説明

糸繰り出し装置

【課題】 引き出された糸を戻しても、糸がもつれないようにする。
【解決手段】 外囲器2内に設けた糸収容体8が、外囲器2の形成した糸通過孔6から外部に釣り糸10を引き出し可能に、かつ巻き戻し不能に収容している。外囲器2内に、糸通過孔6を包囲するように円筒12が設けられ、その内部を糸収容体8の釣り糸10が通って糸通過孔6から導出されている。円筒12の径は、釣り糸10よりも充分に大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば釣り糸のような糸を収容した外囲器から繰り出す糸繰り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の糸繰り出し装置としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。この糸繰り出し装置では、糸巻きが、上部を開放した直方体状の中箱内に収容され、この中箱が、両端を開放した中空の直方体状の外箱内に収容されている。前記外箱の一方の開放端部に相当する位置の中箱に設けた貫通孔から外部に引き出されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3899117号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、糸巻きの構成により、糸に巻き癖がつかず、容易に糸を引き出すことができるが、必要以上に引き出してしまった糸を再度中箱内に貫通孔を介して戻そうとした場合、中箱内で糸がもつれるという問題点があった。
【0005】
本発明は、引き出された糸を戻しても、糸がもつれない糸繰り出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の糸繰り出し装置は、外囲器を有している。外囲器は、例えば合成樹脂や紙等の任意の材料によって構成され、直方体状、円板状等の任意の形状とすることができる。この外囲器の適所に内外に貫通する糸通過孔が設けられている。この外囲器内に糸収容体が設けられている。糸収容体は、前記糸通過孔から前記外囲器の外部に引き出し可能な糸を巻き戻し不能に収容している。糸収容体としては、例えば上述した特許第3899117号に開示されている糸巻きを使用することができるし、一般に使用されている両端にフランジを有する短円筒状部に糸を巻いた糸巻きを使用することもできる。前記外囲器内に、筒状体が設けられている。この筒状体は、前記糸通過孔を包囲するように設けられ、その内部を前記糸収容体の前記糸が通って前記糸通過孔から導出されている。筒状体は、円筒状とすることもできるし、角筒状とすることもできる。筒状体は、前記糸の径よりも充分に大きい幅を有している。
【0007】
このように構成された糸繰り出し装置では、糸収容体から糸通過孔を介して外囲器の外部に引きされた糸を、糸通過孔を介して再度外囲器内に戻すと、糸は筒状体内に収容され、糸収容体側まで戻らない。従って、糸が糸収容体付近の糸と絡み合うことがなく、糸がもつれることがない。
【0008】
前記筒状体は、前記糸通過孔が形成されている前記外囲器の壁部に一端部が接するように設けることができる。この場合、筒状体の他端部が、仕切りによって被われており、仕切りは前記糸の通過を可能としている。例えば筒状体の他端部を被う壁によって仕切りを構成し、これに糸の通過孔を設けることもできるし、或いは網状体を仕切りとして使用することもできる。
【0009】
このように構成すると、糸通過孔から外囲器内に戻された糸は、確実に筒状体内のみに収容されるので、より確実に糸収容体付近の糸と絡み合うことを防止できる。
【0010】
本発明の他の態様の糸繰り出し装置は、上記の態様と同様に外囲器と、糸収容体を有している。外囲器内に、糸通過孔を包囲するように部屋が設けられ、糸収容体からの糸が内部を通って記糸通過孔から外部に導出されている。
【0011】
このように構成した場合も、糸通過孔から外囲器内に戻された糸は、確実に部屋内のみに収容され、糸収容体付近に戻ることはなく、より確実に糸収容体付近の糸と絡み合うことを防止できる。
【0012】
上述した2つの態様の外囲器において、外囲器の外部に、糸通過孔から導出された糸を前記糸通過孔から更に導出するか前記糸通過孔から前記外囲器内に送り込む導出送り込み手段を設けることができる。この手段は、電動とすることもできるし、手動とすることもできる。この手段を設けることによって、糸の繰り出しや送り込みを容易に行うことができる。
【0013】
このような手段を設けた糸繰り出し装置において、前記糸を釣り糸とすることができる。この場合、外囲器が釣り竿の基部に設けられている。このように構成することによって、簡単に釣りを行うことが可能となる。
【0014】
上述した2つの態様において、前記外囲器は、分解可能に構成することができる。例えば、外囲器が直方体状の場合、その長さ方向に沿って分割形成し、それら分割形成部材の一端部を蝶番で結合することができる。このような分解状態において糸収容体を取り出し可能に設けてある。このように構成することによって、糸収容体の糸が無くなった場合の糸収容体の交換が容易に行える。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、糸を外囲器内に戻した場合でも、筒状体または部屋を外囲器内に設けることによって、糸のもつれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1実施形態の糸繰り出し装置は、例えば釣り糸を繰り出すもので、図1に示すように、外囲器2を有している。外囲器2は、例えば合成樹脂製の扁平な直方体状で、内部が中空に形成されている。外囲器2は、その厚さ方向のほぼ中央の分割面によって2つに分割された分割部材2a、2bからなる。これら分割部材2a、2bは、それらの一端部側が蝶番4によって開閉可能に結合されている。また、図示していない係合具によって、分割部材2a、2bが自然に開くことが防止されている。これら分割部材2a、2bの他方の端部側の合わせ面には、糸通過孔6が外囲器の内外に貫通するように形成されている。この糸通過孔6は、後述する釣り糸よりも僅かに直径が大きい円孔である。
【0017】
この外囲器2の内部中央には、図2に示すように、糸収容体8が、外囲器2の長さ方向に沿って蝶番4が設けられている端部から糸通過孔6が形成されている端部の近傍まで配置されている。この糸収容体8は、特許第389917号に開示されている糸巻きと同じもので、これに巻かれた釣り糸10には巻き癖がつかず、また釣り糸10の引き出しが容易に行えるものである。この糸収容体8から引き出された釣り糸10の先端は、糸通過孔6を通って外囲器2の外部に導出されている。この糸収容体8では、これから引き出された釣り糸10は、外囲器2から糸収容体8を取り出して、巻きなおさない限り、引き出された釣り糸10を糸収容体8に巻き戻すことはできない。
【0018】
また、これら糸収容体8は、外囲器2を分割形成部2a、2bの合わせ面から開いた状態において、取り出して別の糸収容体8に交換可能に構成されている。これによって、糸収容体8の釣り糸10を使いきっても、新たな糸収容体を8を使用するか、先に使用していた糸収容体8に新しい釣り糸10を巻いて再び外囲器2内に収容することによって再びこの糸繰り出し装置を使用することができる。
【0019】
この糸収容体8と外囲器2の他方の端部との間に、筒状体、例えば円筒12が配置されている。円筒12は、糸通過孔6よりも径が格段に大きいもので、その中心軸が糸通過孔6の中心にほぼ位置するように配置され、その一方の端部が糸通過孔6が形成されている外囲器2の端部に接触している。この円筒12の他方の端部は、仕切り壁14によって閉じられ、かつ糸収容体8と接触している。そして、この仕切壁14には、貫通孔16が形成され、糸収容体8から引き出された釣り糸10が貫通孔16を通過して円筒12内に侵入し、更に糸通過孔6から外囲器2の外部に引き出されている。
【0020】
このように構成された糸繰り出し装置では、糸通過孔6から引き出された釣り糸10の先端を、更に引くことによって所望の長さだけ釣り糸10を外囲器2の外部に引き出し、切断して使用する。この際に、必要な長さよりも長く釣り糸10を引き出した場合、釣り糸10を糸通過孔6から外囲器2内に戻す。このとき、釣り糸10は、図2に示すように、円筒12内に戻され、円筒12内に止まる。即ち、仕切り14が円筒12に形成されているので、仕切り14の貫通孔16を通過して糸収容体8側まで釣り糸10が戻ることはない。従って、外囲器2内に戻された釣り糸10が糸収容体8から引き出されている釣り糸10の部分と絡み合うことがなく、釣り糸がもつれることはない。
【0021】
本発明の第2の実施形態の糸繰り出し装置は、図3及び図4に示すように、外囲器2から引き出された釣り糸10を、繰り出し及び巻き戻し具18に導入している。繰り出し及び巻き戻し具18は、外囲器2の側方に着脱自在に取り付けられたケース20を有している。このケース20は、外囲器2の厚さとほぼ同じ厚さの小直方体状である。この内部に、2つのローラ22、24が設けられている。これらローラ22、24は、その回転軸が外囲器2の幅方向に沿うように、外囲器2の長さ方向に沿って配置され、互いの周面が、それらの間に釣り糸10を挟むことが可能に配置されている。しかも、ローラ22、24は回転自在にケース20内に支持されている。ローラ22の回転軸のうち外囲器2と反対側の端部は、ハンドル26に結合され、正逆いずれの方向にも回転可能とされている。また、糸通過孔6から引き出された釣り糸10が、ケース20の一方の側面の形成した貫通孔28からケース20内に導入され、ローラ22、24間を通って反対側の側面の貫通孔(図示せず)から引き出されている。
【0022】
このように構成された糸繰り出し装置では、ハンドル26を一方の方向に回転させると、ローラ22、24の回転に従って外囲器2内から釣り糸10が引き出される。また、ハンドル26を逆方向に回転させると、ローラ22,24の逆方向の回転に従って釣り糸10が巻き戻され、糸通過孔6から円筒12内に戻すことが容易になる。なお、糸通過孔6に自動的に釣り糸10が戻らない場合には、手で糸通過孔6内に戻す。
【0023】
この第2の実施形態の糸繰り出し装置によれば、釣り糸の繰り出しが容易に行える。また、この糸繰り出し装置を図5に示すように釣り竿30の基部に適当な固定具によって固定すれば、釣り用リールとしても使用可能である。
【0024】
上記の2つの実施形態では、円筒12を使用したが、これに限ったものではなく、例えば角筒を使用することもできる。また、仕切り14は、完全に円筒12の他端部を閉じるものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば網状のものを仕切りとして使用することもできる。また、円筒に代えて、外囲器2の内部を2つの部屋に区画する壁を設け、その一方に糸収容体8を配置し、他方の部屋に糸収容体8からの糸を導入するように仕切りに貫通孔を設け、この仕切りと対向する外囲器2の壁に、部屋内の糸を外部に導出する糸通過孔を設けることもできる。上記の2つの実施形態では、外囲器2は直方体状としたが、これに限ったものではなく、糸収容体8の形状に従って他の形状、例えば円板状とすることもできる。更に、外囲器2は、2つの分割部分2a、2bを蝶番4によって結合したが、これに限ったものではなく、例えばネジによって固定することもできる。また、糸収容体8として、特許第3899117号に開示された糸巻きに限ったものではなく、通常の糸巻きに釣り糸を巻いたものを使用することもできる。また、第2の実施形態では、繰り出し及び巻き戻し具18を外囲器2の一方の側面側に設けたが、糸通過孔6が形成されている端面に設けることもできる。更に、第2の実施形態では、繰り出し及び巻き戻し具18は、ハンドル26による手動操作としたが、モータによってローラ22、24を回転させるようにすることもできる。また、上記の2つの実施形態では、釣り糸を使用したが、これに限ったものではなく、例えば外科手術に使用する糸を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態の糸繰り出し装置の斜視図である。
【図2】図1の糸繰り出し装置の縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の糸繰り出し装置の斜視図である。
【図4】図3の糸繰り出し装置の縦断面図である。
【図5】図3の糸繰り出し装置の使用の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
2 外囲器
6 糸通過孔
8 糸収容体
10 釣り糸
12 円筒(筒状体)
14 仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外に貫通する糸通過孔を適所に有する外囲器と、
この外囲器内に設けられ、前記糸通過孔から前記外囲器の外部に引き出し可能な糸を巻き戻し不能に収容している糸収容体と、
前記外囲器内に、前記糸通過孔を包囲するように設けられ、その内部を前記糸収容体の前記糸が通って前記糸通過孔から導出されている筒状体とを、
具備し、前記筒状体は、前記糸よりも充分に大きい幅を有する
糸繰り出し装置。
【請求項2】
請求項1記載の糸繰り出し装置において、前記筒状体は、前記糸通過孔が形成されている前記外囲器の壁部に一端部が接し、他端部が、仕切りによって被われており、前記仕切りは前記糸の通過を可能としている糸繰り出し装置。
【請求項3】
内外に貫通する糸通過孔を適所に有する外囲器と、
この外囲器内に設けられ、前記糸通過孔から前記外囲器の外部に引き出し可能な糸を巻き戻し不能に収容している糸収容体と、
前記外囲器内に、前記糸通過孔を包囲するように設けられ、前記糸収容体からの前記糸が内部を通って前記糸通過孔から外部に導出される部屋とを、
具備する糸繰り出し装置。
【請求項4】
請求項1または3記載の糸繰り出し装置において、前記外囲器の外部に設けられ、前記糸通過孔から導出された糸を前記糸通過孔から更に導出するか前記糸通過孔から前記外囲器内に送り込む導出送り込み手段を有する糸繰り出し装置。
【請求項5】
請求項4記載の糸繰り出し装置において、前記糸が釣り糸であって、前記外囲器が釣り竿の基部に設けられている糸繰り出し装置。
【請求項6】
請求項1または3記載の糸繰り出し装置において、前記外囲器は、分解可能に構成され、分解状態において前記糸収容体を取り出し可能に設けられた糸繰り出し装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−28004(P2009−28004A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197264(P2007−197264)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【特許番号】特許第4072565号(P4072565)
【特許公報発行日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(591065479)
【Fターム(参考)】