説明

純水生成装置

【課題】 貯水タンクを必要としない、コンパクトな構成の簡易な純水生成装置を提供することである。
【解決手段】 水を精製して純水を生成する純水生成装置であって、水供給源と、該水供給源から供給された水を濃縮排水と純水とに分離する逆浸透膜モジュールと、該水供給源から該逆浸透膜モジュールへ水を供給する水供給経路と、該水供給経路上に設けられ、該逆浸透膜モジュールに供給される水を加圧する加圧ポンプと、該逆浸透膜モジュールからの濃縮排水を排水する排水経路と、該排水経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される排水戻り経路と、該逆浸透膜モジュールで生成された純水が流出する純水流出経路と、該純水流出経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される純水戻り経路と、該排水経路と該排水戻り経路との分岐点より下流側の該排水経路上に配設された開閉バルブと、該純水戻り経路上に配設され、精製前の水の該純水流出経路への通過を防止する逆止弁と、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水を簡易的に生成可能な純水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、化学工業、機械工業における機器や原材料、製品の洗浄には、不純物が取り除かれた純水が使用される。洗浄に市水(水道水)を使用すると、市水に含まれる微量の不純物が洗浄対象物に付着して残ってしまうためである。
【0003】
また、食品、飲料や医薬品等を大量生産する際、原材料としての水に含まれる不純物の量にばらつきがあると、そのまま品質のばらつきに繋がることになる。そこで、これらの飲料食品、医薬品等の原材料としても純水は広く用いられている。
【0004】
特に、半導体デバイスの製造プロセスにおいては、ごく微量の不純物がデバイス上に残っていても品質に重大な影響を及ぼすために、純水より更に純度の高い超純水が用いられている。
【0005】
ここで、純水とは比抵抗値が約1〜10MΩ・cmの水を指し、超純水とは比抵抗値が約10MΩ・cm以上の水を指す。例えば、純水は市水をフィルタ、活性炭フィルタ、イオン交換樹脂や逆浸透膜に通過させることで生成される。
【0006】
特開2000−189760号公報には、第1の逆浸透膜分離装置を要する工業用水処理系と、第2の逆浸透膜分離装置を有する半導体製造排水処理系と、これらの処理系の処理水を混合して混合原水とする混合装置と、直列に二段以上配置された多段逆浸透膜分離装置を有する混合原水処理系とを含む純水製造装置が開示されている。
【0007】
近年では、EDI(電気再生式イオン交換装置)と呼ばれるイオン交換膜とイオン交換樹脂とを組み合わせ、外部から電位差を与えることでイオンを濃縮させて分離する方法なども用いられており、例えば特開2000−317457号公報にはこのような純水生成方法が開示されている。
【0008】
一般に、これらの純水生成装置は複数のフィルタ、活性炭フィルタ、イオン交換樹脂等を有する上、生成した純水を貯水するタンクを備えるために、非常に大型となる。特に、生成する純水の純度が高い程、必要となるフィルタ等が増えるため、純水生成装置は大型化する。そこで、多くの半導体デバイス製造工場などでは、敷地内に超純水生成施設を備え、工場全体の超純水をまかなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−189760号公報
【特許文献2】特開2000−317457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、工場内の一部においては例えば超純水までの純度は必要なく、約1MΩ・cmの簡易的な純水で十分な場合がある。また、活性炭フィルタやイオン交換樹脂などは頻繁に交換する必要がある上、高額である。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貯水タンクを必要としない、コンパクトな純水生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、水を精製して純水を生成する純水生成装置であって、水供給源と、該水供給源から供給された水を濃縮排水と純水とに分離する逆浸透膜モジュールと、該水供給源から該逆浸透膜モジュールへ水を供給する水供給経路と、該水供給経路上に設けられ、該逆浸透膜モジュールに供給される水を加圧する加圧ポンプと、該逆浸透膜モジュールからの濃縮排水を排水する排水経路と、該排水経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される排水戻り経路と、該逆浸透膜モジュールで生成された純水が流出する純水流出経路と、該純水流出経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される純水戻り経路と、該排水経路と該排水戻り経路との分岐点より下流側の該排水経路上に配設された開閉バルブと、該純水戻り経路上に配設され、精製前の水の該純水流出経路への通過を防止する逆止弁と、を具備したことを特徴とする純水生成装置が提供される。
【0013】
好ましくは、純水生成装置は、前記排水経路、排水戻り経路、純水流出経路、又は純水戻り経路の何れかの経路上に配設された純水濃度を計測する純水濃度計測手段を更に具備し、該純水濃度計測手段で計測した純水濃度に基づいて前記開閉バルブの開閉が制御される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、貯水タンクを必要としないコンパクトな純水生成装置を提供することができる。また、純水戻り経路を設けたので、流出される純水量が少量若しくは純水が流出しない場合において、純水流出経路の水圧上昇を防止できる。その結果、逆浸透膜モジュールでの分離性低下を防止できる。純水の流出量にばらつきが生じた場合においても、生成される純水の純水濃度(電解質濃度)が悪化することを防止できる。
【0015】
更に、純水戻り経路上に逆止弁を設けたことで、精製前の水が純水流出経路に流出することがない。
【0016】
請求項2記載の発明によると、純水濃度計測手段によって計測された純水濃度に基づいて開閉バルブを制御するので、純水生成装置からの排水を必要最小限とすることができる。生成された直後の純水を供給することが可能となり、貯水タンクに貯水することで純水が劣化する(電解質濃度が上がる)ことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施形態に係る純水生成装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明実施形態に係る純水生成装置2について詳細に説明する。図1は本発明実施形態の純水生成装置2の模式図を示しており、2個の逆浸透膜モジュール4A,4Bが並列に配置されている。
【0019】
ここで、逆浸透膜とは、濾過膜の一種であり、水を通しイオンや塩類など水以外の不純物は透過しない性質を有する膜のことを言う。逆浸透膜は、概ね大きさが2nm以下の多数の孔を有している。
【0020】
逆浸透膜の構造は高い圧力に耐えるような構造が必要であり、現在では中空糸膜、スパイラル膜、チューブラ膜等の構造が採用されている。また、逆浸透膜の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン等が採用されている。
【0021】
水供給源6からは例えば市水(水道水)が水供給路8に供給される。水供給路8には、活性炭フィルタ10及びフィルタ12が設けられており、活性炭フィルタ10では塩素を除去し、フィルタ12ではゴミ等を除去する。
【0022】
水供給路8には更に、加圧ポンプ14及び温度計16が設けられており、加圧ポンプ14で水供給源6から供給された水を高圧(例えば60気圧)に加圧して逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給する。温度計16は供給される水の温度を計測する。
【0023】
逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成された純水は純水流出経路18に排出される。純水流出経路18には、流量調整装置20、純水の電解質濃度を計測する純水濃度計測手段22、フィルタ24が配設されている。純水濃度計測手段22では、純水の電気抵抗率又は電気導電率を測定する。
【0024】
本実施形態では、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成される純水は約1MΩ・cm程度の比抵抗値を有している。フィルタ24は例えば0.2μm程度の細かいメッシュを有していることが好ましい。
【0025】
逆浸透膜モジュール4A,4Bからは濃縮排水が排水経路26に排出される。排水経路26には、流量調整装置28及び開閉バルブ30が設けられている。
【0026】
純水流出経路18から分岐して純水戻り経路32が配設されており、この純水戻り経路32は水供給経路8の加圧ポンプ14より上流側に接続されている。更に、排水経路26から分岐して排水戻り経路36が配設されており、排水戻り経路36は水供給経路8の加圧ポンプ14より上流側に接続されている。
【0027】
純水戻り経路32には、純水流出経路18からの純水の通過を許容し、水供給経路8からの水の通過を防止する逆止弁34が設けられている。同様に、排水戻り経路36には、排水経路26からの排水の通過を許容し、水供給経路8からの水の通過を防止する逆止弁38が設けられている。
【0028】
排水戻り経路36には更に、濃縮排水の電解質濃度を計測する純水濃度計測手段(濃縮排水濃度計測手段)40が設けられている。純水濃度計測手段40も、純水流出経路18に設けられた純水濃度計測手段22と同様に、濃縮排水中の電気抵抗率又は電気伝導率を測定して、濃縮排水の電解質濃度を検出する。
【0029】
開閉バルブ30は、純水濃度計測手段22,40に接続されており、純水濃度計測手段22によって計測された純水濃度に基づいて、又は純水濃度計測手段40で計測された濃縮排水の濃度に基づいて、開閉バルブ30の開閉の程度が制御される。これにより、純水生成装置2からの排水を必要最小限度に制御することができる。
【0030】
また、加圧ポンプ14の種類によっては供給される水温の上昇が想定される。この場合には、加圧ポンプ14の下流側に設けた温度計16により水温を計測し、計測された温度に応じて開閉バルブ30を制御する。
【0031】
流量調整装置20,28は流量計と流量調整弁から構成され、これらの流量調整装置20,8を調整することにより、逆浸透膜モジュール4A,4Bからの純水と濃縮排水との流量バランスを制御する。
【0032】
以下、このように構成された純水生成装置2が切削装置や研削装置等の加工装置に接続された場合の純水生成装置の作用について説明する。水供給源6から供給された市水は活性炭フィルタ10で塩素が除去され、フィルタ12でゴミが除去されてから、加圧ポンプ14により高圧に加圧されて逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給される。
【0033】
逆浸透膜モジュール4A,4Bでは、逆浸透膜で仕切られた濃度の高い側から低い側に水分子だけが浸透し、純水が生成される。生成された純水は純水流出経路18に排出され、切削装置、研削装置等の加工装置が稼動している場合には、これらの加工装置の加工水として利用される。
【0034】
加工装置の加工水として利用されない純水は、純水戻り経路32を通って加圧ポンプ14の上流側の水供給経路8に戻される。このように純水戻り経路32が設けられているため、純水生成装置2で生成した純水を貯水するタンクを設ける必要が無く、純水生成装置2を連続稼動することができる。
【0035】
一方、逆浸透膜モジュール4A,4Bから排水経路26に排出された濃縮排水は、純水濃度及び/または逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給される水温に応じてその開閉の程度が制御される開閉バルブ30を介して排水される。濃縮排水の一部は、排水戻り経路36を介して加圧ポンプ14の上流側の水供給経路8に戻される。
【0036】
純水戻り経路32を介して戻された純水及び排水戻り経路36を介して戻された濃縮排水は、再び加圧ポンプ14により加圧されて逆浸透膜モジュール4A,4Bに供給される。このように純水及び濃縮排水を循環することにより、水供給源6から供給される市水等の水を節約できる。
【0037】
特に図示しないが、純水戻り経路32との分岐点より下流側の浄水流出経路18上にイオン交換樹脂を設けることにより、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成された純水を比抵抗値が約16MΩ・cm程度の超純水に変換することも可能である。
【0038】
尚、上述した実施形態では、純水濃度計測手段22,40を純水流出経路18及び排水戻り経路36に設けているが、純水濃度計測手段は、純水流出経路18、排水経路26、純水戻り経路32、又は排水戻り経路36の何れか一つの経路上に配設するようにしてもよい。
【0039】
上述した実施形態によると、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成された純水を加圧ポンプ14より上流側の水供給経路8に戻す純水戻り経路32を設けたので、純水流出経路18を介して加工装置等に流出される純水量が少量の場合又は生成された純水が加工装置等で使用されない場合においても、純水流出経路18の水圧上昇を防止できる。
【0040】
その結果、逆浸透膜モジュール4A,4Bでの分離性低下を防止できる。また、純水の流出量にばらつきが生じた場合においても、逆浸透膜モジュール4A,4Bで生成される純水の純水濃度(電解質濃度)が悪化することを防止できる。
【0041】
更に、純水戻り経路32上に逆止弁34を設け、排水戻り経路36上に逆止弁38を設けたので、生成前の水が純水戻り経路32及び排水戻り経路36に流入することを防止できる。
【符号の説明】
【0042】
2 純水生成装置
4A,4B 逆浸透膜モジュール
6 水供給源
8 水供給経路
14 加圧ポンプ
18 純水流出経路
22,40 純水濃度計測手段
26 排水経路
30 開閉バルブ
32 純水戻り経路
34,38 逆止弁
36 排水戻り経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を精製して純水を生成する純水生成装置であって、
水供給源と、
該水供給源から供給された水を濃縮排水と純水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
該水供給源から該逆浸透膜モジュールへ水を供給する水供給経路と、
該水供給経路上に設けられ、該逆浸透膜モジュールに供給される水を加圧する加圧ポンプと、
該逆浸透膜モジュールからの濃縮排水を排水する排水経路と、
該排水経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される排水戻り経路と、
該逆浸透膜モジュールで生成された純水が流出する純水流出経路と、
該純水流出経路から分岐して該水供給経路の該加圧ポンプより上流側に接続される純水戻り経路と、
該排水経路と該排水戻り経路との分岐点より下流側の該排水経路上に配設された開閉バルブと、
該純水戻り経路上に配設され、精製前の水の該純水流出経路への通過を防止する逆止弁と、
を具備したことを特徴とする純水生成装置。
【請求項2】
前記排水経路、排水戻り経路、純水流出経路、又は純水戻り経路の何れかの経路上に配設された純水濃度を計測する純水濃度計測手段を更に具備し、
該純水濃度計測手段で計測した純水濃度に基づいて前記開閉バルブの開閉が制御される請求項1記載の純水生成装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−253364(P2010−253364A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105247(P2009−105247)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】