説明

糞尿処理装置

【課題】水洗排出された糞尿を分解処理して僅少量の乾燥固形残渣として取り出せる糞尿処理装置を提供する。
【解決手段】水洗送出された加水糞尿を受け入れる1つの処理槽1内に、この処理槽1内の被処理物を加熱する加熱手段7と被処理物内に空気を送り込んで撹拌と曝気を行う送気手段8とが設けられ、この処理槽1内の最低水位Lから最高水位Hまでの全高さ範囲を取り出し領域として残渣を処理槽1外に取り出す残渣排出手段16と、この残渣排出手段16により取り出された残渣を処理する残渣処理手段28とを備え、この残渣処理手段28は、水切り可能な残渣一時貯留部、残渣乾燥部、及び残渣一時貯留部で一定期間貯留された水切り残渣を前記残渣乾燥部に送り込む残渣搬送手段を備え、前記残渣一時貯留部から滴下する水分が処理槽1内に戻される構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗排出された糞尿を分解処理して僅少量の乾燥固形残渣として取り出せる糞尿処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水設備のない地域でのトイレや工事現場などで一時的に設置されるトイレなどの付帯設備として使用される糞尿処理装置として、水洗排出された加水糞尿を加熱曝気処理して分解することにより大半を気化させる糞尿処理装置は、理論的には種々発表されているが、コストパフォーマンスやメンテナンスの面で真に実用的なものは未だ実現していないのが実情である。即ち、従来のこの種の糞尿処理装置が特許文献1や特許文献2に記載されているが、特許文献1に記載の装置は、加圧空気吐出口を備えた第一槽(予備便槽)で被処理物の前処理(予備分解)を行い、この第一槽から予備分解済みの被処理物を溢流させて、加圧空気吐出口と加熱手段とを設けた第二槽(主処理槽)に送り込み、この第二槽において完全な分解処理を行おうとするものであり、特許文献2に記載の装置は、加圧空気吐出口を備えた第一槽(第一予備処理槽)で被処理物の第一予備分解を行い、この第一槽から第一予備処理済みの被処理物を溢流させて、粗大有機物を回収する濾過ネットを備えた第二槽(第二予備処理槽)に送り込み、この第二槽から粗大有機物が除去された第二予備処理済みの被処理物を溢流させて、加圧空気吐出口と加熱手段とを設けた第三槽(主処理槽)に送り込み、この第三槽において完全な分解処理を行おうとするものである。
【特許文献1】特許第2801537号公報
【特許文献2】特許第2807655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
而して、特許文献1に記載された装置や特許文献2に記載された装置の何れも複数の処理槽を必要とするものであるため、装置全体の設備コストが非常に高くつくばかりでなく、設置面積も大きくなるので、活用範囲が制限される。更に、何れの装置においても、最終段処理槽において被処理物を完全に分解気化させ、固形残渣が残らないように説明されているが、現実にはそのようなことはなく、僅少量であっても固形残渣が残留するので、定期的に槽内を清掃して固形残渣を取り除く必要があり、この保守作業を怠って長期間使用し続けると、増加する残留物によって正常な分解処理が妨げられ、機能低下を招くことになる。又、特許文献2に記載のように、粗大有機物を分離除去する濾過ネットを併用する構成では、適当な時期に当該濾過ネットを外して槽内の乾燥位置に移し替える作業、新たに濾過ネットをセットする作業、濾過ネット内容物が乾燥した後に槽外に取り出して廃棄する作業などの、全て手作業で行わなければならない、手間と時間のかかる保守作業が必須となり、先の最終段処理槽内の残渣除去のための保守作業と相まって、多大のメンテナンスコストを要することになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る糞尿処理装置を提供することを目的とするものであって、その手段を後述する実施形態の参照符号を付して示すと、水洗送出された加水糞尿を受け入れる1つの処理槽1内に、この処理槽1内の被処理物を加熱する加熱手段7と被処理物内に空気を送り込んで撹拌と曝気を行う送気手段8とが設けられ、この処理槽1内の最低水位Lから最高水位Hまでの全高さ範囲を取り出し領域として残渣を処理槽1外に取り出す残渣排出手段16と、この残渣排出手段16により取り出された残渣を処理する残渣処理手段28とを備え、この残渣処理手段28は、水切り可能な残渣一時貯留部P1、残渣乾燥部P2、及び前記残渣一時貯留部P1で一定期間貯留された水切り残渣を前記残渣乾燥部P2に送り込む残渣搬送手段(回転体30)を備え、前記残渣一時貯留部P1から滴下する水分が処理槽1内に戻される構成となっている。
【0005】
上記構成の本発明を実施するについて、具体的には請求項2に記載のように、処理槽1の一端に加水糞尿受入口3を設け、残渣排出手段16は処理槽1の他端側に配設し、処理槽1内の被処理物の少なくとも表面層に水平回転方向の流れを発生させる水平回転流れ発生手段を付加することができる。この水平回転流れ発生手段としては、請求項3に記載のように、処理槽1内の上部空間内に水平回転気流を発生させる送気ブロワー49と処理槽1内からの排気路(排気筒50)とから構成することができるし、請求項4に記載のように、処理槽1内の被処理物を吸引して吐出するポンプ54,55から構成することができる。このように被処理物吸引吐出ポンプ54,55を使用する場合、請求項5に記載のように、当該被処理物吸引吐出ポンプ55に、吐出される被処理物の流れを利用して外部から空気を吐出被処理物中に引き込み混合させる空気引き込み用インジェクションポンプ部65を併設しておくことができる。
【0006】
又、請求項6に記載のように、残渣一時貯留部P1は、垂直軸心の周りに水平回転駆動される周方向複数の水切り可能な区画空間A1〜A3の内、残渣排出手段16により排出された残渣を受け入れる位置にある区画空間で構成し、残渣乾燥部P2は、残渣排出手段16により排出された残渣を受け入れる位置の回転方向下手側の位置にある区画空間で構成し、残渣乾燥部P2より回転方向下手側には、区画空間A1〜A3の少なくとも底を開放させる乾燥残渣排出位置P3を設け、この乾燥残渣排出位置P3まで回転した区画空間A1〜A3の開放した底から重力で排出される乾燥残渣を受け入れる位置に運搬用ケース47を着脱自在に配置することができる。この請求項6に記載の構成を採用する場合、請求項7に記載のように、前記垂直軸心の周りで回転駆動され且つその回転中心部から放射状に突出する周方向複数の放射状隔壁37a〜37cを有する回転体30と、各放射状隔壁37a〜37cの下辺に隣接する水切り可能な固定底板34と、各放射状隔壁37a〜37cの先端に隣接する固定周側板32とを設け、前記水切り可能な区画空間A1〜A3を、前記回転体30の周方向に隣り合う2つの放射状隔壁37a〜37cと固定底板34及び固定周側板32で囲まれた空間によって構成し、前記乾燥残渣排出位置P3には固定底板34を設けない構成とすることができる。
【0007】
更に、請求項8に記載のように、残渣排出手段16は、処理槽1内と処理槽1上方の残渣排出位置とを通る垂直回転循環経路を回動し且つ前記残渣排出位置で残渣排出状態に自動切り換えされる残渣汲み出し用バケット19を備えたものとし、前記残渣排出位置と処理槽1との間に配設されてバケット19から排出される残渣を受け入れる水切り可能な区画空間A1〜A3から成る残渣一時貯留部P1を設けることができる。この請求項8に記載の構成を採用する場合、請求項9に記載のように、残渣排出手段16は、水平軸心の周りで回転駆動される回転アーム17と、この回転アーム17の遊端部に前記水平軸心と平行な支軸24で揺動自在に吊り下げられた残渣汲み出し用バケット19と、このバケット19が前記残渣排出位置に達したときに前記回転アーム17の回動に伴って前記バケット19を残渣排出状態に反転させる固定当接部材26とを備えた構成とすることができる。
【0008】
又、請求項10に記載のように、処理槽1内の加水糞尿受入口3と残渣排出手段16が配置されたエリア(残渣排出エリア5)との間の位置に、当該エリア内に一定サイズ以上の異物などが入り込むのを防止するネット14を張設することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明に係る糞尿処理装置によれば、水洗送出された加水糞尿を受け入れる1つの処理槽のみを使用して構成することができ、従来の複数の処理槽と各処理槽間で被処理物を流動させる接続管で組み立てられる装置と比較して、設備コストの大幅な削減と設置面積の大幅な減縮が可能である。而して、1つの処理槽内で加水糞尿を加熱と送気による撹拌及び曝気により分解処理するのであるが、現実には若干の固形残渣が発生する。この固形残渣は、通常、細かな粒状乃至は細片状であって被処理物の表面層を浮遊するが、残渣排出手段を適当時間間隔で稼働させることにより、処理槽内の水位に関係なく当該固形残渣を処理槽外に取り出すことができ、取り出した残渣は、残渣一時貯留部に貯めて適当期間放置して水切りを行わせると共に、当該残渣一時貯留部内の残渣量が適量に達した時期を見計らって残渣搬送手段を稼働させることにより、残渣一時貯留部内の水切り残渣を残渣乾燥部に送り込み、この残渣乾燥部において残渣を適当期間放置して完全に乾燥させることができる。従って、本発明装置に対する残渣処理作業としては、適当時期に残渣乾燥部内の乾燥残渣を廃棄処理するだけで良く、残渣処理作業が極めて容易でコストも殆どかからないにもかかわらず、処理槽内からの残渣除去作業を行わないで放置する場合に生じる不都合、即ち、処理槽内での正常な分解処理能力の低下を来すというような不都合を生ぜしめないで済む。
【0010】
尚、請求項2に記載の構成によれば、処理槽内への加水糞尿の流れ込み位置と残渣排出手段とが処理槽の長さ分だけ離れることになり、この処理槽内に流入した加水糞尿中の固形分がそのまま残渣排出手段で排出される可能性が少なくなる。一方、水平回転流れ発生手段によって被処理物の少なくとも表面層に水平回転方向の流れが発生しているので、被処理物の分解処理により発生して表面層に浮遊する残渣は、処理槽内の略全域にわたって表面層を流動することになる。従って、残渣排出手段が処理槽の端部に配設されているにもかかわらず、当該残渣排出手段で確実に発生残渣を捕捉させ、処理槽外に排出させることができる。
【0011】
上記の水平回転流れ発生手段を採用する場合、請求項3に記載の構成によれば、被処理物を吸引して吐出するポンプなどで当該被処理物自体に直接水平回転方向の流れを発生させる場合よりも簡単且つ安価に実施することができ、その手段のメンテナンスも容易に行えると共に、処理槽内の上部空間内のアンモニアガスなどを外部から送り込まれる空気により速やかに分解処理して無臭化した状態で排出することができる。換言すれば、この種の糞尿処理装置に必須の、処理槽内の上部空間内への外気の供給と当該上部空間内からの排気のための手段を上記水平回転流れ発生手段に兼用させることができるのである。勿論、処理槽内の上部空間内への外気の供給と当該上部空間内からの排気のための手段とは別に上記の水平回転流れ発生手段を設けることもできる。例えば請求項4に記載の構成によれば、被処理物がポンプにより吸引吐出される際に粉砕撹拌作用を受けることになり、被処理物の分解を効率よく遂行させることができる。更に、請求項5に記載の構成によれば、被処理物に水平回転流れを発生させることができるだけでなく、当該水平回転流れ状態にある被処理物中に外気を強制的に吐出させて被処理物の分解を助長させることができる。従って、水平回転流れ発生手段を構成するポンプに併設したインジェクションポンプ部の能力を高めることにより、被処理物内に空気を送り込んで撹拌と曝気を行う送気手段を前記インジェクションポンプ部で兼用させることも可能になり、この水平回転流れ発生手段としてのポンプとは別に被処理物内に空気を送り込んで撹拌と曝気を行う送気用ポンプを設ける場合よりもコスト削減を図ることができる。
【0012】
尚、上記のように水平回転流れ発生手段として外気を処理槽内(上部空間内又は被処理物中に)に送り込む手段を利用する場合や、当該水平回転流れ発生手段とは別に、処理槽内の上部空間内への外気の供給と当該上部空間内からの排気のための手段を併設する場合には、処理槽内の上部空間内の気圧が大気圧よりも低くなる(負圧状態になる)ように、併用される排気手段の排気能力を高めておき、処理槽内に加水糞尿を送り込む便器の使用時に処理槽内の臭気が逆流するのを防止すると共に、被処理物の気化及び発生したアンモニアガスなどの分解無臭化を活発化させることが望ましい。
【0013】
又、請求項6に記載の構成によれば、毎回の取り出し残渣を所定量に達するまで残渣一時貯留部で一定期間貯留すると共に水切りを行う工程と、当該残渣一時貯留部での一定期間貯留が終了した所定量の水切り残渣を残渣乾燥部に移し、次の残渣一時貯留部での取り出し残渣の貯留期間だけ放置して乾燥させる工程と、乾燥後の残渣を残渣乾燥部から取り出して運搬用ケースに投入する工程とを、垂直軸心の周りの周方向複数の水切り可能な区画空間を当該垂直軸心の周りに適当時間間隔で所定角度だけ間欠的に回転駆動させるだけで、オートマティックに実行させることができ、保守作業者は単に着脱自在な運搬用ケースを利用して乾燥残渣を廃棄処分するだけで良い。この請求項6に記載の構成を採用する場合、請求項7に記載の構成によれば、底や周壁を各別に備えたそれぞれ独立する容器状の区画空間を回転させる構成と比較して、乾燥残渣排出位置で区画空間の底を開放させるために各区画空間の底を開閉自在に構成する必要がなくなると共に、乾燥残渣排出位置に達した区画空間の底を自動開閉させる手段も不要になり、構造や制御がシンプルになって安価に実施することができる。
【0014】
更に、請求項8に記載の構成によれば、残渣汲み出し用バケットの垂直回転循環経路の最低高さ位置が処理槽内の底部付近となるように当該垂直回転循環経路を構成するだけで、処理槽内の被処理物の水位に関係なく当該被処理物内から確実に残渣を汲み出すことができる。しかも、前記残渣汲み出し用バケットが残渣排出状態に自動切り換えされる残渣排出位置が処理槽の上方に位置するので、この残渣排出位置の下側に配設される残渣一時貯留部の水切り可能な区画空間から滴下する水分は、特別な水路を設けなくとも直接処理槽内に戻すことができる。この請求項8に記載の構成を採用する場合、請求項9に記載の構成によれば、残渣汲み出し用バケットを残渣排出位置において残渣排出状態に自動切り換えするために、当該バケットに特別な構造、例えば開閉自在な底部などを設ける必要がなく、しかも残渣排出位置には単に固定当接部材を設けるだけで良いから、残渣汲み出し用バケットが垂直回転循環経路で回動する形式の残渣排出手段の構成を簡単にして安価に実施することができる。
【0015】
又、請求項10に記載の構成によれば、処理槽内に加水糞尿と共に誤って送り込まれた異物が残渣排出手段に絡まったりして故障などを引き起こす事態を回避できるし、分解に時間がかかる粗大な固形有機物が未分解のまま残渣排出手段で排出される不都合も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の具体的実施例を添付図に基づいて説明すると、図1〜図3において、1は矩形箱型の処理槽であり、その前端側壁部1aの幅方向中央位置に接続されたエルボ形配管2により加水糞尿受入口3が構成されている。エルボ形配管2の上向きの外端部は、水洗便器4の自動開閉蓋を備えた糞尿排出口と接続される。処理槽1内は、加水糞尿受入口3と対向する後端側壁部1bに隣接する残渣排出エリア5と、当該残渣排出エリア5と前端側壁部1aとの間の大きな加熱曝気処理エリア6とに分けられ、この加熱曝気処理エリア6の処理槽底板1c上に被処理物を一定温度に加熱する加熱手段7と被処理物内に空気を送り込んで撹拌と曝気を行う送気手段8とが敷設されている。
【0017】
加熱手段7は、平面円形で両端立ち上がり管部9a,9bを処理槽1の上方外部に延出させた保護パイプ9内にヒーター線を挿通させたもので、槽外の加熱制御装置に接続され、処理槽1内の被処理物の温度センサーからの検出温度信号に基づいて被処理物を設定温度に自動加熱することができる。送気手段8は、加熱手段7の保護パイプ9と同心状で当該保護パイプ9の内側に配置された平面円形で下向きの空気吐出口を周方向適当間隔おきに備えた空気吐出管10から構成され、この空気吐出管10の一箇所から上向きに連通連設された立ち上がり管部10aとこれに接続された配管11とを介して、処理槽1の外に設置された圧力空気送出装置(送気ブロワー)12に接続されている。13は、加熱手段7の保護パイプ9と送気手段8の空気吐出管10とを周方向複数箇所で支持する支持ブラケットであり、処理槽底板1c上に固着されている。
【0018】
加熱曝気処理エリア6の中間位置には、処理槽1の前後両端側壁部1a,1bと平行に粗大異物受け止め用ネット14が設けられている。この粗大異物受け止め用ネット14は、加熱手段7の保護パイプ9と送気手段8の空気吐出管10の上側に配設されるもので、処理槽左右両側壁部に付設された支持部材により、上下方向に抜き差し自在に支持され、被処理物の貯留量を一定範囲内に抑えるために設定される最低水位Lと最高レベルHとの上下高さ範囲をカバーする高さを有する。
【0019】
処理槽1の後端側の上側には、残渣排出エリア5の高さを加熱曝気処理エリア6の高さの2倍程度に拡大するための矩形箱型の突出ケース部15が配設され、この突出ケース部15の内部空間を含む処理槽1の残渣排出エリア5内に残渣排出手段16が設けられている。この残渣排出手段16は、回転アーム17、この回転アーム17の回転駆動手段18、回転アーム17の両端に設けられた残渣汲み出し用バケット19、及び排出残渣受入ホッパー20を備えている。
【0020】
残渣排出手段16を図1〜図5に基づいて詳細に説明すると、回転アーム17は、突出ケース部15の前端側壁部15aに隣接するように配置されたもので、突出ケース部15の前後両側壁部15a,15bの下端部間で水平前後向きに支承された回転軸17aに長さ方向の中央位置が固着されている。この回転アーム17の回転駆動手段18は、当該回転アーム17の突出ケース部15の前端側壁部15a側に回転軸17aと同心状に固着された大径平歯車21、この大径平歯車21に咬合する小径平歯車22、及び突出ケース部15の前端側壁部15aの外側に取り付けられて前記小径平歯車22を回転駆動する減速機付きモーター23から構成されている。残渣汲み出し用バケット19は、前後方向(回転軸17aの軸心方向)に長い樋形のもので、その長さ方向の前端側壁板19aに軸受け用筒体19bが設けられ、この軸受け用筒体19bを利用して回転アーム17の両端部で突出ケース部15の後端側壁部15b側に回転軸17aと平行な支軸24により片持ち状で左右揺動自在に軸支されている。而して各バケット19は、回転アーム17の回転により、重力で支軸24から真下にぶら下がる正立姿勢を保って回転軸17aの周囲を回動することになるが、その垂直回転循環経路が、処理槽1内に設定されている被処理物の最低水位Lより低い最低位置と、突出ケース部15の内部空間の上端付近の最高位置との間で形成されるように、回転アーム17の回転半径が設定されている。
【0021】
又、各バケット19には、その前端側壁板19aの外側面と軸受け用筒体19bとの間の入り隅部に固着されて、各バケット19が垂直回転循環経路の最高位置にあるときに当該バケット19の軸受け用筒体19bからバケット回転方向斜め上方に延出する被当接部材25が設けられている。排出残渣受入ホッパー20は、垂直回転循環経路の最高位置(残渣排出位置)にあるバケット19の下側に位置するように、突出ケース部15の後端側壁部15bに片持ち状に取り付けられている。而して、図1、図3、及び図7に示すように、1つのバケット19が垂直回転循環経路の最高位置(残渣排出位置)にあるとき、即ち、回転アーム17が垂直姿勢にあるときの当該回転アーム17の上端より上方位置で突出ケース部15の前端側壁部15aにピン状の固定当接部材26が、回転アーム17の回転に伴う各バケット19の被当接部材25の回動軌跡内に突出するように突設されている。
【0022】
図1〜図3に示されるように、残渣排出手段16の排出残渣受入ホッパー20の下側には、突出ケース部15内と当該突出ケース部15の後端側壁部15bの外側に付設された下側開放のカバー27内とにわたって残渣処理手段28が設けられている。この残渣処理手段28は、図4〜図7に詳細が示されるように、一側部が開放された固定ケース29と、この固定ケース29の内側で垂直軸心の周りに回転する回転体30、及びこの回転体30の回転駆動手段31から構成されている。
【0023】
固定ケース29は、部分円筒状の周側板32と、この周側板32の上下を塞ぐ天板33及び底板34から成り、周側板32から左右両側に突設された取付片29a,29bにより、周側板32の平面視における円弧中心位置が突出ケース部15の後端側壁部15b付近に位置する状態で、突出ケース部15の後端側壁部15bに取り付けられ、突出ケース部15内からカバー27側に突出する正面側が略120度の範囲で開放した切欠円柱状のものであって、周側板32と底板34の突出ケース部15内に位置する部分が水抜き孔を密に加工された水抜き領域32a,34aとなっている。回転体30は、固定ケース29の周側板32の平面視における円弧中心位置と同心状で天板33及び底板34に軸受けを介して支承された垂直向きの回転軸35と、この回転軸35に同心状に固着された筒状体36と、この筒状体36から周方向120度間隔おきに突設された回転軸35と平行な放射状隔壁37a〜37cとから成るもので、各放射状隔壁37a〜37cを形成する平行両側板38の下側辺は底板34に隣接すると共に、当該平行両側板38の先端をつなぐ先端面板39は周側板32に隣接して回転できるように構成されている。
【0024】
回転駆動手段31は、固定ケース29の天板33の直下に位置すると共に回転体30の放射状隔壁37a〜37cの上側辺に回転軸35と同心状に固着された大径平歯車40と、この大径平歯車40と咬合する小径平歯車41を出力軸に備え且つカバー27の上側に据え付けられた減速機付きモーター42とから構成されている。前記大径平歯車40には、各放射状隔壁37a〜37cの回転後方側に隣接し且つ回転軸35と同心の1つの仮想円上に中心を有する同一径の残渣受入用開口43a〜43cが設けられ、固定ケース29の天板33には、各放射状隔壁37a〜37c間で形成される区画空間A1〜A3の1つが固定ケース29内から底板34のない領域(カバー27内の領域)に完全に露出した状態にあるとき、固定ケース29内に完全に入った状態にある残り2つの区画空間の内、回転体30の回転方向上手側の区画空間の上に設けられている残渣受入用開口43a〜43cの1つの真上に同心状に位置する開口44が設けられ、前記排出残渣受入ホッパー20は、固定ケース29の開口44内に残渣を排出できる位置に設けられている。
【0025】
尚、突出ケース部15の後端側壁部15bからカバー27内に突出する固定ケース29の正面左右両側の平面視略三角形部分の下側には、平面視において底板34の開放側辺より若干突出して、当該底板34の開放側辺から滴下する水分を受けて突出ケース部15の内側へ戻す左右一対の三角形状の水受け部45a,45bを備えた水受け皿46が突出ケース部15の後端側壁部15bからカバー27内に突設されている。又、カバー27の真下には、ケース上端部が当該カバー27の内側に嵌入する状態で乾燥残渣運搬用ケース47が着脱自在に支持されている。
【0026】
更に、処理槽1の後端側壁部1bの左右両端の一方には、エルボ形配管48を介して処理槽1内の左右の一側壁に沿って外気を送り込む送気ブロワー49が設けられ、突出ケース部15の上端で前記送気ブロワー49が配設されている側とは反対側の端部には、排気筒50を介して排気ブロワー51が配設されている。前記送気ブロワー49は、処理槽1内に設定される被処理物の最高水位Hよりも高い位置に設けられ、この送気ブロワー49から吐出される圧力空気が、処理槽1内の被処理物の水位に関係なくエルボ形配管48を通じて処理槽1内の被処理物より上側に形成される上部空間内に送入され、当該上部空間内を水平に旋回した後、排気筒50を介して排気ブロワー51により吸引排出されるように構成されている。このとき、排気ブロワー51による被処理物上部空間からの排気能力は、送気ブロワー49による被処理物上部空間への送気能力より高く、当該被処理物上部空間が大気圧より負圧になるように構成されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、処理槽1には、この処理槽1内の被処理物の水位に応じて上下動するフロート52が設けられ、このフロート52の高さから処理槽1内の被処理物の水位(収容量)が最低水位L(最低収容量)と最高水位H(最高収容量)との間にあるか否かを検出する検出装置53が併設され、この検出装置53が最高水位H(最高収容量)を検出したとき、本装置に接続されている便器4の使用禁止を表示する警告ランプが点灯し、検出装置53が最低水位H(最低収容量)を検出したとき、加熱手段7(ヒーター)による被処理物の加熱を中止するなどの自動制御が行われる。
【0028】
上記構成の本発明の糞尿処理装置の使用方法について説明すると、水洗便器4から処理槽1の加水糞尿受入口3に洗浄水と共に送り込まれた加水糞尿、即ち、被処理物は、当該処理槽1内の全域にわたって貯留され、加熱手段7によって加熱されて設定温度に保たれると共に、送気手段8から噴出する圧力空気送出装置(送気ブロワー)12からの加圧空気によって撹拌と曝気作用を受け、この被処理物中に増殖される好気性バクテリアによって分解される。この分解作用によりガス化した固形有機物量と被処理物の表面から蒸発する水分量だけ時間の経過と共に被処理物の量が減少するが、水洗便器4の使用の度に未分解の被処理物が加えられるので、水洗便器4の使用頻度によっては処理槽1内の被処理物の水位(貯留量)が漸増する。そして処理槽1内の被処理物の水位が設定された最高水位Hに達すると警告ランプが点灯し、以降の水洗便器4の使用が中止され、処理槽1内の被処理物の水位が最高水位H以下に下がると、水洗便器4の使用が再開される。
【0029】
上記のようにして処理槽1内では、貯留された被処理物が周知の如く加熱、撹拌、曝気の作用を受けて分解処理されるが、固形有機物が存在しない状況まで完全に分解されるまで所要時間放置し、分解完了で未分解の被処理物と置換するバッチ処理ではなく、前記のように水洗便器4の使用の度に未分解の被処理物が加えられるのであるから、水洗便器4の使用頻度によっては、処理槽1内の被処理物中には未分解の固形有機物が混在することになる。而して、被処理物中の固形有機物は、上記の加熱、撹拌、曝気の作用を受けて分解が進むに伴って細かな粒状乃至は細片状の比重の軽い分解残渣が発生し、被処理物の表面層を浮遊する状態になる。一方、処理槽1内の被処理物より上側の空間には、常時作動している送気ブロワー49から処理槽1の一側壁に沿って外気が送り込まれると同時に、当該被処理物上側空間内の空気が、やはり常時作動している排気ブロワー51により、送気ブロワー49からの処理槽1内への送気口(エルボ形配管48の開口)とは反対側の位置にある排気筒50から吸引されて槽外に排出されているので、前記被処理物上側空間内には、取り入れられた新鮮な外気による水平回転気流が常時形成されている。そしてこのとき、送気ブロワー49の送気能力より排気ブロワー51の排気能力が高いので、前記被処理物上側空間内は大気圧より若干負圧の状態になっている。これらの理由により、被処理物表面からの分解生成ガスの放散と水分の蒸発とが活発に行われると同時に、被処理物の表面層が前記水平回転気流によって水平旋回力を受け、結果的に処理槽1内の被処理物が前記水平回転気流と同一方向に水平旋回することになる。この被処理物の水平旋回は又、被処理物の表面層を浮遊する分解残渣を或る程度の大きさまで集合させると共に、当該被処理物の撹拌を促す結果になり、被処理物の分解作用が良好に行われる。
【0030】
先に述べたように、被処理物の表面層に浮遊する比重の軽い残渣は、前記被処理物の表面層の水平旋回流によって処理槽1内を周壁に沿って流れることにより、加熱曝気処理エリア6において発生したものであっても残渣排出エリア5の被処理物の表面層を流動する機会が与えられる。一方、残渣排出手段16は、設定時間(日単位を含む)間隔で設定時間だけ自動運転させる。即ち、減速機付きモーター23を稼働させ、小径平歯車22と大径平歯車21とを介して回転アーム17を所定方向に所定速度で回動させることにより、回転アーム17の両端の残渣汲み出し用バケット19を垂直回転循環経路に沿って回動させると、当該バケット19は、その垂直回転循環経路の下端領域において、残渣排出エリア5における被処理物中を回動することになる。このとき当該バケット19は、被処理物の最低水位Lより低い処理槽1の底部付近を経由して回動するので、被処理物の水位に関係なく確実に被処理物中を回動することができる。
【0031】
而して、各バケット19は、残渣排出エリア5における被処理物中を回動した後、当該被処理物中から上方に抜け出すとき、当該被処理物の表面層を浮遊する分解残渣を汚水と共に汲み出すことになる。このバケット19による浮遊分解残渣の汲み出しを効率よく行わせるために、当該バケット19の少なくとも一部分を水抜き可能なメッシュ構造にすることもできる。又、被処理物中に進入した直後から当該バケット19が被処理物との摩擦抵抗で支軸24の周りに汲み出し姿勢に揺動することにより、残渣排出エリア5における処理槽1の底部付近を汲み出し姿勢で回動することが考えられるが、仮にそうであっても、残渣排出エリア5はこの処理槽1の加水糞尿受入口3から最も離れた位置にあり且つ途中には粗大異物受け止め用ネット14が存在するので、分解残渣より比較的比重が大きくて底に沈殿傾向にある未分解の粗大有機物がバケット19で汲み出される可能性は低い。尚、上記のようにバケット19の少なくとも一部分を水抜き可能なメッシュ構造にする場合、或る程度の汚水を一緒に汲み出すことができるようにバケット19の周壁上部を水抜き可能なメッシュ構造にすることができるし、逆に、できる限り汚水の汲み出しを少なくするためにバケット19の周壁下部又は周壁全体を水抜き可能なメッシュ構造にすることもできる。
【0032】
分解残渣と汚水とを汲み出したバケット19は、重力で正立姿勢を保って垂直回転循環経路を上方に回動するが、図7に示すように、このバケット19が垂直回転循環経路の最高位置(残渣排出位置)を回動するとき、当該バケット19側の被当接部材25にピン状の固定当接部材26が当接することにより、被当接部材25が固定当接部材26の下を潜り抜けるまでバケット19が支軸24の周りで回転し、正立姿勢から内容物を排出する姿勢に自動的に変換される。従って、バケット19で汲み出された分解残渣と汚水とは、当該バケット19の垂直回転循環経路の最高位置(残渣排出位置)の直下に設けられている排出残渣受入ホッパー20内に自動的に排出される。
【0033】
排出残渣受入ホッパー20の下側に設けられた残渣処理手段28は、図5〜図7に示すように、回転体30の放射状隔壁37a〜37c間で形成された周方向3つの区画空間A1〜A3の内、2つの区画空間、例えば区画空間A1,A2が固定ケース29内の残渣一時貯留部P1と残渣乾燥部P2とに位置すると共に、残る1つの区画空間A3が固定ケース29の外の乾燥残渣排出位置P3に位置する状態で待機している。即ち、残渣処理手段28は、3つの区画空間A1〜A3が3つのポジション、即ち、残渣一時貯留部P1、残渣乾燥部P2、及び乾燥残渣排出位置P3に割り当てられた状態で待機している。従って、排出残渣受入ホッパー20に排出された残渣と汚水とは、当該ホッパー20から固定ケース天板33の開口44及び残渣一時貯留部P1に位置する区画空間A1の真上にあって当該開口44の直下に重なっている大径平歯車40の残渣受入用開口43aを通じて区画空間A1内に導入される。この区画空間A1は、放射状隔壁37a,37cと固定ケース底板34の水抜き領域34a、及び固定ケース周側板32の水抜き領域32aによって周囲を囲まれているので、この区画空間A1(残渣一時貯留部P1)に導入された残渣と汚水から水分は自然に排出され、その真下の処理槽1内の残渣排出エリア5内に戻される。
【0034】
1つの残渣汲み出し用バケット19で汲み出される残渣量は僅かであるから、設定時間の間、連続的又は設定時間間隔で間欠的に残渣排出手段16の回転アーム17を回動させ、その間に汲み出される残渣を残渣処理手段28の残渣一時貯留部P1にある区画空間A1内に貯留し、水切りを行うが、このとき一緒に汲み出された未分解の有機物は、後から汲み出された汚水中に豊富に存在する分解能力のあるバクテリアの作用で、残渣一時貯留部P1の区画空間A1内で貯留されている間に分解処理されることになる。そして設定時間が経過して残渣一時貯留部P1にある区画空間A1内の水切り残渣の量が所定量に達すると、残渣排出手段16の回転アーム17の回転駆動を中止し、次に残渣処理手段28の回転体30を所定方向に所定角度だけ回転駆動させる。
【0035】
即ち、回転駆動手段31の減速機付きモーター42を稼働させ、小径平歯車41と大径平歯車40とを介して回転体30を、残渣一時貯留部P1の区画空間A1を下手側の残渣乾燥部P2に移す方向に、放射状隔壁37a〜37c間の角度(120度)だけ回転させて停止させる。この結果、放射状隔壁37a,37cと固定ケース底板34、及び固定ケース周側板32で囲まれた区画空間A1内の貯留残渣が放射状隔壁37cによって後押しされて、当該区画空間A1と共に下手側の残渣乾燥部P2に送られる。そして同時に、残渣乾燥部P2に位置していた区画空間A2がその下手側の乾燥残渣排出位置P3に移され且つ残渣一時貯留部P1の上手側に待機していた空の区画空間A3が残渣一時貯留部P1に移されることになる。
【0036】
上記の残渣排出手段16の作動により処理槽1内から分解残渣を汲み出して残渣処理手段28の残渣一時貯留部P1で貯留すると共に水切りを行う第一行程と、当該第一行程が設定時間だけ実行された後、残渣処理手段28の残渣搬送手段である回転体30の作動により残渣一時貯留部P1内の水切り残渣を下手側の残渣乾燥部P2に移す第二行程とを自動的に繰り返し実行させることにより、前記第一行程の実行中に、残渣乾燥部P2に移された水切り残渣は放置されて乾燥することになる。この実施形態では、残渣乾燥部P2は水切りのための固定ケース底板34の水抜き領域34aと固定ケース周側板32の水抜き領域32aとを備えた区画空間A1〜A3の1つで形成されているので、残留水分があっても当該水抜き領域32a,34aから滴下して下方の処理槽1内の残渣排出エリア5内に戻されると同時に、この残渣乾燥部P2が位置する突出ケース部15内は、処理槽1内の被処理物上側空間内から突出ケース部15内を経由して排気筒50に至る空気の流れがあるため、その一部の空気流が水抜き領域32a,34aを介して残渣乾燥部P2に位置する区画空間A1〜A3の1つの内部をも流れることが考えられ、従って、当該残渣乾燥部P2内での水切り残渣の乾燥は効果的に行われると考えられる。
【0037】
次の第二行程の実行により、残渣乾燥部P2内で放置乾燥された乾燥残渣が、当該残渣乾燥部P2に位置する区画空間A1〜A3の1つがその下手側の乾燥残渣排出位置P3に移されることにより自動的に排出される。即ち、第二行程時には区画空間A1〜A3の周方向の隔壁となる回転体30の放射状隔壁37a〜37cのみが回転するので、残渣乾燥部P2内の乾燥残渣は、その位置にある区画空間が例えば区画空間A1であるときは、当該区画空間A1の回転後方側の隔壁37cによって後押しされて、固定ケース29の底板32の無い領域、即ち、乾燥残渣排出位置P3に押し出され、下方にセットされている乾燥残渣運搬用ケース47内に自動的に投入される。従って、上記第一行程と第二行程との繰り返しにより乾燥残渣運搬用ケース47内に所要量の乾燥残渣が溜められたとき、乾燥残渣排出位置P3からの乾燥残渣の排出が行われていない第一行程の実行中に、乾燥残渣運搬用ケース47を持ち出して集積された乾燥残渣を廃棄処分し、空の乾燥残渣運搬用ケース47をカバー27の下側、即ち、乾燥残渣排出位置P3の下側にセットしておけば良い。
【0038】
尚、添付図に基づいて説明した上記実施形態は、本発明の実施の一例に過ぎず、具体的な実施形態の構成としては、請求項1に記載の本発明の技術思想に合致する範囲内で種々改変できるものである。例えば残渣排出手段16としては、垂直又は斜めに配設されたバケット付きベルトコンベヤ、掻き出し用スクレーパーを備えたベルトコンベヤを垂直又は斜めに配設され且つ下端側の掻き込み口と上端側の掻き出し口とを備えたケーシング内に収納した掻き出しコンベヤ、スクリューコンベヤ、その他の既製コンベヤを利用して構成することができる。
【0039】
又、処理槽内の被処理物の少なくとも表面層に水平回転方向の流れを発生させる水平回転流れ発生手段として、処理槽1内の上部空間内に水平回転気流を発生させる送気ブロワー49と処理槽1内からの排気路(排気ブロワー51を備えた排気筒50)とから構成したが、図8及び図9又は図10及び図11に示すように、処理槽1内の被処理物を吸引して吐出するポンプ54又は55から構成することもできる。即ち、図8及び図9に示すポンプ54は、処理槽1の外(図示例は処理槽1の上側外部)に配置されたモーター56で回転翼57の回転軸57aを駆動する軸流ポンプであって、図示例では回転軸57aが垂直向きになるように処理槽1の底板1c上で且つ円形の空気吐出管10の内側に隣接する位置に設置され、回転翼57はエルボ形配管59の上向き開口部内に配置され、当該エルボ形配管59の横向き吐出口59aが処理槽1の底板1c上で且つ円形の空気吐出管10に沿った方向に向いて開口し、エルボ形配管59の上向き開口部の上に同心状に連設された円筒状ケーシング60の周壁に吸込み口60aが形成されている。この吸込み口60aは、処理槽1内の被処理物が最低水位L以上の水位を保っている限り、当該被処理物を吸引できる高さにあって、回転翼57の回転駆動により、吸込み口60aから吸引された被処理物が横向き吐出口59から吐出され、処理槽1内に被処理物の水平回転流れを発生させることができる。
【0040】
図10及び図11に示すポンプ55は水中ポンプであって、図示例ではこの水中ポンプ55が処理槽1の底板1c上で且つ加熱手段7のヒーター線を内装した円形の保護パイプ9の内側に隣接する位置に水平横向きに設置され、その吸込み管61は、先端吸込み口が処理槽1内に設定された被処理物の最低水位Lより下のレベルで上向きに開口するエルボ形のもので、水平向きの吐出管62から吐出される被処理物によって処理槽1内に被処理物の水平回転流れを発生させることができるものであるが、特にこの図示例では、前記水平向きの吐出管62と、この先端の絞った吐出口部62aに外嵌させた外筒63と、この外筒63に一端が連通すると共に他端が処理槽1の外(図示例は処理槽1の上側外部)に開口する外気取り入れ管64とから成る空気引き込み用インジェクションポンプ部65を併設し、吐出管62から吐出される被処理物の流れで外筒63内を負圧にし、この負圧により外気取り入れ管64を経由して外気が外筒63内に吸引され、被処理物と空気とが混合されて処理槽1内の被処理物中に吐出されるように構成している。
【0041】
空気引き込み用インジェクションポンプ部65を併設していない水中ポンプ55のみを処理槽1内の被処理物中に没する位置に設置して、単に当該水中ポンプ55から吐出される被処理物によって処理槽1内に被処理物の水平回転流れを発生させることもできるが、上記のように吐出される被処理物の流れを利用して外部から空気を吐出被処理物中に引き込み混合させる空気引き込み用インジェクションポンプ部65を併設したポンプ(水中ポンプに限定されず、処理槽1の外に配設されたモーターで駆動される各種ポンプが利用できる)を利用すれば、被処理物中に効果的に空気を供給して高度の撹拌及び曝気作用を行わせることができ、図示のように、先の実施形態で示した送気手段8を省くことも可能である。
【0042】
上記のように、被処理物吸引吐出用ポンプを使用して被処理物に水平回転流れを発生させる場合でも、処理槽1内の被処理物上側空間内に新鮮な外気を導入させるための送気ブロワー49と、当該被処理物上側空間内を負圧に保つための排気ブロワー51は必要である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る糞尿処理装置の一実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】同実施形態の横断平面図である。
【図3】同実施形態の縦断正面図である。
【図4】同実施形態の要部の構成部材を分解状態で示す斜視図である。
【図5】同実施形態の要部の横断平面図である。
【図6】図5の一部分の横断平面図である。
【図7】図5のX−X線位置での要部を示す縦断正面図である。
【図8】別に実施形態を示す一部切欠き平面図である。
【図9】図8の要部を示す縦断側面図である。
【図10】更に別の実施形態を示す一部切欠き平面図である。
【図11】図10の要部を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 処理槽
3 加水糞尿受入口
4 水洗便器
5 残渣排出エリア
6 加熱曝気処理エリア
7 加熱手段
8 送気手段
12
14 粗大異物受け止め用ネット
15 突出ケース部
16 残渣排出手段
17 回転アーム
18 回転アームの回転駆動手段
19 残渣汲み出し用バケット
20 排出残渣受入ホッパー
21,40 大径平歯車
22,41 小径平歯車
23,42 減速機付きモーター
25 被当接部材
26 ピン状の固定当接部材
27 下側開放のカバー
28 残渣処理手段
29 固定ケース
30 回転体
31 回転体の回転駆動手段
32 周側板
32a,34a 水抜き領域
33 天板
34 底板
35 回転軸
37a〜37c 放射状隔壁
43a〜43c 残渣受入用開口
44 開口
46 水受け皿
47 乾燥残渣運搬用ケース
49 送気ブロワー
50 排気筒
51 排気ブロワー
52 被処理物水位検出用フロート
53 被処理物水位検出装置
A1〜A3 回転する区画空間
P1 残渣一時貯留部
P2 残渣乾燥部
P3 乾燥残渣排出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗送出された加水糞尿を受け入れる1つの処理槽内に、この処理槽内の被処理物を加熱する加熱手段と被処理物内に空気を送り込んで撹拌と曝気を行う送気手段とが設けられ、この処理槽内の最低水位から最高水位までの全高さ範囲を取り出し領域として残渣を処理槽外に取り出す残渣排出手段と、この残渣排出手段により取り出された残渣を処理する残渣処理手段とを備え、この残渣処理手段は、水切り可能な残渣一時貯留部、残渣乾燥部、及び前記残渣一時貯留部で一定期間貯留された水切り残渣を前記残渣乾燥部に送り込む残渣搬送手段を備え、前記残渣一時貯留部から滴下する水分が処理槽内に戻されるように構成された、糞尿処理装置。
【請求項2】
処理槽の一端に加水糞尿受入口が設けられ、残渣排出手段は処理槽の他端側に配設され、処理槽内の被処理物の少なくとも表面層に水平回転方向の流れを発生させる水平回転流れ発生手段が付加されている、請求項1に記載の糞尿処理装置。
【請求項3】
水平回転流れ発生手段が、処理槽内の上部空間内に水平回転気流を発生させる送気ブロワーと処理槽内からの排気路とから構成されている、請求項2に記載の糞尿処理装置。
【請求項4】
水平回転流れ発生手段が、処理槽内の被処理物を吸引して吐出するポンプから構成されている、請求項2に記載の糞尿処理装置。
【請求項5】
前記被処理物吸引吐出ポンプには、吐出される被処理物の流れを利用して外部から空気を吐出被処理物中に引き込み混合させる空気引き込み用インジェクションポンプ部が併設されている、請求項4に記載の糞尿処理装置。
【請求項6】
残渣一時貯留部は、垂直軸心の周りに水平回転駆動される周方向複数の水切り可能な区画空間の内、残渣排出手段により排出された残渣を受け入れる位置にある区画空間で構成され、残渣乾燥部は、残渣排出手段により排出された残渣を受け入れる位置の回転方向下手側の位置にある区画空間で構成され、残渣乾燥部より回転方向下手側には、区画空間の少なくとも底を開放させる乾燥残渣排出位置が設けられ、この乾燥残渣排出位置まで回転した区画空間の開放した底から重力で排出される乾燥残渣を受け入れる位置に運搬用ケースが着脱自在に配置されている、請求項1〜5の何れか1項に記載の糞尿処理装置。
【請求項7】
前記垂直軸心の周りで回転駆動され且つその回転中心部から放射状に突出する周方向複数の放射状隔壁を有する回転体と、各放射状隔壁の下辺に隣接する水切り可能な固定底板と、各放射状隔壁の先端に隣接する固定周側板とが設けられ、前記水切り可能な区画空間が、前記回転体の周方向に隣り合う2つの放射状隔壁と固定底板及び固定周側板で囲まれた空間によって構成され、前記乾燥残渣排出位置には固定底板が設けられていない、請求項6に記載の糞尿処理装置。
【請求項8】
残渣排出手段は、処理槽内と処理槽上方の残渣排出位置とを通る垂直回転循環経路を回動し且つ前記残渣排出位置で残渣排出状態に自動切り換えされる残渣汲み出し用バケットを備え、前記残渣排出位置と処理槽との間に配設されてバケットから排出される残渣を受け入れる水切り可能な残渣一時貯留部が設けられている、請求項1〜7の何れか1項に記載の糞尿処理装置。
【請求項9】
残渣排出手段は、水平軸心の周りで回転駆動される回転アームと、この回転アームの遊端部に前記水平軸心と平行な支軸で揺動自在に吊り下げられた残渣汲み出し用バケットと、このバケットが前記残渣排出位置に達したときに前記回転アームの回動に伴って前記バケットを残渣排出状態に反転させる固定当接部材とを備えている、請求項8に記載の糞尿処理装置。
【請求項10】
処理槽内の加水糞尿受入口と残渣排出手段が配置されたエリアとの間の位置に、当該エリア内に一定サイズ以上の異物などが入り込むのを防止するネットが張設されている、請求項1〜9の何れか1項に記載の糞尿処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−130535(P2007−130535A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324327(P2005−324327)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(593193631)
【Fターム(参考)】