスパラギン酸)−Lys(リジン)残基などが挙げられ、単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基の種類に応じて、適宜選択することができる。
側鎖官能基に二価の連結基を介してグリコシド結合により単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基としては、二価の連結基を介してグルコシド結合で単糖残基又はオリゴ糖残基を結合させることのできる側鎖官能基を有するものであれば特に制限はないが、Ser、Thr、Lys、Asp、Glu、Tyr、Cys、AsnまたはGln残基が好ましい。
二価の連結基としては、アミノ酸残基と単糖残基を結合させることのできるものであれば特に制限はなく、メチレン基1〜20個分の長さを有しているものが好ましく、さらに上記一般式(VI)

(式中、BはO、NHまたはC=Oを示し、かつBを介してアミノ酸残基の側鎖官能基と結合しており、nは1〜18の整数を示す)で表される基が好ましい。具体的には、下記に示されるようなものが例示される。

好ましい1つの実施形態において、本発明の糖鎖含有ポリマーは側鎖官能基を有し、(i)側鎖官能基に選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介して単糖残基、オリゴ糖残基あるいは単糖残基もしくはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が結合している重合性ビニル系単量体と(ii)(メタ)アクリル酸と(iii)少なくとも1種類の他のビニル系単量体とを共重合することにより製造することができる3種以上のモノマーの共重合体である。そのときの(メタ)アクリル酸の全ビニル系共重合体中に占める割合は20〜80モル%であり、好ましくは40〜60モル%である。また、側鎖官能基を有し、側鎖官能基に選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介し、単糖残基、オリゴ糖残基あるいは単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が結合している重合性ビニル系単量体の全単量体に占める割合には、特に制限はないが、0.1〜50モル%が好ましく、さらに1〜25モル%が好ましい。
側鎖官能基を有し、側鎖官能基に選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介し、単糖残基、オリゴ糖残基あるいは単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が結合している重合性ビニル系単量体としては、例えば一般式(VII)(式中、R11は単糖残基あるいはオリゴ糖残基、R12はメチレン基4〜20個分の長さを有する二価の連結基を示す)で表されるアクリルアミド誘導体、一般式(IX)(式中、R17は炭素数6〜20の直鎖又は分枝を有するアルキル基またはアルケニル基を示し、nは5〜19の整数を示す)で表されるアクリルアミド誘導体、一般式(X)(式中、R18は炭素数2〜20のアルキレン基、R19は炭素数5〜19のアルキレン基を示す)で表されるアクリルアミド誘導体、あるいは一般式(XI)(式中、R20は炭素数1〜18のアルキレン基を示し、R21は特定のプロテアーゼにより開裂できる部位を有するアミノ酸残基あるいはペプチド残基を示し、R22はその残基中に直接又は二価の連結基を介してグリコシド結合により単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したSer、Thr、Glu,Gln、Asp,Asn、Lys、Cys、Tyr残基またはこれらアミノ酸残基を含むペプチド残基を示す)で表されるアクリルアミド誘導体などが例示される。

なお、上記の一般式(VII)、(IX)、(X)、(XI)で表されるアクリルアミド誘導体に代えて、対応するメタクリルアミド誘導体を使用することも可能である。対応するメタクリルアミド誘導体は、下記のアクリルアミド誘導体の製造法において、アクリルアミド部分をメタクリルアミドに代えた以外は同一の化合物を使用して、同様に製造することができる。
前記共重合はラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などの手法を用いることにより行うことができ、中でもペルオキソ二硫酸アンモニウムなどを触媒とするラジカル重合がより好適に用いることができる。
前記ビニル系単量体としては、例えばアクリルアミド類、メタクリルアミド類、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類などが挙げられる。
アクリルアミド類としては、アクリルアミドやN−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどのN−アルキルアクリルアミド類などが例示される。
メタクリルアミド類としては、例えばメタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミドやN−イソプロピルメタクリルアミドなどのN−アルキルメタクリルアミド類などが例示される。
アクリル酸エステル類としてはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどが例示される。
メタクリル酸エステル類としてはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどが例示される。
スチレン類としてはスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどが例示される。
脂肪酸ビニルエステル類としては酢酸ビニル、酪酸ビニルなどが例示される。
共重合体の一般的な分子量は約10000〜約10000000であり、好ましくは20000〜5000000、より好ましくは50000〜2000000である。
前記、一般式(VII)、(IX)、(X)、(XI)で表されるアクリルアミド誘導体は、通常用いられている各種有機合成化学的な手法により合成することができる。
上記一般式(VII)で表されるアクリルアミド誘導体は、例えば、一般式(XII)(式中、R23、R24、およびR25はそれぞれ独立して、アシル型保護基,エーテル型保護基あるいはアシル型保護基および/またはエーテル型保護基で水酸基が保護された単糖残基あるいはオリゴ糖残基を示す)で表される糖オキサゾリン誘導体や一般式(XIII)(式中、XはF、Cl、BrまたはOC(NH)CCl、R26はNHCOCHまたはOR30で表される基、R27、R28、R29およびR30はそれぞれ独立して、アシル型保護基,エーテル型保護基あるいはアシル型保護基および/またはエーテル型保護基で水酸基が保護された単糖残基あるいはオリゴ糖残基を示す)で表されるハロゲン化糖あるいはトリクロロアセトイミデート誘導体とp−ニトロベンジルアルコールとを適当な触媒存在下で縮合させた後、ニトロ基を還元してアミノ基へと変換する。その後、一般式(XIV)(式中、nは4〜20の整数を示す)で表されるω−アミノ脂肪酸と塩化アクリロイルとの縮合により得られる一般式(XV)(式中、nは4〜20の整数を示す)で表されるアクリルアミド誘導体と上記化合物とを適当な縮合剤存在下、縮合させることにより得られ得る。

上記一般式(IX)で表されるアクリルアミド誘導体は、例えば、一般式(XVI)(式中、R31、R32、R33、R34、R35、R36およびR37はそれぞれ独立してアシル型保護基またはエーテル型保護基を示し、XはF、Cl、BrまたはOC(NH)CClを示す)で表される活性化ラクトースと一般式(XVII)(式中、R38は炭素数6〜20のアルキル基またはアルケニル基を示し、R39は保護基を示す)で表されるセリン誘導体とを適当な触媒存在下、縮合反応させた後、セリン残基部分のアミノ基の保護基を除去し、一般式(XVIII)(式中、YはOH、Cl、Brを示し、nは5〜9の整数を示す)で表されるアクリルアミド誘導体と縮合反応させ、さらにラクトース部分の保護基を除去することにより得られる。

上記一般式(X)で表されるアクリルアミド誘導体は、一般式(XIX)(式中、R40、R41、およびR42はそれぞれ独立して、アシル型保護基あるいはエーテル型保護基を示す)で表される糖オキサゾリン誘導体と一般式(XX)(式中、R43は炭素数2〜20のアルキレン基を示し、R44は保護基を示す)で表されるフェニルアラニン誘導体を適当な触媒存在下に縮合させた後、保護基を除去し、一般式(XXI)(式中、R45は炭素数5〜19のアルキレン基を示し、YはOH、Cl、Brを示す)で表されるアクリルアミド誘導体と反応させ、さらに糖部分の保護基を除去することにより得られる

上記一般式(XI)で表されるアクリルアミド誘導体は、ペプチド自動合成装置を利用して合成することができる。ここでは、プロテアーゼがα−キモトリプシンであり、R21が芳香族アミノ酸残基であり、R22が芳香族アミノ酸を含まない任意のペプチド残基であり、その残基中にOH基あるいは酸アミド基にグリコシド結合により単糖残基が結合したセリン残基、トレオニン残基、グルタミン残基またはアスパラギン残基を含むペプチド残基、あるいは側鎖官能基に二価の連結基を介してグリコシド結合により単糖残基が結合したアミノ酸残基を含むペプチド残基である場合について述べる。まず、適当な固相担体上でアミノ酸を伸長させ、芳香族アミノ酸残基を含まない任意のペプチドであり、その残基中にOH基あるいは酸アミド基にグリコシド結合により単糖残基が結合したセリン残基、トレオニン残基、グルタミン残基またはアスパラギン残基を含むペプチド残基、あるいは側鎖官能基に二価の連結基を介してグリコシド結合により任意の単糖残基が結合したアミノ酸残基を含むペプチドを固相担体上で合成する。そして、アミノ基が一般式(XXII)(式中、R46は炭素数1〜18のアルキレン基を示す)で表される基でアシル化された芳香族アミノ酸誘導体を用いてペプチド鎖を伸長させた後、適当な方法で固相担体より伸長させたペプチドの遊離およびペプチド鎖あるいは単糖残基上の保護基を脱離させることにより得ることができる。

OH基あるいは酸アミド基にグリコシド結合により単糖残基が結合したセリン残基、トレオニン残基、グルタミン残基またはアスパラギン残基を含むペプチド残基、あるいは側鎖官能基に二価の連結基を介してグリコシド結合により単糖残基が結合したアミノ酸残基を導入するときは、通常のN−保護アミノ酸の代わりに、水酸基が適当な保護基で保護された単糖残基がOH基あるいは酸アミド基あるいは二価の連結基を介して側鎖官能基にグリコシド結合で結合した相当するN−保護アミノ酸を用いることにより導入することができる。アミノ基が上記一般式(XXII)でアシル化された芳香族アミノ酸も通常のN−保護アミノ酸と同様の方法で導入することができる。
水酸基が適当な保護基で保護された単糖残基がOH基あるいは酸アミド基にグリコシド結合により結合したセリン残基、トレオニン残基、グルタミン残基またはアスパラギン残基および側鎖官能基に二価の連結基を介して水酸基が適当な保護基で保護された単糖残基がグリコシド結合で結合したN−保護アミノ酸は、一般的な有機合成化学的手法で得ることができる。また、単糖残基が結合したN−保護アミノ酸のうちのいくつかのもの、例えばFmoc−Asn(GlcNAc(Ac)3−β−D)−OH、Fmoc−Ser(GalNAc(Ac)3−α−D)−OHやFmoc−Thr(GalNAc(Ac)3−α−D)−OHなどは既に市販されており、これらを利用することもできる。
アミノ基が上記一般式(XXII)で表される基でアシル化された重合性芳香族アミノ酸誘導体は、一般的な有機合成化学的な手法で合成することができる。芳香族アミノ酸残基がフェニルアラニンであるときを例に挙げると、フェニルアラニンエチルエステルにω−アクリロイルアミノ脂肪酸を縮合後、エチルエステルを加水分解することにより得ることができる。フェニルアラニンエチルエステルとω−アクリロイルアミノ脂肪酸との縮合は、フェニルアラニンエチルエステルとω−アクリロイルアミノ脂肪酸とを縮合させることができる方法であれば特に制限はなく、通常ペプチド結合形成に用いられる縮合剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、カルボジイミダゾール、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキシキノリン、ジフェニルホスホリルアジドなどの存在下両者を接触させることにより縮合させることができる。
本発明の糖鎖化合物製造方法の第1工程では、糖鎖含有水溶性ポリマー化合物に糖ヌクレオチドの存在下に糖転移酵素と接触させることにより、糖ヌクレオチドより糖残基を該糖鎖含有ポリマーに転移させる。
糖ヌクレオチドより糖鎖含有ポリマーへの糖の転移は、通常糖鎖含有ポリマーと糖ヌクレオチドとを含む中性の緩衝液中で、10〜60℃、好ましくは20〜40℃で、1〜120時間、好ましくは2〜72時間、糖転移酵素と接触させることにより行われる。糖ヌクレオチドは、糖鎖含有ポリマー1当量に対し、約1当量から過剰量使用するのが好ましい。
また、反応液中には必要に応じて金属塩を添加してもよい。添加できる金属イオンとしては、例えば、マグネシウム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などがあり、通常塩化物等の形で添加することができる。
本発明で用いる糖転移酵素は、糖ヌクレオチド類を糖供与体として利用できるものであればよく、特に限定されない。このような酵素としてLeloir経路の糖転移酵素類を挙げることができる。例えば、ガラクトース転移酵素、N−アセチルグルコサミン転移酵素、N−アセチルガラクトサミン転移酵素、フコース転移酵素、シアル酸転移酵素、マンノース転移酵素、キシロース転移酵素、グルクロン酸転移酵素などが挙げられる。なお、これらの酵素は遊離酵素であっても、固定化酵素であっても構わないが、固定化酵素が好ましい。
本発明で用いる糖ヌクレオチド類は、上記酵素が利用できるものであれば特に限定されない。例えば、ウリジン−5’−ジリン酸ガラクトース、ウリジン−5’−ジリン酸−N−アセチルグルコサミン、ウリジン−5’−ジリン酸−N−アセチルガラクトサミン、ウリジン−5’−ジリン酸グルクロン酸、ウリジン−5’−ジリン酸キシロース、グアノシン−5’−ジリン酸フコース、グアノシン−5’−ジリン酸マンノース、シチジン−5’−モノリン酸−N−アセチルノイラミン酸およびこれらのナトリウム塩などが挙げられる。
本発明のオリゴ糖製造方法の第2工程では、工程1を必要に応じて2回以上繰り返して、複数の糖残基を転移させることにより、糖鎖を伸長させる。
本発明のオリゴ糖製造方法の第3工程では、必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去する。副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類などを除去する方法は、糖鎖含有ポリマーとヌクレオチド類および糖ヌクレオチド類などとを分離できる方法であれば特に限定されない。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、透析、限外ろ過などにより除去することができる。
本発明のオリゴ糖製造方法の第4工程では、工程1〜工程3を複数回繰り返した後、複数の糖残基が転移して糖鎖が伸長した糖鎖含有ポリマーから糖鎖化合物を遊離させる。本発明の糖鎖含有ポリマーより、糖鎖の伸長した糖鎖化合物を遊離させる方法としては、糖鎖の伸長した糖鎖化合物を分解することなく、遊離させることのできる方法であれば、特に制限はなく、例えば、弱酸性あるいは弱アルカリ性での分解、水素化分解反応、光反応あるいは酵素による分解反応などが挙げられ、さらに好ましくは、水素化分解、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンによる酸化、プロテアーゼによる加水分解、セラミドグリカナーゼによる転移反応などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲はかかる実施例に何ら限定されるものではない。
参考例1 2−メチル−(3,4,6−トリ−O−アセチル−1,2−ジデオキシ−α−D−グルコピラノ)−[2,1−d]−2−オキサゾリンの合成
2−アセトアミド−1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−デオキシ−D−グルコピラノシド6.0gを1,2−ジクロロエタン40mlに溶かし、ここにトリメチルシリルトリフロロメタンスルホン酸3.2mlを加え、50℃で7時間撹拌しながら反応させた。反応後、室温まで冷却した後、トリエチルアミン10.8mlを加えた。反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;トルエン:酢酸エチル:トリエチルアミン=100:200:1)で目的物を分離し、目的物を5.0g得た。
参考例2 p−ニトロベンジル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−D−グルコピラノシドの合成
参考例1で得た2−メチル−(3,4,6−トリ−O−アセチル−1,2−ジデオキシ−α−D−グルコピラノ)−[2,1−d]−2−オキサゾリン2.8gをジクロロエタン40mlに溶解し、ここにp−ニトロベンジルアルコール10.4gとD−カンファー−10−スルホン酸0.2gを加え、80℃で2時間撹拌しながら反応させた。反応後、室温まで冷却し、トリエチルアミン4.0mlを加えた。反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:酢酸エチル:メタノール=200:40:5)で目的物を分離し、目的物を3.7g得た。
参考例3 6−アクリロイルアミノカプロン酸の合成
6−アミノカプロン酸10.0gを1.27M水酸化ナトリウム水溶液60mlに溶解し、塩化アクリロイル7.8mlを20mlのテトラヒドロフランに溶かしたものを氷冷下で滴下した。このとき、pH8〜9になるように4N水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整した。滴下後、徐々に室温に戻しながら2時間撹拌した。次いで、反応液に1N塩酸をpH3になるまで加えた後、酢酸エチルで生成物を抽出した。抽出液を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残渣を少量の酢酸エチルに溶かし、ヘキサンで再結晶し、目的物9.6gを得た。
参考例4 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−D−グルコピラノシドの合成
参考例2で得たp−ニトロベンジル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−D−グルコピラノシド1.6gをメタノール50mlに溶解し、ここにギ酸アンモニウム2.1gおよび10%パラジウム−炭素170mgを加えた。室温で5分間撹拌した後、触媒をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をクロロホルムで溶解した。蒸留水で有機層を洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、硫酸ナトリウムをろ別した後、ろ液を減圧濃縮した。残渣をジクロロエタン:N,N−ジメチルホルムアミド=10:1の混合溶媒44mlで溶かし、ここに参考例3で得た6−アクリロイルアミノカプロン酸0.6gを加えた。さらに、トリエチルアミン0.46mlと1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩65mgを0℃で撹拌しながら加えた。撹拌しながら室温まで戻し、22時間反応させた。反応液にクロロホルム60mlを加え、1N水酸化ナトリウム水溶夜、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムをろ別し、ろ液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:エタノール=30:1)で目的物を分離し、目的物を1.1g得た。
実施例1 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシドの合成
参考例4で得たp−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−D−グルコピラノシド660mgをメタノール70mlに溶解し、ここにナトリウムメトキシド50mgを加え、室温で撹拌しながら15時間反応させた。反応後、H型の陽イオン交換樹脂Dowex50WX−8(ダウケミカル社製)をpH7になるまで加えた。イオン交換樹脂をろ別し、ろ液を減圧濃縮し、目的物を520mg得た。
実施例2 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:2:7、糖鎖含有ポリマーA)の合成
実施例1で得たp−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド61.7mg、アクリル酸18.0mg、アクリルアミド62.2mgをジメチルスルホキシド:蒸留水=3:1の混合溶媒1mlに溶解し、アスピレーターで十分に脱気した後、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TEMEDと略する)11.6μlと過硫酸アンモニウム8.6mgを加え、室温で24時間撹拌し重合させた。反応後、反応液に蒸留水2mlを加え、Sephadex G−50(アマシャムファルマシア社製)を用いたカラムクロマトグラフィー(溶出液:50mM酢酸アンモニウム)により目的物を分離した。得られた目的物画分を凍結乾燥し、目的物138mgを得た。
実施例3 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:4:5、糖鎖含有ポリマーB)の合成
アクリル酸36.0mg、アクリルアミド44.4mgを用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物138mgを得た。
実施例4 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:6:3、糖鎖含有ポリマーC)の合成
アクリル酸54.0mg、アクリルアミド26.7mgを用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物139mgを得た。
実施例5 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:8:1、糖鎖含有ポリマーD)の合成
アクリル酸72.1mg、アクリルアミド8.9mgを用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物139mgを得た。
参考例5 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリルアミド共重合体(共重合比1:9、糖鎖含有ポリマーE)の合成
アクリル酸を用いずに、アクリルアミド80.0mgを用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物138mgを得た。
参考例6 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸共重合体(共重合比1:9、糖鎖含有ポリマーF)の合成
アクリルアミドを用いずに、アクリル酸81.1mgを用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物139mgを得た。
実施例6 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−N−イソプロピルアクリルアミド共重合体(共重合比1:2:7、糖鎖含有ポリマーG)の合成
アクリルアミドの代わりにN−イソプロピルアクリルアミドを99.0mg用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物174mgを得た。
実施例7 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−N−イソプロピルアクリルアミド共重合体(共重合比1:4:5、糖鎖含有ポリマーH)の合成
アクリル酸36.0mg、アクリルアミドの代わりにN−イソプロピルアクリルアミドを70.7mg用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物164mgを得た。
実施例8 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−N−イソプロピルアクリルアミド共重合体(共重合比1:6:3、糖鎖含有ポリマーI)の合成
アクリル酸54.0mg、アクリルアミドの代わりにN−イソプロピルアクリルアミドを42.4mg用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物154mgを得た。
実施例9 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリル酸−N−イソプロピルアクリルアミド共重合体(共重合比1:8:1、糖鎖含有ポリマーJ)の合成
アクリル酸72.1mg、アクリルアミドの代わりにN−イソプロピルアクリルアミドを14.1mg用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物144mgを得た。
参考例7 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−N−イソプロピルアクリルアミド共重合体(共重合比1:9、糖鎖含有ポリマーK)の合成
アクリル酸を用いずに、N−イソプロピルアクリルアミド127.3mgを用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物183mgを得た。
参考例8 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド−アクリルアミド−N−イソプロピルアクリルアミド共重合体(共重合比1:5:4、糖鎖含有ポリマーL)の合成
アクリル酸を用いずに、アクリルアミド44.4mg、N−イソプロピルアクリルアミド56.6mgを用いる以外は実施例2と同様の方法で共重合し、目的物158mgを得た。
参考例9 固定化β1,4−ガラクトース転移酵素の調製
CNBr活性化セファロース4B(ファルマシア社製)0.5gをとり、1mM塩酸100mlを3回に分けて洗浄した。これにβ1,4−ガラクトース転移酵素(東洋紡績社製)10U、牛血清由来アルブミン(以下BSAと略する)30mg、ウリジン−5’−ジホスホガラクトース(以下UDP−Galと略する)1mM、N−アセチルグルコサミン5mM、塩化マンガン25mMおよびNaCl0.5Mを含む0.1Mホウ酸緩衝液(pH8.0)5mlを加え、4℃で一晩穏やかに振とうした。固定化β1,4−ガラクトース転移酵素をガラスフィルターでろ別し、β1,4−ガラクトース転移酵素を除いた上記緩衝液5mlで洗浄した。0.1MTris−HCl緩衝液(pH8.0)5mlを加え、担体中の未反応の活性化基をブロックした。1M塩化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄し、固定化β1,4−ガラクトース転移酵素をUDP−Gal1mMおよび塩化マンガン5mMを含む25mMカコジル酸緩衝液(pH7.4)中に浸漬し、4℃で保存した。得られた固定化酵素の活性は1.5U/mlであった。
実施例10 β1,4−ガラクトース転移酵素による各種糖鎖含有ポリマーへのガラクトース転移
ウリジン−5’−ジホスホガラクトース10mM、塩化マンガン10mM、α−ラクトアルブミン0.26mg/mlを含む50mMHEPES緩衝液(pH7.5)2.0mlに参考例9で得た固定化β1,4−ガラクトース転移酵素1ml、実施例2〜9および参考例5〜8で得た糖鎖含有ポリマーA〜Lをそれぞれ20mg加え、37℃で24時間反応させた。反応液を遠心分離して得られた上清より、Sephadex G−25カラムクロマトグラフィー(溶出液:蒸留水)で生成物画分を分離し、凍結乾燥することにより生成物19mgを得た。生成物をそれぞれ1mgとり、蒸留水:エタノール=3:1の混合溶媒1mlに溶かし、ここに10%パラジウム−炭素1mgを加え、常圧下水素ガスにより室温で24時間接触還元した。触媒をろ別した後、ろ液を限外ろ過ユニットウルトラフリーMC(分画分子量10,000、ミリポア社製)でろ過し、通過液画分として遊離させたオリゴ糖を集めた。通過液画分を凍結乾燥し、得られた固形分を定法に従い、ピリジルアミノ化し、HPLCにてN−アセチルラクトサミン、N−アセチルグルコサミンの存在比を分析することにより、糖転移収率を求めた。その結果、ガラクトースの転移がいずれも定量的に進行していることを確認した。
参考例10 固定化α2,3−シアル酸転移酵素の調製
NHS活性化セファロース(アマシャムファルマシア社製)0.5gをとり、1mM塩酸100mlを3回に分けて洗浄した。これにブタ肝臓由来α2,3−シアル酸転移酵素1U、BSA30mg、シチジン−5’−ジホスフェート1mMを含む50mMHEPES緩衝液(pH7.5)5mlを加え、4℃で一晩、穏やかに振とうした。固定化α2,3−シアル酸転移酵素をガラスフィルターでろ別し、α2,3−シアル酸転移酵素を除く上記緩衝液5mlで洗浄した。0.1MTris−HCl緩衝液(pH8.0)5mlを加え、担体中の未反応の活性化基をブロックし、さらに洗浄した後、α2,3−シアル酸転移酵素をシチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸(以下、CMP−NeuAcと略する)1mMを含む25mMカコジル酸緩衝液(pH7.4)中に浸漬し、4℃で保存した。得られた固定化酵素の活性は110mU/mlであった。
実施例11 固定化α2,3−シアル酸転移酵素による各種糖鎖含有ポリマーへのシアル酸転移
参考例10で得た固定化α2,3−シアル酸転移酵素0.05ml、CMP−NeuAc50mM、塩化マンガン10mM、0.1%Triton CF−54を含む50mMHEPES緩衝液(pH7.0)0.5mlに実施例10で得たガラクトシル化された糖鎖含有ポリマーA〜Lをそれぞれ6.5mg(糖鎖含有ポリマーA〜F)、8.0mg、7.5mg、7.1mg、6.7mg、8.4mg、7.3mg(N−アセチルラクトサミン残基で5μmoleに相当)加え、30℃で24時間振とうしながら反応させた。反応後、遠心分離することにより反応液を上清として得た後、実施例10と同様の方法で生成物を分離し、生成物をそれぞれ6.0mg(糖鎖含有ポリマーA〜F)、7.5mg、7.0mg、6.5mg、6.2mg、7.8mg、6.8mg得た。生成物をそれぞれ1mgとり、実施例10と同様にして糖転移収率を求めた。

GM:p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)アミノ−ベンジル−2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシド
AA:アクリル酸
AAm:アクリルアミド
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド
参考例11 p−ニトロベンジル−4−(2’,3’,4’,6’−テトラ−O−アセチル−D−ガラクトピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−D−グルコピラノシドの合成
1−ブロモ−4−(2’,3’,4’,6’−テトラ−O−アセチル−D−ガラピラノシルシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−D−グルコピラノシド5.0gをジクロロエタン50mlに溶解し、ここにp−ニトロベンジルアルコール23.5gとモレキュラーシーブス4Åを5.0g加え0℃で撹拌した。窒素気流下で銀トリフレートを2.9g加えで徐々に室温に戻しながら12時間撹拌しながら反応させた。反応液をクロロホルムで希釈してセライトパッド上で濾過したのち、ろ液を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。ろ過により硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を減圧下で濃縮したのち、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=50:1)で目的物を分離し、目的物を5.6g得た。
参考例12 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)−ベンジル−4−(2’,3’,4’,6’−テトラ−O−アセチル−D−ガラクトピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−D−グルコピラノシドの合成
参考例11で得たp−ニトロベンジル−4−(2’,3’,4’,6’−テトラ−O−アセチル−D−ガラクトピラノシル)−2,3,6−トリ−O−アセチル−D−グルコピラノシ3.0gをメタノール50mlに溶解し、ここにギ酸アンモニウムを1.8gおよび10%パラジウム−炭素を200mgを加えた。室温で5分間撹拌した後、触媒をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をクロロホルムで溶解した。蒸留水で有機層を洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥後、硫酸マグネシウムをろ別した後、ろ液を減圧濃縮した。残渣をジクロロエタン:N,N,−ジメチルホルムアミド=10:1の混合溶媒40mlで溶かし、ここに参考例3で得た6−アクリロイルアミノカプロン酸を0.85g加えた。続いてトリエチルアミン634μlと1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩870mgを加えて氷冷から室温に戻しながら22時間撹拌した。反応液をクロロホルムで希釈し、1N硫酸および飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を減圧下で濃縮したのち、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:エタノール=20:1)で目的物を分離し、目的物を1.1g得た。
実施例12 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)−ベンジル−4−D−ガラクトピラノシル−D−グルコピラノシドの合成
参考例12で得たp−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)−ベンジル−2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−D−ガラクトピラノシル−2,3,6−トリ−O−アセチル−D−グルコピラノシド1.0gをメタノール10mLに溶解させた。そこにナトリウムメトキシド24mgを加え室温で15時間撹拌した。反応終了後、反応液をイオン交換樹脂ダウエックス50W−X8(H+)で中和した。樹脂をろ別し、ろ液を減圧濃縮し、目的物を650mg得た。
実施例13 p−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)−ベンジル−D−ガラクトピラノシル−D−グルコピラノシド−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:4:5、糖鎖含有ポリマーM)の合成
実施例12で得たp−N−(6−アクリロイルアミノヘキサノイル)−ベンジル−D−ガラクトピラノシル−D−グルコピラノシド76.8mg、アクリル酸36.0mg、アクリルアミド44.4mgを用いて、実施例2と同様の方法で共重合し、目的物151mgを得た。
実施例14 固定化α2,3−シアル酸転移酵素による糖鎖含有ポリマーMへのシアル酸転移
参考例10で得た固定化α2,3−シアル酸転移酵素0.3ml、CMP−NeuAc50mM、塩化マンガン10mM、0.1%Triton CF−54を含む50mMHEPES緩衝液(pH7.0)1.0mlに実施例13で得た糖鎖含有ポリマーMを6.3mg(ラクトース残基で5μmoleに相当)加え、30℃で24時間振とうしながら反応させた。反応後、遠心分離することにより反応液を上清として得た後、実施例10と同様の方法で生成物を分離し、生成物を5mg得た。生成物を1mgとり、実施例10と同様にして、シアル酸転移反応の収率を求めたところ、88%であった。
参考例13 N−(6−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニンエチルエステルの合成
フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩1.15gと参考例3で得た6−アクリロイルアミノカプロン酸1.11gをジメチルホルムアミド(以下、DMFと略する)15mlに溶解し、氷冷下撹拌しながらジフェニルホスホリルアジド1.65gを溶かしたDMF15mlを加え、さらにトリエチルアミン1.11gを溶かしたDMF15mlを滴下した。氷冷下4時間反応させた後、室温で24時間反応させた。反応後、ベンゼン:酢酸エチル=1:1の混合溶媒450mlを加え5%塩酸、水、飽和食塩水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順に有機層を洗浄した。無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させた後、減圧濃縮し、残渣をベンゼンで再結晶し、目的物1.35gを得た。
参考例14 N−(6−アクリロイルアミノカプロイル)のフェニルアラニンの合成
1N水酸化ナトリウムを含むメタノール50ml中に参考例13で得たN−(6−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニンエチルエステル0.72gを加え、室温で4時間撹拌した。反応後、H型陽イオン交換樹脂Dowex50W(ダウケミカル社製)を加え中和した後、ろ過によりイオン交換樹脂を除き、ろ液を減圧乾固し、目的物0.65gを得た。
参考例15 4−ペンテニル−3’,4’,6’−トリ−O−アセチル−N−アセチルグルコサミン
参考例1で得た2−メチル−(3,4,6−トリ−O−アセチル−1,2−ジデオキシ−α−D−グルコピラノ)−[2,1−d]−2−オキサゾリン3.3gと4−ペンテン−1−オール1.7gを1,2−ジクロロエタン40mlに溶解し、70℃に保ちながらCSAをpH2〜3になるまで加えた。30分間反応させた後、室温まで冷却し、反応液をクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。セライトろ過により硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:クロロホルム)で目的物2.5gを単離した。
参考例16 4−O−(3’,4’,6’−トリ−O−アセチル−N−アセチルグルコサミニル)酪酸
過マンガン酸カリウム1.95gを17%酢酸水溶液35mlに溶解し、参考例15で得た4−ペンテニル−3’,4’,6’−トリ−O−アセチル−N−アセチルグルコサミン1.6gにさらに氷酢酸35mlに溶解させたものを氷冷下撹拌しながら滴下し、3時間反応させた。反応後、反応液に酢酸エチル300mlを加え、さらに硫酸ナトリウム3.16gと1M塩酸35mlを加えて氷冷下撹拌した。有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムを加え乾燥させた。乾燥後、硫酸マグネシウムをろ過により除去し、ろ液を減圧濃縮し目的物1.5gを得た。
参考例17 N−α−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−N−ε−(4−O−(3’,4’,6’−トリ−O−アセチル−N−アセチルグルコサミニル)ブタノイル)リジンの合成
参考例16で得た4−O−(3’,4’,6’−トリ−O−アセチル−N−アセチルグルコサミニル)酪酸0.43gをクロロホルム20mlに溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド0.12gを加え、氷冷下ジシクロヘキシルカルボジイミド0.21gを加えて一晩撹拌した。撹拌後、反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をジメトキシメタン10mlに溶解し、ここにN−α−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)リジン0.37gを溶解させたジメトキシメタン10mlを加え、室温で1時間撹拌した。水100mlを加え、生じた沈殿を水、10%炭酸水素ナトリウム水溶液、1N塩酸、水の順に洗浄した。乾燥後、エタノールより再結晶し目的物0.56gを得た。N−α−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−N−ε−(4−O−(3’,4’,6’−トリ−O−アセチル−N−アセチルグルコサミニル)ブタノイル)リジンは下記構造式(式中、Fmocは9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例18 アクリルアミド誘導体Aの合成
Fmoc−Ser(tBu)をプレロードした2−クロロトリチル樹脂0.44g(樹脂1gあたりSer残基が0.23mmol結合)を糖鎖含有ポリマーとして、ABI社製A433型ペプチドシンセサイザーを用い、以下に挙げるN−保護アミノ酸を各々1.0mmol、Fmoc/DCC/HOBt法で順次縮合し、目的のアクリルアミド誘導体を固相担体上に合成した。Fmoc−Asp(OtBu)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Arg(Pmc)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Asn(βAcGlcNAc)−OH、Fmoc−Gly−OH、参考例14で得たN−(6−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニン。50%トリフロロ酢酸、1%1,2−エタンジチオール、1%チオアニソール、5%フェノールを含むジクロロメタン中室温で1時間反応させることによりペプチド残基上の保護基を脱離させるとともに固相担体上からアクリルアミド誘導体を遊離させた。樹脂を濾別し、減圧濃縮後酢酸エチル−クロロホルム混合溶媒(1:1)で希釈し、水で有機層を洗浄した。HPLCにより(カラム:YMC−Pack ODS 20mm×250mm、移動相:A:B=100:0(0分)〜50:50(60分)、A:0.1%トリフロロ酢酸水溶液、B:0.1%トリフロロ酢酸アセトニトリル溶液、流速;9.0ml/分)アクリルアミド誘導体を精製した。アクリルアミド画分を凍結乾燥し、得られた固体にナトリウムメトキシド2.2mgを含むメタノール30mlを加え、室温下2時間撹拌した。H型陽イオン交換樹脂Dowex50W(ダウケミカル社製)を加え中和した後、ろ過によりイオン交換樹脂を除き、ろ液を減圧乾固し、目的物であるアクリルアミド誘導体Aを96mg得た。得られたアクリルアミド誘導体Aは下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例19 アクリルアミド誘導体Bの合成
参考例18と同様にして、以下に挙げるN−保護アミノ酸を各々1.0mmol、Fmoc/DCC/HOBt法で順次縮合し、目的のアクリルアミド誘導体を固相担体上に合成した。Fmoc−Asp(OtBu)−OH、Fmoc−Gly−OH、Fmoc−Arg(Pmc)−OH、Fmoc−Gly−OH、参考例17で得たN−α−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−N−ε−(4−O−(3’,4’,6’−トリ−O−アセチル−N−アセチルグルコサミニル)ブタノイル)リジン、参考例14で得たN−(6−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニン。参考例18と同様の方法でペプチド残基上の保護基を脱離、固相担体上からの目的物であるアクリルアミド誘導体の遊離、さらには精製を行い、目的物であるアクリルアミド誘導体Bを97mg得た。得られたアクリルアミド誘導体Bは下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

実施例15 アクリルアミド誘導体A−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:4:6、糖鎖含有ポリマーN)の合成
参考例18で得たアクリルアミド誘導体A60mgをジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略する)2mlに溶解させ、これにアクリル酸14.4mg、アクリルアミド21.3mgを水1mlに溶かしたものを加えた。続いて、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン7.5μl、過硫酸アンモニウム4.5mgを加え、50℃で24時間共重合させた。反応溶液は減圧濃縮し、DMSOを留去してからセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;10mM酢酸アンモニウム)で分離し、目的物の溶出画分を凍結乾燥し、目的物である糖鎖含有ポリマーNを90mg得た。得られたポリマー中の糖ペプチドが結合したアクリルアミド誘導体A残基は下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有し、その含有率は約9モル%であった。

実施例16 アクリルアミド誘導体B−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:4:6、糖鎖含有ポリマーO)の合成
参考例18で得たアクリルアミド誘導体A60mgの代わりに、参考例19で得たアクリルアミド誘導体B61mgを用いて、実施例15と同様の反応を行い、目的物である糖鎖含有ポリマーOを91mg得た。得られたポリマー中のネオ糖ペプチドが結合したアクリルアミド誘導体B残基は下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有し、その含有率は9モル%であった。

参考例20 アクリルアミド誘導体A−アクリルアミド共重合体(共重合比1:10、糖鎖含有ポリマーP)の合成
アクリル酸14.4mg、アクリルアミド21.3mgの代わりに、アクリルアミド35.5mgを用いて、実施例15と同様の反応を行い、目的物である糖鎖含有ポリマーPを90mg得た。得られたポリマー中の糖ペプチドが結合したアクリルアミド誘導体A残基の含有率は9モル%であった。
参考例21 アクリルアミド誘導体B−アクリルアミド共重合体(共重合比1:10、糖鎖含有ポリマーQ)の合成
アクリル酸14.4mg、アクリルアミド21.3mgの代わりに、アクリルアミド35.5mgを、参考例18で得たアクリルアミド誘導体A60mgの代わりに、参考例19で得たアクリルアミド誘導体B61mgを用いて、実施例15と同様の反応を行い、目的物である糖鎖含有ポリマーQを91mg得た。
実施例17 固定化β1,4−ガラクトース転移酵素による糖鎖含有ポリマーNへのガラクトースの転移とα−キモトリプシンによる糖鎖含有ポリマーNからの糖ペプチドの遊離
UDP−Gal50mM、塩化マンガン10mMを含む50mM HEPES緩衝液(pH7.0)2mlに、参考例9で得た固定化β1,4−ガラクトース転移酵素1ml、実施例15で得た糖鎖含有ポリマーN38mgを加え、37℃で48時間反応させた。反応後、反応液からセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;10mM酢酸アンモニウム)により生成物画分を分離し、凍結乾燥することにより生成物36mgを得た。得られた生成物10mg、α−キモトリプシン0.3mgを80mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.8、0.1M塩化カルシウム含有)2mlに溶かし、40℃で24時間反応させ、糖鎖含有ポリマーより糖鎖の伸長した糖ペプチドを遊離させた。反応液をセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相:10mM酢酸アンモニウム)により生成物画分を分離し、凍結乾燥することにより糖鎖の伸長した糖ペプチド6mgを得た。得られた糖ペプチドのH−NMRスペクトルを測定し、糖ペプチドが下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有することを確認し、ガラクトース転移反応が定量的に進行していることを確認した。

実施例18 固定化β1,4−ガラクトース転移酵素による糖鎖含有ポリマーOへのガラクトースの転移α−キモトリプシンによる糖鎖含有ポリマーOからのネオ糖ペプチドの遊離
実施例15で得た糖鎖含有ポリマーN38mgの代わりに、実施例16で得た糖鎖含有ポリマーO39mgを用い、実施例17と同様の反応を行い、生成物37mgを得た。得られた生成物10mgを用いて、実施例17と同様の方法を用い、糖鎖含有ポリマーから糖鎖が伸長したネオ糖ペプチドを遊離させた。得られたネオ糖ペプチドのH−NMRスペクトルを測定し、ネオ糖ペプチドが下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有することを確認し、ガラクトース転移反応が定量的に進行していることを確認した。

参考例22 β1,4−ガラクトース転移酵素による糖鎖含有ポリマーPへのガラクトースの転移
実施例15で得た糖鎖含有ポリマーN38mgの代わりに、参考例20で得た糖鎖含有ポリマーP38mgを用い、実施例17と同様の反応を行い、生成物36mgを得た。得られた生成物のH−NMRスペクトルを測定し、ガラクトースが転移した生成物であることを確認した。ガラクトースが転移したポリマー中の糖ペプチドが結合したアクリルアミド誘導体A残基は下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例23 固定化β1,4−ガラクトース転移酵素による糖鎖含有ポリマーQへのガラクトースの転移
実施例15で得た糖鎖含有ポリマーN38mgの代わりに、参考例21で得た糖鎖含有ポリマーQ39mgを用い、実施例17と同様の反応を行い、生成物37mgを得た。得られた生成物のH−NMRスペクトルを測定し、ガラクトースが転移した生成物であることを確認した。ガラクトースが転移したポリマー中の糖ペプチドが結合したアクリルアミド誘導体B残基は下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

実施例19 固定化α2,3−シアル酸転移酵素による糖鎖含有ポリマーNおよびPへのシアル酸転移
CMP−NeuAc50mM、塩化マンガン10mM、0.1%Triton CF−54を含む50mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)2mlに参考例10で得た固定化α2,3−シアル酸転移酵素を1.0ml、実施例17で得たガラクトースが転移した糖鎖含有ポリマーN21mgあるいは参考例22で得たガラクトースが転移した糖鎖含有ポリマーP21mgを加え、37℃で18時間反応させた。反応後、反応液からセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相:10mM酢酸アンモニウム)により生成物を分離し、凍結乾燥することにより生成物をそれぞれ17mg得た。得られた生成物10mgを用いて、実施例17と同様な方法で糖鎖含有ポリマーから糖鎖が伸長した糖ペプチドを遊離させた。遊離した糖ペプチドのH−NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからシアル酸転移反応の反応率を比較した。その結果、糖鎖含有ポリマーNの反応率が約80%であったのに対して、糖鎖含有ポリマーPは約50%であり、糖鎖含有ポリマーNの方が反応性に優れていることがわかった。
実施例20 固定化α2,3−シアル酸転移酵素による糖鎖含有ポリマーOおよびQへのシアル酸転移
実施例17で得たガラクトースが転移した糖鎖含有ポリマーN21mgあるいは参考例20で得たガラクトースが転移した糖鎖含有ポリマーP21mgの代わりに、実施例18で得たガラクトースが転移した糖鎖含有ポリマーO22mgあるいは参考例23で得たガラクトースが転移した糖鎖含有ポリマーQ22mgを用いて、実施例19と同様の反応を行い、生成物をそれぞれ18mg得た。得られた生成物0mgを用いて、実施例17と同様の方法で糖鎖含有ポリマーから糖鎖が伸長したネオ糖ペプチドを遊離させた。遊離したネオ糖ペプチドのH−NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからシアル酸転移反応の反応率を比較した。その結果、糖鎖含有ポリマーOの反応率が約80%であったのに対して、糖鎖含有ポリマーQは約60%であり、糖鎖含有ポリマーOの方が反応性に優れていることがわかった。
実施例21 固定化α2,3−シアル酸転移酵素による糖鎖含有ポリマーNへのシアル酸転移とα−キモトリプシンによる糖鎖含有ポリマーNからの糖ペプチドの遊離
CMP−NeuAc50mM、参考例10で得た固定化α2,3−シアル酸転移酵素を1.0mlの代わりに、CMP−NeuAc100mM、参考例10で得た固定化α2,3−シアル酸転移酵素を1.5mlを用い、実施例19と同様の反応を24時間行い、生成物17mgを得た。実施例17と同様な方法で糖鎖含有ポリマーから糖鎖が伸長した糖ペプチドを遊離させ、得られた糖ペプチドのH−NMRスペクトルを測定し、糖ペプチドが下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有することを確認し、シアル酸転移反応がほぼ定量的に進行していることを確認した。

参考例24 N−(ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)−6−アミノ−1−ヘキサノールの合成
N−ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニン11.96gと6−アミノ−1−ヘキサノール5.2gをベンゼン:エタノール=1:1の混合溶媒40mlに溶解し、N−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキノリン(以下EEDQと略する)9.9gを加えて、室温で24時間撹拌した。反応後、反応液を減圧乾固し、残渣をベンゼンで再結晶し、目的物13.6gを得た。N−(ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)−6−アミノ−1−ヘキサノールは下記構造式を有する。

参考例25 N−(ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの合成
参考例1で得た2−メチル−(3,4,6−トリ−O−アセチル−1,2−ジデオキシ−α−D−グルコピラノ)−[2,1−d]−2−オキサゾリン2.96gと参考例24で得たN−(ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)−6−アミノ−1−ヘキサノール7.17gをジクロロエタン35mlに溶解させ、70℃に保ちながらD−カンファー−10−スルホン酸(以下、CSAと略する)をpH2〜3になるまで加えた。30分間反応させた後、室温まで冷却し、反応液をクロロホルムで希釈して飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄した。有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで一晩乾燥させた。セライトろ過により硫酸マグネシウムを除去し、ろ液を減圧濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム)で目的物2.37gを単離した。N−(ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドは下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例26 N−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの合成
参考例25で得たN−(ベンジルオキシカルボニルフェニルアラニル)−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド1.5gをメタノール40mlに溶かし、10%パラジウム−炭素150mgを加えて、水素気流下、50℃で2時間撹拌した。触媒をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残渣と参考例3で得た6−アクリロイアミノカプロン酸0.42gをエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒に溶解し、EEDQ0.55gを加えて室温で24時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をエタノールで再結晶し、目的物1.2gを得た。N−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドは下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例27 N−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドの合成
参考例26で得たN−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド590mgをTHF:メタノール=1:1の混合溶媒20mlに溶解し、ナトリウムメトキシド16.9mgを加えて、室温で24時間撹拌した。H型の陽イオン交換樹脂Dowex50WX−8(ダウケミカル社製)をpH7になるまで加えた。イオン交換樹脂をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒で再結晶し、目的物413mgを得た。N−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシドは下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

実施例22 N−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:2;7、糖鎖含有ポリマーR)の合成
参考例27で得たN−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド79.3mg、アクリル酸18.0mg、アクリルアミド62.2mgをDMSO:水=3:1の混合溶媒1mlに溶かした。続いて、TEMED11.6μl、過硫酸アンモニウム8.6mgを加え、室温で24時間共重合させた。反応溶液は減圧濃縮し、DMSOを留去してからセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;10mM酢酸アンモニウム)で分離し、目的物の溶出画分を凍結乾燥し、目的物160mgを得た。得られたポリマー中のN−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド残基は、下記構造式を有する。
参考例28 N−(6’−アクリロイルアミノカプロイル)フェニルアラニル−6−アミノヘキシル−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド−アクリルアミド共重合体(共重合比1:9、糖鎖含有ポリマーS)の合成

アクリル酸18.0mg、アクリルアミド62.2mgの代わりに、アクリルアミド80.0mgを用いて、実施例22と同様に反応を行い、目的物160mgを得た。
実施例23 固定化β1,4−ガラクトース転移酵素による糖鎖含有ポリマーRへのガラクトースの転移
UDP−Gal20mM、塩化マンガン10mMを含む50mM HEPES緩衝液(pH7.0)1mlに、参考例9で得た固定化β1,4−ガラクトース転移酵素0.5ml、
実施例22で得た糖鎖含有ポリマーR13.5mgを加え、37℃で24時間反応させた。反応後、遠心分離により固定化β1,4−ガラクトース転移酵素を除き、得られた反応液からセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;5mMギ酸アンモニウム)により生成物画分を分離し、凍結乾燥することにより生成物11mgを得た。得られた生成物のH−NMRスペクトルを測定し、ガラクトースが定量的に転移していることを確認した。
参考例29 固定化β1,4−ガラクトース転移酵素による糖鎖含有ポリマーSへのガラクトースの転移
実施例22で得た糖鎖含有ポリマーR13.5mgの代わりに、参考例28で得た糖鎖含有ポリマーS13.5mgを用いて、実施例23と同様の反応を行い、生成物11mgを得た。得られた生成物のH−NMRスペクトルを測定し、ガラクトースが定量的に転移していることを確認した。
参考例30 固定化α2,6−シアル酸転移酵素の調製
α2,3シアル酸転移酵素1Uの代わりに、ラット肝臓由来α2,6−シアル酸転移酵素1Uを用い、参考例10と同様の方法で目的物を調製し、4℃で保存した。得られた固定化酵素の活性は120mU/mlであった。
実施例24 固定化α2,6−シアル酸転移酵素による糖鎖含有ポリマーR及びSへのシアル酸の転
CMP−NeuAc25mM、塩化マンガン10mMを含む50mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)1mlに、参考例30で得た固定化α2,6−シアル酸転移酵素0.5mlと実施例23で得たガラクースが転移した糖鎖含有ポリマーR7.5mgあるいは参考例29で得たガラクースが転移した糖鎖含有ポリマーS7.5mgを加え、37℃で24時間反応させた。実施例23と同等の方法で生成物6mgを得た。得られた生成物のH−NMRスペクトルを測定し、シアル酸転移反応の反応率を比較した。その結果、糖鎖含有ポリマーRでは定量的に反応が進んでいたのに対して、糖鎖含有ポリマーSは70%しか反応が進行していなかった。
実施例25 α−キモトリプシンによる糖鎖含有ポリマーRからの糖鎖の切り出し
実施例24で得たシアル酸が転移した糖鎖含有ポリマーR5mg、α−キモトリプシン0.6mgを80mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.8、0.1M塩化カルシウム含有)2mlに溶かし、40℃で24時間反応させた。反応液をセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;50mMギ酸アンモニウム)により生成物画分を分離し、凍結乾燥することにより生成物2mgを得た。得られた生成物のH−NMRスペクトルを測定し、生成物が下記構造式を有することを確認した。

参考例31 N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミドの合成
N−ベンジルオキシカルボニルセリン12gをエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒120mlに溶解させた後、EEDQ13.6gおよびオクチルアミン11.1mlを加えて室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、トルエンで再結晶し、目的物12.64gを得た。N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミドは下記構造式を有する。

参考例32 O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミドの合成
よく乾燥させた参考例31で得たN−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド4.0gをジクロロエタン8mlに溶解させ、活性化させたモレキュラーシーブ4A8.0gと2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチルラクトシルブロミド12.0gを加えた。氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸銀4.40gを加え、徐々に室温に戻しながら、窒素気流下で一晩撹拌した。反応液をセライトでろ過し、ろ液を飽和食塩水で2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、硫酸マグネシウムをろ別し、ろ液を減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相、トルエン:酢酸エチル=5:1)にて目的物を分離した。目的物を含む溶出画分を減圧濃縮し、目的物5.32gを得た。O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミドは、下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例33 O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシルセリンオクチルアミドの合成
参考例32で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−ベンジルオキシカルボニルセリンオクチルアミド4.0gをメタノール60mlに溶解させ、5%パラジウム−炭素を触媒とし、室温下常圧で接触還元を行った。反応後触媒をろ別し、反応液を減圧濃縮し、目的物3.42gを得た。O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシルセリンオクチルアミドは、下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例34 O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミドの合成
参考例3で得た6−アクリロイルアミノカプロン酸278mgとEEDQ371mgをエタノール:ベンゼン=1:1の混合溶媒40mlに加え、十分溶解させ、参考例33で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシルセリンオクチルアミド1.14gを加え、室温で一晩撹拌した。反応液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相、クロロホルム:メタノール=100:1)により目的物を分離した。目的物を含む溶出画分を減圧濃縮し、目的物1.06gを得た。O−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミドは、下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

参考例35 O−ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミドの合成
参考例34で得たO−(2,3,6,2’,3’,4’,6’−ヘプタ−O−アセチル)ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミド400mgをテトラヒドロフラン:メタノール=1:1の混合溶媒に溶解させ、ナトリウムメトキシド8.49mgを加え、室温で2時間撹拌した。H型の陽イオン交換樹脂Dowex50W(ダウケミカル社製)を加えて中和した。ろ過によりイオン交換樹脂を除き、ろ液を減圧濃縮し、エタノールで再結晶し、目的物270mgを得た。O−ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミドは、下記構造式を有する。

実施例26 O−ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミド−アクリル酸−アクリルアミド共重合体(共重合比1:2:7、糖鎖含有ポリマーT)の合成
参考例35で得たO−ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミド70.8mg、アクリル酸14.4mg、アクリルアミド49.8mgをDMSO:水=1:1の混合溶媒に溶解し、TEMED12μlと過硫酸アンモニウム7.67mgを加え、50℃で一晩重合させた。目的物を蒸留水で平衡化したセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィーで精製した。目的物の溶出画分を凍結乾燥し、目的物117mgを得た。得られたポリマー中のO−ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミド残基は、下記構造式を有する。

参考例36 O−ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミド−アクリルアミド共重合体(共重合比1:9、糖鎖含有ポリマーU)の合成
アクリル酸14.4mg、アクリルアミド49.8mgの代わりに、アクリルアミド64.0mgを用いて,実施例26と同様の反応を行い、目的物105mgを得た。
実施例27 固定化α2,3シアル酸転移酵素による糖鎖含有ポリマーTおよびUへのシアル酸の転移
CMP−NeuAc50mM、塩化マンガン10mMを含む50mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)1mlに、参考例10で得た固定化α2,3−シアル酸転移酵素0.5ml、実施例28で得た糖鎖含有ポリマーT13.5mgあるいは糖鎖含有ポリマーU16.4mgを加えて、30℃で24時間反応させた。反応後、遠心分離により固定化α2,3−シアル酸転移酵素を除き、得られた反応液からセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;50mMギ酸アンモニウム)により生成物を分離し、凍結乾燥することにより生成物をそれぞれ14mg、12mg得た。得られた生成物のH−NMRスペクトルを測定し、シアル酸転移反応の反応率を比較した。その結果、糖鎖含有ポリマーTでは反応率約90%であったのに対して、糖鎖含有ポリマーUでは約70%であった。シアル酸が転移したポリマー中のO−ラクトシル−N−(6−アクリロイルアミノ)カプロイルセリンオクチルアミド残基は、下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

実施例28 ゲルろ過クロマトグラフィーによる糖鎖含有ポリマーの回収率の比較
CMP−NeuAc50mM、塩化マンガン10mMを含む50mMカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)2.0mlに実施例27で得たシアル酸が転移した糖鎖含有ポリマーSあるいはT10mgを溶解した。この溶液から糖鎖含有ポリマーをセファデックスG−25(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィー(移動相;50mMギ酸アンモニウム)により回収し、回収率の比較を行った。その結果、糖鎖含有ポリマーSの回収率が87%であったのに対して、糖鎖含有ポリマーTは77%であり、糖鎖含有ポリマーSの方が優れていた。
実施例29 糖鎖含有ポリマーからセラミドグリカナーゼによるN−ステアロイルスフィンゴシンへの糖鎖の転移
実施例27で得たシアル酸が転移した糖鎖含有ポリマー10mg、N−ステアロイルスフィンゴシン25mg、トリトンCF−54を20ul含む50mMクエン酸緩衝液(pH6.0)1mlに、ヒル由来セラミドグリカナーゼ0.01Uを添加し、37℃で17時間反応させた。反応後クロロホルム:メタノール:水=60:30:5で平衡化したセファデックスLH−20(ファルマシア社製)カラムクロマトグラフィーにより生成物を分離した。生成物を含む溶出画分を減圧乾固し、生成物6mgを得た。HPLCによる分析より生成物が1−O−(N−アセチルノイラミニル−α−(2→3))ラクトシル−N−ステアロイルスフィンゴシンであることを確認した。1−O−(N−アセチルノイラミニル−α−(2→3))ラクトシル−N−ステアロイルスフィンゴシンは下記構造式(式中、Acはアセチル基を示す)を有する。

【産業上の利用可能性】
本発明の糖鎖合成用糖鎖含有ポリマーを用いることにより、各種糖鎖化合物、例えば、オリゴ糖、糖ペプチド、糖脂質、配糖体を容易に効率よく合成することができ、得られる糖鎖化合物には様々の生理活性があり、医薬品などへの応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖残基あるいはオリゴ糖残基が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介して水溶性ポリマーの側鎖に結合したポリマーであって、該水溶性ポリマー中に(メタ)アクリル酸残基を20〜80モル%含み、前記リンカーは(メタ)アクリル酸残基以外の繰り返し単位に結合されることを特徴とする糖鎖含有水溶性ポリマー化合物。
【請求項2】
単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が選択的に開裂可能な結合を含むリンカーを介し水溶性ポリマーの側鎖に結合したポリマーであって、該水溶性ポリマー中に(メタ)アクリル酸残基を20〜80モル%含み、前記リンカーは(メタ)アクリル酸残基以外の繰り返し単位に結合されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
水溶性ポリマーが、(メタ)アクリル酸20〜80モル%とアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類及び脂肪酸ビニルエステル類からなる群から選ばれた1種または2種以上のビニル系単量体80〜20モル%の共重合体である請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
リンカーに含まれる選択的に開裂可能な結合が、水素化分解あるいは2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノンによる酸化工程により開裂される請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
前記リンカーが、一般式(I)

(式中、Rは単糖残基もしくはオリゴ糖残基を示し、Rはメチレン基4〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、XはO、SまたはNHを示す。)で表される基である請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
がN−アセチルグルコサミン残基、グルコース残基又はラクトース残基である請求項5記載の化合物。
【請求項7】
がペンチレン基である請求項5または6に記載の化合物。
【請求項8】
前記リンカーが一般式(II)

(式中、Rは単糖残基もしくはオリゴ糖残基を示し、Rは炭素数6〜20のアルキル基またはアルケニル基を示し、Rはメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基を示し、YはO、SまたはNHを示す。)で表される基である請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
がグルコース残基またはラクトース残基である請求項8記載の化合物。
【請求項10】
前記リンカーが一般式(III)

(式中、Rは単糖残基あるいはオリゴ糖残基を示し、Rはメチレン基2〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、Rはメチレン基5〜19個分の長さを有する二価の連結基を示し、ZおよびWはそれぞれ独立してO、SまたはNHを示す。)で表される基である請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
がN−アセチルグルコサミン残基である請求項10記載の化合物。
【請求項12】
前記ペプチド残基がアミノ酸残基2〜30個よりなる請求項2記載の化合物。
【請求項13】
リンカーに含まれる選択的に開裂可能な結合が、特定の加水分解酵素によって開裂可能な結合である請求項1〜12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
特定の加水分解酵素が、セラミドグリカナーゼ又はα−キモトリプシンである請求項13記載の化合物。
【請求項15】
特定の加水分解酵素が、単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合しているアミノ酸残基或いはペプチド残基中に開裂部位を含まないプロテアーゼである請求項13記載の化合物。
【請求項16】
単糖残基あるいはオリゴ糖残基が結合したアミノ酸残基或いはペプチド残基が連結される選択的に開裂可能な結合を含むリンカーが一般式(IV)

(式中、Rはメチレン基1〜20個分の長さを有する二価の連結基を示し、Rは水溶性ポリマー化合物と結合する。R10は特定のプロテアーゼにより開裂できる部位を有するアミノ酸残基あるいはペプチド残基を示し、R10は単糖残基あるいはオリゴ糖残基と結合する。)で表された基であり、単糖残基あるいはオリゴ糖残基はグリコシド結合により直接又は二価の連結基を介してAsn、Asp、Cys、Gln、Glu、Lys、Ser、ThrまたはTyr残基の側鎖官能基あるいはペプチド残基中の前記アミノ酸残基の側鎖官能基に結合している請求項15記載の化合物。
【請求項17】
が一般式(V)

(式中、AはO、CH、C=OまたはNHを示し、かつAを介して水溶性ポリマーの側鎖と結合しており、nは1〜18の整数を示す)で表される基である請求項16記載の化合物。
【請求項18】
側鎖官能基に結合した二価の連結基がメチレン基1〜20個分の長さを有する基である請求項16または17記載の化合物。
【請求項19】
側鎖官能基に結合した二価の連結基が一般式(VI)

(式中、BはO、NHまたはC=Oを示し、かつBを介してアミノ酸残基の側鎖官能基と結合しており、nは1〜18の整数を示す)で表される基である請求項16〜18のいずれかに記載の化合物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物からなる糖鎖化合物合成用水溶性高分子プライマー。
【請求項21】
一般式(VII)

(式中、R11は単糖残基あるいはオリゴ糖残基を示し、R12はメチレン基4〜20個分の長さを有する二価の連結基を示す)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体と(メタ)アクリル酸と少なくとも1種類のビニル系単量体とを、(メタ)アクリル酸が全ビニル系共重合体中20〜80モル%になるように共重合することを特徴とする糖鎖含有水溶性ポリマー化合物の製造方法。
【請求項22】
11がN−アセチルグルコサミン残基、グルコース残基またはラクトース残基である請求項21記載の方法。
【請求項23】
12がペンチレン基である請求項21記載の方法。
【請求項24】
ビニル系単量体がアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類、脂肪酸ビニルエステル類からなる群から選ばれる請求項21記載の方法。
【請求項25】
糖鎖化合物を製造する方法であって、
(工程1)請求項1あるいは2に記載の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物に糖ヌクレオチドの存在下に糖転移酵素と接触させることにより、糖ヌクレオチドより糖残基を該ポリマー化合物に転移させる工程、
(工程2)必要に応じて工程1を2回以上繰り返して糖鎖を伸長させる工程、
(工程3)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去する工程、および、
(工程4)工程1〜工程3を複数回繰り返した後、複数の糖残基が転移して糖鎖が伸長した水溶性ポリマー化合物から糖鎖を遊離させる工程、を含むことを特徴とする糖鎖化合物を製造する方法。
【請求項26】
糖鎖化合物を製造する方法であって
(工程1)請求項8記載の糖鎖含有水溶性ポリマー化合物に糖ヌクレオチドの存在下に転移酵素を作用させることにより、糖ヌクレオチドより、糖残基を該水溶性ポリマー化合物に転移させる工程、
(工程2)必要に応じて工程1を2回以上繰り返して、糖鎖を伸長させる工程、
(工程3)必要に応じて、副生したヌクレオチド類や未反応の糖ヌクレオチド類を除去する工程、および、
(工程4)工程1〜工程3を複数回、繰り返した後、複数の糖残基が転移して伸長した水溶性ポリマー化合物に、セラミドの存在下、セラミドグリカナーゼを作用させ、該水溶性ポリマー化合物より、複数の糖残基が伸長したオリゴ糖残基をセラミドに転移させる工程、を含むことを特徴とする糖鎖化合物を製造する方法。

【国際公開番号】WO2004/099271
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506041(P2005−506041)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006480
【国際出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】