糸縛り装置および糸縛り方法
【課題】被束縛体を糸によってスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法を提供すること。
【解決手段】糸縛り装置100では,まず,糸縛りユニット1をステータSに対向させ,糸BをコイルCの下側に通す。その後,糸把持チャック51によって糸の先端部を把持し,糸BをコイルCの上側に通す。そして,糸Bを回転板13と搬送管11との隙間に押し込み,その状態で回転板13を回動させる。これにより,糸Bが搬送管11に巻きつけられる。その後,糸Bの先端部を搬送管11の先端部に配設された先端チャック14によって把持し,その状態で搬送管11に巻き付けられた糸Bを取り出す。そして,先端チャック14にて糸Bの先端部を把持したまま糸縛りユニット1がステータSから退避する。これにより,コイルCが締め上げられる。
【解決手段】糸縛り装置100では,まず,糸縛りユニット1をステータSに対向させ,糸BをコイルCの下側に通す。その後,糸把持チャック51によって糸の先端部を把持し,糸BをコイルCの上側に通す。そして,糸Bを回転板13と搬送管11との隙間に押し込み,その状態で回転板13を回動させる。これにより,糸Bが搬送管11に巻きつけられる。その後,糸Bの先端部を搬送管11の先端部に配設された先端チャック14によって把持し,その状態で搬送管11に巻き付けられた糸Bを取り出す。そして,先端チャック14にて糸Bの先端部を把持したまま糸縛りユニット1がステータSから退避する。これにより,コイルCが締め上げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ステータコイル等の被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置および糸縛り方法に関する。さらに詳細には,被束縛体を糸でスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車等に搭載される車両駆動用モータでは,ステータのスロットにコイル(ステータコイル)が挿入され,ステータの両面から突き出したコイルエンド部が所定の形状に成形される。また,コイルエンド部からは,電源に接続するためのリード線が引き出されている。リード線は,モータ全体のコンパクト化を図るため,糸によってコイルエンド部とともに束縛される。従来,このリード線の糸縛り作業は,手作業によって行われていた。
【0003】
また,コイルエンド部に付属品を縛り付ける装置としては,例えば特許文献1に開示されている装置がある。この装置では,コイルエンド部の回りを1周する糸通路を形成し,その糸通路内に空気流を発生させて糸を搬送している。そして,糸がコイルエンド部を1周した後に,二重こま結びの結び目と一重こま結びの結び目とを形成し,コイルエンド部を付属品とともに縛り付けている。
【特許文献1】特開平6−276710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,手作業によってリード線をコイルエンド部に固定する場合には,次のような問題があった。すなわち,糸によってリード線をコイルエンドに縛り付ける作業は複雑である。具体的にコイルエンド部を糸で縛るためには,少なくとも,コイルエンド部およびリード線に糸をくぐらせてループ状に形成し(ループ形成ステップ),その糸に結び目を形成し(結び目形成ステップ),その糸によってリード線をコイルエンド部とともに締め上げる(締め上げステップ)ことを行う必要がある。
【0005】
これらのステップをすべて手作業で行うため,最終的な固定状態にばらつきが生じる。また,作業に多大な時間を要し,生産性を悪化させてしまう。また,これらのステップをすべて十分に実施できる装置はなく,リード線の固定作業の自動化を困難にする要因にもなっている。
【0006】
なお,特許文献1には,コイルエンド部を縛る装置が開示されているが,この装置には次のような問題点がある。すなわち,特許文献1に開示された装置では,2回のこま結び(まる結び)によってコイルエンド部を締め上げている。この結び方は,始めの結び目の拘束力を維持しながら次の結び目を作る必要がある。そのため,拘束力の維持が難しく,締め上げが不十分になることがある。また,特許文献1の装置では,その用途がコイルエンド部の縛りに限定されてしまう。すなわち,汎用性がない。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,被束縛体を糸によってスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた糸縛り装置は,被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置であって,糸を供給する糸供給部と,被束縛体に対して進退可能に配設された糸搬送管と,糸供給部から供給される糸を糸搬送管の内側を通じて被束縛体の下側に送り出す第1糸送り部と,第1糸送り部によって被束縛体の下側に通された糸を被束縛体の上側を通して折り返す糸折返し部と,糸折返し部によって折り返された糸の端部を糸搬送管に巻き付ける糸巻付け部と,糸搬送管の糸の出口端に位置し,糸を把持する糸把持部と,糸巻付け部によって糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を糸把持部に向けて搬送する第2糸送り部と,糸搬送管上に位置し,糸搬送管の軸方向に摺動可能に配設され,糸巻付け部によって糸搬送管に巻き付けられた糸を糸搬送管から取り出す糸取出し部とを有し,糸把持部が糸を把持した状態で,糸取出し部と糸搬送管とを摺動させることにより,糸搬送管に巻き付けられた糸を取り出し,糸取出し部が糸を取出し,糸把持部が糸の先端部を把持した状態で,糸搬送管が被束縛体から退行することを特徴としている。なお,本明細書では,糸搬送管の両端部のうち,管内に糸が送り込まれる側の端部を「入口端」とし,管外に糸が送り出される側の端部を「出口端」とする。
【0009】
本発明の糸縛り装置では,被束縛体を糸で束縛するために次のような動作を行う。まず,糸搬送管の糸の出口端を被束縛体に対峙させる。次に,第1糸送り部によって糸搬送管の出口端から糸を送り出し,被束縛体の下側にその糸を通す(糸送りステップ)。つまり,糸搬送管の出口端から送り出される糸の先端を,被束縛体を挟んで糸搬送管の反対側に搬送する。
【0010】
次に,糸折返し部が,被束縛体の下側に通された糸を把持し,その糸を被束縛体の上側に通す(折り返しステップ)。すなわち,その糸の先端部を糸搬送管に向けて搬送する。これにより,被束縛体を中心にして糸が折り返され,ループ状になって被束縛体を取り囲む。
【0011】
次に,糸巻付け部が,糸折返し部によって送られてきた糸を糸搬送管に巻き付ける(巻き付けステップ)。糸巻付け部としては,例えば,糸折返し部によって折り返された糸をその端部を余して糸搬送管に押し付ける糸押付け部と,糸搬送管の外周上に所定の隙間をもって回動可能に配設され,その隙間に糸が配置された状態で回動を開始する回転板とを有することとするとよい。すなわち,糸押付け部によって糸を確実に糸搬送管に近づけることができる。そして,糸押付け部によって糸を押さえつけた上でその糸を引っ張ることで,その糸を回転板と糸搬送管との隙間に配置することができる。そして,その状態で回転板が糸搬送管上を回動することで,自由端となっている糸を巻きつけることができる。糸押付け部は,例えば上下方向に移動可能な押し棒が適用可能である。また,回転板は,搬送管と摺動可能である糸取出し部に付設することで,糸取出し部の回転に伴って回動することができる。すなわち,簡易に糸巻付け部を構成することができる。
【0012】
次に,第2糸送り部が,糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を糸搬送管の出口端付近に設けられた糸把持部に搬送し,糸把持部が糸の先端部を把持する(糸先端部把持ステップ)。
【0013】
第2糸送り部としては,例えば,糸搬送管の下側に位置し,糸搬送管の軸方向に沿って移動可能に配設され,糸搬送管に糸が巻き付けられた状態で糸搬送管の糸の出口端に向けて移動する軸方向送り部材と,糸把持部の下側に位置し,糸搬送管の軸方向に直交する方向に移動可能に配設され,軸方向送り部材が移動した後で糸把持部に向けて移動する直交方向送り部材とを有することとするとよい。すなわち,搬送管に巻きつけられた糸の先端部は,糸搬送管の下側に垂れ下がっている。そのため,糸搬送管の軸方向に沿って移動する軸方向送り部によって糸搬送管の軸方向に糸を送る。つまり,軸方向送り部を糸搬送管の出口端側に移動させることで,糸の先端部を糸搬送管の出口端側に位置する糸把持部に向けて移動させる。そして,軸方向送り部が軸方向上において糸把持部の口元と同一の位置となる場所まで移動した後,軸方向と直交する方向に移動する直交方向送り部によって糸の先端部を糸把持部まで送り出す。その後,糸把持部が糸を把持する。すなわち,2方向に移動する部材を組み合わせる簡易な構成で第2送り部とすることができる。
【0014】
糸把持部としては,例えば,糸搬送管の糸の出口端に接離可能に配設され,その出口端との間で糸を挟み込むことで糸を把持することとするとよい。すなわち,出口端との間で糸を把持することができ,簡易に糸把持用のチャックを構成することができる。
【0015】
次に,糸把持部が糸の先端部を把持した状態で,糸取出し部と糸搬送管とが摺動し,糸搬送管に巻き付けられた糸を糸搬送管から取り出す(糸取り出しステップ)。糸を取り出す際には,糸取出し部が移動してもよいし,糸搬送管が移動してもよい。いずれの場合であっても,糸取出し部の端部が糸把持部のチャックをくぐり抜けるように両者が摺動すればよい。これにより,巻きつけられていた糸が糸把持部をくぐり抜け,糸搬送管から取り出される。さらには,巻きつけられていた糸が縮まることにより,糸の結び目が形成される。
【0016】
次に,糸把持部が糸の先端部を把持したまま,糸搬送部が退行して被束縛体を締め上げる(締め付けステップ)。すなわち,糸搬送部が退行することで糸の結び目が被束縛体に向けて移動し,被束縛体が糸で束縛される。被束縛体を締め上げる際には,緩みがなくなるまで糸搬送部を退行させることで拘束力を十分に維持したままで被束縛体を束縛できる。さらに,糸搬送部の退行距離によって拘束力の調節を調節できる。
【0017】
さらには,糸搬送部が直線的に退行するだけでなく,少なくとも上下方向と水平方向との少なくとも一方に揺動可能であるとよりよい。すなわち,糸搬送管が揺動することで糸の結び目をより被束縛体に近づけることができ,より確実に被束縛体を拘束することができる。
【0018】
また,本発明の糸縛り装置の第1糸送り部は,ローラによって糸を搬送することとするとよりよい。ローラによって糸を搬送することで,糸の変更に対する調節が容易になる。すなわち,空気流によって糸を搬送しようとすると,糸の材質が変更されたときに糸の搬送速度の調節が困難になる。そして,部品を交換して対応しなければならないこともある。しかし,本発明のようにローラによって糸を搬送することで,ローラの駆動源であるサーボモータを調節することによって糸の変更に対応することができる。よって,調節が非常に容易であり,部品の交換を行う必要がない。
【0019】
なお,被束縛体としては,例えばリード線を含むステータコイルが該当するが,これに限るものではない。例えば,リード線単体でもよい。また,枯れ枝を束ねたり,ひも状のスポンジを束ねるときにも対応可能であり,被束縛体は硬質素材であっても軟質素材であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,被束縛体に結束糸をくぐらせ糸をループ状に形成するループ形成ステップと,糸に結び目を形成する結び目形成ステップと,被束縛体を締め上げる締め上げステップとをすべて行うことができる。そのため,糸縛り作業を自動化することができ,生産性が向上する。また,被束縛体を締め上げる際には,十分な拘束力を維持することができる。よって,被束縛体を糸によってスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法が実現されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施例は,車両駆動用モータのリード線を束縛糸にてステータコイルのコイルエンド部に縛り付ける糸縛り装置に本発明を適用したものである。
【0022】
本形態の糸縛り装置100は,図1に示すように,糸縛りユニット1と,糸ボビン2と,糸送り部3と,糸テンショナー4と,糸反転ユニット5とを有している。また,糸縛り装置100とは別に,ステータを支持するテーブル9が糸縛り装置100に隣接配置されている。
【0023】
糸縛りユニット1は,糸の結び目の形成や被束縛体(本形態ではステータのコイルエンド)の締め上げに供するものである。具体的に,糸縛りユニット1は,図2に示すように,内部で糸を搬送する搬送管11と,搬送管11を被覆し搬送管11を軸として回転可能に設けられた回転部材12と,回転部材12に付設され回転部材12の回転に伴って搬送管11を中心に回動する回転板13と,搬送管11の出口端側に位置し,搬送管11の出口端に対して接離可能な方向(図2中の矢印X1 )に移動可能に設けられ,搬送管11と接することでその出口端を塞ぐ先端チャック14とを有している。
【0024】
搬送管11は,内側に糸Bを収容する円筒状の鋼管である。搬送管11内の糸Bは,先端チャック14側(出口端側)に向けて搬送される。さらには,先端チャック14には貫通孔が設けられており,搬送管11内を搬送されてきた糸Bがその貫通孔を介して排出される。また,先端チャック14は,搬送管11の出口端に接触および離間することで,搬送管11の端部との間でチャックを形成している。また,回転部材12は,搬送管11の軸方向(図2中の矢印X2 )に摺動可能に設けられている。
【0025】
また,糸縛りユニット1には,押し棒6と,押し板7A,7Bが付設されている。押し棒6は,先端部が円柱状であり,搬送管11の上方に配置されている。また,押し棒6は,図2中の上下方向(図2中の矢印Y1 )および奥行き方向(図2中の矢印Z1 )に移動可能であり,搬送管11に対して接離可能に設けられている。押し板7Aは,搬送管11の下方であって搬送管11に対して平行配置されている。また,押し板7Aは,図2中の左右方向(図2中の矢印X3 )に移動可能であり,後述する押し板7Bに対して接離可能に設けられている。押し板7Bは,先端の断面が鋭利な形状であり,搬送管11の下方に配置されている。また,押し板7Bは,図2中の上下方向(図2中の矢印Y2 )に移動可能であり,搬送管11の先端部(すなわち,先端チャック14のチャック部)に対して接離可能に設けられている。押し棒6および押し板7A,7Bの移動は,公知の手段によって実現している。
【0026】
図1の説明に戻り,糸送り部3は,複数のローラによって構成されるローラ群31を備え,そのローラ群31によって糸縛りユニット1の搬送管11に糸Bを送り込むものである。また,糸送り部3は,糸縛りユニット1を支持するものである。さらに,糸送り部3は,図1中の上下方向(図1中の矢印Y1 )および左右方向(図1中の矢印X1 )に移動可能となっている。そのため,糸送り部3の移動に伴って糸縛りユニット1も上下左右に移動する。また,糸テンショナー4は,糸送り部3よりも糸Bの搬送経路中の上流に位置し,束縛糸に張力を付与するものである。
【0027】
糸反転ユニット5は,糸Bを把持するための糸把持チャック51を備え,その糸把持チャック51を図1中の上下方向(図1中の矢印Y2 )および左右方向(図1中の矢印X2 )に移動可能することで糸Bを糸縛りユニット1に向けて搬送するものである。具体的に,糸反転ユニット5は,垂直方向にスライド可能に配設されたシリンダ5Aと,水平方向にスライド可能に配設されたシリンダ5Bとによって構成されている。シリンダ5Aの先端部には,糸把持チャック51が配設されている。また,シリンダ5Bの先端部はシリンダ5Aを支持するユニットと一体となっている。すなわち,シリンダ5Aおよびシリンダ5Bによって糸把持チャック51が図1中の上下左右自在に移動可能になっている。
【0028】
また,被束縛体であるステータSは,図3に示すように,ステータコアSCにコイルCが巻装された状態であり,そのコイルエンド部からはリード線Lが引き出されている。コイルエンド部は,ステータコアScのスロットにコイルCを挿入する際に,所定の形に成形される。また,リード線は,複数本の巻線(エナメル線)を束ねた複合線であり,絶縁スリーブが挿入されている。
【0029】
続いて,本形態の糸縛り装置100の動作について説明する。なお,テーブル9には,あらかじめステータSを配置しておく。また,糸送り部3には,糸ボビン2から供給される糸Bが糸テンショナー4を経由して搬送されている。また,押し棒6および押し板7A,7Bは,それぞれ糸縛りユニット1から離間した状態になっている。
【0030】
まず,図4に示すように,糸縛りユニット1がステータコアScとコイルCとの隙間と対峙するように,糸縛りユニット1をステータSに隣接させる。そして,糸縛りユニット1の先端部から糸Bを送り出し,さらにコイルCとステータコアScとの隙間に糸Bを通す(第1ステップ)。これにより,糸Bの先端部がコイルCの下側を通り,コイルCよりもステータの径方向の内側に送り込まれる。
【0031】
次に,図5に示すように,糸把持チャック51が下方に移動し,糸Bの先端部近傍を把持する(第2ステップ)。すなわち,糸反転ユニット5のシリンダ5Bがスライドすることによって水平方向の位置決めを行い,シリンダ5Aが下方にスライドすることによって糸把持チャック51がステータSのコイルエンドに囲まれた領域内に移動する。そして,第1ステップによって送り込まれた糸Bの先端部を把持する。
【0032】
次に,図6に示すように,糸把持チャック51が上方に移動する(第3ステップ)。すなわち,糸反転ユニット5のシリンダ5Aを上方に後退させる。これにより,糸Bの先端部がコイルエンド部よりも上方に移動する。
【0033】
次に,図7に示すように,糸把持チャック51が糸縛りユニット1に向かって移動する(第4ステップ)。すなわち,糸反転ユニット5のシリンダ5Bを糸縛りユニット1側に後退させる。これにより,糸Bの先端部がコイルエンド部を跨ぎ,コイルCよりもステータの径方向の外側に移動する。
【0034】
次に,図8に示すように,押し棒6が糸縛りユニット1に向かって移動する。具体的には,図8中の奥行き方向に移動した後,糸Bを押さえつつ下側(すなわち糸縛りユニット1側)に移動する。そして,支え棒60を介し,押し棒6によって糸Bを糸縛りユニット1に押し付ける(第5ステップ)。これにより,糸Bがコイルエンドを囲むようなループ状になる。
【0035】
さらに,図9に示すように,押し棒6が糸Bを押さえた状態で,糸把持チャック51が糸Bを引っ張る。これにより,糸Bが搬送管11と回転板13との隙間に移動する。糸Bの移動後は,糸把持チャック51が糸Bの先端部を解放する。また,糸把持チャック51の解放とともに,押し棒6は搬送管11から退避する。
【0036】
次に,図10に示すように,回転部材12が回転を開始する(第6ステップ)。この回転部材12の回転により,回転部材12に付設された回転板13が搬送管11を中心に回動する。糸Bの先端部は,糸把持チャック51から解放されて回転部材12と搬送管11との隙間に入り込んでおり,回転板13が回動すると,その回動に伴って糸Bの先端部が搬送管11に巻きつけられる。巻き数については限定しない。
【0037】
次に,図11に示すように,押し板7Aが糸縛りユニット1の先端部に向けて水平移動する(第7ステップ)。具体的には,搬送管11の軸方向において,押し板7Aの先端が搬送管11の出口端と同じ位置になるように移動する。これにより,搬送管11から垂れ下がる糸Bの先端が糸縛りユニット1の先端部に向かって移動する。
【0038】
次に,図12に示すように,鋭利な先端部を有する押し板7Bが搬送管11と先端チャック14との隙間,すなわち先端チャック14の口元に向けて上方に移動する(第8ステップ)。これにより,糸Bの先端部が先端チャック14の口元に搬送される。つまり,押し板7A,7Bにより,糸Bの先端部が先端チャック14の口元に送り出される。そして,この状態で先端チャック14を閉じることにより,先端チャック14が糸Bの先端部を把持する。なお,糸Bをチャックした後,押し板7Aおよび押し板7Bは退避する。
【0039】
次に,図13に示すように,回転部材12を先端チャック14に向けてスライドさせる(第9ステップ)。具体的には,回転部材12の端部が先端チャック14を跨ぐまでスライドさせる。これにより,搬送管11に巻きつけられた糸Bが押し出され,先端チャック14にて把持された糸Bの先端部をくぐり抜ける。そして,糸Bの押し出された部分,すなわち巻きつけられていた部分が縮まって結び目となる。
【0040】
次に,図14に示すように,糸縛りユニット1をステータSから退避させる(第10ステップ)。糸縛りユニット1が退避することにより,第9ステップで形成された結び目がコイルエンドに向かって移動するとともに結び目がより縮められる。以上により,ステータSのコイルエンドが糸Bによって縛り付けられる。
【0041】
なお,第10ステップまでの糸縛りでは拘束力が不十分になることがある。その場合には,図15に示すように,先端チャック14を解放した上で糸縛りユニット1を上下方向に揺動させる。これにより,糸の結び目がさらにコイルエンドに向かって移動し,糸Bのループを締め上げることができる。よって,十分な拘束力が得られる。
【0042】
以上詳細に説明したように本形態の糸縛り装置100では,まず,糸縛りユニット1をステータSに対峙させ,ローラ群31によって糸縛りユニット1から糸Bを送り出し,糸BをコイルCの下側に通すこととしている。その後,糸把持チャック51によって糸の先端部を把持し,糸BをコイルCの上側に通すこととしている。これにより,コイルCを取り囲む糸Bのループを形成することができる(ループ形成ステップ)。
【0043】
そして,押し棒6によって糸Bを搬送管11に押し付け,糸把持チャック51が糸Bを引っ張り,糸Bが回転板13と搬送管11との隙間に移動した後に,その状態で回転板13を回動させることとしている。これにより,糸Bの先端部が搬送管11に巻きつけられる。その後,押し板7A,7Bにより糸Bの先端部を搬送管11の先端部に配設された先端チャック14に送り出し,先端チャック14により糸の先端部を把持することとしている。さらに,その状態で回転部材12がスライドすることにより,搬送管11に巻き付けられた糸Bを取り出すこととしている。これにより,糸Bの結び目を形成することができる(結び目形成ステップ)。
【0044】
そして,先端チャック14によって糸Bの先端部を把持したまま糸縛りユニット1がステータSから退避することとしている。これにより,結び目が縮められるとともにその結び目がコイルCに近づく。つまり,糸Bのループ内のコイルCが締め上げられる(締め上げステップ)。
【0045】
すなわち,本形態の糸縛り装置100は,ループ形成ステップ,結び目形成ステップ,および締め上げステップをすべて行うことができ,コイルCをしっかりと締め上げて拘束することができる。よって,被束縛体を糸によってスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法が実現している。
【0046】
また,糸縛りユニット1は,後退した後に先端チャック14を解放した上でさらに上下に揺動することとしている。これにより,糸縛りユニット1の後退だけでは拘束力が不十分であったとしても,コイルCをさらに締め上げることができる。よって,よりしっかりと拘束することができる。
【0047】
また,糸送り部3は,ローラ群31によって糸を送り出すこととしている。すなわち,従来のように空気流によって糸を搬送しようとすると,糸の材質が変更されたときに糸の搬送速度の調節が困難になる。そして,部品を交換して対応しなければならないこともある。しかし,ローラ群31によって糸を搬送することで,ローラ群31の駆動源であるサーボモータを調節することによって糸の変更に対応することができる。よって,調節が非常に容易であり,部品の交換を行う必要がない。
【0048】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態では,糸送り部3が上下方向に揺動するが,移動方向は上下方向に限るものではない。すなわち,図1の奥行き方向(水平方向)に揺動させてもよい。また,上下方向と水平方向との両方向に揺動させてもよい。
【0049】
また,本実施の形態では,糸縛り装置100とテーブル9とを別体としているが,被束縛体を支持するテーブルが一体となっていてもよい。また,実施の形態では,糸送り部3が上下左右に移動することによって糸縛りユニット1が移動可能になっているが,糸縛りユニット1単体で移動可能としてもよい。
【0050】
また,本実施の形態では,押し棒6および押し板7A,7Bが糸縛りユニット1に付設されているが,それぞれ糸縛りユニット1とは別体で動作するものであってもよい。また,押し棒6および押し板7A,7Bの各先端部には,糸Bを捕らえ易くするための切欠きを設けてもよい。
【0051】
また,本実施の形態では,押し棒6,および回転部材12に付設された回転板13によって搬送管11に糸Bを巻き付けているが,これらは糸Bの巻き付け手段の一例であってこれらに限るものではない。例えば,回転部材12に糸Bを把持可能な部材を付設し,糸Bを把持しつつ回転部材12が回転することによっても糸Bを搬送管11に巻き付けることができる。
【0052】
また,本実施の形態では,押し棒7A,7Bによって先端チャック14のチャック部に糸Bを送っているが,これらは糸Bの送り手段の一例であってこれらに限定するものではない。例えば,糸Bの先端部を把持する部材を設け,その部材が糸Bを把持しつつ先端チャック14のチャック部の周辺を回動することによっても糸Bを先端チャック14のチャック部に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態にかかる糸縛り装置の概要を示す図である。
【図2】糸縛り装置の糸縛りユニットの構成を示す図である。
【図3】ステータの概要を示す図である。
【図4】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第1ステップ:糸の挿入)である。
【図5】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第2ステップ:糸先端の把持)である。
【図6】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第3ステップ:糸先端の上方移動)である。
【図7】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第4ステップ:糸先端の糸縛りユニット側移動)である。
【図8】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第5ステップのその1:糸の押付け)である。
【図9】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第5ステップのその2:糸の挟み込み)である。
【図10】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第6ステップ:糸の巻付け)である。
【図11】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第7ステップ:糸先端の搬送管出口側移動)である。
【図12】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第8ステップ:糸先端の把持)である。
【図13】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第9ステップ:糸の取出し)である。
【図14】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第10ステップ:糸縛りユニットの後退)である。
【図15】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第11ステップ:糸縛りユニットの上下移動)である。
【符号の説明】
【0054】
1 糸縛りユニット
11 搬送管(糸搬送管)
12 回転部材(糸巻付け部,糸取出し部)
13 回転板(糸巻付け部:回転板)
14 先端チャック(糸把持部)
2 糸ボビン(糸供給部)
3 糸送り部(第1糸送り部)
31 ローラ群(第1糸送り部)
5 糸反転ユニット(糸折返し部)
51 糸把持チャック(糸折返し部)
6 押し棒(糸巻付け部:糸押付け部)
7A 押し棒(第2糸送り部:軸方向送り部材)
7B 押し棒(第2糸送り部:直交方向送り部材)
9 ステータ載置用のテーブル
100 糸縛り装置
S ステータ
C コイル(被束縛体)
【技術分野】
【0001】
本発明は,ステータコイル等の被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置および糸縛り方法に関する。さらに詳細には,被束縛体を糸でスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車等に搭載される車両駆動用モータでは,ステータのスロットにコイル(ステータコイル)が挿入され,ステータの両面から突き出したコイルエンド部が所定の形状に成形される。また,コイルエンド部からは,電源に接続するためのリード線が引き出されている。リード線は,モータ全体のコンパクト化を図るため,糸によってコイルエンド部とともに束縛される。従来,このリード線の糸縛り作業は,手作業によって行われていた。
【0003】
また,コイルエンド部に付属品を縛り付ける装置としては,例えば特許文献1に開示されている装置がある。この装置では,コイルエンド部の回りを1周する糸通路を形成し,その糸通路内に空気流を発生させて糸を搬送している。そして,糸がコイルエンド部を1周した後に,二重こま結びの結び目と一重こま結びの結び目とを形成し,コイルエンド部を付属品とともに縛り付けている。
【特許文献1】特開平6−276710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,手作業によってリード線をコイルエンド部に固定する場合には,次のような問題があった。すなわち,糸によってリード線をコイルエンドに縛り付ける作業は複雑である。具体的にコイルエンド部を糸で縛るためには,少なくとも,コイルエンド部およびリード線に糸をくぐらせてループ状に形成し(ループ形成ステップ),その糸に結び目を形成し(結び目形成ステップ),その糸によってリード線をコイルエンド部とともに締め上げる(締め上げステップ)ことを行う必要がある。
【0005】
これらのステップをすべて手作業で行うため,最終的な固定状態にばらつきが生じる。また,作業に多大な時間を要し,生産性を悪化させてしまう。また,これらのステップをすべて十分に実施できる装置はなく,リード線の固定作業の自動化を困難にする要因にもなっている。
【0006】
なお,特許文献1には,コイルエンド部を縛る装置が開示されているが,この装置には次のような問題点がある。すなわち,特許文献1に開示された装置では,2回のこま結び(まる結び)によってコイルエンド部を締め上げている。この結び方は,始めの結び目の拘束力を維持しながら次の結び目を作る必要がある。そのため,拘束力の維持が難しく,締め上げが不十分になることがある。また,特許文献1の装置では,その用途がコイルエンド部の縛りに限定されてしまう。すなわち,汎用性がない。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,被束縛体を糸によってスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた糸縛り装置は,被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置であって,糸を供給する糸供給部と,被束縛体に対して進退可能に配設された糸搬送管と,糸供給部から供給される糸を糸搬送管の内側を通じて被束縛体の下側に送り出す第1糸送り部と,第1糸送り部によって被束縛体の下側に通された糸を被束縛体の上側を通して折り返す糸折返し部と,糸折返し部によって折り返された糸の端部を糸搬送管に巻き付ける糸巻付け部と,糸搬送管の糸の出口端に位置し,糸を把持する糸把持部と,糸巻付け部によって糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を糸把持部に向けて搬送する第2糸送り部と,糸搬送管上に位置し,糸搬送管の軸方向に摺動可能に配設され,糸巻付け部によって糸搬送管に巻き付けられた糸を糸搬送管から取り出す糸取出し部とを有し,糸把持部が糸を把持した状態で,糸取出し部と糸搬送管とを摺動させることにより,糸搬送管に巻き付けられた糸を取り出し,糸取出し部が糸を取出し,糸把持部が糸の先端部を把持した状態で,糸搬送管が被束縛体から退行することを特徴としている。なお,本明細書では,糸搬送管の両端部のうち,管内に糸が送り込まれる側の端部を「入口端」とし,管外に糸が送り出される側の端部を「出口端」とする。
【0009】
本発明の糸縛り装置では,被束縛体を糸で束縛するために次のような動作を行う。まず,糸搬送管の糸の出口端を被束縛体に対峙させる。次に,第1糸送り部によって糸搬送管の出口端から糸を送り出し,被束縛体の下側にその糸を通す(糸送りステップ)。つまり,糸搬送管の出口端から送り出される糸の先端を,被束縛体を挟んで糸搬送管の反対側に搬送する。
【0010】
次に,糸折返し部が,被束縛体の下側に通された糸を把持し,その糸を被束縛体の上側に通す(折り返しステップ)。すなわち,その糸の先端部を糸搬送管に向けて搬送する。これにより,被束縛体を中心にして糸が折り返され,ループ状になって被束縛体を取り囲む。
【0011】
次に,糸巻付け部が,糸折返し部によって送られてきた糸を糸搬送管に巻き付ける(巻き付けステップ)。糸巻付け部としては,例えば,糸折返し部によって折り返された糸をその端部を余して糸搬送管に押し付ける糸押付け部と,糸搬送管の外周上に所定の隙間をもって回動可能に配設され,その隙間に糸が配置された状態で回動を開始する回転板とを有することとするとよい。すなわち,糸押付け部によって糸を確実に糸搬送管に近づけることができる。そして,糸押付け部によって糸を押さえつけた上でその糸を引っ張ることで,その糸を回転板と糸搬送管との隙間に配置することができる。そして,その状態で回転板が糸搬送管上を回動することで,自由端となっている糸を巻きつけることができる。糸押付け部は,例えば上下方向に移動可能な押し棒が適用可能である。また,回転板は,搬送管と摺動可能である糸取出し部に付設することで,糸取出し部の回転に伴って回動することができる。すなわち,簡易に糸巻付け部を構成することができる。
【0012】
次に,第2糸送り部が,糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を糸搬送管の出口端付近に設けられた糸把持部に搬送し,糸把持部が糸の先端部を把持する(糸先端部把持ステップ)。
【0013】
第2糸送り部としては,例えば,糸搬送管の下側に位置し,糸搬送管の軸方向に沿って移動可能に配設され,糸搬送管に糸が巻き付けられた状態で糸搬送管の糸の出口端に向けて移動する軸方向送り部材と,糸把持部の下側に位置し,糸搬送管の軸方向に直交する方向に移動可能に配設され,軸方向送り部材が移動した後で糸把持部に向けて移動する直交方向送り部材とを有することとするとよい。すなわち,搬送管に巻きつけられた糸の先端部は,糸搬送管の下側に垂れ下がっている。そのため,糸搬送管の軸方向に沿って移動する軸方向送り部によって糸搬送管の軸方向に糸を送る。つまり,軸方向送り部を糸搬送管の出口端側に移動させることで,糸の先端部を糸搬送管の出口端側に位置する糸把持部に向けて移動させる。そして,軸方向送り部が軸方向上において糸把持部の口元と同一の位置となる場所まで移動した後,軸方向と直交する方向に移動する直交方向送り部によって糸の先端部を糸把持部まで送り出す。その後,糸把持部が糸を把持する。すなわち,2方向に移動する部材を組み合わせる簡易な構成で第2送り部とすることができる。
【0014】
糸把持部としては,例えば,糸搬送管の糸の出口端に接離可能に配設され,その出口端との間で糸を挟み込むことで糸を把持することとするとよい。すなわち,出口端との間で糸を把持することができ,簡易に糸把持用のチャックを構成することができる。
【0015】
次に,糸把持部が糸の先端部を把持した状態で,糸取出し部と糸搬送管とが摺動し,糸搬送管に巻き付けられた糸を糸搬送管から取り出す(糸取り出しステップ)。糸を取り出す際には,糸取出し部が移動してもよいし,糸搬送管が移動してもよい。いずれの場合であっても,糸取出し部の端部が糸把持部のチャックをくぐり抜けるように両者が摺動すればよい。これにより,巻きつけられていた糸が糸把持部をくぐり抜け,糸搬送管から取り出される。さらには,巻きつけられていた糸が縮まることにより,糸の結び目が形成される。
【0016】
次に,糸把持部が糸の先端部を把持したまま,糸搬送部が退行して被束縛体を締め上げる(締め付けステップ)。すなわち,糸搬送部が退行することで糸の結び目が被束縛体に向けて移動し,被束縛体が糸で束縛される。被束縛体を締め上げる際には,緩みがなくなるまで糸搬送部を退行させることで拘束力を十分に維持したままで被束縛体を束縛できる。さらに,糸搬送部の退行距離によって拘束力の調節を調節できる。
【0017】
さらには,糸搬送部が直線的に退行するだけでなく,少なくとも上下方向と水平方向との少なくとも一方に揺動可能であるとよりよい。すなわち,糸搬送管が揺動することで糸の結び目をより被束縛体に近づけることができ,より確実に被束縛体を拘束することができる。
【0018】
また,本発明の糸縛り装置の第1糸送り部は,ローラによって糸を搬送することとするとよりよい。ローラによって糸を搬送することで,糸の変更に対する調節が容易になる。すなわち,空気流によって糸を搬送しようとすると,糸の材質が変更されたときに糸の搬送速度の調節が困難になる。そして,部品を交換して対応しなければならないこともある。しかし,本発明のようにローラによって糸を搬送することで,ローラの駆動源であるサーボモータを調節することによって糸の変更に対応することができる。よって,調節が非常に容易であり,部品の交換を行う必要がない。
【0019】
なお,被束縛体としては,例えばリード線を含むステータコイルが該当するが,これに限るものではない。例えば,リード線単体でもよい。また,枯れ枝を束ねたり,ひも状のスポンジを束ねるときにも対応可能であり,被束縛体は硬質素材であっても軟質素材であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,被束縛体に結束糸をくぐらせ糸をループ状に形成するループ形成ステップと,糸に結び目を形成する結び目形成ステップと,被束縛体を締め上げる締め上げステップとをすべて行うことができる。そのため,糸縛り作業を自動化することができ,生産性が向上する。また,被束縛体を締め上げる際には,十分な拘束力を維持することができる。よって,被束縛体を糸によってスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法が実現されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施例は,車両駆動用モータのリード線を束縛糸にてステータコイルのコイルエンド部に縛り付ける糸縛り装置に本発明を適用したものである。
【0022】
本形態の糸縛り装置100は,図1に示すように,糸縛りユニット1と,糸ボビン2と,糸送り部3と,糸テンショナー4と,糸反転ユニット5とを有している。また,糸縛り装置100とは別に,ステータを支持するテーブル9が糸縛り装置100に隣接配置されている。
【0023】
糸縛りユニット1は,糸の結び目の形成や被束縛体(本形態ではステータのコイルエンド)の締め上げに供するものである。具体的に,糸縛りユニット1は,図2に示すように,内部で糸を搬送する搬送管11と,搬送管11を被覆し搬送管11を軸として回転可能に設けられた回転部材12と,回転部材12に付設され回転部材12の回転に伴って搬送管11を中心に回動する回転板13と,搬送管11の出口端側に位置し,搬送管11の出口端に対して接離可能な方向(図2中の矢印X1 )に移動可能に設けられ,搬送管11と接することでその出口端を塞ぐ先端チャック14とを有している。
【0024】
搬送管11は,内側に糸Bを収容する円筒状の鋼管である。搬送管11内の糸Bは,先端チャック14側(出口端側)に向けて搬送される。さらには,先端チャック14には貫通孔が設けられており,搬送管11内を搬送されてきた糸Bがその貫通孔を介して排出される。また,先端チャック14は,搬送管11の出口端に接触および離間することで,搬送管11の端部との間でチャックを形成している。また,回転部材12は,搬送管11の軸方向(図2中の矢印X2 )に摺動可能に設けられている。
【0025】
また,糸縛りユニット1には,押し棒6と,押し板7A,7Bが付設されている。押し棒6は,先端部が円柱状であり,搬送管11の上方に配置されている。また,押し棒6は,図2中の上下方向(図2中の矢印Y1 )および奥行き方向(図2中の矢印Z1 )に移動可能であり,搬送管11に対して接離可能に設けられている。押し板7Aは,搬送管11の下方であって搬送管11に対して平行配置されている。また,押し板7Aは,図2中の左右方向(図2中の矢印X3 )に移動可能であり,後述する押し板7Bに対して接離可能に設けられている。押し板7Bは,先端の断面が鋭利な形状であり,搬送管11の下方に配置されている。また,押し板7Bは,図2中の上下方向(図2中の矢印Y2 )に移動可能であり,搬送管11の先端部(すなわち,先端チャック14のチャック部)に対して接離可能に設けられている。押し棒6および押し板7A,7Bの移動は,公知の手段によって実現している。
【0026】
図1の説明に戻り,糸送り部3は,複数のローラによって構成されるローラ群31を備え,そのローラ群31によって糸縛りユニット1の搬送管11に糸Bを送り込むものである。また,糸送り部3は,糸縛りユニット1を支持するものである。さらに,糸送り部3は,図1中の上下方向(図1中の矢印Y1 )および左右方向(図1中の矢印X1 )に移動可能となっている。そのため,糸送り部3の移動に伴って糸縛りユニット1も上下左右に移動する。また,糸テンショナー4は,糸送り部3よりも糸Bの搬送経路中の上流に位置し,束縛糸に張力を付与するものである。
【0027】
糸反転ユニット5は,糸Bを把持するための糸把持チャック51を備え,その糸把持チャック51を図1中の上下方向(図1中の矢印Y2 )および左右方向(図1中の矢印X2 )に移動可能することで糸Bを糸縛りユニット1に向けて搬送するものである。具体的に,糸反転ユニット5は,垂直方向にスライド可能に配設されたシリンダ5Aと,水平方向にスライド可能に配設されたシリンダ5Bとによって構成されている。シリンダ5Aの先端部には,糸把持チャック51が配設されている。また,シリンダ5Bの先端部はシリンダ5Aを支持するユニットと一体となっている。すなわち,シリンダ5Aおよびシリンダ5Bによって糸把持チャック51が図1中の上下左右自在に移動可能になっている。
【0028】
また,被束縛体であるステータSは,図3に示すように,ステータコアSCにコイルCが巻装された状態であり,そのコイルエンド部からはリード線Lが引き出されている。コイルエンド部は,ステータコアScのスロットにコイルCを挿入する際に,所定の形に成形される。また,リード線は,複数本の巻線(エナメル線)を束ねた複合線であり,絶縁スリーブが挿入されている。
【0029】
続いて,本形態の糸縛り装置100の動作について説明する。なお,テーブル9には,あらかじめステータSを配置しておく。また,糸送り部3には,糸ボビン2から供給される糸Bが糸テンショナー4を経由して搬送されている。また,押し棒6および押し板7A,7Bは,それぞれ糸縛りユニット1から離間した状態になっている。
【0030】
まず,図4に示すように,糸縛りユニット1がステータコアScとコイルCとの隙間と対峙するように,糸縛りユニット1をステータSに隣接させる。そして,糸縛りユニット1の先端部から糸Bを送り出し,さらにコイルCとステータコアScとの隙間に糸Bを通す(第1ステップ)。これにより,糸Bの先端部がコイルCの下側を通り,コイルCよりもステータの径方向の内側に送り込まれる。
【0031】
次に,図5に示すように,糸把持チャック51が下方に移動し,糸Bの先端部近傍を把持する(第2ステップ)。すなわち,糸反転ユニット5のシリンダ5Bがスライドすることによって水平方向の位置決めを行い,シリンダ5Aが下方にスライドすることによって糸把持チャック51がステータSのコイルエンドに囲まれた領域内に移動する。そして,第1ステップによって送り込まれた糸Bの先端部を把持する。
【0032】
次に,図6に示すように,糸把持チャック51が上方に移動する(第3ステップ)。すなわち,糸反転ユニット5のシリンダ5Aを上方に後退させる。これにより,糸Bの先端部がコイルエンド部よりも上方に移動する。
【0033】
次に,図7に示すように,糸把持チャック51が糸縛りユニット1に向かって移動する(第4ステップ)。すなわち,糸反転ユニット5のシリンダ5Bを糸縛りユニット1側に後退させる。これにより,糸Bの先端部がコイルエンド部を跨ぎ,コイルCよりもステータの径方向の外側に移動する。
【0034】
次に,図8に示すように,押し棒6が糸縛りユニット1に向かって移動する。具体的には,図8中の奥行き方向に移動した後,糸Bを押さえつつ下側(すなわち糸縛りユニット1側)に移動する。そして,支え棒60を介し,押し棒6によって糸Bを糸縛りユニット1に押し付ける(第5ステップ)。これにより,糸Bがコイルエンドを囲むようなループ状になる。
【0035】
さらに,図9に示すように,押し棒6が糸Bを押さえた状態で,糸把持チャック51が糸Bを引っ張る。これにより,糸Bが搬送管11と回転板13との隙間に移動する。糸Bの移動後は,糸把持チャック51が糸Bの先端部を解放する。また,糸把持チャック51の解放とともに,押し棒6は搬送管11から退避する。
【0036】
次に,図10に示すように,回転部材12が回転を開始する(第6ステップ)。この回転部材12の回転により,回転部材12に付設された回転板13が搬送管11を中心に回動する。糸Bの先端部は,糸把持チャック51から解放されて回転部材12と搬送管11との隙間に入り込んでおり,回転板13が回動すると,その回動に伴って糸Bの先端部が搬送管11に巻きつけられる。巻き数については限定しない。
【0037】
次に,図11に示すように,押し板7Aが糸縛りユニット1の先端部に向けて水平移動する(第7ステップ)。具体的には,搬送管11の軸方向において,押し板7Aの先端が搬送管11の出口端と同じ位置になるように移動する。これにより,搬送管11から垂れ下がる糸Bの先端が糸縛りユニット1の先端部に向かって移動する。
【0038】
次に,図12に示すように,鋭利な先端部を有する押し板7Bが搬送管11と先端チャック14との隙間,すなわち先端チャック14の口元に向けて上方に移動する(第8ステップ)。これにより,糸Bの先端部が先端チャック14の口元に搬送される。つまり,押し板7A,7Bにより,糸Bの先端部が先端チャック14の口元に送り出される。そして,この状態で先端チャック14を閉じることにより,先端チャック14が糸Bの先端部を把持する。なお,糸Bをチャックした後,押し板7Aおよび押し板7Bは退避する。
【0039】
次に,図13に示すように,回転部材12を先端チャック14に向けてスライドさせる(第9ステップ)。具体的には,回転部材12の端部が先端チャック14を跨ぐまでスライドさせる。これにより,搬送管11に巻きつけられた糸Bが押し出され,先端チャック14にて把持された糸Bの先端部をくぐり抜ける。そして,糸Bの押し出された部分,すなわち巻きつけられていた部分が縮まって結び目となる。
【0040】
次に,図14に示すように,糸縛りユニット1をステータSから退避させる(第10ステップ)。糸縛りユニット1が退避することにより,第9ステップで形成された結び目がコイルエンドに向かって移動するとともに結び目がより縮められる。以上により,ステータSのコイルエンドが糸Bによって縛り付けられる。
【0041】
なお,第10ステップまでの糸縛りでは拘束力が不十分になることがある。その場合には,図15に示すように,先端チャック14を解放した上で糸縛りユニット1を上下方向に揺動させる。これにより,糸の結び目がさらにコイルエンドに向かって移動し,糸Bのループを締め上げることができる。よって,十分な拘束力が得られる。
【0042】
以上詳細に説明したように本形態の糸縛り装置100では,まず,糸縛りユニット1をステータSに対峙させ,ローラ群31によって糸縛りユニット1から糸Bを送り出し,糸BをコイルCの下側に通すこととしている。その後,糸把持チャック51によって糸の先端部を把持し,糸BをコイルCの上側に通すこととしている。これにより,コイルCを取り囲む糸Bのループを形成することができる(ループ形成ステップ)。
【0043】
そして,押し棒6によって糸Bを搬送管11に押し付け,糸把持チャック51が糸Bを引っ張り,糸Bが回転板13と搬送管11との隙間に移動した後に,その状態で回転板13を回動させることとしている。これにより,糸Bの先端部が搬送管11に巻きつけられる。その後,押し板7A,7Bにより糸Bの先端部を搬送管11の先端部に配設された先端チャック14に送り出し,先端チャック14により糸の先端部を把持することとしている。さらに,その状態で回転部材12がスライドすることにより,搬送管11に巻き付けられた糸Bを取り出すこととしている。これにより,糸Bの結び目を形成することができる(結び目形成ステップ)。
【0044】
そして,先端チャック14によって糸Bの先端部を把持したまま糸縛りユニット1がステータSから退避することとしている。これにより,結び目が縮められるとともにその結び目がコイルCに近づく。つまり,糸Bのループ内のコイルCが締め上げられる(締め上げステップ)。
【0045】
すなわち,本形態の糸縛り装置100は,ループ形成ステップ,結び目形成ステップ,および締め上げステップをすべて行うことができ,コイルCをしっかりと締め上げて拘束することができる。よって,被束縛体を糸によってスムーズに束縛することができる糸縛り装置および糸縛り方法が実現している。
【0046】
また,糸縛りユニット1は,後退した後に先端チャック14を解放した上でさらに上下に揺動することとしている。これにより,糸縛りユニット1の後退だけでは拘束力が不十分であったとしても,コイルCをさらに締め上げることができる。よって,よりしっかりと拘束することができる。
【0047】
また,糸送り部3は,ローラ群31によって糸を送り出すこととしている。すなわち,従来のように空気流によって糸を搬送しようとすると,糸の材質が変更されたときに糸の搬送速度の調節が困難になる。そして,部品を交換して対応しなければならないこともある。しかし,ローラ群31によって糸を搬送することで,ローラ群31の駆動源であるサーボモータを調節することによって糸の変更に対応することができる。よって,調節が非常に容易であり,部品の交換を行う必要がない。
【0048】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本実施の形態では,糸送り部3が上下方向に揺動するが,移動方向は上下方向に限るものではない。すなわち,図1の奥行き方向(水平方向)に揺動させてもよい。また,上下方向と水平方向との両方向に揺動させてもよい。
【0049】
また,本実施の形態では,糸縛り装置100とテーブル9とを別体としているが,被束縛体を支持するテーブルが一体となっていてもよい。また,実施の形態では,糸送り部3が上下左右に移動することによって糸縛りユニット1が移動可能になっているが,糸縛りユニット1単体で移動可能としてもよい。
【0050】
また,本実施の形態では,押し棒6および押し板7A,7Bが糸縛りユニット1に付設されているが,それぞれ糸縛りユニット1とは別体で動作するものであってもよい。また,押し棒6および押し板7A,7Bの各先端部には,糸Bを捕らえ易くするための切欠きを設けてもよい。
【0051】
また,本実施の形態では,押し棒6,および回転部材12に付設された回転板13によって搬送管11に糸Bを巻き付けているが,これらは糸Bの巻き付け手段の一例であってこれらに限るものではない。例えば,回転部材12に糸Bを把持可能な部材を付設し,糸Bを把持しつつ回転部材12が回転することによっても糸Bを搬送管11に巻き付けることができる。
【0052】
また,本実施の形態では,押し棒7A,7Bによって先端チャック14のチャック部に糸Bを送っているが,これらは糸Bの送り手段の一例であってこれらに限定するものではない。例えば,糸Bの先端部を把持する部材を設け,その部材が糸Bを把持しつつ先端チャック14のチャック部の周辺を回動することによっても糸Bを先端チャック14のチャック部に送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態にかかる糸縛り装置の概要を示す図である。
【図2】糸縛り装置の糸縛りユニットの構成を示す図である。
【図3】ステータの概要を示す図である。
【図4】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第1ステップ:糸の挿入)である。
【図5】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第2ステップ:糸先端の把持)である。
【図6】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第3ステップ:糸先端の上方移動)である。
【図7】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第4ステップ:糸先端の糸縛りユニット側移動)である。
【図8】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第5ステップのその1:糸の押付け)である。
【図9】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第5ステップのその2:糸の挟み込み)である。
【図10】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第6ステップ:糸の巻付け)である。
【図11】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第7ステップ:糸先端の搬送管出口側移動)である。
【図12】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第8ステップ:糸先端の把持)である。
【図13】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第9ステップ:糸の取出し)である。
【図14】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第10ステップ:糸縛りユニットの後退)である。
【図15】糸縛り装置の糸縛り手順を示す図(第11ステップ:糸縛りユニットの上下移動)である。
【符号の説明】
【0054】
1 糸縛りユニット
11 搬送管(糸搬送管)
12 回転部材(糸巻付け部,糸取出し部)
13 回転板(糸巻付け部:回転板)
14 先端チャック(糸把持部)
2 糸ボビン(糸供給部)
3 糸送り部(第1糸送り部)
31 ローラ群(第1糸送り部)
5 糸反転ユニット(糸折返し部)
51 糸把持チャック(糸折返し部)
6 押し棒(糸巻付け部:糸押付け部)
7A 押し棒(第2糸送り部:軸方向送り部材)
7B 押し棒(第2糸送り部:直交方向送り部材)
9 ステータ載置用のテーブル
100 糸縛り装置
S ステータ
C コイル(被束縛体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置において,
糸を供給する糸供給部と,
被束縛体に対して進退可能に配設された糸搬送管と,
前記糸供給部から供給される糸を前記糸搬送管の内側を通じて被束縛体の下側に送り出す第1糸送り部と,
前記第1糸送り部によって被束縛体の下側に通された糸を被束縛体の上側を通して折り返す糸折返し部と,
前記糸折返し部によって折り返された糸の端部を前記糸搬送管に巻き付ける糸巻付け部と,
前記糸搬送管の糸の出口端に位置し,糸を把持する糸把持部と,
前記糸巻付け部によって前記糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を前記糸把持部に向けて搬送する第2糸送り部と,
前記糸搬送管上に位置し,前記糸搬送管の軸方向に摺動可能に配設され,前記糸巻付け部によって前記糸搬送管に巻き付けられた糸を前記糸搬送管から取り出す糸取出し部とを有し,
前記糸把持部が糸を把持した状態で,前記糸取出し部と前記糸搬送管とを摺動させることにより,前記糸搬送管に巻き付けられた糸を取り出し,
前記糸取出し部が糸を取出し,前記糸把持部が糸の先端部を把持した状態で,前記糸搬送管が被束縛体から退行することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項2】
請求項1に記載する糸縛り装置において,
前記糸搬送管は,上下方向あるいは水平方向の少なくとも1方向に揺動可能であることを特徴とする糸縛り装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する糸縛り装置において,
前記糸巻付け部は,
前記糸折返し部によって折り返された糸をその端部を余して前記糸搬送管に押し付ける糸押付け部と,
前記糸搬送管の外周上に所定の隙間をもって回動可能に配設され,その隙間に糸が配置された状態で回動を開始する回転板とを有することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する糸縛り装置において,
前記第2糸送り部は,
前記糸搬送管の下側に位置し,前記糸搬送管の軸方向に沿って移動可能に配設され,前記糸搬送管に糸が巻き付けられた状態で前記糸搬送管の糸の出口端に向けて移動する軸方向送り部材と,
前記糸把持部の下側に位置し,前記糸搬送管の軸方向に直交する方向に移動可能に配設され,前記軸方向送り部材が移動した後で前記糸把持部に向けて移動する直交方向送り部材とを有することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する糸縛り装置において,
前記糸把持部は,前記糸搬送管の糸の出口端に接離可能に配設され,その出口端との間で糸を挟み込むことで糸を把持することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する糸縛り装置において,
前記第1糸送り部は,ローラによって糸を送り出すことを特徴とする糸縛り装置。
【請求項7】
内側に糸が搬送される糸搬送管を備え,被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置の糸縛り方法において,
前記糸搬送管の糸の出口端を被束縛体に対峙させ,その出口端から糸を送り出し,被束縛体の下側に糸を通す糸送りステップと,
前記糸送りステップにて送り込まれた糸を被束縛体の上側に通す折り返しステップと,
前記折り返しステップにて折り返された糸を前記糸搬送管に巻き付ける巻き付けステップと,
前記巻き付けステップにて前記糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を,前記糸搬送管の糸の出口端に配設された糸把持部が把持する糸先端部把持ステップと,
前記糸先端部把持ステップにて糸の先端部を把持した状態で,前記糸搬送管に巻き付けられた糸を前記糸搬送管から取り出す糸取り出しステップと,
前記糸取り出しステップにて糸を取り出した後に,前記糸把持部にて糸の先端部を把持した状態で前記糸搬送管が退行して被束縛体を締め付ける締め付けステップとを含むことを特徴とする糸縛り方法。
【請求項8】
請求項7に記載する糸縛り方法において,
前記締め付けステップでは,前記糸搬送管が上下方向あるいは水平方向の少なくとも1方向に揺動することを特徴とする糸縛り方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載する糸縛り方法において,
前記糸送りステップでは,ローラによって糸を送り出すことを特徴とする糸縛り方法。
【請求項1】
被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置において,
糸を供給する糸供給部と,
被束縛体に対して進退可能に配設された糸搬送管と,
前記糸供給部から供給される糸を前記糸搬送管の内側を通じて被束縛体の下側に送り出す第1糸送り部と,
前記第1糸送り部によって被束縛体の下側に通された糸を被束縛体の上側を通して折り返す糸折返し部と,
前記糸折返し部によって折り返された糸の端部を前記糸搬送管に巻き付ける糸巻付け部と,
前記糸搬送管の糸の出口端に位置し,糸を把持する糸把持部と,
前記糸巻付け部によって前記糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を前記糸把持部に向けて搬送する第2糸送り部と,
前記糸搬送管上に位置し,前記糸搬送管の軸方向に摺動可能に配設され,前記糸巻付け部によって前記糸搬送管に巻き付けられた糸を前記糸搬送管から取り出す糸取出し部とを有し,
前記糸把持部が糸を把持した状態で,前記糸取出し部と前記糸搬送管とを摺動させることにより,前記糸搬送管に巻き付けられた糸を取り出し,
前記糸取出し部が糸を取出し,前記糸把持部が糸の先端部を把持した状態で,前記糸搬送管が被束縛体から退行することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項2】
請求項1に記載する糸縛り装置において,
前記糸搬送管は,上下方向あるいは水平方向の少なくとも1方向に揺動可能であることを特徴とする糸縛り装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する糸縛り装置において,
前記糸巻付け部は,
前記糸折返し部によって折り返された糸をその端部を余して前記糸搬送管に押し付ける糸押付け部と,
前記糸搬送管の外周上に所定の隙間をもって回動可能に配設され,その隙間に糸が配置された状態で回動を開始する回転板とを有することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する糸縛り装置において,
前記第2糸送り部は,
前記糸搬送管の下側に位置し,前記糸搬送管の軸方向に沿って移動可能に配設され,前記糸搬送管に糸が巻き付けられた状態で前記糸搬送管の糸の出口端に向けて移動する軸方向送り部材と,
前記糸把持部の下側に位置し,前記糸搬送管の軸方向に直交する方向に移動可能に配設され,前記軸方向送り部材が移動した後で前記糸把持部に向けて移動する直交方向送り部材とを有することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する糸縛り装置において,
前記糸把持部は,前記糸搬送管の糸の出口端に接離可能に配設され,その出口端との間で糸を挟み込むことで糸を把持することを特徴とする糸縛り装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する糸縛り装置において,
前記第1糸送り部は,ローラによって糸を送り出すことを特徴とする糸縛り装置。
【請求項7】
内側に糸が搬送される糸搬送管を備え,被束縛体を糸で束縛する糸縛り装置の糸縛り方法において,
前記糸搬送管の糸の出口端を被束縛体に対峙させ,その出口端から糸を送り出し,被束縛体の下側に糸を通す糸送りステップと,
前記糸送りステップにて送り込まれた糸を被束縛体の上側に通す折り返しステップと,
前記折り返しステップにて折り返された糸を前記糸搬送管に巻き付ける巻き付けステップと,
前記巻き付けステップにて前記糸搬送管に巻き付けられた糸の先端部を,前記糸搬送管の糸の出口端に配設された糸把持部が把持する糸先端部把持ステップと,
前記糸先端部把持ステップにて糸の先端部を把持した状態で,前記糸搬送管に巻き付けられた糸を前記糸搬送管から取り出す糸取り出しステップと,
前記糸取り出しステップにて糸を取り出した後に,前記糸把持部にて糸の先端部を把持した状態で前記糸搬送管が退行して被束縛体を締め付ける締め付けステップとを含むことを特徴とする糸縛り方法。
【請求項8】
請求項7に記載する糸縛り方法において,
前記締め付けステップでは,前記糸搬送管が上下方向あるいは水平方向の少なくとも1方向に揺動することを特徴とする糸縛り方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載する糸縛り方法において,
前記糸送りステップでは,ローラによって糸を送り出すことを特徴とする糸縛り方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−174718(P2007−174718A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364193(P2005−364193)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(502126998)株式会社メカワールド (6)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(502126998)株式会社メカワールド (6)
【出願人】(390021669)椿本興業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
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