糸巻取装置
【課題】レイアウトの自由度を向上させるとともに、糸継装置まで糸を短時間で案内することができる糸巻取装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の自動ワインダは、ボビン支持部7と、糸貯留装置18と、巻取部8と、糸継装置14と、上糸案内部と、を備える。ボビン支持部7は、給糸ボビン21を支持する。糸貯留装置18は、給糸ボビン21から解舒された糸20を貯留する。巻取部8は、糸貯留装置18上に貯留された糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。上糸案内部は、糸貯留装置18から糸を引き出して糸継装置14まで案内する。また、上糸案内部は、糸貯留装置18上の糸20を引き出してボビン支持部7側に吹き飛ばすガイド筒7と、ガイド筒7によって吹き飛ばされた糸20を捕捉して糸継装置14に導入する上糸捕捉部13と、を備える。
【解決手段】本実施形態の自動ワインダは、ボビン支持部7と、糸貯留装置18と、巻取部8と、糸継装置14と、上糸案内部と、を備える。ボビン支持部7は、給糸ボビン21を支持する。糸貯留装置18は、給糸ボビン21から解舒された糸20を貯留する。巻取部8は、糸貯留装置18上に貯留された糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。上糸案内部は、糸貯留装置18から糸を引き出して糸継装置14まで案内する。また、上糸案内部は、糸貯留装置18上の糸20を引き出してボビン支持部7側に吹き飛ばすガイド筒7と、ガイド筒7によって吹き飛ばされた糸20を捕捉して糸継装置14に導入する上糸捕捉部13と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取装置に関する。詳細には、糸継時において糸継装置まで糸を案内するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンに巻かれた紡績糸の欠陥を除去しつつ、巻取パッケージに巻き返す自動ワインダ等の糸巻取装置が知られている。
【0003】
自動ワインダによる糸の巻き返しでは、給糸ボビンから解舒される紡績糸に張力を付与しつつ、この紡績糸を多数の糸ガイドなどを経て綾振装置まで案内し、回転する巻取パッケージの表面に前記綾振装置によって糸を綾振りしながら巻き取る。そして、前記給糸ボビンが空になると、当該空の給糸ボビンを新しい給糸ボビンに交換し、糸継装置による糸継ぎを行い、パッケージへの巻取りを継続するように構成される。
【0004】
糸継装置において糸継ぎを行うためには、パッケージ側の糸と、給糸ボビン側の糸とを、糸継装置まで案内する必要がある。従来は、パイプ状の糸案内部材の先端に吸引流を発生させて糸を吸引捕捉した後、当該糸案内部材を回動させることにより、前記糸を糸継装置まで案内していた。
【0005】
このような従来の自動ワインダの構成を、図19を参照して簡単に説明する。図19に示すのは、従来の自動ワインダが備えるワインダユニット90の概略的な側面図である。このワインダユニット90は、給糸ボビン21の紡績糸20をパッケージ30に巻き返すように構成されている。また、このワインダユニット100は、糸継を行うための糸継装置14と、糸案内パイプ(上糸案内パイプ91、下糸案内パイプ92)を備えている。
【0006】
糸案内パイプ91,92は図略の負圧源に接続されており、上糸案内パイプ91の吸引口91a及び下糸案内パイプ92の吸引口92aには、それぞれ吸引流を発生させることができるように構成されている。また、上糸案内パイプ91は支点91bを中心にして上下に回動することができるように構成されている。同様に、下糸案内パイプ92は支点92bを中心にして上下に回動できるように構成されている。
【0007】
上記のような従来の自動ワインダにおける糸継動作について説明する。即ち、給糸ボビン21が交換される等によりパッケージ30と給糸ボビン21との間の糸の連続状態が切断されると、下糸案内パイプ92の吸引口92aによって給糸ボビン21側の糸端の吸引捕捉が行われる。続いて、上糸案内パイプ91を上方に回動させるとともに、パッケージ30を逆回転させる。これにより、パッケージ30から糸端が引き出されて上糸案内パイプ91の吸引口91aに吸引される。このときの様子を図20に示す。
【0008】
次に、図21に示すように、パッケージ30側の糸(上糸)を吸引保持した状態の上糸案内パイプ91を、下方に回動させる。これにより、パッケージ30側の上糸が糸継装置14に導入される。続いて図22に示すように、給糸ボビン21側の糸(下糸)を吸引保持した状態の下糸案内パイプ92を、上方に回動させる。これにより、給糸ボビン21側の下糸が糸継装置14に導入される。この状態で、糸継装置14を作動させることにより、上糸と下糸との糸継ぎが実行され、パッケージ30と給糸ボビン21との間で糸が連続状態となる。以上のようにして糸継ぎを行うことにより、パッケージ30への糸の巻取りを継続することができる。
【0009】
このように、糸案内部材(糸案内パイプ91,92)を回動させることにより糸端を案内する従来の構成の場合、当該糸案内部材を回動駆動するための機構が必要となり、機構が複雑になるという問題があった。また、機構が複雑であるが故に、レイアウトを自由に設計することが難しかった。また、回動する糸案内部材との干渉を避けるようにして他の構成を配置しなければならないため、この点でもレイアウトが限定されていた。また、糸案内部材を回動駆動して糸端を案内するためには一定の時間が必要となるので、糸継ぎに掛かる時間が長くなっていた。
【0010】
この点、糸を所望の位置まで案内するための構成としては、上記のように糸案内部材を回動駆動する構成以外の構成も提案されている。
【0011】
例えば特許文献1が開示する綾巻きボビン巻成機は、負圧によってパッケージ側の糸を吸い込む吸込みノズルを備えている。この吸込みノズルには縦スリットが形成されており、吸込みノズルによって吸い込まれた糸は前記縦スリットから取り出され、糸把持部材によって糸切れ除去装置(糸継装置)まで案内される。このように、吸込みノズルから縦スリットを介して糸を取り出すように構成されているので、吸込みノズル自体を回動させなくても、当該吸込みノズルが吸い込んだ糸を糸継装置まで案内することができる。
【0012】
一方、特許文献2が開示する給糸処理装置は、ブローノズルから空気を噴出することにより、緯糸測長貯溜装置の導入口付近に吸引空気流を発生させて、糸端を糸巻付管内に導入するように構成されている。このように噴出空気によって吸引空気流を発生させる構成とした場合、当該吸引空気流によって糸端を吸引することができるとともに、当該糸端を噴出空気の流れに乗せて所望の位置まで案内することができる。従って、糸端を案内するために何らかの部材を駆動する必要が無い。
【0013】
特許文献1及び特許文献2のような構成で糸を案内する構成とすることにより、大きく回動する糸案内部材(図19の糸案内パイプ91,92等)を省略できるので、装置全体の構造を簡単にして各構成のレイアウトの自由度を向上させることができると考えられる。また、糸案内部材を駆動して糸を案内する構成と比べて、糸の案内に必要な時間を短縮することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平4−213563号公報
【特許文献2】特開平4−241136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、特許文献1は、スリットが形成された吸込みノズルに吸気を負荷することで、綾巻きボビンの糸を吸引する構成としている。この構成の場合、前記スリットから吸込みノズルの内部に空気が流入してしまうので、吸込みノズルの先端における吸引力が低下し、糸端を確実に吸引捕捉することが難しいという問題がある。また、特許文献1において、吸込みノズルは、ボビン幅まで拡大された入口開口を有している(なお、この点は図19の上糸案内パイプ91の吸引口91aも同様である)。これは、吸引捕捉すべき糸端が綾巻ボビンのボビン幅方向でどの位置にあるか不確定であるため、当該糸端を確実に吸引捕捉するためには、綾巻きボビンのボビン幅全域にわたって吸引空気流を発生させなければならないためである。しかしながら、このように入口開口を大きく形成した場合、吸込みノズルの吸引力が更に低下してしまう。
【0016】
この点、特許文献2は、緯糸チーズから糸端を引き剥がして前記導入口まで案内する羽毛ベルトを備えている。この構成によれば、羽毛ベルトで送られてきた糸端を緯糸測長貯溜装置の導入口で吸引すれば良いだけなので、当該導入口の幅をチーズ幅まで拡大する必要がない。従って、導入口の開口面積を小さく形成して、当該導入口に発生させる吸引流の強度を保ち、糸の吸引捕捉の確実性を向上させることができると考えられる。しかしながら、この羽毛ベルトは緯糸ボビンに接近又は離間する方向に駆動される必要があるため、構造が複雑である。また、羽毛ベルトはチーズ表面に擦過作用を加えるものであり、当該チーズ形状に悪影響を及ぼすおそれがあるため、チーズ(パッケージ)自体を製造することが目的の自動ワインダ等に採用することは好ましくない。更に言えば、特許文献2が開示する構成は糸継装置を備えていないため、糸継装置を備えた糸巻取装置にはそのまま適用することができない。
【0017】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、レイアウトの自由度を向上させるとともに、糸継装置まで糸を短時間で案内することができる糸巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0018】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0019】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取装置が提供される。即ち、この糸巻取装置は、ボビン支持部と、糸貯留装置と、巻取部と、糸継装置と、糸案内部と、を備える。前記ボビン支持部は、給糸ボビンを支持する。前記糸貯留装置は、前記給糸ボビンから解舒された糸を貯留する。前記巻取部は、前記糸貯留装置上に貯留された糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸継装置は、前記ボビン支持部と前記糸貯留装置との間で糸が分断された時に、前記給糸ボビン側の糸と、前記糸貯留装置側の糸と、を糸継ぎする。前記糸案内部は、前記糸貯留装置から糸を引き出して前記糸継装置まで案内する。また、前記糸案内部は、糸引出し噴出部と、空気噴出部と、糸捕捉部と、糸捕捉空気流発生部と、を備える。前記糸引出し噴出部は、前記糸貯留装置に貯留された糸を引き出して前記ボビン支持部側に吹き飛ばす。前記空気噴出部は、前記糸引出し噴出部に、糸を引き出して吹き飛ばすための空気流を発生させる。前記糸捕捉部は、前記糸継装置と前記ボビン支持部との間に配置され、前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する。前記糸捕捉空気流発生部は、糸を捕捉して前記糸継装置に導入するための空気流を、前記糸捕捉部に発生させる。
【0020】
このように、噴出空気によって糸を吹き飛ばして糸継装置まで案内する構成としたことにより、糸を案内するための構成が簡単になる結果、各構成のレイアウトの自由度が向上する。また、糸を吹き飛ばすだけで糸継装置への案内が完了するので、糸の案内動作に必要な時間を短縮し、パッケージの生産効率を向上させることができる。また、仮にパッケージから糸を引き出す構成とした場合は、糸端を確実に捕捉するために、パッケージの全幅にわたって吸引流を作用させなければならずエネルギーの消費が大きい。この点、上記のように糸貯留装置から糸を引き出す構成とした場合は、糸端の位置が存在するとわかっている位置にのみ吸引流を作用させれば良いので、少ないエネルギーで確実に糸端を吸引することができる。
【0021】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記糸引出し噴出部は、糸の巻取時において給糸ボビン側の糸を糸貯留装置までガイドするガイド筒である。前記空気噴出部は、前記ガイド筒の内部に圧縮空気を噴射する空気噴出ノズルである。
【0022】
この構成で、糸は、ガイド筒を介して糸貯留装置に貯留されるので、逆に糸貯留装置から糸を引き出すときには、当該ガイド筒を介して糸を引き出すことにより、確実かつスムーズに糸貯留装置から糸を引き出すことができる。従って、上記のようにガイド筒が糸引出噴出部を兼ねるように構成することで、糸貯留装置に巻き取られた糸を、確実かつスムーズに吹き飛ばすことができる。
【0023】
上記の糸巻取装置は、前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を前記糸捕捉部まで案内する偏向ガイド部材を備えることが好ましい。
【0024】
このように、糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を、偏向ガイド部材によって糸捕捉部まで案内することにより、糸引出し噴出部と糸捕捉部とを自由に配置することができ、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0025】
上記の糸巻取装置において、前記偏向ガイド部材は、筒状部材であり、筒の長手方向に沿ってスリットが形成されていることが好ましい。
【0026】
このように、偏向ガイド部材を筒状とすることにより、糸を、前記筒の内部に通過させるようにして確実に糸捕捉部まで案内することができる。また、筒状の偏向ガイド部材にスリットを設けることにより、糸捕捉部への案内が完了した糸を前記スリットから取り出すことができる。これにより、通常の巻取時には偏向ガイド部材の外側で糸を走行させることができるので、糸が偏向ガイド部材に接触して品質が低下してしまうことを防止できる。
【0027】
上記の糸巻取装置において、前記偏向ガイド部材は、糸巻取時に糸が走行する走行経路から外れた位置に備えられていることが好ましい。
【0028】
これにより、通常の巻取時において、糸が当該偏向ガイド部材に接触してしまうことを防止し、当該糸の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0029】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置まで案内する第2糸案内部を備える。また前記第2糸案内部は、糸吸引噴出部と、第2糸捕捉部と、第2糸捕捉空気流発生部と、を備える。前記糸吸引噴出部は、前記ボビン支持部と前記糸継装置との間に配置され、前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置の近傍まで吹き飛ばす。前記第2糸捕捉部は、前記糸継装置と糸貯留装置との間に配置され、前記糸吸引噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する。前記第2糸捕捉空気流発生部は、糸を捕捉するための空気流を前記第2糸捕捉部に発生させる。
【0030】
これにより、給糸ボビン側の糸を吹き飛ばして糸継装置まで案内することができる。従って糸巻取装置の各構成のレイアウトの自由度が更に向上するとともに、糸継ぎに掛かる時間を更に短縮できる。
【0031】
上記の糸巻取装置は、前記第2糸捕捉部を糸走行経路に対して接近又は離間する方向に駆動することが可能な駆動部を備えることが好ましい。
【0032】
これにより、糸を捕捉し易い位置(糸走行経路に接近した位置)まで、第2糸捕捉部を移動させておくことができる。
【0033】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記駆動部の作動を制御する制御部を備える。当該制御部は、通常の巻取時においては、前記第2糸捕捉部を糸走行経路に接近させ、糸継ぎ時には、糸を捕捉した状態の前記第2糸捕捉部を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記捕捉した糸を糸継装置に導入する。
【0034】
このように、通常の巻取時には第2糸捕捉部を糸走行経路に接近させておくことにより、糸に付着している風綿等を吸引除去することができる。一方、第2糸捕捉部が糸を捕捉したときには、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記糸を糸継装置に導入することができる。
【0035】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記糸継装置、前記糸引出し噴出部、及び前記糸吸引噴出部を制御する制御部を備える。前記制御部は、前記ボビン支持部に新しい給糸ボビンが供給された場合、前記糸吸引噴出部により前記新しい給糸ボビンの糸を吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、前記制御部は、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸捕捉部に捕捉させる。その後、前記制御部は、糸継装置を作動させて糸継ぎを行う。
【0036】
これにより、給糸ボビンが交換された際、給糸ボビン側の糸と、糸貯留装置側の糸を、糸継装置に案内して糸継ぎを行うことができる。
【0037】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、糸欠陥検出装置と、前記第2糸捕捉部よりも下流側の位置において、前記給糸ボビンと前記糸貯留装置との間の糸を切断するカッタと、を備える。前記制御部は、前記糸欠陥検出装置で糸欠陥が検出された場合、前記カッタを作動させて前記糸を切断し、前記給糸ボビン側の糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、前記制御部は、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を糸捕捉部に捕捉させる。その後、前記制御部は、糸継装置を作動させて糸継ぎを行う。
【0038】
これにより、糸欠点が検出された糸が切断された際、給糸ボビン側の糸と、糸貯留装置側の糸を、糸継装置に案内して糸継ぎを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動ワインダが備えたワインダユニットの模式的な側面図。
【図2】糸貯留装置の構成を説明する図。
【図3】給糸ボビンが空になったときの様子を示す図。
【図4】新しい給糸ボビンが供給されたときの様子を示す図。
【図5】下糸が下糸吹上げ部に導入されたときの様子を示す図。
【図6】下糸吹上げ部の概略的な外観斜視図。
【図7】下糸吹上げ部の構成を示す側面一部断面図。
【図8】ヤーントラップが下糸を吸引捕捉したときの様子を示す図。
【図9】下糸が糸継装置に導入されたときの様子を示す図。
【図10】偏向ガイド部材の構成を示す外観斜視図。
【図11】偏向ガイド部材によって上糸が案内される様子を示す図。
【図12】偏向ガイド部材から上糸が取り出されるときの様子を示す図。
【図13】上糸が糸継装置に導入されたときの様子を示す図。
【図14】第1実施形態の変形例を示す図。
【図15】本発明の第2実施形態に係る自動ワインダが備えたワインダユニットの模式的な側面図。
【図16】第2実施形態のワインダユニットが備えた糸貯留装置の構成を説明する図。
【図17】第2実施形態の変形例に係る自動ワインダが備えたワインダユニット。
【図18】第2実施形態の変形例に係るワインダユニットが備えた糸貯留装置の構成を示す図。
【図19】従来の自動ワインダが備えたワインダユニットの模式的な側面図。
【図20】従来のワインダユニットにおいて上糸及び下糸を吸引捕捉したときの様子を示す図。
【図21】従来のワインダユニットにおいて上糸を糸継装置に導入したときの様子を示す図。
【図22】従来のワインダユニットにおいて下糸を糸継装置に導入したときの様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る自動ワインダ(糸巻取装置)が備えるワインダユニット2の概略的な側面図である。本実施形態の自動ワインダは、多数のワインダユニット2を並べて配置した構成となっている。また、この自動ワインダは、前記ワインダユニット2を集中的に管理するための図略の機台管理装置と、圧縮空気源及び負圧源を備えた図略のブロアボックスと、を備えている。
【0041】
図1に示すように、ワインダユニット2は、ボビン支持部7と、巻取部8と、を主に備えている。このワインダユニット2は、ボビン支持部7に支持された給糸ボビン21の糸(紡績糸)20を解舒して、パッケージ30に巻き返すように構成されている。なお、図1は、通常の巻取時におけるワインダユニット2の様子を示している。本明細書において、「通常の巻取時」とは、給糸ボビン21とパッケージ30との間で糸が連続状態であり、かつ給糸ボビン21から糸が解舒されてパッケージ30に糸が巻き取られている状態をいう。
【0042】
ボビン支持部7は、給糸ボビン21を略直立状態で保持することが可能に構成されている。また、このボビン支持部7は、空になった給糸ボビン21を排出することができるように構成されている。巻取部8は、巻取ボビン22を装着可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための綾振ドラム24と、を備えている。
【0043】
綾振ドラム24は巻取ボビン22に対向して配置されており、この綾振ドラム24を回転駆動することにより、巻取ボビン22を従動回転させる。これにより、後述の糸貯留装置18に貯留された糸20を巻取ボビン22に巻き取ることができる。また、綾振ドラム24の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸20を所定の幅でトラバース(綾振り)することが可能になっている。以上の構成で、糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とすることができる。なお、以下の説明において「上流側」「下流側」という時には、糸の走行方向で見たときの上流側及び下流側をいうものとする。
【0044】
各ワインダユニット2は、制御部25を備えている。この制御部25は、図略のCPU、ROM、RAM等のハードウェアと、前記RAMに記憶された制御ブログラム等のソフトウェアと、から構成されている。そして、前記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、ワインダユニット2の各構成を制御するように構成されている。また、各ワインダユニット2が備える制御部25は、前記機台管理装置と通信可能に構成されている。これにより、自動ワインダが備える複数のワインダユニット2の動作を、機台管理装置において集中的に管理することが可能となっている。
【0045】
またワインダユニット2は、ボビン支持部7と巻取部8との間の糸走行経路中に、各種の装置を備えている。具体的に説明すると、前記糸走行経路には、ボビン支持部7側から巻取部8側へ向かって順に、解舒補助装置10と、下糸吹上げ部(糸吸引噴出部)11と、テンション付与装置12と、上糸捕捉部(糸捕捉部)13と、糸継装置14と、ヤーントラップ(第2糸捕捉部)15と、カッタ16と、クリアラ(糸欠陥検出装置)17と、上糸引出し部48と、糸貯留装置18と、が配置されている。
【0046】
解舒補助装置10は、給糸ボビン21から解舒される糸20が振り回されて給糸ボビン21上部に形成されるバルーンに対し、可動部材40を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助するためのものである。
【0047】
下糸吹上げ部11は、ボビン支持部7と糸継装置14との間(正確には、解舒補助装置10のすぐ下流側)に配置されたエアサッカー装置であり、糸継ぎ時において、給糸ボビン21側の下糸を糸継装置14側に向かって吹き上げるように構成されている(詳しくは後述)。
【0048】
テンション付与装置12は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置12は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式に構成されている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動可能に構成されている。もっとも、テンション付与装置12の構成はこれに限らず、例えばディスク式のテンション付与装置でも良い。
【0049】
上糸捕捉部13は、糸継装置14とボビン支持部7との間(正確には、糸継装置14のすぐ上流側)に配置されている。この上糸捕捉部13は図略の負圧源(糸捕捉空気流発生部)に接続されており、糸継時に吸引空気流を発生させて糸貯留装置18側の上糸を吸引捕捉するように構成されている(詳しくは後述)。
【0050】
ヤーントラップ15は、糸継装置14と糸貯留装置18との間(正確には、カッタ16の上流側であって糸継装置14のすぐ下流側)に配置されている。このヤーントラップ15の先端は筒状の部材として形成されており、糸20の走行経路に接近して設けられているとともに、図略の負圧源(第2糸捕捉空気流発生部)に接続されている。この構成で、ヤーントラップ15の先端に吸引空気流を発生させて、走行する糸20に付着している風綿などのゴミを吸引除去することができる。
【0051】
クリアラ17は、糸20の糸太さを監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。クリアラ17は、糸の欠陥を検出すると、当該糸欠陥の切断除去を指示する分断信号を制御部25等に送信する。クリアラ17の近傍には、前記分断信号に応じて直ちに糸20を切断するためのカッタ16が配置されている。
【0052】
糸継装置14は、クリアラ17が糸欠陥を検出してカッタ16で糸を切断する糸切断時、給糸ボビン21からの解舒中の糸の糸切れ時、又は給糸ボビン21の交換時等において、給糸ボビン21とパッケージ30との間の糸が分断状態となったときに、給糸ボビン21側の下糸と、糸貯留装置18側の上糸とを糸継ぎするものである。このような糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるものや、機械式のものを使用することができる。
【0053】
上糸引出し部48はエアサッカー装置であり、糸継時において、糸貯留装置18側の上糸を引き出してボビン支持部7側に向かって吹き飛ばすガイド筒34(糸引出し噴出部)を備えている(詳しくは後述)。
【0054】
糸貯留装置18は、給糸ボビン21から解舒した糸20を一時的に貯留することが可能に構成されている。このように、ボビン支持部7と巻取部8との間に糸貯留装置18を介在させ、当該糸貯留装置18上に一定量の糸20を貯留しているので、何らかの理由で給糸ボビン21からの糸の解舒が中断された場合(例えば糸継動作の最中)であっても、巻取部8は、糸貯留装置18上に貯留された糸を巻き取ることができるので、パッケージ30への糸20の巻取を継続することができる。このように、巻取部8における巻取動作が糸継動作等によって中断されないので、高速かつ安定してパッケージ30を生成することができる。また、従来の糸巻取装置のように、糸継ぎ作業毎にパッケージ30から糸が吸引捕捉されることがないので、パッケージ30表面に乱れが発生することを防ぐことができる。更に、巻取部8での糸切れ発生が少なくなるので、糸がパッケージ30の端面に落ちたり、巻き形状不良が発生したりすることを防ぐことができる。
【0055】
また、ワインダユニット2の正面側には、マガジン式のボビン供給装置26が配置されている。このボビン供給装置26は、回転式のマガジンカン27を備えている。このマガジンカン27は予備の給糸ボビン21を複数保持することが可能に構成されている。ボビン供給装置26は、マガジンカン27を間欠的に回転駆動することにより、ボビン支持部7に対して新しい給糸ボビン21を供給することができるように構成されている。また、ボビン供給装置26は、マガジンカン27に保持された給糸ボビン21の糸端を吸引保持する糸端保持部28を備えている。
【0056】
次に、図2を参照して、糸貯留装置18について説明する。図2に示すように、糸貯留装置18は、糸貯留ローラ32と、ローラ駆動モータ33と、を主に備えている。
【0057】
糸貯留ローラ32は略円筒状の部材として形成されており、その外周面に糸20を巻き付けて当該糸20を貯留することができるように構成されている。ローラ駆動モータ33は、糸貯留ローラ32を、その中心軸線を中心として回転駆動するように構成されている。なお、ローラ駆動モータ33の動作は制御部25によって制御されている。ここで、ローラ駆動モータ33が配置されている側の糸貯留ローラ32の端部を基端部、反対側の端部を先端部と呼ぶことにする。
【0058】
図2に示すように、糸貯留ローラ32の基端部には、端部に行くに従って径が拡大するテーパ状の基端側テーパ部32aが形成されている。一方、糸貯留ローラ32の先端部には、端部に行くに従って径が拡大するテーパ状の先端側テーパ部32bが形成されている。このようにテーパ部を形成することにより、糸貯留ローラ32の端部から糸20がすり抜けてしまうことを防止している。また、糸貯留ローラ32のうち、円筒状に形成された部分(径が略一定の部分)を円筒部32cと呼ぶ。なお、この円筒部32cにも、貯留された糸を下流側に移動させるための微小テーパが形成されている。
【0059】
糸貯留ローラ32の基端側テーパ部32aと円筒部32cとの境界部分近傍には、上糸引出し部48のガイド筒34が配置されている(なお、上糸引出し部48の構成については後述する)。このガイド筒34は筒状の部材として構成されており、その一側の端部(吸引側端部34a)が糸貯留ローラ32の表面に接近して配置されている。通常の巻取時において、給糸ボビン21側の糸は、このガイド筒34の他側の端部(噴出側端部34b)から当該ガイド筒34内に導入され、前記吸引側端部34aから糸貯留ローラ32の表面に向かって引き出される。このように、通常の巻取時においては、給糸ボビン21側の糸20が、ガイド筒34によって糸貯留ローラ32の表面まで案内されるようになっている。
【0060】
糸貯留ローラ32に糸20を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ32を一方向に回転させることにより、糸貯留装置18よりも上流側(給糸ボビン21側)の糸20に対して張力を付与することができる。これにより、給糸ボビン21から糸20を解舒して、当該糸20を糸貯留ローラ32の表面に巻き付けていくことができる。図2に示すように、糸20は、基端側テーパ部32aと円筒部32cとの境界部分に案内されているので、円筒部32cの基端部側から前の糸層を押し上げながら順次巻き付いていく。その結果、糸貯留ローラ32上にある糸20は、新しく巻き付けられた糸20によって押され、円筒部32cの表面において先端部側に向かって順次送られる。このようにして、糸貯留ローラ32の外周表面において、糸20が螺旋状に整列して基端部側から規則正しく巻き付いていくようになっている。なお、以下の説明で、通常の巻取時に糸貯留ローラ32を回転させることを「正回転」と呼ぶ。また、正回転の反対向きに糸貯留ローラ32を回転させたときを「逆回転」と呼ぶ。
【0061】
一方、糸貯留ローラ32の先端側テーパ部32bからは、当該糸貯留ローラ32上の糸20が引き出されて下流側(巻取部8側)に送られるようになっている。また、この先端側テーパ部32bにおいて、糸貯留ローラ32上の糸20は、糸貯留ローラ32の中心軸線の延長線上に配置された引出しガイド37を介して下流側へ引き出されるようになっている。このように、糸貯留ローラ32の中心軸線の延長線上に向かって糸20を引き出すように構成することで、糸貯留ローラ32の回転状態によらず当該糸貯留ローラ32から糸20を引き出すことができる。即ち、糸貯留ローラ32が正回転、逆回転、又は回転停止状態であっても、巻取部8は、糸貯留ローラ32から糸20を解舒してパッケージ30に巻き取ることができる。
【0062】
なお、糸貯留ローラ32の円筒部32cと先端側テーパ部32bとの境界部分には、輪ゴム(Oリング)32dが配置されており、この輪ゴム32dと糸貯留ローラ32の表面との間を通して、当該糸貯留ローラ32から糸20が引き出されるようになっている。なお、輪ゴム32d自体は、糸につられて引き外されることを先端側テーパ部32bによって阻止されている。以上の構成により、糸貯留ローラ32から解舒される糸20に対して、糸貯留ローラ32に対する輪ゴム32dの締め付けによる適度な張力を与えることができるので、当該糸20の解舒を安定させることができる。更に、糸の塊を解いて解舒することができるので、糸貯留ローラ32上の糸が塊になって一度に抜けてしまうスラッフィングという不具合を防止することができる。また、糸が解舒される際の振り回しにより発生するバルーンを発生させない作用もある。
【0063】
糸貯留ローラ32の近傍には、当該糸貯留ローラ32上の糸20が所定の上限量以上になったことを検出する上限センサ36と、所定の下限量未満になったことを検出する下限センサ35と、が配置されている。下限センサ35と上限センサ36の検出結果は、制御部25へと送られる。
【0064】
制御部25は、糸貯留ローラ32上の糸が前記下限量未満になったことを検出すると、ローラ駆動モータ33を適宜制御して糸貯留ローラ32の回転速度を増大させる。これにより、糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度が増大する。一方、通常の巻取時において、綾振ドラム24の回転速度は略一定とされるので、糸貯留ローラ32上の糸20がパッケージ30側に向かって解舒される速度は略一定である。制御部25は、糸貯留ローラ32から糸20が解舒される速度に比べて、当該糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度の方が大きくなるようにローラ駆動モータ33を制御することで、糸貯留ローラ32上の糸20の貯留量を徐々に増やすことができる。
【0065】
一方、制御部25は、糸貯留ローラ32上の糸が前記上限量以上となったことを検出すると、ローラ駆動モータ33を適宜制御して糸貯留ローラ32の回転速度を減少させる。これにより、糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度が減少する。制御部25は、糸貯留ローラ32から糸20が解舒される速度に比べて、当該糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度の方が小さくなるようにローラ駆動モータ33を制御することで、糸貯留ローラ32上の糸20の量を徐々に減らすことができる。上記のような制御により、糸貯留ローラ32上の糸20の貯留量を、下限量以上、上限量未満に保つことができる。
【0066】
次に、給糸ボビン21の交換動作について説明する。
【0067】
給糸ボビン21の糸が無くなると、当該給糸ボビン21に残っていた糸が全て糸貯留装置18に巻き取られてしまうので、図3に示すように、給糸ボビン21(空のボビン)と糸貯留装置18との間で糸が不連続状態となる。従って、糸20の巻取りを継続するためには、新しい給糸ボビン21を供給した後、当該新しい給糸ボビン21側の糸と糸貯留装置18上の糸とを接続(糸継ぎ)する必要がある。なお、給糸ボビン21か空になったとしても、糸貯留装置18には所定量の糸20が貯留されているので、当該貯留された糸20が無くなるまでは、巻取部8におけるパッケージ30への糸20の巻取りを中断する必要は無い。以下、給糸ボビン21の交換動作について順を追って説明する。
【0068】
まず、制御部25は、ボビン支持部7を駆動することにより空になったボビンを排出する。続いて、制御部25は、ボビン供給装置26のマガジンカン27を駆動することにより、新しい給糸ボビン21をボビン支持部7に対して供給する。このとき、図4に示すように、新しい給糸ボビン21は斜めの状態で供給される。また前述のように、マガジンカン27に保持されている給糸ボビン21の糸端は糸端保持部28に吸引保持されているので、当該マガジンカン27から供給された給糸ボビン21と、前記糸端保持部28と、の間で糸20を引いた状態となっている。なお、以下の説明において、特に必要がある場合は、給糸ボビン21側の糸20を下糸20aと表記する。
【0069】
続いて制御部25は、図5に示すように、ボビン支持部7を駆動して新しい給糸ボビン21を直立させるとともに、下糸吹上げ部11の近傍に配置された糸寄せ部材43を駆動する。当該糸寄せ部材43は、給糸ボビン21と前記糸端保持部28との間の下糸20aに係合可能であるとともに、下糸吹上げ部11に向かって移動可能に構成されている。そして、この糸寄せ部材43を、下糸20aに係合させた状態で駆動することにより、図5に示すように、下糸20aを下糸吹上げ部11に向かって寄せることができるように構成されている。
【0070】
下糸吹上げ部11は、図6の外観斜視図に示すようにブロック状に形成されている。当該ブロックには、糸導入孔41と、前記糸導入孔41に連通するスリット42と、が形成されている。前記糸寄せ部材43によって寄せられた下糸20aは、スリット42を介して糸導入孔41に導入される。
【0071】
ここで、下糸吹上げ部11について、図7の一部断面図を参照して更に詳しく説明する。図7に示すように、下糸吹上げ部11には、前記糸導入孔41に連通する空気噴出ノズル44が形成されている。この空気噴出ノズル44は細長く形成された丸孔として構成されている。また、空気噴出ノズル44は、電磁弁45を介して、適宜の圧縮空気源46に接続されている。この電磁弁45は、制御部25によって制御される。以上の構成で、制御部25が前記電磁弁45を開放状態とすると、空気噴出ノズル44から糸導入孔41内に向かって圧縮空気が供給される。
【0072】
空気噴出ノズル44の噴出口は、糸20の走行方向下流側に向かって空気を噴出するように形成されている。従って、当該空気噴出ノズル44から圧縮空気が噴出された場合、糸導入孔41内において糸20の走行方向下流側(図7の上向き)に向かって流れる空気流が発生する。これにより、糸導入孔41内に導入されている下糸20aを、前記空気流に乗せて下流側に向けて吹き飛ばすことができる。
【0073】
給糸ボビン21の交換動作の続きを説明する。糸寄せ部材43によって糸導入孔41に下糸20aが導入されると、制御部25は、給糸ボビン21と糸端保持部28との間の下糸20aを図略のカッタによって切断するとともに、電磁弁45を開放して空気噴出ノズル44に圧縮空気を供給する。これにより、糸導入孔41内において下流側に向かう空気流が発生し、当該空気流によって下糸20aが下流側に向かって吹き飛ばされる。
【0074】
下糸吹上げ部11の下流側には、前述のヤーントラップ15が配置されており、その先端に吸引流を発生させている。下糸吹上げ部11から吹き飛ばされた下糸20aは、ヤーントラップ15によって吸引捕捉される。このときの様子を、図8に示す。
【0075】
ヤーントラップ15の近傍には、当該ヤーントラップ15を糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動することが可能なヤーントラップ駆動部47が配置されている。このヤーントラップ駆動部47の動作は、制御部25によって制御されている。制御部25は、ヤーントラップ15が下糸20aを吸引捕捉すると、ヤーントラップ駆動部47を作動させることにより、ヤーントラップ15を糸走行経路から離間する方向に駆動する。これにより、図9に示すように、下糸20aが糸継装置14に導入されるように構成されている。以上のように、下糸吹上げ部11とヤーントラップ15によって下糸20aを糸継装置14に導入することができるので、下糸吹上げ部11、ヤーントラップ15、及びヤーントラップ15に吸引空気流を発生させている負圧源は、下糸案内部(第2糸案内部)を構成していると言うことができる。
【0076】
以上のように、空気流によって下糸20aを吹き飛ばして糸継装置14まで案内しているので、例えば従来のワインダユニットが備えていた下糸案内部材(図19の下糸案内パイプ92)に比べて簡単な構成で、かつ素早く下糸を案内することができる。なお、制御部25は、下糸20aを糸継装置14まで案内する動作が終了すると、電磁弁45を閉じた状態とする。これにより、圧縮空気が無駄に消費されてしまうことを防ぐことができる。
【0077】
また制御部25は、下糸20aを糸継装置14まで案内する上記の制御と前後して、糸貯留装置18側の糸を糸継装置14まで案内する制御を行う。以下、具体的に説明する。なお、以下の説明で、特に必要がある場合は、糸貯留装置18側の糸20を、上糸20bと表記する。
【0078】
まず、上糸引出し部48について、図2を参照して説明する。上糸引出し部48は、前述のガイド筒34(糸引出し噴出部)と、当該ガイド筒34内に連通する空気噴出ノズル(空気噴出部)49と、から構成されている。この空気噴出ノズル49は細長く形成された丸孔として構成されている。また、空気噴出ノズル49は、電磁弁51を介して、適宜の圧縮空気源46に接続されている。この電磁弁51は、制御部25によって制御される。以上の構成で、制御部25が前記電磁弁51を開放状態とすると、空気噴出ノズル49からガイド筒34内に向かって圧縮空気が供給される。
【0079】
空気噴出ノズル49の噴出口は、噴出側端部34b側に向けて空気を噴出するように(糸貯留ローラ32の表面から遠ざかる方向に向けて空気を噴出するように)形成されている。従って、当該空気噴出ノズル49から圧縮空気を噴出した場合、ガイド筒34内において噴出側端部34bに向かって流れる空気流が発生する。この結果、噴出側端部34bからは空気が噴出される。一方、当該ガイド筒34内の空気の流れにつられて、反対側の端部(吸引側端部34a)には吸引流が発生する。
【0080】
糸貯留装置18側の上糸20bを糸継装置14まで案内する際には、制御部25は、電磁弁51を開放状態として、空気噴出ノズル49からガイド筒34内に向かって圧縮空気を供給する。この状態で、制御部25は、ローラ駆動モータ33を適宜制御することにより、糸貯留ローラ32を逆回転させる。これにより、糸貯留ローラ32の円筒部32cの基端部側から糸端が解舒されるとともに、当該糸端がガイド筒34の吸引側端部34aに発生している吸引流によって吸引され、ガイド筒34の内部に導入される。
【0081】
なお、図19に示すような従来の自動ワインダにおいて、パッケージ30に巻き取られた糸端を吸引捕捉するための上糸案内パイプ91は、パッケージの幅方向に拡大された吸引口91aが必要であった。これは、パッケージ30の表面に糸を巻き取る際にトラバースが行われている結果、クリアラ17が糸欠陥を検出してカッタ16で糸を切断した後や、給糸ボビン21の糸が全て巻き取られた後には、パッケージ30に巻き取られた糸の糸端が当該パッケージ30の幅方向でどの位置にあるかわからないため、当該糸端を確実に吸引捕捉するためにパッケージ30の幅方向の全域にわたって吸引流を発生させる必要があったためである。
【0082】
この点、本実施形態の自動ワインダにおいては、糸貯留ローラ32上において、円筒部32cと基端側テーパ部32aとの境界部分から整列して規則正しく糸20が巻き付けられている。これは、通常の巻取時においては、ガイド筒34によって円筒部32cと基端側テーパ部32aとの境界部分まで給糸ボビン21側の糸が案内されているためである。従って、クリアラ17が糸欠陥を検出してカッタ16で糸を切断した後や、給糸ボビン21の糸が全て巻き取られた後には、糸貯留ローラ32に巻き取られた糸の糸端は必ず円筒部32cと基端側テーパ部32aとの境界部分の近傍にあるはずなので、当該境界部分にのみ吸引流を発生させれば、糸端を確実に吸引することができる。即ち、ガイド筒34に吸引流を発生させることにより、糸端を確実に吸引することができる。このように、糸貯留装置18を備えた本実施形態の自動ワインダでは、従来の構成のような上糸を吸引するための拡大された吸引口を必要としないので、上糸を吸引するための十分な吸引流を、少ないエネルギーで発生させることができる。
【0083】
ガイド筒34内に吸引された糸端は、当該ガイド筒34内に発生している空気流に乗って噴出側端部34bから吹き出される。この噴出側端部34bから空気が噴出する方向の先には、偏向ガイド部材60の糸入口61が配置されている。
【0084】
偏向ガイド部材60は、図10の斜視図に示すように、湾曲した筒状の部材として構成されており、その一端側を糸入口61、他端側を糸出口62としている。前記ガイド筒34の噴出側端部34bから噴出した空気は、前記糸入口61から偏向ガイド部材60の内部に向かって流入し、湾曲した偏向ガイド部材60の内部を通ることにより湾曲した経路を案内され、糸出口62から偏向ガイド部材60外部に排出される。従って、上糸引出し部48から噴出空気に乗って吹き出された上糸20bは、図11に示すように、偏向ガイド部材60内を湾曲して流れる空気流に乗って、糸入口61から糸出口62まで案内される。
【0085】
糸出口62の先には、上糸捕捉部13が配置されている。上糸捕捉部13は、図略の負圧源に接続されており、その先端に形成された吸引流発生口に吸引流を発生させることができるように構成されている。また、上糸捕捉部13の吸引流発生口には、可動式の蓋部13aが配置されている。この蓋部13aは、制御部25によって駆動可能に構成されており、前記吸引流発生口を塞いだ状態と、吸引流発生口を開放した状態と、を切り換えることができるようになっている。
【0086】
制御部25は、上糸引出し部48によって糸貯留装置18から上糸20bを引き出すのと前後して、前記蓋部13aを駆動して上糸捕捉部13の前記吸引流発生口を開放状態とし、当該上糸捕捉部13に吸引流を発生させる。以上の構成により、偏向ガイド部材60の糸出口62まで案内されてきた上糸20bを、上糸捕捉部13が吸引保持することができる。なお、制御部25は、上糸捕捉部13に吸引流を発生させる必要が無いときには、蓋部13aによって前記吸引流発生口を塞ぐように制御する。これにより、上糸捕捉部13の内部に空気が流れ込むことを防止することができるので、無駄なエネルギーが消費されることを防ぐことができる。なお、蓋の開閉により吸引空気流の有無を制御する構成に代えて、例えば電磁弁によって空気の流れを制御する構成でも良い。
【0087】
また、図10に示すように、偏向ガイド部材60には、当該偏向ガイド部材60の外側と内側を連通するスリット63が形成されている。このスリット63は、筒状の偏向ガイド部材60の長手方向に沿って、糸入口61と糸出口62とを接続するように形成されている。また、本実施形態の偏向ガイド部材60は略U字状に形成されており、前記スリット63は、当該U字の内側の部分に沿って形成されている。
【0088】
このように偏向ガイド部材60にスリット63が形成されているので、糸出口62まで案内された上糸20bを上糸捕捉部13が吸引捕捉すると、図12に示すように、前記スリット63を介して上糸20bが偏向ガイド部材60の外側に取り出される。
【0089】
そして、偏向ガイド部材60から取り出された上糸20bを、上糸捕捉部13によって更に吸引することにより、図13に示すように、上糸20bを糸継装置14に導入することができるように構成されている。以上のように、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、偏向ガイド部材60と、上糸捕捉部13と、上糸捕捉部13に吸引空気流を発生させている負圧源と、によって、上糸20bを糸継装置14まで案内するように構成されているので、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、偏向ガイド部材60、上糸捕捉部13及び負圧源は、上糸案内部(糸案内部)を構成していると言うことができる。
【0090】
以上のように、空気流によって上糸20bを吹き飛ばして糸継装置14まで案内しているので、例えば従来のワインダユニットが備えていた上糸案内部材(図19の上糸案内パイプ91)に比べて簡単な構成で、かつ素早く上糸を案内することができる。従って、糸継動作に掛かる時間を短縮できるので、パッケージ30の生成効率を向上させることができる。
【0091】
上糸20bを糸継装置14まで案内する動作が終了すると、制御部25は、糸貯留ローラ32の逆回転を停止させるとともに、電磁弁51を閉じた状態とする。続いて、制御部25は、上糸捕捉部13の蓋部13aを閉じる。そして、制御部25は、糸継装置14を作動させることにより、上糸20bと下糸20aとを糸継ぎする。
【0092】
糸継ぎが終了すると、制御部25は、糸貯留ローラ32の正回転を開始して、新しい給糸ボビン21からの糸の解舒を開始する。また制御部25は、糸貯留ローラ32の正回転を開始するのと前後して、ヤーントラップ15を糸走行経路に接近する位置まで駆動して風綿の吸引除去を再開させるとともに、上糸捕捉部13の蓋部13aを短時間開く。これにより、上糸捕捉部13に捕捉されていた糸の切れ端(糸継ぎにより切断された上糸)を吸引して除去する。これにより、図1に示した通常の巻取動作を再開することができる。
【0093】
なお、上記のように上糸20bを偏向ガイド部材60の内部から取り出すように構成されているので、通常の巻取時(図1に示す状態)においては、糸20が偏向ガイド部材60の内部を通過しないようになっている。ここで仮に、通常の巻取動作の間も糸20が偏向ガイド部材60の内部を通過するように構成されているとした場合、糸20が偏向ガイド部材60に接触してダメージを受け、糸品質が低下してしまうおそれがある。この点、上記のように構成することにより、通常の巻取動作の間は糸20が偏向ガイド部材60に接触しないので、糸品質の低下を防ぐことができる。
【0094】
また、図1等に示すように、偏向ガイド部材60は、他の部材と連接していない。より具体的には、偏向ガイド部材60の糸入口61と、上糸引出し部48と、の間に間隔が空くようにして偏向ガイド部材60が配置されている。同様に、偏向ガイド部材60の糸出口62と、上糸捕捉部13と、の間に間隔が空くようにして偏向ガイド部材60が配置されている。このように、偏向ガイド部材60と他の部材との間に間隔が形成されている。言い換えれば、偏向ガイド部材60は、糸走行経路から外れた位置に配置されている。これにより、当該偏向ガイド部材60から取り出された糸20は、偏向ガイド部材60に全く接触することなく走行することができる。この点でも、通常の巻取時において、糸20が偏向ガイド部材60に接触してダメージを受けることを防止できるので、糸品質の低下を防ぐことができる。
【0095】
なお、特許文献1が開示する綾巻きボビン巻成機も、スリットが形成された吸込みノズルを備えている。しかし、特許文献1の構成は、糸を負圧により吸引して糸継装置まで案内する構成であったため、スリットを介して吸込みノズル内に空気が流入し、吸込みノズル先端の吸引力が低下する可能性があった。この点、本実施形態の自動ワインダは、噴出空気によって糸貯留装置18の近傍に吸引流を直接発生させる構成であるため、偏向ガイド部材60にスリット63が形成されていても吸引力の低下等の問題は発生しない。更に、本実施形態では、偏向ガイド部材60を筒状の部材として構成しているので、上糸引出し部48から噴出した空気を、糸入口61から糸出口62まで良好に案内することができる。
【0096】
また、上記のように糸20を吹き飛ばして案内する構成としているので、図19の糸案内パイプ91,92のように大きく駆動される部材が必要無い。従って、自動ワインダの構成を簡略化することができるとともに、各構成のレイアウトの自由度が増大する。更に、本実施形態では、偏向ガイド部材60によって上糸20bが案内される経路を湾曲させる構成としてあるので、上糸引出し部48から糸が吹き出される方向の先に上糸捕捉部13が配置されていなくても、当該上糸捕捉部13まで上糸20bを案内することができる。このように、偏向ガイド部材60の形状を工夫することにより、上糸引出し部48と上糸捕捉部13の位置を自由にレイアウトすることができるようになる。
【0097】
続いて、クリアラ17で糸欠陥が検出されたときの動作について説明する。
【0098】
図1に示すような通常の巻取時において、クリアラ17で糸欠陥が検出されると、制御部25は、カッタ16を作動させて糸20を切断する。このとき、カッタ16よりも上流側の糸端は、当該カッタ16のすぐ上流側に配置されているヤーントラップ15に吸引捕捉される。一方、カッタ16よりも下流側の糸端は、正回転する糸貯留ローラ32に巻き取られる。これにより、糸欠陥が含まれる糸部分は、糸貯留ローラ32の基端部側に巻き取られる。
【0099】
このとき、下糸20a及び上糸20bは、図8と同様の状態となる。ただし、カッタ16によって糸20が切断された場合は、切れた糸端がそのままヤーントラップ15に吸引捕捉されるので、下糸吹上げ部11によって下糸20aを上向きに吹き上げる動作は必要ない点が、給糸ボビン21の交換動作とは異なる。
【0100】
続いて、ヤーントラップ15を、糸走行経路から離間させる方向に駆動して、当該ヤーントラップ15に吸引捕捉されている下糸20aを糸継装置14に導入する(図9と同様の状態)。これと前後して、糸貯留ローラ32を逆回転させつつ、電磁弁51を開放状態とし、更に蓋部13aを開放状態とする。これにより、上糸20bが糸継装置14に導入される(図13と同様の状態)。この状態で、糸貯留ローラ32の逆回転を所定時間継続することにより、当該糸貯留ローラ32上に巻き取られている糸欠陥の部分が引き出されて、上糸捕捉部13に吸引される。これにより、クリアラ17が検出した糸欠陥の部分を除去することができる。続いて、制御部25は、糸継装置14を作動させて糸継を行う。
【0101】
以上のように、糸欠陥検出時における糸継動作においても、上糸20bを噴出空気により吹き飛ばして案内するように構成されているので、従来のワインダユニットが備えていた上糸案内部材(図19の上糸案内パイプ91)に比べて簡単な構成で、かつ素早く上糸20bを案内することができる。また、糸欠陥検出時における糸継動作において、下糸20aは、ヤーントラップ15に吸引捕捉された状態のまま、当該ヤーントラップ15を駆動するだけで糸継装置14に案内することができる。これにより、糸欠陥検出時において下糸20aを簡単かつ素早く案内することができる。このように、糸欠陥検出時においても、糸継動作に掛かる時間を短縮できるので、パッケージ30の生成効率を向上させることができる。
【0102】
以上で説明したように、本実施形態の自動ワインダは、ボビン支持部7と、糸貯留装置18と、巻取部8と、糸継装置14と、上糸案内部と、を備える。ボビン支持部7は、給糸ボビン21を支持する。糸貯留装置18は、給糸ボビン21から解舒された糸20を貯留する。巻取部8は、糸貯留装置18上に貯留された糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。糸継装置14は、ボビン支持部7と糸貯留装置18との間で糸20が分断された時に、給糸ボビン21側の糸と、糸貯留装置18側の糸と、を糸継ぎする。上糸案内部は、糸貯留装置18から糸を引き出して糸継装置14まで案内する。また、上糸案内部は、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、上糸捕捉部13と、負圧源と、を備えている。ガイド筒34は、糸貯留装置18に貯留された糸20を引き出してボビン支持部7側に吹き飛ばす。空気噴出ノズル49は、ガイド筒34に、糸を引き出して吹き飛ばすための空気流を発生させる。上糸捕捉部13は、糸継装置14とボビン支持部7との間に配置され、ガイド筒34によって吹き飛ばされた糸20を捕捉する。前記負圧源は、糸を捕捉して糸継装置14に導入するための空気流を、上糸捕捉部13に発生させる。
【0103】
このように、噴出空気によって上糸20bを吹き飛ばして糸継装置14まで案内する構成としたことにより、上糸20bを案内するための構成が簡単になる結果、各構成のレイアウトの自由度が向上する。また、上糸20bを吹き飛ばすだけで糸継装置14への案内が完了するので、上糸20bの案内動作に必要な時間を短縮し、パッケージ30の生産効率を向上させることができる。また、上記のように糸貯留装置18から上糸20bを引き出す構成とした場合は、糸端の位置が存在するとわかっている位置にのみ吸引流を作用させれば良いので、少ないエネルギーで確実に糸端を吸引することができる。
【0104】
また、本実施形態の自動ワインダは、以下のように構成されている。即ち、ガイド筒34は、糸の巻取時において給糸ボビン21側の糸20を糸貯留装置18までガイドする。また、空気噴出ノズル49は、ガイド筒34の内部に圧縮空気を噴射する。
【0105】
この構成で、糸20は、ガイド筒34を介して糸貯留装置18に貯留されるので、逆に糸貯留装置18から糸を引き出すときには、当該ガイド筒34を介して糸を引き出すことにより、確実かつスムーズに糸貯留装置から糸を引き出すことができる。従って、上記のようにガイド筒34が糸引出噴出部を兼ねるように構成することで、糸貯留装置18に巻き取られた糸20を、確実かつスムーズに吹き飛ばすことができる。
【0106】
また、本実施形態の自動ワインダは、ガイド筒34によって吹き飛ばされた上糸20bを上糸捕捉部13まで案内する偏向ガイド部材60を備えている。
【0107】
このように、ガイド筒34によって吹き飛ばされた上糸20bを、偏向ガイド部材60によって上糸捕捉部13まで案内することにより、ガイド筒34と上糸捕捉部13とを自由に配置することができ、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0108】
また、本実施形態の自動ワインダにおいて、偏向ガイド部材60は筒状部材であり、筒の長手方向に沿ってスリット63が形成されている。
【0109】
このように、偏向ガイド部材60を筒状とすることにより、上糸20bを、前記筒の内部を通過させるようにして確実に上糸捕捉部13まで案内することができる。また、筒状の偏向ガイド部材60にスリット63を設けることにより、上糸捕捉部13への案内が完了した上糸20bをスリット63から取り出すことができる。これにより、通常の巻取時には偏向ガイド部材60の外側で糸20を走行させることができるので、糸20が偏向ガイド部材60に接触して品質が低下してしまうことを防止できる。
【0110】
また、本実施形態の自動ワインダにおいて、前記偏向ガイド部材60は、糸巻取時に糸20が走行する走行経路から外れた位置に備えられている。
【0111】
これにより、通常の巻取時において、糸20が偏向ガイド部材60に接触してしまうことを防止し、当該糸20の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0112】
また、本実施形態の自動ワインダは、給糸ボビン21側の下糸20aを糸継装置14まで案内する下糸案内部を備える。また下糸案内部は、下糸吹上げ部11と、ヤーントラップ15と、負圧源と、を備えている。前記下糸吹上げ部11は、ボビン支持部7と糸継装置14との間に配置され、給糸ボビン21側の下糸20aを糸継装置14の近傍まで吹き飛ばす。ヤーントラップ15は、糸継装置14と糸貯留装置18との間に配置され、下糸吹上げ部11によって吹き飛ばされた下糸20aを捕捉する。前記負圧源は、下糸20aを捕捉するための空気流をヤーントラップ15に発生させる。
【0113】
これにより、給糸ボビン21側の糸を吹き飛ばして糸継装置14まで案内することができる。従って糸巻取装置の各構成のレイアウトの自由度が更に向上するとともに、糸継ぎに掛かる時間を更に短縮できる。
【0114】
また、本実施形態の自動ワインダは、ヤーントラップ15を糸走行経路に対して接近又は離間する方向に駆動することが可能なヤーントラップ駆動部47を備えている。
【0115】
これにより、糸20を捕捉し易い位置(糸走行経路に接近した位置)まで、ヤーントラップ15を移動させておくことができる。
【0116】
また、本実施形態の自動ワインダは、ヤーントラップ駆動部47の作動を制御する制御部25を備える。制御部25は、通常の巻取時においては、ヤーントラップ15を糸走行経路に接近させ、糸継ぎ時には、糸20を捕捉した状態のヤーントラップ15を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記捕捉した糸20を糸継装置14に導入する。
【0117】
このように、通常の巻取時にはヤーントラップ15を糸走行経路に接近させておくことにより、糸20に付着している風綿等を吸引除去することができる。一方、ヤーントラップ15が糸を捕捉したときには、当該ヤーントラップ15を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記糸20を糸継装置に導入することができる。
【0118】
また、本実施形態の自動ワインダは、糸継装置14、上糸引出し部48、及び下糸吹上げ部11を制御する制御部25を備える。制御部25は、ボビン支持部7に新しい給糸ボビン21が供給された場合、下糸吹上げ部11により新しい給糸ボビン21側の下糸20aを吹き飛ばし、吹き飛ばした糸をヤーントラップ15に捕捉させ、当該ヤーントラップ15を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、制御部25は、上糸引出し部48により糸貯留装置18上の上糸20bを引出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を上糸捕捉部13に捕捉させる。その後、制御部25は、糸継装置14を作動させて糸継ぎを行う。
【0119】
これにより、給糸ボビン21が交換された際、給糸ボビン21側の下糸20aと、糸貯留装置18側の上糸20bを、糸継装置14に案内して糸継ぎを行うことができる。
【0120】
また、本実施形態の自動ワインダは、クリアラ17と、ヤーントラップ15よりも下流側の位置において、給糸ボビン21と糸貯留装置18との間の糸を切断するカッタ16と、を備える。制御部25は、クリアラで糸欠陥が検出された場合、前記カッタを作動させて前記糸を切断し、前記給糸ボビン21側の下糸20aをヤーントラップ15に捕捉させ、当該ヤーントラップ15を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、制御部25は、上糸引出し部48により糸貯留装置18側の上糸20bを引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を上糸捕捉部13に捕捉させる。その後、制御部25は、糸継装置14を作動させて糸継ぎを行う。
【0121】
これにより、糸欠点が検出された糸が切断された際、給糸ボビン側の糸と、糸貯留装置側の糸を、糸継装置に案内して糸継ぎを行うことができる。
【0122】
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記第1実施形態と同一又は類似する構成については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。この変形例は、図14に示すように、下糸吹上げ部11を省略し、代わりに下糸案内パイプ92を備えた構成である。この変形例では、下糸20aは、下糸案内パイプ92によって糸継装置14まで案内される。なお、この下糸案内パイプ92の構成は、図19等に示す従来の自動ワインダが備える下糸案内パイプ92と同等の構成であるので、説明は省略する。
【0123】
この変形例のように、下糸20aは、従来の糸案内部材(糸案内パイプ92)によって糸継装置14まで案内する構成とすることもできる。この構成であっても、上糸20bは噴出空気によって糸継装置14まで案内される構成となっているので、上糸20bと下糸20aの両方を糸案内パイプ91,92によって案内していた従来の構成(図19の構成)と比べれば、簡単な構成で、かつ糸継に必要な時間も短くすることができる。
【0124】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記第1実施形態と同一又は類似する構成については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0125】
図15に示すように、本実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット100は、上記第1実施形態とは異なるタイプの糸貯留装置を備えている。以下、図16を参照して、この糸貯留装置64について説明する。
【0126】
図16に示すように、糸貯留装置64は、回転軸ケーシング70と、糸貯留部71と、糸案内部72と、を備える。また、前記回転軸ケーシング70は、上方が開放された円筒状の筒部78と、この筒部78の開放側端部に形成された鍔部79と、を備えている。また、糸貯留装置64のすぐ上流側には、上糸引出し部48が配置されている。
【0127】
前記糸貯留部71は、前記鍔部79の上方に配置されている。この糸貯留部71は、円板状に形成される支持板81と、この支持板81から上方に突出する複数のロッド部材82と、この複数のロッド部材82の先端部分が接続される円板状の取付板83と、を備える。また、糸貯留部71は、前記支持板81と前記鍔部79との間に隙間を形成するように配置されており、この隙間の内部を後述の巻付筒75が回転できるように構成されている。
【0128】
複数のロッド部材82は鉛直方向に直交する円周上に等間隔で並べて配置されており、前記糸貯留部71は、これらのロッド部材82によって略円筒形状を形成するように構成されている。この複数のロッド部材82で構成される略円筒形状の糸貯留部71の外周部分に糸20を巻き回すことによって、糸20が糸貯留部71に貯留されることになる。
【0129】
糸案内部72は、前記回転軸ケーシング70の内部に配置されている。回転軸ケーシング70において、前記筒部78の下部(糸貯留部71と反対側の端部)には導入孔80が形成されている。導入孔80には、上糸引出し部48のガイド筒34が接続されている。給糸ボビン21から引き出された糸20は、前記ガイド筒34によって前記導入孔80まで案内され、当該導入孔80を通過して糸案内部72へ導かれるようになっている。
【0130】
前記筒部78の内部には、前記回転軸ケーシング70及び糸貯留部71に対して相対回転可能に取り付けられる回転軸73が配置されている。この回転軸73と前記筒部78との間にはサーボモータ(糸貯留駆動部)55が組み込まれており、回転軸73を正転及び逆転させることができる。また、この回転軸73の中心には、軸孔状の糸通路74が形成されている。
【0131】
この回転軸73の一端(前記導入孔80と反対側の端部)には、円筒状に形成される巻付筒(巻付手段)75が固定されている。この巻付筒75は、上向きに若干傾斜しながら、回転軸ケーシング70(鍔部79)と支持板81との隙間を通過するようにして径方向に延出し、その先端部分の一部が回転軸ケーシング70より若干飛び出すように構成されている。この巻付筒75は回転軸73と一体的に回転するように構成される。また、巻付筒75の内部は前記糸通路74と接続されている。
【0132】
以上の構成において、糸案内部72の導入孔80から回転軸ケーシング70内に導かれた糸20は、糸通路74及び巻付筒75の内部を通って当該巻付筒75の先端から排出されることで、前記糸貯留部71の側面部分に誘導される。従って、前記サーボモータ55を正方向に駆動すると、巻付筒75が回転軸73とともに回転し、これによって前記側面部分に糸20が巻き回されることになる。
【0133】
また、前記糸貯留部71において複数配置されるロッド部材82のそれぞれは、支持板81側の端部から取付板83側の端部へ近づくに従って糸貯留部71の内側方向へ傾斜するように配置されている。このロッド部材82の傾斜によって、糸貯留部71に巻き付けられた糸は上方に滑るように移動する。従って、後述の巻付筒75によって糸20が連続して巻き付けられると、前記傾斜部分に巻き取られた糸が上方へと移動していくので、ロッド部材82で構成される前記側面部分には糸20が螺旋状に整列した状態で貯留されることになる。
【0134】
上糸引出し部48は、上記第1実施形態と同様に、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、を備えている。図16に示すように、空気噴出ノズル49は、制御部25によって制御される電磁弁51に接続されており、この電磁弁51は圧縮空気源46に接続されている。空気噴出ノズル49の空気噴出口は、糸走行方向上流側に向けて空気を噴出するように形成されている。
【0135】
この第2実施形態において、糸貯留装置64から糸を引き出す際には、制御部25は、サーボモータ55を停止するとともに、電磁弁51を開放状態としてガイド筒34内に空気流を発生させる。これにより、糸貯留装置64から糸を引き出すことができる。
【0136】
また、図16に示すように、ガイド筒34は適宜湾曲して形成されており、当該湾曲したガイド筒34の先端部が向く先には偏向ガイド部材60の糸入口61が配置されている。これにより、糸貯留装置64から引き出した糸を、偏向ガイド部材60に導入することができる。以上の構成で、本第2実施形態においても、糸貯留装置64側の上糸を、糸継装置14まで案内することができる。
【0137】
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。この変形例は、図17に示すように、偏向ガイド部材を省略するとともに、図18に示すように、ガイド筒34を湾曲させずに円筒状に形成したものである。更に、このガイド筒34の先端が給糸ボビン21を向くように配置している。これにより、糸貯留装置64に貯留された糸を、湾曲させることなくまっすぐ上流側に引き出すことができるように構成している。
【0138】
即ち、上記第1実施形態や第2実施形態では、ガイド筒34によって糸の走行経路が曲げられることにより、給糸ボビン21の糸20が糸貯留装置まで案内されていた。このように糸の走行経路が曲げられると、走行する糸がガイド筒34に接触してダメージを受けてしまう場合がある。この点、本変形例のように糸の走行経路をガイド筒34によって湾曲させないようにすることで、糸へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0139】
特に、第2実施形態の糸貯留装置64では、当該糸貯留装置64の上流側端部(下側の端部)に糸の導入孔80が形成されており、当該導入孔80から糸を引き出す構成なので、下流側に向かって糸をまっすぐに引き出すという構成を採り易い。この点、第1実施形態の糸貯留装置18は、斜めに配置された糸貯留ローラ32の周面から糸を引き出す構成なので、糸を下流側に向けて引き出すという構成を採用しにくい。従って、上記のように糸を下流側にまっすぐ引き出す構成とする場合には、第2実施形態の糸貯留装置64を採用することが好適である。
【0140】
なお、本変形例では偏向ガイド部材を省略したので、糸貯留装置64から引き出された糸を糸継装置14まで案内するための構成が別途必要となる。そこで、本実施形態では、上記第1及び第2実施形態のワインダユニットが備えていた上糸捕捉部13に代えて、上流側ヤーントラップ115を設けている。この上流側ヤーントラップ115は、下流側のヤーントラップ15と同様に負圧源に接続されており、その先端部に吸引流を発生させている。また、上流側ヤーントラップ115は、ヤーントラップ駆動部147によって、糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動可能に構成されている。
【0141】
制御部は、通常の巻き取り時においては、上流側ヤーントラップ115を糸走行経路に接近した位置まで移動させておく。これにより、下流側のヤーントラップ15と同様に、上流側ヤーントラップ115によって風綿の吸引除去を行うことができる。
【0142】
糸貯留装置64から糸を引き出す際には、制御部25は、サーボモータ55を停止するとともに、電磁弁51を開放状態としてガイド筒34内に空気流を発生させる。これにより、糸貯留装置64から上流側に向けてまっすぐに吹き飛ばすことができる。上流側に吹き飛ばされた糸は、上流側ヤーントラップが発生させている吸引流によって吸引され、当該上流側ヤーントラップに捕捉される。この状態で、制御部は、上流側ヤーントラップを後退させる。以上の構成により、糸貯留装置64から引き出した糸を、糸継装置14まで案内することができる。
【0143】
次に、上記第2実施形態の別の変形例について説明する。即ち、第2実施形態の糸貯留装置64は、糸貯留部71において糸を整列した状態で巻き取るため、ロッド部材82を傾斜させた状態で設けていた。しかし、このように構成すると、ロッド部材82に巻き付けられた糸が、上方へ移動するに従って弛んでしまうという問題がある。そこで、ロッド部材を傾斜させる構成に代えて、糸を上方に向かって積極的に送る部材を設けた構成としても良い。例えば、ローラ状の部材によって、糸貯留部の糸を積極的に上方に送る構成とすることができる。
【0144】
以上に本発明の好適な実施の形態及びその変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0145】
上記第1実施形態において、糸貯留装置18から糸を引き出す際には、ローラ駆動モータ33によって糸貯留ローラ32を逆回転させるものとしたが、上糸引出し部48によって上糸20bを引き出す力が十分に強い場合は、ローラ駆動モータ33をニュートラルにするだけでも良い。
【0146】
上記実施形態の説明では、図面で説明する関係上、下糸20aの案内を先に行い、その後に上糸20bを案内するように説明したが、これに限らず、上糸20bの案内を先に行っても良い。なお、図19に示す従来の構成の場合、仮に下糸20aの案内と上糸20bの案内を同時に行うと、2つの糸案内パイプ91,92同士が干渉してしまうという問題があったので、上糸と下糸の案内を同時に行うことができなかった。この点、上記実施形態又はその変形例のように構成すれば、糸案内パイプは多くても1つであるので、糸案内パイプ同士が干渉してしまうという問題は発生しない。従って、上記実施形態又はその変形例に示した自動ワインダにおいては、下糸20aの案内と上糸20bの案内を同時に行うこともできる。
【0147】
ヤーントラップ15は、糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動可能であるとしたが、この構成を省略し、糸走行経路から離間した位置(糸継装置14に下糸20aを導入できる位置)で固定する構成でも良い。ただし、このように構成すると、通常の巻取時において、ヤーントラップ15を糸走行経路に接近させることができないので、糸20に対して吸引流を強力に作用させることが難しく、糸20に付着した風綿の除去等が確実に行えない可能性がある。また、このように構成した場合、糸欠陥を検出して糸20を切断した際に、下糸の糸端を捕捉できない可能性もある。従って、上記実施形態のように、ヤーントラップ15は、糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動可能であることが好ましい。
【0148】
偏向ガイド部材60の形状は、上記実施形態のものに限らず、上糸引出し部48からの噴出空気を上糸捕捉部13まで適切に案内できる形状であれば、適宜の形状とすることができる。なお、例えば上糸引出し部48から空気が噴出する方向の先に上糸捕捉部13を配置することが可能であれば、偏向ガイド部材60が無くても上糸20bを上糸捕捉部13まで案内することができるので、この場合は偏向ガイド部材60を省略することができる。
【0149】
制御部25は、ワインダユニット2ごとに備える構成に限らず、1つの制御部によって複数のワインダユニットを制御するように構成されていても良い。また、上記の説明では、1つの制御部25によって複数の部材の制御をまとめて行うように構成しているが、これに限らず、例えば、制御対象の部材ごとに個別に制御部を設けても良い。
【0150】
制御部25は、ハードウェアとソフトウェアから構成されるとしたが、その機能の一部又は全部が専用のハードウェアから構成されていても良い。
【0151】
上記実施形態のワインダユニット2はマガジン式のボビン供給装置26によって給糸ボビン21を供給する構成であるが、この構成に限定されない。例えば、給糸ボビン21をセットしたトレイを適宜の経路に沿って搬送することでワインダユニット2に給糸ボビン21を供給する構成に変更することもできる。
【0152】
上記実施形態において、巻取部8は、綾振ドラム24によって糸20をトラバースさせる構成であるが、例えばアーム式の綾振り機構で糸20をトラバースさせる構成としても良い。
【0153】
また、本発明の構成は、自動ワインダに限らず、糸継装置を備えた他の種類の糸巻取装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
2 ワインダユニット
7 ボビン支持部
8 巻取部
11 下糸吹上げ部(糸吸引噴出部)
12 上糸捕捉部(糸捕捉部)
14 糸継装置
15 ヤーントラップ(第2糸捕捉部)
17 クリアラ(糸欠点検出装置)
18 糸貯留装置
25 制御部
34 ガイド筒
49 空気噴出ノズル
48 上糸引出し部(糸引出し噴出部)
60 偏向ガイド部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸巻取装置に関する。詳細には、糸継時において糸継装置まで糸を案内するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンに巻かれた紡績糸の欠陥を除去しつつ、巻取パッケージに巻き返す自動ワインダ等の糸巻取装置が知られている。
【0003】
自動ワインダによる糸の巻き返しでは、給糸ボビンから解舒される紡績糸に張力を付与しつつ、この紡績糸を多数の糸ガイドなどを経て綾振装置まで案内し、回転する巻取パッケージの表面に前記綾振装置によって糸を綾振りしながら巻き取る。そして、前記給糸ボビンが空になると、当該空の給糸ボビンを新しい給糸ボビンに交換し、糸継装置による糸継ぎを行い、パッケージへの巻取りを継続するように構成される。
【0004】
糸継装置において糸継ぎを行うためには、パッケージ側の糸と、給糸ボビン側の糸とを、糸継装置まで案内する必要がある。従来は、パイプ状の糸案内部材の先端に吸引流を発生させて糸を吸引捕捉した後、当該糸案内部材を回動させることにより、前記糸を糸継装置まで案内していた。
【0005】
このような従来の自動ワインダの構成を、図19を参照して簡単に説明する。図19に示すのは、従来の自動ワインダが備えるワインダユニット90の概略的な側面図である。このワインダユニット90は、給糸ボビン21の紡績糸20をパッケージ30に巻き返すように構成されている。また、このワインダユニット100は、糸継を行うための糸継装置14と、糸案内パイプ(上糸案内パイプ91、下糸案内パイプ92)を備えている。
【0006】
糸案内パイプ91,92は図略の負圧源に接続されており、上糸案内パイプ91の吸引口91a及び下糸案内パイプ92の吸引口92aには、それぞれ吸引流を発生させることができるように構成されている。また、上糸案内パイプ91は支点91bを中心にして上下に回動することができるように構成されている。同様に、下糸案内パイプ92は支点92bを中心にして上下に回動できるように構成されている。
【0007】
上記のような従来の自動ワインダにおける糸継動作について説明する。即ち、給糸ボビン21が交換される等によりパッケージ30と給糸ボビン21との間の糸の連続状態が切断されると、下糸案内パイプ92の吸引口92aによって給糸ボビン21側の糸端の吸引捕捉が行われる。続いて、上糸案内パイプ91を上方に回動させるとともに、パッケージ30を逆回転させる。これにより、パッケージ30から糸端が引き出されて上糸案内パイプ91の吸引口91aに吸引される。このときの様子を図20に示す。
【0008】
次に、図21に示すように、パッケージ30側の糸(上糸)を吸引保持した状態の上糸案内パイプ91を、下方に回動させる。これにより、パッケージ30側の上糸が糸継装置14に導入される。続いて図22に示すように、給糸ボビン21側の糸(下糸)を吸引保持した状態の下糸案内パイプ92を、上方に回動させる。これにより、給糸ボビン21側の下糸が糸継装置14に導入される。この状態で、糸継装置14を作動させることにより、上糸と下糸との糸継ぎが実行され、パッケージ30と給糸ボビン21との間で糸が連続状態となる。以上のようにして糸継ぎを行うことにより、パッケージ30への糸の巻取りを継続することができる。
【0009】
このように、糸案内部材(糸案内パイプ91,92)を回動させることにより糸端を案内する従来の構成の場合、当該糸案内部材を回動駆動するための機構が必要となり、機構が複雑になるという問題があった。また、機構が複雑であるが故に、レイアウトを自由に設計することが難しかった。また、回動する糸案内部材との干渉を避けるようにして他の構成を配置しなければならないため、この点でもレイアウトが限定されていた。また、糸案内部材を回動駆動して糸端を案内するためには一定の時間が必要となるので、糸継ぎに掛かる時間が長くなっていた。
【0010】
この点、糸を所望の位置まで案内するための構成としては、上記のように糸案内部材を回動駆動する構成以外の構成も提案されている。
【0011】
例えば特許文献1が開示する綾巻きボビン巻成機は、負圧によってパッケージ側の糸を吸い込む吸込みノズルを備えている。この吸込みノズルには縦スリットが形成されており、吸込みノズルによって吸い込まれた糸は前記縦スリットから取り出され、糸把持部材によって糸切れ除去装置(糸継装置)まで案内される。このように、吸込みノズルから縦スリットを介して糸を取り出すように構成されているので、吸込みノズル自体を回動させなくても、当該吸込みノズルが吸い込んだ糸を糸継装置まで案内することができる。
【0012】
一方、特許文献2が開示する給糸処理装置は、ブローノズルから空気を噴出することにより、緯糸測長貯溜装置の導入口付近に吸引空気流を発生させて、糸端を糸巻付管内に導入するように構成されている。このように噴出空気によって吸引空気流を発生させる構成とした場合、当該吸引空気流によって糸端を吸引することができるとともに、当該糸端を噴出空気の流れに乗せて所望の位置まで案内することができる。従って、糸端を案内するために何らかの部材を駆動する必要が無い。
【0013】
特許文献1及び特許文献2のような構成で糸を案内する構成とすることにより、大きく回動する糸案内部材(図19の糸案内パイプ91,92等)を省略できるので、装置全体の構造を簡単にして各構成のレイアウトの自由度を向上させることができると考えられる。また、糸案内部材を駆動して糸を案内する構成と比べて、糸の案内に必要な時間を短縮することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平4−213563号公報
【特許文献2】特開平4−241136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、特許文献1は、スリットが形成された吸込みノズルに吸気を負荷することで、綾巻きボビンの糸を吸引する構成としている。この構成の場合、前記スリットから吸込みノズルの内部に空気が流入してしまうので、吸込みノズルの先端における吸引力が低下し、糸端を確実に吸引捕捉することが難しいという問題がある。また、特許文献1において、吸込みノズルは、ボビン幅まで拡大された入口開口を有している(なお、この点は図19の上糸案内パイプ91の吸引口91aも同様である)。これは、吸引捕捉すべき糸端が綾巻ボビンのボビン幅方向でどの位置にあるか不確定であるため、当該糸端を確実に吸引捕捉するためには、綾巻きボビンのボビン幅全域にわたって吸引空気流を発生させなければならないためである。しかしながら、このように入口開口を大きく形成した場合、吸込みノズルの吸引力が更に低下してしまう。
【0016】
この点、特許文献2は、緯糸チーズから糸端を引き剥がして前記導入口まで案内する羽毛ベルトを備えている。この構成によれば、羽毛ベルトで送られてきた糸端を緯糸測長貯溜装置の導入口で吸引すれば良いだけなので、当該導入口の幅をチーズ幅まで拡大する必要がない。従って、導入口の開口面積を小さく形成して、当該導入口に発生させる吸引流の強度を保ち、糸の吸引捕捉の確実性を向上させることができると考えられる。しかしながら、この羽毛ベルトは緯糸ボビンに接近又は離間する方向に駆動される必要があるため、構造が複雑である。また、羽毛ベルトはチーズ表面に擦過作用を加えるものであり、当該チーズ形状に悪影響を及ぼすおそれがあるため、チーズ(パッケージ)自体を製造することが目的の自動ワインダ等に採用することは好ましくない。更に言えば、特許文献2が開示する構成は糸継装置を備えていないため、糸継装置を備えた糸巻取装置にはそのまま適用することができない。
【0017】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、レイアウトの自由度を向上させるとともに、糸継装置まで糸を短時間で案内することができる糸巻取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0018】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0019】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取装置が提供される。即ち、この糸巻取装置は、ボビン支持部と、糸貯留装置と、巻取部と、糸継装置と、糸案内部と、を備える。前記ボビン支持部は、給糸ボビンを支持する。前記糸貯留装置は、前記給糸ボビンから解舒された糸を貯留する。前記巻取部は、前記糸貯留装置上に貯留された糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記糸継装置は、前記ボビン支持部と前記糸貯留装置との間で糸が分断された時に、前記給糸ボビン側の糸と、前記糸貯留装置側の糸と、を糸継ぎする。前記糸案内部は、前記糸貯留装置から糸を引き出して前記糸継装置まで案内する。また、前記糸案内部は、糸引出し噴出部と、空気噴出部と、糸捕捉部と、糸捕捉空気流発生部と、を備える。前記糸引出し噴出部は、前記糸貯留装置に貯留された糸を引き出して前記ボビン支持部側に吹き飛ばす。前記空気噴出部は、前記糸引出し噴出部に、糸を引き出して吹き飛ばすための空気流を発生させる。前記糸捕捉部は、前記糸継装置と前記ボビン支持部との間に配置され、前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する。前記糸捕捉空気流発生部は、糸を捕捉して前記糸継装置に導入するための空気流を、前記糸捕捉部に発生させる。
【0020】
このように、噴出空気によって糸を吹き飛ばして糸継装置まで案内する構成としたことにより、糸を案内するための構成が簡単になる結果、各構成のレイアウトの自由度が向上する。また、糸を吹き飛ばすだけで糸継装置への案内が完了するので、糸の案内動作に必要な時間を短縮し、パッケージの生産効率を向上させることができる。また、仮にパッケージから糸を引き出す構成とした場合は、糸端を確実に捕捉するために、パッケージの全幅にわたって吸引流を作用させなければならずエネルギーの消費が大きい。この点、上記のように糸貯留装置から糸を引き出す構成とした場合は、糸端の位置が存在するとわかっている位置にのみ吸引流を作用させれば良いので、少ないエネルギーで確実に糸端を吸引することができる。
【0021】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記糸引出し噴出部は、糸の巻取時において給糸ボビン側の糸を糸貯留装置までガイドするガイド筒である。前記空気噴出部は、前記ガイド筒の内部に圧縮空気を噴射する空気噴出ノズルである。
【0022】
この構成で、糸は、ガイド筒を介して糸貯留装置に貯留されるので、逆に糸貯留装置から糸を引き出すときには、当該ガイド筒を介して糸を引き出すことにより、確実かつスムーズに糸貯留装置から糸を引き出すことができる。従って、上記のようにガイド筒が糸引出噴出部を兼ねるように構成することで、糸貯留装置に巻き取られた糸を、確実かつスムーズに吹き飛ばすことができる。
【0023】
上記の糸巻取装置は、前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を前記糸捕捉部まで案内する偏向ガイド部材を備えることが好ましい。
【0024】
このように、糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を、偏向ガイド部材によって糸捕捉部まで案内することにより、糸引出し噴出部と糸捕捉部とを自由に配置することができ、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0025】
上記の糸巻取装置において、前記偏向ガイド部材は、筒状部材であり、筒の長手方向に沿ってスリットが形成されていることが好ましい。
【0026】
このように、偏向ガイド部材を筒状とすることにより、糸を、前記筒の内部に通過させるようにして確実に糸捕捉部まで案内することができる。また、筒状の偏向ガイド部材にスリットを設けることにより、糸捕捉部への案内が完了した糸を前記スリットから取り出すことができる。これにより、通常の巻取時には偏向ガイド部材の外側で糸を走行させることができるので、糸が偏向ガイド部材に接触して品質が低下してしまうことを防止できる。
【0027】
上記の糸巻取装置において、前記偏向ガイド部材は、糸巻取時に糸が走行する走行経路から外れた位置に備えられていることが好ましい。
【0028】
これにより、通常の巻取時において、糸が当該偏向ガイド部材に接触してしまうことを防止し、当該糸の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0029】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置まで案内する第2糸案内部を備える。また前記第2糸案内部は、糸吸引噴出部と、第2糸捕捉部と、第2糸捕捉空気流発生部と、を備える。前記糸吸引噴出部は、前記ボビン支持部と前記糸継装置との間に配置され、前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置の近傍まで吹き飛ばす。前記第2糸捕捉部は、前記糸継装置と糸貯留装置との間に配置され、前記糸吸引噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する。前記第2糸捕捉空気流発生部は、糸を捕捉するための空気流を前記第2糸捕捉部に発生させる。
【0030】
これにより、給糸ボビン側の糸を吹き飛ばして糸継装置まで案内することができる。従って糸巻取装置の各構成のレイアウトの自由度が更に向上するとともに、糸継ぎに掛かる時間を更に短縮できる。
【0031】
上記の糸巻取装置は、前記第2糸捕捉部を糸走行経路に対して接近又は離間する方向に駆動することが可能な駆動部を備えることが好ましい。
【0032】
これにより、糸を捕捉し易い位置(糸走行経路に接近した位置)まで、第2糸捕捉部を移動させておくことができる。
【0033】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記駆動部の作動を制御する制御部を備える。当該制御部は、通常の巻取時においては、前記第2糸捕捉部を糸走行経路に接近させ、糸継ぎ時には、糸を捕捉した状態の前記第2糸捕捉部を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記捕捉した糸を糸継装置に導入する。
【0034】
このように、通常の巻取時には第2糸捕捉部を糸走行経路に接近させておくことにより、糸に付着している風綿等を吸引除去することができる。一方、第2糸捕捉部が糸を捕捉したときには、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記糸を糸継装置に導入することができる。
【0035】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、前記糸継装置、前記糸引出し噴出部、及び前記糸吸引噴出部を制御する制御部を備える。前記制御部は、前記ボビン支持部に新しい給糸ボビンが供給された場合、前記糸吸引噴出部により前記新しい給糸ボビンの糸を吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、前記制御部は、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸捕捉部に捕捉させる。その後、前記制御部は、糸継装置を作動させて糸継ぎを行う。
【0036】
これにより、給糸ボビンが交換された際、給糸ボビン側の糸と、糸貯留装置側の糸を、糸継装置に案内して糸継ぎを行うことができる。
【0037】
上記の糸巻取装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この糸巻取装置は、糸欠陥検出装置と、前記第2糸捕捉部よりも下流側の位置において、前記給糸ボビンと前記糸貯留装置との間の糸を切断するカッタと、を備える。前記制御部は、前記糸欠陥検出装置で糸欠陥が検出された場合、前記カッタを作動させて前記糸を切断し、前記給糸ボビン側の糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、前記制御部は、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を糸捕捉部に捕捉させる。その後、前記制御部は、糸継装置を作動させて糸継ぎを行う。
【0038】
これにより、糸欠点が検出された糸が切断された際、給糸ボビン側の糸と、糸貯留装置側の糸を、糸継装置に案内して糸継ぎを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動ワインダが備えたワインダユニットの模式的な側面図。
【図2】糸貯留装置の構成を説明する図。
【図3】給糸ボビンが空になったときの様子を示す図。
【図4】新しい給糸ボビンが供給されたときの様子を示す図。
【図5】下糸が下糸吹上げ部に導入されたときの様子を示す図。
【図6】下糸吹上げ部の概略的な外観斜視図。
【図7】下糸吹上げ部の構成を示す側面一部断面図。
【図8】ヤーントラップが下糸を吸引捕捉したときの様子を示す図。
【図9】下糸が糸継装置に導入されたときの様子を示す図。
【図10】偏向ガイド部材の構成を示す外観斜視図。
【図11】偏向ガイド部材によって上糸が案内される様子を示す図。
【図12】偏向ガイド部材から上糸が取り出されるときの様子を示す図。
【図13】上糸が糸継装置に導入されたときの様子を示す図。
【図14】第1実施形態の変形例を示す図。
【図15】本発明の第2実施形態に係る自動ワインダが備えたワインダユニットの模式的な側面図。
【図16】第2実施形態のワインダユニットが備えた糸貯留装置の構成を説明する図。
【図17】第2実施形態の変形例に係る自動ワインダが備えたワインダユニット。
【図18】第2実施形態の変形例に係るワインダユニットが備えた糸貯留装置の構成を示す図。
【図19】従来の自動ワインダが備えたワインダユニットの模式的な側面図。
【図20】従来のワインダユニットにおいて上糸及び下糸を吸引捕捉したときの様子を示す図。
【図21】従来のワインダユニットにおいて上糸を糸継装置に導入したときの様子を示す図。
【図22】従来のワインダユニットにおいて下糸を糸継装置に導入したときの様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る自動ワインダ(糸巻取装置)が備えるワインダユニット2の概略的な側面図である。本実施形態の自動ワインダは、多数のワインダユニット2を並べて配置した構成となっている。また、この自動ワインダは、前記ワインダユニット2を集中的に管理するための図略の機台管理装置と、圧縮空気源及び負圧源を備えた図略のブロアボックスと、を備えている。
【0041】
図1に示すように、ワインダユニット2は、ボビン支持部7と、巻取部8と、を主に備えている。このワインダユニット2は、ボビン支持部7に支持された給糸ボビン21の糸(紡績糸)20を解舒して、パッケージ30に巻き返すように構成されている。なお、図1は、通常の巻取時におけるワインダユニット2の様子を示している。本明細書において、「通常の巻取時」とは、給糸ボビン21とパッケージ30との間で糸が連続状態であり、かつ給糸ボビン21から糸が解舒されてパッケージ30に糸が巻き取られている状態をいう。
【0042】
ボビン支持部7は、給糸ボビン21を略直立状態で保持することが可能に構成されている。また、このボビン支持部7は、空になった給糸ボビン21を排出することができるように構成されている。巻取部8は、巻取ボビン22を装着可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための綾振ドラム24と、を備えている。
【0043】
綾振ドラム24は巻取ボビン22に対向して配置されており、この綾振ドラム24を回転駆動することにより、巻取ボビン22を従動回転させる。これにより、後述の糸貯留装置18に貯留された糸20を巻取ボビン22に巻き取ることができる。また、綾振ドラム24の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸20を所定の幅でトラバース(綾振り)することが可能になっている。以上の構成で、糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とすることができる。なお、以下の説明において「上流側」「下流側」という時には、糸の走行方向で見たときの上流側及び下流側をいうものとする。
【0044】
各ワインダユニット2は、制御部25を備えている。この制御部25は、図略のCPU、ROM、RAM等のハードウェアと、前記RAMに記憶された制御ブログラム等のソフトウェアと、から構成されている。そして、前記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、ワインダユニット2の各構成を制御するように構成されている。また、各ワインダユニット2が備える制御部25は、前記機台管理装置と通信可能に構成されている。これにより、自動ワインダが備える複数のワインダユニット2の動作を、機台管理装置において集中的に管理することが可能となっている。
【0045】
またワインダユニット2は、ボビン支持部7と巻取部8との間の糸走行経路中に、各種の装置を備えている。具体的に説明すると、前記糸走行経路には、ボビン支持部7側から巻取部8側へ向かって順に、解舒補助装置10と、下糸吹上げ部(糸吸引噴出部)11と、テンション付与装置12と、上糸捕捉部(糸捕捉部)13と、糸継装置14と、ヤーントラップ(第2糸捕捉部)15と、カッタ16と、クリアラ(糸欠陥検出装置)17と、上糸引出し部48と、糸貯留装置18と、が配置されている。
【0046】
解舒補助装置10は、給糸ボビン21から解舒される糸20が振り回されて給糸ボビン21上部に形成されるバルーンに対し、可動部材40を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助するためのものである。
【0047】
下糸吹上げ部11は、ボビン支持部7と糸継装置14との間(正確には、解舒補助装置10のすぐ下流側)に配置されたエアサッカー装置であり、糸継ぎ時において、給糸ボビン21側の下糸を糸継装置14側に向かって吹き上げるように構成されている(詳しくは後述)。
【0048】
テンション付与装置12は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置12は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式に構成されている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動可能に構成されている。もっとも、テンション付与装置12の構成はこれに限らず、例えばディスク式のテンション付与装置でも良い。
【0049】
上糸捕捉部13は、糸継装置14とボビン支持部7との間(正確には、糸継装置14のすぐ上流側)に配置されている。この上糸捕捉部13は図略の負圧源(糸捕捉空気流発生部)に接続されており、糸継時に吸引空気流を発生させて糸貯留装置18側の上糸を吸引捕捉するように構成されている(詳しくは後述)。
【0050】
ヤーントラップ15は、糸継装置14と糸貯留装置18との間(正確には、カッタ16の上流側であって糸継装置14のすぐ下流側)に配置されている。このヤーントラップ15の先端は筒状の部材として形成されており、糸20の走行経路に接近して設けられているとともに、図略の負圧源(第2糸捕捉空気流発生部)に接続されている。この構成で、ヤーントラップ15の先端に吸引空気流を発生させて、走行する糸20に付着している風綿などのゴミを吸引除去することができる。
【0051】
クリアラ17は、糸20の糸太さを監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。クリアラ17は、糸の欠陥を検出すると、当該糸欠陥の切断除去を指示する分断信号を制御部25等に送信する。クリアラ17の近傍には、前記分断信号に応じて直ちに糸20を切断するためのカッタ16が配置されている。
【0052】
糸継装置14は、クリアラ17が糸欠陥を検出してカッタ16で糸を切断する糸切断時、給糸ボビン21からの解舒中の糸の糸切れ時、又は給糸ボビン21の交換時等において、給糸ボビン21とパッケージ30との間の糸が分断状態となったときに、給糸ボビン21側の下糸と、糸貯留装置18側の上糸とを糸継ぎするものである。このような糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるものや、機械式のものを使用することができる。
【0053】
上糸引出し部48はエアサッカー装置であり、糸継時において、糸貯留装置18側の上糸を引き出してボビン支持部7側に向かって吹き飛ばすガイド筒34(糸引出し噴出部)を備えている(詳しくは後述)。
【0054】
糸貯留装置18は、給糸ボビン21から解舒した糸20を一時的に貯留することが可能に構成されている。このように、ボビン支持部7と巻取部8との間に糸貯留装置18を介在させ、当該糸貯留装置18上に一定量の糸20を貯留しているので、何らかの理由で給糸ボビン21からの糸の解舒が中断された場合(例えば糸継動作の最中)であっても、巻取部8は、糸貯留装置18上に貯留された糸を巻き取ることができるので、パッケージ30への糸20の巻取を継続することができる。このように、巻取部8における巻取動作が糸継動作等によって中断されないので、高速かつ安定してパッケージ30を生成することができる。また、従来の糸巻取装置のように、糸継ぎ作業毎にパッケージ30から糸が吸引捕捉されることがないので、パッケージ30表面に乱れが発生することを防ぐことができる。更に、巻取部8での糸切れ発生が少なくなるので、糸がパッケージ30の端面に落ちたり、巻き形状不良が発生したりすることを防ぐことができる。
【0055】
また、ワインダユニット2の正面側には、マガジン式のボビン供給装置26が配置されている。このボビン供給装置26は、回転式のマガジンカン27を備えている。このマガジンカン27は予備の給糸ボビン21を複数保持することが可能に構成されている。ボビン供給装置26は、マガジンカン27を間欠的に回転駆動することにより、ボビン支持部7に対して新しい給糸ボビン21を供給することができるように構成されている。また、ボビン供給装置26は、マガジンカン27に保持された給糸ボビン21の糸端を吸引保持する糸端保持部28を備えている。
【0056】
次に、図2を参照して、糸貯留装置18について説明する。図2に示すように、糸貯留装置18は、糸貯留ローラ32と、ローラ駆動モータ33と、を主に備えている。
【0057】
糸貯留ローラ32は略円筒状の部材として形成されており、その外周面に糸20を巻き付けて当該糸20を貯留することができるように構成されている。ローラ駆動モータ33は、糸貯留ローラ32を、その中心軸線を中心として回転駆動するように構成されている。なお、ローラ駆動モータ33の動作は制御部25によって制御されている。ここで、ローラ駆動モータ33が配置されている側の糸貯留ローラ32の端部を基端部、反対側の端部を先端部と呼ぶことにする。
【0058】
図2に示すように、糸貯留ローラ32の基端部には、端部に行くに従って径が拡大するテーパ状の基端側テーパ部32aが形成されている。一方、糸貯留ローラ32の先端部には、端部に行くに従って径が拡大するテーパ状の先端側テーパ部32bが形成されている。このようにテーパ部を形成することにより、糸貯留ローラ32の端部から糸20がすり抜けてしまうことを防止している。また、糸貯留ローラ32のうち、円筒状に形成された部分(径が略一定の部分)を円筒部32cと呼ぶ。なお、この円筒部32cにも、貯留された糸を下流側に移動させるための微小テーパが形成されている。
【0059】
糸貯留ローラ32の基端側テーパ部32aと円筒部32cとの境界部分近傍には、上糸引出し部48のガイド筒34が配置されている(なお、上糸引出し部48の構成については後述する)。このガイド筒34は筒状の部材として構成されており、その一側の端部(吸引側端部34a)が糸貯留ローラ32の表面に接近して配置されている。通常の巻取時において、給糸ボビン21側の糸は、このガイド筒34の他側の端部(噴出側端部34b)から当該ガイド筒34内に導入され、前記吸引側端部34aから糸貯留ローラ32の表面に向かって引き出される。このように、通常の巻取時においては、給糸ボビン21側の糸20が、ガイド筒34によって糸貯留ローラ32の表面まで案内されるようになっている。
【0060】
糸貯留ローラ32に糸20を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ32を一方向に回転させることにより、糸貯留装置18よりも上流側(給糸ボビン21側)の糸20に対して張力を付与することができる。これにより、給糸ボビン21から糸20を解舒して、当該糸20を糸貯留ローラ32の表面に巻き付けていくことができる。図2に示すように、糸20は、基端側テーパ部32aと円筒部32cとの境界部分に案内されているので、円筒部32cの基端部側から前の糸層を押し上げながら順次巻き付いていく。その結果、糸貯留ローラ32上にある糸20は、新しく巻き付けられた糸20によって押され、円筒部32cの表面において先端部側に向かって順次送られる。このようにして、糸貯留ローラ32の外周表面において、糸20が螺旋状に整列して基端部側から規則正しく巻き付いていくようになっている。なお、以下の説明で、通常の巻取時に糸貯留ローラ32を回転させることを「正回転」と呼ぶ。また、正回転の反対向きに糸貯留ローラ32を回転させたときを「逆回転」と呼ぶ。
【0061】
一方、糸貯留ローラ32の先端側テーパ部32bからは、当該糸貯留ローラ32上の糸20が引き出されて下流側(巻取部8側)に送られるようになっている。また、この先端側テーパ部32bにおいて、糸貯留ローラ32上の糸20は、糸貯留ローラ32の中心軸線の延長線上に配置された引出しガイド37を介して下流側へ引き出されるようになっている。このように、糸貯留ローラ32の中心軸線の延長線上に向かって糸20を引き出すように構成することで、糸貯留ローラ32の回転状態によらず当該糸貯留ローラ32から糸20を引き出すことができる。即ち、糸貯留ローラ32が正回転、逆回転、又は回転停止状態であっても、巻取部8は、糸貯留ローラ32から糸20を解舒してパッケージ30に巻き取ることができる。
【0062】
なお、糸貯留ローラ32の円筒部32cと先端側テーパ部32bとの境界部分には、輪ゴム(Oリング)32dが配置されており、この輪ゴム32dと糸貯留ローラ32の表面との間を通して、当該糸貯留ローラ32から糸20が引き出されるようになっている。なお、輪ゴム32d自体は、糸につられて引き外されることを先端側テーパ部32bによって阻止されている。以上の構成により、糸貯留ローラ32から解舒される糸20に対して、糸貯留ローラ32に対する輪ゴム32dの締め付けによる適度な張力を与えることができるので、当該糸20の解舒を安定させることができる。更に、糸の塊を解いて解舒することができるので、糸貯留ローラ32上の糸が塊になって一度に抜けてしまうスラッフィングという不具合を防止することができる。また、糸が解舒される際の振り回しにより発生するバルーンを発生させない作用もある。
【0063】
糸貯留ローラ32の近傍には、当該糸貯留ローラ32上の糸20が所定の上限量以上になったことを検出する上限センサ36と、所定の下限量未満になったことを検出する下限センサ35と、が配置されている。下限センサ35と上限センサ36の検出結果は、制御部25へと送られる。
【0064】
制御部25は、糸貯留ローラ32上の糸が前記下限量未満になったことを検出すると、ローラ駆動モータ33を適宜制御して糸貯留ローラ32の回転速度を増大させる。これにより、糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度が増大する。一方、通常の巻取時において、綾振ドラム24の回転速度は略一定とされるので、糸貯留ローラ32上の糸20がパッケージ30側に向かって解舒される速度は略一定である。制御部25は、糸貯留ローラ32から糸20が解舒される速度に比べて、当該糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度の方が大きくなるようにローラ駆動モータ33を制御することで、糸貯留ローラ32上の糸20の貯留量を徐々に増やすことができる。
【0065】
一方、制御部25は、糸貯留ローラ32上の糸が前記上限量以上となったことを検出すると、ローラ駆動モータ33を適宜制御して糸貯留ローラ32の回転速度を減少させる。これにより、糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度が減少する。制御部25は、糸貯留ローラ32から糸20が解舒される速度に比べて、当該糸貯留ローラ32へ糸20が巻き取られる速度の方が小さくなるようにローラ駆動モータ33を制御することで、糸貯留ローラ32上の糸20の量を徐々に減らすことができる。上記のような制御により、糸貯留ローラ32上の糸20の貯留量を、下限量以上、上限量未満に保つことができる。
【0066】
次に、給糸ボビン21の交換動作について説明する。
【0067】
給糸ボビン21の糸が無くなると、当該給糸ボビン21に残っていた糸が全て糸貯留装置18に巻き取られてしまうので、図3に示すように、給糸ボビン21(空のボビン)と糸貯留装置18との間で糸が不連続状態となる。従って、糸20の巻取りを継続するためには、新しい給糸ボビン21を供給した後、当該新しい給糸ボビン21側の糸と糸貯留装置18上の糸とを接続(糸継ぎ)する必要がある。なお、給糸ボビン21か空になったとしても、糸貯留装置18には所定量の糸20が貯留されているので、当該貯留された糸20が無くなるまでは、巻取部8におけるパッケージ30への糸20の巻取りを中断する必要は無い。以下、給糸ボビン21の交換動作について順を追って説明する。
【0068】
まず、制御部25は、ボビン支持部7を駆動することにより空になったボビンを排出する。続いて、制御部25は、ボビン供給装置26のマガジンカン27を駆動することにより、新しい給糸ボビン21をボビン支持部7に対して供給する。このとき、図4に示すように、新しい給糸ボビン21は斜めの状態で供給される。また前述のように、マガジンカン27に保持されている給糸ボビン21の糸端は糸端保持部28に吸引保持されているので、当該マガジンカン27から供給された給糸ボビン21と、前記糸端保持部28と、の間で糸20を引いた状態となっている。なお、以下の説明において、特に必要がある場合は、給糸ボビン21側の糸20を下糸20aと表記する。
【0069】
続いて制御部25は、図5に示すように、ボビン支持部7を駆動して新しい給糸ボビン21を直立させるとともに、下糸吹上げ部11の近傍に配置された糸寄せ部材43を駆動する。当該糸寄せ部材43は、給糸ボビン21と前記糸端保持部28との間の下糸20aに係合可能であるとともに、下糸吹上げ部11に向かって移動可能に構成されている。そして、この糸寄せ部材43を、下糸20aに係合させた状態で駆動することにより、図5に示すように、下糸20aを下糸吹上げ部11に向かって寄せることができるように構成されている。
【0070】
下糸吹上げ部11は、図6の外観斜視図に示すようにブロック状に形成されている。当該ブロックには、糸導入孔41と、前記糸導入孔41に連通するスリット42と、が形成されている。前記糸寄せ部材43によって寄せられた下糸20aは、スリット42を介して糸導入孔41に導入される。
【0071】
ここで、下糸吹上げ部11について、図7の一部断面図を参照して更に詳しく説明する。図7に示すように、下糸吹上げ部11には、前記糸導入孔41に連通する空気噴出ノズル44が形成されている。この空気噴出ノズル44は細長く形成された丸孔として構成されている。また、空気噴出ノズル44は、電磁弁45を介して、適宜の圧縮空気源46に接続されている。この電磁弁45は、制御部25によって制御される。以上の構成で、制御部25が前記電磁弁45を開放状態とすると、空気噴出ノズル44から糸導入孔41内に向かって圧縮空気が供給される。
【0072】
空気噴出ノズル44の噴出口は、糸20の走行方向下流側に向かって空気を噴出するように形成されている。従って、当該空気噴出ノズル44から圧縮空気が噴出された場合、糸導入孔41内において糸20の走行方向下流側(図7の上向き)に向かって流れる空気流が発生する。これにより、糸導入孔41内に導入されている下糸20aを、前記空気流に乗せて下流側に向けて吹き飛ばすことができる。
【0073】
給糸ボビン21の交換動作の続きを説明する。糸寄せ部材43によって糸導入孔41に下糸20aが導入されると、制御部25は、給糸ボビン21と糸端保持部28との間の下糸20aを図略のカッタによって切断するとともに、電磁弁45を開放して空気噴出ノズル44に圧縮空気を供給する。これにより、糸導入孔41内において下流側に向かう空気流が発生し、当該空気流によって下糸20aが下流側に向かって吹き飛ばされる。
【0074】
下糸吹上げ部11の下流側には、前述のヤーントラップ15が配置されており、その先端に吸引流を発生させている。下糸吹上げ部11から吹き飛ばされた下糸20aは、ヤーントラップ15によって吸引捕捉される。このときの様子を、図8に示す。
【0075】
ヤーントラップ15の近傍には、当該ヤーントラップ15を糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動することが可能なヤーントラップ駆動部47が配置されている。このヤーントラップ駆動部47の動作は、制御部25によって制御されている。制御部25は、ヤーントラップ15が下糸20aを吸引捕捉すると、ヤーントラップ駆動部47を作動させることにより、ヤーントラップ15を糸走行経路から離間する方向に駆動する。これにより、図9に示すように、下糸20aが糸継装置14に導入されるように構成されている。以上のように、下糸吹上げ部11とヤーントラップ15によって下糸20aを糸継装置14に導入することができるので、下糸吹上げ部11、ヤーントラップ15、及びヤーントラップ15に吸引空気流を発生させている負圧源は、下糸案内部(第2糸案内部)を構成していると言うことができる。
【0076】
以上のように、空気流によって下糸20aを吹き飛ばして糸継装置14まで案内しているので、例えば従来のワインダユニットが備えていた下糸案内部材(図19の下糸案内パイプ92)に比べて簡単な構成で、かつ素早く下糸を案内することができる。なお、制御部25は、下糸20aを糸継装置14まで案内する動作が終了すると、電磁弁45を閉じた状態とする。これにより、圧縮空気が無駄に消費されてしまうことを防ぐことができる。
【0077】
また制御部25は、下糸20aを糸継装置14まで案内する上記の制御と前後して、糸貯留装置18側の糸を糸継装置14まで案内する制御を行う。以下、具体的に説明する。なお、以下の説明で、特に必要がある場合は、糸貯留装置18側の糸20を、上糸20bと表記する。
【0078】
まず、上糸引出し部48について、図2を参照して説明する。上糸引出し部48は、前述のガイド筒34(糸引出し噴出部)と、当該ガイド筒34内に連通する空気噴出ノズル(空気噴出部)49と、から構成されている。この空気噴出ノズル49は細長く形成された丸孔として構成されている。また、空気噴出ノズル49は、電磁弁51を介して、適宜の圧縮空気源46に接続されている。この電磁弁51は、制御部25によって制御される。以上の構成で、制御部25が前記電磁弁51を開放状態とすると、空気噴出ノズル49からガイド筒34内に向かって圧縮空気が供給される。
【0079】
空気噴出ノズル49の噴出口は、噴出側端部34b側に向けて空気を噴出するように(糸貯留ローラ32の表面から遠ざかる方向に向けて空気を噴出するように)形成されている。従って、当該空気噴出ノズル49から圧縮空気を噴出した場合、ガイド筒34内において噴出側端部34bに向かって流れる空気流が発生する。この結果、噴出側端部34bからは空気が噴出される。一方、当該ガイド筒34内の空気の流れにつられて、反対側の端部(吸引側端部34a)には吸引流が発生する。
【0080】
糸貯留装置18側の上糸20bを糸継装置14まで案内する際には、制御部25は、電磁弁51を開放状態として、空気噴出ノズル49からガイド筒34内に向かって圧縮空気を供給する。この状態で、制御部25は、ローラ駆動モータ33を適宜制御することにより、糸貯留ローラ32を逆回転させる。これにより、糸貯留ローラ32の円筒部32cの基端部側から糸端が解舒されるとともに、当該糸端がガイド筒34の吸引側端部34aに発生している吸引流によって吸引され、ガイド筒34の内部に導入される。
【0081】
なお、図19に示すような従来の自動ワインダにおいて、パッケージ30に巻き取られた糸端を吸引捕捉するための上糸案内パイプ91は、パッケージの幅方向に拡大された吸引口91aが必要であった。これは、パッケージ30の表面に糸を巻き取る際にトラバースが行われている結果、クリアラ17が糸欠陥を検出してカッタ16で糸を切断した後や、給糸ボビン21の糸が全て巻き取られた後には、パッケージ30に巻き取られた糸の糸端が当該パッケージ30の幅方向でどの位置にあるかわからないため、当該糸端を確実に吸引捕捉するためにパッケージ30の幅方向の全域にわたって吸引流を発生させる必要があったためである。
【0082】
この点、本実施形態の自動ワインダにおいては、糸貯留ローラ32上において、円筒部32cと基端側テーパ部32aとの境界部分から整列して規則正しく糸20が巻き付けられている。これは、通常の巻取時においては、ガイド筒34によって円筒部32cと基端側テーパ部32aとの境界部分まで給糸ボビン21側の糸が案内されているためである。従って、クリアラ17が糸欠陥を検出してカッタ16で糸を切断した後や、給糸ボビン21の糸が全て巻き取られた後には、糸貯留ローラ32に巻き取られた糸の糸端は必ず円筒部32cと基端側テーパ部32aとの境界部分の近傍にあるはずなので、当該境界部分にのみ吸引流を発生させれば、糸端を確実に吸引することができる。即ち、ガイド筒34に吸引流を発生させることにより、糸端を確実に吸引することができる。このように、糸貯留装置18を備えた本実施形態の自動ワインダでは、従来の構成のような上糸を吸引するための拡大された吸引口を必要としないので、上糸を吸引するための十分な吸引流を、少ないエネルギーで発生させることができる。
【0083】
ガイド筒34内に吸引された糸端は、当該ガイド筒34内に発生している空気流に乗って噴出側端部34bから吹き出される。この噴出側端部34bから空気が噴出する方向の先には、偏向ガイド部材60の糸入口61が配置されている。
【0084】
偏向ガイド部材60は、図10の斜視図に示すように、湾曲した筒状の部材として構成されており、その一端側を糸入口61、他端側を糸出口62としている。前記ガイド筒34の噴出側端部34bから噴出した空気は、前記糸入口61から偏向ガイド部材60の内部に向かって流入し、湾曲した偏向ガイド部材60の内部を通ることにより湾曲した経路を案内され、糸出口62から偏向ガイド部材60外部に排出される。従って、上糸引出し部48から噴出空気に乗って吹き出された上糸20bは、図11に示すように、偏向ガイド部材60内を湾曲して流れる空気流に乗って、糸入口61から糸出口62まで案内される。
【0085】
糸出口62の先には、上糸捕捉部13が配置されている。上糸捕捉部13は、図略の負圧源に接続されており、その先端に形成された吸引流発生口に吸引流を発生させることができるように構成されている。また、上糸捕捉部13の吸引流発生口には、可動式の蓋部13aが配置されている。この蓋部13aは、制御部25によって駆動可能に構成されており、前記吸引流発生口を塞いだ状態と、吸引流発生口を開放した状態と、を切り換えることができるようになっている。
【0086】
制御部25は、上糸引出し部48によって糸貯留装置18から上糸20bを引き出すのと前後して、前記蓋部13aを駆動して上糸捕捉部13の前記吸引流発生口を開放状態とし、当該上糸捕捉部13に吸引流を発生させる。以上の構成により、偏向ガイド部材60の糸出口62まで案内されてきた上糸20bを、上糸捕捉部13が吸引保持することができる。なお、制御部25は、上糸捕捉部13に吸引流を発生させる必要が無いときには、蓋部13aによって前記吸引流発生口を塞ぐように制御する。これにより、上糸捕捉部13の内部に空気が流れ込むことを防止することができるので、無駄なエネルギーが消費されることを防ぐことができる。なお、蓋の開閉により吸引空気流の有無を制御する構成に代えて、例えば電磁弁によって空気の流れを制御する構成でも良い。
【0087】
また、図10に示すように、偏向ガイド部材60には、当該偏向ガイド部材60の外側と内側を連通するスリット63が形成されている。このスリット63は、筒状の偏向ガイド部材60の長手方向に沿って、糸入口61と糸出口62とを接続するように形成されている。また、本実施形態の偏向ガイド部材60は略U字状に形成されており、前記スリット63は、当該U字の内側の部分に沿って形成されている。
【0088】
このように偏向ガイド部材60にスリット63が形成されているので、糸出口62まで案内された上糸20bを上糸捕捉部13が吸引捕捉すると、図12に示すように、前記スリット63を介して上糸20bが偏向ガイド部材60の外側に取り出される。
【0089】
そして、偏向ガイド部材60から取り出された上糸20bを、上糸捕捉部13によって更に吸引することにより、図13に示すように、上糸20bを糸継装置14に導入することができるように構成されている。以上のように、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、偏向ガイド部材60と、上糸捕捉部13と、上糸捕捉部13に吸引空気流を発生させている負圧源と、によって、上糸20bを糸継装置14まで案内するように構成されているので、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、偏向ガイド部材60、上糸捕捉部13及び負圧源は、上糸案内部(糸案内部)を構成していると言うことができる。
【0090】
以上のように、空気流によって上糸20bを吹き飛ばして糸継装置14まで案内しているので、例えば従来のワインダユニットが備えていた上糸案内部材(図19の上糸案内パイプ91)に比べて簡単な構成で、かつ素早く上糸を案内することができる。従って、糸継動作に掛かる時間を短縮できるので、パッケージ30の生成効率を向上させることができる。
【0091】
上糸20bを糸継装置14まで案内する動作が終了すると、制御部25は、糸貯留ローラ32の逆回転を停止させるとともに、電磁弁51を閉じた状態とする。続いて、制御部25は、上糸捕捉部13の蓋部13aを閉じる。そして、制御部25は、糸継装置14を作動させることにより、上糸20bと下糸20aとを糸継ぎする。
【0092】
糸継ぎが終了すると、制御部25は、糸貯留ローラ32の正回転を開始して、新しい給糸ボビン21からの糸の解舒を開始する。また制御部25は、糸貯留ローラ32の正回転を開始するのと前後して、ヤーントラップ15を糸走行経路に接近する位置まで駆動して風綿の吸引除去を再開させるとともに、上糸捕捉部13の蓋部13aを短時間開く。これにより、上糸捕捉部13に捕捉されていた糸の切れ端(糸継ぎにより切断された上糸)を吸引して除去する。これにより、図1に示した通常の巻取動作を再開することができる。
【0093】
なお、上記のように上糸20bを偏向ガイド部材60の内部から取り出すように構成されているので、通常の巻取時(図1に示す状態)においては、糸20が偏向ガイド部材60の内部を通過しないようになっている。ここで仮に、通常の巻取動作の間も糸20が偏向ガイド部材60の内部を通過するように構成されているとした場合、糸20が偏向ガイド部材60に接触してダメージを受け、糸品質が低下してしまうおそれがある。この点、上記のように構成することにより、通常の巻取動作の間は糸20が偏向ガイド部材60に接触しないので、糸品質の低下を防ぐことができる。
【0094】
また、図1等に示すように、偏向ガイド部材60は、他の部材と連接していない。より具体的には、偏向ガイド部材60の糸入口61と、上糸引出し部48と、の間に間隔が空くようにして偏向ガイド部材60が配置されている。同様に、偏向ガイド部材60の糸出口62と、上糸捕捉部13と、の間に間隔が空くようにして偏向ガイド部材60が配置されている。このように、偏向ガイド部材60と他の部材との間に間隔が形成されている。言い換えれば、偏向ガイド部材60は、糸走行経路から外れた位置に配置されている。これにより、当該偏向ガイド部材60から取り出された糸20は、偏向ガイド部材60に全く接触することなく走行することができる。この点でも、通常の巻取時において、糸20が偏向ガイド部材60に接触してダメージを受けることを防止できるので、糸品質の低下を防ぐことができる。
【0095】
なお、特許文献1が開示する綾巻きボビン巻成機も、スリットが形成された吸込みノズルを備えている。しかし、特許文献1の構成は、糸を負圧により吸引して糸継装置まで案内する構成であったため、スリットを介して吸込みノズル内に空気が流入し、吸込みノズル先端の吸引力が低下する可能性があった。この点、本実施形態の自動ワインダは、噴出空気によって糸貯留装置18の近傍に吸引流を直接発生させる構成であるため、偏向ガイド部材60にスリット63が形成されていても吸引力の低下等の問題は発生しない。更に、本実施形態では、偏向ガイド部材60を筒状の部材として構成しているので、上糸引出し部48から噴出した空気を、糸入口61から糸出口62まで良好に案内することができる。
【0096】
また、上記のように糸20を吹き飛ばして案内する構成としているので、図19の糸案内パイプ91,92のように大きく駆動される部材が必要無い。従って、自動ワインダの構成を簡略化することができるとともに、各構成のレイアウトの自由度が増大する。更に、本実施形態では、偏向ガイド部材60によって上糸20bが案内される経路を湾曲させる構成としてあるので、上糸引出し部48から糸が吹き出される方向の先に上糸捕捉部13が配置されていなくても、当該上糸捕捉部13まで上糸20bを案内することができる。このように、偏向ガイド部材60の形状を工夫することにより、上糸引出し部48と上糸捕捉部13の位置を自由にレイアウトすることができるようになる。
【0097】
続いて、クリアラ17で糸欠陥が検出されたときの動作について説明する。
【0098】
図1に示すような通常の巻取時において、クリアラ17で糸欠陥が検出されると、制御部25は、カッタ16を作動させて糸20を切断する。このとき、カッタ16よりも上流側の糸端は、当該カッタ16のすぐ上流側に配置されているヤーントラップ15に吸引捕捉される。一方、カッタ16よりも下流側の糸端は、正回転する糸貯留ローラ32に巻き取られる。これにより、糸欠陥が含まれる糸部分は、糸貯留ローラ32の基端部側に巻き取られる。
【0099】
このとき、下糸20a及び上糸20bは、図8と同様の状態となる。ただし、カッタ16によって糸20が切断された場合は、切れた糸端がそのままヤーントラップ15に吸引捕捉されるので、下糸吹上げ部11によって下糸20aを上向きに吹き上げる動作は必要ない点が、給糸ボビン21の交換動作とは異なる。
【0100】
続いて、ヤーントラップ15を、糸走行経路から離間させる方向に駆動して、当該ヤーントラップ15に吸引捕捉されている下糸20aを糸継装置14に導入する(図9と同様の状態)。これと前後して、糸貯留ローラ32を逆回転させつつ、電磁弁51を開放状態とし、更に蓋部13aを開放状態とする。これにより、上糸20bが糸継装置14に導入される(図13と同様の状態)。この状態で、糸貯留ローラ32の逆回転を所定時間継続することにより、当該糸貯留ローラ32上に巻き取られている糸欠陥の部分が引き出されて、上糸捕捉部13に吸引される。これにより、クリアラ17が検出した糸欠陥の部分を除去することができる。続いて、制御部25は、糸継装置14を作動させて糸継を行う。
【0101】
以上のように、糸欠陥検出時における糸継動作においても、上糸20bを噴出空気により吹き飛ばして案内するように構成されているので、従来のワインダユニットが備えていた上糸案内部材(図19の上糸案内パイプ91)に比べて簡単な構成で、かつ素早く上糸20bを案内することができる。また、糸欠陥検出時における糸継動作において、下糸20aは、ヤーントラップ15に吸引捕捉された状態のまま、当該ヤーントラップ15を駆動するだけで糸継装置14に案内することができる。これにより、糸欠陥検出時において下糸20aを簡単かつ素早く案内することができる。このように、糸欠陥検出時においても、糸継動作に掛かる時間を短縮できるので、パッケージ30の生成効率を向上させることができる。
【0102】
以上で説明したように、本実施形態の自動ワインダは、ボビン支持部7と、糸貯留装置18と、巻取部8と、糸継装置14と、上糸案内部と、を備える。ボビン支持部7は、給糸ボビン21を支持する。糸貯留装置18は、給糸ボビン21から解舒された糸20を貯留する。巻取部8は、糸貯留装置18上に貯留された糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。糸継装置14は、ボビン支持部7と糸貯留装置18との間で糸20が分断された時に、給糸ボビン21側の糸と、糸貯留装置18側の糸と、を糸継ぎする。上糸案内部は、糸貯留装置18から糸を引き出して糸継装置14まで案内する。また、上糸案内部は、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、上糸捕捉部13と、負圧源と、を備えている。ガイド筒34は、糸貯留装置18に貯留された糸20を引き出してボビン支持部7側に吹き飛ばす。空気噴出ノズル49は、ガイド筒34に、糸を引き出して吹き飛ばすための空気流を発生させる。上糸捕捉部13は、糸継装置14とボビン支持部7との間に配置され、ガイド筒34によって吹き飛ばされた糸20を捕捉する。前記負圧源は、糸を捕捉して糸継装置14に導入するための空気流を、上糸捕捉部13に発生させる。
【0103】
このように、噴出空気によって上糸20bを吹き飛ばして糸継装置14まで案内する構成としたことにより、上糸20bを案内するための構成が簡単になる結果、各構成のレイアウトの自由度が向上する。また、上糸20bを吹き飛ばすだけで糸継装置14への案内が完了するので、上糸20bの案内動作に必要な時間を短縮し、パッケージ30の生産効率を向上させることができる。また、上記のように糸貯留装置18から上糸20bを引き出す構成とした場合は、糸端の位置が存在するとわかっている位置にのみ吸引流を作用させれば良いので、少ないエネルギーで確実に糸端を吸引することができる。
【0104】
また、本実施形態の自動ワインダは、以下のように構成されている。即ち、ガイド筒34は、糸の巻取時において給糸ボビン21側の糸20を糸貯留装置18までガイドする。また、空気噴出ノズル49は、ガイド筒34の内部に圧縮空気を噴射する。
【0105】
この構成で、糸20は、ガイド筒34を介して糸貯留装置18に貯留されるので、逆に糸貯留装置18から糸を引き出すときには、当該ガイド筒34を介して糸を引き出すことにより、確実かつスムーズに糸貯留装置から糸を引き出すことができる。従って、上記のようにガイド筒34が糸引出噴出部を兼ねるように構成することで、糸貯留装置18に巻き取られた糸20を、確実かつスムーズに吹き飛ばすことができる。
【0106】
また、本実施形態の自動ワインダは、ガイド筒34によって吹き飛ばされた上糸20bを上糸捕捉部13まで案内する偏向ガイド部材60を備えている。
【0107】
このように、ガイド筒34によって吹き飛ばされた上糸20bを、偏向ガイド部材60によって上糸捕捉部13まで案内することにより、ガイド筒34と上糸捕捉部13とを自由に配置することができ、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0108】
また、本実施形態の自動ワインダにおいて、偏向ガイド部材60は筒状部材であり、筒の長手方向に沿ってスリット63が形成されている。
【0109】
このように、偏向ガイド部材60を筒状とすることにより、上糸20bを、前記筒の内部を通過させるようにして確実に上糸捕捉部13まで案内することができる。また、筒状の偏向ガイド部材60にスリット63を設けることにより、上糸捕捉部13への案内が完了した上糸20bをスリット63から取り出すことができる。これにより、通常の巻取時には偏向ガイド部材60の外側で糸20を走行させることができるので、糸20が偏向ガイド部材60に接触して品質が低下してしまうことを防止できる。
【0110】
また、本実施形態の自動ワインダにおいて、前記偏向ガイド部材60は、糸巻取時に糸20が走行する走行経路から外れた位置に備えられている。
【0111】
これにより、通常の巻取時において、糸20が偏向ガイド部材60に接触してしまうことを防止し、当該糸20の品質が低下してしまうことを防止できる。
【0112】
また、本実施形態の自動ワインダは、給糸ボビン21側の下糸20aを糸継装置14まで案内する下糸案内部を備える。また下糸案内部は、下糸吹上げ部11と、ヤーントラップ15と、負圧源と、を備えている。前記下糸吹上げ部11は、ボビン支持部7と糸継装置14との間に配置され、給糸ボビン21側の下糸20aを糸継装置14の近傍まで吹き飛ばす。ヤーントラップ15は、糸継装置14と糸貯留装置18との間に配置され、下糸吹上げ部11によって吹き飛ばされた下糸20aを捕捉する。前記負圧源は、下糸20aを捕捉するための空気流をヤーントラップ15に発生させる。
【0113】
これにより、給糸ボビン21側の糸を吹き飛ばして糸継装置14まで案内することができる。従って糸巻取装置の各構成のレイアウトの自由度が更に向上するとともに、糸継ぎに掛かる時間を更に短縮できる。
【0114】
また、本実施形態の自動ワインダは、ヤーントラップ15を糸走行経路に対して接近又は離間する方向に駆動することが可能なヤーントラップ駆動部47を備えている。
【0115】
これにより、糸20を捕捉し易い位置(糸走行経路に接近した位置)まで、ヤーントラップ15を移動させておくことができる。
【0116】
また、本実施形態の自動ワインダは、ヤーントラップ駆動部47の作動を制御する制御部25を備える。制御部25は、通常の巻取時においては、ヤーントラップ15を糸走行経路に接近させ、糸継ぎ時には、糸20を捕捉した状態のヤーントラップ15を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記捕捉した糸20を糸継装置14に導入する。
【0117】
このように、通常の巻取時にはヤーントラップ15を糸走行経路に接近させておくことにより、糸20に付着している風綿等を吸引除去することができる。一方、ヤーントラップ15が糸を捕捉したときには、当該ヤーントラップ15を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記糸20を糸継装置に導入することができる。
【0118】
また、本実施形態の自動ワインダは、糸継装置14、上糸引出し部48、及び下糸吹上げ部11を制御する制御部25を備える。制御部25は、ボビン支持部7に新しい給糸ボビン21が供給された場合、下糸吹上げ部11により新しい給糸ボビン21側の下糸20aを吹き飛ばし、吹き飛ばした糸をヤーントラップ15に捕捉させ、当該ヤーントラップ15を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、制御部25は、上糸引出し部48により糸貯留装置18上の上糸20bを引出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を上糸捕捉部13に捕捉させる。その後、制御部25は、糸継装置14を作動させて糸継ぎを行う。
【0119】
これにより、給糸ボビン21が交換された際、給糸ボビン21側の下糸20aと、糸貯留装置18側の上糸20bを、糸継装置14に案内して糸継ぎを行うことができる。
【0120】
また、本実施形態の自動ワインダは、クリアラ17と、ヤーントラップ15よりも下流側の位置において、給糸ボビン21と糸貯留装置18との間の糸を切断するカッタ16と、を備える。制御部25は、クリアラで糸欠陥が検出された場合、前記カッタを作動させて前記糸を切断し、前記給糸ボビン21側の下糸20aをヤーントラップ15に捕捉させ、当該ヤーントラップ15を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させる。また、これと前後して、又はこれと同時に、制御部25は、上糸引出し部48により糸貯留装置18側の上糸20bを引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を上糸捕捉部13に捕捉させる。その後、制御部25は、糸継装置14を作動させて糸継ぎを行う。
【0121】
これにより、糸欠点が検出された糸が切断された際、給糸ボビン側の糸と、糸貯留装置側の糸を、糸継装置に案内して糸継ぎを行うことができる。
【0122】
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記第1実施形態と同一又は類似する構成については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。この変形例は、図14に示すように、下糸吹上げ部11を省略し、代わりに下糸案内パイプ92を備えた構成である。この変形例では、下糸20aは、下糸案内パイプ92によって糸継装置14まで案内される。なお、この下糸案内パイプ92の構成は、図19等に示す従来の自動ワインダが備える下糸案内パイプ92と同等の構成であるので、説明は省略する。
【0123】
この変形例のように、下糸20aは、従来の糸案内部材(糸案内パイプ92)によって糸継装置14まで案内する構成とすることもできる。この構成であっても、上糸20bは噴出空気によって糸継装置14まで案内される構成となっているので、上糸20bと下糸20aの両方を糸案内パイプ91,92によって案内していた従来の構成(図19の構成)と比べれば、簡単な構成で、かつ糸継に必要な時間も短くすることができる。
【0124】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記第1実施形態と同一又は類似する構成については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0125】
図15に示すように、本実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット100は、上記第1実施形態とは異なるタイプの糸貯留装置を備えている。以下、図16を参照して、この糸貯留装置64について説明する。
【0126】
図16に示すように、糸貯留装置64は、回転軸ケーシング70と、糸貯留部71と、糸案内部72と、を備える。また、前記回転軸ケーシング70は、上方が開放された円筒状の筒部78と、この筒部78の開放側端部に形成された鍔部79と、を備えている。また、糸貯留装置64のすぐ上流側には、上糸引出し部48が配置されている。
【0127】
前記糸貯留部71は、前記鍔部79の上方に配置されている。この糸貯留部71は、円板状に形成される支持板81と、この支持板81から上方に突出する複数のロッド部材82と、この複数のロッド部材82の先端部分が接続される円板状の取付板83と、を備える。また、糸貯留部71は、前記支持板81と前記鍔部79との間に隙間を形成するように配置されており、この隙間の内部を後述の巻付筒75が回転できるように構成されている。
【0128】
複数のロッド部材82は鉛直方向に直交する円周上に等間隔で並べて配置されており、前記糸貯留部71は、これらのロッド部材82によって略円筒形状を形成するように構成されている。この複数のロッド部材82で構成される略円筒形状の糸貯留部71の外周部分に糸20を巻き回すことによって、糸20が糸貯留部71に貯留されることになる。
【0129】
糸案内部72は、前記回転軸ケーシング70の内部に配置されている。回転軸ケーシング70において、前記筒部78の下部(糸貯留部71と反対側の端部)には導入孔80が形成されている。導入孔80には、上糸引出し部48のガイド筒34が接続されている。給糸ボビン21から引き出された糸20は、前記ガイド筒34によって前記導入孔80まで案内され、当該導入孔80を通過して糸案内部72へ導かれるようになっている。
【0130】
前記筒部78の内部には、前記回転軸ケーシング70及び糸貯留部71に対して相対回転可能に取り付けられる回転軸73が配置されている。この回転軸73と前記筒部78との間にはサーボモータ(糸貯留駆動部)55が組み込まれており、回転軸73を正転及び逆転させることができる。また、この回転軸73の中心には、軸孔状の糸通路74が形成されている。
【0131】
この回転軸73の一端(前記導入孔80と反対側の端部)には、円筒状に形成される巻付筒(巻付手段)75が固定されている。この巻付筒75は、上向きに若干傾斜しながら、回転軸ケーシング70(鍔部79)と支持板81との隙間を通過するようにして径方向に延出し、その先端部分の一部が回転軸ケーシング70より若干飛び出すように構成されている。この巻付筒75は回転軸73と一体的に回転するように構成される。また、巻付筒75の内部は前記糸通路74と接続されている。
【0132】
以上の構成において、糸案内部72の導入孔80から回転軸ケーシング70内に導かれた糸20は、糸通路74及び巻付筒75の内部を通って当該巻付筒75の先端から排出されることで、前記糸貯留部71の側面部分に誘導される。従って、前記サーボモータ55を正方向に駆動すると、巻付筒75が回転軸73とともに回転し、これによって前記側面部分に糸20が巻き回されることになる。
【0133】
また、前記糸貯留部71において複数配置されるロッド部材82のそれぞれは、支持板81側の端部から取付板83側の端部へ近づくに従って糸貯留部71の内側方向へ傾斜するように配置されている。このロッド部材82の傾斜によって、糸貯留部71に巻き付けられた糸は上方に滑るように移動する。従って、後述の巻付筒75によって糸20が連続して巻き付けられると、前記傾斜部分に巻き取られた糸が上方へと移動していくので、ロッド部材82で構成される前記側面部分には糸20が螺旋状に整列した状態で貯留されることになる。
【0134】
上糸引出し部48は、上記第1実施形態と同様に、ガイド筒34と、空気噴出ノズル49と、を備えている。図16に示すように、空気噴出ノズル49は、制御部25によって制御される電磁弁51に接続されており、この電磁弁51は圧縮空気源46に接続されている。空気噴出ノズル49の空気噴出口は、糸走行方向上流側に向けて空気を噴出するように形成されている。
【0135】
この第2実施形態において、糸貯留装置64から糸を引き出す際には、制御部25は、サーボモータ55を停止するとともに、電磁弁51を開放状態としてガイド筒34内に空気流を発生させる。これにより、糸貯留装置64から糸を引き出すことができる。
【0136】
また、図16に示すように、ガイド筒34は適宜湾曲して形成されており、当該湾曲したガイド筒34の先端部が向く先には偏向ガイド部材60の糸入口61が配置されている。これにより、糸貯留装置64から引き出した糸を、偏向ガイド部材60に導入することができる。以上の構成で、本第2実施形態においても、糸貯留装置64側の上糸を、糸継装置14まで案内することができる。
【0137】
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。この変形例は、図17に示すように、偏向ガイド部材を省略するとともに、図18に示すように、ガイド筒34を湾曲させずに円筒状に形成したものである。更に、このガイド筒34の先端が給糸ボビン21を向くように配置している。これにより、糸貯留装置64に貯留された糸を、湾曲させることなくまっすぐ上流側に引き出すことができるように構成している。
【0138】
即ち、上記第1実施形態や第2実施形態では、ガイド筒34によって糸の走行経路が曲げられることにより、給糸ボビン21の糸20が糸貯留装置まで案内されていた。このように糸の走行経路が曲げられると、走行する糸がガイド筒34に接触してダメージを受けてしまう場合がある。この点、本変形例のように糸の走行経路をガイド筒34によって湾曲させないようにすることで、糸へのダメージを最小限に抑えることができる。
【0139】
特に、第2実施形態の糸貯留装置64では、当該糸貯留装置64の上流側端部(下側の端部)に糸の導入孔80が形成されており、当該導入孔80から糸を引き出す構成なので、下流側に向かって糸をまっすぐに引き出すという構成を採り易い。この点、第1実施形態の糸貯留装置18は、斜めに配置された糸貯留ローラ32の周面から糸を引き出す構成なので、糸を下流側に向けて引き出すという構成を採用しにくい。従って、上記のように糸を下流側にまっすぐ引き出す構成とする場合には、第2実施形態の糸貯留装置64を採用することが好適である。
【0140】
なお、本変形例では偏向ガイド部材を省略したので、糸貯留装置64から引き出された糸を糸継装置14まで案内するための構成が別途必要となる。そこで、本実施形態では、上記第1及び第2実施形態のワインダユニットが備えていた上糸捕捉部13に代えて、上流側ヤーントラップ115を設けている。この上流側ヤーントラップ115は、下流側のヤーントラップ15と同様に負圧源に接続されており、その先端部に吸引流を発生させている。また、上流側ヤーントラップ115は、ヤーントラップ駆動部147によって、糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動可能に構成されている。
【0141】
制御部は、通常の巻き取り時においては、上流側ヤーントラップ115を糸走行経路に接近した位置まで移動させておく。これにより、下流側のヤーントラップ15と同様に、上流側ヤーントラップ115によって風綿の吸引除去を行うことができる。
【0142】
糸貯留装置64から糸を引き出す際には、制御部25は、サーボモータ55を停止するとともに、電磁弁51を開放状態としてガイド筒34内に空気流を発生させる。これにより、糸貯留装置64から上流側に向けてまっすぐに吹き飛ばすことができる。上流側に吹き飛ばされた糸は、上流側ヤーントラップが発生させている吸引流によって吸引され、当該上流側ヤーントラップに捕捉される。この状態で、制御部は、上流側ヤーントラップを後退させる。以上の構成により、糸貯留装置64から引き出した糸を、糸継装置14まで案内することができる。
【0143】
次に、上記第2実施形態の別の変形例について説明する。即ち、第2実施形態の糸貯留装置64は、糸貯留部71において糸を整列した状態で巻き取るため、ロッド部材82を傾斜させた状態で設けていた。しかし、このように構成すると、ロッド部材82に巻き付けられた糸が、上方へ移動するに従って弛んでしまうという問題がある。そこで、ロッド部材を傾斜させる構成に代えて、糸を上方に向かって積極的に送る部材を設けた構成としても良い。例えば、ローラ状の部材によって、糸貯留部の糸を積極的に上方に送る構成とすることができる。
【0144】
以上に本発明の好適な実施の形態及びその変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0145】
上記第1実施形態において、糸貯留装置18から糸を引き出す際には、ローラ駆動モータ33によって糸貯留ローラ32を逆回転させるものとしたが、上糸引出し部48によって上糸20bを引き出す力が十分に強い場合は、ローラ駆動モータ33をニュートラルにするだけでも良い。
【0146】
上記実施形態の説明では、図面で説明する関係上、下糸20aの案内を先に行い、その後に上糸20bを案内するように説明したが、これに限らず、上糸20bの案内を先に行っても良い。なお、図19に示す従来の構成の場合、仮に下糸20aの案内と上糸20bの案内を同時に行うと、2つの糸案内パイプ91,92同士が干渉してしまうという問題があったので、上糸と下糸の案内を同時に行うことができなかった。この点、上記実施形態又はその変形例のように構成すれば、糸案内パイプは多くても1つであるので、糸案内パイプ同士が干渉してしまうという問題は発生しない。従って、上記実施形態又はその変形例に示した自動ワインダにおいては、下糸20aの案内と上糸20bの案内を同時に行うこともできる。
【0147】
ヤーントラップ15は、糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動可能であるとしたが、この構成を省略し、糸走行経路から離間した位置(糸継装置14に下糸20aを導入できる位置)で固定する構成でも良い。ただし、このように構成すると、通常の巻取時において、ヤーントラップ15を糸走行経路に接近させることができないので、糸20に対して吸引流を強力に作用させることが難しく、糸20に付着した風綿の除去等が確実に行えない可能性がある。また、このように構成した場合、糸欠陥を検出して糸20を切断した際に、下糸の糸端を捕捉できない可能性もある。従って、上記実施形態のように、ヤーントラップ15は、糸走行経路に対して接近/離間する方向に駆動可能であることが好ましい。
【0148】
偏向ガイド部材60の形状は、上記実施形態のものに限らず、上糸引出し部48からの噴出空気を上糸捕捉部13まで適切に案内できる形状であれば、適宜の形状とすることができる。なお、例えば上糸引出し部48から空気が噴出する方向の先に上糸捕捉部13を配置することが可能であれば、偏向ガイド部材60が無くても上糸20bを上糸捕捉部13まで案内することができるので、この場合は偏向ガイド部材60を省略することができる。
【0149】
制御部25は、ワインダユニット2ごとに備える構成に限らず、1つの制御部によって複数のワインダユニットを制御するように構成されていても良い。また、上記の説明では、1つの制御部25によって複数の部材の制御をまとめて行うように構成しているが、これに限らず、例えば、制御対象の部材ごとに個別に制御部を設けても良い。
【0150】
制御部25は、ハードウェアとソフトウェアから構成されるとしたが、その機能の一部又は全部が専用のハードウェアから構成されていても良い。
【0151】
上記実施形態のワインダユニット2はマガジン式のボビン供給装置26によって給糸ボビン21を供給する構成であるが、この構成に限定されない。例えば、給糸ボビン21をセットしたトレイを適宜の経路に沿って搬送することでワインダユニット2に給糸ボビン21を供給する構成に変更することもできる。
【0152】
上記実施形態において、巻取部8は、綾振ドラム24によって糸20をトラバースさせる構成であるが、例えばアーム式の綾振り機構で糸20をトラバースさせる構成としても良い。
【0153】
また、本発明の構成は、自動ワインダに限らず、糸継装置を備えた他の種類の糸巻取装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
2 ワインダユニット
7 ボビン支持部
8 巻取部
11 下糸吹上げ部(糸吸引噴出部)
12 上糸捕捉部(糸捕捉部)
14 糸継装置
15 ヤーントラップ(第2糸捕捉部)
17 クリアラ(糸欠点検出装置)
18 糸貯留装置
25 制御部
34 ガイド筒
49 空気噴出ノズル
48 上糸引出し部(糸引出し噴出部)
60 偏向ガイド部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンを支持するボビン支持部と、
前記給糸ボビンから解舒された糸を貯留する糸貯留装置と、
前記糸貯留装置上に貯留された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
前記ボビン支持部と前記糸貯留装置との間で糸が分断された時に、前記給糸ボビン側の糸と、前記糸貯留装置側の糸と、を糸継ぎする糸継装置と、
前記糸貯留装置に貯留された糸を前記糸継装置まで案内する糸案内部と、
を備え、
前記糸案内部は、
前記糸貯留装置に貯留された糸を引き出して前記ボビン支持部側に吹き飛ばす糸引出し噴出部と、
前記糸引出し噴出部に、糸を引き出して吹き飛ばすための空気流を発生させる空気噴出部と、
前記糸継装置と前記ボビン支持部との間に配置され、前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する糸捕捉部と、
糸を捕捉して前記糸継装置に導入するための空気流を、前記糸捕捉部に発生させる糸捕捉空気流発生部と、
を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取装置であって、
前記糸引出し噴出部は、糸の巻取時において給糸ボビン側の糸を糸貯留装置までガイドするガイド筒であり、
前記空気噴出部は、前記ガイド筒の内部に圧縮空気を噴射する空気噴出ノズルであることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取装置であって、
前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を前記糸捕捉部まで案内する偏向ガイド部材を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取装置であって、
前記偏向ガイド部材は、筒状部材であり、筒の長手方向に沿ってスリットが形成されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の糸巻取装置であって、
前記偏向ガイド部材は、糸巻取時に糸が走行する走行経路から外れた位置に備えられていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置まで案内する第2糸案内部を備え、
前記第2糸案内部は、
前記ボビン支持部と前記糸継装置との間に配置され、前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置側に吹き飛ばす糸吸引噴出部と、
前記糸継装置と糸貯留装置との間に配置され、前記糸吸引噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する第2糸捕捉部と、
糸を捕捉させるための空気流を、前記第2糸捕捉部に発生させる第2糸捕捉空気流発生部と、
を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取装置であって、
前記第2糸捕捉部を糸走行経路に対して接近又は離間する方向に駆動することが可能な駆動部を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の糸巻取装置であって、
前記駆動部の作動を制御する制御部を備え、
当該制御部は、
通常の巻取時においては、前記第2糸捕捉部を糸走行経路に接近させ、
糸継ぎ時には、糸を捕捉した状態の前記第2糸捕捉部を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記捕捉した糸を糸継装置に導入することを特徴とする糸巻取装置。
【請求項9】
請求項8に記載の糸巻取装置であって、
前記糸継装置、前記糸引出し噴出部、及び前記糸吸引噴出部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ボビン支持部に新しい給糸ボビンが供給された場合、
前記糸吸引噴出部により前記新しい給糸ボビンの糸を吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させるとともに、
これと前後して、又はこれと同時に、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を前記糸捕捉部に捕捉させ、
その後、糸継装置を作動させて糸継ぎを行うことを特徴とする糸巻取装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の糸巻取装置であって、
糸欠陥検出装置と、
前記第2糸捕捉部よりも下流側の位置において、前記給糸ボビンと前記糸貯留装置との間の糸を切断するカッタと、
を備え、
前記制御部は、
前記糸欠陥検出装置で糸欠陥が検出された場合、
前記カッタを作動させて前記糸を切断し、前記給糸ボビン側の糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させるとともに、
これと前後して、又はこれと同時に、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を糸捕捉部に捕捉させ、
その後、糸継装置を作動させて糸継ぎを行うことを特徴とする糸巻取装置。
【請求項1】
給糸ボビンを支持するボビン支持部と、
前記給糸ボビンから解舒された糸を貯留する糸貯留装置と、
前記糸貯留装置上に貯留された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
前記ボビン支持部と前記糸貯留装置との間で糸が分断された時に、前記給糸ボビン側の糸と、前記糸貯留装置側の糸と、を糸継ぎする糸継装置と、
前記糸貯留装置に貯留された糸を前記糸継装置まで案内する糸案内部と、
を備え、
前記糸案内部は、
前記糸貯留装置に貯留された糸を引き出して前記ボビン支持部側に吹き飛ばす糸引出し噴出部と、
前記糸引出し噴出部に、糸を引き出して吹き飛ばすための空気流を発生させる空気噴出部と、
前記糸継装置と前記ボビン支持部との間に配置され、前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する糸捕捉部と、
糸を捕捉して前記糸継装置に導入するための空気流を、前記糸捕捉部に発生させる糸捕捉空気流発生部と、
を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取装置であって、
前記糸引出し噴出部は、糸の巻取時において給糸ボビン側の糸を糸貯留装置までガイドするガイド筒であり、
前記空気噴出部は、前記ガイド筒の内部に圧縮空気を噴射する空気噴出ノズルであることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取装置であって、
前記糸引出し噴出部によって吹き飛ばされた糸を前記糸捕捉部まで案内する偏向ガイド部材を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取装置であって、
前記偏向ガイド部材は、筒状部材であり、筒の長手方向に沿ってスリットが形成されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の糸巻取装置であって、
前記偏向ガイド部材は、糸巻取時に糸が走行する走行経路から外れた位置に備えられていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取装置であって、
前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置まで案内する第2糸案内部を備え、
前記第2糸案内部は、
前記ボビン支持部と前記糸継装置との間に配置され、前記給糸ボビンの糸を前記糸継装置側に吹き飛ばす糸吸引噴出部と、
前記糸継装置と糸貯留装置との間に配置され、前記糸吸引噴出部によって吹き飛ばされた糸を捕捉する第2糸捕捉部と、
糸を捕捉させるための空気流を、前記第2糸捕捉部に発生させる第2糸捕捉空気流発生部と、
を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取装置であって、
前記第2糸捕捉部を糸走行経路に対して接近又は離間する方向に駆動することが可能な駆動部を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項8】
請求項7に記載の糸巻取装置であって、
前記駆動部の作動を制御する制御部を備え、
当該制御部は、
通常の巻取時においては、前記第2糸捕捉部を糸走行経路に接近させ、
糸継ぎ時には、糸を捕捉した状態の前記第2糸捕捉部を糸走行経路から離間させる方向に駆動することにより、前記捕捉した糸を糸継装置に導入することを特徴とする糸巻取装置。
【請求項9】
請求項8に記載の糸巻取装置であって、
前記糸継装置、前記糸引出し噴出部、及び前記糸吸引噴出部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ボビン支持部に新しい給糸ボビンが供給された場合、
前記糸吸引噴出部により前記新しい給糸ボビンの糸を吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させるとともに、
これと前後して、又はこれと同時に、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を前記糸捕捉部に捕捉させ、
その後、糸継装置を作動させて糸継ぎを行うことを特徴とする糸巻取装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の糸巻取装置であって、
糸欠陥検出装置と、
前記第2糸捕捉部よりも下流側の位置において、前記給糸ボビンと前記糸貯留装置との間の糸を切断するカッタと、
を備え、
前記制御部は、
前記糸欠陥検出装置で糸欠陥が検出された場合、
前記カッタを作動させて前記糸を切断し、前記給糸ボビン側の糸を前記第2糸捕捉部に捕捉させ、当該第2糸捕捉部を糸走行経路から遠ざかる方向に駆動させるとともに、
これと前後して、又はこれと同時に、前記糸引出し噴出部により前記糸貯留装置上の糸を引き出して吹き飛ばし、吹き飛ばした糸を糸捕捉部に捕捉させ、
その後、糸継装置を作動させて糸継ぎを行うことを特徴とする糸巻取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−20852(P2012−20852A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160968(P2010−160968)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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