説明

糖鎖誘導体およびその用途

【課題】 優れた木材害虫防除効果を有するとともに、人体に対する安全性や環境に対する保全性に優れた木材害虫防除剤の有効成分を提供すること。
【解決手段】 下記の一般式(1)で表される糖鎖誘導体によって解決される。
【化1】


[式中、Aは置換基を有していてもよいテトラメチレン基またはブテニレン基を示す。Rは低級アルキル基または4位の水酸基でグリコシド結合した1位の水酸基の水素原子が低級アルキル基で置換されたグルコピラノシル基を示す。Rは水素原子、低級アルキル基、1位の水酸基でグリコシド結合したグルコピラノシル基のいずれかを示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な糖鎖誘導体およびその用途に関する。より詳細には、シロアリなどの木材害虫に対する特異的な防除効果が期待できる糖鎖誘導体、およびその木材害虫防除剤の有効成分としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木造建築物などに対するシロアリなどの木材害虫による被害が広まっていることは周知の通りである。そこで、クロロニコチル系化合物、ピレスロイド系化合物、トリアゾール系化合物をはじめとする各種の木材害虫防除剤の有効成分が開発され、実用に供されている。これらの化合物は、優れた木材害虫防除効果を有する一方で、人体に対する安全性や環境に対する保全性について配慮がされたものである。けれども、化学的過敏症やシックハウス症候群などの健康障害を引き起こしたり、自然界において分解されずに土壌中や水中に残存することで環境汚染を引き起こしたりすることが否定できず、これらの可能性を懸念する声もある。このような状況に鑑み、人体に対する安全性や環境に対する保全性が高い木材害虫防除剤の有効成分の探索が精力的に行われており、例えば植物精油などの天然由来の物質を有効成分とするシロアリ防除剤なども提案されている(特許文献1)。しかしながら、優れた木材害虫防除効果を有するとともに、より安全な木材害虫防除剤の有効成分が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−106609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、優れた木材害虫防除効果を有するとともに、人体に対する安全性や環境に対する保全性に優れた木材害虫防除剤の有効成分を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、2つのグルコピラノース基をテトラメチレン基またはブテニレン基で結合した糖鎖誘導体が優れたシロアリ防除効果を有すること、この効果はシロアリに対する特異的な効果であると考えられることを見出した。
【0006】
上記の知見に基づいてなされた本発明の糖鎖誘導体は、請求項1記載の通り、下記の一般式(I)で表されることを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、Aは置換基を有していてもよいテトラメチレン基またはブテニレン基を示す。Rは低級アルキル基または4位の水酸基でグリコシド結合した1位の水酸基の水素原子が低級アルキル基で置換されたグルコピラノシル基を示す。Rは水素原子、低級アルキル基、1位の水酸基でグリコシド結合したグルコピラノシル基のいずれかを示す。]
また、本発明の木材害虫防除剤は、請求項2記載の通り、下記の一般式(I)で表される糖鎖誘導体を有効成分とすることを特徴とする。
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、Aは置換基を有していてもよいテトラメチレン基またはブテニレン基を示す。Rは低級アルキル基または4位の水酸基でグリコシド結合した1位の水酸基の水素原子が低級アルキル基で置換されたグルコピラノシル基を示す。Rは水素原子、低級アルキル基、1位の水酸基でグリコシド結合したグルコピラノシル基のいずれかを示す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明の糖鎖誘導体は、シロアリなどの木材害虫に対して優れた防除効果を有する。この効果は木材害虫に対して特異的な効果であると考えられ、また、その構成単位はグルコースと1,4−ブタンジオールまたは1,4−ブテンジオールであるので、分解されてもこれらの化合物を産するのみである。従って、本発明の糖鎖誘導体は、人体に対する安全性や環境に対する保全性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】試験例1における本発明の糖鎖誘導体のシロアリ防除効果を示すグラフ(致死率による評価結果)である。
【図2】同、摂食阻害率による評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の糖鎖誘導体は、下記の一般式(I)で表されることを特徴とする。
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、Aは置換基を有していてもよいテトラメチレン基またはブテニレン基を示す。Rは低級アルキル基または4位の水酸基でグリコシド結合した1位の水酸基の水素原子が低級アルキル基で置換されたグルコピラノシル基を示す。Rは水素原子、低級アルキル基、1位の水酸基でグリコシド結合したグルコピラノシル基のいずれかを示す。]
【0016】
また、本発明の木材害虫防除剤は、上記の一般式(I)で表される糖鎖誘導体を有効成分とすることを特徴とする。
【0017】
上記の一般式(I)で表される糖鎖誘導体において、Aにおけるブテニレン基としては、例えば2−ブテニレン基が挙げられる。ブテニレン基は、トランス型(E)、シス型(Z)のいずれの幾何異性体であってもよい。R、Rにおける低級アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基などの炭素数が1〜6のアルキル基が挙げられる。テトラメチレン基とブテニレン基が有していてもよい置換基としては、例えば低級アルキル基が挙げられる。
【0018】
本発明の糖鎖誘導体の具体例としては、下記の化学構造式1で表されるメチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシドが挙げられる。
【0019】
【化4】

【0020】
また、下記の化学構造式2で表されるメチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)グルコピラノシドが挙げられる。
【0021】
【化5】

【0022】
また、下記の化学構造式3で表されるメチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシドが挙げられる。
【0023】
【化6】

【0024】
また、下記の化学構造式4で表されるメチル β−D−(4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシドが挙げられる。
【0025】
【化7】

【0026】
また、下記の化学構造式5で表されるメチル β−D−(4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシドが挙げられる。
【0027】
【化8】

【0028】
本発明の糖鎖誘導体は、例えば下記の化学反応式で表される方法によって製造することができる(式中、AとRとRは前記と同義である。R11は低級アルキル基または4位の水酸基でグリコシド結合した1位の水酸基の水素原子が低級アルキル基で置換され2,3,6位の水酸基が保護基で保護されたグルコピラノシル基を示す。R12は水酸基の保護基、低級アルキル基、1位の水酸基でグリコシド結合した2,3,4,6位の水酸基が保護基で保護されたグルコピラノシル基のいずれかを示す。XとYは同一または異なって水酸基の保護基を示す)。具体的には、4位の水酸基の水素原子がアリル基で置換されたグルコピラノシド化合物(化合物A)と1位の水酸基の水素原子がアリル基で置換されたグルコピラノシド化合物(化合物B)とをオレフィンメタセシス反応に付することで両者が2−ブテニレン基で結合した化合物を得、その後、水酸基の保護基を除去すれば、Aが2−ブテニレン基である本発明の糖鎖誘導体を得ることができる。また、2−ブテニレン基を還元することでAがテトラメチレン基である本発明の糖鎖誘導体を得ることができる。なお、化合物Aおよび化合物Bの調製は、グルコースまたはセロビオースを出発物質とし、水酸基の保護基の種類を適宜選択して自体公知の有機化学的手法によって行うことができる。また、化合物Aと化合物Bとのオレフィンメタセシス反応、それに続く水酸基の保護基の除去や2−ブテニル基の還元も、自体公知の有機化学的手法によって行うことができる。
【0029】
【化9】

【0030】
本発明の糖鎖誘導体は、シロアリなどの木材害虫に対して優れた防除効果を有するので、シロアリ防除剤などの木材害虫防除剤の有効成分として使用することができる。その使用方法は特段制限されるものではなく、例えば本発明の糖鎖誘導体を水やアルコールなどの溶媒にその濃度が0.1%〜30%となるように溶解し、液状製剤として木材害虫の防除対象である柱や建材などに塗布したり噴霧したりすればよい。また、粉末製剤として散布するような態様であってもよい。液状製剤や粉末製剤の調製は、必要に応じて安定化剤や増量剤などを添加して自体公知の方法によって行うことができる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0032】
実施例1:メチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシド(化合物1)の製造
以下の方法に従って合成した。
【0033】
【化10】

【0034】
(1)4位の水酸基の水素原子がアリル基で置換されたグルコピラノシド化合物としてのメチル 2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−4−O−アリル−β−D−グルコピラノシド(化合物8)の合成
メチル β−D−グルコピラノシド(化合物6)(Tetrahedron lett.,2003,44,3733−3735)を出発物質とし、4,6位の水酸基をp−メトキシベンジリデンアセタールで保護し、さらに、2,3位の水酸基をp−メトキシフェニルメチル基で保護した後、トリメチルアミンボランと塩化アルミニウムを用いてp−メトキシベンジリデンアセタールを還元的に開環し、6位の水酸基が選択的にp−メトキシフェニルメチル基で保護された4位が水酸基の化合物7(1.47g,2.65mmol)をジメチルホルムアミド20mlに溶解した溶液を、3−ブロモ−1−プロぺン(480.9mg,3.97mmol)と水素化ナトリウム(95.4mg,3.97mmol)とともに室温で20分間攪拌した。その後さらに20分間攪拌した後、メタノール2mlを加えた。10分後、得られた混合液を水100mlに注ぎ込み、水相に対して酢酸エチル100mlを用いた抽出操作を3回行った。3回分の抽出液を一緒にし、水70mlを用いた洗浄操作を2回行った後、食塩水50mlを用いて洗浄してから硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。その後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=20:80)によって精製し、目的とする化合物8を油状物として得た(1.60g,98%)。
[α]D22 +14.99 (c 0.88, CHCl3) ; IR (film) 2915, 2838, 1612, 1511, 1461, 1357, 1299, 1245, 1068, 1172, 1068 cm-1 ; 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 3.35 (dd, 1H, J = 7.8, 9.2 Hz, C2H), 3.36 (t, 1H, J = 9 Hz, C4H), 3.38 (ddd, 1H, J = 1.4, 4.6, 9 Hz, C5H), 3.52 (t, 1H, J = 9.2 Hz, C3H), 3.57 (s, 3H, OCH3), 3.64 (dd, 1H, J = 4.6, 10.8 Hz, C6HH), 3,71 (dd, 1H, J = 1.4, 10.8 Hz, C6HH), 3.80 (s, 9H, OCH3), 3.99 (dd, 1H, J = 5.7, 12.2 Hz, 1’H), 4.25 (dd, 1H, J = 5.7, 12.2 Hz, C1’H), 4.27 (d, 1H, J = 7.8 Hz, C1H), 4.48 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.57 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.63 (d, 1H, J = 10.6 Hz, ArCHHO), 4.67 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.79 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.81 (d, 1H, J = 10.6 Hz, ArCHHO), 5.10 (ddd, 1H, J = 1.0, 2.8, 10.3 Hz, C3’H), 5.16 (ddd, 1H, J = 1.5, 3.3, 17.3 Hz, C2’H), 5.81 (m, 1H, C2’H), 6.83〜6.87 (brd, 6H, aromatic protons), 7.21〜7.28 (brd, 6H, aromatic protons) ; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 55.25, 57.08 (each OCH3), 68.62 (C6), 73.79 (ArCH2O), 73,79 (C1’), 74.39 (ArCH2O), 74.90 (C5), 75.30 (ArCH2O), 77.83 (C4), 81.92 (C2), 84.22 (C3), 104.71 (C1), 113.70, 113.73, 113.75 (each aromatic carbons), 116.89 (C3’), 129.38, 129.55, 129.74, 130.30, 130.77, 130.85 (each aromatic carbons), 134.78 (C2’), 159.15, 159.19 (each aromatic carbons) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 617.2718 (100, calcd. for C34H42O9Na [M+Na]+ : 617.2727)
【0035】
(2)1位の水酸基の水素原子がアリル基で置換されたグルコピラノシド化合物としてのアリル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(化合物10)の合成
グルコースを出発物質とし、全ての水酸基をアセチル基で保護した化合物9(Carbohydr.Res.,2005,340,1387−1392)(175mg,448μmol)をジクロロメタン1.5mlに溶解した溶液を、アリルアルコール(2.6mg,448μmol)と三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(63.5mg,448μmol)とともに室温で攪拌した。3時間後、得られた混合液を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液80mlに注ぎ込み、水相に対して酢酸エチル80mlを用いた抽出操作を3回行った。3回分の抽出液を一緒にし、食塩水50mlを用いて洗浄してから硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。その後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=22:78)によって精製し、目的とする化合物10を油状物として得た(75mg,43%)。
[α]D22 -10.15 (c 1.00, CHCl3) ; IR (film) : 2942, 2854, 1754, 1646, 1430, 1369, 1226, 1041, 906 cm-1 ; 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 2.00, 2.02, 2.05, 2.09 (each s, 3H, OCH3), 3.68 (ddd, 1H, J = 2.4, 4.7, 9.9 Hz, C5H), 4.10 (dd, 1H, J = 6.1, 13.2 Hz, C1’H), 4.14 (dd, 1H, J = 2.4, 12.3 Hz, C6HH), 4.26 (dd, 1H, J = 4.7, 12.3 Hz, C6HH), 4.34 (dd, 1H, J = 4.8, 13.2 Hz, C1’H), 4.55 (d, 1H, J = 7.9 Hz, C1H), 5.02 (dd, 1H, J = 7.9, 9.6 Hz, C2H), 5.09 (t, 1H, J = 9.9 Hz, C4H), 5.20 (dd, 1H, J = 1.4, 9.0 Hz, C3’H), 5.21 (t, 1H, J = 9.9 Hz, C3H), 5.27 (dd, 1H, J = 1.4, 17.2 Hz, C3’H), 5.85 (dddd, 1H, J = 4.8, 6.1, 9.0, 17.2 Hz, C2’H) ; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 20.57, 20.60, 20.65, 20,72 (each OCH3), 61.93 (C6), 68.42 (C4), 70.01 (C1’), 71.27 (C2), 71.77 (C5), 72.85 (C3), 99.55 (C1), 117.65 (C3’), 133.29 (C2’), 169.32, 169.39, 170.30, 170.68 (C=O) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 411.1259 (100, calcd. for C17H24O10Na [M+Na]+ : 411.1267)
【0036】
(3)メチル 4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)−2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−β−D−グルコピラノシド(化合物11)の合成
化合物8(305mg,515μmol)と化合物10(200mg,515μmol)をトルエン3mlに溶解した溶液を、第2世代Grubbs触媒(13mg,15.4μmol)とともに90℃で攪拌した。5分後、得られた混合液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=45:55)によって精製し、目的とする化合物11(E体:Z体=5:1)を油状物として得た(88mg,18%)。なお、E体とZ体は高速液体クロマトグラフィー(0.1%トリフルオロ酢酸添加アセトニトリル:0.1%トリフルオロ酢酸添加水=68:32)によって分離することができた。
[α]D22 +171.98 (c 1.00, CHCl3) ; IR (film) : 2923, 2854, 1754, 1681, 1612, 1511, 1454, 1245, 1218, 1037, 821 cm-1 ; 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.99 , 2.02, 2.07 (each S, 3H, OCH3), 3.35 (dd, 1H, J = 7.9, 8.8 Hz, C2H), 3.36 (ddd, 1H, J = 1.2, 4.5, 8.8 Hz, C5H), 3.39 (t, 1H, J = 8.8 Hz, C4H), 3.50 (t, 1H, J = 8.8 Hz, C3H), 3.57 (s, 3H, OCH3), 3.61 (ddd, 1H, J = 2.3, 5.6, 9.5 Hz , C5’H), 3.63 (dd, 1H, J = 4.5, 10.4 Hz, C6HH), 3.70 (dd, 1H, J = 1.2, 10.4 Hz, C6HH), 3.79 (s, 3H, OCH3), 3.80 (s, 6H, OCH3), 3.99 (m,2 H, C7HH, C7’HH), 4.11 (dd, 1H, J = 2.3, 12.3 Hz, C6’HH), 4.24 (dd, 1H, J = 5.6, 12.3 Hz, C6’HH), 4.26 (d, 1H, J = 7.9 Hz, C1H), 4.28 (m, 2H, C7HH, C7’HH), 4.47 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.50 (d, 1H, J = 7.9 Hz, ArCHHO), 4.57 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.62 (d, 1H, J = 10.7 Hz, ArCHHO), 4,64 (d, 1H, J = 10.6 Hz, ArCHHO), 4.79 (d, 1H, J = 10.6 Hz, ArCHHO), 4.82 (d, 1H, J = 10.7 Hz, ArCHHO), 4.99 (dd, 1H, J = 7.9, 9.5 Hz, C2’H), 5.08 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4’H), 5.19 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3’H), 5.62 (m, 1H, C8H), 5.68 (m, 1H, C8’H), 6.84 (m, 6H, aromatic protons), 7.25 (m, 6H, aromatic protons) ; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 20.57, 20.60, 20.64, 20.71, 55.25 (each OCH3), 57.07, 61.86, 68.33, 69.05, 71.25, 71.34, 71.71, 72.36, 72.44, 72.89, 73.13, 74.39, 74.86, 75.29, 77.72, 77.74, 81.90, 84.22, 99.62, 100.73, 103.45, 104.72, 113.72, 113.75, 127.68, 129.37, 129.47, 129.75, 130.09, 130.72, 130.80, 159.17, 159.20, 169.30, 169.40, 170.28, 170.69 ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 977.3786 (100, calcd. for C49H62O19Na [M+Na]+ : 977.3783)
【0037】
(4)メチル β−D−4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシド(化合物12)の合成
化合物11(E体とZ体の混合物)(125mg,130μmol)をメタノール6mlに溶解した溶液を、水素気流中、10%パラジウム炭素(1mg)とともに室温で攪拌した。3時間後、得られた混合液をセライトで濾過し、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=96:4)によって精製し、目的とする化合物12を油状物として得た(68mg,88%)。
[α]D22 +189.96 (c 1.00, H2O) ; IR (film); 3432, 1631, 1446, 1369, 1241, 1045, 713 cm-1 ; 1H NMR (500 MHz, D2O) δ 1.51 (m, 4H, C8HH, C8HH, C8’HH, C8’HH), 1.95, 1.98, 2.01, 2.01 (each S, 3H, OCH3), 3.14 (dd, 1H, J = 8.0, 9.4 Hz, C2’H), 3.15 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C4’H), 3.33 (ddd, 1H, J = 2.1, 5.6, 9.4 Hz, C5’H), 3.44 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C3’H), 3.45 (s. 3H, OCH3), 3.56 (m, 2H, C7’HH, C7HH), 3.61 (dd, 1H, J = 5.6, 12.3 Hz, C6’HH), 3.72 (m, 1H, C7’HH), 3.79 (dd, 1H, J = 2.1, 12.3 Hz, C6’HH), 3.80 (m, 1H, C7HH), 3.93 (ddd, 1H, J = 2.3, 4.0, 10.1 Hz, C5H), 4.11 (dd, 1H, J = 2.3, 12.6 Hz, C6HH), 4.23 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 4.28 (dd, 1H, J = 4.0, 12.6 Hz, C6HH), 4.74 (d, 1H, J = 8.1 Hz, C1H), 4.83 (dd, 1H, J = 8.1, 9.5 Hz, C2H), 5.00 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4H), 5.25 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3H) ; 13C NMR (125 MHz, D2O) δ 70.00, 70.06, 70.08 (each OCH3) , 75.27(C8’), 75.66 (C8), 107.42 (OCH3), 110.42 (C6’), 111.76 (C6), 118.26 (C3), 120.41 (C7), 121.04 (C5), 121.58 (C2), 122.56 (C2’), 123.06 (C4), 123.18 (C7’), 125.03 (C5’), 125.60 (C3’), 127.89 (C4’), 150.10 (C1), 153.14 (C1’), 222.68, 222.77, 223.15, 223.73 (each C=O) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 619.2247 (100, calcd. for C25H40O16Na [M+Na]+ : 619.2214)
【0038】
(5)メチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシド(化合物1)の合成
化合物12(80mg,130μmol)をメタノール3mlと5%水酸化ナトリウム水溶液1mlの混合液に溶解して室温で攪拌した。20分後、減圧濃縮してメタノールを除去し、残った水溶液をイオン交換カラム(DOWEX 50W,H form)に通した。得られた水溶液を凍結乾燥し、目的とする化合物1を白色アモルファス粉末として得た(53mg,95%)。
[α]D22 +23.96 (c 1.00, H2O) ; 1H NMR (500 MHz, D2O) δ 1.55 (m, 4H, C8HH, C8HH, C8’HH, C8’HH), 3.13 (dd, 1H, J = 8.0, 9.3 Hz, C2’H), 3.13 (dd, 1H, J = 8.0, 9.4 Hz, C2H), 3.15 (t, 1H, J = 9.1 Hz, C4’H), 3.25 (dd, 1H, J = 9.1, 9.7 Hz, C4H), 3.32 (ddd, 1H, J = 2.1, 5.5, 9.7 Hz, C5H), 3.32 (ddd, 1H, J = 2.0, 5.5 9.1 Hz, C5’H), 3.36 (dd, 1H, J = 9.1, 9.3 Hz, C3’H), 3.43 (dd, 1H, J = 9.1, 9.4 Hz, C3H), 3.44 (s, 3H, OCH3), 3.56 (m, 2H, C7HH, C7’HH), 3.59 (dd, 1H, J = 5.5, 12.4 Hz, C6’HH), 3.62 (dd, 1H, J = 5.5, 12.3 Hz, C6HH), 3.73 (m, 1H, C7’HH), 3.79 (dd, 1H, J = 2.1, 12.3 Hz, C6HH), 3.79 (dd, 1H, J = 2.0, 12.4 Hz, C6’HH), 3.82 (m, 1H, C7HH), 4.23 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 4.33 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H) ; 13C NMR (125 MHz, D2O) δ 75.36 (C8’), 75.74 (C8), 107.12 (OCH3), 110.39 (C6), 110.72 (C6’), 119.62 (C4), 120.05 (C7), 122.72 (C7’), 123.09 (C2), 123.14 (C2’), 125.01 (C3), 125.56 (C3’), 125.74 (C5), 125.86 (C5’), 127.88 (C4’), 152.14 (C1), 153.13 (C1’) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 429.0892 (2, calcd. for C17H33O12 [M+H+]+ : 429.1972), 446.2212 (9, calcd. for C17H34O13[M+H2O]+ : 446.2206), 451.1772 (100, calcd. for C17H32O12Na [M+Na]+ : 451.1792)
【0039】
実施例2:メチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)グルコピラノシド(化合物2)の製造
以下の方法に従って合成した。
【0040】
【化11】

【0041】
(1)メチル β−D−4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)グルコピラノシド(化合物13)の合成
実施例1で得た化合物11E(28mg,29μmol)をジクロロメタン5mlと水500μlの混合液に溶解した溶液を、2,3−ジシアノ−5,6−ジクロロベンゾキノン(DDQ)(19.7mg,87μmol)とともに室温で攪拌した。6時間後、得られた混合液を水20mlに注ぎ込み、水相に対して酢酸エチル15mlを用いた抽出操作を2回行った。2回分の抽出液を一緒にし、食塩水10mlを用いて洗浄してから硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。その後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=90:10)によって精製し、目的とする化合物13を油状物として得た(15mg,87%)。
[α]D21 +206.39 (c 1.40, CHCl3) ; IR (film) ; 3455, 2919, 1751, 1454, 1373, 1234, 1041, 995 cm-1 ; 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 2.01, 2.02, 2.06, 2.09 (each s, 3H, OCH3), 3.34 (ddd, 1H, J = 2.6, 3.9, 9.5 Hz, C5H), 3.34 (dd, 1H, J = 7.8, 9.5 Hz, C2H), 3.42 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4H), 3.55 (s, 3H, OCH3), 3.64 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3H), 3.71 (ddd, 1H, J = 2.5, 4.5, 10.0 Hz, C5’H), 3.76 (dd, 1H, J = 3.9, 12.1 Hz, C6HH), 3.91 (dd, 1H, J = 2.6, 12.1 Hz, C6HH), 4.11 (dd, 1H, J = 6.3, 13.0 Hz, C7HH), 4.15 (dd, 1H, J = 2.5, 12.3 Hz, C6’HH), 4.23 (d, 1H, J = 7.8 Hz, C1H), 4.24 (dd, 1H, J = 5.3, 13.0 Hz, C7’HH), 4.26 (dd, 1H, J = 6.0, 13.0 Hz, C7’HH), 4.32 (dd, 1H, J = 4.9, 13.0 Hz, C7HH), 4.67 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 5.01 (dd, 1H, J = 8.0, 9.5 Hz, C2’H), 5.08 (t, 1H, J = 10.0 Hz, C4’H), 5.24 (dd, 1H, J = 9.5, 10.0 Hz, C3’H), 5.74 (ddd, 1H, J = 4.9, 6.3, 16.0 Hz, C8H), 5.83 (ddd, 1H, J = 5.3, 6.0, 16.0 Hz, C8’H) ; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 20.59, 20.63, 20.73, 20.75 (each OCH3), 57.33 (OCH3), 61.60 (C6), 61.93 (C6’), 68.50 (C4’), 68.70 (C7), 71.28 (C2’), 71.66 (C5’), 72.03 (C7’), 72.82 (C3’), 73.88 (C2), 75.23 (C5), 76.12 (C4), 76.19 (C3), 99.02 (C1’), 102.56 (C1), 128.83 (C8), 130.37 (C8’), 169.44, 169.45, 170.48, 170.78 (C=O) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 617.2045 (100, calcd. for C25H38O16Na [M+Na]+ : 617.2058), 612.2493 (9, calcd. for C25H40O17 [M+H2O]+ : 612.2266)
【0042】
(2)メチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)グルコピラノシド(化合物2)の合成
化合物13(15mg,25μmol)をメタノール1mlと5%水酸化ナトリウム水溶液0.2mlの混合液に溶解して室温で攪拌した。15分後、減圧濃縮してメタノールを除去し、残った水溶液をイオン交換カラム(DOWEX 50W,H form)に通した。得られた水溶液をODS Sep−Pakカートリッジ(2.0g)にロードし、水100mlで洗浄した後、メタノールと水の混合液(メタノール:水=10:90)で溶出し、ロータリーエバポレーターでメタノールを減圧濃縮して化合物2を含む画分を得、これを凍結乾燥し、目的とする化合物2を白色アモルファス粉末として得た(9.9mg,93%)。
[α]D21 -7.29 (c 0.99, H2O) ; 1H NMR (500 MHz, D2O) δ 3.15 (dd, 1H, J = 7.9, 9.5 Hz, C2’H), 3.17 (dd, 1H, J = 8.1, 9.4 Hz, C2H), 3.23 (dd, 1H, J = 9.1, 9.5 Hz, C4’H), 3.28 (dd, 1H, J = 9.4, 9.6 Hz, C4H), 3.33 (ddd, 1H, J = 2.3, 6.0, 9.1 Hz, C5’H), 3.35 (ddd, 1H, J = 2.3, 5.6, 9.6 Hz, C5H), 3.37 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C3H), 3.45 (s, 3H, OCH3), 3.46 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3’H), 3.60 (dd, 1H, J = 6.0, 12.4 Hz, C6’HH), 3.62 (dd, 1H, J = 5.6, 12.4 Hz, C6HH), 3.80 (dd, 1H, J = 2.3, 12.4 Hz, C6’HH), 3.81 (dd, 1H, J = 2.3, 12.4 Hz, C6HH), 4.11, 4.14, 4.22 (each m, 1H, C7’HH, C7HH, C7’HH), 4.24 (d, 1H, J = 7.9 Hz, C1’H), 4.28 (m, 1H, C7’HH), 4.39 (d, 1H, J = 8.1 Hz, C1H), 5.79, 5.84 (each m, 1H, C8’H, C8H) ; 13C NMR (125 MHz, D2O) δ 107.14 (OCH3), 110.41 (C6), 110.73 (C6’), 119.30 (C7), 119.62 (C4), 122.46 (C7’), 123.07 (C2), 123.09 (C2’), 124.99 (C5), 125.60 (C3’), 125.75 (C3), 125.88 (C5’), 127.41 (C4’), 151.12 (C1), 153.16 (C1’), 179.59 (C8), 179.85 (C8’) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 449.1663 (100, calcd. for C17H30O12Na [M+Na]+ : 449.1635)
【0043】
実施例3:メチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシド(化合物3)の製造
以下の方法に従って合成した。
【0044】
【化12】

【0045】
(1)1位の水酸基の水素原子がアリル基で置換されたグルコピラノシド化合物としてのアリル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3,6−トリス−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(化合物15)の合成
セロビオースを出発物質とし、全ての水酸基をアセチル基で保護した化合物14(2.0g,2.9mmol)をジクロロメタン10mlに溶解した溶液を、アリルアルコール(256mg,4.4mmol)と三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体(624mg,4.4mmol)とともに室温で攪拌した。3時間後、得られた混合液を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液40mlに注ぎ込み、水相に対して酢酸エチル30mlを用いた抽出操作を3回行った。3回分の抽出液を一緒にし、食塩水10mlを用いて洗浄してから硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。その後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=36:64)によって精製し、目的とする化合物15を油状物として得た(1.35g,45%)。
[α]D24.6 -13.95 (c 0.98, CHCl3) ; IR (film) 3019, 2942, 2882, 1751, 1646, 1430, 1369, 1230, 1041 cm-1 ; 1H NMR (500MHz, CDCl3) δ 1.95, 1.98, 1.99, 2.00, 2.01, 2.06, 2.10 (each s, 3H, OCH3), 3.56 (ddd, 1H, J = 2.1, 5.0, 9.9 Hz, C5H), 3.63 (ddd, 1H, J = 2.3, 4.5, 9.9 Hz, C5’H), 3.75 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C4H), 4.02 (dd, 1H, J = 2.3, 12.5 Hz, C6’HH), 4.06 (dd, 1H, J = 5.0, 12.5 Hz, C6HH), 4.08 (m, 1H, C7HH), 4.27 (ddt, 1H, J = 1.5, 5.0, 13.2 Hz, C7HH), 4.34 (dd, 1H, J = 4.5, 12.5 Hz, C6’HH), 4.48, 4.48 (each d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H, C1’H), 4.50 (dd, 1H, J = 2.1, 12.5 Hz, C6HH), 4.89 (dd, 1H, J = 8.0, 9.3 Hz, C2’H), 4.90 (dd, 1H, J = 8.0, 9.6 Hz, C2H), 5.03 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4’H), 5.11 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3’H), 5.15 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C3H), 5.17 (ddd, 1H, J = 1.5, 2.9, 10.5 Hz, C9HH), 5.23 (ddd, 1H, J = 1.5, 3.2, 17.2 Hz, C9HH), 5.81 (m, 1H, C8HH) ; 13C NMR (125 MHz, CDCl3) δ 20.52, 20.53, 20.63, 20.67, 20.83 (each OCH3), 61.55 (C6’), 61.86 (C6), 67.79 (C4’), 70,01 (C7), 71.54 (C2), 71.61 (C2’), 71.95 (C5’), 72.52 (C5), 72.66 (C3), 72.93 (C3’), 76.48 (C4), 99.37 (C1), 100.77 (C1’), 117.63 (C9), 133.32 (C8), 169.02, 169.29, 169.59, 169.81, 170.21, 170.30, 170.48 (each C=O) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 722.2850 (100, calcd. for C30H42O20 [M+CHOOH]+ : 722.2270), 699.2093 (61, calcd. for C29H40O18Na [M+Na]+ : 699.2113), 694.2537 (82, calcd. for C29H42O19 [M+H2O]+ : 694.2321)
【0046】
(2)メチル 4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3,6−トリス−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)−2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−β−D−グルコピラノシド(化合物16)の合成
実施例1で得た化合物8(87mg,147μmol)と化合物15(100mg,147μmol)をトルエン6mlに溶解した溶液を、第2世代Grubbs触媒(7.4mg,8.82μmol)とともに90℃で攪拌した。5分後、得られた混合液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=60:40)によって精製し、目的とする化合物16(E体:Z体=4:1)を油状物として得た(48mg,26%)。
1H NMR (500MHz, CDCl3) δ 1.91 (s, 6H, OCH3), 1.92 (s, 3H, OCH3), 1.94 (s, 6H, OCH3), 1.96, 2.01 (each s, 3H, OCH3), 3.27 (dd, 1H, J = 7.7, 9.0 Hz , C2’’H), 3.30 (t, 1H, J = 9.0 Hz, C4’’H), 3.43 (t, 1H, J = 9.0 Hz, C3’’H), 3.44 (ddd, 1H, J = 2.8, 4.3, 9.0 Hz, C5’’H), 3.49 (s, 3H, OCH3), 3.57 (ddd, 1H, J = 2.0, 3.6, 9.4 Hz, C5’H), 3.57 (ddd, 1H, J = 2.0, 3.6, 9.4 Hz, C5H), 3.68 (dd, 1H, J = 4.3, 12.3 Hz, C6’’HH), 3.72 (s, 9H, OCH3), 3.90 (m, 2H, C7’HH, C7’’HH), 3.97 (dd, 1H, J = 2.0, 12.7 Hz, C6HH), 3.97 (dd, 1H, J = 2.0, 12.7 Hz, C6’HH), 4.17 (m, 2H, C7’HH, C7’’HH), 4.18 (d, 1H, J = 7.7 Hz, C1’’H), 4.30 (dd, 1H, J = 3.6, 12.7Hz, C6HH), 4.30 (dd, 1H, J = 3.6, 12.7 Hz, C6’HH), 4.38 (d, 1H, J = 8.1 Hz, C1’H), 4.40 (d, 1H, J = 11.2 Hz, ArCHHO), 4.43 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H), 4.49 (d, 1H, J = 11.2 Hz, ArCHHO), 4.56 (d, 1H, J = 11.2 Hz, ArCHHO), 4.57 (d, 1H, J = 11.2 Hz, ArCHHO), 4.72 (d, 1H, J = 10.6 Hz, ArCHHO), 4.74 (d, 1H, J = 10.6 Hz, ArCHHO), 4.83 (dd, 1H, J = 8.1, 9.4 Hz, C2’H), 4.85 (dd, 1H, J = 8.0, 9.4 Hz, C2H), 4.99 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C4’H), 4.99 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C4H), 5.06 (t, 2H, J = 9.4 Hz, C3’H, C3H), 5.10 (dd, 1H, J = 2.8, 12.3 Hz, C6’’HH), 5.55 (m, 2H, C8’H, C8’’H), 6.75〜6.80 (6H, aromatic protons), 7.11〜7.20 (6H, aromatic protons)
【0047】
(3)メチル β−D−4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3,6−トリス−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシド(化合物17)の合成
化合物16(E体とZ体の混合物)(79mg,63μmol)をメタノール16mlに溶解した溶液を、水素気流中、10%パラジウム炭素(1mg)とともに室温で攪拌した。3時間後、得られた混合液をセライトで濾過し、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=98:2)によって精製し、目的とする化合物17を油状物として得た(44mg,79%)。
[α]D25 +19.71 (c 1.1, H2O) ; IR (film) 3475, 2919, 2850, 1743, 1430, 1373, 1230, 1045 cm-1 ; 1H NMR (500MHz, D2O) δ 1.53〜1.58 (m, 4H, C8’HH, C8’’HH), 1.91, 1.94, 1.95, 1.96, 1.97, 2.01, 2.01 (each s, 3H, OCH3), 3.22 (ddd, 1H, J = 2.0, 3.8, 9.3 Hz, C5’’H), 3.23 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4’’H), 3.27 (dd, 1H, J = 7.8, 9.3 Hz, C2’’H), 3.43 (m, 1H, C7’’HH), 3.49 (s, 3H, OCH3), 3.52 (ddd, 1H, J = 9.6, 2.0, 4.8 Hz, C5’H), 3.53 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3’’H), 3.55 (m, 1H, C7’HH), 3.59 (ddd, 1H, J = 2.2, 4.5, 9.6 Hz, C5H), 3.66 (dd, 1H, J = 3.8, 11.9 Hz, C6’’HH), 3.70 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C4’H), 3.74 (m, 1H, C7’HH), 3.77 (m, 1H, C7’’HH), 3.81 (dd, 1H, J = 2.0, 11.9 Hz, C6’’HH), 3.97 (dd, 1H, J= 2.2, 12.5 Hz, C6HH), 4.01 (dd, 1H, J = 4.8, 12.1 Hz, C6’HH), 4.15 (d, 1H, J = 7.8 Hz, C1’’H), 4.3 (dd, 1H, J = 4.5, 12.5 Hz, C6HH), 4.37 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 4.44 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H), 4.48 (dd, 1H, J = 2.0, 12.1 Hz, C6’HH), 4.82 (dd, 1H, J = 8.0, 9.6 Hz, C2’H), 4.85 (dd, 1H, J = 8.0, 9.4 Hz, C2H), 4.99 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C4H), 5.07 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C3H), 5.10 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C3’H) ; 13C NMR (125 MHz, D2O) δ 20.53, 20.65, 20.73, 20.91 (each OCH3), 25.86 (C8’’), 26.70 (C8’), 57.29 (OCH3), 61.55 (C6), 61.73 (C6’), 61.92 (C6’’), 67.78 (C4), 69.75 (C7’’), 71.60 (C2), 71.62 (C2’), 71.96 (C5), 72.31 (C7’), 72.45 (C3’), 72.69 (C3’’), 72.93 (C3), 73.99 (C2’’), 75.35 (C4’’), 76.42 (C5’), 76.47 (C4’), 77.73 (C5’’), 100.61 (C1’), 100.78 (C1), 103.52 (C1’’), 169.06, 169.33, 169.83, 169.86, 170.25, 170.52, 170.53 (each C=O) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 930.3811 (50, calcd. for C38H58O26 [M+CHOOH]+ : 930.3792), 907.3051 (100 , calcd. for C37H56O24Na [M+Na]+ : 907.3060)
【0048】
(4)メチル β−D−4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)グルコピラノシド(化合物3)の合成
化合物17(55mg,62μmol)をメタノール2mlと5%水酸化ナトリウム水溶液2mlの混合液に溶解して室温で攪拌した。10分後、減圧濃縮してメタノールを除去し、残った水溶液をイオン交換カラム(DOWEX 50W,H form)に通した。得られた水溶液を凍結乾燥し、目的とする化合物3を白色アモルファス粉末として得た(36.4mg,99.4%)。
[α]D25 -4.03 (c 0.88, H2O) ; 1H NMR (500MHz, D2O) δ 0.83 (m, 4H, C8’’HH, C8’’HH, C8’HH, C8’HH), 2.40 (dd, 1H, J = 8.0, 9.3 Hz, C2’’H), 2.42 (dd, 1H, J = 9.3, 9.7 Hz, C4’’H), 2.45 (dd, 1H, J = 8.0, 9.3 Hz, C2’H), 2.46 (dd, 1H, J = 8.0, 9.3Hz, C2H), 2.56 (dd, 1H, J = 9.1, 9.8 Hz, C4H), 2.60 (ddd, 1H, J = 2.0, 4.8, 9.8 Hz, C5H), 2.63 (ddd, 1H, J = 2.0, 4.9, 9.7 Hz, C5’’H), 2.65 (dd, 1H, J = 9.1, 9.3 Hz, C3H), 2.70 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3’’H), 2.71 (s, 3H, OCH3), 2.75 (ddd, 1H, J = 2.1, 5.1, 9.3 Hz, C5’H), 2.77 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3’H), 2.79 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4’H), 2.84 (m, 2H, C7’HH, C7’’HH), 2.87 (dd, 1H, J = 4.9, 12.3 Hz, C6’’HH), 2.88 (dd, 1H, J = 4.8, 12.3 Hz, C6HH), 2.96 (dd, 1H, J = 5.1, 12.3 Hz, C6’HH), 3.00 (m, 1H, C7’’HH), 3.06 (dd, 1H, J = 2.0, 12.3 Hz, C6’’HH), 3.07 (dd, 1H, J = 2.0, 12.3 Hz, C6HH), 3.09 (m, 1H, C7’HH), 3.12 (dd, 1H, J = 2.1, 12.3 Hz, C6’HH), 3.50 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’’H), 3.63 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 3.66 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H) ; 13C NMR (125MHz, D2O) δ 75.35 (C8’), 75.73 (C8’’), 107.12 (OCH3), 109.99 (C6’), 110.38 (C6), 110.49 (C6’’), 119.38 (C4), 120.09 (C7’), 122.71 (C7’’), 122.85 (C2’), 123.10 (C2), 123.14 (C2’’), 124.28 (C3’), 124.69 (C4’), 124.69 (C4’), 124.99 (C5), 125.43 (C5’’), 125.56 (C3), 125.91 (C3’’), 127.87 (C4’’), 128.61 (C5’), 151.96 (C1’), 152.50 (C1), 153.12 (C1’’) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 613.2352 (100, calcd. for C23H42O17Na [M+Na]+ : 613.2320), 591.2534 (24, calcd. for C23H43O17 [M+H]+ : 591.2500)
【0049】
実施例4:メチル β−D−(4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシド(化合物4)の製造
以下の方法に従って合成した。
【0050】
【化13】

【0051】
(1)4位の水酸基の水素原子がアリル基で置換されたグルコピラノシド化合物としてのメチル (2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−4−O−アリル−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−O−2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−β−D−グルコピラノシド(化合物21)の合成
セロビオースを出発物質とし、全ての水酸基をアセチル基で保護した化合物18の1位を臭化水素を用いて臭素化し、引き続き、マグネシウムメトキシドを用いてβ選択的にメトキシ基の導入を行った後、アセチル基の除去を行うことで得た化合物19の4,6位の水酸基をp−メトキシベンジリデンアセタールで保護し、さらに、2,3,2’,3’,6’位の水酸基をp−メトキシフェニルメチル基で保護した後、トリメチルアミンボランと塩化アルミニウムを用いてp−メトキシベンジリデンアセタールを還元的に開環し、6位の水酸基が選択的にp−メトキシフェニルメチル基で保護された4位が水酸基の化合物20(357mg,340μmol)をジメチルホルムアミド5mlに溶解した溶液を、3−ブロモ−1−プロぺン(61.8mg,510μmol)と水素化ナトリウム(12.2mg,510μmol)とともに室温で20分間攪拌した。その後さらに20分間攪拌した後、メタノール1mlを加えた。10分後、得られた混合液を水40mlに注ぎ込み、水相に対して酢酸エチル40mlを用いた抽出操作を3回行った。3回分の抽出液を一緒にし、水30mlを用いた洗浄操作を2回行った後、食塩水20mlを用いて洗浄してから硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた。その後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=28:72)によって精製し、目的とする化合物21を油状物として得た(302mg,79%)。
[α]D22 +11.34 (c 1.5, CHCl3) ; IR (film) 2931, 2834, 1612, 1511, 1465, 1357, 1299, 1249, 1172, 1068, 1037, 821 cm-1 ; 1H NMR (500MHz, CDCl3) δ 3.20 (ddd, 1H, J = 1.6, 4.3, 9.1 Hz, C5H), 3.26 (dd, 1H, J = 8.1, 9.1 Hz, C2H), 3.34 (ddd, 1H, J = 2.3, 4.1, 9.4 Hz, C5’H), 3.35 (dd, 1H, J = 7.7, 9.1 Hz, C2’H), 3.36 (t, 1H, J = 9.1 Hz, C3H), 3.43 (t, 1H, J = 9.1 Hz, C4H), 3.53 (dd, 1H, J = 9.1, 9.4 Hz, C3’H), 3.54 (dd, 1H, J = 4.3, 11 Hz, C6HH), 3.55 (s, 3H, OCH3), 3.68 (dd, 1H, J = 2.3, 10.9 Hz, C6’HH), 3.69 (dd, 1H, J = 1.6, 11.0 Hz, C6HH), 3.72 (s, 3H, OCH3), 3.77 (s, 6H, OCH3), 3.78, 3.79, 3.80 (each s, 3H, OCH3), 3.81 (dd, 1H, J = 4.1, 10.9 Hz, C6’HH), 3.96 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C4’H), 4.02 (ddt, 1H, J = 5.5, 12.3 Hz, C7HH), 4.24 (ddt, 1H, J = 5.7, 12.3Hz, C7’HH), 4.25 (d, 1H, J = 7.7 Hz, C1’H), 4.36 (d, 1H, J = 12.4 Hz, ArCHHO), 4.37 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.38 (d, 1H, J = 8.1 Hz, C1H), 4.41 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.54 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.60 (d, 1H, J = 10.7 Hz, ArCHHO), 4.63 (d, 1H, J = 11.2 Hz, ArCHHO), 4.64 (d, 1H, J = 11.0 Hz, ArCHHO), 4.68 (d, 1H, J = 10.7 Hz, ArCHHO), 4.70 (d, 1H, J = 11.2 Hz, ArCHHO), 4.75 (d, 1H, J = 10.7 Hz, ArCHHO), 4.75 (d, 1H, J = 10.7, ArCHHO), 4.95 (d, 1H, J = 11.0 Hz, ArCHHO), 5.10 (ddd, 1H, J = 1.1, 2.9, 10.6 Hz, C9HH), 5.18 (ddd, 1H, J = 1.4, 3.2, 17.5 Hz, C9HH), 5.82 (m, 1H, C8H), 6.71 (d, 2H, aromatic protons), 6.79〜6.85 (brd, 10H, aromatic protons), 7.17〜7.27 (brd, 12H, aromatic protons) ; 13C NMR (125MHz, CDCl3) δ 55.18, 55.22, 55.23, 55.26, 55.28 (each OCH3), 57.03 (OCH3), 67.79 (C6’), 68.67 (C6), 72.93 (ArCH2O), 73.65 (C7), 74.49, 74.50, 74.60 (each ArCH2O), 75.05 (C5), 75.10 (C5’), 75.27 (ArCH2O), 76.52 (C4’), 77.90 (C4), 81.44 (C3), 82.40 (C3’), 82.42 (C2), 84.58 (C2’), 102.36 (C1), 104.71 (C1’), 113.40, 113.65, 113.67, 113.75, 113.77 (each aromatic carbons), 116.62 (C9), 129.06 (aromatic carbons), 130.27, 130.69, 130.81, 130.92, 130.97, 1301.57 (each aromatic carbons), 135.01 (C8), 158.82, 158.97, 159.09, 159.11, 159.12, 159.15 (each aromatic carbons) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 1139.4946 (100, calcd. for C64H76O17Na [M+Na]+ : 1139.4982), 1134.5386 (70, calcd. for C64H78O18 [M+H2O]+ : 1134.5189), 1115.4954 (11, calcd. for C64H75O17 [M-H]+ : 1115.5005)
【0052】
(2)メチル (4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)−2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−β−D−グルコピラノシド(化合物22)の合成
化合物21(88mg,78μmol)と実施例1で得た化合物10(31mg,787μmol)をトルエン4mlに溶解した溶液を、第2世代Grubbs触媒(4.0mg,4.7μmol)とともに90℃で攪拌した。5分後、得られた混合液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=60:40)によって精製し、目的とする化合物22(E体:Z体=5:1)を油状物として得た(22mg,19%)。
1H NMR (500MHz, CDCl3) δ 1.90, 1.92, 1.94, 1.99 (each s, 3H, OCH3), 3.10 (ddd, 1H, J = 1.7, 4.2, 9.3 Hz, C5’’H), 3.19 (dd, 1H, J = 8.0, 8.9 Hz, C2’’H), 3.27 (dd, 1H, J = 7.8, 9.3 Hz, C2H), 3.27 (dd, 1H, J = 8.9, 9.3 Hz, C3’’H), 3.28 (dd, 1H, J = 1.7, 12.0 Hz, C6’’HH), 3.28 (ddd, 1H, J = 2.0, 5.1, 9.3 Hz, C5H), 3.35 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4’’H), 3.42 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3H), 3.45 (dd, 1H, J = 4.2, 12.0 Hz, C6’’HH), 3.47 (s, 3H, OCH3), 3.55 (ddd, 1H, J = 2.3, 4.5, 9.6 Hz, C5’H), 3.56 (dd, 1H, J = 2.0, 12.2 Hz, C6HH), 3.64, 3.69, 3.70, 3.71, 3.71, 3.72 (each s, 3H, OCH3), 3.72 (dd, 1H, J = 5.1, 12.2 Hz, C6HH), 3.88 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4H), 3.93 (m, 1H, C7’HH), 3.94 (m, 1H, C7HH), 4.03 (dd, 1H, J = 2.3, 12.3 Hz, C6’HH), 4.17 (dd, 1H, J = 4.5, 12.3 Hz, C6’HH), 4.18 (d, 1H, J = 7.8 Hz, C1H), 4.19 (m, 2H, C7’HH, C7HH), 4.29 (d, 2H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.31 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’’H), 4.33 (d, 1H, J = 11.9 Hz, ArCHHO), 4.43 (d, 1H , J = 8.0 Hz, C1’H), 4.46 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.52 (d, 1H, J = 10.7 Hz, ArCHHO), 4.55 (d. 1H, J = 11.7 Hz, ArCHHO), 4.56 (d, 1H, J = 11.0 Hz, ArCHHO), 4.58 (d, 1H, J = 10.0 Hz, ArCHHO), 4.63 (d, 1H, J = 10.7 Hz, ArCHHO), 4.67 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.68 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.87 (d, 1H, J = 11.0 Hz, ArCHHO), 4.92 (dd, 1H, J = 8.0, 9.6 Hz, C2’H), 5.01 (t, 1H, J = 9.6Hz, C4’H), 5.11 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C3’H), 5.58 (m, 2H, C8’HH, C8HH), 6.63 (d, 2H, aromatic protons), 6.72〜6.79 (10H, aromatic protons), 7.09〜7.18 (12H, aromatic protons)
【0053】
(3)メチル β−D−(4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシド(化合物23)の合成
化合物22(E体とZ体の混合物)(20mg,13μmol)をメタノール2mlに溶解した溶液を、水素気流中、10%パラジウム炭素(0.5mg)とともに室温で攪拌した。6時間後、得られた混合液をセライトで濾過し、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=96:4)によって精製し、目的とする化合物23を油状物として得た(10mg,97%)。
[α]D20 +20.28 (c 0.7, H2O) ; IR (film) 3432, 2919, 2854, 2549, 1751, 1631, 1446, 1373, 1230, 1037 cm-1 ; 1H NMR (500MHz, D2O) δ 1.46 (m, 4H, C8HH, C8HH, C8’HH, C8’HH), 1.88, 1.91, 1.94, 1.95 (each s, 3H, OCH3), 3.12 (dd, 1H, J = 8.0, 9.5 Hz, C2’’H), 3.12 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C4’H), 3.13 (dd, 1H, J = 8.0, 9.6 Hz, C2’H), 3.29 (ddd, 1H, J = 2.5, 5.3, 9.6 Hz, C4’H), 3.38 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C3’H), 3.43 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3’’H), 3.44 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4’’H), 3.44 (ddd, 1H, J = 1.8, 4.8, 9.5 Hz, C5’’H), 3.49 (m, 2H, C7’HH, C7’’HH), 3.56 (dd, 1H, J = 5.4, 12.4 Hz, C6’HH), 3.63 (dd, 1H, J = 4.8, 12.2 Hz, C6’’HH), 3.67 (m, 1H, C7’HH), 3.72 (dd, 1H, J = 1.8, 12.4 Hz, C6’HH), 3.74 (m, 1H, C7HH), 3.81 (dd, 1H, J = 1.8, 12.2 Hz, C6’’HH), 3.88 (ddd, 1H , J = 2.3, 3.9, 9.5 Hz, C5H), 4.05 (dd, 1H, J = 2.3, 12.6 Hz, C6HH), 4.21 (dd, 1H, J = 3.9, 12.6 Hz, C6HH), 4.22 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’’H), 4.30 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 4.68 (d, 1H, J = 8.3 Hz, C1H), 4.77 (dd, 1H, J = 8.3, 9.5 Hz, C2H), 4.94 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4H), 5.19 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3H) ; 13C NMR (125MHz, D2O) δ 69.97, 70.03, 70.05 (each OCH3), 75.22 (C8), 75.63 (C8’), 107.14 (OCH3), 109.91 (C6’’), 110.23 (C6’), 111.71 (C6), 118.22, 120.37, 121.01, 121.54, 122.55, 122.79, 123.01, 123.20, 124.21, 124.68, 125.02, 125.27, 127.65, 128.50, 150.07, 152.42, 152.99, 222.64, 222.74, 223.11, 223.69 ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 781.2774 (100, calcd. for C31H50O21Na [M+Na]+ : 781.2743)
【0054】
(4)メチル β−D−(4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシド(化合物4)の合成
化合物23(9mg,11.8μmol)をメタノール1mlと5%水酸化ナトリウム水溶液0.5mlの混合液に溶解して室温で攪拌した。10分後、減圧濃縮してメタノールを除去し、残った水溶液をイオン交換カラム(DOWEX 50W,H form)に通した。得られた水溶液を凍結乾燥し、目的とする化合物4を白色アモルファス粉末として得た(7mg,99%)。
[α]D21 +26.61 (c 0.7, H2O) ; 1H NMR (500MHz, D2O) δ 1.48〜1.49 (m, 4H, C8HH, C8HH, C8’HH, C8’HH), 3.06 (dd, 1H, J = 8.0, 9.2 Hz, C2’H), 3.11 (dd, 1H, J = 8.0, 9.2 Hz, C2’’H), 3.12 (dd, 1H, J = 8.0, 9.3 Hz, C2H), 3.13 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4H), 3.18 (dd, 1H, J = 9.1, 9.7 Hz, C4’H), 3.25 (ddd, 1H, J = 2.0, 6.0, 9.7 Hz, C5’H), 3.29 (t, 1H, J = 9.1 Hz, C3’H), 3.30 (ddd, 1H, J = 2.1, 5.3, 9.3 Hz, C5H), 3.38 (s, 3H, OCH3), 3.39 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3H), 3.40 (ddd, 1H, J = 1.7, 4.7, 9.2 Hz, C5’’H), 3.43 (t, 1H, J = 9.2 Hz, C3’’H), 3.44 (t, 1H, J = 9.2 Hz, C4’’H), 3.50 (m, 2H, C7HH, C7’HH), 3.52 (dd, 1H, J = 6.0, 12.5 Hz, C6’HH), 3.55 (dd, 1H, J = 5.3, 12.5 Hz, C6HH), 3.62 (dd, 1H, J = 4.7, 12.2 Hz, C6’’HH), 3.66 (m, 1H, C7’HH), 3.72 (dd, 1H, J = 2.0, 12.5 Hz, C6’HH), 3.73 (dd, 1H, J = 2.1, 12.5 Hz, C6HH), 3.75 (m, 1H, C7HH), 3.79 (dd, 1H, J = 1.7, 12.2 Hz, C6’’HH), 4.20 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’’H), 4.26 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 4.29 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H) ; 13C NMR (125MHz, D2O) δ 75.34 (C8), 75.72 (C8’), 107.15 (OCH3), 109.92 (C6’’), 110.23 (C6’), 110.69 (C6), 119.60 (C4’), 120.03 (C7’), 122.72 (C7), 122.80 (C2’’), 123.07 (C2’), 123.18 (C2), 124.22 (C3’’), 124.68 (C5’’), 125.03 (C5), 125.25 (C3), 125.71 (C3’), 125.84 (C5’), 127.66 (C4), 128.51 (C4’’), 152.12 (C1’), 152.42 (C1), 153.00 (C1’’) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 613.2331 (100, calcd. for C23H42O17Na [M+Na]+ : 613.2320), 608.2536 (43, calcd. for C23H44O18 [M+H2O]+ : 608.2528)
【0055】
実施例5:メチル β−D−(4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシド(化合物5)の製造
以下の方法に従って合成した。
【0056】
【化14】

【0057】
(1)メチル (4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3,6−トリス−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシ−2−ブテン−1−イル)−2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−2,3,6−トリス−O−(4−メトキシフェニルメチル)−β−D−グルコピラノシド(化合物24)の合成
実施例4で得た化合物21(160mg,143μmol)と実施例3で得た化合物15(121mg,179μmol)をトルエン10mlに溶解した溶液を、第2世代Grubbs触媒(9.1mg,10.7μmol)とともに90℃で攪拌した。5分後、得られた混合液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=60:40)によって精製し、目的とする化合物24(E体:Z体=5:1)を油状物として得た(54mg,17%)。
1H NMR (500MHz, CDCl3) δ 1.97, 1.98, 2.00, 2.02, 2.04, 2.10 (each s, 3H, OCH3), 3.18 (ddd, 1H, J = 1.5, 4.5, 10.2 Hz, C5’’H), 3.25 (dd, 1H, J = 8.0, 9.1 Hz, C2’’H), 3.34 (t, 1H, J = 9.0 Hz, C3’’H), 3.35 (ddd, 1H, J = 2.1, 4.3, 9.2 Hz, C5’’’H), 3.35 (dd, 1H, J = 7.8, 9.1 Hz, C2’’’H), 3.42 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4’’H), 3.50 (t, 1H, J = 9.1 Hz, C3’H), 3.52 (dd, 1H, J = 4.5, 12.1 Hz, C6’HH), 3.53 (ddd, 1H, J = 2.1, 4.9, 9.4 Hz, C5H), 3.54 (s, 3H, OCH3), 3.64 (ddd, 1H, J = 1.5, 4.5, 9.4 Hz, C5’H), 3.66 (dd, 1H, J = 2.1, 12.3 Hz, C6’’’HH), 3.66 (dd, 1H, J = 1.5, 12.1 Hz, C6’HH), 3.71 (s, 3H, OCH3), 3.74 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C4H), 3.76, 3.77, 3.78, 3.79, 3.80 (each s, 3H, OCH3), 3.78 (dd, 1H, J = 4.3, 12.3 Hz, C6’’’HH), 3.94 (t, 1H, J = 9.2 Hz, C4’’’H), 3.96 (m, 2H, C7’HH, C7’’HH), 4.03 (dd, 1H, J = 2.3, 12.6 Hz, C6’’HH), 4.07 (dd, 1H, J = 4.9, 12.2 Hz, C6HH), 4.22 (m, 2H, C7’HH, C7’’HH), 4.24 (d, 1H, J = 7.8 Hz, C1’’’H), 4.36, 4.36, 4.36 (each d, 1H, J = 11.0 Hz, ArCHHO), 4.38 (dd, 1H, J = 4.5, 12.6 Hz, C6’’HH), 4.39 (d, 1H, J= 8.0 Hz, C1’’H), 4.45 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’H), 4.51 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H), 4.51 (dd, 1H, J = 2.1, 12.2 Hz, C6HH), 4.53 (d, 1H, J = 11.8 Hz, ArCHHO), 4.59 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.61 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.63 (d, 1H, J = 10.9 Hz, ArCHHO), 4.64 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.69 (d, 1H, J = 10.9 Hz, ArCHHO), 4.75, 4.75 (each d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHHO), 4.90 (dd, 1H, J = 8.0, 9.7 Hz, C2’H), 4.92 (dd, 1H, J = 8.0, 9.4 Hz, C2H), 4.94 (d, 1H, J = 10.9 Hz, ArCHHO), 5.06 (t, 1H, J = 9.7 Hz, C4’H), 5.13 (t, 1H, J = 9.7 Hz, C3’H), 5.16 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C3H)
【0058】
(2)メチル β−D−(4−O−(4−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−2,3,6−トリス−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシド(化合物25)の合成
化合物24(E体とZ体の混合物)(64mg,36.2μmol)をメタノール5mlに溶解した溶液を、水素気流中、10%パラジウム炭素(1mg)とともに室温で攪拌した。3時間後、得られた混合液をセライトで濾過し、濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=92:8)によって精製し、目的とする化合物25を油状物として得た(26mg,69%)。
[α]D21 -10.94 (c 0.3, H2O); IR (film) 3478, 2919, 2850, 2553, 2360, 1743, 1635, 1454, 1373, 1230, 1045 cm-1 ; 1H NMR (500MHz, D2O) δ 1.50 (m, 4H, C8’HH, C8’’HH), 1.93, 1.97 (each s, 3H, OCH3), 2.00 (s, 9H, OCH3), 2.02, 2.07 (each s, 3H, OCH3), 3.19 (dd, 1H, J = 8.0, 9.4 Hz, C2’’H), 3.19 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4’’’H), 3.20 (dd, 1H, J = 8.0, 9.5 Hz, C2’’’H), 3.35 (ddd, 1H, J = 1.8, 5.0, 9.8 Hz, C5’’’H), 3.45 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C3’’H), 3.46 (S, 3H, CH3), 3.52 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3’’’H), 3.54 (t, 1H, J = 9.4 Hz, C4’’H), 3.56 (ddd, 1H, J = 1.9, 4.7, 9.4 Hz, C5’’H), 3.62 (dd, 1H, J = 5.5, 12.5 Hz, C6’’’HH), 3.70 (dd, 1H, J = 4.7, 12.2 Hz, C6’’HH), 3.72 (m, 2H, C7’HH, C7’’HH), 3.77 (ddd, 1H, J = 1.9, 5.2, 9.3 Hz, C5’H), 3.78 (dd, 1H, J = 1.8, 12.5 Hz, C6’’’HH), 3.87 (dd, 1H, J = 1.9, 12.2 Hz, C6’’HH), 3.90 (ddd, 1H, J = 2.3, 3.7, 9.5 Hz, C5H), 4.00 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4’H), 4.04 (dd, 1H, J = 2.3, 12.6 Hz, C6HH), 4.09 (dd, 1H, J = 5.2, 12.5 Hz, C6’HH), 4.29 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’’’H), 4.36 (dd, 1H, J = 3.7, 12.6 Hz, C6HH), 4.37 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’’’H), 4.40 (dd, 1H, J = 1.9, 12.5 Hz, C6’HH ), 4.72 (d, 2H, J = 8.0 Hz, C1’H, C1H), 4.75 (dd, 1H, J = 8.0, 9.3 Hz, C2’H), 4.81 (dd, 1H, J = 8.0, 9.5 Hz, C2H), 4.98 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4H), 5.12 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3’H), 5.19 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C3H) ; 13C NMR (125MHz, D2O) δ 20.51, 20.55, 20.67, 20.76, 20.93 (each OCH3), 25.85 (C8’), 26.66 (C8’’), 57.36 (OCH3), 60.25, 61.16, 61.36, 61.56, 61.82, 67.79, 69.84, 71.64, 71.65, 71.94, 72.11, 72.31, 72.48, 72.71, 72.94, 73.47, 74.70, 75.03, 75.17, 75.77, 76.26, 76.43, 100.61, 100.78, 169.12, 169.35, 169.92, 169.98, 170.28, 170.56, 170.63 ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 1069.3586 (100, calcd. for C43H66O29Na [M+Na]+ : 1069.3588)
【0059】
(3)メチル β−D−(4−O−(4−(β−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−β−D−グルコピラノシル)オキシブチル)−β−D−グルコピラノシル−(1→4))−O−グルコピラノシド(化合物5)の合成
化合物25(26mg,24.8μmol)をメタノール2mlと5%水酸化ナトリウム水溶液1mlの混合液に溶解して室温で攪拌した。5分後、減圧濃縮してメタノールを除去し、残った水溶液をイオン交換カラム(DOWEX 50W,H form)に通した。得られた水溶液を凍結乾燥し、目的とする化合物5を白色アモルファス粉末として得た(18mg,96%)。
[α]D20.4 -2.93 (c 0.67, H2O) ; 1H NMR (500MHz, D2O) δ 1.50〜1.51 (m, 4H, C8’’HH, C8’’HH, C8’HH, C8’HH), 3.13 (dd, 1H, J = 8.0, 9.6 Hz, C2’’’H), 3.14 (dd, 2H, J = 8.0, 9.3 Hz, C2’H, C2’’H), 3.14 (dd, 1H, J = 8.0, 9.0 Hz, C2H), 3.14 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4’H), 3.24 (t, 1H, J = 9.5 Hz, C4H), 3.29 (ddd, 1H, J = 2.3, 5.0, 9.5 Hz, C5H), 3.30 (ddd, 1H, J = 2.0, 4.0, 9.5 Hz, C5’H), 3.33 (t, 1H, J = 9.0 Hz, C3H), 3.40 (s, 3H, OCH3), 3.41 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3’H), 3.41 (ddd, 1H, J = 1.8, 4.7, 9.3 Hz, C5’’H), 3.42 (ddd, 1H, J = 2.0, 4.7, 9.3 Hz, C5’’’H), 3.43 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C4’’H), 3.44 (t, 1H, J = 9.3 Hz, C3’’H), 3.45 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C3’’’H), 3.52 (m 2H, C7’HH, C7’’HH), 3.55 (dd, 1H, J = 4.0, 12.3 Hz, C6’HH), 3.56 (dd, 1H, J = 5.0, 12.1 Hz, C6HH), 3.58 (t, 1H, J = 9.6 Hz, C4’’’H), 3.63 (dd, 2H, J = 4.7, 12.1 Hz, C6’’HH, C6’’’HH), 3.68 (m, 1H, C7’’HH), 3.73 (dd, 1H, J = 2.3, 12.1 Hz, C6HH), 3.74 (dd, 1H, J = 2.0, 12.3 Hz, C6’HH), 3.77 (m, 1H, C7’HH), 3.80 (dd, 1H, J = 2.0, 12.1 Hz, C6’’HH), 3.81 (dd, 1H, J = 1.8, 12.1 Hz, C6’’’HH), 4.23 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1’’’H), 4.31 (d, 2H, J = 8.0 Hz, C1’’H, C1’H), 4.33 (d, 1H, J = 8.0 Hz, C1H) ; 13C NMR (125MHz, D2O) δ 75.35 (C8’), 75.73 (C8’’), 107.16 (OCH3), 109.95 (C6’’’), 109.99 (C6’’), 110.25 (C6’), 110.50 (C6), 119.39 (C4’’’), 120.10 (C7’’), 122.72 (C7), 122.81 (C2’’’), 122.86 (C2’’), 123.11 (C2’), 123.20 (C2), 124.24 (C3’’’), 124.29 (C3’’), 124.70, 124.70 (C5’’’,C5’’), 125.04 (C4’’), 125.27 (C3’), 125.44 (C3), 125.92 (C4’), 127.67 (C4), 128.54 (C5’), 128.62 (C5), 151.97 (C1’’), 152.44 (C1’’), 152.51 (C1’), 153.01 (C1) ; ESIMS (%, rel.int.) m/z 775.2886 (100, calcd. for C29H52O22Na [M+Na]+ : 775.2848)
【0060】
製剤例1:液状製剤
化合物2を水にその濃度が3%となるように溶解し、シロアリ防除のための液状製剤を調製した。
【0061】
試験例1:本発明の糖鎖誘導体のシロアリ防除効果(致死率および摂食阻害率による評価)
(試験方法)
直径が0.8cmで厚さが0.7mmのペーパーディスクに、被験物質の水溶液を塗布し、風乾した。これを直径35mmのプラチックシャーレに入れ、ヤマトシロアリ30匹を放飼し、21日後に致死率と摂食阻害率を求めた。致死率は“(死んだ個体数/30匹)×100(%)”として算出した。摂食阻害率は“(1−(試験区でのペーパーディスクの減少量/無処置のペーパーディスクの減少量))”として算出した。なお、被験物質は実施例1、2、3のそれぞれで合成した化合物1、2、3の3種類とし、水溶液の濃度は0.1%、1.0%、および3.0%の3種類とした。
【0062】
(試験結果)
致死率による評価結果を図1に示す(brankは無処置のペーパーディスクの結果)。摂食阻害率による評価結果を図2に示す。図1と図2から明らかなように、本発明の糖鎖誘導体は優れたシロアリ防除効果を有し、中でも2つのグルコピラノース基をブテニレン基で結合した化合物2の効果が優れていた。フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)由来のセルラーゼ(エンドグルカナーゼ)のPDBデータを利用して本発明の糖鎖誘導体のモデリング考察を行ったところ、本発明の糖鎖誘導体は、安定配座の状態でセルラーゼの反応部位において複合体を形成することがわかった。このことから、本発明の糖鎖誘導体のシロアリ防除効果は、シロアリの栄養源であるセルロースを分解する腸内微生物が有するセルラーゼを阻害することによるものであると考えられた。セルロースを栄養源とするシロアリの生命維持機構は、セルロースを栄養源としないヒトには存在しないものである。従って、当該機構を阻害することによってシロアリに対する防除効果を発揮する本発明の糖鎖誘導体は、人体に対する安全性に優れるものであり、また、セルロースを栄養源としない家畜などに対する安全性にも優れるものであることがわかった。加えて、その構成単位はグルコースと1,4−ブタンジオールまたは1,4−ブテンジオールであるので、分解されてもこれらの化合物を産するのみであることから、環境に与える負荷が少ないものであると結論付けることができた。また、日本各地においてみられるマツノザイセンチュウによるマツ属樹木に対する被害は、カミキリムシが媒介していることが知られているが、カミキリムシもシロアリと同様にセルロースを栄養源としていることから、本発明の糖鎖誘導体は、カミキリムシなどのセルロースを栄養源としているその他の木材害虫に対しても防除効果を発揮することが期待できた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、優れた木材害虫防除効果を有するとともに、人体に対する安全性や環境に対する保全性に優れた木材害虫防除剤の有効成分を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される糖鎖誘導体。
【化1】

[式中、Aは置換基を有していてもよいテトラメチレン基またはブテニレン基を示す。Rは低級アルキル基または4位の水酸基でグリコシド結合した1位の水酸基の水素原子が低級アルキル基で置換されたグルコピラノシル基を示す。Rは水素原子、低級アルキル基、1位の水酸基でグリコシド結合したグルコピラノシル基のいずれかを示す。]
【請求項2】
下記の一般式(1)で表される糖鎖誘導体を有効成分とする木材害虫防除剤。
【化2】

[式中、Aは置換基を有していてもよいテトラメチレン基またはブテニレン基を示す。Rは低級アルキル基または4位の水酸基でグリコシド結合した1位の水酸基の水素原子が低級アルキル基で置換されたグルコピラノシル基を示す。Rは水素原子、低級アルキル基、1位の水酸基でグリコシド結合したグルコピラノシル基のいずれかを示す。]

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−6873(P2012−6873A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144553(P2010−144553)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)特許出願人の国立大学法人弘前大学および国立大学法人山形大学は、平成21年度、文部科学省、地域イノベーション創出総合支援事業、重点地域研究開発推進プログラム(シーズ発掘試験)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504229284)国立大学法人弘前大学 (162)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】