説明

糸条束集積方法および集積装置ならびに中空糸濾過膜用の糸条束製造方法および製造装置

【課題】直線状の糸条束に集積するにあたって、連続的に供給される糸条を所定の長さに切断し、集積溝内に降下させる際に、糸乱れを発生させることなく整然として水平状に積み重ね、まっすぐな糸条束を製造するとともに、品種対応が容易で生産性が高く、信頼性の高い糸条束集積方法および集積装置、さらには中空糸濾過膜用の糸条束製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】紡糸した糸条1を繰り出し、直線状の糸条束に集積する糸条束集積方法において、相対向した一対の糸条繰り出し降下手段7a,7bで紡糸した前記糸条1を狭持し、交互に前記糸条を横方向に繰り出しながら前記糸条を所定長さに切断し、切断された前記糸条の両端部を把持した状態で糸条束集積部材の集積溝14内に降下させ、さらに前記集積溝内に前記切断された糸条を受け入れ後、前記糸条束集積部材を搬送させることを特徴とする糸条束集積方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸条を長尺の糸条束に集積するための糸条束集積方法および糸条束集積装置に関するものである。特に血液中の老廃物を透析や濾過によって除去する人工腎臓等や、飲料水などに用いられる中空糸濾過膜用の中空糸濾過膜集合体(以下、中空糸束という)を形成する糸条束集積方法および集積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工腎臓用濾過膜・浄水器用濾過膜等の中空糸束は、連続した中空糸を一定の長さに切断して、所定本数の束にして作られている。
【0003】
具体的には、例えば、図5に示すように、連続に生産されてくる連続中空糸3をリール状にカセ枠4にカセ取りして太い環状の糸条束5をつくり、これを適当長さに切断して得られている。
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、カセのコーナー部に巻かれた糸条束が屈曲し、製品の品質を著しく低下させることから、該コーナ部分に除去装置もしくは後処理工程における修正操作を必要としていた。そこで掛かる生産性の低下を改善するには、連続して直線状で供給される糸条を屈曲させることなくまっすぐに引き取った後、一定長さに切断しこれを束ねる方法が考えられる。
【0005】
従来、連続して、紡糸した糸条を横方向に繰り出し直線状の糸条束にする方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの提案はいずれも紡糸した糸条の先端部分を狭持し、横方向に繰り出し、繰り出した糸条の途中を切断機構で切断し、集積溝内に降下させ、糸条束を集積するものである。
【0006】
この方法によれば、いずれも多角形のカセに巻き取る必要がなく、紡糸装置から紡糸された糸条を屈曲させることなく所定本数集積することができるので、捨てる部分を著しく減少させることができる。したがって、従来に比較して歩留まりを高めることができる。
【0007】
また、カセに巻き取らないので、糸条巻き取り張力を掛ける必要がない。したがって、弱い中空糸条を一定の長さに切断し集積する場合にも、糸条にダメージを受けることが殆どなくなり、集積した糸束の品質を向上することができる。さらに、後工程で糸束を結束する際や、保護シートで巻き包む際にも機械化し易くなり、自動化による合理化、省人化を図れる利点がある。
【0008】
しかしながら、上記のような糸条束集積方法においては、紡糸した糸条を繰り出し、連続的に直線状の糸条束に集積する上で、高品質でさらに生産性向上を図るには次のような問題点があった。
【0009】
すなわち、前者の糸条束集積方法は、図4に示すように、繰り出しを一時停止し、糸条1を一方の狭持部材38のクランプ36aで狭持した後、繰り出し糸条の途中をカッター37で切断し、他方の狭持部材38のクランプ36bを開いて糸条1の先端部を放している。したがって、所定の長さに切断された糸条は自重により糸条束集積部材26の集積溝14に向かって降下させているので、糸乱れが生じる。また、一時停止して糸条把持、糸条切断、糸条リリースを順次動作しているため一時停止時間が長く、高速化が難しく生産効率が上がらないという問題点があった。
【0010】
また、後者の糸条束集積方法は、糸条を狭持し繰り出す狭持部材が旋回する駆動チェーンに一定間隔で取り付けられ、かつ切断装置が固定位置に設けられているために、用途に応じた所定長さに切断できない。したがって、用途によっては捨てる部分が多く、歩留まりが悪い。また、糸条を糸条束集積部材の集積溝に降下させる際に、別の把持片で掴み替えるため、糸条が狭持部材間で振動し、糸乱れが発生するという問題点があった。
【特許文献1】特開平9−141064 号公報
【特許文献1】特開昭57−175519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、以上の問題点に鑑み、直線状の糸条束に集積するにあたって、連続的に供給される糸条を所定の長さに切断し、集積溝内に降下させる際に、糸乱れを発生させることなく整然として水平状に積み重ね、まっすぐな糸条束を製造するとともに、品種対応が容易で生産性が高く、信頼性の高い糸条束集積方法および集積装置、さらには中空糸濾過膜用の糸条束製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)紡糸した糸条を繰り出し、直線状の糸条束に集積する糸条束集積方法において、相対向した一対の糸条繰り出し降下手段で紡糸した前記糸条を狭持し、交互に前記糸条を横方向に繰り出しながら前記糸条を所定長さに切断し、切断された前記糸条の両端部を把持した状態で糸条束集積部材の集積溝内に降下させ、さらに前記集積溝内に前記切断された糸条を受け入れ後、前記糸条束集積部材を搬送させることを特徴とする糸条束集積方法。
【0013】
(2)用途に応じて前記糸条降下機構の間隔と前記糸条繰り出し機構の移動距離を変え、繰り出した前記糸条を所定長さに切断することを特徴とする前記(1)に記載の糸条束集積方法。
【0014】
(3)切断された前記糸条を降下させ前記糸条束集積部材に移載する際に、糸条の両端部を糸条束集積部材の集積溝内に押さえることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の糸条束集積方法。
【0015】
(4)前記糸条束集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて、長手方向に所定長さに調整することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の糸条束集積方法。
【0016】
(5)紡糸した糸条を繰り出し、直線状の糸条束に集積する糸条束集積装置において、紡糸した糸条を狭持する糸条狭持機構と、前記糸条を横方向に繰り出す糸条繰り出し機構と、繰り出した前記糸条の途中を所定長さで切断する繰り出し糸切断機構と、切断した糸条の両端を把持した状態で集積位置まで降下させる一対の糸条降下機構を備え、さらに相対向して配置された一対の糸条繰り出し降下手段と、切断された前記糸条を集積する糸条束集積部材を備えるとともに、前記糸束集積部材を搬送する糸条束集積搬送手段を設けたことを特徴とする糸条束集積装置。
【0017】
(6)前記一対の糸条降下機構の片方が、該一対の糸条降下機構の間隔を変える糸条降下機構スライド手段を具備していることを特徴とする前記(5)に記載の糸条束集積装置。
【0018】
(7)前記糸条降下機構が、切断された前記糸条を前記糸条束集積部材に移載する際に、前記糸条の両端部を糸条束集積部材の集積溝内に押さえる糸条押さえ手段を具備していることを特徴とする前記(5)または(6)に記載の糸条束集積装置。
【0019】
(8)前記糸条束集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて長手方向に長さを調整可能なスライド手段を備えたことを特徴とする前記(5)〜(7)のいずれかに記載の糸条束集積装置。
【0020】
(9)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の糸条束集積方法を用いて、中空糸濾過膜分離器用の中空糸束を製造することを特徴とする中空糸濾過膜分離器用の糸条束の製造方法。
【0021】
(10)前記(5)〜(8)のいずれかに記載の糸条束集積装置を用いて、中空糸濾過膜用の中空糸束を製造することを特徴とする中空糸濾過膜用の糸条束製造装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記の構成とすることにより以下の優れた効果を奏することができる。すなわち、
請求項1に記載の発明によれば、紡糸した糸条を繰り出し、直線状の糸条束に集積する糸条束集積方法において、相対向した一対の糸条繰り出し降下手段で紡糸した前記糸条を狭持し、交互に前記糸条を横方向に繰り出しながら前記糸条を所定長さに切断し、切断された前記糸条の両端部を把持した状態で糸条束集積部材の集積溝内に降下させ、さらに前記集積溝内に前記切断された糸条を受け入れ後、前記糸条束集積部材を搬送させることにより、前工程より連続して供給される糸条を一定長さに切断された直線状の糸条を連続的に安定して集積することが可能になるとともに、次工程との連結化が比較的容易にでき、大幅に生産性向上を図ることができる。
【0023】
また、請求項2に記載の発明によれば、用途に応じて前記糸条降下機構の間隔と前記糸条繰り出し機構の移動距離を変え、繰り出した前記糸条を所定長さに切断することにより、用途に応じて容易に切断長さが調整でき、捨てる部分が少ない糸条束集積方法が実現できる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によれば、切断された前記糸条を降下させ前記糸条束集積部材に移載する際に、糸条の両端部を糸条束集積部材の集積溝内に押さえることより、一定長さに切断された直線状の糸条を糸条集積部材の集積溝内に積み重ねるまで、繰り出し張力を維持することが可能になり、その結果、糸乱れのない良好な品位の糸条束を集積することができる。
【0025】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記糸条束集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて、長手方向に所定長さに調整することにより、切断長さの異なる糸条を容易に集積することが可能になる。
【0026】
また、請求項5の発明によれば、紡糸した糸条を繰り出し、直線状の糸条束に集積する糸条束集積装置において、紡糸した糸条を狭持する糸条狭持機構と、前記糸条を横方向に繰り出す糸条繰り出し機構と、繰り出した前記糸条の途中を所定長さで切断する繰り出し糸切断機構と、切断した糸条の両端を把持した状態で集積位置まで降下させる一対の糸条降下機構を備え、さらに相対向して配置された一対の糸条繰り出し降下手段と、切断された前記糸条を集積する糸条束集積部材を備えるとともに、前記糸束集積部材を搬送する糸条束集積搬送手段を設けたことにより、前工程より連続して供給される糸条を一定長さに切断された直線状の糸条を連続的に安定して集積することが可能になるとともに、次工程との連結化が比較的容易な糸条束集積装置が実現できる。
【0027】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記一対の糸条降下機構の片方が、該一対の糸条降下機構の間隔を変える糸条降下機構スライド手段を具備したことにより、用途に応じて容易に切断長さを調整でき、捨てる部分が少ない糸条束集積装置が実現できる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明によれば、前記糸条降下機構が、切断された前記糸条を前記糸条束集積部材に移載する際に、前記糸条の両端部を糸条束集積部材の集積溝内に押さえる糸条押さえ手段を具備していることにより、一定長さに切断された直線状の糸条を糸条集積部材の集積溝内に積み重ねるまで、繰り出し張力を維持することが可能になり、その結果、糸乱れのない良好な品位の糸条束を集積することができる。
【0029】
また、請求項8に記載の発明によれば、前記糸条束集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて長手方向に長さを調整可能なスライド手段を備えたことにより、用途に応じて切断長さの異なる糸条を集積することが可能な糸条束集積装置が実現できる。
【0030】
また、請求項9、請求項10の中空糸濾過膜分離器用の糸条束製造方法および糸条束製造装置によれば、より高品位の中空糸濾過膜分離器用の中空集積束を高い生産性で製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の最良の実施形態の例を中空糸濾過膜分離器用の糸条束集積装置に適用した場合を例にとって、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1(A)は本発明にかかる糸条束集積装置の一例を示す平面図であり、図1(B)は図1(A)の正面図であり、図2(A)は本発明にかかる糸条束集積装置で、切断した糸条を集積位置まで降下させる動作状態の一例を示す平面図であり、図2(B)は図2(A)の正面図である。
【0033】
また、図3は本発明にかかる糸条束集積装置の一例を示す側面図であり、図4は従来技術の糸条束集積装置の概略構成を示す斜視図であり、図5は所定本数になるまで中空糸を巻き取る従来技術の六角形カセの正面図である。
【0034】
本発明の糸条束集積方法の好ましい一態様例は、紡糸した糸条を繰り出し、連続的に直線状の糸条束に集積する糸条束集積方法において、相対向した一対の糸条繰り出し降下手段で紡糸した前記糸条を狭持し、交互に前記糸条を横方向に繰り出しながら前記糸条を所定長さに切断し、切断された前記糸条の両端部を把持した状態で糸条集積部材の集積溝内に降下させ、さらに前記集積溝内に前記切断された糸条を複数回受け入れ後、前記糸束集積部材を間欠的に搬送させることを特徴とするものである。
【0035】
また、補発明の糸条束集積装置の好ましい一態様例は、紡糸した糸条を繰り出し、連続的に直線状の糸条束に集積する糸条束集積装置において、紡糸した糸条を狭持する糸条狭持機構と、前記糸条を横方向に繰り出す糸条繰り出し機構と、繰り出した前記糸条の途中を所定長さで切断する繰り出し糸切断機構と、切断した糸条の両端を把持した状態で集積位置まで降下せしめる一対の糸条降下機構を備え、相対向して配置された一対の糸条繰り出し降下手段と、切断された前記糸条を集積する糸条束集積部材を備え、前記糸束集積部材を間欠的に搬送する糸条束集積搬送手段を設けたことを特徴とするものである。
【0036】
図1(A)、図1(B)、図2(A)、図2(B)、および図3に示す実施態様例では、この糸条束集積装置は紡糸装置(紡糸装置は図示しないが図1(A)、図1(B)、および図2(A)、図2(B)の左側にある)の隣に設置され、紡糸装置により紡糸された糸条1の先端部分を狭持し、糸条1を繰り出しながら糸条1を所定長さに切断し、さらに前記切断された糸条2の両端部を把持した状態で糸条2を集積する位置で降下させる糸条繰り出し降下手段100a,100bと、前記所定長さに切断した糸条2を複数回受け入れて次工程に間欠的に搬送する糸条束集積搬送手段200で構成される。
【0037】
ここで、糸条繰り出し降下手段100a,100bは、糸条1の先端部分を狭持する糸条狭持機構6と、狭持した糸条を紡糸装置側と反対側に繰り出す糸条繰り出し機構7a,7bと、繰り出した糸条1を所定長さで把持し更に切断された糸条2を集積する位置で降下させる糸条降下機構8a,8bと、糸条繰り出し機構7a,7bが停止位置(糸条降下位置)に到達するまでに繰り出した糸条1を所定長に切断する繰り出し糸切断機構9で構成される。また、糸条繰り出し降下手段100a,100bは連続して紡糸された糸条1を交互に狭持して連続的に繰り出せるように相対向して配置される。
【0038】
糸条狭持機構6は、本実施形態では、紡糸された糸条1の先端部を狭持する狭持部材11と、狭持部材11を開閉させる駆動機構12と、糸条1を狭持してパスラインPに沿って搬送しても相互に干渉しないように、パスラインPに対して前後に移動させる直動機13で構成されている。また、糸条繰り出し機構7a,7bの紡糸装置側フレーム40aに、パスラインP側に向くように向かい合わせにして取り付けられている。ここで、狭持部材11は、糸条1を確実に狭持できれば形状および表面状態はいかなるものでもよいが、狭持された糸条1は屑糸になるため、狭持部材11はできる限り薄くし、滑りにくくするために摩擦係数が高い材質を用いるか、滑り止め加工を施すことがより好ましい。駆動機構12は、狭持部材11を開閉できるものであればいかなるものでも良いが、簡単な機構でメンテナンスが容易な平行エアーチャックが好ましい。
【0039】
直動機13は、シリンダーや、モーターの回転をベルト、ボールネジなどを利用して直線往復運動に変換する著駆動アクチュエータ等を用いれば良いが、簡単な機構でメンテナンスが容易なエアーシリンダーが好ましい。
【0040】
糸条繰り出し機構7a,7bは、本実施形態では、糸条狭持機構6と糸条降下機構8a,8bと繰り出し糸切断機構9をそれぞれ取り付けるフレーム40a,40bと、フレーム40a,40bを取り付けるアーム15と、アーム15を横に繰り出しさせるスライダー機構16で構成される。
【0041】
また、糸条繰り出し機構7a,7bは、所定のタイミングで独立して走行できるとともに、スタート位置およびストロークを任意に変更できるように構成する。また、走行速度は同じ速度で、かつ、紡糸装置側に近い狭持位置から反対側の停止位置(糸条降下位置)に向けて糸条狭持機構6を前進走行させる速度と糸条狭持機構6を停止位置(糸条降下位置)から狭持位置に向けて後退させる速度は、同じ速度にすることが望ましい。また、狭持部材11で糸条1を狭持す際に一時的に糸繰り出しを停止し、この停止中に紡糸されてくる糸条1を昇降ローラ17の下降により弛ませて保留し、狭持部材11が再度前進走行する間に保留分の糸条1を加えて繰り出すので、この保留分を繰り出すに過不足のない走行速度(紡糸装置の紡糸速度よりも少し速い速度)に設定する。
【0042】
ここで、アーム15は糸条狭持機構6と糸条降下機構8a,8bと繰り出し糸切断機構9を取り付けることができればいかなるものでもよいが、切断長が長い長尺糸条を得ようとする場合は、アーム長も長くする必要があるので、撓みや走行中の振動等が発生しない形状にするとともに、走行負荷を軽減するため軽量形鋼を採用するのが好ましい。
【0043】
スライダー機構16は、リニアモータアクチュエータや、モーターの回転をベルト、ボールネジなどを利用して直線往復運動に変換する直動アクチュエータ等を用いれば良いが、高速・高加減速対応、ロングストローク、高頻度往復駆動に適したリニアモータアクチュエータが好ましい。
【0044】
繰り出し糸切断機構9は、本実施形態では、糸条繰り出し機構7a,7bのアーム15に、パスラインP側に向くように向かい合わせにして糸条狭持機構6の近傍(繰り出し側)に設け、糸条1を狭持部材11の近傍で切断するカッター18と、カッター18を開閉させる直動機19と、パスラインPに対して前後に移動させる直動機20で構成される。カッター18は自動ハサミやカッターナイフ、あるいはヒートカッターなど糸条1を切断することができればいかなるものでも良いが、軽量小型で自動化およびメンテナンスが容易で、かつ信頼性の高い自動ハサミを用いるのが好ましい。また、カッター18はできる限り糸条狭持機構6近傍に配置するのが好ましいが、互いに干渉しなければいかなる間隙寸法でも良いが、カッター18と糸条狭持機構6との間隙寸法は3〜5mmが好ましい。
【0045】
直動機19,20は、シリンダーや、モーターの回転をベルト、ボールネジなどを利用して直線往復運動に変換する直動アクチュエータ等を用いれば良いが、簡単な機構でメンテナンスが容易なエアーシリンダーが好ましい。
【0046】
また、糸条降下機構8a,8bは、本実施形態では、繰り出された糸条を把持する把持部材21と、把持部材21を開閉させる駆動機構22と、把持部材21をパスラインPに対して前後に移動させる直動機23と、糸条1を把持するため上下に移動させる直動機24と、切断された糸条を集積する位置で降下させる(図2(A)、図2(B)と図3参照)直動機25で構成される。
【0047】
また、糸条降下機構8aは、繰り出し糸切断機構9の近傍(繰り出し側)に配設され、糸条降下機構8bは、糸条降下機構8aと所定の間隔でそれぞれ糸条繰り出し機構7a,7bのフレーム40a,40bに取り付けられるとともに、パスラインP側に向くように向かい合わせにして配設されている。なお、糸条降下機構8aと繰り出し糸切断機構9間の糸条1は屑糸になるため、糸条降下機構8aは繰り出し糸切断機構9にできるだけ接近させるのが好ましく、互いに干渉しなければいかなる間隙寸法でも良いが、糸条降下機構8aと繰り出し糸切断機構9との間隙寸法は3〜5mmが好ましい。
【0048】
ここで、把持部材21は、糸条を確実に狭持できれば形状および表面状態はいかなるものでもよいが、把持された糸条1は屑糸になるため、把持部材21はできる限り薄くし、滑りにくくするために摩擦係数が高い材質を用いるか、滑り止め加工を施すことがより好ましい。駆動機構22は、把持部材21を開閉できるものであればいかなるものでも良いが、簡単な機構でメンテナンスが容易な平行エアーチャックが好ましい。
【0049】
直動機23、24、25は、シリンダーや、モーターの回転をベルト、ボールネジなどを利用して直線往復運動に変換する直動アクチュエータ等を用いれば良いが、簡単な機構でメンテナンスが容易なエアーシリンダーが好ましい。
【0050】
糸条束集積搬送手段200は、図3に示す実施形態例では、糸条を受け入れて糸条束5を集積する糸条束集積部材26と糸条を複数回に受け入れて糸条束を集積後に、次工程まで間欠に搬送する搬送コンベア39で構成される。
【0051】
糸条束集積部材26は、上面が解放したU字状の集積溝14を形成した雨樋状のトレーであり、繰り出し糸切断機構9により所定長さに切断された糸条2が、糸条降下機構8a,8bで降下される位置に配置される。また、糸条集積部材26は集積溝14内に切断された糸条2を複数回受け入れ後、次工程に搬送させるため、搬送コンベア39に一定の間隔で配置されている(図3参照)のが好ましい。
【0052】
また、集積溝14は、糸条2が接触しても損傷しないように、滑らかな面が好ましい。
【0053】
搬送コンベア39は、糸条束集積部材26を一定の間隔で取り付けて、間欠に搬送できるものであればいかなるものでもよいが、糸条束集積部材26に積載の糸条束5を自動機で取り出す場合は、位置決めを精度よくするのが好ましい。
【0054】
本発明の糸条束集積装置は、好ましい一態様例として、前記一対の糸条降下機構の片方が、該一対の糸条降下機構の間隔を変える糸条降下機構スライド手段を具備していることを特徴とする。同時に、好ましい一態様例として、用途に応じて前記糸条降下機構の間隔と前記糸条繰り出し機構の移動距離を変え、繰り出した前記糸条を所定長さに切断することを特徴とする。
【0055】
図1(A)、図1(B)、および図2(A)、図2(B)に示された糸条繰り出し機構8bのスライド機構27は糸条降下機構スライド手段300の一態様であり、スライド機構27は案内レール28、位置決めピン29で構成され、アーム15端部のフレーム40bに設けるのが好ましい。また、位置決めピン29は位置決めが確実にできればいかなるものでもよいが、機構が簡単で位置決め容易なインデックスプランジャーが好ましい。
【0056】
本発明の糸条束集積装置は、前記糸条降下機構が、切断された前記糸条を前記糸条集積部材に移載する際に、前記糸条の両端部を糸条集積部材の集積溝内に押さえる糸条押さえ手段を具備していることを特徴とする。同時に、好ましい一態様例として、切断された前記糸条を降下させ前記糸条集積部材に移載する際に、糸条が乱れないように前記糸条の両端部を糸条集積部材の集積溝内に押さえることを特徴とする。
【0057】
図2(A)、図2(B)に示された糸条押さえ機構30は、糸条押さえ手段400の一態様であり、糸条押さえ機構30は押さえ部材31と、押さえ部材31を上下方向に移動させる直動機32で構成され、直動機32は、糸条降下機構8a,8bの駆動機構22にブラケットを介して取り付けられ、押さえ部材31と糸条降下機構8a,8b把持部材21と同期させ昇降されるのが好ましい。また、押さえ部材31は、糸条降下機構8b,8bの把持部材21が開くまで糸条2を押さえていることが好ましい。また、押さえ部材31は糸条2を押さえた際に、糸条2に損傷やつぶれを発生させないものであればいかなるものでもよいが、弾力性があるスポンジゴムが好ましい。また、直動機32はシリンダーや、モーターの回転をベルト、ボールネジなどを利用して直線往復運動に変換する直動アクチュエータ等を用いれば良いが、簡単な機構でメンテナンスが容易なエアーシリンダーが好ましい。
【0058】
本発明の糸条束集積装置は、好ましい一態様例として、前記糸条集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて長手方向に長さを調整可能なスライド手段を備えたことを特徴とする。同時に、好ましい一態様例として、前記糸条集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて、長手方向に所定長さに調整することを特徴とする。
【0059】
図1(A)、図1(B)、および図2(A)、図2(B)に示された移動機構33はスライド手段の一態様であり、移動機構33は延長糸条束集積部材34、位置決めピン35で構成され、糸条束集積部材26の繰り出し側に取り付けられるのが好ましい。さらに位置決めピン35は位置決めが確実にできればいかなるものでもよいが、機構が簡単で位置決めが容易なインデックスプランジャーが好ましい。
【0060】
本発明は、上述の糸条束集積装置を用いて、中空糸濾過膜用の中空糸束を製造することを特徴とする中空糸濾過膜用の糸条束集積装置を提供する。
【0061】
同時に本発明は、上述の糸条束集積方法を用いて、中空糸濾過膜分離器用の中空糸束を製造することを特徴とする中空糸濾過膜分離器用の糸条束集積方法を提供する。
【実施例】
【0062】
実施例1
以上の糸条束集積装置を用いて、糸条束を製造した結果を説明する。
【0063】
中空糸濾過膜分離器用中空糸48糸条を用い、給糸速度50m/分、繰り出し繰り出し長さ1680mm、糸繰り出し最大速度2.8m/秒、繰り出し張力5g/糸条、の条件で、まず、糸条1(中空糸)を片方の糸条繰り出し降下手段100bの狭持部材11で狭持後繰り出し、糸条繰り出しながら1720mmの長さに切断し、次いで、糸条繰り出し降下手段を糸条束集積部材26の位置で一時停止させ、切断した糸条1を糸条降下機構8a,8bで、把持した状態で集積溝14まで75mm降下させ、同時に糸条1を糸条押さえ機構30で集積溝14に押さえた。次いで、糸条押さえ機構30で糸条1の両端部を集積溝14内に押さえながら、糸条降下機構8a,8bのチャックを開にした後、糸条降下機構8a,8bを上昇させた。ここで糸条束集積部材26の長さは1660mm、糸条1の押さえは集積溝14端から20mmmにした。
【0064】
また、片方の糸条繰り出し降下手段100bで糸条1を繰り出している間に、他方の糸条繰り出し降下手段100aは紡糸装置側に走行し、片方の糸条繰り出し機構7bが停止している間に、糸条狭持機構6と糸条降下機構8a,8bで前記糸条繰り出し降下手段100bで繰り出された糸条1の途中を把持し、一時停止時間1.1秒後に糸条1の繰り出しを開始した。
【0065】
このようにして糸条繰り出し降下手段100a,100bを交互に往復させ、往復動作を19回繰り返し集積溝14に糸条1を受け入れ後、糸条束集積部材26に集積した糸条束5を糸条束集積搬送手段200で次工程まで搬送した。
【0066】
最後に、糸条束集積部材26の集積溝14内に集積した糸条束5を検査したが、糸乱れもなく、端部の把持部以外は単糸つぶれや、表層キズもなく、糸質は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、中空糸濾過膜分離器用および中空糸濾過膜浄水器用の糸条束集積装置に限らず、連続したモノフィラメントまたはマルチフィラメントの細い束の連続繊維を一定の長さに切断して作られる刷毛・合成畳表・ブラシなどの糸条束集積装置などにも応用することができるが、その応用範囲が、これに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1(A)】は本発明にかかる糸条束集積装置の一例を示す平面図である。
【図1(B)】図1(A)の正面図である。
【図2(A)】本発明にかかる糸条束集積装置で切断した糸条を集積位置まで降下させる動作状態の一例を示す平面図である。
【図2(B)】図2(A)の正面図である。
【図3】本発明にかかる糸条束集積装置の一例を示す側面図である。
【図4】従来技術の糸条束集積装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】所定本数になるまで中空糸を巻き取る従来技術の六角形カセの正面図である。
【符号の説明】
【0069】
1:糸条
2:糸条(切断糸)
3:中空糸
4:カセ枠
5:糸条束
6:糸条狭持機構
7a:糸条繰り出し機構
7b:糸条繰り出し機構
8a:糸条降下機構
8b:糸条降下機構
9:繰り出し糸切断機構
11:狭持部材
12:駆動機構
13:直動機
14:集積溝
15:アーム
16:スライダー機構
17:昇降ローラ
18:カッター
19:直動機
20:直動機
21:把持部材
22:駆動機構
23:直動機
24:直動機
25:直動機
26:糸条束集積部材
27:スライド機構
28:案内レール
29:位置決めピン
30:糸条押さえ機構
31:押さえ部材
32:直動機
33:移動機構
34:延長糸条束集積部材
35:位置決めピン
36a:クランプ
36b:クランプ
37:カッター
38:狭持部材
39:搬送コンベア
40a:フレーム
40b:フレーム
100a:糸条繰り出し降下手段
100b:糸条繰り出し降下手段
200:糸条束集積搬送手段
300:糸条降下機構スライド手段
400:糸条押さえ手段
P:パスライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸した糸条を繰り出し、直線状の糸条束に集積する糸条束集積方法において、相対向した一対の糸条繰り出し降下手段で紡糸した前記糸条を狭持し、交互に前記糸条を横方向に繰り出しながら前記糸条を所定長さに切断し、切断された前記糸条の両端部を把持した状態で糸条束集積部材の集積溝内に降下させ、さらに前記集積溝内に前記切断された糸条を受け入れ後、前記糸条束集積部材を搬送させることを特徴とする糸条束集積方法。
【請求項2】
用途に応じて前記糸条降下機構の間隔と前記糸条繰り出し機構の移動距離を変え、繰り出した前記糸条を所定長さに切断することを特徴とする請求項1に記載の糸条束集積方法。
【請求項3】
切断された前記糸条を降下させ前記糸条束集積部材に移載する際に、糸条の両端部を糸条束集積部材の集積溝内に押さえることを特徴とする請求項1または2に記載の糸条束集積方法。
【請求項4】
前記糸条束集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて、長手方向に所定長さに調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の糸条束集積方法。
【請求項5】
紡糸した糸条を繰り出し、直線状の糸条束に集積する糸条束集積装置において、紡糸した糸条を狭持する糸条狭持機構と、前記糸条を横方向に繰り出す糸条繰り出し機構と、繰り出した前記糸条の途中を所定長さで切断する繰り出し糸切断機構と、切断した糸条の両端を把持した状態で集積位置まで降下させる一対の糸条降下機構を備え、さらに相対向して配置された一対の糸条繰り出し降下手段と、切断された前記糸条を集積する糸条束集積部材を備えるとともに、前記糸束集積部材を搬送する糸条束集積搬送手段を設けたことを特徴とする糸条束集積装置。
【請求項6】
前記一対の糸条降下機構の片方が、該一対の糸条降下機構の間隔を変える糸条降下機構スライド手段を具備していることを特徴とする請求項5に記載の糸条束集積装置。
【請求項7】
前記糸条降下機構が、切断された前記糸条を前記糸条束集積部材に移載する際に、前記糸条の両端部を糸条束集積部材の集積溝内に押さえる糸条押さえ手段を具備していることを特徴とする請求項5または6に記載の糸条束集積装置。
【請求項8】
前記糸条束集積部材が、切断された前記糸条の長さに応じて長手方向に長さを調整可能なスライド手段を備えたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の糸条束集積装置。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の糸条束集積方法を用いて、中空糸濾過膜分離器用の中空糸束を製造することを特徴とする中空糸濾過膜分離器用の糸条束の製造方法。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれかに記載の糸条束集積装置を用いて、中空糸濾過膜用の中空糸束を製造することを特徴とする中空糸濾過膜用の糸条束製造装置。

【図1(A)】
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【図1(B)】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−247002(P2006−247002A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64963(P2005−64963)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】