説明

純水製造方法および純水製造装置

【課題】スライムコントロール剤を必要とする膜処理を行う純水の製造において、TOC成分、特にスライムコントロール剤に由来するTOC成分を効率的に除去し、TOCの低い純水を得ることができる純水製造方法を提供する。
【解決手段】原水にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤添加工程と、スライムコントロール剤が添加されスライムコントロール剤含有原水を膜処理する膜処理工程と、膜処理した膜処理水を紫外線照射処理する紫外線照射処理工程と、紫外線照射処理した紫外線照射処理液をイオン交換処理するイオン交換処理工程と、を含む純水製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造方法および純水製造装置に関し、特に膜処理を行う純水の製造において、スライムコントロール剤を必要とする純水製造方法および純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程などで使用される一般的な純水製造装置は、工業用水、河川水、井水などを原水とし、分離膜を有する膜装置を備えている。
【0003】
近年の環境意識、コスト意識の高まりから、工場内で使用した水を回収し、分離膜などにより処理した後、純水製造装置の原水(純水原水)などとして再利用する事例が増えている。この場合、回収した水(回収原水)は工業用水などよりTOCが高いなどの問題がある場合が多い。
【0004】
このため、回収原水を原水として使用した場合、分離膜でのスライムやスケールの発生による差圧上昇や、透過水(処理水)量の低下などのトラブルが起こりやすくなる。このため、膜装置などに対してスライムコントロール剤、スケール防止剤などの膜処理剤の添加が必要となる。
【0005】
分離膜用のスライムコントロール剤としては、一般的に次亜塩素酸塩などの酸化系薬剤や有機系薬剤が使用されるが、酸化系薬剤は、スライム抑制効果は高いものの、膜劣化を起こすという欠点がある。ハロシアノアセトアミド化合物、ニトロアルコール化合物、イソチアゾロン化合物などの有機系薬剤は、高いスライム抑制効果を有しながら膜劣化をほとんど起こさないため、分離膜用のスライムコントロール剤として使用されている。特にハロシアノアセトアミド系のスライムコントロール剤はスライム抑制効果が高いことから、膜用殺菌剤としての使用が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかし、これらスライムコントロール剤のうち、特に有機系薬剤の場合、薬剤自身のTOC成分の一部が分離膜を透過することがあり、処理水のTOCを上昇させてしまうという問題がある。さらに、スライム抑制効果の特に高いハロシアノアセトアミド化合物を含有する液体製剤は、多量の有機溶剤を含んでいる場合が多く、この有機溶剤の一部も分離膜を透過することがあるため、ハロシアノアセトアミド系のスライムコントロール剤を使用する場合は、処理水のTOCが特に上昇しやすいという問題がある。このため、十分なスライムコントロール効果を得るためには、処理水TOCの上昇が避けられず、処理水TOCを低く保持しようとすると、十分なスライムコントロール効果を得られないという問題がある。
【0007】
特許文献2には、逆浸透膜(RO膜)分離装置による排水処理において、原水にスケール防止剤を添加し、濃縮水中のスケール防止剤由来のTOC成分をUV照射により酸化処理する方法が報告されている。しかし、透過水(処理水)中の膜処理剤由来のTOC成分の除去については述べられていない。
【0008】
また、特許文献3には、逆浸透膜装置による超純水製造において、逆浸透膜装置で除去できない処理水中の非イオン性有機物を、膜装置後段のUV酸化装置で除去する方法が報告されている。しかし、膜処理剤由来のTOC成分の除去については述べられていない。
【0009】
【特許文献1】特開2006−89402号公報
【特許文献2】特開2007−244930号公報
【特許文献3】特開平6−39366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、スライムコントロール剤を必要とする膜処理を行う純水の製造において、TOC成分、特にスライムコントロール剤に由来するTOC成分を効率的に除去し、TOCの低い純水を得ることができる純水製造方法および純水製造装置である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、原水にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤添加工程と、前記スライムコントロール剤が添加されたスライムコントロール剤含有原水を膜処理する膜処理工程と、前記膜処理した膜処理水を紫外線照射処理する紫外線照射処理工程と、前記紫外線照射処理した紫外線照射処理液をイオン交換処理するイオン交換処理工程と、を含む純水製造方法である。
【0012】
また、前記純水製造方法において、前記膜処理が、逆浸透膜処理であることが好ましい。
【0013】
また、前記純水製造方法において、前記スライムコントロール剤が、下記式(1)または(2)の構造(式中、Rは、水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)を含むアルコール系またはグリコール系有機溶剤を含有することが好ましい。
【0014】
【化1】


(1)
【化2】


(2)
【0015】
また、前記純水製造方法において、前記アルコール系またはグリコール系有機溶剤が、ジプロピレングリコールであることが好ましい。
【0016】
また、前記純水製造方法において、前記スライムコントロール剤が、ハロシアノアセトアミド化合物、ニトロアルコール化合物、イソチアゾロン化合物のうち少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0017】
また、前記純水製造方法において、前記ハロシアノアセトアミド化合物が、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドであることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、原水にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤添加手段と、前記スライムコントロール剤が添加されたスライムコントロール剤含有原水を膜処理する膜処理手段と、前記膜処理した膜処理水を紫外線照射処理する紫外線照射処理手段と、前記紫外線照射処理した紫外線照射処理液をイオン交換処理するイオン交換処理手段と、を有する純水製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、スライムコントロール剤を必要とする膜処理を行う純水の製造において、スライムコントロール剤を添加した原水を膜処理し、その後、紫外線照射処理およびイオン交換処理することにより、TOC成分、特にスライムコントロール剤に由来するTOC成分を効率的に除去し、TOCの低い純水を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の実施形態に係る純水製造装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。純水製造装置1は、膜処理手段である膜処理装置10と、紫外線照射処理手段である紫外線照射処理装置12と、イオン交換処理手段であるイオン交換処理装置14とを備える。
【0022】
図1の純水製造装置1において、膜処理装置10の出口と紫外線照射処理装置12の入口、紫外線照射処理装置12の出口とイオン交換処理装置14の入口とがそれぞれ配管などにより接続されている。本実施形態において、「膜処理装置→紫外線照射処理装置→イオン交換処理装置」という配置順であればよく、これらの前後、これらの間にその他の装置が配されてもよい。
【0023】
本発明の実施形態に係る純水製造装置1を用いた純水製造方法を説明する。
【0024】
原水は、原水槽などから原水供給配管などを通して、膜処理装置10に送液される。膜処理装置10への流入前に、原水供給配管において、スライムコントロール剤貯槽などからポンプなどのスライムコントロール剤添加手段などにより、スライムコントロール剤が添加される(スライムコントロール剤添加工程)。スライムコントロール剤は、連続的に添加されてもよいし、間欠的に添加されてもよい。また、スライムコントロール剤は、原水槽へ、あるいは原水槽などからの原水を貯留する貯留槽を別途設けて、その貯留槽へ添加されてもよい。
【0025】
膜処理装置10において、スライムコントロール剤が添加されたスライムコントロール剤含有原水について、膜処理が行われ、分離膜を透過した透過水と、不純物が濃縮された濃縮水とが得られる(膜処理工程)。濃縮水は、系外に排出される。
【0026】
次に、膜処理装置10において膜処理されて分離膜を透過した透過水(膜処理水)は、膜処理水配管などにより紫外線照射処理装置12に送液される。ここで、膜処理水に紫外線が照射されて酸化処理が行われ、主に、分離膜を透過した原水、スライムコントロール剤などに由来する有機物に紫外線が照射されることにより、これらが炭酸ガス、有機酸やその他の揮発性低分子化合物などに分解される(紫外線照射処理工程)。
【0027】
次に、紫外線照射処理装置12において紫外線照射処理された紫外線照射処理液は、紫外線照射処理液配管などによりイオン交換処理装置14に送液される。ここで、主に、紫外線照射処理により生成した有機酸やその他の揮発性低分子化合物などが、イオン交換樹脂などに吸着除去されて、処理水、すなわち純水(または超純水)が得られる(イオン交換処理工程)。
【0028】
スライムコントロール剤中のTOC成分は分離膜を一部透過し、処理水を汚染する場合があるが、膜処理装置10の後段に、紫外線照射処理装置12およびイオン交換処理装置14を設置することにより、スライムコントロール剤などに由来するTOC成分が効率的に除去されて、TOC成分が低減された純水が得られる。
【0029】
本実施形態において処理対象となる原水は特に制限はないが、工業用水、河川水、井水などの他に、工場内で使用された後に回収された水(回収原水)などが挙げられる。
【0030】
膜処理装置10としては、逆浸透膜(RO膜、NF膜)などを用いる膜処理装置が挙げられるが、TOCの除去効果などの点から、RO膜を用いる逆浸透膜装置であることが好ましい。RO膜としては、酢酸セルロース膜(CA膜)、ポリアミド膜(PA膜)などを用いることができる。
【0031】
スライムコントロール剤は、分離膜におけるスライムの発生を抑制するものである。スライムコントロール剤は、通常、スライムの発生を抑制する効果のある有効成分を含み、その有効成分を溶解あるいは分散させる溶剤を含む場合もある。また、スライムコントロール剤は、酸、アルカリ、公知のスケール防止剤、キレート剤、防食剤などを含んでもよい。
【0032】
スライムコントロール剤に含有される有効成分としては、次亜塩素酸塩などの酸化系薬剤や有機系薬剤が使用される。酸化系薬剤は、スライム抑制効果は高いものの、膜劣化を起こす場合があるので、高いスライム抑制効果を有しながら膜劣化をほとんど起こさない有機系薬剤が好ましい。有機系薬剤としては、ハロシアノアセトアミド化合物、ニトロアルコール化合物、イソチアゾロン化合物、4級アンモニウム塩化合物などが挙げられ、スライム抑制効果や分離膜への影響などの観点から、ハロシアノアセトアミド化合物、ニトロアルコール化合物、イソチアゾロン化合物のうち少なくとも1つであることが好ましく、特にスライム抑制効果が高く、RO膜などの分離膜を透過しにくいことから、ハロシアノアセトアミド化合物がより好ましい。
【0033】
ハロシアノアセトアミド化合物は、下記式(3)で表されるハロシアノアセトアミド化合物(式中、Xは、同一の、または互いに異なるハロゲン原子または水素原子であり、Rは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。)であり、例えば、2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、2−クロロ−2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−クロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、2,2−ジクロロ−3−ニトリロプロピオンアミド、N−メチル−2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、N−プロピル−2-クロロ−2−ブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドなどが挙げられる。
【0034】
【化3】


(3)
【0035】
ニトロアルコール化合物としては、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−ブロモ−2−ニトロブタン−1,3−ジオール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール、2,2−ジブロモ−2−二トロ−1−エタノール、2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセチルオキシプロパン、3,3−ジブロモ−3−ニトロ−2−プロパノール、2−クロロ−2−ニトロエタノール、2−クロロ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−3−ニトロ−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0036】
イソチアゾロン化合物としては、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0037】
これら化合物は単独で含有されてもよく、2種以上が含有されてもよい。上述の化合物の中ではDBNPAは殺菌効果が特に高く、RO膜などの分離膜を透過しにくいことから、分離膜のスライムコントロール剤としては好適である。
【0038】
これらの有効成分は、一部がRO膜などの分離膜を透過して、処理水のTOCを上昇させることがある。また、これら有効成分は液体製剤とするために、溶剤を含有している場合がある。特に、DBNPAは水への溶解度が低く、水中で分解しやすいことから、DBNPA液体製剤は多量の有機溶剤を安定剤として含んでいる場合が多く、これら有機溶剤も一部がRO膜などの分離膜を透過して、処理水のTOCを上昇させてしまうことがある。本実施形態に係る純水製造方法および純水製造装置によれば、多量の有機溶剤を含むDBNPA液体製剤を用いても、TOCの低い処理水を得ることができる。
【0039】
スケール防止剤としては、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸/ヒドロキシエチリデンメタアクリレートの共重合物、アクリル酸/ヒドロキシエチリデンメタアクリレート/アクリル酸メチルの共重合物、アクリル酸/アリルグリシジルエーテル類の共重合物、アクリル酸/2−ヒドロキシ−3−アリロキシ−1−プロパンスルホン酸の共重合物、アクリル酸/イソプレンスルホン酸の共重合物、アクリル酸/ビニルスルホン酸、アクリル酸/アリルスルホン酸の共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸/イソブチレンの共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸/スチレンスルホン酸の共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸/アクリル酸の共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸/アクリレート酸の共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合物、マレイン酸または無水マレイン酸/アミレン酸の共重合物、ポリアクリルアミド、ポリイタコン酸およびこれらの塩類などを挙げることができる。
【0040】
キレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン4酢酸)、TET(トリエチレンテトラアミン)、EGTA(エチレングリコールビス4酢酸)などを挙げることができる。
【0041】
防食剤としては、例えば、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール、モリブデン酸、タングステン酸、ケイ酸、亜硝酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸、正リン酸およびこれらの塩類、塩化亜鉛、塩酸酸性塩化亜鉛、硫酸亜鉛、リグニンスルホン酸亜鉛、ヒドラジンなどを挙げることができる。
【0042】
スライムコントロール剤に含まれる溶剤としては、有効成分を溶解あるいは分散させることができるものであればよく特に制限はなく、水、有機溶剤などが挙げられるが、RO膜などの分離膜を透過しにくいことから、上記式(1)または(2)の構造(式中、Rは、水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)を含むアルコール系またはグリコール系有機溶剤を含有することが好ましい。
【0043】
このようなアルコール系溶剤またはグリコール系溶剤として、具体的には、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
上記溶剤のうち、上記式(1)または(2)のような分岐構造をもつ有機溶剤は、RO膜などの分離膜を透過しにくいため、処理水質を悪化させにくい。また、これら分岐構造を有する有機溶剤の代表例であるジプロピレングリコールは、後段の紫外線照射処理装置12とイオン交換処理装置14によって高い効率で除去することができる。
【0045】
ハロシアノアセトアミド化合物などの有効成分の含有量は、好ましくはスライムコントロール剤中に1〜60重量%、より好ましくは10〜40重量%である。ここで含有量が1重量%未満の場合には、原水中への薬剤としての添加量を多くする必要が生じるため、輸送コストなどが嵩み経済的ではない場合がある。含有量が60重量%を超える場合には、ハロシアノアセトアミド化合物などの沈殿が生じるなど、処理水の品質の劣化が起こる可能性がある。
【0046】
また、アルコール系溶剤またはグリコール系溶剤などの溶剤の含有量は、有効成分に対して、重量比で好ましくは0.1〜50倍、より好ましくは0.5〜5倍である。
【0047】
また、これらアルコール系溶剤またはグリコール系溶剤などの溶剤の分子量は、70〜200の範囲内にあることが好ましい。分子量70未満ではRO膜などの分離膜を透過しやすく、処理水水質を悪化させる場合がある。また、分子量が200を超えると、粘度が高くなり、ポンプなどの装置内を薬剤が流れにくくなるなどの問題が生じる場合がある。
【0048】
紫外線照射処理装置12としては、少なくとも185nmの波長のUVを含むUVを照射できるものであればよく特に制限はない。このような紫外線照射処理装置としては一般に水処理に用いられている低圧UV酸化装置などを使用することができる。
【0049】
UV照射量は、少なくとも水中に溶解している有機物を分解するのに十分な量であればよく特に制限はなく、これは装置の設計条件などにより適宜決定することができる。例えば、照射コストと除去効率の関係から、0.05〜0.5(kw・hr/m)の範囲であることが好ましい。
【0050】
紫外線照射処理装置12の入口でのTOCは、除去効率の関係から、100ppb未満であることが好ましい。
【0051】
イオン交換処理装置14としては、一般に水処理に用いられるイオン交換処理装置を使用することができる。イオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂、カチオン交換樹脂、あるいはそれらの混床などが挙げられ、紫外線照射処理装置12で生じた有機酸やその他の揮発性低分子化合物などの吸着効率が高いことから、アニオン交換樹脂およびカチオン交換樹脂の混床であることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る純水製造方法および純水製造装置により、例えば、半導体製造工程、発電所などで使用されるTOCの低い純水、超純水を製造することができる。本実施形態に係る純水製造方法および純水製造装置により得られる純水、超純水のTOCは、例えば、1ppb以下である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
図1に示す純水製造装置1を用いて試験を行い、a〜c点(a点:スライムコントロール剤添加後、膜処理装置10への流入前、b点:紫外線照射処理装置12への流入前、c点:イオン交換処理装置14からの流出後)でのTOC測定結果を表1に示す。
【0055】
原水としては、超純水を用いた。RO膜処理剤として、ハロシアノアセトアミド化合物であるDBNPA(10重量%)および溶剤としてジプロピレングリコールを含有するスライムコントロール剤を用いた。スライムコントロール剤の添加濃度が、紫外線照射処理装置12の入口でTOCとして150ppb程度になるように添加した。膜処理装置10は、日東電工(株)製のRO膜であるES10を装着したものを用いた。紫外線照射処理装置12としては、千代田工販(株)製のUV酸化装置を用いた。照射UV波長は185nmとし、UV照射量は0.05〜0.5(kw・hr/m)程度となるように調整した。イオン交換処理装置14には、オルガノ(株)製のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合した樹脂(混床)であるEPS−2を充填した装置を用いた。TOC計はANATEL A−1000XPを用いた。
【0056】
(比較例1)
図2に示す、膜処理装置50を備える純水製造装置(紫外線照射処理装置およびイオン交換処理装置はなし)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で試験を行い、a点、c点(a点:スライムコントロール剤添加後、膜処理装置50への流入前、c点:膜処理装置50からの流出後)におけるTOCを測定した。膜処理装置50は、実施例1と同じものを用いた。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
このように、実施例1では、処理水のTOCを低く保持しながら、スライムコントロール剤を使用して、スライム発生などのトラブルを抑制することができた。また、スライムコントロール剤が、DBNPA製剤などの溶剤を多く含む製剤の場合であっても、処理水のTOCを低く保持することができた。
【0059】
(参考例1〜4)
細菌を含む水に、ハロシアノアセトアミド化合物であるDBNPA(参考例1)、イソチアゾロン化合物である5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMI)(参考例2)、ニトロアルコール化合物である2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール(DBNE)(参考例3)、エタノール(参考例4)を、それぞれ3mg/Lとなるように添加し、添加前と添加5分後、30分後、24時間後の水中の菌数を測定した結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
このように、DBNPA、CMI、DBNEの殺菌効果は高く、特に、ハロシアノアセトアミド化合物であるDBNPAの殺菌効果が高かった。
【0062】
(参考例5,6)
図3に示す、紫外線照射処理装置52、イオン交換処理装置54を備える純水製造装置を用いて、紫外線照射処理装置52の入口でTOCが約20ppb程度となるように超純水にジプロピレングリコール(参考例5)またはメタノール(参考例6)を添加し、イオン交換処理装置54の出口でのTOCを測定し、紫外線照射処理装置52とイオン交換処理装置54でのTOC除去率を求めた。結果を表3に示す。
【0063】
<試験条件>
紫外線照射処理装置:千代田工販(株)製、UV酸化装置
UV照射量:0.1(kw・hr/m
イオン交換処理装置:オルガノ(株)製イオン交換樹脂EPS−2を充填したもの
【0064】
【表3】

【0065】
このように、参考例6(メタノール)よりも参考例5(ジプロピレングリコール)の方が、TOC除去率が高く、ジプロピレングリコールが紫外線照射処理→イオン交換処理により高い効率で除去できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る純水製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の比較例1で用いた純水製造装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の参考例5,6で用いた純水製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1 純水製造装置、10,50 膜処理装置、12,52 紫外線照射処理装置、14,54 イオン交換処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤添加工程と、
前記スライムコントロール剤が添加されたスライムコントロール剤含有原水を膜処理する膜処理工程と、
前記膜処理した膜処理水を紫外線照射処理する紫外線照射処理工程と、
前記紫外線照射処理した紫外線照射処理液をイオン交換処理するイオン交換処理工程と、
を含むことを特徴とする純水製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の純水製造方法であって、
前記膜処理が、逆浸透膜処理であることを特徴とする純水製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の純水製造方法であって、
前記スライムコントロール剤が、下記式(1)または(2)の構造(式中、Rは、水酸基または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)を含むアルコール系またはグリコール系有機溶剤を含有することを特徴とする純水製造方法。
【化1】


(1)
【化2】


(2)
【請求項4】
請求項3に記載の純水製造方法であって、
前記アルコール系またはグリコール系有機溶剤が、ジプロピレングリコールであることを特徴とする純水製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の純水製造方法であって、
前記スライムコントロール剤が、ハロシアノアセトアミド化合物、ニトロアルコール化合物、イソチアゾロン化合物のうち少なくとも1つを含有することを特徴とする純水製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の純水製造方法であって、
前記ハロシアノアセトアミド化合物が、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドであることを特徴とする純水製造方法。
【請求項7】
原水にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤添加手段と、
前記スライムコントロール剤が添加されたスライムコントロール剤含有原水を膜処理する膜処理手段と、
前記膜処理した膜処理水を紫外線照射処理する紫外線照射処理手段と、
前記紫外線照射処理した紫外線照射処理液をイオン交換処理するイオン交換処理手段と、
を有することを特徴とする純水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−247992(P2009−247992A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99214(P2008−99214)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】