説明

糸継ぎ装置

【解決手段】上流側から順に、ドラフト部1、糸を生成する紡績部2、糸送り部3、巻き取り部8、9、10、11を有する紡績機における糸継ぎ装置において、紡績部側吸引部材13に吸引されている糸Yを、糸送り部のニップローラー3aの自由端3a’から中央寄りに案内する糸入れ部材21を設けたものである。
【効果】紡績部側吸引部材に吸引されている糸を、糸送り部を構成するニップローラーとデリベリローラーに、確実に、糸入れすることができ、従って、糸継ぎミスを減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドラフト部、糸を生成する紡績部、糸送り部等を有する紡績機における糸継ぎ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、糸継ぎの際には、巻き取り側吸引部材としてのサクションマウスにより、パッケージに巻き取られた糸端を吸引し、糸出しするとともに、サクションマウスを上方に回動させることにより、巻き取り側の糸端を、ノッターやスプライサー等の糸継ぎ部材付近に配置し、また、紡績が再開され紡績部から送り出されてくる糸を、紡績側吸引部材としてのサクションパイプに吸引するとともに、サクションパイプを下方に回動させることにより糸継ぎ部材付近に配置し、その後、糸寄せ部材の糸寄せレバーを、糸継ぎ部材方向に回動させて、巻き取り側の糸端と紡績部側の糸端とを糸継ぎ部材に導入し、糸継ぎするようにした糸継ぎ装置が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の糸継ぎ装置においては、サクションパイプに吸引されている紡績部側の糸を、サクションパイプの下方への回動により、糸継ぎ部材付近に配置する際に、紡績部より下流側の糸の張力が弱い場合には、ニップローラーとデリベリローラー間への糸入れが失敗し、糸継ぎミスが発生するという問題があった。
【0004】本発明の目的は、上述した従来の糸継ぎ装置が有する課題を解決することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述した目的を達成するために、第1には、上流側から順に、ドラフト部、糸を生成する紡績、糸送り部、巻き取り部を有する紡績機における糸継ぎ装置において、紡績部側吸引部材に吸引されている糸を、糸送り部のニップローラーの自由端から中央寄りに案内する糸入れ部材を設けたものであり、第2には、紡績部側吸引部材に吸引されている糸を、通常の糸走行経路方向に向かってニップローラーの軸方向に移動させる糸寄せ部材を設けたものであり、第3には、糸寄せ部材を、紡績部側の糸端と巻き取り側の糸端とを、糸継ぎ部材の糸継ぎ部に導入するための糸寄せ部材としたものである。
【0006】
【実施例】以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り何ら、本実施例に限定されるものではない。
【0007】先ず最初に、図1を用いて、本発明の糸継ぎ装置が適用される紡績機を構成する紡績ユニットUについて概説する。
【0008】1は、バックローラー1a、サードローラー1b、エプロン1c’が張設されたセカンドローラー1c及びフロントローラー1dからなる、一例としての4線式のドラフト部であり、2は、旋回気流を利用して糸を生成する紡績部である。3は、ニップローラー3aとデリベリローラー3bとにより糸Yを挟持して、下方に送る糸送り部であり、4は、カッター4a及び、常時、吸引状態にある吸引パイプ4bとからなる吸引部材である。5は、糸ガイドであり、6は、常時、吸引状態にあるスラックチューブであり、7は、ヤーンクリアラーである。8は、巻き取り部を構成する、クレードルアーム9により把持されているボビン10に糸Yが巻回されたパッケージであり、パッケージ8は、フリクションローラー11に接触することにより回転されるように構成されている。なお、上記のニップローラー3aは片持ち状に支持されている。
【0009】Pは、紡績機に沿って走行する作業台車Pであり、作業台車Pには、後述する糸継ぎ部材12が配設されており、また、糸継ぎ作業の際に、紡績が再開された紡績部2から排出される糸を吸引し、糸継ぎ部材12付近まで移送する、紡績部側吸引部材としてのサクションパイプ13が配設されており、更には、パッケージ8に巻き込まれた糸を吸引し、糸出しを行うとともに、パッケージ8から引き出された糸を、糸継ぎ部材12付近まで移送する、巻き取り側吸引部材としてのサクションマウス14が配設されている。
【0010】繊維束Sは、ドラフト部1でドラフトされた後、紡績部2に入り、紡績部2内で発生している旋回気流により糸Yに生成される。その後、糸送り部3を構成するニップローラー3aとデリベリローラー3bとにより挟持されて、下方に送られる。その後、糸Yは、糸Yの走行経路下方に吸引口を有する、常時、吸引状態にある吸引パイプ4bを有する吸引部材4を経て、糸ガイド5に案内されながら、同じく、常時、吸引状態にあるスラックチューブ6の吸引口6aの前方を通り、ヤーンクリアラー7に挿通される。次いで、フリクションローラー11に接触し回転しているパッケージ8に巻き取られる。
【0011】ヤーンクリアラー7が、糸Yのスラブ等の欠陥を検知した場合には、糸送り部3の下流側に配設された吸引部材4のカッター4aを作動させて、糸Yを切断するとともに、切断された糸Yを、吸引部材4の吸引パイプ4bに吸引する。切断位置より下流側の糸Yは、パッケージ8に巻き取られる。また、バックローラー1aとサードローラー1bの回転を停止させて、サードローラー1bと、回転を続行しているセカンドローラー1cとの間で繊維束Sを切断し、セカンドローラー1c側の繊維束Sは、回転を続行しているセカンドローラー1cとフロントローラー1dとにより送られ、バックローラー1aの停止後も所定時間だけ稼働している紡績部2により糸Yに生成され、生成された糸Yは、吸引部材4の吸引パイプ4bに全て吸引され、除去される。
【0012】糸継ぎの際には、フリクションローラー11から離反され、回転を停止したパッケージ8に、図2に二点鎖線で示されているように、サクションマウス14の吸引口を接近させて、パッケージ8に巻き取られた糸を吸引し、その後、図示しないパッケージ逆転手段によりパッケージ8を逆転しつつ、サクションマウス14を上方に回動させることにより、巻き取り側の糸端Y1を、糸継ぎ部12付近に配置する。また、待機位置にあるサクションパイプ13を上方に回動させて、その吸引口13aが紡績部2の糸排出側に対向して配置した状態で、停止していたバックローラー1aとサードローラー1bとを作動させるとともに、紡績部2を作動させて、繊維束Sを、回転を続行しているセカンドローラー1cとフロントローラー1dとによりドラフトするとともに、紡績部2に送り込み、紡績を再開し糸Yを生成する。生成された糸Yの糸端は、図2に二点鎖線で示されているように、紡績部2の糸排出側に吸引口13aが配置されているサクションパイプ13に吸引され、その後、サクションパイプ13を下方に回動させることにより、糸Yは、ニップローラー3aとデリベリローラー3b付近に配置されるとともに、その糸端Y2は、糸継ぎ部12付近に配置される。この時、サクションパイプ13の吸引口13aは、通常の紡績状態での糸経路より幅方向の一側(本例では右側)にずれており、吸引された糸Yは、正面から見て一側に向かって斜めに傾斜した状態となっている。
【0013】次に、後述する糸寄せ部材の糸寄せレバーを、糸継ぎ部材12方向に回動させることにより、紡績部側の糸Yは、紡績ユニットUの幅方向中央(正面から見て、通常の紡績状態における糸の走行経路方向)に向かって移動されて、ニップローラー3aとデリベリローラー3bとに挟持されることになる。そして、紡績部側の糸Yが、ニップローラー3aとデリベリローラー3bとに挟持されると、後述する紡績部2内の補助ノズル16pからの圧縮空気の噴射を停止し、実撚り紡績に戻した後、糸継ぎが行われる。糸継ぎされた糸Yは、フリクションローラー11に接触し、回転を再開したパッケージ8に巻き取られ、また、糸継ぎ部材12による糸継ぎ動作中(ノッタヘッドの回転中)に、スラックチューブ6に貯留されている糸Yは、パッケージ8の回転再開に伴って消尽され、通常の紡績状態となる。
【0014】次に、図3を用いて、紡績部の一例として、紡績ノズル部15と非回転の中空ガイド軸体16とを有する紡績部2について説明する。
【0015】紡績ノズル部15は、ドラフト部1によりドラフトされた繊維束Sを導入する案内孔15aと、案内孔15aから排出された繊維束Sの流路上にニードル15bが取着されたニードルホルダー15cを有するとともに、ニードルホルダー15cの下流側に位置する、非回転状態の中空ガイド軸体16の円錐台状の先端部16aを、所定の間隔を隔てて覆うとともに、中空ガイド軸体16の先端部16a近傍に旋回気流を発生させる旋回気流発生部15dとを有している。
【0016】旋回気流発生部15dは、円筒状に形成されており、ニードルホルダー15cと同心状に組み付けられるように構成されている。旋回気流発生部15dには、ニードルホルダー15cから送られてくる繊維束Sに旋回気流を当てるための紡績室15eが形成されており、紡績室15e内に、中空ガイド軸体16の先端部16aが同軸状に収容されている。
【0017】また、旋回気流発生部15dには、紡績室15e内に旋回気流を発生させるための旋回ノズル15fが複数形成されている。旋回ノズル15fは、紡績室15eに連通する径細の孔として形成されており、それぞれ、空気を、旋回気流発生部15dの内周に沿って流すように、紡績室15eの接線上に、且つ、繊維束Sの送り方向下流側に傾斜して形成されている。旋回ノズル15fを囲むように、エア通路15gが形成された圧縮空気供給部材15hが、紡績ノズル部15に配設されており、圧縮空気供給部材15hは、パイプを介して、図示されていない圧縮空気供給源に連結されている。
【0018】中空ガイド軸体16は、紡績ノズル部15のニードルホルダー15cが取着されたフロントローラー6側の壁部15iと相対する壁部15jに形成された透孔15kに嵌入されるとともに、その先端に形成された開口16bが、ニードル15bに向けて配置されるように構成されている。また、中空ガイド軸体16の軸心上に形成される糸通路16cは、糸排出口16d側に向けて末広がり状になるように形成されており、具体的には、開口16bから糸排出口16dに向けて所定長さ延びる径細の導入部16eと、導入部16eから下流側に段をなして拡径される第1拡径部16fと、第1拡径部16fの下流側に滑らかに接続されたテーパー状に拡径される第2拡径部16gと、第2拡径部16gの下流側に段をなして拡径される第3拡径部16hとから形成されており、第3拡径部16hの端に、上記の糸排出口16dが形成されている。糸通路16cの形状は、上記の実施例に限定されるものではなく、テーパー状の拡径部をなくして、単なる段々形状とすることもでき、また、第1拡径部16fの下流側を、テーパー状の拡径部が糸排出口まで続くような形状とすることもできる。
【0019】中空ガイド軸体16の円錐台状の先端部16aと、糸排出口16d付近の大径部16i間に位置する中空ガイド軸体16の外周径は、小径部16jとして形成されており、この小径部16jを囲むように、中空ガイド軸体16を構成する外筒16kが取着されている。そして、小径部16jと外筒16kとの間には、小径部16jを囲むように、エア通路16nが形成されている。
【0020】中空ガイド軸体16の小径部16jには、糸通路16cに対して接線方向に設けた複数の補助ノズル16pが形成されており、本実施例においては、上述した旋回ノズル15fにより形成される旋回気流とは反対方向の旋回気流が発生するように構成されている。
【0021】17は、外筒16kに形成された透孔16rに嵌着するパイプ部17aを有する連結部材であり、連結部材17には、図示されていない圧縮空気供給源に連結されているパイプ18が連接されている。
【0022】図示されていない圧縮空気供給源に連結されているパイプ18及び連結部材17を介して、中空ガイド軸体16のエア通路16nに圧縮空気を供給すると、圧縮空気は、補助ノズル16pを通って糸通路16cに入り、糸排出口16dから排出されることになる。このように、補助ノズル16pから圧縮空気を供給することにより、中空ガイド軸体16の糸通路16c内に、先端に形成された開口16bから糸排出口16dに向かう空気流を形成するように構成されている。
【0023】次に、上述した構成を有する紡績機の紡績ユニットUによる糸Yの生成過程について概説する。
【0024】ドラフト装置1に供給された繊維束Sは、ドラフト装置1によりドラフトされた後、旋回気流発生部15dの旋回ノズル15fから噴射される圧縮空気の作用で発生しているニードルホルダー15cの案内孔15a付近の吸引空気流によって、案内孔15aに入り、その後、ニードル15bの周囲に沿って送られ紡績室15eに入る。
【0025】紡績室15e内に吸い込まれた繊維束Sを構成する繊維は、旋回ノズル15fから噴射され中空ガイド軸体16の先端部16a付近において高速で旋回している旋回気流の作用を受け、繊維束Sから分離されながら旋回気流の方向に加撚される。また、旋回気流により掛けられた一部の撚りは、フロントローラ6方向へ伝播しようとするが、ニードル15bによってその伝播が阻止されるので、フロントローラ6から送りだされる繊維束Sが上記撚りによって撚り込まれることがない。上記のように加撚された繊維は、大部分が巻き付き繊維となる実撚り状の糸(実撚り糸)Yに順次生成され、中空ガイド軸体16の糸通路16cを通り、糸排出口16dから排出される。このような、通常の糸Yの生成過程においては、圧縮空気供給源からパイプ18及び連結部材17を経て、中空ガイド軸体16のエア通路16nには圧縮空気は供給されておらず、従って、補助ノズル16pから、糸通路16c内に圧縮空気は供給されていない。
【0026】通常の紡績状態において、実撚り糸Yに順次生成され、中空ガイド軸体16の糸通路16cを通り、糸排出口16dから出た糸Yは、糸送り部3を構成するニップローラー3aとデリベリーローラー3bとにより挟持されて、パッケージ8方向に送られ、その後、図示されていない綾振りガイドにより綾振りされながら、フリクションローラー11に当接し、回転しているパッケージ8に巻き取られる。
【0027】次に、紡績機を始動させるための糸継ぎ作業や、糸切れが発生したときの糸継ぎ作業について説明する。
【0028】紡績機の始動前或いは糸切れが発生した際には、ドラフトローラーの一部(この場合は、バックローラー3とサードローラー4)は停止しており、また、旋回ノズル15f及び補助ノズル16pから圧縮空気は噴射されておらず、旋回ノズル15f及び補助ノズル16pは、非作動状態となっている。停止しているサードローラー4によりその先端が把持されている繊維束Sを、バックローラー3及びサードローラー4を回転駆動させることにより送り出すとともに、セカンドローラー5及びフロントローラー6を経て、紡績部2に供給する。停止していたドラフトローラーの駆動開始とともに、旋回ノズル15f及び補助ノズル16pから圧縮空気の噴射を開始する。即ち、糸継ぎ作業を行う紡績再開時には、紡績部2においては、旋回ノズル15fから圧縮空気が噴射されているとともに、圧縮空気供給源からパイプ18及び連結部材17を経て、中空ガイド軸体16のエア通路16nに圧縮空気が供給されており、従って、補助ノズル16pからも糸通路16c内に圧縮空気が噴射されている。
【0029】旋回ノズル15fは、繊維束Sの送り方向下流側に傾斜して形成されており、旋回ノズル15fから噴射される圧縮空気は、旋回しながら繊維束Sの送り方向へ流れるため、ニードルホルダー15cの案内孔15aに導入された繊維束Sは、旋回気流により、緩い仮撚り状態にされながら、ニードル15bを経て、中空ガイド軸体16の先端に形成された開口16b付近に送られる。
【0030】また、補助ノズル16pから噴射している圧縮空気は、中空ガイド軸体16に形成された糸通路16c内で内周面に沿って流れ、旋回気流を形成する。そして、糸通路16cは、上述したように、糸排出口16dに向けて、末広がり状に形成されているため、補助ノズル16pを介して、糸通路16c内に噴射された圧縮空気は、糸排出口16d側へ流れ、径細の導入部16eは負圧となる。このため、中空ガイド軸体16の先端に形成された開口16bには、吸引方向(中空ガイド軸体16内へ向かう方向)の空気の流れが発生する。これにより、繊維束Sを、連続的に、中空ガイド軸体16の糸通路16cに引き込むことができる。
【0031】中空ガイド軸体16の先端に形成された開口16b付近に送られた仮撚り状態の繊維束Sは、上述したように、開口16bからの吸引流によって、開口16bから糸通路16cに吸引される。そして、繊維束Sは、径細の導入部16eを経て、第1拡径部16fに至り、紡績ノズル部15内において、旋回ノズル15fにより形成されている旋回気流とは逆向きの旋回気流にさらされる。このため、互いに逆方向の旋回気流により糸を生成する結束紡績技術により、緩い仮撚り状態の繊維束1は、結束繊維状の糸(結束糸)に紡績されながら、中空ガイド軸体16の糸排出口16dから排出される。このような、旋回ノズル15fと補助ノズル16pとによる結束繊維状の糸の紡績状態を糸出し紡績という。本例では、紡績ノズル部15において、繊維束Sの流路上にニードル15bが設けられており、旋回ノズル15fとフロントローラー1dとの間で、補助ノズル16pにより、繊維に付与された仮撚りの伝播が、ニードル15bによって阻止されるので、糸出し紡績による結束糸の強力は弱く、中空ガイド軸体16の糸排出口16dより下流側での結束糸の張力は低くなる。
【0032】一方、糸継ぎが必要な紡績ユニットまで走行され、停止している作業台車Pを駆動して、上述したようにして、中空ガイド軸体16の糸排出口16dから排出された結束糸を、中空ガイド軸体16の糸排出口16d付近に配置されたサクションパイプ13の吸引口13aにより吸引するとともに、サクションパイプ13の下方への回動により、糸継ぎ部材12付近に移送する。その後、サクションパイプ13に吸引されている糸がニップローラー3aとデリベリローラー3bとに挟持されると、補助ノズル16pへの圧縮空気供給源からの圧縮空気の供給を停止して、補助ノズル16pからの糸通路16c内への圧縮空気の噴射を停止する。これにより、中空ガイド軸体16内の旋回気流は消えて、上述した互いに逆方向の旋回気流による結束糸の糸出し紡績は終了し、通常の糸Yの紡績状態、つまり、紡績ノズル部15の旋回ノズル15fからの旋回気流により、糸送り部3によって糸Yを引き出しつつ、実撚り糸の紡績が行われることになる。
【0033】作業台車Pのサクションパイプ13から吸引された糸Yを糸継ぎ部材12により継なぐときには、結束糸は、全て、サクションパイプ13内に吸い込まれ、実撚り同士が糸継ぎされるようになっている。上記のサクションパイプ13による作業と並行して、作業台車Pのサクションマウス14を、パッケージ8方向に回動させて、パッケージ8に巻き込まれた糸を、サクションマウス14により吸引するとともに、サクションマウス14を上方に回動させて、巻き取り側の糸端を糸継ぎ部材12付近に配置する。そして、紡績部側の糸端Y2と巻き取り側の糸端Y1とが糸継ぎ部材12付近に配置された後に、一旦、後述する糸寄せ部材の糸寄せレバーを、糸継ぎ部材12方向に回動させて、紡績部側の糸端Y2を、通常の糸走行経路に向かって、ニップローラー3aの軸方向に移動させて、ニップローラー3aの下にもぐり込ませる。その後、補助ノズル16pからの圧縮空気を停止し、結束糸が全てサクションパイプ13に吸引除去されると、再度、糸寄せ部材の糸寄せレバーを作動させて、紡績部側の糸端Y2と巻き取り側の糸端Y1とを糸継ぎ部材12に導入し、糸継ぎ部材12を駆動して、双方の糸を継なぎ、糸継ぎ作業が終了することになる。なお、スラックチューブ6の吸引口は、通常状態では閉鎖されており、糸継ぎ部材12を駆動(ノッタヘッドの回転)開始とともに吸引口を開くようになっている。これにより、糸継ぎ部材12の駆動中(ノッタヘッドの回転中)における糸の弛みを、スラックチューブ6が吸引するようになっている。
【0034】図4に示されているように、糸継ぎ部材12は、公知のノッター等からなる糸結び部12aを有しており、糸結び部12aを挟んで上下には、上部糸ガイド部12bと下部糸ガイド部12cとが配設されている。上部糸ガイド部12bは、先端に行く程、幅の広い凹部12b1が形成されているガイドプレート12b2と、凹部12b1を二分するように、ガイドプレート12b2に取着された分岐プレート12b3とを有している。同様に、下部糸ガイド部12cも、先端に行く程、幅の広い凹部12c1が形成されているガイドプレート12c2と、凹部12c1を二分するように、ガイドプレート12c2に取着された分岐プレート12c3とを有している。
【0035】19は、上述した糸寄せ部材であり、糸寄せ部材19は、垂直軸19aと、垂直軸19aの上下端に取着された一対の糸寄せレバー19bとを有しており、糸寄せレバー19bは、適当な駆動手段により、図4R>4に示されているように、上部糸ガイド部12b及び下部糸ガイド部12cから離反した待機位置から、図5に示されているように、上部糸ガイド部12b及び下部糸ガイド部12c方向に回動することができるように構成されている。
【0036】次に、糸送り部材3を構成するニップローラー3aとデリベリローラー3bとの間に糸を挿入する、ニップローラー3aとデリベリローラー3b間への糸入れ部材について説明する。なお、20は、糸送り部材3の直ぐ下流側に配設された糸スライドプレートであり、その上端には、ニップローラー3aの自由端3a’に向かって、ニップローラー3aの自由端3a’を越える位置まで、下方に傾斜する傾斜面20aが形成されている。そして、紡績部2から排出された糸を吸引したサクションパイプ13を、糸継ぎ部材12方向へ回動させた際には、糸は、糸スライドプレート20の傾斜面20aに載置されるとともに、傾斜面20aに沿って、ニップローラー3aの自由端3a’に向かって移行し、その自由端3a’を越えて、デリベリローラー3bに載置されるように構成されている。このような糸スライドプレート20を配設したので、ニップローラー3aの上流側で、後述する糸入れ部材21によって糸を中央寄りに案内するにも関わらず、糸が、ニップローラー3a上に載置されたままになるようなことが防止できる。なお、糸が、ニップローラー3aとデリベリローラー3bとにより挟持されている場合には、糸は、糸スライドプレート20の下端20bより下方に位置し、糸スライドプレート20に接触しないように構成されている。
【0037】21は、糸送り部材3の直ぐ上流側に配設された、糸送り部材3を構成するニップローラー3aとデリベリローラー3bとの間への糸の挿入を助長する手段を構成する糸入れプレートである。糸入れプレート21には、紡績部2から紡出される糸を、糸排出側に配置された吸引口13aにより吸引したサクションパイプ13が下方に回動され、糸Yを糸継ぎ部12付近に配置する工程で、糸Yを、ニップローラー3aの自由端3a’から中央寄りに案内するための傾斜面21aが形成されているとともに、ニップローラー3aとデリベリローラー3bとの間に導入された糸が、糸入れプレート21に接触しないように、傾斜面21aの下方には、逃げ凹部21bが形成されている。糸入れプレート21は、図示されていない、紡績機の適当なフレームに取着されている。
【0038】上述したように、糸継ぎ作業の際には、糸継ぎ部材12付近に回動したサクションパイプ13に吸引されている糸端Y2は、図4に示されているように、糸入れプレート21の傾斜面21aに接触しているとともに、上部糸ガイド部12bの凹部12b1の分岐プレート12b3により仕切られた一方の凹部内及び下部糸ガイド部12cの凹部12c1の分岐プレート12c3により仕切られた一方の凹部内に位置している。同様に、糸継ぎ部材12付近に回動したサクションマウス14に吸引されている糸端Y1は、上部糸ガイド部12bの凹部12b1の分岐プレート12b3により仕切られたもう一方の凹部内及び下部糸ガイド部12cの凹部12c1の分岐プレート12c3により仕切られたもう一方の凹部内に位置している。
【0039】紡績部側の糸端Y2と、巻き取り側の糸端Y1とが、上述したように配置された後に、糸寄せ部材19を、図4に示されているような、上部糸ガイド部12b及び下部糸ガイド部12cから離反した待機位置から、図5に示されているように、上部糸ガイド部12b及び下部糸ガイド部12c方向に回動させると、紡績部側の糸端Y2と、巻き取り側の糸端Y1とは、上部糸ガイド部12b及び下部糸ガイド部12cにより、それぞれ、紡績ユニットUの幅方向のほぼ中心線上の正面から見て、通常の糸走行経路方向に案内されて、糸結び部12aに導入される。上部糸ガイド部12b及び下部糸ガイド部12cにより、中央寄りに案内された紡績部側の糸Yは、上述した糸入れプレート21の傾斜面21aに接触し、中央寄りに移行しようとする力が作用しているので、糸寄せレバー19aの糸結び部12a方向への回動と相まって、ニップローラー3aとデリベリローラー3bに、確実に、糸入れされ、挟持されることになる。このように、サクションパイプ13に吸引されている糸は、ニップローラー3aの上流側で糸入れプレート21の傾斜面21aに沿って幅方向中央に案内されるとともに、ニップローラー3aの下流側で、糸寄せ部材19によって幅方向中央に向かって移動されるので、ニップローラー3aの前後(紡績部2の下流側)における糸張力が低い場合であっても、ニップローラー3aに対する糸入れを、確実に行うことができる。
【0040】特に、図3に示されているような形式の紡績部2を有する紡績機においては、上述した糸出し紡績中に紡出される糸の張力が小さいために、ニップローラー3aとデリベリローラー3bへの糸入れが失敗することがあったが、上述したように、糸入れ部材としての糸入れプレート21を配設したことにより、ニップローラー3aとデリベリローラー3bへの糸入れ成功率が向上する。
【0041】なお、上述した実施例には、巻き取り側の糸端Y1と紡績部側の糸端Y2とを、糸継ぎ部12aに導入する糸寄せ部材19と、糸入れ部材を構成する糸入れプレート21との協同により、サクションパイプ13に吸引されている糸を、ニップローラー3aとデリベリローラー3bとの間に糸入れする例が示されているが、即ち、ニップローラー3aに糸入れする際、ニップローラー3aの下流側において、糸を中央寄りに寄せるとともに、糸に張力を付与する糸寄せ部材を、糸継ぎ部材12の駆動直前に、糸継ぎ部12aに糸を導入する糸寄せ部材19と兼用した例が示されているが、このような巻き取り側の糸端Y1と紡績部側の糸端Y2とを、糸継ぎ部12aに導入するための糸寄せ部材19とは別に、糸を中央寄りに移行させる糸寄せ部材を配設することもできる。
【0042】
【発明の効果】本発明は、以上説明した構成を有しているので、以下に記載する効果を奏するものである。
【0043】紡績部側吸引部材に吸引されている糸を、糸送り部を構成するニップローラーとデリベリローラーに、確実に、糸入れすることができ、従って、糸継ぎミスを減少させることができる。
【0044】糸寄せ部材と相まって、ニップローラーの前後で糸が中央に案内されるので、紡績部側吸引部材に吸引されている糸を、糸送り部を構成するニップローラーとデリベリローラーに、より確実に、糸入れすることができる。
【0045】糸寄せ部材を、糸継ぎ部材の糸寄せ部材で兼用させるように構成したので、ニップローラーに糸入れするための糸寄せ部材を特別に設ける必要がなく、糸継ぎ部材の糸寄せ部材を所定のタイミングで駆動させればよく、従って、糸継ぎ装置の構造が簡素化でき、糸継ぎ装置の故障が少なくなるとともに、メインテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の糸継ぎ装置及び該糸継ぎ装置が適用される一例としての紡績機の概略側面図である。
【図2】図2は同じく本発明の糸継ぎ装置及び該糸継ぎ装置が適用される一例としての紡績機の概略側面図である。
【図3】図3は本発明の糸継ぎ装置が適用される紡績機の一例としての紡績部の垂直断面図である。
【図4】図4は本発明の糸継ぎ装置及び該糸継ぎ装置が適用される一例としての紡績機の要部斜視図である。
【図5】図5は同じく本発明の糸継ぎ装置及び該糸継ぎ装置が適用される一例としての紡績機の要部斜視図である。
【図6】図6は同じく本発明の糸継ぎ装置及び該糸継ぎ装置が適用される一例としての紡績機の要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・・ドラフト部
2・・・・・・・・・紡績部
3・・・・・・・・・糸送り部
8・・・・・・・・・パッケージ
12・・・・・・・・糸継ぎ部材
13・・・・・・・・サクションパイプ(紡績部側吸引部材)
14・・・・・・・・サクションマウス(巻き取り側吸引部材)
21・・・・・・・・糸入れ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】上流側から順に、ドラフト部、糸を生成する紡績、糸送り部、巻き取り部を有する紡績機における糸継ぎ装置において、紡績部側吸引部材に吸引されている糸を、糸送り部のニップローラーの自由端から中央寄りに案内する糸入れ部材を設けたことを特徴とする糸継ぎ装置
【請求項2】紡績部側吸引部材に吸引されている糸を、通常の糸走行経路方向に向かってニップローラーの軸方向に移動させる糸寄せ部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の糸継ぎ装置。
【請求項3】糸寄せ部材が、紡績部側の糸端と巻き取り側の糸端とを、糸継ぎ部材の糸継ぎ部に導入するための糸寄せ部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の糸継ぎ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−159039(P2001−159039A)
【公開日】平成13年6月12日(2001.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−333802
【出願日】平成11年11月25日(1999.11.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】