説明

糸巻取装置及び繊維機械

【課題】給糸部とボビン供給部とを独立して駆動することが可能な糸巻取装置を提供すること。
【解決手段】巻取ユニット1は、糸Yが解舒されるボビン3を保持するとともに不要なボビン3を排出するボビン保持排出機構31と、ボビン保持排出機構31を駆動する第1駆動モータ32と、を有する給糸部10と、複数のボビン3を収容するマガジン53を含み、マガジン53に収容された複数のボビン3のうちの1つを給糸部10に供給する供給機構51と、供給機構51を駆動する第2駆動モータ52と、を有するボビン供給部11と、ボビン保持排出機構31に保持されたボビン3から解舒された糸Yを巻取管に巻取る巻取部と、第1駆動モータ32と第2駆動モータ52とを独立して制御するユニット制御装置80と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸部に保持されたボビンから解舒される糸を巻取管に巻取る糸巻取装置、及び、糸巻取装置を備えた繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給糸ボビンから解舒された糸を巻取管に巻き返して、巻取パッケージを形成する糸巻取装置(巻取ユニット)が、多数列設された自動ワインダが知られている。このような自動ワインダの糸巻取装置において、糸の解舒が行われる給糸部にボビンを供給するボビン供給部として種々の方式のものが知られているが、その中でも、複数のボビンを収容するマガジンを備え、このマガジンを所定ピッチで間欠的に回転させて給糸部にボビンを1つずつ供給する、マガジン方式のものがある。
【0003】
特許文献1,2には、マガジン方式のボビン供給部を備えた糸巻取装置が開示されている。このような従来の糸巻取装置においては、ボビンを保持するボビン保持部(スキュア)を含む給糸部と、マガジンを含むボビン供給部とが、1つの駆動モータに連結されており、この1つの駆動モータによって給糸部とボビン供給部が駆動される。つまり、1つの駆動モータによって、給糸部のボビン保持部の位置(姿勢)を変化させながら、ボビン供給部のマガジンを回転させてこのマガジンからボビン保持部に向けて1つのボビンを落下させるというように、給糸部とボビン供給部を連動させてボビンの交換作業を行うように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−183571号公報
【特許文献2】米国特許第4844358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の糸巻取装置においては、ボビン保持部を有する給糸部と、マガジンを有するボビン供給部とが、1つの駆動モータで駆動されているため、給糸部とボビン供給部を独立して駆動することができない。そのため、糸巻取装置の動作状況に応じて、給糸部とボビン供給部の動作をそれぞれ最適化して、糸巻取作業の効率化(生産性の向上)を図るということはできなかった。
【0006】
本発明の目的は、給糸部とボビン供給部とを独立して駆動することが可能な糸巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
第1の発明の糸巻取装置は、糸が解舒されるボビンを保持するとともにボビンを排出するボビン保持排出機構と、前記ボビン保持排出機構を駆動する第1駆動手段と、を有する給糸部と、
複数のボビンを収容するマガジンを含み、前記マガジンに収容された複数のボビンのうちの1つを前記給糸部に供給する供給機構と、前記供給機構を駆動する第2駆動手段と、を有するボビン供給部と、
前記ボビン保持排出機構に保持されたボビンから解舒された糸を巻取管に巻取る巻取部と、
前記第1駆動手段と前記第2駆動手段とを独立して制御する制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
この構成によれば、給糸部における第1駆動手段によるボビン保持排出機構の駆動と、ボビン供給部における第2駆動手段による供給機構の駆動が、それぞれ独立して制御される。つまり、給糸部におけるボビン保持動作及びボビン排出動作と、ボビン供給部におけるボビン供給動作とを、それぞれ独立して行うことができる。従って、糸巻取装置の動作状況に応じて、給糸部とボビン供給部の動作をそれぞれ最適化することで、糸巻取作業の効率を高めて生産性を向上させることが可能である。
【0009】
第2の発明の糸巻取装置は、前記第1の発明において、前記制御手段は、前記ボビン供給部による前記ボビンの供給動作に関係なく、前記第1駆動手段により前記ボビン保持排出機構を駆動して、その前記ボビンの保持動作及び前記ボビンの排出動作を制御することを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、ボビン供給部のボビン供給動作と関係なく、給糸部がボビン保持動作及びボビン排出動作を独立して行うことができるため、給糸部のボビン交換動作を最適化して、生産性を向上させることが可能である。例えば、使用されるボビンの種類等に応じて、ボビンの交換動作を最適に制御することで、ボビン交換失敗(ボビンの保持失敗やボビンの排出失敗)の頻度を減らすことができる。
【0011】
また、従来の糸巻取装置においては、マガジンを動作させることなしに、給糸部のみを単独で動作させてボビンを排出することができず、ユーザーに対して不便を強いることとなっていた。例えば、給糸部に付着した糸屑の除去や給糸部の動作調整といった、給糸部のメンテナンス作業を行う際に、ボビン保持部からボビンを排出すると、マガジンから自動的にボビンが供給されてしまうため、給糸部のメンテナンス作業がしにくいという問題があった。しかし、本発明によれば、マガジンを動作させずに給糸部からボビンを排出することが可能となることから、簡単にボビンが取り外された状態で給糸部のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス作業が容易になる。
【0012】
第3の発明の糸巻取装置は、前記第1又は第2の発明において、前記ボビン保持排出機構は、フレームに回動可能に設けられたボビン保持部を有し、
前記制御手段は、前記ボビン供給部による前記ボビンの供給動作に関係なく、前記第1駆動手段により駆動される前記ボビン保持部の回動動作を制御することを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、ボビン供給部のボビン供給動作と関係なく、ボビン保持部の回動動作を制御することから、ボビン保持部の動作を最適化することが可能となる。
【0014】
第4の発明の糸巻取装置は、前記第3の発明において、前記制御手段は、前記ボビンの種類に応じて、前記ボビン保持部に保持された前記ボビンの回動中の姿勢を制御することを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、使用されるボビンの種類に応じて、回動中のボビンの姿勢を制御するため、ボビン保持失敗の頻度を減らすことが可能となる。
【0016】
第5の発明の糸巻取装置は、前記第4の発明において、前記ボビン保持部に保持されたボビンからの糸の解舒を補助する解舒補助装置をさらに備えており、
前記制御手段は、前記解舒補助装置の動作状態に応じて、前記ボビン保持部に保持された前記ボビンの姿勢を制御することを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、ボビン保持部に保持されたボビンの姿勢が正常でないために、解舒補助装置が正常に動作していない場合には、ボビン保持部を回動駆動して、ボビンの姿勢を正常な姿勢にすることができる。
【0018】
第6の発明の糸巻取装置は、前記第3〜第5の何れかの発明において、前記ボビン保持排出機構は、前記フレームに回動可能に設けられるとともに、前記ボビン保持部に保持されている前記ボビンを跳ね上げて、給糸部外へ排出する跳ね板をさらに有し、
前記制御手段は、前記ボビン供給部による前記ボビンの供給動作に関係なく、前記第1駆動手段により駆動される前記跳ね板の回動動作を制御することを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、ボビン供給部のボビン供給動作と関係なく、跳ね板の回動動作を制御することから、跳ね板によるボビン排出動作を最適化することが可能となる。
【0020】
第7の発明の糸巻取装置は、前記第1〜第6の何れかの発明において、前記給糸部と前記ボビン供給部の少なくとも一方が、機台に着脱可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、給糸部とボビン供給部の少なくとも一方を、別個に機台から取り外すことができるため、給糸部又はボビン供給部を、必要に応じて、交換、あるいは、修理することができる。
【0022】
第8の発明の糸巻取装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記第1駆動手段と前記第2駆動手段の少なくとも一方が、ステッピングモータであることを特徴とするものである。
【0023】
この構成によれば、給糸部のボビン保持動作及びボビン排出動作、又は、ボビン供給部のボビン供給動作を、ステッピングモータのパルス制御により容易に制御することができる。
【0024】
第9の発明の糸巻取装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記第1駆動手段と前記第2駆動手段の少なくとも一方が、流体圧シリンダであることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、第1駆動手段又は第2駆動手段から駆動対象に駆動力を伝達する動力伝達機構を、比較的簡素な構成にすることができる。
【0026】
第10の発明の繊維機械は、ボビンから解舒される糸をそれぞれ巻取管に巻取る複数の糸巻取装置と、これら複数の糸巻取装置を制御する制御手段とを備え、
前記糸巻取装置は、糸が解舒されるボビンを保持するとともにボビンを排出するボビン保持排出機構と、前記ボビン保持排出機構を駆動する第1駆動手段と、を有する給糸部と、複数のボビンを収容するマガジンを含み、前記マガジンに収容された複数のボビンのうちの1つを前記給糸部に供給する供給機構と、前記供給機構を駆動する第2駆動手段と、を有するボビン供給部と、前記ボビン保持排出機構に保持されたボビンから解舒された糸を前記巻取管に巻取る巻取部とを有し、
前記制御手段は、各々の前記糸巻取装置の前記第1駆動手段と前記第2駆動手段を独立して制御することを特徴とするものである。
【0027】
この構成によれば、各々の糸巻取装置の給糸部における第1駆動手段によるボビン保持排出機構の駆動と、ボビン供給部における第2駆動手段による供給機構の駆動が、複数の糸巻取装置を制御する制御手段によって独立、且つ、集中して制御される。つまり、給糸部におけるボビン保持動作及びボビン排出動作と、ボビン供給部におけるボビン供給動作とを、それぞれ独立して行うことができる。従って、糸巻取装置の動作状況に応じて、給糸部とボビン供給部の動作をそれぞれ最適化することで、糸巻取作業の効率を高めて生産性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、ボビンから解舒された糸を巻取管に巻き返して巻取パッケージを形成する、自動ワインダに本発明を適用した一例である。
【0029】
図1は、自動ワインダの概略構成図、図2は、自動ワインダの1つの巻取ユニットの概略側面図、図3は、図2の巻取ユニットの下部構造を拡大した図である。図1、図2に示すように、自動ワインダ100(繊維機械)は、一方向(図2の紙面垂直方向)に列設された複数錘の巻取ユニット1(糸巻取装置)を備えている。また、自動ワインダ100は、巻取ユニット1の列設方向に沿って往復移動可能な玉揚装置3を有する。この玉揚装置3は、複数の巻取ユニット1で形成された満巻状態の巻取パッケージ6を巻取ユニット1から取り外すとともに、空の巻取管7を巻取ユニット1に装着するものである。
【0030】
図2に示すように、各々の巻取ユニット1は、筒状のボビン3を保持する給糸部10と、この給糸部10にボビン3を供給するボビン供給部11と、ボビン3から解舒された糸Yを巻取管7に巻取る巻取部12とを有し、所定長で所定形状の巻取パッケージ6を形成するものである。
【0031】
尚、以下の説明において、「ボビン」とは、所定量の糸が巻かれた「実ボビン」、糸が少しだけ残っている「残糸ボビン」、及び、糸のない「空ボビン」を含むが、特に説明が必要である場合を除き、全て「ボビン」と総称することとする。また、1つの巻取ユニット1に対して、重量、長さ等の等しい同種類のボビン3が基本的に用いられるが、状況に応じてボビン3の種類が切り換えられてもよい。
【0032】
給糸部10とボビン供給部11については、後ほど詳細に説明するものとし、ここでは、説明を省略する。また、給糸部10と巻取部12との間の糸走行経路には、給糸部10側から順に、解舒補助装置13、テンション付与装置14、糸継装置15、クリアラー16、ワキシング装置17が配設されている。また、給糸部10、ボビン供給部11、解舒補助装置13、テンション付与装置14、糸継装置15、クリアラー16、ワキシング装置17、及び、巻取部12は、巻取ユニット1の機台2にそれぞれ取り付けられている。
【0033】
解舒補助装置13は、ボビン3に被さる筒体13aを、ボビン3の糸Yの解舒とともに下降させることにより、バルーン抵抗を低減し、ボビン3からの糸Yの解舒を補助するように構成されている。より具体的には、筒体13aの内側には、ボビン3の糸Yを検出する、糸検出センサ13bが設けられており、ボビン3から糸Yが解舒されていくにつれてボビン3上部の糸がなくなっていき、糸検出センサ13bによりボビン3の糸Yが検出されなくなると、解舒補助装置13は、糸Yが検出される位置まで筒体13aを下降させるようになっている。糸検出センサ13bとしては、例えば、発光素子と受光素子を有する光学式センサを使用できる。
【0034】
テンション付与装置14は、走行する糸Yに所定のテンションを付与するためのものである。このテンション付与装置14としては、例えば、固定櫛歯とこの固定櫛歯に対して移動可能に配設された可動櫛歯とを有する、ゲート式のものを使用できる。
【0035】
糸継装置15は、クリアラー16が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン3からの糸解舒中の糸切れ時に、給糸側の糸(下糸)と、巻取側の糸(上糸)とを糸継ぎするものである。この糸継装置15としては、例えば、上糸端と下糸端のそれぞれの撚り戻しを行う解撚ノズルと、解撚された両糸端に旋回空気流を作用させて撚り合わせを行う撚り掛けノズルとを有する、いわゆる、エア式の糸継装置15(エアスプライサー)を使用できる。
【0036】
クリアラー16はスラブ等の糸欠陥を検出するためのものであって、糸欠陥検出時の糸切断用のカッターが付設されている。また、ワキシング装置17は、糸Yにワックスを塗布するためのものである。
【0037】
糸継装置15の上下には、ボビン3側の下糸を吸引捕捉して糸継装置15へ案内する下糸捕捉案内部材18と、巻取パッケージ6側の上糸を吸引捕捉して糸継装置15へ案内する上糸捕捉案内部材19が設けられている。上糸捕捉案内部材19はパイプ状に構成されており、軸19aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部にマウス19bが設けられている。同様に下糸捕捉案内部材18もパイプ状に構成されており、軸18aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部には吸引口18bが設けられている。さらに、上糸捕捉案内部材19及び下糸捕捉案内部材18には適宜の負圧源が接続されており、それらの先端のマウス19b及び吸引口18bから空気を吸引して糸端を捕捉することができるようになっている。
【0038】
巻取部12は、巻取管7を回転自在かつ着脱可能に支持する1対のクレードルアームを有するクレードル20と、クレードル20に支持された巻取管7の表面、又は、巻取管7に形成された巻取パッケージ6の表面に接触可能な綾振ドラム21を備えている。そして、巻取部12は、綾振ドラム21が巻取管7(又は、パッケージ表面)に接触した状態で、図示しないドラム駆動モータにより綾振ドラム21を回転駆動することで、糸Yを綾振りしながら巻取管7を従動回転(連れ回り)させて、巻取管7の外周に巻取パッケージ6を形成するように構成されている。
【0039】
次に、給糸部10について詳細に説明する。図2、図3に示すように、給糸部10は、機台2の下部に着脱可能に設けられた給糸部フレーム30と、この給糸部フレーム30に設けられ、糸Yが解舒されるボビン3(実ボビン)を保持するとともに、不要なボビン3(空ボビン、又は、欠陥のある糸が残った残糸ボビン)を排出するボビン保持排出機構31と、同じく給糸部フレーム30に設けられて、ボビン保持排出機構31を駆動する第1駆動モータ32(第1駆動手段)とを備えている。
【0040】
ボビン保持排出機構31は、筒状のボビン3に挿入されることによってボビン3を保持するボビン保持ペッグ33(ボビン保持部)と、ボビン保持ペッグ33に保持されているボビン3を給糸部10の外に排出する跳ね板34とを含んでいる。
【0041】
図4は、給糸部10の斜視図である。また、図5はボビンが供給される時の給糸部10を示している。また、図6はボビン保持ペッグ33によりボビン3を保持している状態の給糸部10を示している。さらに、図7はボビンを排出する時の給糸部10を示している。
【0042】
ボビン保持ペッグ33は、突片状の第1保持片33aと、この第1保持片33aよりも長さが短い突片形状を有し、且つ、第1保持片33aに連結された第2保持片33bとを備えている。第1保持片33aは、その基部35において、給糸部フレーム30に回転自在に支持された軸42の端部に、この軸42に対して相対回動可能に装着されている。また、第2保持片33bは軸42に連結されており、この軸42と一体的に給糸部フレーム30に対して回動可能となっている。さらに、第1保持片33aは、図示しないバネによって、第2保持片33bと側面視で重なるように(図5、図7に示す状態)付勢されている。つまり、軸42が回転することによって、この軸42に連結された第2保持片33bと、バネで付勢されている第1保持片33aとが、互いに重なった状態で給糸部フレーム30に対して一体的に回動可能となっている。
【0043】
但し、第1保持片33aは、直立した状態(図6参照)においては、それ以上の図中左方への回動が、図示しないストッパーにより規制される。一方、短い第2保持片33bは、第1保持片33aとは異なり、直立状態から左方への回動は規制されず、第1保持片33aよりもさらに左方へ傾くように回動することが可能となっている。つまり、両保持片33a,33bは、図5,図7に示すような重なって閉じた状態と、図6に示すような開いた状態の2つの状態を取り得る。
【0044】
また、第2保持片33bは、軸42に固定された揺動片44を介して水平に延びる連結ロッド36に連結され、この連結ロッド36は、給糸部フレーム30に揺動可能に設けられた揺動片37の一端(遊動端)に連結されている。揺動片37は、プーリ38とベルト39を介して、給糸部フレーム30に固定された第1駆動モータ32の出力軸に連結されている。
【0045】
図4に示すように、跳ね板34は、ボビン保持ペッグ33の第1保持片33a及び第2保持片33bを、図3の紙面垂直方向両側から挟むように配設されている。この跳ね板34は、軸40を介して給糸部フレーム30に回動可能に取り付けられており、跳ね板34は、水平な待機位置(図6)と、この待機位置から図中時計回りの方向(右方)に回動した位置であるボビン受け位置(図5)と、ボビン受け位置よりもさらに右方に回動した位置である跳ね上げ位置(図7)にわたって、回動可能に構成されている。また、跳ね板34の回動軸である軸40には揺動片41が固定され、この揺動片41は、連結ロッド45を介して揺動片44に連結されている。
【0046】
第1駆動モータ32は、ステッピングモータからなり、後述するユニット制御装置80からのパルス信号によって制御される。この第1駆動モータ32は、ボビン保持排出機構31の、ボビン保持ペッグ33と跳ね板34の両方を駆動する。
【0047】
即ち、第1駆動モータ32の回転駆動力は、揺動片37を介して連結ロッド36に伝達され、連結ロッド36が水平方向に移動することにより、ボビン保持ペッグ33の第2保持片33bが回動駆動される。また、このように第2保持片33bが回動駆動されたときには、この第2保持片33bに連結された第1保持片33aは、第2保持片33bと重なった状態で一体的に回動する。
【0048】
但し、前述したように、第1保持片33aが直立している状態(図6の状態)でさらに連結ロッド36が左方へ移動したときに、第1保持片33aは、図示しないストッパーによって、それ以上の左方への回動が規制されるため、第2保持片33bのみが左方へ回動することになる。その結果、両把持片33a,33bが開くことになり、第1、第2保持片33a,33bが筒状のボビン3に挿入されている状態(図3、図6参照)でボビン内面に密着することから、ボビン保持ペッグ33からボビン3が抜けるのが防止される。
【0049】
また、ボビン保持ペッグ33は、ボビン供給部11からのボビン3の供給時、糸解舒中のボビン3の保持時、及び、不要となったボビン3の排出時に、それぞれ、異なる3つの位置を取り得るように構成されている。即ち、ボビン保持ペッグ33は、鉛直方向に対してやや右方へ傾いたボビン供給位置(図5)と、ほぼ直立状態で両把持片33a,33bが開いたボビン保持位置(図6)と、図5のボビン供給位置よりもさらに右方へ傾いたボビン排出位置(図7)の3つの位置にわたって回動可能である。
【0050】
さらに、第1駆動モータ32によって連結ロッド36が水平方向に駆動され、ボビン保持ペッグ33が回動するときには、第1駆動モータ32の駆動力が連結ロッド45と揺動片41を介して跳ね板34にも伝達され、跳ね板34が回動駆動される。
【0051】
図6に示すように、ボビン保持ペッグ33が、ほぼ直立状態のボビン保持位置にあるときには、跳ね板34は水平な待機位置にあり、跳ね板34の上面に、ボビン保持ペッグ33に保持されたボビン3の下端が当接している。この状態から、図7に示すように、跳ね板34が図中の時計回りの方向(右方)に回動すると、ボビン保持ペッグ33も時計回りの方向に回動しつつ、第1、第2保持片33bが閉じることになり、ボビン3の抜け止め状態が解除される。さらに、跳ね板34が跳ね上げ位置まで回動すると、ボビン3は、跳ね板34により図中右方へ跳ね上げられつつ、ボビン保持ペッグ33から抜けることになり、ボビン3が給糸部10の外(右方)へ排出される。
【0052】
尚、給糸部10を構成するボビン保持ペッグ33、跳ね板34、第1駆動モータ32等は、全て、機台2に着脱可能な給糸部フレーム30に取り付けられている。つまり、給糸部10が機台2に着脱可能に設けられている。そのため、交換や修理等のために給糸部10を機台2から取り外すことが可能である。尚、供給部フレーム30は、例えば、ネジ止めによって機台2に着脱可能な構成とすることができる。
【0053】
次に、ボビン供給部11について説明する。図2、図3に示すように、ボビン供給部11は、ボビン3を給糸部10に供給する供給機構51と、この供給機構51を駆動する第2駆動モータ52(第2駆動手段)とを備えている。
【0054】
供給機構51は、複数のボビン3を収容するマガジン53と、このマガジン53の下方に配置され、マガジン53に収容された複数の実ボビン3のうちの1つを給糸部10へ向けて案内しながら落下させるガイドシュート54を有する。また、機台2には供給部フレーム50が、例えばネジ止めによって、着脱可能に設けられており、マガジン53とガイドシュート54は、給糸部10のボビン保持ペッグ33に向くように鉛直方向に対してやや傾いた姿勢で、それぞれ供給部フレーム50に取り付けられている。
【0055】
マガジン53は、供給部フレーム50に支持された回転軸55を中心に回転可能である。また、このマガジン53の内部には、それぞれ実ボビン3が収容される複数のボビン収容スペース56が周方向に配置されている。マガジン53の下側には、複数のボビン収容スペース56にそれぞれ収容された複数のボビン3を受けるボビン受け板57が設けられている。尚、このボビン受け板57には切欠部(図示省略)が形成されており、マガジン53が回動して、あるボビン3が切欠部の上方に位置したときに、そのボビン3が、切欠部を介して、ガイドシュート54、ひいては、給糸部10へ落下するように構成されている。
【0056】
マガジン53の下部には、回転軸55に外装された筒部材58が固定されており、この筒部材58の外周面には爪車59が固定されている。つまり、爪車59とマガジン53は一体的に回転するようになっている。図8は、爪車59の周辺部をその回転軸方向から見た図である。図8に示すように、爪車59の外側には、爪車59に係合してその回転を規制するストップラッチ74と、回転自在なローラ75とが設けられ、ストップラッチ74とローラ75は連結部材76で連結されている。さらに、筒部材58にはピン60aを有する旋回板60が、筒部材58に対して旋回可能に設けられている。この旋回板60には、ピン60aと爪部60bとが設けられている。そして、後述する第2駆動モータ52の駆動力が旋回板60に伝達されて、旋回板60が旋回動作をしたときには、旋回板60のピン60aがローラ75を押し出すことにより、ローラ75に連結されたストップラッチ74が爪車59から外れて、爪車59の回転規制が解除される。さらに、旋回板60の爪部60bが爪車59を1ピッチ回動させることにより、マガジン53が回動する。
【0057】
ガイドシュート54は、供給部フレーム50に固定された1対の第1ガイド板61と、この第1ガイド板61に対して回動可能な1対の第2ガイド板62、及び、1対の第3ガイド板63とを備えている。但し、紙面奥側に位置するガイド板61,62,63の図示は省略されている。
【0058】
図3に示すように、第1ガイド板61と第2ガイド板62は、ロッド64を介して連結されており、第2ガイド板62は、第1ガイド板61に対して、ロッド64を中心に紙面手前側(外側)及び紙面奥側(内側)に回動可能である。また、ロッド64は、レバー66を介して軸部材67に連結されている。さらに、軸部材67は、プーリ68とベルト69を介して、供給部フレーム50に固定された第2駆動モータ52の出力軸に連結されている。また、軸部材67にはL字形のレバー70の一端が固定されており、このレバー70の他端は、連結部材73を介して、前述のマガジン53に設けられた旋回板60に連結されている。そして、軸部材67が回転したときには、レバー70が軸部材67を中心に上下に揺動し、さらに、連結部材73が旋回板60と平行な平面に沿って回動する。この連結部材73の回動によって、旋回板60が旋回する。
【0059】
第3ガイド板63は、第1ガイド板61及び第2ガイド板62よりも外側(紙面手前側)に配置され、軸71を介して第1ガイド板61に回動可能に連結されている。また、第3ガイド板63は、軸71に設けられたねじりバネ72により内側(紙面奥側:閉止方向)に付勢され、第2ガイド板62に押し付けられている。
【0060】
第2駆動モータ52は、ステッピングモータからなり、後述するユニット制御装置80からのパルス信号によって制御される。この第2駆動モータ52は、供給機構51における、マガジン53とガイドシュート54の両方を駆動する。
【0061】
即ち、この第2駆動モータ52の回転駆動力は、まず、ベルト69とプーリ68を介して軸部材67に伝達される。そして、この軸部材67の回転は、レバー70を介して旋回板60に伝達され、旋回板60のピン60aが爪車59のローラ75を押し出すことで、ストップラッチ74による爪車59の回転規制が解除される。さらに、旋回板60の爪部60bが爪車59を1ピッチ回動させる。すると、爪車59と一体回転するマガジン53も回動することになり、マガジン53が回動することでボビン収容スペース56が周方向に1つ分ずれる。このとき、ボビン受け板57の切欠部の上方に位置することとなったボビン3のみが、切欠部から下方に落下する。
【0062】
一方、ガイドシュート54においては、マガジン53からボビン3が供給されないときには、1対の第2ガイド板62と1対の第3ガイド板63が第1ガイド板61に対して外側に回動した(開いた)状態となっている。これは、本来のボビン3の供給時以外に、マガジン53から誤って落下したボビン3がガイドシュート54を介して給糸部10に達するのを防止するとともに、ボビン3からの糸Yの解舒中に、糸Yのバルーンに接触しないように、1対の第2ガイド板62と1対の第3ガイド板63を退避させるためである。
【0063】
この状態から、第2駆動モータ52により軸部材67が回転駆動されると、その回転はレバー66とロッド64を介して第2ガイド板62にも伝達され、第2ガイド板62が、第1ガイド板61に対して内側(閉止方向)に回動する。また、この第2ガイド板62の回動に伴って、第2ガイド板62にねじりバネ72によって押し付けられている第3ガイド板63も第1ガイド板61に対して内側に回動する。そして、1対の第2ガイド板62と1対の第3ガイド板63が、それぞれ第1ガイド板61に対して開いた状態から内側に回動することにより、マガジン3から給糸部10へ向かうボビン3の供給通路が形成される。これにより、マガジン53から落下したボビン3が、ガイド板61,62,63により給糸部10へ案内される。
【0064】
尚、ボビン供給部11を構成するマガジン53、ガイドシュート54、第2駆動モータ52等は、全て、機台2に着脱可能な供給部フレーム50に取り付けられている。つまり、ボビン供給部11は、機台2に対して着脱可能に設けられている。従って、交換や修理等のためにボビン供給部11を機台2から取り外すことが可能である。尚、供給部フレーム50は、例えば、ネジ止めによって機台2に着脱可能な構成とすることができる。
【0065】
次に、巻取ユニット1の糸巻取動作を制御するユニット制御装置80(制御手段)について説明する。ユニット制御装置80は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read-Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM(Random Access Memory)等で構成されている。このユニット制御装置80は、自動ワインダ100の全体動作の制御を司る制御装置101からの指令を受けて、給糸部10、ボビン供給部11、解舒補助装置13、糸継装置15、巻取部12等、巻取ユニット1を構成する各部の動作を制御する。
【0066】
特に、本実施形態においては、給糸部10とボビン供給部11の制御に関して、ユニット制御装置80は、給糸部10のボビン保持排出機構31を駆動する第1駆動モータ32と、ボビン供給部11の供給機構51を駆動する第2駆動モータ52に対して、それぞれ独立してパルス制御信号を出力し、独立して制御するように構成されている。以下、このユニット制御装置80により独立制御される、給糸部10とボビン供給部11の動作について説明する。
【0067】
まず、ユニット制御装置80は、給糸部10において、第1駆動モータ32によりボビン保持排出機構31を駆動して、図5に示すように、ボビン保持ペッグ33を、ボビン供給部11に向くように傾斜したボビン供給位置まで回動させる。このとき、ボビン保持ペッグ33の回動動作と連動して、跳ね板34も水平方向に対してやや傾斜した、ボビン受け位置まで回動する。
【0068】
その一方で、ユニット制御装置80は、ボビン供給部11において、第2駆動モータ52により供給機構51を駆動する。即ち、マガジン53を回動させて1つの実ボビン3を落下させるとともに、ガイドシュート54の第2ガイド板62と第3ガイド板63を第1ガイド板61に対して内側に回動させて、マガジン53から給糸部10へ向かうボビン3の供給通路を形成させる。すると、マガジン53から落下したボビン3は、ガイドシュート54によりボビン保持ペッグ33まで案内され、このボビン3にボビン保持ペッグ33の第1保持片33a及び第2保持片33bが挿入される。同時に、ボビン3の下端面が跳ね板34に当接する。尚、ボビン保持ペッグ33によるボビン3の保持が完了した後(ボビン3にボビン保持ペッグ33に挿入された後)では、第2駆動モータ52により第2ガイド板62及び第3ガイド板63を外側に回動させ、ガイドシュート54を開放状態に戻しておく。
【0069】
次に、第1駆動モータ32により、図6に示すように、ボビン3に挿入された状態のボビン保持ペッグ33を、ほぼ直立状態となるボビン保持位置まで、反時計回りの方向に回動させる。このとき、第2保持片33bは、図示しないストッパーによって回動規制される第1保持片33aよりもさらに左方の位置まで回動するため、両把持片33a,33bが開いてボビン内面に密着する。同時に、跳ね板34が水平な待機位置に位置することになり、ボビン3の下端面が跳ね板34に当接して、ボビン3は直立状態となる。これにより、ボビン3は、直立状態、且つ、抜け止め状態で、ボビン保持ペッグ33に保持されることになる。
【0070】
ボビン3が直立状態で保持されると、ユニット制御装置80は巻取ユニット1の各部を制御して、糸巻取動作を開始させる。即ち、解舒補助装置13の筒体13aをボビン3に覆い被さるように下降させて、解舒補助装置13によりボビン3からの糸Yの解舒を補助しつつ、解舒された糸Yを巻取部12において巻取管7に巻取っていく。
【0071】
そして、ボビン3の糸Yが全て巻取られた場合、あるいは、クリアラー16で頻繁に糸欠陥が頻繁に検出されるために、ボビン3の糸品質が悪いと判断された場合には、第1駆動モータ32によりボビン保持排出機構31を駆動して、不要なボビン3(空ボビン又は不良(残糸)ボビン)を排出する。即ち、第1駆動モータ32により、跳ね板34を、図6の水平な待機位置から図7の跳ね上げ位置まで時計回りの方向に回動させる。同時に、ボビン保持ペッグ33も時計回りの方向に回動するが、このとき、第1保持片33aのストッパーによる係止が解除されることから、図示しないバネの付勢力により第1保持片33aと第2保持片33bは閉じることになり、ボビン3の抜け止め状態が解除される。従って、跳ね板34が跳ね上げ位置まで回動することにより、ボビン3がボビン保持ペッグ33から抜けるとともに、跳ね板34により跳ね上げられ、図7の右方へ排出される。
【0072】
以上のように、本実施形態の巻取ユニット1においては、例えば、ボビン供給部11から給糸部10へボビン3を供給するときのように、ボビン供給部11による給糸部10へのボビン供給動作(マガジン53の回動やガイドシュート54の開放)と、給糸部10におけるボビン保持動作(ボビン保持ペッグ33の回動動作)とを、協働して行わせることが可能である。その一方で、給糸部10の第1駆動モータ32とボビン供給部11の第2駆動モータ52は、ユニット制御装置80により独立して制御されることから、状況に応じて、給糸部10におけるボビン3の保持及び排出動作と、ボビン供給部11におけるボビン供給動作とを、それぞれ独立して行わせることが可能となる。
【0073】
例えば、ボビン供給部11を動作させずに給糸部10からボビン3を取り外すことが可能となる。この場合、メンテナンス等のために給糸部10からボビン3を取り外しても、別のボビン3がマガジン53から給糸部10に供給されてくることがない。これにより、ボビン3が取り外された状態で給糸部10のメンテナンスを行うことができ、メンテナンス作業が容易になる。
【0074】
さらに、ユニット制御装置80は、ボビン供給部11によるボビン供給動作と関係なく、第1駆動モータ32によりボビン保持排出機構31を駆動して、以下の(1),(2)のように、ボビン3の保持動作、及び、ボビン3の排出動作を最適に制御するように構成されている。
【0075】
(1)ユニット制御装置80は、ボビン供給部11によるボビン供給動作とは関係なく、ボビン3の種類に応じて、第1駆動モータ32によるボビン保持ペッグ33の回動動作を制御する。
【0076】
マガジン53からのボビン落下速度は、ボビン3の種類(重さ等)によって変化する。ボビン供給部11によるボビン供給時には、実ボビン3は、マガジン53に糸端を保持されて糸が解舒されつつ、さらに、ガイドシュート54と接触しながら、給糸部11へ向けて落下する。従って、ボビン3の重量が小さいほど、糸の解舒抵抗やガイドシュート54との接触抵抗は、ボビン3の落下速度に及ぼす影響が大きくなり、落下速度は低下する。
【0077】
ところが、給糸部10とボビン供給部11の動作が互いに連動する従来構成においては、ボビン3の種類(重さ等)によってマガジン53からのボビン落下速度が異なるときでも、ボビン保持ペッグ33が、図5のボビン供給位置に到達するタイミングを変えることができない。そのため、重量の大きいボビン3が落下したときに、ボビン保持ペッグ33がボビン保持位置まで到達しておらず、保持失敗(ペッグ33の挿入失敗)となるケースがあった。
【0078】
そこで、ユニット制御装置80は、使用されるボビン3の種類(重量等)に応じて、ボビン供給位置まで回動する際の、ボビン保持ペッグ33の回動速度を制御する。具体的には、ボビン3の重量が大きい場合には、ボビン3の落下速度が速くなるため、ボビン保持ペッグ33の回動速度を大きくして、ボビン保持ペッグ33が迅速にボビン供給位置(図5の位置)に到達するようにする。逆に、ボビン3の重量が小さい場合には、ボビン3の落下速度は遅いため、ボビン保持ペッグ33の回動速度を小さくする。
【0079】
あるいは、ユニット制御装置80が、ボビン保持ペッグ33の回動速度は変えずに、ボビン保持ペッグ33がボビン供給位置に向けて回動しはじめるタイミング(回動しはじめるまでの待機時間)を、ボビン3の種類(重量等)に応じて、変えるように構成されていてもよい。
【0080】
また、ボビン3が長い場合には、図5のボビン供給位置から図6のボビン保持位置までボビン保持ペッグ33を回動させる際に、ボビン保持ペッグ33に保持されているボビン3の姿勢が不安定になり、回動中に、ボビン3がボビン保持ペッグ33から抜け落ちてしまう虞がある。そこで、ユニット制御装置80は、ボビン3の種類(長さ等)に応じて、ボビン3を保持した状態のボビン保持ペッグ33の回動速度(即ち、回動中のボビン3の姿勢)を制御する。
【0081】
具体的には、ボビン3が長い場合には、ボビン保持ペッグ33の回動速度を小さくして、回動中のボビン3の姿勢を安定させる。一方、ボビン3が短い場合には、ボビン保持ペッグ33の回動速度を大きくして、迅速にボビン保持位置まで回動させることにより、糸巻取動作を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0082】
さらに、ユニット制御装置80は、糸巻取装置を構成する他の装置の動作状態に応じて、ボビン3の姿勢を制御することも可能である。
【0083】
例えば、本実施形態の糸巻取装置は、ボビン3からの糸Yの解舒を補助する解舒補助装置13を備えている。前述したように、この解舒補助装置13は、糸検出センサ13bによりボビン3の糸Yが検出されなくなると、糸Yが検出される位置まで筒体13aを下降させるように構成されている。
【0084】
しかし、図9に示すように、ボビン保持ペッグ33によるボビン3の保持が不十分で、ボビン3が直立状態からある角度傾いた状態で保持されている場合に、筒体13aに設けられた糸検出センサ13bがONとなり、糸検出センサ13bによってボビン3自体が検出されてしまうことがある。この場合には、ボビン3から糸Yが解舒されて、本来は筒体13aが下降しなくてはならない状態であるにもかかわらず、糸検出センサ13bによって、現在の筒体13aの位置でも糸Yがまだ存在すると誤った検出がなされてしまい、筒体13aが下降しなくなってしまう。このような状態が続くと、ボビン3からの糸Yの解舒が安定して行われなくなり、解舒された糸Yのテンションがばらついて、巻取パッケージ6の品質が低下するといった不具合が生じる。
【0085】
そこで、筒体13aが、糸検出センサ13が糸Yを検出することのない、ボビン3の直上の初期位置(下降開始直前の位置)にあるときに、糸検出センサ13が既にONとなっている場合、あるいは、筒体13aの下降開始後において、所定時間以上糸検出センサ13がONの状態が続いた場合には、ユニット制御装置80は、ボビン保持ペッグ33によるボビン3の保持が正常でないために、解舒補助装置13が正常に動作していないと判断して、ボビン保持ペッグ33に保持されたボビン3の姿勢を制御する。即ち、第1駆動モータ32によりボビン保持ペッグ33の第2保持片33bを回動駆動して、第1保持片33aと第2保持片33bを閉じてボビン3の保持状態を一旦解除し、その後、再び、両把持片33a,33bを開くことにより、ボビン3の保持をやり直し、ボビン3の姿勢を正常な姿勢(直立姿勢)にする。尚、ボビン3の長さが変わっても、糸Yの解舒開始直前にボビン3の姿勢が正常であるか否かを正しく検知できるように、ユニット制御装置80が、筒体13aの初期位置(下降開始直前位置)を、ボビン3の長さに応じて変更するように構成されていてもよい。
【0086】
(2)ユニット制御装置80は、ボビン供給部11によるボビン供給動作とは関係なく、ボビン3の種類に応じて、第1駆動モータ32による跳ね板34のボビン排出動作を制御する。
【0087】
跳ね板34の回動速度が不変であると、排出されたボビン3の着地位置は、ボビン3の種類(長さ等)によって異なってしまう。このようにボビン3の着地位置が異なってしまうと、排出されたボビン3を回収する装置(例えば、搬送コンベヤ等)によりボビン3を回収することが困難になる。そこで、ユニット制御装置80は、ボビン3の種類(長さ等)に応じて、跳ね板34の回動速度を制御する。
【0088】
具体的には、ボビン3が短い場合には、跳ね板34の回動速度を大きくして、所定の着地位置までボビン3が到達するようにする。一方、ボビン3が長い場合には、跳ね板34の回動速度を小さくして、所定の着地位置を越えてボビン3が着地してしまうのを防止する。
【0089】
以上のように、本実施形態の糸巻取装置においては、給糸部10の第1駆動モータ32とボビン供給部11の第2駆動モータ52が、ユニット制御装置80により独立して制御される。そのため、巻取ユニット1の動作状況に応じて、給糸部10とボビン供給部11の動作をそれぞれ最適化することで、ボビン交換失敗(ボビン3の保持失敗やボビン3の排出失敗)の頻度を減らし、糸巻取作業の効率を高めて生産性を向上させることが可能となる。
【0090】
また、ボビン供給部11を動作させずに給糸部10からボビン3を取り外すことが可能となる。つまり、メンテナンス等のために給糸部10からボビン3を取り外しても、別のボビン3がマガジン53から給糸部10に供給されてくることがない。これにより、ボビン3が取り外された状態で給糸部10のメンテナンスを簡単に行うことができ、メンテナンス作業が容易になる。
【0091】
また、給糸部10とボビン供給部11がそれぞれ機台2に着脱可能に設けられていることから、それぞれ別個に機台2から取り外すことができるため、必要に応じてそれぞれを交換、あるいは、修理することができる。尚、給糸部10(給糸部フレーム30)と、ボビン供給部11(供給部フレーム50)の両方が、機台に着脱可能に取り付けられる必要は必ずしもなく、何れか一方のみが着脱可能であってもよい。
【0092】
さらに、給糸部10のボビン保持排出機構31を駆動する駆動手段と、ボビン供給部11の供給機構51を駆動する駆動手段が、それぞれステッピングモータで構成されているため、給糸部10のボビン3の保持・排出動作と、ボビン供給部11のボビン供給動作を、ステッピングモータのパルス制御により容易に制御することができる。
【0093】
尚、給糸部10のボビン保持排出機構31を駆動する駆動手段と、ボビン供給部11の供給機構51を駆動する駆動手段の一方、又は、両方を、エアシリンダ等の流体圧シリンダで構成することも可能である。
【0094】
図10に、第1、第2駆動手段としてエアシリンダが用いられた給糸部10A及びボビン供給部11Aの一例を示す。この図10においては、給糸部フレーム30に、第1駆動手段としての第1エアシリンダ32Aが固定されており、この第1エアシリンダ32Aのロッド先端は揺動片90に連結されている。この揺動片90の揺動軸は、連結ロッド36に連結された揺動片37の揺動軸と共通である。従って、第1エアシリンダ32Aにより揺動片90が揺動駆動されることにより、揺動片37を介して連結ロッド36,45に駆動力が伝達され、ボビン保持ペッグ33と跳ね板34がそれぞれ回動駆動される。
【0095】
また、供給部フレーム50には、第2駆動手段としての第2エアシリンダ52Aが固定されており、この第2エアシリンダ52Aのロッド先端は揺動片91に連結されている。この揺動片91は軸部材67に連結されている。従って、第2エアシリンダ52Aにより揺動片91が揺動駆動されることにより、軸部材67が回転駆動されることで、マガジン53とガイドシュート54がそれぞれ駆動される。
【0096】
このように、駆動手段としてエアシリンダを採用すれば、モータを採用した場合と比較して、図3のプーリ38,68やベルト39,69等を省略できる。また、特に、給糸部10Aにおいては、エアシリンダ32Aの往復直線運動を揺動運動に変換する揺動片90や、その揺動運動を連結ロッド36の往復直線運動に変換する揺動片37を省略し、エアシリンダ32Aによって給糸部10Aの連結ロッド36を直接水平方向に駆動することも可能である。このように、駆動手段の駆動力を、ボビン保持ペッグ33やマガジン53等の駆動対象に伝達する動力伝達機構を、比較的簡素な構成にすることが可能となる。
【0097】
給糸部10において、ボビン保持ペッグ33と跳ね板34とが、別個の駆動手段によりそれぞれ独立して駆動されるように構成されていてもよい。また、ボビン供給部において、マガジン53とガイドシュート54とが、別個の駆動手段によりそれぞれ独立して駆動されるように構成されていてもよい。
【0098】
また、前記実施形態においては、図3に示すように、巻取ユニット1のユニット制御装置80が、給糸部10の第1駆動手段(第1駆動モータ32)と、ボビン供給部11の第2駆動手段(第2駆動モータ52)とを独立して制御するように構成されているが、第1、第2駆動手段を制御する制御手段が、巻取ユニット外に設けられていてもよい。例えば、図1に示す、複数の巻取ユニット1を備えた自動ワインダ100(繊維機械)全体の制御を司る制御装置101が、各々の巻取ユニット1の第1、第2駆動手段を独立、且つ、集中して制御するように構成されていてもよい。このような構成の場合、例えば、制御装置101の図示しない操作手段により、複数の巻取ユニットを自動ワインダ100の本体側で容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施形態に係る自動ワインダの概略構成図である。
【図2】巻取ユニットの概略側面図である。
【図3】図1の巻取ユニットの下部構造(給糸部及びボビン供給部)の拡大図である。
【図4】給糸部の斜視図である。
【図5】ボビン供給時の給糸部を示す図である。
【図6】ボビン保持状態の給糸部を示す図である。
【図7】ボビン排出時の給糸部を示す図である。
【図8】爪車の周辺部を回転軸方向から見た図である。
【図9】ボビンが傾いているときの解除補助装置の作用を説明する図である。
【図10】駆動手段としてエアシリンダが用いられた給糸部及びボビン供給部の拡大図である。
【符号の説明】
【0100】
1 巻取ユニット(糸巻取装置)
2 機台
3 ボビン
10,10A 給糸部
11,11A ボビン供給部
13 解舒補助装置
30 給糸部フレーム
31 ボビン保持排出機構
32 第1駆動モータ
32A 第1エアシリンダ
33 ボビン保持ペッグ
34 跳ね板
51 供給機構
52 第2駆動モータ
52A 第2エアシリンダ
53 マガジン
80 ユニット制御装置(制御手段)
100 繊維機械
101 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸が解舒されるボビンを保持するとともにボビンを排出するボビン保持排出機構と、前記ボビン保持排出機構を駆動する第1駆動手段と、を有する給糸部と、
複数のボビンを収容するマガジンを含み、前記マガジンに収容された複数のボビンのうちの1つを前記給糸部に供給する供給機構と、前記供給機構を駆動する第2駆動手段と、を有するボビン供給部と、
前記ボビン保持排出機構に保持されたボビンから解舒された糸を巻取管に巻取る巻取部と、
前記第1駆動手段と前記第2駆動手段とを独立して制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ボビン供給部による前記ボビンの供給動作に関係なく、前記第1駆動手段により前記ボビン保持排出機構を駆動して、その前記ボビンの保持動作及び前記ボビンの排出動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記ボビン保持排出機構は、フレームに回動可能に設けられたボビン保持部を有し、
前記制御手段は、前記ボビン供給部による前記ボビンの供給動作に関係なく、前記第1駆動手段により駆動される前記ボビン保持部の回動動作を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ボビンの種類に応じて、前記ボビン保持部に保持された前記ボビンの回動中の姿勢を制御することを特徴とする請求項3に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記ボビン保持部に保持されたボビンからの糸の解舒を補助する解舒補助装置をさらに備えており、
前記制御手段は、前記解舒補助装置の動作状態に応じて、前記ボビン保持部に保持された前記ボビンの姿勢を制御することを特徴とする請求項3に記載の糸巻取装置。
【請求項6】
前記ボビン保持排出機構は、前記フレームに回動可能に設けられるとともに、前記ボビン保持部に保持されている前記ボビンを跳ね上げて、給糸部外へ排出する跳ね板をさらに有し、
前記制御手段は、前記ボビン供給部による前記ボビンの供給動作に関係なく、前記第1駆動手段により駆動される前記跳ね板の回動動作を制御することを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の糸巻取装置。
【請求項7】
前記給糸部と前記ボビン供給部の少なくとも一方が、機台に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の糸巻取装置。
【請求項8】
前記第1駆動手段と前記第2駆動手段の少なくとも一方が、ステッピングモータであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の糸巻取装置。
【請求項9】
前記第1駆動手段と前記第2駆動手段の少なくとも一方が、流体圧シリンダであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の糸巻取装置。
【請求項10】
ボビンから解舒される糸をそれぞれ巻取管に巻取る複数の糸巻取装置と、これら複数の糸巻取装置を制御する制御手段とを備え、
前記糸巻取装置は、
糸が解舒されるボビンを保持するとともにボビンを排出するボビン保持排出機構と、前記ボビン保持排出機構を駆動する第1駆動手段と、を有する給糸部と、
複数のボビンを収容するマガジンを含み、前記マガジンに収容された複数のボビンのうちの1つを前記給糸部に供給する供給機構と、前記供給機構を駆動する第2駆動手段と、を有するボビン供給部と、
前記ボビン保持排出機構に保持されたボビンから解舒された糸を前記巻取管に巻取る巻取部とを有し、
前記制御手段は、各々の前記糸巻取装置の前記第1駆動手段と前記第2駆動手段を独立して制御することを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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