説明

糸巻取機及び糸案内方法

【課題】新しく供給された給糸ボビンから糸を引き出す際に、糸寄せレバーによって糸を適切にガイドすることが可能な糸巻取機を提供する。
【解決手段】自動ワインダは、ボビン支持部7と、下糸案内パイプ25と、ボビン供給装置60と、ボビン供給装置駆動モータ41と、ボビン支持部駆動モータ43と、糸端保持口66と、糸寄せレバー31と、制御部6と、を備える。ボビン支持部7は、給糸ボビン21を支持する。ボビン供給装置駆動モータ41は、ボビン供給装置60を駆動する。ボビン支持部駆動モータ43は、ボビン支持部7を駆動する。制御部6は、糸寄せレバー31の駆動を制御する。そして、糸寄せレバー31は、ボビン供給装置駆動モータ41及びボビン支持部駆動モータ43とは別に設けられた専用の駆動手段である糸寄せレバー駆動モータ42によって駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、糸巻取機に関する。詳細には、前記糸巻取機において、新しい給糸ボビンから糸を適切に引き出すための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンから糸を解舒し、巻取管に巻き返して、巻取パッケージを形成する糸巻取機が知られている。一般的に、この種の糸巻取機は、給糸ボビンを支持するボビン支持部と、前記給糸ボビンが空になったときに新しい給糸ボビンを供給するボビン供給機構と、を備える。例えば特許文献1及び特許文献2は、マガジン式のボビン供給装置を備えた糸巻取機を開示している。
【0003】
前記供給装置からボビン支持部に対して新しい給糸ボビンが供給されると、当該給糸ボビン側の糸(下糸)は、中継パイプ(下糸案内パイプ)によって吸引保持され、糸継装置まで案内される。前記糸継装置においては、前記下糸と、パッケージ側の上糸と、の糸継ぎが行われる。そして、糸継ぎの終了後、巻取りを再開することにより、前記新しい給糸ボビンの糸をパッケージ表面に巻き取ることができる。
【0004】
ところで、マガジン式のボビン供給装置を備えた糸巻取機において、新しい給糸ボビンは、前記ボビン供給装置との間で糸を引いた状態で供給される。マガジン式のボビン供給装置を備えた糸巻取機は、中継パイプで吸引することができる位置まで前記糸を案内するため、前記糸を引っ掛けて引き寄せる糸寄せレバー(糸案内部材)を備える。
【0005】
また、前記糸寄せレバーは、中継パイプに糸を吸引させるために糸を弛ませる役割も兼ねる。即ち、下糸を引っ掛けた状態で糸寄せレバーを移動させることにより、当該下糸を引っ張って給糸ボビンから引き出し、弛ませることができる。これにより、中継パイプに吸い込ませる糸端の長さを一定以上確保することができるので、当該中継パイプで糸端を確実に捕捉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−18930号公報
【特許文献2】特開平9−183571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1には、マガジン式のボビン供給部から斜めに供給された給糸ボビンを、直立した姿勢まで駆動するボビン保持ペッグが記載されている。このように給糸ボビンの姿勢を変更する際には、当該ボビンの姿勢の変化に応じて糸道を適切にガイドしておかなければ、下糸が切れてしまうという問題がある。そこで従来の糸巻取機においては、給糸ボビンの姿勢を変更する際に、前記糸寄せレバーによって下糸をガイドすることで、当該下糸が切れてしまうことを防止する構成としていた。
【0008】
下糸が切れないように糸寄せレバーによって糸をガイドするためには、当該糸寄せレバーの動きと、給糸ボビンの姿勢の変化と、を一致させる必要がある。しかしながら、給糸ボビンの姿勢が変化するタイミングや速度は、当該給糸ボビンの芯管の形状等によって異なる。この点、従来の糸巻取機において、糸寄せレバーは、糸巻取機が備える他の構成と共通の駆動源によって駆動されていた。従って、当該糸寄せレバーの移動開始タイミングや移動速度などを独立して変更することができなかった。このため、従来の糸巻取機においては、糸寄せレバーの動きと給糸ボビンの姿勢の変化とがズレてしまう場合に対応することができず、このような場合に糸切れが多発していた。
【0009】
また、糸寄せレバーによって糸を引き出して弛ませる構成の場合、糸の弛ませ量を一定に保とうとすると、伸縮性の高い糸の場合ほど糸寄せレバーを大きく移動させなければならない。即ち、糸の種類に応じて、糸寄せレバーの移動量を変更する必要がある。そこで従来は、糸寄せレバーの移動を規制するストッパを数種類用意しておき、糸の種類に応じて前記ストッパを変更することで、糸寄せレバーの移動量を変更していた。しかし、この従来の構成では、糸の種類を変更する度にストッパを変更しなければならず、オペレータにとって負担が大きいという問題があった。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、新しく供給された給糸ボビンから糸を引き出す際に、糸寄せレバー(糸案内部材)によって糸を適切にガイドすることが可能な糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、ボビン支持部と、捕捉案内部と、ボビン供給部と、駆動源と、糸端保持部と、糸案内部材と、制御部と、を備える。前記ボビン支持部は、前記給糸ボビンを支持する。前記捕捉案内部は、前記給糸ボビンの糸を捕捉する。前記ボビン供給部は、前記ボビン支持部に対して給糸ボビンを供給する。前記駆動源は、前記ボビン支持部と前記ボビン供給部の両方又は何れか一方を駆動する。前記糸端保持部は、前記ボビン供給部に設けられ、前記給糸ボビンの糸端を保持する。前記糸案内部材は、前記ボビン支持部に支持された給糸ボビンと前記糸端保持部との間に渡る糸を引っ掛けて、当該糸を前記捕捉案内部が受け取ることができる位置まで案内する。前記制御部は、前記糸案内部材の駆動を制御する。そして、前記糸案内部材は、前記駆動源とは別に設けられた専用の駆動手段によって駆動される。
【0013】
即ち、従来の糸巻取機においては、他の構成と共通の駆動手段によって糸案内部材を駆動していたので、当該糸案内部材の駆動を独立して柔軟に制御することが困難であった。この点、上記のように糸案内部材を専用の駆動手段で駆動することにより、当該糸案内部材の駆動を独立して制御できるので、当該糸案内部材の駆動量や駆動速度等を必要に応じて柔軟に変更することが可能となる。これにより、糸の案内を適切に行うことが可能となるので、糸切れを防止しつつ、捕捉案内部に糸端を確実に捕捉させることができる。
【0014】
前記の糸巻取機においては、前記糸案内部材と相互に作用して糸を弛ませるガイド部材を備えることが好ましい。
【0015】
このように糸を弛ませることにより、捕捉案内部による糸端の捕捉を行い易くすることができる。
【0016】
前記の糸巻取機において、前記専用の駆動手段は、ステッピングモータであることが好ましい。
【0017】
即ち、ステッピングモータは、簡単な回路構成で位置や速度を制御することができるので、糸案内部材の駆動源として特に好適である。特に、ステッピングモータを駆動源として用いることにより、糸案内部材の位置決めを容易に行うことができるので、当該位置決めのためのストッパ等が不要となる。
【0018】
前記の糸巻取機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、設定値を入力可能な操作入力部を備える。前記制御部は、前記糸案内部材の駆動を開始するタイミング、又は当該糸寄せ部材の駆動速度の少なくとも何れか一方を、前記操作入力部で設定された設定値に応じて変更可能である。
【0019】
例えば給糸ボビンの姿勢を変更する場合、当該姿勢が変化する速度及びタイミングは、芯管のサイズや形状によって異なる。そこで、上記のように設定値に応じて糸案内部材の駆動速度及び駆動タイミングを変更可能に構成すれば、給糸ボビンの姿勢変化に合わせて糸案内部材を駆動させることが可能となり、糸切れを防止することができる。
【0020】
前記の糸巻取機は、以下のように構成することもできる。即ち、この糸巻取機は、設定値を入力可能な操作入力部を備える。前記制御部は、前記糸案内部材の駆動量を、前記操作入力部で設定された設定値に応じて変更可能である。
【0021】
例えば糸の伸縮性が異なれば、糸案内部材を同じ距離だけ駆動させたとしても、給糸ボビンから実際に引き出される糸の長さは異なる。そこで、上記のように設定値に応じて糸案内部材の駆動量を変更可能に構成すれば、糸の種類によらず、給糸ボビンから引き出される糸の長さを一定とすることが可能となる。
【0022】
本発明の第2の観点によれば、給糸ボビンの糸を糸巻取機に案内する糸案内方法であって、以下の工程を含む糸案内方法が提供される。即ち、この糸案内方法は、ボビン供給工程と、ボビン姿勢変更工程と、糸案内工程と、を含む。前記ボビン供給工程においては、給糸ボビンをボビン支持部に供給する。前記ボビン姿勢変更工程においては、前記ボビン支持部に供給された前記給糸ボビンの姿勢を、当該給糸ボビンから糸を解舒可能な姿勢に変更する。前記糸案内工程においては、前記給糸ボビンの糸を糸案内部材に引っ掛けて、当該糸案内部材を駆動することにより、前記糸を所定の位置まで案内する。また、前記糸案内工程は、前記ボビン姿勢変更工程と並行的に行われる。そして、前記糸案内工程においては、前記糸案内部材に前記糸を引っ掛けた部分が、前記給糸ボビンの軸線の延長線上にあるように、前記糸案内部材の駆動を制御する。
【0023】
このように、給糸ボビンの姿勢を変更する際に糸案内部材によって糸をガイドすることで、給糸ボビンの軸線方向に糸を引き出すことができる。これにより、給糸ボビンの姿勢を変更する際の糸切れを防止し、高品質なパッケージを形成することができる。
【0024】
前記の糸案内方法は、以下のようであることが好ましい。即ち、この糸案内方法は、前記糸案内工程の後、前記糸案内部材を更に駆動することにより糸を弛ませる糸弛ませ工程を含む。そして、前記糸弛ませ工程において、前記給糸ボビンから引き出される糸の長さが、糸の種類によらず一定となるように前記糸寄せ部材の駆動を制御する。
【0025】
例えば糸の伸縮性が異なれば、糸案内部材を同じ距離だけ駆動させたとしても、給糸ボビンから実際に引き出される糸の長さは異なる。この点、上記のように糸の種類に応じて糸案内部材の駆動を変更することにより、糸の種類によらず、給糸ボビンから引き出される糸の長さを一定とすることが可能となる。これにより、後の工程で確実に給糸ボビンの糸端を捕捉することができるので、効率良くパッケージを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの全体的な構成を示す外観斜視図。
【図2】ワインダユニットの模式的な側面図。
【図3】ボビン供給装置の外観斜視図。
【図4】空ボビンを排出するときのボビン支持部の様子を示す側面図。
【図5】新しい給糸ボビンを受け取ったときのボビン支持部の様子を示す側面図。
【図6】給糸ボビンを直立状態で保持したボビン支持部の様子を示す側面図。
【図7】空ボビンを排出するときの様子を示す側面一部断面図。
【図8】新しい給糸ボビンを供給するときの様子を示す側面一部断面図。
【図9】給糸ボビンの姿勢を変更する途中の様子を示す側面一部断面図。
【図10】給糸ボビンを直立させたときの様子を示す側面一部断面図。
【図11】糸を弛ませる様子を説明する側面一部断面図。
【図12】下糸案内パイプで下糸を捕捉したときの様子を示す側面一部断面図。
【図13】糸寄せレバーによる糸のガイドを行わずに給糸ボビンを直立させた場合を説明する側面一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダの概略的な外観斜視図である。本実施形態の自動ワインダ(糸巻取機)1は、並べて配置された複数のワインダユニット2と、その並べられた方向の一端に配置された機台制御装置3と、を備えている。
【0028】
それぞれのワインダユニット2は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム4と、このユニットフレーム4の側方に設けられた巻取ユニット本体5と、を備えている。
【0029】
図2に、ワインダユニット2の模式的な側面図を示す。図2に示すように、ワインダユニット2の巻取ユニット本体5は、ボビン支持部7と、巻取部8と、を備えている。
【0030】
ボビン支持部7は、ボビン保持ペッグ9を有している。ボビン保持ペッグ9は、給糸ボビン21の芯管21aに対して軸線方向に挿入されることにより、当該給糸ボビン21を略直立状態で保持することが可能に構成されている。巻取部8は、巻取ボビン22を装着可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための綾振ドラム24と、を備えている。
【0031】
綾振ドラム24は巻取ボビン22に対向して配置されており、この綾振ドラム24を回転駆動することにより、巻取ボビン22を従動回転させる。これにより、給糸ボビン21から解舒された糸を、巻取ボビン22に巻き取ることができる。また、綾振ドラム24の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸20を所定の幅でトラバースすることが可能になっている。以上の構成で、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ29とすることができる。
【0032】
また、前記巻取ユニット本体5は、ボビン支持部7と巻取部8との間の糸走行経路中に、各種の装置を備えている。具体的に説明すると、前記糸走行経路には、ボビン保持ペッグ9側から綾振ドラム24側へ向かって順に、解舒補助装置12と、糸弛ませ部30と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、が配置されている。
【0033】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21から解舒される糸が振り回されて給糸ボビン21上部に形成されるバルーンに対し、可動部材76を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助するためのものである。
【0034】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式に構成されている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動可能に構成されている。
【0035】
クリアラ15は、糸20の糸太さを監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。また、クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が配置されている。
【0036】
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠陥を検出してカッタ39で糸を切断する糸切断時、給糸ボビン21からの解舒中の糸の糸切れ時、又は給糸ボビン21の交換時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ29側の上糸とを糸継ぎするものである。このような糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるものや、機械式のものを使用することができる。
【0037】
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ(捕捉案内部)25と、パッケージ29側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0038】
この構成で、糸切れ時、糸切断時、又は給糸ボビンの交換時等においては、下糸案内パイプ25の吸引口32が図2に示す下糸捕捉位置90まで回動して下糸を吸引捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することで糸継装置14まで下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、上糸案内パイプ26が図2の位置から軸35を中心として上方へ回動させるとともにパッケージ29を逆回転させ、当該パッケージ29から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、糸継装置14に上糸を案内するようになっている。そして、糸継装置14において、下糸と上糸の糸継が行われる。
【0039】
前記下糸捕捉位置90の近傍には、糸弛ませ部30が設けられている。糸弛ませ部30は、ボビン保持ペッグ9の直上かつ下糸捕捉位置90の下方に配置された下糸ガイド(ガイド部材)38と、下糸捕捉位置90の上方に配置されたカッタ36と、前記カッタ36の近傍に配置されたカッタ導入ガイド37と、を備えている。下糸ガイド38は、ボビン支持部7で直立状態に保持された給糸ボビン21から、糸が真上に向かって引き出されるようにガイドするとともに、後述の糸寄せレバー31と相互に作用して糸を弛ませるための部材である(詳しくは後述)。カッタ導入ガイド37は、後述の糸寄せレバー31によって下糸捕捉位置90まで下糸が寄せられたときに、当該下糸を前記カッタ36で切断できる位置までガイドするための部材である。
【0040】
また、巻取ユニット本体5の正面側には、マガジン式のボビン供給装置(ボビン供給部)60が配置されている。このボビン供給装置60は、ボビン支持部7で糸を解舒中の給糸ボビンが空になった時に、当該ボビン支持部7に対して新しい給糸ボビンを供給するように構成されている。
【0041】
以上の構成で、前記ボビン供給装置60からの新しい給糸ボビンがボビン支持部7に供給されると、当該新しい給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ29側の上糸と、の糸継ぎが行われる。そして、糸継ぎの後、綾振ドラム24によってパッケージ29が駆動されることにより、給糸ボビン21から糸を解舒してパッケージ29の表面に巻き返すことができる。
【0042】
なお、空になった給糸ボビンは、ボビン支持部7から、図2の右側(装置正面側)に向かって排出される。図1に示すように、ワインダユニット2の正面側下方には、コンベア81が配設されている。各ワインダユニット2から排出された空ボビンは、このコンベア81を搬送され、図略の回収ボックスに回収される。
【0043】
また、ワインダユニット2は、当該ワインダユニット2が備える各構成を制御するための制御部6を備えている。制御部6は、図略のCPU、RAM及びROM等のハードウェアと、前記ROMに記憶された制御プログラム等のソフトウェアと、から構成されている。そして、前記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、ワインダユニット2の各構成を制御する。また、各ワインダユニット2が備える制御部6は、前記機台制御装置3と通信可能に構成されている。これにより、自動ワインダ1が備える複数のワインダユニット2の動作を、機台制御装置3において集中的に管理することが可能となっている。
【0044】
また、機台制御装置3には、テンキー等からなる操作入力部10が設けられている。自動ワインダ1のオペレータは、この操作入力部10を操作することにより、自動ワインダ1が備える複数のワインダユニット2に対して、一括して各種の巻取条件の設定変更指示を与えることができる。もっとも、自動ワインダ1のオペレータは、この操作入力部10を操作することにより、それぞれのワインダユニット2に対して個別に巻取条件の設定変更指示を与えることもできる。
【0045】
次に、マガジン式のボビン供給装置60について詳しく説明する。ボビン供給装置60は、ワインダユニット2の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているマガジンカン62と、マガジンカン62の下方に配置されたガイドシュート64と、を備えている。
【0046】
図3に示すように、マガジンカン62には複数の保持孔63が円状に並べて形成されている。この保持孔63のそれぞれには、ボビン支持部7に供給するための給糸ボビン21を傾斜姿勢でセットすることができる。また、マガジンカン62は、後述のボビン供給装置駆動モータ(駆動源)41によって間欠的に回転送り駆動されるように構成されている。
【0047】
前記各保持孔63は、マガジンカン62を貫通するように形成されている。保持孔63に収納された各給糸ボビン21は、マガジンカン62の下方に配置されたボビン受け板65によって、落下しないように受け止められている。このボビン受け板65は、マガジン保持部61に対して固定されている(即ち、マガジンカン62が回転駆動されても、ボビン受け板65は回転しない)。また、ボビン受け板65には、保持孔63の1つ分に対応するサイズの切欠き65aが一箇所形成されている(図7等参照)。
【0048】
以上の構成で、マガジンカン62を回転駆動することにより、前記切欠き65aの位置がマガジンカン62に対して相対的に移動する。すると、マガジンカン62に収容されている給糸ボビン21のうち、切欠き65aの位置でボビン受け板65による支えが無くなった給糸ボビン21が、下方に落下する。即ち、マガジンカン62を間欠的に回転駆動することにより、給糸ボビン21を1つずつ下方に供給することができるように構成されている。
【0049】
また、マガジンカン62の回転軸の上端部には、糸端保持口(糸端保持部)66が形成されている。糸端保持口66は、図3に示したホース67を介して適宜の負圧源に接続されており、これにより糸端保持口66に吸引空気流が発生している。オペレータが保持孔63に新しく給糸ボビン21をセットする際には、図2等に示すように、当該給糸ボビン21の糸端を糸端保持口66に吸わせておく。このように予め糸端を保持しておくことにより、給糸ボビン21の交換時に糸端の口出しを行う必要が無いので、スムーズな糸継ぎを行うことができる。
【0050】
前記ガイドシュート64は、前記切欠き65aの下方に配置され、マガジンカン62から落下してきた給糸ボビンを斜めに滑落させて、ボビン支持部7まで案内するように構成されている。ガイドシュート64は、両開き式の扉状に形成された開閉部68を備えており、当該開閉部68は下方に向かって開くことができるように構成されている。
【0051】
前記開閉部68が閉じた状態においては、当該開閉部68の上面が、マガジンカン62から落下してくる給糸ボビン21に当接して、当該給糸ボビン21を斜め下方のボビン支持部7まで案内する。一方、開閉部68が開いた状態においては、給糸ボビン21をボビン支持部7まで案内することなく下方に排出することができるように構成されている。なお、開閉部68の下方には前記コンベア81が配設されているので、開閉部68から排出された給糸ボビン21はコンベア81によって回収ボックスまで搬送することができる。
【0052】
前記ボビン供給装置駆動モータ41は、前記制御部6によって制御されている。当該ボビン供給装置駆動モータ41は、マガジンカン62及び開閉部68の両方を駆動するように構成されている。具体的には以下のとおりである。制御部6は、ボビン供給装置駆動モータ41を、所定の角度だけ正逆回転するように制御する。ボビン供給装置駆動モータ41の駆動力は、図略のプーリ、リンク機構等を介して、前記開閉部68の回動軸に伝達される。この構成で、ボビン供給装置駆動モータ41を一方向に所定の角度だけ回転させることにより、開閉部68を開いた状態から閉じた状態まで駆動することができる。また、ボビン供給装置駆動モータ41を逆方向に所定の角度だけ回転させることにより、開閉部68を閉じた状態から開いた状態まで駆動することができる。
【0053】
一方、マガジンカン62の回転軸には、ストップラッチを備えた図略のラチェット機構が設けられている。前記ボビン供給装置駆動モータ41の回転駆動力は、図略のプーリ等を介して、前記ラチェット機構に伝達される。この構成で、ボビン供給装置駆動モータ41を一方向に所定の角度だけ回転させることにより、マガジンカン62を所定角度だけ一方向に回転させることができる。一方、ボビン供給装置駆動モータ41を逆方向に回転させても、前記ラチェット機構により、マガジンカン62は回転駆動されない。即ち、マガジンカン62を一方向に所定角度ずつ間欠駆動することができる。
【0054】
そして、上記のように、開閉部68とマガジンカン62を共通の駆動源(ボビン供給装置駆動モータ41)によって駆動することにより、マガジンカン62の回転と開閉部68の開閉動作とを連動させることができる。具体的には、マガジンカン62を回転させる時(給糸ボビンをボビン支持部7に供給するとき)には開閉部68を閉じ、それ以外の時には開閉部68を開いておくようになっている。これにより、マガジンカン62から給糸ボビン21が供給される際には、当該給糸ボビン21を、閉じた状態の開閉部68によってボビン支持部7まで案内することができる。また、給糸ボビン21を供給する必要が無い時は開閉部68が開いているので、例えばオペレータが切欠き65aがある位置の保持孔63に誤って給糸ボビンを投入してしまった場合であっても、当該給糸ボビンを、ボビン支持部7まで案内することなく開いた状態の開閉部68から下方に向かって排出することができる。
【0055】
また、マガジン保持部61には、糸寄せレバー(糸案内部材)31と、当該糸寄せレバー31を駆動するための糸寄せレバー駆動モータ42と、が配置されている。糸寄せレバー駆動モータ42は、ステッピングモータとして構成され、前記制御部6によって制御されている。
【0056】
この糸寄せレバー31は、図3に示すように、V字状に屈曲した糸掛け部70を有しており、この糸掛け部70に糸を引っ掛けることができる。そして、糸掛け部70に糸を引っ掛けた状態で糸寄せレバー31を回動させることにより、当該糸を下糸捕捉位置90まで案内することができる。なお、図3に示すように、糸寄せレバー31は、糸掛け部70の部分において上下2股に分かれた形状に構成されている。この上下の糸掛け部70を特に区別する必要がある場合は、上側糸掛け部、下側糸掛け部、と呼んで区別することとする。
【0057】
糸寄せレバー31は、レバー待機位置と、糸弛ませ位置と、の間で回動させることが可能である。ここで「レバー待機位置」とは、給糸ボビン21がマガジンカン62からボビン支持部7までが滑落する時の軌跡を挟んで、側面視で下糸捕捉位置90の反対側に前記糸掛け部70がある位置(図8の位置)をいう。また、「糸弛ませ位置」とは、糸寄せレバー31の上側糸掛け部と下側糸掛け部によって、カッタ導入ガイド37を挟み込んだ位置(図11の位置)をいう。
【0058】
次に、ボビン支持部7の構成について説明する。図4から図6は、ボビン支持部7の構成を示す拡大側面図である。図に示すように、ボビン支持部7は、ボビン保持ペッグ9と、跳ね板45と、ボビン支持部駆動モータ(駆動源)43と、を備える。
【0059】
前記ボビン保持ペッグ9は、第1保持片46と、第2保持片47と、を備えている。そして、ボビン保持ペッグ9は、第1保持片46と第2保持片47が閉じて重なった状態(図4及び図5に示す状態)と、第1保持片46と第2保持片47が開いた状態(図6に示す状態)と、を実現可能に構成されている。図6のように、ボビン保持ペッグ9が開いた状態では、芯管21aの内側に第1保持片46及び第2保持片47が密着するので、給糸ボビン21がボビン保持ペッグ9から抜けてしまうことを防ぎ、当該給糸ボビン21を確実に保持することができる。また、ボビン保持ペッグ9は、給糸ボビン21を直立した状態(図6の状態)で保持することができるように構成されている。なお、以下の説明で、第1保持片46と第2保持片47が開いた状態(図6の状態)のことを、ボビン保持状態と呼ぶ。
【0060】
以下、より具体的に説明する。第2保持片47は、回動軸49に固定されている。ボビン支持部駆動モータ43の駆動力は、プーリ、リンク機構等を介して、回動軸49に伝達される。このボビン支持部駆動モータ43は、制御部6によって制御されている。制御部6は、ボビン支持部駆動モータ43を正逆駆動することにより回動軸49を回転駆動し、第2保持片47を、装置正面側に向かって傾斜した状態(図4の状態)と、装置背面側に向かって移動して直立した状態(図6の状態、ボビン保持状態)と、の間で移動させることができる。
【0061】
第1保持片46は、回動軸49に対して相対回転可能に支持されているとともに、第2保持片47に対して図4の反時計回りに付勢されている。この付勢力によって、第1保持片46と第2保持片47とが閉じて重なった状態に保持される。この状態で、ボビン支持部駆動モータ43によって回動軸49を回動駆動すると、第2保持片47と第1保持片46とが一体的に回動する。ただし、第1保持片46は、装置背面側に向かって傾斜しないように、図略のストッパによってその回動運動が規制されている。
【0062】
即ち、回動軸49を図4の状態から反時計回りに駆動していくと、途中までは、第1保持片46と第2保持片47が重なった状態で一体的に回動するが、第1保持片46は直立した状態で止まり、それ以降は第2保持片47だけが反時計回りに回動する。結果として、図6に示すように、第1保持片46と第2保持片47が開いた状態(ボビン保持状態)を実現することができる。
【0063】
また、図6に示すように、ボビン保持ペッグ9を挿入された給糸ボビン21の芯管21aの下端部には、跳ね板45の上面が接触するように構成されている。この跳ね板45は、図6に示す「平行位置」から、図4に示す「跳ね上げ位置」まで回動させることができるように構成されている。前記ボビン支持部駆動モータ43の駆動力は、プーリ及びリンク機構等を介して、この跳ね板45に伝達されている。これにより、跳ね板45を、ボビン保持ペッグ9と連動させて駆動することができる。具体的には、図6に示すように、ボビン保持ペッグ9がボビン保持状態にあるときは、跳ね板45は水平位置となるように構成されている。そして、ボビン保持ペッグ9が前記ボビン保持状態から時計回りに回動するほど、跳ね板45が跳ね上がるように構成されている。
【0064】
次に、上記のように構成された自動ワインダ1において、新しく供給した給糸ボビン21の糸を、下糸案内パイプ25によって捕捉可能な位置まで案内する糸案内方法について、具体的に説明する。
【0065】
最初に、空になった給糸ボビンを排出する動作、即ちボビン排出工程について説明する。
【0066】
給糸ボビンが空になったことを検出すると、制御部6は、ボビン支持部駆動モータ43を駆動することにより、第2保持片47が装置正面側に向かって傾斜した位置となるように回動させる。これにより、ボビン保持ペッグ9が閉じた状態になるとともに、跳ね板45が跳ね上げ位置まで回動する(図4及び図7の状態)。
【0067】
すると、空の給糸ボビン210の下端部が跳ね板45によって斜め上方に向かって押され、ボビン保持ペッグ9から空の給糸ボビン210が抜ける。このとき、ボビン支持部7の正面側に位置している開閉部68は開いた状態なので、当該開いた開閉部68を通して、空の給糸ボビン210を装置正面側に向かって排出することができる。なお、排出された空の給糸ボビン210は、前記コンベア81で回収ボックスまで搬送される。
【0068】
次に、マガジンカン62から新しい給糸ボビンを供給する時の動作、即ちボビン供給工程について説明する。
【0069】
前記ボビン排出工程が終了すると、制御部6は、ボビン支持部駆動モータ43を適宜制御することにより、回動軸49を回動させ、ボビン保持ペッグ9の先端を切欠き65aの方向(給糸ボビンが落ちてくる方向)に向ける(図5の状態、ペッグ待機状態)。なおこの状態では、図5に示すように、第1保持片46と第2保持片47は閉じている。また、制御部6は、糸寄せレバー駆動モータ42を適宜制御することにより、糸寄せレバー31を前記レバー待機位置で待機させておく。
【0070】
この状態で、制御部6がボビン供給装置駆動モータ41を一方向に所定角度だけ駆動する。これにより、開閉部68が閉じられるとともにマガジンカン62が回転駆動され、給糸ボビン21がガイドシュート64に落下する。ガイドシュート64に落下した給糸ボビン21は、閉じた状態の開閉部68によって斜め下方に案内され、ボビン支持部7に至る。ボビン支持部7においては、斜めで待機しているボビン保持ペッグ9が、斜めに案内されてきた給糸ボビン21の芯管21aの内部に挿入される(図5及び図8の状態)。
【0071】
続いて、図8の斜めの姿勢から図10の直立姿勢まで給糸ボビン21の姿勢を変更する動作、即ちボビン姿勢変更工程について説明する。
【0072】
前記ボビン供給工程が終了すると、制御部6は、ボビン支持部駆動モータ43を制御することにより、ボビン保持ペッグ9をボビン保持状態まで駆動する。これにより、斜めの姿勢で供給された給糸ボビン21を、図10に示すように直立させることができる。また、これにより第1保持片46と第2保持片47が開いた状態となるので、給糸ボビン21をしっかりと保持することができる。
【0073】
次に、新しく供給された給糸ボビン21の糸を下糸捕捉位置90まで案内する動作、即ち糸寄せ工程について説明する。
【0074】
前記ボビン供給した時点においては、図8に示すように、ボビン保持ペッグ9に受け止められた給糸ボビン21と、糸端保持口66と、の間で糸を引いたような状態となる。この状態では、糸道が下糸捕捉位置90から大きく外れているため、下糸案内パイプ25の吸引口32で糸を吸引捕捉することができない。そこで、糸寄せレバー31を回動させることにより、ボビン保持ペッグ9に支持された給糸ボビン21と、糸端保持口66と、の間に渡る糸を糸掛け部70に引っ掛けて、当該糸を下糸捕捉位置90まで引き寄せる。糸を下糸捕捉位置90まで引き寄せ終わった時の様子を、図10に示す。
【0075】
なお、糸を下糸捕捉位置90まで案内するという点のみを考えれば、例えば、前記ボビン姿勢変更工程が終了した後で糸寄せ工程を行っても良い。しかしながら、ボビン姿勢変更工程を単独で行うと、給糸ボビン21の糸が斜めに引っ張られてしまうため、糸切れが多発するという問題がある。
【0076】
この点について分かり易く説明するため、まず、給糸ボビンからの糸の引き出し方向と、糸切れの発生し易さと、の関係について簡単に説明する。給糸ボビン21は、芯管21aの周りに糸を巻き付けたものである。従って、給糸ボビン21を、糸が解舒される方向に軸線周りで回動駆動することができれば、当該給糸ボビン21から容易に糸を引き出すことができる。しかしながら、本実施形態の自動ワインダ1のような糸巻取機では、給糸ボビン21の回動駆動を行わないので、当該給糸ボビン21からの糸の引き出し方向に制限がある。
【0077】
即ち、給糸ボビン21が固定されている場合、当該給糸ボビン21の軸線方向から外れた方向に向かって糸を引き出そうとすると、当該給糸ボビン21自身に糸が引っ掛かってしまうため、無理に糸を引っ張ると糸切れが発生してしまう。従って、一般にこの種の糸巻取機においては、給糸ボビン21の軸線方向に向かって糸を引き出すように構成される。これにより、給糸ボビン21に糸が引っ掛かることが無いので、当該給糸ボビン21を回転させなくてもスムーズに糸を解舒することができる。
【0078】
次に、図13を参照して説明する。図13は、糸寄せレバー31で糸をガイド(糸のガイドについては後述)せずに給糸ボビン21の姿勢を直立させた様子を示す図である。給糸ボビン21の姿勢を斜め姿勢から直立姿勢に変更すると、当該給糸ボビン21の表面と糸端保持口66との間の距離が変化するため、糸端保持口66によって給糸ボビン21の糸が引っ張られる。ここで、糸寄せレバー31で糸をガイドしなかった場合、図13に示すように、ボビン支持部7で直立した給糸ボビン21と、糸端保持口66と、の間で糸が斜めに張った状態となる。即ち、糸をガイドせずに給糸ボビン21を直立させると、当該給糸ボビン21の軸線の延長線上から外れた位置に向かって糸が引っ張られることになるので、糸切れが発生し易いのである。
【0079】
以上の点を考慮して、本実施形態の制御部6は、給糸ボビン21を斜め姿勢から直立させる際、当該給糸ボビン21の姿勢の変化に合わせて糸寄せレバー31による糸寄せを行うように構成されている(即ち、ボビン姿勢変更工程と糸寄せ工程を並行的に実施するように構成されている)。
【0080】
より具体的には以下のとおりである。制御部6は、前記ボビン姿勢変更工程を開始すると、これと前後して糸寄せレバー駆動モータ42を駆動することにより、糸寄せレバー31による糸寄せ(糸寄せ工程)を開始する。これにより、糸寄せレバーの糸掛け部70に糸を引っ掛けて糸寄せを行いながら、給糸ボビン21の姿勢変更が行われることになる。言い換えれば、給糸ボビン21の姿勢変更中に、糸寄せレバー31によって糸道のガイドを行う。
【0081】
これにより、図9に示すように、給糸ボビン21の姿勢変更動作中でも当該給糸ボビン21の軸線方向に糸を引き出すことができるので、糸切れを防止し、引っ張られた分だけ糸を引き出すことができる。
【0082】
次に、前記糸寄せ工程において、制御部6によって行われる糸寄せレバー31の駆動の制御について説明する。
【0083】
制御部6は、糸寄せレバー31の駆動を開始するタイミングや、駆動速度等を、給糸ボビン21の姿勢の変化に応じて適切に制御する必要がある。なお、ここで言う「適切に制御する」とは、給糸ボビン21の姿勢を変更する際に、当該給糸ボビン21の軸線の延長線上に常に糸掛け部70があるように制御することをいう。糸寄せレバー31の駆動をこのように制御することで、給糸ボビン21の姿勢変更時に、当該給糸ボビン21の軸線方向に糸を引き出すことができるので、糸切れを防止することができる。一方、給糸ボビン21の軸線の延長線上から糸掛け部70が外れると、当該給糸ボビン21の糸が斜めに引っ張られて糸切れが発生してしまう。
【0084】
この点、給糸ボビン21の姿勢が変化するタイミングと速度は、芯管のサイズや形状によって異なる。このため、糸寄せレバー31の駆動を開始するタイミングや、当該糸寄せレバー31の駆動速度等を、芯管21aの種類に応じて変更する必要がある。ここで、芯管21aの種類によって給糸ボビン21の姿勢変化の速度とタイミングが変わることについて、以下に簡単に説明する。
【0085】
図5に示すように、第1保持片46と第2保持片47が閉じた状態では、給糸ボビン21の芯管21aとボビン保持ペッグ9との間に隙間が存在している。従って、この状態から制御部6がボビン保持ペッグ9の回動を開始しても、給糸ボビン21は即座には姿勢を変更しない。給糸ボビンが姿勢の変更を開始するタイミングは、芯管21aとボビン保持ペッグ9との間の隙間、即ち芯管21aのサイズと形状によって異なる。また、芯管21aのサイズや形状が異なれば、当該芯管21aの内側にボビン保持ペッグ9が密着するまでに第1保持片46と第2保持片47が開かなければならない量も異なる。即ち、給糸ボビン21が直立姿勢で固定されるタイミングは、芯管21aのサイズと形状によって異なる。以上のような理由から、芯管21aの種類によって、給糸ボビン21の姿勢が変化するタイミングや速度が異なるのである。
【0086】
以上の点を考慮して、本実施形態の自動ワインダ1において、制御部6は、芯管の種類に応じて、糸寄せレバー31の駆動開始タイミング及び駆動速度等を変更することができるように構成されている。例えば、糸寄せレバー31を適切に制御するための設定データを、芯管の種類ごとに予め用意しておく。この設定データには、例えば、糸寄せレバー駆動モータ42の駆動を開始するタイミングや、糸寄せレバー駆動モータ42の駆動速度等の設定項目が含まれる。
【0087】
自動ワインダ1のオペレータは、芯管21aの種類を変更する等の巻取状況に変化が生じた際は、機台制御装置3に設けられた操作入力部10を操作して、当該芯管21aの種類を指定するための設定値を入力する。すると、各ワインダユニット2においては、入力された設定値に応じて、芯管21aの種類に対応した設定データが制御部6に適用される。これにより、芯管21aの種類に応じて、糸寄せレバー31を適切に駆動することができる。即ち、芯管21aの種類によらず、給糸ボビン21の姿勢変更時において当該給糸ボビン21の軸線方向に糸を引き出すことができるので、給糸ボビン21の姿勢変更時の糸切れを防止することができる。
【0088】
なお、従来の糸巻取機は、糸寄せレバー駆動モータのような糸寄せレバー専用の駆動源を備えていなかったので、例えばボビン支持部駆動モータ43の駆動力をリンク機構等で取り出して糸寄せレバーを駆動していた。即ち、従来の糸巻取機において、糸寄せレバーは、他の構成と共通の駆動源によって駆動されていた。このため、従来の糸巻取機においては、糸寄せレバー31の駆動を独立して細かく調整することが困難で、芯管の種類の違いに対応することができず、給糸ボビンの姿勢変更時に糸切れが多発することがあった。
【0089】
この点、本実施形態の自動ワインダ1では、ボビン供給装置駆動モータ41及びボビン支持部駆動モータ43とは別に、糸寄せレバー31に専用の駆動源(糸寄せレバー駆動モータ42)を設けているので、制御部6は、糸寄せレバー31の駆動を細かく柔軟に制御することができる。この構成により、芯管の種類に応じて糸寄せレバー31の駆動制御を行うことが可能となったのである。
【0090】
次に、下糸案内パイプ25に下糸を確実に吸引捕捉させるために下糸を弛ませる動作、即ち糸弛ませ工程について説明する。
【0091】
前記ボビン姿勢変更工程(及び糸寄せ工程)が終了して給糸ボビン21が直立した状態(図10の状態)になると、制御部6は、ボビン保持ペッグ9の駆動を停止するとともに、糸寄せレバー31を糸弛ませ位置まで回動させる。これにより、糸掛け部70によって給糸ボビン21の糸が引っ張られ、当該給糸ボビン21から糸が更に引き出される。なお、これにより、糸掛け部70が給糸ボビン21の軸線の延長線上から外れることになるが、当該給糸ボビン21の直上には下糸ガイド38が配置されており、当該下糸ガイド38によって糸が案内されるので、給糸ボビン21の軸線方向に向かって糸を引き出すことができる(図11参照)。従って、給糸ボビン21を直立状態で固定した後(ボビン姿勢変更工程が終了した後)であれば、当該給糸ボビン21の軸線の延長線上から糸掛け部70が外れても、糸が切れてしまうことはない。このように、下糸ガイド38と糸寄せレバー31とが相互に作用することにより、給糸ボビン21から糸を引き出すことができるので、当該給糸ボビン21側の糸(下糸)を弛ませることができる。
【0092】
図11に示すように、糸寄せレバー31は、カッタ導入ガイド37及びカッタ36を、上側糸掛け部と下側糸掛け部で挟み込むようにして回動する。これにより、糸掛け部70に引っ掛かけられた下糸がカッタ導入ガイド37に導入され、当該糸はカッタ36によって切断可能な位置にまで案内される。なお、この状態においては、図11に示すように、糸寄せレバー31と、カッタ導入ガイド37と、下糸ガイド38と、によって糸道が屈曲した状態となる。
【0093】
次に、給糸ボビン21側の下糸を下糸案内パイプ25によって吸引捕捉する動作、即ち糸端捕捉工程について説明する。
【0094】
前記糸弛ませ工程が終了すると、制御部6は、軸33を中心として下糸案内パイプ25を回転駆動し、吸引口32を下糸捕捉位置90の近傍まで移動させる。続いて、制御部6は、吸引口32による吸引を行いながら、カッタ36を作動させ、糸を切断する。前述のように、糸を切断する直前の状態では、糸道が屈曲した状態となっている。従って、この状態(図11の状態)でカッタ36を作動させて糸を切断することにより、当該カッタ36と給糸ボビン21の間の糸(下糸)が弛んだ状態とすることができる。そして、この弛んだ下糸が、下糸捕捉位置90で吸引を行っている吸引口32に吸い込まれて捕捉される(図12の状態)。
【0095】
上記のように、下糸案内パイプ25による下糸の吸引捕捉を行う際に、当該下糸を弛ませることで、当該下糸の糸端を吸引口32に確実に吸引捕捉させることができる。ここで、糸を弛ませる量が少ないと、下糸案内パイプ25に吸い込まれる糸端の長さが短くなるので、糸端の捕捉に失敗してしまう場合がある。従って、下糸の捕捉を確実に行うためには、糸の弛ませ量が一定以上となるように、糸寄せレバー31の駆動を制御する必要がある。
【0096】
糸の弛ませ量は、糸寄せレバー31の駆動量を制御することによって調整することができる。即ち、糸掛け部70を図11の左側に移動させればさせるほど(糸寄せレバー31によって糸を引っ張れば引っ張るほど)、下糸を弛ませることができる。しかしながら、糸寄せレバー31の駆動量が同じであっても、糸の種類が異なれば、糸が弛む量も異なる。例えば伸縮性の高い糸の場合、糸寄せレバー31によって引っ張っても当該糸自身が伸びてしまうため、実際に弛む量が少なくなる。
【0097】
以上の点を考慮して、本実施形態の自動ワインダ1においては、制御部6は、糸の種類に応じて、糸寄せレバー31の駆動量を変更することができるように構成されている。例えば、糸寄せレバー駆動モータ42の駆動量を制御するための設定データを、糸の種類ごとに予め用意しておく。この設定データは、例えば、伸縮性の高い糸ほど、糸寄せレバー31を大きく移動させるように設定しておく。
【0098】
自動ワインダ1のオペレータは、給糸ボビン21の糸の種類を変更する等の巻取状況に変化が生じた際は、機台制御装置3に設けられた操作入力部10を操作して、給糸ボビン21の糸の種類を指定するための設定値を入力する。すると、各ワインダユニット2においては、入力された設定値に応じて、前記糸の種類に対応した設定データが制御部6に適用される。これにより、糸の種類によらず、糸を弛ませる量を一定以上とすることができる。従って、下糸案内パイプ25によって、下糸を確実に吸引捕捉することができる。
【0099】
なお、前述のように、従来の糸巻取機においては、糸寄せレバーは他の構成と共通の駆動源によって駆動されていたので、当該糸寄せレバーを独立して制御することができなかった。そこで、この従来の糸巻取機においては、糸寄せレバーの駆動量を規制するためにストッパを設け、糸の種類を変更する際にはこのストッパを変更することにより、糸の弛ませ量を調節していた。この点、本実施形態では、糸寄せレバー31は専用の駆動源である糸寄せレバー駆動モータ42によって駆動されるとともに、当該糸寄せレバー駆動モータ42はステッピングモータとして構成されている。ステッピングモータは、ストッパ等を用いることなく、ロータの位置決めを簡単に行うことができる。従って、本実施形態の構成により、ストッパを省略することができるので、糸の種類を変更するたびにストッパを変更する必要が無く、オペレータの負担を減らすことができる。
【0100】
また、従来の糸巻取機のように、ストッパで糸寄せレバーの回動量を制限する構成の場合、糸寄せレバーが適切な位置まで回動したか否かを制御部で判断できない。従って、従来の糸巻取機において、制御部は、糸寄せレバーがストッパで規制される位置まで回動するのに十分な時間が経過した後、下糸捕捉工程を開始していた。この点、本実施形態によれば、制御部6において糸寄せレバー31の位置決めを行っているので、当該糸寄せレバー31を適切な位置まで回動させると、即座に下糸捕捉工程に移ることができる。従って、本実施形態の構成により、糸寄せ工程に掛かる時間を短縮し、効率良くパッケージを生成することができる。
【0101】
糸端捕捉工程が終了すると、制御部6は、下糸案内パイプ25を回動させ、下糸を糸継装置14まで案内する。そして、糸継装置14において、前記下糸と、パッケージ29側の上糸と、を糸継ぎすることにより、パッケージ29と給糸ボビン21との間で糸を連続状態とすることができる。この状態でパッケージ29の回転駆動を再開することで、給糸ボビン21から糸を解舒し、パッケージ29に巻き取ることができる。
【0102】
以上で説明したように、本実施形態の自動ワインダ1は、ボビン支持部7と、下糸案内パイプ25と、ボビン供給装置60と、ボビン供給装置駆動モータ41と、ボビン支持部駆動モータ43と、糸端保持口66と、糸寄せレバー31と、制御部6と、を備える。ボビン支持部7は、給糸ボビン21を支持する。下糸案内パイプ25は、給糸ボビン21の糸を捕捉する。ボビン供給装置60は、ボビン支持部7に対して給糸ボビン21を供給する。ボビン供給装置駆動モータ41は、ボビン供給装置60を駆動する。ボビン支持部駆動モータ43は、ボビン支持部7を駆動する。糸端保持口66は、ボビン供給装置60に設けられ、給糸ボビン21の糸端を保持する。糸寄せレバー31は、ボビン支持部7に支持された給糸ボビン21と糸端保持口66との間に渡る糸を引っ掛けて、当該糸を下糸案内パイプ25が受け取ることができる位置まで案内する。制御部6は、糸寄せレバー31の駆動を制御する。そして、糸寄せレバー31は、ボビン供給装置駆動モータ41及びボビン支持部駆動モータ43とは別に設けられた専用の駆動手段である糸寄せレバー駆動モータ42によって駆動される。
【0103】
即ち、従来の糸巻取機においては、他の構成と共通の駆動手段によって糸寄せ部材を駆動していたので、当該糸寄せ部材の駆動を独立して柔軟に制御することが困難であった。この点、上記のように糸寄せレバー31を専用の駆動手段で駆動することにより、当該糸寄せレバー31の駆動を独立して制御できるので、当該糸寄せレバー31の駆動量や駆動速度等を必要に応じて柔軟に変更することが可能となる。これにより、糸の案内を適切に行うことが可能となるので、糸切れを防止しつつ、下糸案内パイプ25に糸端を確実に捕捉させることができる。
【0104】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、糸寄せレバー31と相互に作用して下糸を弛ませる下糸ガイド38を備えている。
【0105】
このように下糸を弛ませることにより、下糸案内パイプ25による糸端の捕捉を行い易くすることができる。
【0106】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、糸寄せレバー駆動モータ42は、ステッピングモータとされている。
【0107】
即ち、ステッピングモータは、簡単な回路構成で位置や速度を制御することができるので、糸寄せレバー31の駆動源として特に好適である。特に、ステッピングモータを駆動源として用いることにより、糸寄せレバー31の位置決めを容易に行うことができるので、当該位置決めのためのストッパ等が不要となる。
【0108】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、設定値を入力可能な操作入力部10を備えている。そして、制御部6は、糸寄せレバー31の駆動を開始するタイミング、及び当該糸寄せレバー31の駆動速度を、操作入力部10で設定された設定値に応じて変更可能である。
【0109】
即ち、給糸ボビン21の姿勢を変更する場合、当該姿勢が変化する速度及びタイミングは、芯管21aのサイズや形状によって異なる。そこで、上記のように設定値に応じて糸寄せレバー31の駆動速度及び駆動タイミングを変更可能に構成すれば、給糸ボビン21の姿勢変化に合わせて糸寄せレバー31を駆動させることが可能となり、糸切れを防止することができる。
【0110】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、制御部6は、糸寄せレバー31の駆動量を、操作入力部10で入力された設定値に応じて変更可能である。
【0111】
例えば糸の伸縮性が異なれば、糸寄せレバー31を同じ距離だけ移動させたとしても、給糸ボビン21から実際に引き出される糸の長さは異なる。そこで、上記のように設定値に応じて糸寄せレバー31の駆動量を変更可能に構成すれば、糸の種類によらず、給糸ボビンから引き出される糸の長さを一定とすることが可能となる。
【0112】
また、本実施形態における糸案内方法は、ボビン供給工程と、ボビン姿勢変更工程と、糸寄せ工程と、を含む。ボビン供給工程においては、給糸ボビン21をボビン支持部7に供給する。ボビン姿勢変更工程においては、ボビン支持部7に供給された給糸ボビン21の姿勢を、当該給糸ボビン21から糸を解舒可能な姿勢(直立姿勢)に変更する。糸寄せ工程においては、給糸ボビン21の糸を糸寄せレバー31に引っ掛けて、当該糸寄せレバー31を駆動することにより、前記糸を下糸捕捉位置90まで案内する。また、前記糸寄せ工程は、前記ボビン姿勢変更工程と並行的に行われる。そして、前記糸寄せ工程においては、糸寄せレバー31に糸を引っ掛けた部分(糸掛け部70)が、前記給糸ボビン21の軸線の延長線上にあるように、前記糸寄せレバー31の駆動を制御する。
【0113】
このように、給糸ボビン21の姿勢を変更する際に糸寄せレバー31によって糸をガイドすることで、給糸ボビン21の軸線方向に糸を引き出すことができる。これにより、給糸ボビン21の姿勢を変更する際の糸切れを防止し、高品質なパッケージを形成することができる。
【0114】
また、本実施形態の糸案内方法は、前記糸寄せ工程の後、前記糸寄せ部材を更に駆動することにより糸を弛ませる糸弛ませ工程を含む。そして、前記糸弛ませ工程において、給糸ボビン21から引き出される糸の長さが、糸の種類によらず一定となるように糸寄せレバー31の駆動を制御している。
【0115】
例えば糸の伸縮性が異なれば、糸寄せレバー31を同じ距離だけ移動させたとしても、給糸ボビンから実際に引き出される糸の長さは異なる。より詳細に説明すると以下のとおりである。即ち、伸縮性の大きい糸は、カッタ36により糸が切断された時に収縮してしまうので、伸縮性の小さい糸と比べて給糸ボビン21から引き出される糸の長さが短くなってしまう。そのため、下糸案内パイプ25による糸の捕捉が失敗してしまう場合がある。よって、伸縮性の大きい糸の場合は、伸縮性の小さい糸に比べて弛ませる量を大きくする必要がある。この点、上記のように糸の種類に応じて糸寄せレバー31の駆動量を変更することにより、糸の種類によらず、給糸ボビン21から引き出される糸の長さを一定とすることが可能となる。これにより、後の工程で確実に給糸ボビン21の糸端を捕捉することができるので、効率良くパッケージを製造することができる。
【0116】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は、例えば以下のように変更することができる。
【0117】
上記実施形態では、糸寄せレバー駆動モータ42を制御するための設定データを、芯管の種類や糸の種類ごとに予め用意しておき、芯管の種類や糸の種類を指定するための設定値を入力する構成として説明した。しかし、これに代え、あるいはこれに加えて、芯管の種類や糸の種類等の巻取状況に応じて、オペレータが手動で設定を調整できるよう操作入力部をユニット毎に設けても良い。この場合、例えば、「糸寄せレバーの駆動速度を速くする」「糸寄せレバーの駆動速度を遅くする」というように、相対的に設定を選択するための設定値を入力可能な構成とすることが好ましい。このように構成すれば、例えば給糸ボビン交換時に糸切れが多発しているような場合に、糸寄せレバーの駆動速度等を直感的に調整することができる。もっとも、糸寄せレバーの駆動速度、駆動開始タイミング、及び駆動量等の設定値を、例えば直接数値入力できるように構成しても良い。
【0118】
糸寄せレバー駆動モータ42はステッピングモータとしたが、ステッピングモータ以外のサーボモータを用いても良いことはもちろんである。ただし、ステッピングモータは制御が簡単であり、位置決めを容易に行うことができるという特徴があるので、糸寄せレバーの駆動源として特に好適である。
【0119】
なお、上記実施形態では、芯管21aの種類に応じて糸寄せレバー31の駆動速度及び駆動開始タイミングを変更する構成としたが、駆動速度又は駆動開始タイミングの何れか一方のみを変更する構成でも良い。どちらか一方のみを変更する構成であっても、糸寄せレバー31の駆動速度及び駆動開始タイミングが固定された構成に比べると、給糸ボビンの姿勢変更時における糸切れの発生を低減させることができる。ただし、給糸ボビン21の姿勢の変化に応じて糸寄せレバー31を適切に制御するという観点からは、芯管21aの種類に応じて糸寄せレバー31の駆動速度及び駆動開始タイミングの両方を変更する構成とすることが好ましい。
【0120】
本発明の構成は、自動ワインダに限らず、他の種類の糸巻取機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 自動ワインダ(糸巻取機)
6 制御部
7 ボビン支持部
10 操作入力部
21 給糸ボビン
25 下糸案内パイプ(捕捉案内部)
31 糸寄せレバー(糸案内部材)
42 糸寄せレバー駆動モータ
60 ボビン供給装置(ボビン供給部)
66 糸端保持口(糸端保持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンを支持するボビン支持部と、
前記給糸ボビンの糸を捕捉する捕捉案内部と、
前記ボビン支持部に対して給糸ボビンを供給するボビン供給部と、
前記ボビン支持部と前記ボビン供給部の両方又は何れか一方を駆動する駆動源と、
前記ボビン供給部に設けられ、前記給糸ボビンの糸端を保持する糸端保持部と、
前記ボビン支持部に支持された給糸ボビンと前記糸端保持部との間に渡る糸を引っ掛けて、当該糸を前記捕捉案内部が受け取ることができる位置まで案内する糸案内部材と、
前記糸案内部材の駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記糸案内部材は、前記駆動源とは別に設けられた専用の駆動手段によって駆動されることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記糸案内部材と相互に作用して糸を弛ませるガイド部材を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記専用の駆動手段は、ステッピングモータであることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
設定値を入力可能な操作入力部を備え、
前記制御部は、前記糸案内部材の駆動を開始するタイミング、又は当該糸案内部材の駆動速度の少なくとも何れか一方を、前記操作入力部で設定された設定値に応じて変更可能であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
設定値を入力可能な操作入力部を備え、
前記制御部は、前記糸案内部材の駆動量を、前記操作入力部で設定された設定値に応じて変更可能であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
給糸ボビンの糸を糸巻取機に案内する糸案内方法であって、
給糸ボビンをボビン支持部に供給するボビン供給工程と、
前記ボビン支持部に供給された前記給糸ボビンの姿勢を、当該給糸ボビンから糸を解舒可能な姿勢に変更するボビン姿勢変更工程と、
前記給糸ボビンの糸を糸案内部材に引っ掛けて、当該糸案内部材を駆動することにより、前記糸を所定の位置まで案内する糸案内工程と、
を含み、
前記糸案内工程は、前記ボビン姿勢変更工程と並行的に行われ、
前記糸案内工程において、前記糸案内部材に前記糸を引っ掛けた部分が、前記給糸ボビンの軸線の延長線上にあるように、前記糸案内部材の駆動を制御することを特徴とする糸案内方法。
【請求項7】
請求項6に記載の糸案内方法であって、
前記糸案内工程の後、前記糸案内部材を更に駆動することにより糸を弛ませる糸弛ませ工程を含み、
前記糸弛ませ工程において、前記給糸ボビンから引き出される糸の長さが、糸の種類によらず一定となるように前記糸案内部材の駆動を制御することを特徴とする糸案内方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate