説明

糸巻取装置、自動ワインダ及び繊維機械

【課題】 糸の強力を容易にかつ正確に測定することができる糸巻取装置、自動ワインダ及び繊維機械を提供する。
【解決手段】 巻取ユニット30は、給糸ボビン6の糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する装置である。巻取ユニット30は、ボビン支持部31と、巻取部32と、強力測定部100と、を備えている。ボビン支持部31は、給糸ボビン6を支持する。巻取部32は、ボビン支持部31に支持された給糸ボビン6の糸YをパッケージPとして巻き取る。強力測定部100は、ボビン支持部31と巻取部32との間において、給糸ボビン6から引き出された糸Yの強力を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置、糸巻取装置を複数具備する自動ワインダ、及び自動ワインダや精紡機等を含む繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
所定仕様のパッケージを生産するために、給糸ボビンの糸をパッケージとして巻き取る糸巻取装置が知られている。そのような糸巻取装置においては、糸欠点の除去や給糸ボビンの交換を行った後に、給糸ボビン側の下糸とパッケージ側の上糸とを継ぐ糸継が行われる。ただし、糸継によって継がれた糸継部分の強力が十分でないと、後工程において糸継部分の強力不足による糸切れが発生するおそれがある。
【0003】
そこで、従来、糸継部分の強力が十分でかつ安定しているかを確認するために、糸継部分を含む糸のサンプリングが糸巻取装置ごとに複数回行われ、別途設けられた測定器において、糸継部分の強力が基準値以上であるか否かの測定が行われている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−101561号公報
【特許文献2】特公平1−24706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような測定器は、複数の糸巻取装置に対して1台用意されるのが一般的であるため、糸巻取装置とサンプリングした糸との対応付けに細心の注意を要するなど、サンプリングした糸の強力の測定には非常に手間が掛かる。
【0006】
そこで、本発明は、糸の強力を容易にかつ正確に測定することができる糸巻取装置、自動ワインダ及び繊維機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の糸巻取装置は、給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、給糸ボビンを支持するボビン支持部と、ボビン支持部に支持された給糸ボビンの糸をパッケージとして巻き取る巻取部と、ボビン支持部と巻取部との間において、給糸ボビンから引き出された糸の強力を測定する強力測定部と、を備える。
【0008】
この糸巻取装置では、ボビン支持部と巻取部との間において、給糸ボビンから引き出された糸の強力が強力測定部によって測定される。このように、糸巻取装置において糸の強力を測定することができるので、この糸巻取装置によれば、糸の強力を容易にかつ正確に測定することができる。
【0009】
また、本発明の糸巻取装置は、巻取部によって巻き取られる糸のテンションを測定するテンションセンサを更に備え、強力測定部は、給糸ボビンから引き出された糸を保持する保持部と、保持部によって保持された糸を引っ張る引張部と、保持部と引張部との間において、糸の強力を検知する強力検知部と、を有し、テンションセンサは、強力検知部として動作してもよい。この構成によれば、テンションセンサを利用して糸の強力を検知するので、部品点数を減少させて構成の簡易化を図ることができる。更に、糸の強力を検知するに際して、給糸ボビンから引き出された糸が保持部によって保持されるため、強力測定済みの部分がパッケージに巻き取られるのを(すなわち、強力測定済みの部分を含むパッケージが形成されるのを)防止することができる。
【0010】
また、本発明の糸巻取装置においては、巻取部は、引張部として動作してもよい。この構成によれば、巻取部を利用して糸を引っ張るので、部品点数を減少させて構成の簡易化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の糸巻取装置は、ボビン支持部と巻取部との間において、走行する糸にテンションを付加するテンション付加部を更に備え、テンション付加部は、保持部として動作してもよい。この構成によれば、テンション付加部を利用して糸を保持するので、部品点数を減少させて構成の簡易化を図ることができる。
【0012】
また、本発明の糸巻取装置は、ボビン支持部と巻取部との間において、走行する糸の両側に所定間隔を介して配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい糸欠点の通過を規制する糸欠点通過規制部を更に備え、糸欠点通過規制部は、規制部材に糸を挟持させることにより、保持部として動作してもよい。この構成によれば、糸欠点通過規制部を利用して糸を保持するので、部品点数を減少させて構成の簡易化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の自動ワインダは、給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置を複数具備する自動ワインダであって、糸巻取装置のそれぞれは、給糸ボビンを支持するボビン支持部と、ボビン支持部に支持された給糸ボビンの糸をパッケージとして巻き取る巻取部と、ボビン支持部と巻取部との間において、給糸ボビンから引き出された糸の強力を測定する強力測定部と、を備える。
【0014】
この自動ワインダでは、糸巻取装置のそれぞれにおけるボビン支持部と巻取部との間において、給糸ボビンから引き出された糸の強力が強力測定部によって測定される。このように、糸巻取装置ごとに糸の強力を測定することができるので、この自動ワインダによれば、糸の強力を容易にかつ正確に測定することができる。
【0015】
また、本発明の自動ワインダにおいては、強力測定部は、糸の破断強度を測定してもよい。この構成によれば、強力測定によって糸が破断されるので、強力測定済みの部分がパッケージに巻き取られるのを(すなわち、強力測定済みの部分を含むパッケージが形成されるのを)防止することができる。
【0016】
また、本発明の自動ワインダにおいては、糸巻取装置のそれぞれは、ボビン支持部と巻取部との間において、切断された糸を継ぐ糸継部を更に備え、強力測定部は、糸継部によって継がれた糸継部分を含んだ状態で糸の強力を測定してもよい。この構成によれば、糸継部分を含む糸の強力を数値で管理することができ、それにより、糸継部分の品質管理を容易化することができる。更に、糸継部分を含む糸の強力に基づいて、適切な強力で糸継されるように糸継部を調整することができる。
【0017】
また、本発明の自動ワインダにおいては、糸巻取装置のそれぞれは、ボビン支持部と巻取部との間において、切断された糸を継ぐ糸継部を更に備え、強力測定部は、糸継部によって継がれた糸継部分を含んだ状態で糸の強力を測定すると共に、糸継部分を除いた状態で糸の強力を測定してもよい。この構成によれば、糸継部分を含む糸の強力を数値で管理することができ、それにより、糸継部分の品質を容易に管理することができる。更に、糸継部分を含む糸の強力に基づいて、適切な強力で糸継されるように糸継部を調整することができる。また、糸継部分を除く糸の強力を測定することで、糸継部分を含む糸の強力が、糸継部分の強力に起因するものなのか、糸自体の強力に起因するものなのかを推定することができる。
【0018】
また、本発明の自動ワインダは、強力測定部によって測定された強力を表示する表示部を更に具備してもよい。この構成によれば、オペレータに糸の強力を迅速に把握させることができる。更に、オペレータによる糸巻取装置の調整作業等の後に、当該調整作業等による設定が適切であったか否かをオペレータに把握させることができる。
【0019】
また、本発明の自動ワインダは、複数の糸巻取装置を制御する制御装置を更に具備し、制御装置は、強力測定部によって測定された強力を記憶して管理する管理部を備えてもよい。この構成によれば、糸巻取装置によって形成されるパッケージ等の品質管理を有利に実施することができる。
【0020】
また、本発明の繊維機械は、給糸ボビンを形成する精紡装置を複数具備する精紡機と、給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置を複数具備する自動ワインダと、精紡機から自動ワインダに給糸ボビンを供給するボビン供給装置と、少なくとも自動ワインダを制御する制御装置と、を含む繊維機械であって、糸巻取装置のそれぞれは、給糸ボビンを支持するボビン支持部と、ボビン支持部に支持された給糸ボビンの糸をパッケージとして巻き取る巻取部と、ボビン支持部と巻取部との間において、給糸ボビンから引き出された糸の強力を測定する強力測定部と、を備え、制御装置は、強力測定部によって測定された強力に基づいて、精紡装置のそれぞれにおける精紡状態を特定する。
【0021】
この繊維機械では、糸巻取装置において測定された糸の強力に基づいて、精紡装置における精紡状態が特定される。これにより、例えば給糸ボビンの糸自体に不具合を発生させた精紡装置を特定し、当該精紡装置から自動ワインダへの給糸ボビンの供給を停止すると共に、当該精紡装置を適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、糸の強力を容易にかつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の繊維機械の構成図である。
【図2】図1の繊維機械において搬送される給糸ボビンの斜視図である。
【図3】図1の繊維機械の巻取ユニットの正面図である。
【図4】図3の巻取ユニットのテンションセンサの斜視図である。
【図5】図4のテンションセンサのV−V線に沿っての平面図である。
【図6】図4のテンションセンサの正面図である。
【図7】図4のテンションセンサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1に示されるように、繊維機械1は、精紡機2と、自動ワインダ3と、ボビン供給装置4と、を含んで構成されている。精紡機2は、精紡管5に糸を巻き付けて給糸ボビン6を形成する精紡ユニット(精紡装置)20を複数具備している。自動ワインダ3は、給糸ボビン6の糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取ユニット(糸巻取装置)30を複数具備している。ボビン供給装置4は、精紡機2から自動ワインダ3に給糸ボビン6を供給する。より具体的には、ボビン供給装置4は、トレー50にセットされた給糸ボビン6を精紡機2から自動ワインダ3に搬送し、トレー50にセットされた精紡管5を自動ワインダ3から精紡機2に搬送する。
【0026】
繊維機械1においては、精紡管5及び給糸ボビン6は、トレー50にセットされた状態で搬送される。図2に示されるように、トレー50は、円板状に形成されたベース部50a、及びベース部50aから略垂直に突出するボビン差込み部50bを有している。精紡管5は、細長い筒状に形成されており、ボトム部から内部に差込み部50bが挿入されることでトレー50にセットされる。給糸ボビン6は、精紡ユニット20において精紡管5に糸Yが巻き付けられたボビンである。以下、精紡機2によって糸Yが巻き付けられたボビンを実ボビンとする。
【0027】
繊維機械1には、RFID(Radio Frequency Identification:電波による個体識別)技術を用いて、トレー50にセットされた給糸ボビン6の状況を管理する繊維機械管理システムが適用されている。より具体的には、各トレー50のベース部50aには、その内部にRFタグ(記録部)60が設けられている。繊維機械1においては、給糸ボビン6に関する情報がトレー50ごとにRFタグ60に書き込まれ、これにより、給糸ボビン6の状況が管理されている。
【0028】
図1に示されるように、精紡機2には、精紡機2の全体を制御する制御装置7が設置されている。複数の精紡ユニット20は、一列に並設されており、各精紡ユニット20は、前工程の粗紡機で生成された粗糸に撚りを加えて紡績を行う。すなわち、各精紡ユニット20は、延伸した粗糸に撚りを加えつつ、精紡管5に所定長さだけ糸を巻き付けて、実ボビンである給糸ボビン6を形成する。
【0029】
精紡機2は、いわゆる一斉ドッフィングタイプとして構成されている。すなわち、精紡機2は、ボビン供給装置4によって自動ワインダ3から戻された精紡管5を多数ストックしておき、所定タイミングで精紡管5を各精紡ユニット20に一斉にセットして、糸の巻付けを同時に行う。この糸の巻付けが完了すると、精紡機2は、全ての給糸ボビン6を一斉に玉揚げし、ストックされていた精紡管5をトレー50から抜き取って、代わりに、玉揚げした給糸ボビン6をトレー50にセットする。そして、精紡機2は、抜き取った精紡管5を各精紡ユニット20に再び一斉にセットする。
【0030】
ボビン供給装置4は、精紡機2から給糸ボビン6を受け取ると、給糸ボビン6がセットされたトレー50のRFタグ60に、給糸ボビン6に関する情報を書き込む。その後、ボビン供給装置4は、トレー50にセットされた給糸ボビン6を各巻取ユニット30に振り分けて自動ワインダ3に供給する。給糸ボビン6に関する情報の書込みは、精紡機2から自動ワインダ3に至る搬送路の所定位置に設置されたRFライタ(書込部)9によって実行される。
【0031】
ここで、給糸ボビン6に関する情報は、給糸ボビン6を形成した精紡ユニット20を特定するための錘番号情報、及び一斉ドッフィングのタイミングを特定するためのドッフィング情報を含んでいる。精紡機2において一斉に玉揚げされた給糸ボビン6は、トレー50にセットされた後、精紡ユニット20の並び順と同一の順番でRFライタ9を通過する。そのため、RFライタ9は、通過する給糸ボビン6の順番をカウントすることで、給糸ボビン6を形成した精紡ユニット20を特定することができる。これにより、RFライタ9は、一斉ドッフィングを行った時間又は何回目の一斉ドッフィングであったかを示すドッフィング情報と共に、いずれの精紡ユニット20で形成されたかを示す錘番号情報をトレー50のRFタグ60に書き込む。
【0032】
自動ワインダ3には、自動ワインダ3の全体を制御する制御装置8が設置されている。複数の巻取ユニット30は、一列に並設されており、各巻取ユニット30には、巻取ユニット30を制御する制御部10、及び給糸ボビン6に関する情報を読み込むRFリーダ(読取部)11が設置されている。制御部10は、制御装置8との間で、ワインディング動作に関する種々の情報を送受信する。RFリーダ11は、ボビン供給装置4によって巻取ユニット30に給糸ボビン6が供給されたときに、その給糸ボビン6がセットされたトレー50のRFタグ60から、給糸ボビン6に関する情報を読み取って、制御装置8に送信する。なお、制御装置8は、各巻取ユニット30の状況等を表示するためのディスプレイ12、オペレータが巻取条件の設定等を行うための入力キー13、及び各種データを記憶して管理する管理部14を有している。
【0033】
図3に示されるように、巻取ユニット30は、ボビン供給装置4によって供給された給糸ボビン6を直立させた状態で支持するボビン支持部31と、ボビン支持部31に支持された給糸ボビン6から解舒された糸Yを巻取管15に巻き取ってパッケージPを形成する巻取部32と、を備えている。なお、以下、本実施形態では、糸Yを巻くための管を巻取管15とし、糸Yが巻かれた巻取管15をパッケージPとする。従って、製品として規定された量の糸Yが巻取管15に巻かれたパッケージPが満巻のパッケージPである。
【0034】
巻取部32は、ドラム溝34aが形成された巻取ドラム34、及び巻取管15を回転自在に支持するクレードル33を有している。クレードル33は、巻取管15に巻き取られた糸Yの表面(すなわち、パッケージPの表面)を巻取ドラム34の表面に対して適切な接圧で接触させる。巻取部32では、モータで巻取ドラム34を駆動回転させて巻取管15を従動回転させることにより、糸Yを所定幅で綾振りしつつ糸Yを巻取管15に巻き取っていく。
【0035】
ボビン支持部31と巻取部32との間には、糸Yの走行経路に沿って下方(上流側)から順に、糸解舒補助装置41、プレクリアラ(糸欠点通過規制部)90、ゲート式テンサ(テンション付加部)39、テンションセンサ70、スプライサ(糸継部)37、カッター36及びヤーンクリアラ35が設置されている。更に、糸継作業を行うための中継パイプ42及び上糸案内部材43が設置されている。これらの各部は、機台46に支持されている。機台46には、巻取ユニット30の状況等を表示するためのディスプレイ(表示部)47が設けられている。
【0036】
ヤーンクリアラ35は、糸Yの巻取中にスラブ等の糸欠点を検出する。プレクリアラ90は、走行する糸Yの両側に所定間隔を介して配置された一対の規制部材91,92によって、規定値よりも大きい糸欠点の通過を予め規制する。カッター36は、ヤーンクリアラ35によって糸欠点が検出されたとき、或いはプレクリアラ90によって糸欠点の通過が規制されたときに、糸Yを切断する。スプライサ37は、カッター36による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時に、給糸ボビン6側の下糸の糸端とパッケージP側の上糸の糸端とを継ぐ。テンションセンサ70は、巻取部32によって巻き取られる糸Yのテンションを測定する。ゲート式テンサ39は、櫛歯状の固定ゲート及び可動ゲートからなる一対のゲートによって糸Yをジグザグ状に保持することで、走行する糸Yに所定テンションを付加する。糸解舒補助装置41は、給糸ボビン6の上方に配置された筒状部材によって、給糸ボビン6から解舒される糸Yのバルーンを制御する。
【0037】
スプライサ37の下端には、スプライサ37に糸Yを案内するためのガイド溝44aが設けられたスプライサ用ガイド板44が設置されている。また、ゲート式テンサ39の上端には、ゲート式テンサ39に糸Yを案内するためのガイド溝45aが設けられたテンサ用ガイド板45が設置されている。テンションセンサ70は、ゲート式テンサ39とスプライサ37との間に配置されており、テンサ用ガイド板45の上面に載置されている。
【0038】
上糸案内部材43は、支軸Aを中心に上下方向へ回動自在に構成されており、その回動端には吸引口43aが設けられている。これにより、吸引口43aは、スプライサ37の下部と巻取ドラム34の上部との間で回動する。一方、中継パイプ42は、支軸Bを中心に上下方向へ回動自在に構成されており、その回動端には吸引口42aが設けられている。これにより、吸引口42aは、スプライサ37の上部とプレクリアラ90の下部との間で回動する。
【0039】
カッター36で糸Yがカットされると、パッケージP側の糸端である上糸は、巻取ドラム34の上部に配置された上糸案内部材43の吸引口43aで吸引される。その状態で、吸引口43aが下方へ回動することで、上糸の糸端がスプライサ37に引き渡される。一方、給糸ボビン6側の糸端である下糸は、プレクリアラ90の下部に配置された中継パイプ42の吸引口42aで吸引される。その状態で、吸引口42aが上方へ回動することで、下糸の糸端がスプライサ37に引き渡される。こうして、スプライサ37において上糸と下糸とが継ぎ合わされる。
【0040】
なお、スプライサ37には、糸継作業を確実に行うために、糸継作業位置に上糸及び下糸を寄せるための糸寄せレバー37aが設けられている。糸継作業時には、この糸寄せレバー37aによって、上糸及び下糸がスプライサ37の糸継作業位置に確実に導入されるが、スプライサ37の下部に配置されているテンションセンサ70への糸の導入も、この糸寄せレバー37aによって確実に行われるようになっている。
【0041】
前述したテンションセンサ70について、より詳細に説明する。図4、図5、図6及び図7に示されるように、テンションセンサ70は、棒状のロッド71を有している。ロッド71は、その軸方向が糸Yの走行経路と直交するように配置されている。ロッド71の側面には、糸Yのテンションを検出するテンション検出部71aが設けられている。テンション検出部71aは、ロッド71の周面を窪ませた形状を有しており、糸Yに対する接触摩擦抵抗が小さくかつ摩耗の少ないセラミック等の材料からなる。
【0042】
ロッド71の上方には、テンション検出部71aの上方において糸Yを支持する上部ガイド部材72が設置されている。上部ガイド部材72は、主面が糸Yの走行経路と直交するように配置された平板状の部材である。上部ガイド部材72において糸Yが走行する部分には、溝状の糸支持部72aが形成されており、糸支持部72aには、一方の側から糸Yに接触するセラミック製のヤーンガイド74が取り付けられている。一方、ロッド71の下方には、テンション検出部71aの下方において糸Yを支持する下部ガイド部材73が設置されている。下部ガイド部材73は、主面が糸Yの走行経路と直交するように配置された平板状の部材である。下部ガイド部材73において糸Yが走行する部分には、溝状の糸支持部73aが形成されており、糸支持部73aには、他方の側から糸Yに接触するセラミック製のヤーンガイド75が取り付けられている。
【0043】
これにより、糸Yは、上部ガイド部材72のヤーンガイド74と、下部ガイド部材73のヤーンガイド75と、ロッド71のテンション検出部71aとの三点で支持されることになる。このとき、糸Yは、テンション検出部71aにおいて所定角度で屈曲させられる。つまり、糸Yは、テンション検出部71aに対して所定角度で巻き付いた状態で接触する。
【0044】
上部ガイド部材72には、テンション検出部71aに糸Yを案内するためのガイド部72bが設けられている。ガイド部72bは、平面視において、手前に向かって一方の側に傾斜した傾斜辺からなる。一方、下部ガイド部材73には、テンション検出部71aに糸Yを案内するためのガイド部73bが設けられている。ガイド部73bは、平面視において、手前に向かって他方の側に傾斜した傾斜辺からなる。また、ロッド71の先端側には、テンション検出部71aに糸Yを案内するためのガイド部材76が設置されている。案内部材76の先端部の側面には、平面視において、上部ガイド部材72のガイド部72bと略同じように傾斜したガイド面76aが形成されている。
【0045】
テンションセンサ70の本体カバー77内には、抵抗素子(歪みゲージ)78aが設けられた金属ブロック(起歪体)78が設置されている。金属ブロック78は、直方体状に形成されており、その長手方向がロッド71の軸方向と略平行となるように配置されている。金属ブロック78の一端部は、テンションセンサ70の支持部材79に固定されており、金属ブロック78の他端部は、連結体81を介してロッド71の基端部に連結されている。抵抗素子78aは、例えば印刷等によって金属ブロック78の側面に一体的に形成されている。これにより、糸Yがテンション検出部71aに接触すると、ロッド71が軸方向に直交するように変位し、それに伴い、金属ブロック78に長手方向への歪みが発生する。この歪を抵抗素子78aが検知し、歪み量に相応した検知信号(電圧信号)をテンション値として出力する。
【0046】
図3に示されるように、制御部10は、テンションセンサ70から入力されたテンション値に基づいて、糸切れ等を起こさない最適なテンションとなるようにゲート式テンサ39をフィードバック制御する。なお、巻取部32によって巻き取られる糸Yのテンションを調整するために、制御部10は、ゲート式テンサ39の制御を行う他、巻取ドラム34を制御し、パッケージPの周速を変えてもよい。
【0047】
以上のように構成された巻取ユニット30は、制御装置8や制御部10を介したオペレータの操作により、巻取ユニット30ごとに糸強力測定モードに入ることができる。糸強力測定モードは、例えば、次のような場合に採られるモードである。すなわち、スプライサ37の調整後や、巻取ユニット30の運転時において定期的に、スプライサ37によって継がれた糸継部分の強力を測定してその安定性を確認する場合や、糸Y自体の強力を測定して精紡ユニット20で精紡された糸Yの品質を確認する場合等である。
【0048】
糸強力測定モードに入ると、図3に示されるように、巻取ユニット30ごとに強力測定部100が構成される。強力測定部100は、ボビン支持部31と巻取部32との間において、給糸ボビン6から引き出された糸Yの強力(例えば糸Yの強度、糸強度)を測定する。強力測定部100は、給糸ボビン6から引き出された糸Yを保持する保持部101と、保持部101によって保持された糸Yを引っ張る引張部102と、保持部101と引張部102との間において、糸Yの強力を検知する強力検知部103と、を有している。巻取ユニット30においては、ゲート式テンサ39が保持部101として動作し、巻取部32が引張部102として動作し、テンションセンサ70が強力検知部103として動作する。
【0049】
ゲート式テンサ39を保持部101として動作させる場合には、糸Yの巻取動作時と異なり、糸Yがずれることのないようにゲート式テンサ39に糸Yを確実に保持させる。より具体的には、ゲート式テンサ39が糸Yをジグザグに保持する状態よりも、更に可動ゲートを固定ゲート側に移動させることにより、可動ゲートと固定ゲートとで糸Yを挟持できるようにする。また、巻取部32を引張部102として動作させる場合には、パッケージPの表面を巻取ドラム34の表面に対して糸Yの巻取動作時よりも高い接圧で接触させて所定値以上の摩擦力を確保し、糸Yの巻取動作時よりも高い駆動力でかつ低い回転速度で巻取ドラム34を回転させる。更に、テンションセンサ70を強力検知部103として動作させる場合には、破断時等の所定タイミングで糸Yにより生じていた歪み量を荷重値に変換させ、糸Yの強力をグラム数で検出させる。なお、プレクリアラ90を保持部101として動作させてもよい。その場合、プレクリアラ90において、一対の規制部材91,92を可動式とし、一対の規制部材91,92に糸Yを確実に挟持させる。
【0050】
以上説明したように、巻取ユニット30では、ボビン支持部31と巻取部32との間において、給糸ボビン6から引き出された糸Yの強力が強力測定部100によって測定される。このように、巻取ユニット30において糸Yの強力を測定することができるので、従来のように、巻取ユニットごとに糸のサンプリングを複数回行い、別途設けられた測定器において糸の強力を測定するような煩雑な作業が不要となる。よって、巻取ユニット30によれば、糸Yの強力を容易にかつ正確に測定することができる。同様に、巻取ユニット30を複数具備する自動ワインダ3、及びそれを含む繊維機械1においても、巻取ユニット30のそれぞれが強力測定部100を有することになるので、糸Yの強力を容易にかつ正確に測定することができる。
【0051】
また、強力測定部100では、給糸ボビン6から引き出された糸Yが保持部101によって保持された状態で引張部102によって引っ張られ、保持部101と引張部102との間において、強力検知部103によって糸Yの強力が検知される。このように、糸Yの強力を検知するに際して、給糸ボビン6から引き出された糸Yが保持部101によって保持されるため、強力測定済みの部分がパッケージPに巻き取られるのを(すなわち、強力測定済みの部分を含むパッケージPが形成されるのを)防止することができる。
【0052】
また、巻取ユニット30においては、ゲート式テンサ39(場合によってはプレクリアラ90)が強力測定部100の保持部101として動作し、巻取部32が強力測定部100の引張部102として動作し、テンションセンサ70が強力測定部100の強力検知部103として動作する。このように、糸Yの巻取動作に使用される構成が糸強力測定モードにおいて利用されるため、巻取ユニット30の部品点数を減少させて巻取ユニット30に構成の簡易化を図ることができる。
【0053】
また、強力測定部100は、糸Yの破断強度(破断張力)を測定するように構成されている。この場合、強力測定によって糸Yが破断されるので、強力測定済みの部分がパッケージPに巻き取られるのを(すなわち、強力測定済みの部分を含むパッケージPが形成されるのを)より確実に防止することができる。ただし、強力測定部100は、糸Yの破断強度を測定するものに限定されず、例えば、テンションセンサ70によるテンション測定範囲において基準値を設定し、糸Yの強力がその基準値以上であるか否かを測定するものであってもよい。
【0054】
また、強力測定部100は、スプライサ37によって継がれた糸継部分を含んだ状態で糸Yの強力を測定するように構成されている。この場合、糸継部分を含む糸Yの強力を数値で管理することができ、それにより、糸継部分の品質管理を容易化することができる。更に、糸継部分を含む糸Yの強力に基づいて、適切な強力で糸継されるようにスプライサ37を調整することができる。
【0055】
更に、強力測定部100は、スプライサ37によって継がれた糸継部分を除いた状態で糸Yの強力を測定するように構成されている。この場合、糸継部分を含む糸Yの強力が、糸継部分の強力に起因するものなのか、糸Y自体の強力に起因するものなのかを推定することができる。
【0056】
また、ディスプレイ47は、強力測定部100によって測定された強力を表示するように構成されている。この場合、オペレータに糸Yの強力を迅速に把握させることができる。更に、オペレータによる巻取ユニット30の調整作業等の後に、当該調整作業等による設定が適切であったか否かをオペレータに把握させることができる。なお、強力測定部100によって測定された強力を制御装置8のディスプレイ12に表示させてもよい。
【0057】
また、自動ワインダ3の制御装置8の管理部14は、強力測定部100によって測定された強力を記憶して管理するように構成されている。この場合、巻取ユニット30によって形成されるパッケージP等の品質管理を有利に実施することができる。
【0058】
また、自動ワインダ3の制御装置8は、各巻取ユニット30の強力測定部100によって測定された強力に基づいて、各精紡ユニット20における精紡状態を特定するように構成されている。ここで、制御装置8は、各巻取ユニット30の強力測定部100によって測定された強力(給糸ボビン6の糸Yの強力)を示す情報を各巻取ユニット30の制御部10から受信する。その一方で、制御装置8は、当該給糸ボビン6に関する情報(錘番号情報及びドッフィング情報を含む)を各巻取ユニット30のRFリーダ11から受信する。そのため、制御装置8は、当該給糸ボビン6の糸Yの強力と、当該給糸ボビン6の糸Yを精紡した精紡ユニット20とを対応付けることができる。これにより、例えば、給糸ボビン6の糸Y自体に不具合を発生させた精紡ユニット20を特定し、当該精紡ユニット20から自動ワインダ3への給糸ボビン6の供給をボビン供給装置4に停止させ、当該精紡ユニット20を適切に調整することができる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、巻取部32は、巻取ドラム34によって糸Yの綾振りを行うものに限定されず、トラバースアームによって糸Yの綾振りを行うもの等であってもよい。そのような場合において、モータで巻取管15が駆動回転させられるときには、糸強力測定モード時に、パッケージPの表面を巻取ドラム34の表面に対して糸Yの巻取動作時よりも高い接圧で接触させることが不要となる。また、テンション付加部は、ゲート式テンサ39に限定されず、いわゆるディスク式テンサ等であってもよい。また、引張部102として巻取部32を動作させる別の実施形態として、パッケージPを支持するクレードル33にブレーキをかけて、パッケージPを回転不能に保持し、クレードル33を上方に移動させる(リフトアップ)ことにより、保持された糸Yを引っ張ってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…繊維機械、2…精紡機、3…自動ワインダ、4…ボビン供給装置、6…給糸ボビン、8…制御装置、10…制御部、14…管理部、20…精紡ユニット(精紡装置)、30…巻取ユニット(糸巻取装置)、31…ボビン支持部、32…巻取部、37…スプライサ(糸継部)、39…ゲート式テンサ(テンション付加部)、47…ディスプレイ(表示部)、70…テンションセンサ、90…プレクリアラ(糸欠点通過規制部)、91,92…規制部材、100…強力測定部、101…保持部、102…引張部、103…強力検知部、Y…糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置であって、
前記給糸ボビンを支持するボビン支持部と、
前記ボビン支持部に支持された前記給糸ボビンの前記糸をパッケージとして巻き取る巻取部と、
前記ボビン支持部と前記巻取部との間において、前記給糸ボビンから引き出された前記糸の強力を測定する強力測定部と、を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記巻取部によって巻き取られる前記糸のテンションを測定するテンションセンサ更に備え、
前記強力測定部は、
前記給糸ボビンから引き出された前記糸を保持する保持部と、
前記保持部によって保持された前記糸を引っ張る引張部と、
前記保持部と前記引張部との間において、前記糸の前記強力を検知する強力検知部と、を有し、
前記テンションセンサは、前記強力検知部として動作することを特徴とする請求項1記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記巻取部は、前記引張部として動作することを特徴とする請求項2記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記ボビン支持部と前記巻取部との間において、走行する前記糸にテンションを付加するテンション付加部を更に備え、
前記テンション付加部は、前記保持部として動作することを特徴とする請求項2又は3記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記ボビン支持部と前記巻取部との間において、走行する前記糸の両側に所定間隔を介して配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい糸欠点の通過を規制する糸欠点通過規制部を更に備え、
前記糸欠点通過規制部は、前記規制部材に前記糸を挟持させることにより、前記保持部として動作することを特徴とする請求項2又は3記載の糸巻取装置。
【請求項6】
給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置を複数具備する自動ワインダであって、
前記糸巻取装置のそれぞれは、
前記給糸ボビンを支持するボビン支持部と、
前記ボビン支持部に支持された前記給糸ボビンの前記糸をパッケージとして巻き取る巻取部と、
前記ボビン支持部と前記巻取部との間において、前記給糸ボビンから引き出された前記糸の強力を測定する強力測定部と、を備えることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項7】
前記強力測定部は、前記糸の破断強度を測定することを特徴とする請求項6記載の自動ワインダ。
【請求項8】
前記糸巻取装置のそれぞれは、前記ボビン支持部と前記巻取部との間において、切断された前記糸を継ぐ糸継部を更に備え、
前記強力測定部は、前記糸継部によって継がれた糸継部分を含んだ状態で前記糸の前記強力を測定することを特徴とする請求項6又は7記載の自動ワインダ。
【請求項9】
前記糸巻取装置のそれぞれは、前記ボビン支持部と前記巻取部との間において、切断された前記糸を継ぐ糸継部を更に備え、
前記強力測定部は、前記糸継部によって継がれた糸継部分を含んだ状態で前記糸の前記強力を測定すると共に、前記糸継部分を除いた状態で前記糸の前記強力を測定することを特徴とする請求項6又は7記載の自動ワインダ。
【請求項10】
前記強力測定部によって測定された前記強力を表示する表示部を更に具備することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項記載の自動ワインダ。
【請求項11】
複数の前記糸巻取装置を制御する制御装置を更に具備し、
前記制御装置は、前記強力測定部によって測定された前記強力を記憶して管理する管理部を備えることを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項記載の自動ワインダ。
【請求項12】
給糸ボビンを形成する精紡装置を複数具備する精紡機と、前記給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置を複数具備する自動ワインダと、前記精紡機から前記自動ワインダに前記給糸ボビンを供給するボビン供給装置と、少なくとも前記自動ワインダを制御する制御装置と、を含む繊維機械であって、
前記糸巻取装置のそれぞれは、
前記給糸ボビンを支持するボビン支持部と、
前記ボビン支持部に支持された前記給糸ボビンの前記糸をパッケージとして巻き取る巻取部と、
前記ボビン支持部と前記巻取部との間において、前記給糸ボビンから引き出された前記糸の強力を測定する強力測定部と、を備え、
前記制御装置は、前記強力測定部によって測定された前記強力に基づいて、前記精紡装置のそれぞれにおける精紡状態を特定することを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−224431(P2012−224431A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93044(P2011−93044)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】