説明

糸継装置およびそれを備えた糸巻取装置

【課題】上糸と下糸とをそれぞれの解撚作業位置へ正確に案内することができる糸継装置およびそれを備えた糸巻取装置を提供する。
【解決手段】撚り継ぎすべき下糸YAと上糸YBとを解撚するディスク部材33・33と、ディスク部材33・33の解撚作業位置YAW・YBWまで下糸YAと上糸YBとを案内する案内部材と、前記案内部材まで下糸YAと上糸YBとを導入する糸寄せレバーと、を具備するディスクスプライザ30であって、案内部材には、下糸YAを解撚作業位置YAWに案内する下糸案内部42Aと、上糸YBを解撚作業位置YBWに案内する上糸案内部42Bと、が形成され、糸寄せレバーには、下糸YAを下糸案内部42Aまで導く下糸位置決め部32Aと、上糸YBを上糸案内部42Bまで導く上糸位置決め部32Bと、が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸継装置および糸継装置を備えた糸巻取装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻取装置としての自動ワインダは公知である。糸巻取装置の糸継装置としては、メカ式および空気撚継式のものが良く知られている。メカ式の糸継装置としては、ディスク状の回転体により糸端対の解撚および結合を行うディスクスプライサが公知である。例えば、特許文献1および2は、ディスクスプライサを開示している。ディスクスプライサは、2枚のディスクの間にて糸端対の解撚および結合を行うため、ディスクの間における各糸端の位置決めが非常に重要となる。
【0003】
通常、自動ワインダは、パッケージ側の糸端(以下、上糸)をサクションマウスでディスクスプライサに案内して、その後に、給糸ボビン側の糸端(以下、下糸)を中継パイプによってディスクスプライサに案内している。このとき、上糸は、鉛直方向に略平行にディスクスプライサの前側に配置される。一方、下糸は、中継パイプによって先に配置された上糸を避けるように同じくディスクスプライサの前側に配置される。そのため、ディスクスプライサの上側での上糸との距離が、ディスクスプライサの下側での上糸との距離よりも離れて配置される。言い換えれば、下糸は、上側が開く斜めの方向に配置される。つまり、下側では、下糸と上糸との距離が近い状態となる。
【0004】
そして、ディスクスプライサの前側に配置された2つの糸端は、ディスクスプライサの上側と下側とに設けられた上側糸寄せレバーと下側糸寄せレバーとの回動によって、ディスクスプライサの前側から後側に向かう方向にそれぞれが押圧され、ディスクスプライサの上側と下側とに設けられた上側案内プレートと下側案内プレートとにそれぞれ導入される。上側案内プレートと下側案内プレートとには、ディスクスプライサの上糸解撚作業位置と下糸解撚作業位置とに上糸および下糸をそれぞれ案内する上糸案内部と下糸案内部とが形成されている。
【0005】
このとき、ディスクスプライサの下側では、下糸が下側糸寄せレバーによって下側案内プレートの下糸案内部に導入されなければならない。しかしながら、上述したように下糸と上糸との距離が近いため、下糸が下側糸寄せレバーに押圧されながら下側糸寄せレバーの基端側に移動してしまい、下糸が上糸と共に下側案内プレートの上糸案内部のほうに導入される場合が生じる。そのため、上糸と下糸とを案内プレートのそれぞれの所定位置に正確に導入できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−122669号公報
【特許文献2】特開昭58−082961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、上糸と下糸とをそれぞれの解撚作業位置へ正確に案内することができる糸継装置およびそれを備えた糸巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
第1の発明は、撚り継ぎすべき第1糸端と第2糸端とを解撚する解撚機構と、前記解撚機構の解撚作業位置まで第1糸端と第2糸端とを案内する案内部材と、前記案内部材まで第1糸端と第2糸端とを導入する糸寄せレバーと、を具備する糸継装置であって、前記解撚作業位置は、前記第1糸端を位置させる第1解撚作業位置と、前記第2糸端を位置させる第2解撚作業位置と、を含み、前記案内部材には、前記第1糸端を前記第1解撚作業位置に案内する第1案内部と、前記第2糸端を前記第2解撚作業位置に案内する第2案内部と、が形成され、前記糸寄せレバーには、前記第1糸端を前記第1案内部まで導く第1位置決め部と、前記第2糸端を前記第2案内部まで導く第2位置決め部と、が形成されるものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の糸継装置であって、前記案内部材は、前記解撚機構を挟み込む位置に設けられる第1案内部材と、第2案内部材と、を含み、前記糸寄せレバーは、前記第1案内部材側に設けられる第1糸寄せレバーと、前記解撚機構の前記第2案内部材側に設けられる第2糸寄せレバーと、を含み、前記第2糸寄せレバーには、前記第1および第2位置決め部が形成されるものである。
【0011】
第3の発明は、第2の発明の糸継装置であって、前記第2糸寄せレバーは、回動可能に取り付けられ、前記第1位置決め部は、前記第2糸寄せレバーの回動基端側よりに凹部として形成され、前記第2位置決め部は、前記第2糸寄せレバーの回動先端側よりに、前記凹部よりも曲率の大きい凹部として形成されるものである。
【0012】
第4の発明は、第3の発明の糸継装置であって、前記解撚機構は、回転可能に設けられた一対のリング状部材であって、第1解撚作業位置および第2解撚作業位置は、前記一対のリング状部材の間に位置し、前記一対のリング状部材の回転中心を結ぶ仮想軸線を中心とした対称位置とするものである。
【0013】
第5の発明は、第4の発明の糸継装置であって、前記第1案内部の案内始点と、前記第2案内部の案内始点とは、前記仮想軸線に平行に並んで形成され、前記第1案内部の案内終点と前記第2案内部の案内終点とは、前記仮想軸線に直交する方向に並んで形成されるものである。
【0014】
第6の発明は、給糸ボビンと、前記給糸ボビンの糸を巻き取って形成されるパッケージと、糸切れ時または糸切断時には、前記給糸ボビン側の下糸と、前記パッケージ側の上糸とを、解撚して撚り継ぐ糸継装置と、前記糸継装置まで下糸を案内する中継パイプと、前記糸継装置まで上糸を案内するサクションマウスと、を具備する糸巻取装置であって、前記糸継装置は、撚り継ぎすべき上糸端と下糸端とを解撚する解撚機構と、前記解撚機構の解撚作業位置まで上糸端と下糸端とを案内する案内部材と、前記案内部材まで上糸端と下糸端とを導入する糸寄せレバーと、を具備する糸継装置であって、前記解撚作業位置は、上糸端を位置させる上糸解撚作業位置と、下糸端を位置させる下糸解撚作業位置と、を含み、前記案内部材には、上糸端を上糸解撚作業位置に案内する上糸案内部と、下糸端を下糸解撚作業位置に案内する下糸案内部と、が形成され、前記糸寄せレバーには、上糸端を前記上糸案内部まで導く上糸位置決め部と、下糸端を前記下糸案内部まで導く下糸位置決め部と、が形成されるものである。
【0015】
第7の発明は、第6の発明の糸巻取装置であって、前記案内部材は、前記解撚機構の上側に設けられる上側案内部材と、前記解撚機構の下側に設けられる下側案内部材と、を含み、前記糸寄せレバーは、前記解撚機構の上側に設けられる上側糸寄せレバーと、前記解撚機構の下側に設けられる下側糸寄せレバーと、を含み、前記下側糸寄せレバーには、前記上糸および下糸位置決め部が形成されるものである。
【0016】
第8の発明は、第7の発明の糸巻取装置であって、前記下側糸寄せレバーは、回動可能に取り付けられ、前記上糸位置決め部は、前記下側糸寄せレバーの回動基端側よりに凹部として形成され、前記下糸位置決め部は、前記下側糸寄せレバーの回動先端側よりに、前記凹部よりも曲率の大きい凹部として形成されるものである。
【0017】
第9の発明は、第8の発明の糸巻取装置であって、前記解撚機構は、回転可能に設けられた一対のリング状部材であって、前記上糸および下糸解撚作業位置は、前記一対のリング状部材の間に位置し、前記一対のリング状部材の回転中心を結ぶ仮想軸線を中心とした対称位置とするものである。
【0018】
第10の発明は、第9の発明の糸巻取装置であって、前記上糸案内部の案内始点と、前記下糸案内部の案内始点とは、前記仮想軸線に平行に並んで形成され、前記上糸案内部の案内終点と前記下糸案内部の案内終点とは、前記仮想軸線に直交する方向に並んで形成されるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
第1の発明は、糸寄せレバーに形成される第1位置決め部によって、第1糸端を案内部の第1案内部まで導き、糸寄せレバーに形成される第2位置決め部によって、第2糸端を案内部の第2案内部まで導くため、第1糸端と第2糸端とを正確にそれぞれの解撚作業位置へ案内することができる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明の効果に加え、第1糸端(下糸)が第2案内部(上糸案内部)に導入される不具合は、糸継装置の下側で生じることから、下側糸寄せレバーにのみ第1位置決め部と第2位置決め部とを形成することで、上側糸寄せレバーの加工工程を削減し、糸継装置の製造コストを削減できる。
【0022】
第3の発明は、第2の発明の効果に加え、第2位置決め部の凹部の曲率を大きく形成することで、確実に第2糸端を捕捉できる。
【0023】
第4の発明は、第3の発明の効果に加え、第1糸端と第2糸端とを同条件で正確に解撚することができる。
【0024】
第5の発明は、第4の発明の効果に加え、第1糸端と第2糸端とを解撚機構の第1解撚作業位置と第2解撚作業位置とに正確に案内できる。
【0025】
第6の発明は、糸寄せレバーに形成される上糸位置決め部とによって、上糸を案内部の上糸案内部まで導き、糸寄せレバーに形成される下糸位置決め部とによって、下糸を案内部の下糸案内部まで導くため、上糸と下糸とを解撚作業位置へ正確に案内することができる糸巻取装置を実現できる。
【0026】
第7の発明は、第6の発明の効果に加え、下糸が上糸案内部に導入される不具合は、糸継装置の下側で生じることから、下側糸寄せレバーにのみ下糸位置決め部と上糸位置決め部とを形成することで、上側糸寄せレバーの加工工程を削減し、糸継装置の製造コストを削減できる糸巻取装置を実現できる。
【0027】
第8の発明は、第7の発明の効果に加え、下糸位置決め部の凹部の曲率を大きく形成することで、確実に下糸端を捕捉できる糸巻取装置を実現できる。
【0028】
第9の発明は、第8の発明の効果に加え、上糸端と下糸端とを同条件で正確に解撚することができる糸巻取装置を実現できる。
【0029】
第10の発明は、第9の発明の効果に加え、上糸端と下糸端とを解撚機構の上糸解撚作業位置と下糸解撚作業位置とに正確に案内できる糸巻取装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態である自動ワインダの全体的な構成を示す概略図。
【図2】Aは同じくディスクスプライサの全体的な構成を示す平面図、Bは同じく正面図、Cは同じく底面図。
【図3】Aは同じくディスク部の構成を示す平面図、Bは同じく断面構成図。
【図4】同じく下側糸寄せレバーおよび下側案内プレートの構成を示す平面図。
【図5】同じく下側糸寄せレバーが下糸および上糸を下側案内プレートに導入する態様を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を用いて、本発明の実施形態である糸巻取装置としての自動ワインダ10について説明する。
図1乃至図5は、矢印Xの向きが左右方向の右側を示し、矢印Yの向きが前後方向の前側を示し、矢印Zの向きが鉛直方向の上側を示すものとして説明する。
自動ワインダ10は、給糸ボビンBから解舒される紡績糸Yをトラバースさせながら巻取ボビンBF上に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージPとするものである。
【0032】
自動ワインダ10は、巻取ボビンBFを把持する図示せぬクレードルと、紡績糸Yをトラバースさせる綾振ドラム(巻取ドラム)13と、を具備している。クレードルは、綾振ドラム13に対して近接又は離間する方向に揺動自在であり、それによって、巻取ボビンBFに紡績糸Yを巻いて形成したパッケージPが綾振ドラム13に対して接触又は離間される。綾振ドラム13の周面には螺旋状の綾振溝13Aが形成されており、この綾振溝13Aによって紡績糸Yをトラバースさせるようにしている。
【0033】
自動ワインダ10は、給糸ボビンBと綾振ドラム13との間の糸走行経路中において、給糸ボビンB側から順に、解舒補助装置14と、ヤーンフィーラ15と、テンション付与装置16と、糸継装置としてのディスクスプライサ30と、ヤーンクリアラ18と、を具備している。
【0034】
解舒補助装置14は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸の解舒を補助するものである。ヤーンフィーラ15は、解舒補助装置14とテンション付与装置16との間における紡績糸Yの有無を検出するものである。テンション付与装置16は、走行する紡績糸Yに所定のテンションを付与するものである。本実施形態では、固定の櫛歯16Aに対して可動の櫛歯16Bを配置するゲート式のものが用いられている。
【0035】
ディスクスプライサ30は、糸欠点を検出して行う糸切断時、または解舒中の糸切れ時などに、給糸ボビンB側の紡績糸である第1糸端としての下糸YAと、パッケージP側の紡績糸である第2糸端としての上糸YBと、を糸継するものである。ディスクスプライサ30は円盤状のディスク部材33・33を一対で備え、このディスク部材33・33が下糸YAと上糸YBとを挟持している状態で、このディスク部材33・33を互いにすり合わせることにより、下糸YAと上糸YBを解撚および結合して糸継するように構成されている。
【0036】
ヤーンクリアラ18は、紡績糸Yの欠陥を検出するためのものであって、ヤーンクリアラ18からの紡績糸Yの太さに応じた信号が適宜のアナライザで処理されることで、スラブ等の糸欠点を検出する。ヤーンクリアラ18には、糸欠点を検出した時の糸切断用のカッター18Aが付設されている。
【0037】
自動ワインダ10は、中継パイプ21と、サクションマウス22と、を具備している。中継パイプ21は、その吸引口21Aがディスクスプライサ30の上下に回動可能に設けられ、給糸ボビンB側の下糸YAを捕捉して案内するものである。サクションマウス22は、その吸引口22Aがディスクスプライサ30の上下に回動可能に設けられ、パッケージP側の上糸YBを捕捉して案内するものである。
【0038】
サクションマウス22は、図示の位置から軸22Bを中心にして下から上へと旋回し、逆転させられるパッケージPから上糸YBを捕捉し、さらに軸22Bを中心にして上から下へと旋回し、ディスクスプライサ30に上糸YBを案内する。そして、中継パイプ21は、糸切断時または糸切れ時においては、吸引口21Aによって図示の位置で下糸YAを捕捉し、軸21Bを中心にして下から上へと旋回してディスクスプライサ30に下糸YAを案内する。
【0039】
図2を用いて、本発明の実施形態である糸継装置としてのディスクスプライサ30について説明する。
図2Aはディスクスプライサ30の平面図を示し、図2Bはディスクスプライサ30の正面図を示し、図2Cはディスクスプライサ30の底面図を示している。
【0040】
ディスクスプライサ30は、本体35と、左カバー36と、右カバー37と、を具備している。本体35は、略長方形に構成され、自動ワインダ10を形成する図示しないフレームに固定されている。左カバー36と右カバー37とは、本体35の前側の左側と右側とをそれぞれ被装するように本体35の前側にそれぞれが取り付けられ、左カバー36と右カバー37との間には、隙間38が設けられている。左カバー36と右カバー37とは、それぞれ前側が円弧形状となるように形成され、隙間38に向かって円弧の径が小さくなるように左カバー36には傾斜部36Sが形成され、右カバー37には傾斜部37Sが形成されている。傾斜部36Sの傾斜と傾斜部37Sの傾斜とは、異なる傾斜角度となるようにそれぞれ形成されている。
【0041】
ディスクスプライサ30は、ディスク部材33・33を具備している。ディスク部材33・33は、ディスク部材33・33間が左右方向において左カバー36と右カバー37との隙間38と一致するように配置されている。
【0042】
ディスクスプライサ30は、第1糸寄せレバーとしての上側糸寄せレバー31と、第2糸寄せレバーとしての下側糸寄せレバー32と、を具備している。上側糸寄せレバー31は、本体35の上面の前側かつ右側に軸支され、下側糸寄せレバー32は、本体35の下面の前側かつ右側に軸支され、図示せぬ回動機構によって旋回されるものである。上側糸寄せレバー31および下側糸寄せレバー32は、本体35に取り付けられた状態で、隙間38に対して内側を向けて湾曲する略「L」の字形状に形成されている。
【0043】
ディスクスプライサ30は、第1案内部材としての上側案内プレート41と、第2案内部材としての下側案内プレート42と、を具備している。上側案内プレート41は、本体35の上側の左右方向の略中央に取り付けられ、その一部は本体35から突出し、左カバー36および右カバー37を覆うように取り付けられている。下側案内プレート42は、本体35の下側の左右方向の略中央に取り付けられ、その一部は本体35から突出し、左カバー36および右カバー37を覆うように取り付けられている。
【0044】
なお、自動ワインダ10は、上糸YBをサクションマウス22でディスクスプライサ30に案内して、その後に、下糸YAを中継パイプ21によってディスクスプライサ30に案内している。このとき、上糸YBは、ディスクスプライサ30の前側であって鉛直方向と略平行に配置される。一方、下糸YAは、中継パイプ21によって先に配置された上糸YBを避けるように同じくディスクスプライサ30の前側に配置される。そのため、ディスクスプライサ30の上側での上糸YBとの距離が、ディスクスプライサ30の下側での上糸YBとの距離よりも離れて配置される。言い換えれば、下糸YAは、上側が開く斜めの方向に配置される。つまり、下側では、下糸YAと上糸YBとの距離が近い状態となる(図2B参照)。
【0045】
図3を用いて、ディスクスプライサ30の詳細について説明する。
図3Aはディスク部材33・33の平面図を示し、図3Bは図3AにおけるPP´断面におけるディスク部材33・33の断面構成図を示している。なお、図3乃至図5では、分かり易く記載するために下糸YAおよび上糸YBを大きい径で記載している。
【0046】
上述したようにディスクスプライサ30は、ディスク部材33・33を一対で具備している。ディスク部材33・33の縁部33E・33Eは、下糸YAと上糸YBとを第1解舒作業位置としての下糸解舒作業位置YAWと第2解舒作業位置としての上糸解舒作業位置YBWとでそれぞれ挟持し、ディスク部材33・33を互いにすり合わせることにより、下糸YAと上糸YBとを解撚および結合して糸継する。下糸解撚作業位置YAWと上糸解撚作業位置YBWとは、ディスク部材33・33の間に位置し、ディスク部材33・33の回転中心を結ぶ仮想軸線33Xに対して対称となる位置とされている。なお、具体的な解撚および加撚方法については、本実施形態では説明を省略する。
【0047】
図4を用いて、さらにディスクスプライサ30の詳細について説明する。
図4は、下側糸寄せレバー32および下側案内プレート42の平面図を示している。なお、図4は、説明を分かり易くするため、下側糸寄せレバー32および下側案内プレート42以外については破線で示している。
【0048】
上述したようにディスクスプライサ30は、下側糸寄せレバー32と、下側案内プレート42と、を具備している。下側糸寄せレバー32は、湾曲する内側に第1位置決め部としての下糸位置決め部32Aと、第2位置決め部としての上糸位置決め部32Bと、仕切り部32Pと、が形成されている。上糸位置決め部32Bと下糸位置決め部32Aとは、湾曲する内側において凹形状に形成されている。ここで、下糸位置決め部32Aの凹形状は、上糸位置決め部32Bの凹形状よりも曲率の大きいものとして形成されている。仕切り部32Pは、下糸位置決め部32Aと上糸位置決め部32Bとを仕切る部分である。
【0049】
下側案内プレート42には、第1案内部としての下糸案内部42Aと、第2案内部としての上糸案内部42Bと、仕切り部42Pと、が形成されている。下糸案内部42Aは、平面視において、下側案内プレート42に略三角形状に切り欠いて形成されている。同じく上糸案内部42bは、平面視において、下側案内プレート42に略三角形状に切り欠いて形成されている。仕切り部42Pは、下糸案内部42Aと上糸案内部42Bとを仕切る部分である。
【0050】
下糸案内部42Aには、案内始点としての入口部42ASと、案内終点としての終端部42AEと、が形成されている。入口部42ASは、下糸案内部42Aの前側に形成され、終端部42AEは、切り欠いた三角形状の頂点に凹部として形成されている。終端部42AEの位置は、下糸解舒作業位置YAWと略同一の位置とされている。
【0051】
上糸案内部42Bには、案内始点としての入口部42BSと、案内終点としての終端部42BEと、が形成されている。入口部42BSは、下糸案内部42Aの前側に形成され、終端部42AEは、切り欠いた三角形状の頂点として形成されている。終端部42BEの位置は、上糸解舒作業位置YBWと略同一の位置とされている。
【0052】
入口部42ASと入口部42BSとのそれぞれの位置を結ぶ線分は、上述したディスク部材33・33の回転中心を結ぶ仮想軸線33Xに対して略平行する位置関係とされている。一方、終端部42AEと終端部42BEとの位置を結ぶ線分は、上述したディスク部材33・33の回転中心を結ぶ仮想軸線33Xに対して略直交となる位置関係とされている。
【0053】
なお、上側糸寄せレバー31および上側案内プレート41の構成については、下側糸寄せレバー32および下側案内プレート42と同様の構成であるため説明を省略する。ただし、上側糸寄せレバー31には、下糸位置決め部32Aの相当するものが形成されていないものとする。
【0054】
図5を用いて、ディスクスプライサ30の作用について説明する。
図5は、下側糸寄せレバー32および下側案内プレート42の平面図を示している。図5Aから図5Dは、下側糸寄せレバー32が下糸YAおよび上糸YBを、下糸解撚作業位置YAWと上糸解撚作業位置YBWとまで移動させる態様を順に示している(図5D参照)。
【0055】
図5Aに示すように、中継パイプ21によって案内された下糸YAと、サクションマウス22によって案内された上糸YBとは、それぞれ左カバー36および右カバー37の前側に配置されている。ここで、上述したように下側では、下糸YAと上糸YBとの距離が近い状態となっている。
【0056】
図5Bに示すように、下側糸寄せレバー32が旋回すると、下糸YAは下側糸寄せレバー32の下糸位置決め部32Aに捕捉され、上糸YBは下側糸寄せレバー32の上糸位置決め部32Bに捕捉される。下糸YAと上糸YBは下側糸寄せレバー32に捕捉された状態で押し込まれ、左カバー36の傾斜部36Sおよび右カバー37の傾斜部37Sをつたって隙間38に導入される。
【0057】
図5Cに示すように、さらに下側糸寄せレバー32が旋回すると、下糸YAは、下側糸寄せレバー32の下糸位置決め部32Aに捕捉された状態で入口部42ASに導入され、上糸YBは、下側糸寄せレバー32の上糸位置決め部32Bに捕捉された状態で入口部42BSに導入される。このとき、下側糸寄せレバー32の仕切り部32Pと、下側案内プレート42の仕切り部42Pとが交差し、下糸YAは、下糸位置決め部32Aおよび下糸案内部42Aから抜けることはない。
【0058】
図5Dに示すように、さらに下側糸寄せレバー32が旋回すると、下糸YAは、下側糸寄せレバー32に捕捉された状態で入口部42ASから終端部42AE(下糸解撚作業位置YAW)に案内され、上糸YBは、下側糸寄せレバー32に捕捉された状態で入口部42BSから終端部42BE(上糸解撚作業位置YBW)に案内されることとなる。
【0059】
本実施形態の構成とすることで、以下の効果を奏する。
従来、ディスクスプライサ30の下側では、下糸YAが下側糸寄せレバー32によって下側案内プレート42の下糸案内部42Aに導入されるものの、下糸YAと上糸YBとの距離が近いため、下糸YAが下側糸寄せレバー32の回動に押圧されながらも、下側糸寄せレバー32の基端側に移動し、下糸YAが下側案内プレート42の上糸案内部42Bに導入される場合があった。そのため、下糸YAと上糸YBとを下側案内プレート42のそれぞれの所定位置に正確に導入できない場合があった。
本実施形態によれば、下側糸寄せレバー32に形成される下糸位置決め部32Aと上糸位置決め部32Bとによって、下糸YAを下側案内プレート42の下糸案内部42Aまで導き、上糸YBを下側案内プレート42の上糸案内部42Bまで導くため、下糸YAと上糸YBとを正確に案内することができる。
【0060】
また、下糸YAが上糸案内部42Bに導入される不具合は、ディスクスプライサ30の下側で生じる場合が多いことから、下側糸寄せレバー32にのみ下糸位置決め部32Aと上糸位置決め部32Bとを形成することで、上側糸寄せレバー31の加工工程を削減し、ディスクスプライサ30の製造コストを削減できる。
さらに、下糸位置決め部32Aの凹部の曲率を大きく形成することで、確実に下糸YAを捕捉できる自動ワインダ10を実現できる。
【0061】
なお、本実施形態では、下側糸寄せレバー32のみに下糸位置決め部32Aを設けたが、上側糸寄せレバー31にも下糸位置決め部32Aの相当するものを形成してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、下糸YAが上側が開く斜めの方向に配置されるが、上糸YBの下側が開く斜めの方向に配置される場合には、上側糸寄せレバー31に下糸位置決め部32Aの相当するものが形成されるものとする。
【0063】
また、本実施形態では、上側糸寄せレバー31と下側糸寄せレバー32は、本体35の右側に軸支されて旋回するものとしたが、本体35の左側に軸支されて旋回するものであってもよい。この場合、下側糸寄せレバー32に形成される下糸位置決め部32Aに相当するものは、上糸YBを下側案内プレート42の上糸案内部42Bに導入することとなる。
【0064】
つまり、下糸位置決め部32Aに相当するものを、上側糸寄せレバー31と下側糸寄せレバー32のいずれに形成するかという点と、下糸位置決め部32Aに相当するものに上糸YBを案内プレートに導入させるのか、下糸YAを案内プレートに導入させるのかという点は、サクションマウス22及び中継パイプ21によってディスクスプライサ30に案内される上糸YB、下糸YAの配置と、上側糸寄せレバー31と下側糸寄せレバー32の旋回軸の本体35に対する位置とで決定される。
【符号の説明】
【0065】
10 自動ワインダ(糸巻取装置)
21 中継パイプ
22 サクションマウス
30 ディスクスプライサ(糸継装置)
32 下側糸寄せレバー(第2糸寄せレバー)
42 下側案内プレート(第2案内部材)
42A 下糸案内部
42AS 入口部(案内始点)
42ES 終端部(案内終点)
YA 下糸(第1糸端)
YB 上糸(第2糸端)
YAW 下糸解撚作業位置
YBW 上糸解撚作業位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り継ぎすべき第1糸端と第2糸端とを解撚する解撚機構と、
前記解撚機構の解撚作業位置まで第1糸端と第2糸端とを案内する案内部材と、
前記案内部材まで第1糸端と第2糸端とを導入する糸寄せレバーと、
を具備する糸継装置であって、
前記解撚作業位置は、前記第1糸端を位置させる第1解撚作業位置と、前記第2糸端を位置させる第2解撚作業位置と、を含み、
前記案内部材には、前記第1糸端を前記第1解撚作業位置に案内する第1案内部と、前記第2糸端を前記第2解撚作業位置に案内する第2案内部と、が形成され、
前記糸寄せレバーには、前記第1糸端を前記第1案内部まで導く第1位置決め部と、前記第2糸端を前記第2案内部まで導く第2位置決め部と、が形成される、糸継装置。
【請求項2】
請求項1記載の糸継装置であって、
前記案内部材は、前記解撚機構を挟み込む位置に設けられる第1案内部材と、第2案内部材と、を含み、
前記糸寄せレバーは、前記第1案内部材側に設けられる第1糸寄せレバーと、前記解撚機構の前記第2案内部材側に設けられる第2糸寄せレバーと、を含み、
前記第2糸寄せレバーには、前記第1および第2位置決め部が形成される、糸継装置。
【請求項3】
請求項2記載の糸継装置であって、
前記第2糸寄せレバーは、回動可能に取り付けられ、
前記第1位置決め部は、前記第2糸寄せレバーの回動基端側よりに凹部として形成され、
前記第2位置決め部は、前記第2糸寄せレバーの回動先端側よりに、前記凹部よりも曲率の大きい凹部として形成される、糸継装置。
【請求項4】
請求項3記載の糸継装置であって、
前記解撚機構は、回転可能に設けられた一対のリング状部材であって、
第1解撚作業位置および第2解撚作業位置は、前記一対のリング状部材の間に位置し、前記一対のリング状部材の回転中心を結ぶ仮想軸線を中心とした対称位置とする、糸継装置。
【請求項5】
請求項4記載の糸継装置であって、
前記第1案内部の案内始点と、前記第2案内部の案内始点とは、前記仮想軸線に平行に並んで形成され、
前記第1案内部の案内終点と前記第2案内部の案内終点とは、前記仮想軸線に直交する方向に並んで形成される、糸継装置。
【請求項6】
給糸ボビンと、
前記給糸ボビンの糸を巻き取って形成されるパッケージと、
糸切れ時または糸切断時には、前記給糸ボビン側の下糸と、前記パッケージ側の上糸とを、解撚して撚り継ぐ糸継装置と、
前記糸継装置まで下糸を案内する中継パイプと、
前記糸継装置まで上糸を案内するサクションマウスと、
を具備する糸巻取装置であって、
前記糸継装置は、
撚り継ぎすべき上糸端と下糸端とを解撚する解撚機構と、
前記解撚機構の解撚作業位置まで上糸端と下糸端とを案内する案内部材と、
前記案内部材まで上糸端と下糸端とを導入する糸寄せレバーと、
を具備する糸継装置であって、
前記解撚作業位置は、上糸端を位置させる上糸解撚作業位置と、下糸端を位置させる下糸解撚作業位置と、を含み、
前記案内部材には、上糸端を上糸解撚作業位置に案内する上糸案内部と、下糸端を下糸解撚作業位置に案内する下糸案内部と、が形成され、
前記糸寄せレバーには、上糸端を前記上糸案内部まで導く上糸位置決め部と、下糸端を前記下糸案内部まで導く下糸位置決め部と、が形成される、糸巻取装置。
【請求項7】
請求項6記載の糸巻取装置であって、
前記案内部材は、前記解撚機構の上側に設けられる上側案内部材と、前記解撚機構の下側に設けられる下側案内部材と、を含み、
前記糸寄せレバーは、前記解撚機構の上側に設けられる上側糸寄せレバーと、前記解撚機構の下側に設けられる下側糸寄せレバーと、を含み、
前記下側糸寄せレバーには、前記上糸および下糸位置決め部が形成される、糸巻取装置。
【請求項8】
請求項7記載の糸巻取装置であって、
前記下側糸寄せレバーは、回動可能に取り付けられ、
前記上糸位置決め部は、前記下側糸寄せレバーの回動基端側よりに凹部として形成され、
前記下糸位置決め部は、前記下側糸寄せレバーの回動先端側よりに、前記凹部よりも曲率の大きい凹部として形成される、糸巻取装置。
【請求項9】
請求項8記載の糸巻取装置であって、
前記解撚機構は、回転可能に設けられた一対のリング状部材であって、
前記上糸および下糸解撚作業位置は、前記一対のリング状部材の間に位置し、前記一対のリング状部材の回転中心を結ぶ仮想軸線を中心とした対称位置とする、糸巻取装置。
【請求項10】
請求項9記載の糸巻取装置であって、
前記上糸案内部の案内始点と、前記下糸案内部の案内始点とは、前記仮想軸線に平行に並んで形成され、
前記上糸案内部の案内終点と前記下糸案内部の案内終点とは、前記仮想軸線に直交する方向に並んで形成される、糸巻取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate