説明

紙、板などの製造に用いられる繊維材料の前処理のための方法および装置

たとえば紙などを製造するために用いられる繊維材料に無機物質の粒子を沈殿させる方法および装置である。沈殿中に衝撃ミルの原理で作動する貫流ミキサーで有利に前処理される繊維材料が沈殿反応機に投入される。反応機中にガス空間を生ぜしめるためにガスが沈殿反応機に導入される。ガスは二酸化炭素(CO2)などの無機物質を沈殿させる物質を含む。繊維材料は小滴および/または粒子などの小さい液体および固体断片として沈殿反応機のガス空間に投入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙、ボール紙などを製造するために用いられる繊維材料を前処理するための、たとえば無機物質を繊維に沈殿させる際の、本特許出願において後に提示される独立特許クレームの前文による方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の、細かく粉砕された炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム(PCC)、カオリン粘土およびタルクのような無機物が豊富な充填材が、光学的および印刷特性などの、紙の種々の性質を向上させるために紙の製造に用いられている。充填材を加えることも、紙の製造において繊維材料の使用を少なくすることを可能にする。こうして得られた費用の節減は、充填材を加えることによって創出される費用よりも一般に明らかに大きい。
【0003】
それゆえ、一般的な狙いは、出来るだけ多くの充填材料を紙の製造に用いられる繊維懸濁液に加えることである。しかし、紙の強度の性質に関する理由によって、炭酸カルシウムのような充填材料を20〜25%以上加えることは出来ない。
【0004】
紙中の炭酸カルシウムの量を増大させるには、充填材料を含むカルシウムを水酸化カルシウムの形で繊維懸濁液に加え、その後、二酸化炭素を加えることによってその中のカルシウムを沈降炭酸カルシウムに変換することが示唆された。こうして、繊維の表面へ、また繊維の内側へも、直接炭酸カルシウムの沈殿および付着を促進させることが可能になり、そうして紙中の炭酸塩の量を増大させることが出来る。
【0005】
しかし、これらの公知の溶液の不利な点は以下のように考えることが出来る。
沈殿反応は比較的長時間かかること、
沈殿反応は部分的に不完全であること、
使用される工程は連続的ではないこと、あるいは
使用される装置は紙製造工程に統合させることは容易でないこと、である。
【0006】
繊維懸濁液に加えられた水酸化カルシウムを炭酸カルシウムの形で繊維の中へ直接沈殿させることが、米国特許第6,471,825号明細書に示唆されている。この特許は炭酸ガスを懸濁液に投入する前に、出来る可能性のある繊維の塊をほぐすための円盤精製機型の装置で先ず繊維と水酸化カルシウムとを含む懸濁液を処理するべきことを示唆している。
【0007】
円盤精製機型の装置では、繊維懸濁液は過酷な処理を受けて、繊維材料を弱める。二酸化炭素を加えた後、繊維懸濁液をスクリュー・ミキサーで混合する。しかし、二酸化炭素と水酸化カルシウムとを迅速に、かつ効果的に混合し、そして反応の完了を確実に行なうことは通常の刃またはスクリュー・ミキサーを備えた沈殿反応機では困難である。その上、これらの装置で沈降炭酸カルシウムを繊維に付着するのを促進することは困難である。
【0008】
一方では、米国特許第5,679,220号明細書には、繊維懸濁液に加えられた水酸化カルシウムを、繊維懸濁液が長い二部分の管型の、円滑な内部を持った反応機を通って流れるに連れて、炭酸ガスを用いて炭酸カルシウムの形で繊維内に沈殿させるべきであることが示唆されている。水酸化カルシウムを含む懸濁液は管型の反応機の最初の部分の中間で繊維懸濁液に投入される。炭酸ガスは、その中へ水酸化カルシウム懸濁液が投入される前と後の双方共に繊維懸濁液に投入される。炭酸ガスは反応機の壁部の開口を通って反応機の中へ向けられる。その狙いは管の内部を流れる懸濁液へのガスの吸収を促進させることである。比較的長い(2メートル以上)混合反応機中の繊維懸濁液の滞留時間は1分以上である。
【発明の開示】
【0009】
それゆえ、本発明の目的は無機物質の粒子を紙、ボール紙などの製造に用いられる繊維内に沈殿させるためのより良い方法および装置を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、それによって上記の公知の技術の問題点が最小にされるような方法および装置を提供することである。
【0011】
それゆえ、本発明の目的は、それによって沈殿工程中に、水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムのような繊維および無機物、および炭酸ガスのような沈殿薬品の高レベルの混合を得ることが出来るような方法および装置を提供することである。
【0012】
本発明の目的はまた、それによって繊維の表面および内部にきわめて短時間で、また出来るだけ完全に、炭酸カルシウムの沈殿を開始させ、また完了させることが出来るような方法および装置を提供することである。
【0013】
本発明の目的はまた、それによって、従来の実施と比較して紙の充填材の含有量を増加させることが出来るような方法および装置を提供することである。
【0014】
さらに、本発明の目的は、それによって紙、ボール紙および相当の製品の特性、典型的にはそれらの光学的特性および強度特性に、所望の通りに影響を与えることが出来るような方法および装置を提供することである。
【0015】
本発明の目的はまた、無機物質をきわめて種類の多い繊維懸濁液の繊維に、およびおそらく繊維懸濁液に入っている他の固形物質に、沈殿させて用いるために適した方法および装置を提供することである。
【0016】
さらに、本発明の目的はまた、連続的に作動し、また紙、ボール紙などの製造工程に統合させることが容易な装置を提供することである。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明による方法および装置は、本特許出願において後に提示される独立クレームの特徴付け部分によっても特長付けられる。
【0018】
本発明は紙、ボール紙などを製造するために用いられる繊維に無機物質の粒子を沈殿させる方法に関するが、該方法は一般に、
(a)製造に用いられる繊維を含む繊維材料を沈殿反応機に投入する工程、
(b)典型的に水酸化カルシウム(Ca(OH)2)である反応性無機物質を沈殿反応機に投入する工程、
(c)繊維材料と反応性無機物質とを結合して沈殿反応機で、および/またはこれらの物質が沈殿反応機に投入される前に繊維懸濁液を形成させ、
(d)沈殿反応機中の繊維懸濁液を、典型的にCO2である物質と接触させて、それが該反応性無機物質を沈殿させて、繊維懸濁液中に反応性無機物質の少なくとも部分的な沈殿を達成させ、それによってこうして形成された沈殿した無機物質の少なくとも一部が繊維懸濁液中の繊維上に、繊維の表面に、および/または繊維の内部に沈殿する工程、および
(e)こうして処理された繊維懸濁液を沈殿反応機から取り出す工程
を含む。
【0019】
そこで、本発明による典型的な溶液として次を推奨する、すなわち、
(f)二酸化炭素などの上記の反応性無機物質を沈殿させる物質を含むガスを、沈殿反応機に投入して沈殿反応機で該沈殿している物質を含むガス空間を発生させ、そして
(g)沈殿反応機に投入された、および/またはその中で形成された、繊維懸濁液を分散、すなわち分解させて固形物および/または液体を含む小滴および/または粒子のような小部分にして該ガス空間に入れる。
【0020】
典型的には、沈殿物を含むガスは、反応機内で所望のガス空間を維持するために連続したガス流として沈殿反応機に投入される。ガス中の沈殿物の量は、たとえば、沈殿しているガスの供給源および質および/または所望の紙の特性によって、きわめて広範囲に変化することがある。沈殿反応機に投入されるべきガスは一般に5%未満、典型的には10%未満、そして若し所望ならば二酸化炭素などの沈殿物を100%さえも含む。沈殿物を含むガスは、こうして、たとえば、純粋なまたはほぼ純粋な二酸化炭素、燃焼ガスまたは何か他の適当なガスまたは二酸化炭素を含むガス混合物であって良い。勿論、使用される反応性無機物質の沈殿に適した、二酸化炭素以外の沈殿物を用いることも出来る。ガスは典型的には沈殿反応機に投入されて、沈殿反応機内で過圧が保たれるようにする。
【0021】
本発明による溶液では、その狙いは繊維懸濁液、その液相および固相を、小部分、小滴、および/または粒子として分解したガス空間内に投入することである。その場合には、繊維懸濁液は公知の、または新規の方法を用いて分解されて、純液状の小滴、繊維や無機物質などの固形物、固形粒子および/または液体で覆われた固体粒子のような固形物を含む液滴になる。その場合には、繊維懸濁液中の繊維材料は少なくとも部分的に分解され分離した繊維になる。一方では、繊維懸濁液の液相は大部分、分散されて10mm未満まで、典型的には1mm未満までの液滴になる。小さい液滴、繊維および他の固体粒子はガス空間に分散して霧状のガス懸濁液になるが、その中では体積流は反応機に投入された繊維懸濁液の体積流より遥かに大きい。これによって、繊維懸濁液の液滴および/または粒子と周囲のガスとのあいだに大きな接触領域を作り出して、沈殿するべき反応性無機物質とガス中の沈殿物とのあいだのきわめて迅速かつ完全な沈殿反応を可能にする。
【0022】
本発明による溶液を適用する際には、殆どすべての個別の繊維が周囲の液体から繊維の表面へ、また繊維の内部への無機物質の沈殿を迅速かつ効率的に誘導するガス包囲物によって取囲まれていると想定することも出来る。以前には、工程は反対であって、目的はガスを細かい泡として幾分なりとも厚い繊維懸濁液の中へ投入することであったが、その場合、沈殿は迅速かつ完全では無かった。
【0023】
本発明による溶液を適用する際には、沈殿した材料の活性の高い領域が繊維上に形成されて、それを通じてこれらの部分で沈殿反応が継続するにつれて繊維は互いに相互の結合を形成するものと想定できる。これらの結合は製造されるべき紙の強度特性を向上させる。
【0024】
本発明の一つの有利な実施態様にしたがえば、繊維材料の流れを考えるときは、沈殿反応機の前に、または沈殿反応機内に、有利には反応機の始めに、活性化領域が形成される。活性化領域では、繊維懸濁液に力が向けられるが、これはたとえば機械摩擦的または化学摩擦的の何れかにより繊維を活性化してそれらの容量を増大し、互いの結合を形成するか、または沈殿しているおよび/または沈殿した無機物質を吸収する。繊維を活性化することによって、製造される紙の強度特性を向上させる。
【0025】
活性化領域では、懸濁液の繊維を分散させて小さい小滴および/または粒子にすることも、それらを同時に活性化することも好ましい。活性化は、たとえばCa(OH)2を加えた結果、繊維が膨れた時のアルカリ性の状態で有利に作用する。
【0026】
活性化領域では、たとえば繊維をフィブリル化または粉砕することによって、または繊維のルーメンを無機物質になるまで開くことによって、繊維、特にそれらの表面を機械的に活性化する、たとえば、再現する、連続的衝撃、二重の衝撃、せん断力、乱流、過剰および不足の圧力パルス、その他の相当する力を繊維懸濁液へ向けることが出来る。これに対して、繊維、特に繊維の表面を化学的に活性化して活性OH基を繊維の表面に生成することが出来るようにする。
【0027】
本発明の有利な実施態様によれば、活性化は、たとえば多重リング衝撃ミル上で原則として作動する、そして数個の、典型的には3〜8、より典型的には4〜6個の刃などを備えた共軸リングからなる、貫流ミキサーを備えた活性化領域を有する沈殿反応機で開始させることが出来る。そこでは少なくとも一つおきのリングがローターとして、またそれらの隣接したリングがステーターとして、或いは反対方向にまたは異なった速度で回転するローターとして機能するようになっている。ローターの速度は5〜250m/sである。隣接するリングのあいだの速度の差は10〜500m/s、典型的には50〜200m/sである。この原理にしたがって作動するミルまたはミキサーは先にフィンランド特許1056899B、105112B、および国際公開第96/18454号パンフレットに提示された。
【0028】
衝撃ミルの原理で作動する貫流ミキサーでは、繊維懸濁液は典型的にはリングの中心から半径方向に外向きにミキサーを通って移動し、リング上の刃または相当する装置が両衝撃および二重衝撃を指向し、そしてリング上を外方へ流れる繊維懸濁液にせん断力、乱流、および低および過圧パルスを発生させ、そして繊維を活性化させることを可能にさせる。衝撃ミルの原理で作動している反応機は、高いかまたは非常に低い乾燥物含有量を有し得る繊維懸濁液を、沈殿工程に適するように、効率的に処理することが出来る。本発明による沈殿反応機では、たとえば0.1〜40%、典型的には1〜15%、より典型的には3〜7%、というような、きわめて多様な乾燥物含有量の無機物質を沈殿させることが出来る。主として、供給管および排出管に入った繊維懸濁液の汲み上げ能力が限界を定める。
【0029】
貫流ミキサーの隣接リング、ローター、刃などは、典型的に反応機を通って流れる繊維懸濁液に向けられるように、効率的な継続した衝撃を可能にする反対方向、すなわち反応機を通って流れる繊維懸濁液に向けられる衝撃および二重衝撃の主として反対の方向に移動する。若し、これと異なって、同一方向に回転しているリング、すなわちローター、のあいだに、静止したリング、すなわちステーターが取り付けられるならば、ローターの刃によって起こされる衝撃、およびステーターの刃によって起こされる二重の衝撃を、反応機を通って流れる繊維懸濁液に向けることが可能になる。非常に異なった速度で同一の方向に回転しているローターでも同一の結果が達成される。
【0030】
貫流ミキサーのローターおよびステーターの刃などは、同時に、繊維懸濁液をリングのハブから半径の外方向に動くように向ける。ローターおよびステーター・リングの拡張は、中心から外側のリングの方へ動くときは、取り入れ口、すなわち中心と、取り出し口、すなわち外リング、とのあいだに圧力差を作り出す。中心から外方向へ動くときは圧力は減少する。作り出された圧力差は貫流ミキサーを通る繊維懸濁液の移送を促進させる。
【0031】
本発明の有利な実施態様によれば、たとえば、繊維の表面が、自由で反応性の表面がその中の繊維から露出して沈殿可能な無機物質が付着するのを容易にするように処理された場合、またはその中の繊維の表面からフィブリルが露出して沈殿可能な物質が結合するのを容易にするように処理された場合には、それは機械的な活性化の問題となる。フィブリルの形成は繊維の特定の表面積を増大させて、繊維がより多くの沈殿可能な無機物質を付着させることを可能にする。形成されたフィブリルの一部は繊維から離脱して、そのため繊維懸濁液の細かい物質を増加させることがあるが、これは場合によっては望ましいことでさえある。
【0032】
本発明の有利な実施態様によれば、たとえば、不足および過度の圧力パルスが繊維に影響を及ぼしてそれらを開口し、裂くかまたは孔を形成して繊維懸濁液中の大量の反応性無機物質が繊維内へ浸透してその中へ沈殿するのを容易にする、という機械的な活性化もまた問題となる。
【0033】
本発明の有利な実施態様によれば、たとえば、沈殿可能なまたは沈殿した無機物質を結合させることが可能な活性の化学基が繊維の表面に形成されるように、繊維の表面が活性化されたときは、化学的な活性化が問題となってくる。たとえば、繊維の表面に活性OH基を作ることが出来るが、これは無機物質と結合を形成して、無機物質を繊維に付着させることが出来る。
【0034】
本発明による典型的な方法では、繊維材料と石灰乳、Ca(OH)2、などの反応性無機物質とを結合させて、これらの物質が沈殿反応機へ向けられるまでに繊維懸濁液を形成させることが有利である。沈殿させる反応性無機物質をスラッジまたは懸濁液の形の繊維材料の懸濁液に加えると、典型的に繊維材料と反応性無機物質とを含む繊維懸濁液が形成される。こうして、スラッジまたは懸濁液を迅速かつ均等に混合して繊維懸濁液にすることが可能である。一方、沈殿される反応性無機物質は、固体の形でも、たとえば、粉末として、繊維材料の懸濁液に加えても良い。懸濁液が沈殿反応機に投入される前に反応性無機物質が繊維材料の懸濁液に加えられると、繊維は、所望に応じ、数分間、反応性無機物質を吸収する時間を取り、そしてもし無機物質がアルカリ性であれば、それは繊維を活性化および/または炭化に関して有利な形状になるように膨らませる。これは、沈殿が始まると、無機物質を繊維の内部と同様に繊維の表面上に、より容易に、沈殿させることが可能になることを意味する。所望ならば、繊維物質と無機物質とは、勿論、別々に沈殿反応機へ向けて、これらの物質が沈殿反応機で直ちに混合され得るようにしてもよい。
【0035】
本発明による溶液が無機物質の沈殿に適用されると、適用される工程に対して最適である原材料、原材料の投入割合、pH、圧力および温度などの条件を選択することが出来る。本発明による溶液はこれらのパラメータに対して限界を設けない。
【0036】
これらの説明は別段に定めない限りつぎのことをいう。
【0037】
繊維材料の懸濁液とは、少なくとも繊維材料を含む液体ベースの懸濁物をいう。
【0038】
繊維懸濁液とは、少なくとも沈殿に必要とする繊維材料および反応性無機物質を含む液体ベースの懸濁物をいう。
【0039】
ガス懸濁液とは、少なくとも、その中に繊維材料と反応性無機物質が細かく分けられている、繊維材料、反応性無機物質、および沈殿するガスから形成された懸濁液をいう。そして
処理された繊維懸濁液とは、少なくとも繊維材料および沈殿した無機物質の粒子を含む液体ベースの懸濁物をいう。
【0040】
上記の懸濁液は、既に沈殿した無機物粒子または沈殿しない無機物質などの他の物質を含んでいても良い。
【0041】
本発明による方法では、水酸化カルシウム(Ca(OH))2、すなわち、石灰乳、または他のCa2+イオン供給源を反応性無機物質として用いて、いわゆる沈降炭酸カルシウム(PCC)を繊維に、および/または繊維の内部へ、沈殿させることも可能にする。本発明はまた、沈殿しているガスを用いて沈殿および付着させることが可能な、酸化カルシウムまたは硫化カルシウムのような他の相当する反応性無機物質を用いることも可能にする。
【0042】
沈殿に用いるべき反応性無機物質は、それによって繊維の特性、製造されるべき紙、または製造工程が改良されることが望ましいことにしたがって選択される。繊維懸濁液に、そして特に繊維中に、沈殿している無機物質は、たとえば、紙の白さ、軽さ、不透明性、光沢のあること、嵩、印刷結果、印刷能力、排水能力、乾燥特性、などの向上を可能にする。
【0043】
沈殿ガスを沈殿している化学薬品として用いることが好ましい。水酸化カルシウムの沈殿ガスとして、たとえば、二酸化炭素を用いることが出来る。それゆえ、純粋またはほぼ純粋な二酸化炭素(CO2)、燃焼ガスまたはその目的に適した他のガスのような二酸化炭素を含むガスを沈殿反応機に供給することが出来る。また、二酸化炭素以外の適当な沈殿物を用いることも出来る。
【0044】
本発明は繊維懸濁液中の沈殿可能な反応性の物質を繊維の中へばかりでなく、懸濁液に入っている他の無機または有機の粒子の表面にも沈殿させることを可能にする。これらの粒子は、たとえば、二酸化チタニウム粒子または不純物粒子または繊維ベースの細かいフラクション粒子などの他の無機物質を含んでいて良い。本発明による溶液はこうして、沈降炭酸カルシウムなどを用いて、不完全にインキ抜きをされた繊維に残留するインキの残渣を隠すために用いることが出来る。無機粒子上に沈殿した反応性の物質もまた、繊維の上に粒子を付着する能力を持っており、その場合、これらは繊維と共に紙の中に保留されている。一方、繊維上に沈殿した無機物質もまた、繊維を一緒に結合する能力を持っており、紙の強度特性を増大させる。
【0045】
沈殿反応機に投入された繊維懸濁液は、沈殿されるべき繊維材料および反応性無機物質に加えて、次のような紙の製造に用いられる他の固体物質を含むことも出来る。すなわち、
酸化カルシウム、硫化カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリンクレイまたは二酸化チタニウムなどの他の無機物質、
たとえば、インキ除去中に繊維から離れた、繊維ベースの細かい物質、他の細かい物質または不純物、種々の工程除外物、および/または
糊、殺生物剤などの保持を向上させるために用いられる物質。
【0046】
本発明は、紙、ボール紙または他の相当する繊維状の材料から製造された紙ウェブまたはパルプ製品を製造するのに用いるのに適している。
【0047】
それゆえ、本発明は下記の用途に適している。
新聞紙、上質紙、雑誌印刷紙、クラフト紙、ソフトティッシュ、特別紙、またはボール紙のような広範囲の紙ウェブ製品を製造する場合、
化学、機械、化学機械、温度機械パルプまたは半機械パルプ、リサイクルされたパルプまたはそれらの混合物などの広範囲のパルプから製品を製造する場合、
未使用繊維、化学または機械繊維、漂白または無漂白の繊維、精製または粗繊維、乾燥または無乾燥の繊維、インキ除去のまたはインキ付きの再生繊維または割れたパルプ、またはこれらの何れかの混合物から得られた繊維などの広範囲の繊維から紙を製造する場合。
【0048】
繊維と細かく精製された繊維懸濁液としての反応性無機物質とを沈殿しているガスに投入することによって、すなわち前の工程と比較して反対の方法によって、反応性無機物質と繊維材料と沈殿ガスとを一緒に、沈殿に関して、きわめて容易に、かつ効率的に、混合することが可能になったことが発見された。
【0049】
沈殿反応は直ちに始まり、そして反応は繊維懸濁液の小滴とガスとのあいだに形成された非常に大きい接触表面上で迅速に生じる。沈殿は繊維の表面並びに繊維の内部へ、容易に進行する。繊維物質、反応性無機物質の組成、および/または沈殿するガスの組成を、本発明の方法および装置を用いて調節することによって、紙の強度および光学的特性のような達成可能な紙の特性を制御することができる。
【0050】
繊維懸濁液が細かく分散、すなわち分解されているほど、反応はより迅速に、そしてより効率的に起こると想定される。衝撃ミルの原理で作動する貫流ミキサーを用いて、繊維懸濁液を、ガス、繊維、および沈殿されるべき反応性無機物質が一緒に効率的に混合された霧状のガス懸濁液として沈殿しているガス、の中へ分散させることが出来る。本発明による溶液を用いれば、異なった成分のあいだでの反応が直ちに起こり得るガス懸濁液として沈殿の事象に関っている成分を微細均質化することが出来る。これは、たとえば、活性化された繊維が容易に不活性にされた状態に戻る場合に、すなわち、繊維に形成されたフィブリルや開口部が容易に閉じる場合に、特に有利である。繊維懸濁液に入っている無機物質は、少なくとも部分的に、フィブリルの回復を防止する能力を有する。繊維懸濁液は必要に応じ一度または数回再活性化できる。
【0051】
また、繊維が共に結合する能力、および沈殿した無機物質を結合する能力が増大するように、沈殿現象の前におよび/または沈殿の起こっているあいだに繊維材料を活性化することによって、沈殿現象を高めることも、紙の特性を向上させることも共に可能であることも発見された。所望の沈殿現象と紙特性を得るためには沈殿反応機でたった1回の処理でも十分である。
【0052】
添付した図面を参照して本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
図1は本発明による連続的に作動している沈殿反応機10を示し、これは沈殿容器12、沈殿容器に取り付けられた分解および活性化装置14、繊維懸濁用の供給管16、沈殿しているガスの供給管18、および処理された繊維懸濁液用の排出管20からなる。さらに、この装置はアクチュエータ22と装置14とのあいだにベアリングとシーリング・アセンブリ24とを含むアクチュエータ22からなる。
【0054】
水平断面を図2に示した分解および活性化装置14はいわゆる貫流ミキサーであって、これは刃26a,26a′、26a″、28a、28a′,28a″を備えた6個の同軸に配置されたリング26,26′,26″,28′,28′,28″からなる。装置14において、繊維懸濁液は小さい断片、液滴および/または固体粒子に分解される。同時に、繊維懸濁液中の繊維は共に結合するという繊維の能力および沈殿した無機物質を受容するその能力が増大するように、装置14内で活性化される。分解および活性化装置への滞留時間は短く、10秒未満、典型的には2秒未満、より典型的には1秒未満である。
【0055】
図2に示した矢印が示すように、分解装置の第1のリング26,26′,26″はローターとして作用し、これらは図に示した事例では反時計回りに回転する。また、第1のリングに隣接する第2のリング28,28′,28″はローターとして作用する。しかし、それらは図に示した事例では時計回りに回転する。リングに取り付けられた刃、26a,26a′,26a″および28a,28a′,28a″は、半径外方向へ装置を通って移動する繊維懸濁液に出会って、それを再現する衝撃および二重の衝撃の目標とする。同時に、刃同士が近づくに連れて、隣接するローターのあいだに過圧が形成され、また刃が互いから離れるに連れて圧力低下が形成される。圧力差は繊維懸濁液中にきわめて迅速な過剰および低圧のパルスを作り出す。その上、同時に装置14を通って移動する繊維懸濁液にせん断力および乱流が生成される。
【0056】
繊維材料および反応性無機物質を含む繊維懸濁液または繊維スラッジは管16を通って分解および活性化装置の中心部30へ供給され、そこから繊維懸濁液は、装置の中心部と外リングとのあいだに作り出された圧力差の影響によって外リング28″の開口の外端32の方へ半径方向外向きに移動する。繊維懸濁液は必要な場合にはリング同士のあいだでも装置14に供給されることが出来る。また、繊維材料および反応性無機物質を別の管を通って分解および活性化装置14内に供給することも出来るが、その場合には繊維および無機物質を含む繊維懸濁液はこの装置内で作られるまで形成されない。
【0057】
反対方向に回転しているローターの刃によって起こされる衝撃および二重衝撃、せん断力、乱流、および低圧および過圧は繊維懸濁液をきわめて細かい破片、液滴および固体の粒子に分解し、同時に、たとえばそれらを繊維化する(fibrillate)ことによって繊維を活性化させる。中でも特に、活性化は、繊維の懸濁に影響を及ぼす強力な衝撃力と強いせん断力のために効率的である。発明による溶液では、しかし、繊維懸濁液はリングを通って比較的開放された経路を移動することが出来るので、円盤状の精製タイプまたは円錐状の精製タイプの溶液で処理された繊維と同様の粉砕および繊維破壊力には曝されない。本発明による溶液では、繊維はあったとしても、きわめて短時間しかローターの刃の表面に出ることはない。
【0058】
図1および図2に示した本発明による溶液では、沈殿しているガスは管18を通って分解および活性化装置のリングの中心30へ向けられる。ガスは、この中心の位置から、分解装置でと沈殿容器12での両方で、沈殿しているガスを含むガス空間34を発生させて、半径方向外方へ流れる。ガスは沈殿反応機の頂部に置かれた管21を通って排出される。もし所望ならば、沈殿しているガスをリング内へ、および/または分解および活性化装置のリングのあいだへ供給することも出来る。沈殿反応は分解および活性化装置のガス空間で既に開始することができる。
【0059】
分解および活性化装置14で処理されたときは、繊維懸濁液はきわめて細かい小滴および粒子を形成し、それらは装置14からガス空間の包囲部分34′へ分散されることになる。細かい小滴および粒子は霧状の流れ36として、主としてその外側のリング部位から、分解および活性化装置から放出される。分解および活性化装置の外側の沈殿反応は、細かい小滴および粒子が沈殿容器内に広く分散するので比較的長時間続くことがある。処理された繊維懸濁液は沈殿容器の底のプール内へ降下して、管20を通って容器から排出される。
【0060】
沈殿容器12のサイズ、形状、および高さは、分解および活性化装置から排出される小滴および粒子が沈殿容器のガス空間34′に残るように、それらの滞留時間が出来るだけ適切となるように、選択されれば良い。たとえば、沈殿容器12の高さを増大してそれを塔のようにすると、繊維懸濁液の滞留時間が増える。
【0061】
沈殿反応機10内の工程も、たとえばリングの数、リング間の距離、各リングの刃のあいだの距離、および分解および活性化装置内の刃の寸法および位置を調整することによって調節出来る。
【0062】
沈殿容器12の底部を通って外へ出る繊維懸濁液は同一の沈殿反応機へリサイクルするか、または処理を完了させるために別の反応機へ投入することが出来る。
【0063】
分解および活性化反応機を有する本発明による別の沈殿反応機を説明する図3および図4は、適用できる場合には、図1および図2に示したものと同じ番号を用いている。本発明によれば、図3に示した別の沈殿反応機10は、主として、反応機が閉止した外部リング32を備えた分解および活性化反応機14からなること、および沈殿反応機が分解および活性化装置の外側に達する別の沈殿領域を含まない点で図1および図2に示した装置とは異なっている。図3および図4に示した溶液は、たとえば、分解および活性化反応機のガス空間内で既に所望のように沈殿反応が完了したと想定される場合に用いるのに適している。
【0064】
図3および図4に示した分解装置では、最も外側のリング28″は、リングを閉じる、ハウジング40によって囲まれている。ハウジングは処理された繊維懸濁液を装置14から排出するための排出開口部42からなる。処理された繊維懸濁液は排出開口部42から管を通ってさらに処理または加工をされることが出来る。
【0065】
図3に示した反応機もまた、この装置で沈殿が起こらないときに繊維懸濁の活性化に用いるために適用できる。図1および図3に示した両形式の沈殿反応機を2台以上、連続シリーズで配置することが出来る。図5は図1に示した形式の3台の沈殿反応機のグループを示す。適用できる場合には、参照番号は前の図表のものと同一とする。
【0066】
図5は3台の沈殿反応機10,10′,10″を示し、そこではCa(OH)2を含む繊維懸濁液はCa2+イオンを炭化させるために、すなわちCaCO3を沈殿させるために、CO2ガスで処理される。反応機は、繊維、沈殿した炭酸塩、および沈殿しない水酸化カルシウムを含む部分的に処理された繊維懸濁液が第1反応機10の排出口20から第2反応機10′の供給管16′へ向けられるように、連続的に接続されている。その結果、処理された繊維懸濁液は第2反応機10′の排出管20を通って第3反応機10″の供給管16″へ向けられる。
【0067】
二酸化炭素を含むガスは管18,18′,18″を通って各反応機へ導かれる。二酸化炭素を含むガスは供給管18を通って第1反応機10へ供給されるが、それは既に分解および活性化装置14にある繊維に沈殿(炭化)および活性炭酸塩の形成を起こさせる。沈殿した炭化カルシウムは繊維上と、同様に繊維懸濁液に入っている他の粒子上との両方に沈殿する。炭酸塩もまた、別の粒子として繊維懸濁液内に沈殿する。沈殿反応を完了(炭化)させるために、同一の、または他の、二酸化炭素を含有するガスを管18′、18″を通って第2および第3の沈殿反応機10′、10″へ向けることも可能である。ガスは排出管21、21′、21″を通って反応機から除去される。
【0068】
沈殿反応機10へ投入されるべき繊維懸濁液は沈殿反応機10の前面に接続された別の活性化装置で活性化することが出来る。活性化装置は有利には衝撃ミル型の貫流ミキサーである。
【0069】
図6は、連続して直列に取り付けられた、図1に示した形式にしたがった、2つの沈殿反応機10、10′を有する、別の沈殿反応機群を示す。その構造が主として図3に示した貫流ミキサーに類似する活性化装置44が、第1沈殿反応機10の前に接続されている。沈殿反応機に投入される繊維材料は活性化装置で活性化される。しかし、沈殿ガスは活性化装置には投入されない。
【0070】
繊維材料は活性化装置44の上部の管46を通って導入される。活性化された繊維材料は破砕タンク48を通って第1沈殿反応機10内へ導かれる。また、沈殿される無機物質、水酸化カルシウムを、活性化装置44の前の管50を通して、または活性化装置の背後の管52を通して、繊維材料に加えることも出来る。破砕タンク48では、繊維材料は所望の時間、アルカリ状態で膨張することが可能である。破砕タンクからは沈殿されるべき繊維材料および無機物質を含む繊維懸濁液が、底部の管16を通って沈殿反応機の分解および活性化装置14へ導入される。典型的には二酸化炭素である、沈殿ガス18が、繊維懸濁液と共に、装置14へ投入される。典型的にはスチームと二酸化炭素とを含むガスが、管21を通って沈殿反応機の上部から取り出される。ガスは、ガス洗浄および冷却装置54で処理されるように仕向けられる。装置54では、処理された二酸化炭素を含むガスが管18を通って沈殿反応機10へ戻りリサイクルされる。沈殿反応機の底部に集められた処理された繊維懸濁液は排出管20を通って取り除かれる。
【0071】
図6に示した第2沈殿反応機10′は主として第1沈殿反応機10と同一の原理で作動する。第1反応機10の底部から管20へ取り出され、そして典型的には沈殿した炭化カルシウムに加えて繊維材料および水酸化カルシウムを含んでいる、繊維懸濁液は、管16′を通って底部から第2反応機10′の分解および活性化装置14′へ向けられる。洗浄および冷却装置54からは、二酸化炭素を含むガスが第2反応機10′へ向けられる。その中で所望量の炭化カルシウムが繊維内へ沈殿した、殆ど完全に処理された繊維懸濁液は、第2反応機10′の底部を経て管20′を通って排出される。ガスは第2反応機10′の上部から取り除かれ、そしてさらにリサイクルのため洗浄および冷却装置54へ導かれる。
【0072】
図7は直列に取り付けられた3つの沈殿反応機10、10′、10″からなる第3沈殿反応機群を示す。反応機は互いの上部に取り付けられて、繊維懸濁液が上部から反応機に配置された分解および活性化装置へ供給される。第1反応機10が最上部で、第3反応機10″が最下部になり、繊維懸濁液は反応機を通って動くときは大抵下向きに流れることを示す。別の予備活性化装置44と繊維材料用の破砕タンク48とが、図6に示すように沈殿反応機群の前面に取り付けられている。
取り分け、本発明の利点は、
沈殿のため繊維材料の活性化と分解とを双方同時に行なう可能性、
迅速な、効率的で、完全な沈殿反応を達成する可能性、
単一の沈殿反応機内の通過であっても良好な結果を生じる、
他の方法における繊維の完全な破壊または損傷なしに強力で効率的な繊維の処理が可能な活性化、
活性化を規制する可能性、
繊維懸濁液、無機物質およびガスのきわめて効率的な混合を達成する可能性、その可能性は繊維懸濁液中の各少量の単位が処理されること、および各量単位で沈殿が起こることを意味する、
繊維の内部でも沈殿の影響を受ける可能性、
繊維同士を共に結合することが出来るようにする沈殿反応、その場合、紙の強度特性が増大すると想定される、
沈殿反応を用いて、インキ消しをした後に繊維に残ったインキの残渣を隠す可能性、
沈殿反応を用いると、有機および無機粒子を繊維に結合させて、それらを紙に保持させることを可能にする、
沈殿によって、製造されるべき紙の軽さ、強度、および不透明性のような特性を最適化する可能性。
【0073】
下記の実施例に示した実験の目的は、本発明による溶液を用いて加工した繊維/PCC製品の炭化と、他の提示された方法を用いて加工した繊維/PCC製品の炭化とを比較することである。この目的は発明を説明するためだけのもので、それを限定するためではない。
【0074】
全ての実験において、
上質紙を製造するための同様に機械精製されたパイン繊維、その紙の均質性は3.5%であり、
Ca(OH)2スラッジ、その乾燥物含有量は約17%であり、そして
CO2含有ガス、その組成は同一であった。
(K1)本発明の方法を用いて、所要量のCa(OH)2スラッジをパイン繊維を含む繊維ストックと混合することによって繊維/PCC製品を加工した。その場合、沈殿後の繊維/PCC比率は70/30とし、さらに、図1に示した沈殿反応機を通して繊維/Ca(OH)2懸濁液を二回汲み上げて、行なった。それから、繊維/Ca(OH)2懸濁液を細粒懸濁液として、本発明にしたがって、CO2含有ガス内へ汲み上げた。過剰量のCO2含有ガスは装置内へ投入した。この処理の後には、繊維/PCC製品のpHは7であった。
【0075】
(V1)比較のために、化学ミキサーを通して繊維/Ca(OH)2懸濁液を6回汲み上げることによって、流動化化学ミキサーを用いて繊維/PCC製品を加工した。加えて、過剰量のCO2含有ガスを化学ミキサーに投入した。処理した直後には、繊維/PCC製品のpHは7であった。
【0076】
(V2)別の比較として、実験例(V1)に相当する沈殿を行なったが、化学ミキサーを流動化させることはせず、過剰量のCO2含有ガスをミキサーに投入した点だけが異なっていた。繊維/Ca(OH)2懸濁液を化学ミキサーを通して8回汲み上げた。処理直後には、繊維/PCC製品のpHは7であった。
【0077】
(K1)本発明の方法を用いて製品を加工したときは、実験後24時間経っても製品のpHは7であった。このことは、炭化が完全になったことを証明する。
【0078】
(V1)本実施例の方法を用いて加工した製品のpHは実験後24時間経って10であったが、このことは炭化が完全では無かったことを証明しており、炭化反応を完了するためには製品の炭化を数分継続しなければならなかった。
【0079】
(V2)本実施例の方法を用いて加工した製品のpHは実験後24時間経って11であったが、このことは炭化が完全では無かったことを証明しており、炭化反応を完了するためには製品の炭化を数分継続しなければならなかった。
【0080】
全ての場合に、実際の炭化に用いた時間は短かった。しかし、本発明による方法に限っては、炭化はきわめて短時間の内に完了して、それ以上の炭化を必要としなかった。
【0081】
目的は、本発明を上記のように提示した実施態様に限定するものではない。反対に、目的は請求項の範囲内で発明が広く使用できるようにすることである。
【0082】
それゆえ、本発明による方法は紙、ボール紙などを製造する場合の他の形式の繊維材料の前処理にも用いることが出来る。繊維およびそれらの表面を活性化するために、たとえば、それらの無機物を機械的または化学的に共に結合する能力が増大するように、無機物質を機械的または化学的に共に結合する能力が増大するように、活性OH基がそれらの表面に形成されるかおよび/またはそれらのルーメンが開いて無機物質が繊維の内部にも沈殿できるようにするためである。この場合には、繊維材料は、数個の、典型的には3〜8個、より典型的には4〜6個の、刃を備えた共軸リングからなる、衝撃ミルの原理で作動する貫流ミキサーで前処理される。そこでは少なくとも一つおきのリングがローターとして、またこれらのリングの隣接したリングがステーターまたはローターとして、作動する。隣接するリングのあいだの速度の差は10〜500m/s、典型的には50〜200m/sである。
【0083】
繊維材料を主として該リングの中心部へ供給するための供給装置、および
リングを通って半径方向外方へ流れた繊維懸濁液を、異なった方向へ出ることが出来るようにする、開口した最も外側のリング、または、沈殿反応機からリングを通って半径方向外方へ流れた繊維懸濁液を排出するための一つまたはそれ以上の排出開口部を備えた最も外側のリング。
【0084】
前処理は、たとえば、Ca(OH)2を加えた影響によって、繊維が膨れたときに実施するのが有利である。本発明による繊維の前処理は、繊維材料が反応性無機物質と接触するようになる前に繊維材料を活性化するために使用するのに特に良く適しており、それによって無機物質が繊維上に沈殿することを意図したものである。本発明による前処理は、その狙いが繊維材料に必要な相当の特性を達成するために繊維材料を前処理するという他の工程に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明による沈殿反応機の垂直断面を、一例として、模式的に示す。
【図2】図1にしたがって沈殿反応機に取り付けた分解および活性化装置の水平断面を、一例として、模式的に示す。
【図3】本発明による別の沈殿反応機の垂直断面を、一例として、模式的に示す。
【図4】図3に示した沈殿反応機の分解および活性化装置の水平断面を、一例として、模式的に示す。
【図5】本発明による沈殿反応機群の垂直断面を、一例として、模式的に示す。
【図6】本発明による別の沈殿反応機群の垂直断面を、一例として、模式的に示す。
【図7】発明による第3の沈殿反応機群の垂直断面を、一例として、模式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、ボール紙などを製造するために用いられる繊維に無機物質の粒子を沈殿させる方法であって、該方法が、少なくとも
(a)製造に用いられる繊維を含む繊維材料を沈殿反応機に投入する工程、
(b)水酸化カルシウム(Ca(OH)2)などの反応性無機物質を沈殿反応機に投入する工程、
(c)反応性無機物質と繊維材料とを混合して沈殿反応機で、および/またはこれらの物質が沈殿反応機に投入される前に、繊維懸濁液を形成する工程、
(d)沈殿反応機中の繊維懸濁液を、該反応性無機物質を少なくとも部分的に沈殿させる物質に露出させ、その場合、こうして形成された沈殿した無機物質の少なくとも一部が繊維懸濁液中にある繊維上に沈殿する工程、および
(e)こうして処理された繊維懸濁液を沈殿反応機から取り出す工程
を含み、
(f)二酸化炭素(CO2)などの、該反応性無機物質を沈殿させる物質を含むガスを、沈殿反応機内に該沈殿物質を含むガス空間を形成するため、沈殿反応機に投入すること、および
(g)沈殿反応機に投入されたおよび/またはその中で形成された繊維懸濁液を、小さい固体粒子または液滴および/または粒子として分解して該ガス空間に入れることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程(g)において繊維懸濁液の液相が、主として10mm未満、典型的には1mm未満である、小さい液滴として分解されて、ガス空間へ入ることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
力が、繊維懸濁液の流れに関して沈殿反応機の前に、または沈殿反応機の始めに位置する活性化領域内の繊維懸濁液に対して集中され、該力が、繊維の互いに結合する能力、および沈殿しているおよび/または沈殿した無機物質を結合する能力、が増大するように、繊維を活性化することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
活性化を増進させるために、再現する衝撃力、二重衝撃力、せん断力、乱流、過剰および不足の圧力パルスなどの力、または他の相当する力が繊維懸濁液内に向けられ、それによって、
たとえば、繊維をフィブリル化または精製して、無機物質に対してそれらのルーメンを開くことによって、繊維、特にそれらの表面を、機械的に活性化すること、および/または
たとえば、活性OH基を繊維の表面に形成して、繊維の表面を化学的に活性化することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
活性化領域を通過する繊維懸濁液の流れに対して、5〜250m/sの速度で回転している刃などを用いて繊維懸濁液の流れに生じる、連続的な強い衝撃および二重の衝撃をかけることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項6】
沈殿反応機の活性化領域が、数個の、典型的には3〜8個、より典型的には4〜6個の、刃を備えた共軸に配置されたリングを有する、衝撃ミルの原理で作動する貫流ミキサーからなり、その少なくとも一つおきのリングがローターとして、またこれらのリングの隣接したリングがステーターまたはローターとして作動し、またその中でローターとステーターおよび隣接したリングのローターとのあいだの速度の差が10〜500m/s、典型的には50〜250m/sであり、
繊維懸濁液が、そのリングを通って貫流ミキサーの中心から半径方向外方へ動くように供給され、その場合、リング上の刃は外方へ流れる繊維懸濁液に直接再現する衝撃、二重衝撃、せん断力、および/または過剰および不足の圧力パルスを与えるが、それらは全て一緒に繊維を活性化させることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項7】
無機物質を沈殿させる物質を含む、沈殿反応機内に投入されるべきガスの少なくとも一部が、活性化領域を通って沈殿反応機に供給されるが、その場合、この活性化領域で活性化された繊維は活性化中、またはその直後、直ちに該沈殿物と接触することを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
繊維材料および反応性無機物質を含む繊維懸濁液の活性化領域での滞留時間が短く、10秒未満、典型的には2秒未満、より典型的には1秒未満であることを特徴とする請求項3、4、5、6または7記載の方法。
【請求項9】
二酸化炭素などの、沈殿物の5%以上、典型的には10%以上、を含むガスが沈殿反応機内へ投入されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
沈殿物を含むガスは純粋またはほぼ純粋な二酸化炭素、燃焼ガスまたは他の二酸化炭素を含むガス、または使用した反応性無機物質を沈殿させるのに適したガス、またはこれらのガスの混合物であること、および
沈殿反応機内に過圧が維持されるように、沈殿物を含むガスが沈殿反応機内へ供給されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
繊維懸濁液が、たとえば、ガス空間のガス組成が異なり得る2つまたは数個の沈殿反応機を通して導入され、
第1沈殿反応機中の沈殿物を含むガスが純粋またはほぼ純粋な二酸化炭素であり、また次の沈殿反応機またはその一つ次のものではガスは燃焼ガスであるか、または二酸化炭素含有量があまり多くない別のガスであるか、あるいは、
第1反応機中の沈殿物を含むガスは二酸化炭素含有量があまり多くなく、また次の沈殿反応機またはその一つ次のものではガスは純粋またはほぼ純粋な二酸化炭素であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
反応性無機物質が水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、酸化カルシウムまたは他の反応性無機物質および/またはそれらの混合物で、沈殿物で沈殿されるのに適したものからなり、また
反応性無機物質が、繊維から製造されるべき製品が所望の特性、たとえば、所望の光学特性を持つように、選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
繊維材料が、
化学的、機械的、化学機械的、熱機械的または相当する工程から得られた未使用繊維、
新聞紙、クラフト紙、ソフト紙、特別紙またはボール紙から得られたインキ除去のまたはインキ付きの再生繊維、または破れたかまたは他の相当する繊維から得られた繊維、および
漂白或いは無漂白の繊維、精製または粗繊維、乾燥または無乾燥の繊維、またはこれらのいずれかの混合物からなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項14】
繊維材料が、繊維ベースの細かい物質、不純物および/または無機物質などの細かい物質に加えて、繊維を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
繊維材料が0.1〜40%、より典型的には1〜15%、最も典型的には3〜7%の厚さで沈殿反応機内に投入されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項16】
紙、ボール紙などを製造するために用いられる繊維に無機粒子を沈殿させる装置であって、該装置が、
繊維材料および無機物質を別々にまたは一緒に繊維懸濁液として沈殿反応機へ供給するための供給装置、
無機物質を沈殿させる物質を含むガスを沈殿反応機へ供給する供給装置、
沈殿反応機内へ投入された、反応性無機物質を含む繊維材料および繊維懸濁液が、該沈殿物を含むガスと接触させられる沈殿空間、および
繊維材料および沈殿反応機から沈殿した無機物質を含む繊維懸濁液を排出するための装置を備えた沈殿反応機からなり沈殿空間はその中に繊維材料と反応性無機物質とを含む繊維懸濁液が該沈殿物を含むガスと接触させられるガス空間からなること、および、
沈殿反応機もまた、小滴および/または粒子などの小さい固体粒子または液体部分として沈殿反応機に投入された繊維材料と反応性無機物質とを含む、繊維懸濁液を前記ガス空間中に分解させる分解装置からなることを特徴とする装置。
【請求項17】
分解装置が、衝撃ミルの原理で作動する貫流ミキサーからなり、それは数個の、典型的には3〜8個、より典型的には4〜6個の、刃を備えた共軸リングからなり、そのうち少なくとも一つおきのリングがローターとして作動し、そしてこれらのリングに隣接したリングはステーターまたはローターとして作動するもので、また、貫流ミキサーでは、
該ローター間、および隣接のリングのステーターまたはローターの速度の差は10〜500m/s、典型的には50〜200m/sであること、および
リング上の刃は、主として半径方向外方へ流れる繊維懸濁液は繊維を活性化させる、再現する衝撃、二重の衝撃、せん断力、乱流、および/または過剰および不足の圧力パルスを受けるように配置されてなることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項18】
繊維材料と反応性無機物質とを沈殿反応機へ供給する装置が、これらの物質が主として貫流ミキサーのリングの中心部へ投入されるように配置されること、および
無機物質を沈殿させる物質を含むガスを供給する供給装置が、沈殿が既に貫流ミキサーで開始できるように、ガスを大部分貫流ミキサーへ供給するように配置されていることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
貫流ミキサーが沈殿反応機のガス空間の上部に取り付けられていること、
貫流ミキサーは貫流ミキサーを通り抜けた繊維懸濁液がリングから異なった方向へ排出され得るようにする開口した最外側のリングを優先的に有すること、および
繊維材料と沈殿した無機物質とを含む繊維懸濁液を沈殿反応機から取り出す装置が沈殿反応機の底部に配置されていることを特徴とする請求項18記載の装置。
【請求項20】
貫流ミキサーを通って沈殿反応機を流れ抜けた繊維懸濁液を取り除くために、貫流ミキサーの最外側リングに一つまたは数個の排出開口部が配置されたことを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項21】
装置が貫流ミキサーを備えた少なくとも2個の連続的に接続された沈殿反応機からなることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項22】
装置が沈殿反応機の前部に取り付けられ、繊維材料が沈殿反応機に投入される前に繊維材料を活性化するために、沈殿反応機に投入される繊維材料および反応性無機物質を含む繊維材料または繊維懸濁液を加工するように配置された、衝撃ミルの原理で作動している、貫流ミキサーからなることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項23】
繊維およびそれらの表面を活性化するために、紙、ボール紙などを製造するのに用いられる繊維材料を前処理する方法であって、たとえば、それらの無機物を機械的または化学的に互いに結合する能力が増大するように、無機物質を機械的または化学的に結合する能力が増大するように、活性OH基がそれらの表面に形成されるかおよび/またはそれらのルーメンが開いて無機物質が繊維の内部に沈殿できるようにするために行なう方法であって、該方法が、
衝撃ミルの原理で作動している貫流ミキサーで繊維材料を前処理することからなる方法であって、
当該貫流ミキサーが、
数個の、典型的には3〜8個、より典型的には4〜6個の、刃を備えた共軸リングで、そのうち少なくとも一つおきのリングがローターとして、またそれらの隣接したリングがステーターまたはローターとして作動し、隣接するリングのあいだの速度の差は10〜500m/s、典型的には50〜200m/sである共軸リング、
繊維材料を主として該リングの中心部へ供給するための供給装置、および
リングを通って半径方向外方へ流れた繊維懸濁液を異なった方向へ排出されることが出来る、開口した最も外側のリング、または、沈殿反応機からリングを通って半径方向外方へ流れた繊維懸濁液を除去するための一つまたは数個の排出開口部を備えた最も外側の開口リングからなることを特徴とする方法。
【請求項24】
活性化が、たとえば、Ca(OH)2を加えたことによって、繊維が膨れたときに有利に実施されることを特徴とする請求項23記載の方法。
【請求項25】
繊維およびそれらの表面を活性化するために、紙、ボール紙などを製造するのに用いられる繊維材料を前処理する装置であって、たとえば、それらの無機物を機械的または化学的に互いに結合する能力が増大するように、無機物質を機械的または化学的に結合する能力が増大するように、活性OH基がそれらの表面に形成されるかおよび/またはそれらのルーメンが開いて無機物質が繊維の内部に沈殿できるようにするために行なうものであって、繊維材料を前処理する装置が衝撃ミルの原理で作動している貫流ミキサーからなり、
当該貫流ミキサーが、
数個の、典型的には3〜8個、より典型的には4〜6個の、刃を備えた共軸リングで、そのうちの少なくとも一つおきのリングがローターとして、またそれらの隣接したリングがステーターまたはローターとして作動し、隣接するリングのあいだの速度の差は10〜500m/s、典型的には50〜200m/sである共軸リング、
繊維材料を主として該リングの中心部へ供給するための供給装置、および
リングを通って半径方向外方へ流れた繊維懸濁液を、異なった方向へ排出することが出来るようにする、開口した最も外側のリング、または、沈殿反応機からリングを通って半径方向外方へ流れた繊維懸濁液を除去するための一つまたは数個の排出開口部を備えた最も外側の開口リングからなることを特徴とする装置。
【請求項26】
繊維材料が反応性無機物質と接触する前に該繊維材料を前処理する請求項25に記載された装置の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−528946(P2007−528946A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519941(P2006−519941)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000366
【国際公開番号】WO2005/005725
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(506004470)
【出願人】(506004506)
【Fターム(参考)】