説明

紙の製造における歩留りと水切れの改良

製紙プロセスにおける歩留りと水切れを改良する方法が開示されている。本発明の方法は、会合性ポリマー、澱粉もしくは澱粉誘導体、および必要に応じてケイ酸質物質を製紙用スラリーに加えることを含む。さらに、会合性ポリマー、澱粉もしくは澱粉誘導体、および必要に応じてセルロース繊維を含んだ組成物が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2005年6月24日付け出願の米国仮特許出願第60/693,854号(該仮特許出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)の利点を特許請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、凝集系を使用して、セルロース系紙料(a cellulosic stock)から紙や板紙を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歩留りと水切れは製紙における重要な態様である。紙や板紙の製造において、ある特定の物質が、改良された歩留りおよび/または水切れをもたらすことができる、ということが知られている。
【0004】
セルロース系繊維シート(特に、紙や板紙)の製造は、1)セルロース系繊維の水性スラリーを得る工程;前記水性スラリーはさらに、無機増量剤や無機顔料を含有してもよい;2)このスラリーを、移動しつつある製紙用ワイヤや製紙用布帛上にデポジットさせる工程;および3)水を切ることによって、スラリーの固形成分からシートを作製する工程;を含む。
【0005】
上記の工程に次いで、シートをプレスおよび乾燥して、さらに水を除去する。製紙方法をより低コスト化・迅速化するために、および/または、最終紙製品に特異的な性質を付与するために、シート作製工程の前に、スラリーに有機化学薬品や無機化学薬品を加えることが多い。
【0006】
製紙業界は、紙の品質を向上させ、生産性を上げ、そして製造コストを下げるよう絶えず努力している。水切れ/脱水性および固形分の歩留りを改良するために、繊維質スラリーが製紙用ワイヤや製紙用布帛に達する前に、繊維質スラリーに化学薬品を加えることが多い。こうした化学薬品は、歩留り向上剤および/または水切れ助剤(脱水促進剤)と呼ばれている。
【0007】
製紙用ワイヤや製紙用布帛に対する繊維質スラリーの水切れまたは脱水性がよくないと、より速やかな製紙機械速度を達成する上でしばしば制約的な工程となる。水切れ性が改良されると、プレスセクションとドライヤーセクションにおいてより乾燥したシートが得られ、したがって蒸気消費量が少なくなる。さらに、この段階が、製紙方法においてシート最終特性の多くを決定づける段階であるので、歩留り向上剤および/または液切り助剤が、最終的な紙シートの性能特性に影響を及ぼす。
【0008】
固形分に関して、液切りしてペーパーウェブを形成させるというタービュラント・メソッド(turbulent method)において、ウェブ中への微細ファーニッシュ固形分(fine furnish solids)の歩留りを増大させるのに製紙用歩留り向上剤が使用される。微細固形分の十分な歩留りがなされないと、微細固形分は、ミル廃液へと失われるか、あるいは再循環の白水ループ中に高レベルに蓄積され、したがってデポジットの増大を引き起こす恐れがある。さらに、歩留りが不十分であると、繊維上に吸着させようとする添加剤の損失が起こることから、製紙メーカーのコストが増大する。添加剤は、不透明性、強度、サイジング特性、または他の望ましい特性を紙に付与することができる。
【0009】
カチオン電荷またはアニオン電荷を有する高分子量(MW)の水溶性ポリマーが、従来から歩留り向上剤・液切り助剤として使用されている。最近開発の無機ミクロ粒子(歩留り向上剤・液切り助剤として使用する場合)と高MW水溶性ポリマーとを組み合わせることで、従来の高MW水溶性ポリマーと比較して優れた歩留り・水切れ効果が示されている。米国特許第4,294,885号と第4,388,150号は、澱粉ポリマーをコロイダルシリカと共に使用することを開示している。米国特許第4,643,801号と第4,750,974号は、カチオン性澱粉、コロイダルシリカ、およびアニオン性ポリマーのコアセルベート結合剤を使用することを開示している。米国特許第4,753,710号は、パルプファーニッシュ(pulp furnish)を高MWカチオン性凝集剤で凝集させること;凝集したファーニッシュに剪断力を起こさせること;次いでファーニッシュにベントナイトクレイを導入すること;を開示している。
【0010】
使用するポリマーまたはコポリマーの有効性は、構成するモノマーの種類、ポリマーマトリックス中のモノマーの配列、合成分子の分子量、および合成法に応じて変わる。
【0011】
水溶性コポリマーは、ある特定の条件下で製造するとユニークな物理的特性を示す、ということが最近見出された。これらのコポリマーは、化学架橋剤を使用せずに製造することができる。これらのコポリマーはさらに、製紙用途(例えば、歩留り向上剤・液切り助剤)を含む特定の用途において予期せぬ活性をもたらす。ユニークな特性を示すアニオン性コポリマーが、WO03/050152A1(該出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に開示されている。ユニークな特性を示すカチオン性コポリマーと両性コポリマーが、米国特許出願通し番号10/728,145(該出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に開示されている。
【0012】
無機粒子をアクリルアミドの線状ポリマーと共に使用することが、当業界に公知である。最近の特許は、これらの無機粒子を、水溶性のアニオン性ポリマーと共に使用すること(米国特許第6,454,902号)、あるいは特定の架橋物質と共に使用すること(米国特許第6,454,902号、第6,524,439号、および第6,616,806号)を開示している。
【0013】
しかしながら、水切れ・歩留り能を向上させることが依然として求められている。
【発明の開示】
【0014】
製紙プロセスにおける歩留りと水切れを改良する方法が開示される。本発明の方法は、会合性ポリマーと澱粉もしくは澱粉誘導体とを製紙用スラリーに加えることを含む。
【0015】
さらに、会合性ポリマー、澱粉もしくは澱粉誘導体、および必要に応じて組成物を構成するセルロース繊維、を含んだ組成物が開示される。
【0016】
さらに、会合性ポリマー、澱粉もしくは澱粉誘導体、ケイ酸質物質、および必要に応じて組成物を構成するセルロース繊維、を含んだ組成物が開示される。
【0017】
本発明は、特定の条件下において製造された水溶性コポリマー(以後、“会合性ポリマー”と呼ぶ)と澱粉もしくは澱粉誘導体とを含んだ相乗的組み合わせ物を提供する。驚くべきことに、こうした相乗的組み合わせ物により、各成分単独の場合より優れた歩留り・水切れ能が得られる、ということが見出された。相乗効果は、成分の組み合わせ物を一緒に使用するときに起こる。
【0018】
予想外のことに、澱粉もしくは澱粉誘導体と会合性ポリマー(例えば、WO03/050152や米国特許出願2004/0143039A1に開示のポリマー)とを組み合わせて使用すると、歩留り向上剤・水切れが向上する、ということが見出された。
【0019】
本発明はさらに、会合性ポリマーおよび澱粉もしくは澱粉誘導体を含んだ新規組成物を提供する。
【0020】
本発明はさらに、会合性ポリマー、澱粉もしくは澱粉誘導体、およびケイ酸質物質を含んだ組成物を提供する。
【0021】
本発明はさらに、会合性ポリマー、澱粉もしくは澱粉誘導体、およびセルロース繊維を含んだ組成物を提供する。
【0022】
本発明はさらに、会合性ポリマー、澱粉もしくは澱粉誘導体、ケイ酸質物質、およびセルロース繊維を含んだ組成物を提供する。
【0023】
紙や板紙の製造において多成分系を使用すると、プロセスおよび/または生成物に対して種々の影響を及ぼす物質を使用することによって性能を高める可能性がもたらされる。さらに、組み合わせ物は、成分を個別に使用した場合には得られないような特性をもたらすことがある。相乗効果は、本発明の多成分系において生じる。
【0024】
さらに、会合性ポリマーを歩留り向上剤・液切り助剤として使用すると、製紙システムにおける他の添加剤の性能に対して影響を及ぼす、ということも観察されている。歩留りおよび/または水切れが向上すると、直接的な影響と間接的な影響を及ぼすことがある。直接的な影響とは、歩留り向上剤・液切り助剤が添加剤を保持するように作用する、ということを表わしている。間接的な影響とは、添加剤が物理的もしくは化学的な手段によって結びつくフィラーや微細物質(fine)を保持する上での、歩留り向上剤・液切り助剤の有効性を表わしている。したがって、シート中に保持されるフィラーや微細物質の量を増大させることで、保持される添加剤の量が付随的な態様にて増大する。“フィラー”とは、ある特性を付与すべくセルロースパルプスラリーに加えられる、あるいはセルロース繊維の一部に対するより低コストの代替物となる、一般には無機質の粒状物質を表わしている。フィラーは、サイズが比較的小さくて(0.2〜10ミクロンのオーダー)アスペクト比が低いために、そしてフィラーのもつ化学的な特性のために、大きな繊維上に吸着されず、さらにはあまりにも小さすぎて、紙シートである繊維ネットワーク中に捕捉されない。“微細物質(fines)”とは、一般には長さが0.2mm未満であり、および/または、200メッシュのスクリーンを通過することができる、小さなセルロース繊維またはセルロースフィブリルを表わしている。
【0025】
歩留り向上剤・液切り助剤の使用レベルが増大するにつれて、シート中に保持される添加剤の量が増大する。このことにより、シートに対して性能特性の向上がもたらされるか、あるいは製紙メーカーにとって、系に加える添加剤の量を減らすことが可能となり、このため製品のコストが低減する。さらに、製紙システムにおいて使用される再循環水(すなわち白水)中のこれら物質の量が減少する。ある条件下では望ましくない汚染物であると見なすことができる物質のレベルをこのように減少させることができれば、より効率的な製紙プロセスを得ることができるし、あるいは望ましくない物質のレベルを抑えるために加えられるスキャベンジャーや他の物質の必要性を低減させることができる。
【0026】
本明細書で使用している“添加剤”とは、紙に特異的な属性を付与すべく、および/または、製紙プロセスの効率を高めるべく紙スラリーに加えられる物質を表わしている。これらの物質としては、サイジング剤、湿潤紙力増強用樹脂、乾燥紙力増強用樹脂、澱粉もしくは澱粉誘導体、染料、汚染物質抑制剤、消泡剤、および殺生物剤などがあるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明において有用な会合性ポリマーは、下記のように表わすことができる:
【0028】

【化1】

(式中、Bは、1種以上のエチレン性不飽和非イオン性モノマーの重合により形成される非イオン性ポリマーセグメントであり;Fは、1種以上のエチレン性不飽和アニオン性モノマーおよび/またはエチレン性不飽和カチオン性モノマーの重合により形成される、アニオン性ポリマーセグメント、カチオン性ポリマーセグメント、またはアニオン性ポリマーセグメントとカチオン性ポリマーセグメントとの組み合わせであり;B:Fのモルパーセント比が95:5〜5:95である)で示される部分を含んだ水溶性コポリマー組成物;前記水溶性コポリマーは、少なくとも1種のジブロック高分子界面活性剤もしくはトリブロック高分子界面活性剤からなる少なくとも1種の乳化用界面活性剤を使用する油中水エマルジョン重合法によって製造され、このとき少なくとも1種のジブロック界面活性剤もしくはトリブロック界面活性剤とモノマーとの比が少なくとも約3:100であり、前記油中水エマルジョン重合法が、(a)モノマーの水溶液を作製する工程、(b)界面活性剤もしくは界面活性剤混合物を含有する炭化水素液体と前記水溶液とを接触させて、逆エマルジョンを形成させる工程、および(c)エマルジョン中のモノマーを、約2から7未満のpH範囲にてラジカル重合によって重合させる工程、を含む。
【0029】
会合性ポリマーはアニオン性コポリマーであってよい。本発明のアニオン性コポリマーは、0.01MのNaCl中0.0025重量%〜0.025重量%のコポリマーにて測定されるハギンス定数(k’)が0.75より大きいこと;および4.6Hzでの1.5重量%活性コポリマー溶液(a 1.5wt.% actives copolymer solution)に対する貯蔵弾性率(G’)が175Paより大きいこと;を特徴とする。
【0030】
会合性ポリマーはカチオン性コポリマーであってよい。本発明のカチオン性コポリマーは、0.01MのNaCl中0.0025重量%〜0.025重量%のコポリマーにて測定されるハギンス定数(k’)が0.5より大きいこと;および6.3Hzでの1.5重量%活性コポリマー溶液に対する貯蔵弾性率(G’)が50Paより大きいこと;を特徴とする。
【0031】
会合性ポリマーは両性コポリマーであってよい。本発明の両性コポリマーは、0.01MのNaCl中0.0025重量%〜0.025重量%のコポリマーにて測定されるハギンス定数(k’)が0.5より大きいこと;および6.3Hzでの1.5重量%活性コポリマー溶液に対する貯蔵弾性率(G’)が50Paより大きいことを特徴とする。
【0032】
逆エマルジョン重合は、高分子量の水溶性ポリマーもしくは水溶性コポリマーを製造する上での標準的な化学プロセスである。一般には、逆エマルジョン重合プロセスは、1)モノマーの水溶液を作製し、2)適切な乳化用界面活性剤もしくは乳化用界面活性剤混合物を含有する炭化水素液体と前記水溶液とを接触させて逆モノマーエマルジョンを形成させ、3)前記モノマーエマルジョンをラジカル重合に付し、そして必要に応じて、4)ブレーカー界面活性剤(a breaker surfactant)を加えて、水に加えたときにエマルジョンの逆転を高めることによって行われる。
【0033】
逆エマルジョンポリマー(inverse emulsions polymers)は、一般にはイオン性モマーまたは非イオン性モノマーをベースとする水溶性ポリマーである。2種以上のモノマーを含有するポリマー(コポリマーとも呼ばれる)も、同じプロセスによって製造することができる。これらのコモノマーは、アニオン性であっても、カチオン性であっても、両性イオン性であっても、非イオン性であっても、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
【0034】
代表的な非イオン性モノマーとしては、アクリルアミド;メタクリルアミド;N-アルキルアクリルアミド(例えばN-メチルアクリルアミド);N,N-ジアルキルアクリルアミド(例えばN,N-ジメチルアクリルアミド);メチルアクリレート;メチルメタクリレート;アクリロニトリル;N-ビニルメチルアセトアミド;N-ビニルホルムアミド;N-ビニルメチルホルムアミド;ビニルアセテート;N-ビニルピロリドン;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート〕;および前記物質のいずれかの混合物;などがあるが、これらに限定されない。
【0035】
会合性ポリマーの製造には、より疎水性の非イオン性モノマーも使用することができる。“より疎水性の”という用語は、ここでは、これらのモノマーが、水溶液に対して低下した溶解性を有するということを、そしてこうした低下が実質的にゼロの状態になる(すなわち、モノマーが水に溶解しない)ということを示すのに使用されている。当該モノマーは、重合可能な界面活性剤もしくは重合可能なサーフマー(surfmers)とも呼ばれていることを記しておく。これらのモノマーとしては、アルキルアクリルアミド;ペンダントの芳香族基やアルキル基を有するエチレン性不飽和モノマー、および式CH2=CR’CH2OAmR〔式中、R’は水素またはメチルであり;Aは、1種以上の環状エーテル(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシド)のポリマーであり;そしてRは疎水性基である〕のエーテル;ビニルアルコキシレート;アリルアルコキシレート;ならびにアリルフェニルポリエーテルサルフェート;などがあるが、これらに限定されない。代表的な物質としては、メチルメタクリレート、スチレン、t-オクチルアクリルアミド、およびアリルフェニルポリオールエーテルサルフェート〔クラリアント社からエマルソゲン(Emulsogen)APG2019として市販〕などがあるが、これらに限定されない。
【0036】
代表的なアニオン性モノマーとしては、アクリル酸の遊離酸と塩;メタクリル酸の遊離酸と塩;マレイン酸の遊離酸と塩;イタコン酸の遊離酸と塩;アクリルアミドグリコール酸の遊離酸と塩;2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸の遊離酸と塩;3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸の遊離酸と塩;スチレンスルホン酸の遊離酸と塩;ビニルスルホン酸の遊離酸と塩;ビニルホスホン酸の遊離酸と塩;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンホスホン酸の遊離酸と塩;および上記物質のいずれかの混合物;などがあるが、これらに限定されない。
【0037】
代表的なカチオン性モノマーとしては、カチオン性エチレン性不飽和モノマーの遊離塩基と塩〔例えばハロゲン化ジアリルジアルキルアンモニウム(例えば塩化ジアリルジメチルアンモニウム)〕;ジアルキルアミノアルキル化合物の(メタ)アクリレート〔例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート〕、およびこれらの塩と第四アンモニウム化合物;N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(例えばN,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド)、およびこれらの塩と第四アンモニウム化合物;ならびに上記物質の混合物;などがあるが、これらに限定されない。
【0038】
コモノマーは、いかなる比で存在してもよい。得られる会合性ポリマーは、非イオン性であっても、カチオン性であっても、アニオン性であっても、あるいは両性(カチオン電荷とアニオン電荷の両方を含有する)であってもよい。
【0039】
非イオン性モノマーとアニオン性モノマーとのモル比(式IのB:F)は、95:5〜5:95の範囲であってよく、約75:25〜約25:75の範囲であるのが好ましく、約65:35〜約35:65の範囲であるのがさらに好ましく、約60:40〜約40:60の範囲であるのが最も好ましい。この点で、BとFのモルパーセントは、合計して100%とならなければならない。理解しておかなければならないことは、式I中に2種以上の非イオン性モノマーが存在してよい、という点である。さらに、式I中に2種以上のアニオン性モノマーが存在してよい、という点も理解しておかねばならない。
【0040】
本発明の1つの好ましい実施態様においては、会合性ポリマーは、それがアニオン性コポリマーであるときは、B(非イオン性ポリマーセグメント)が、アクリルアミドの重合後に形成される反復構造単位であり;F(アニオン性ポリマーセグメント)が、アクリル酸の塩もしくは遊離酸の重合後に形成される反復構造単位であり;そしてB:Fのモルパーセント比が約75:25〜約25:75である;という場合の式Iによって定義される。
【0041】
会合性ポリマーの物理的特性は、それがアニオン性コポリマーであるときは、0.01MのNaCl中にて測定されるハギンス定数(k’)が0.75より大きく、4.6Hzでの1.5重量%活性コポリマー溶液に対する貯蔵弾性率(G’)が175Paより大きい(好ましくは190より大きく、さらに好ましくは205より大きい)、という点でユニークである。ハギンス定数は0.75より大きく、0.9より大きいのが好ましく、1.0より大きいのがさらに好ましい。
【0042】
非イオン性モノマーとカチオン性モノマーとのモル比(式IのB:F)は、99:1〜50:50、95:5〜50:50、95:5〜75:25、または90:10〜60:45の範囲であってよく、約85:15〜約60:40の範囲であるのが好ましく、約80:20〜約50:50の範囲であるのがさらに好ましい。この点で、BとFのモルパーセントは、合計して100%とならなければならない。理解しておかなければならないことは、式I中に2種以上の非イオン性モノマーが存在してよい、という点である。さらに、式I中に2種以上のカチオン性モノマーが存在してよい、という点も理解しておかねばならない。
【0043】
式Iの両性コポリマーのモルパーセントに関して、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、および非イオン性モノマーのそれぞれの量は、コポリマーを作製するのに使用されるモノマーの全量の少なくとも1%である。非イオン性モノマー、アニオン性モノマー、およびカチオン性モノマーのそれぞれの量は、コポリマーを作製するのに使用されるモノマーの全量の98%以下である。アニオン性モマー、カチオン性モノマー、および非イオン性モノマーのいずれかの量は、コポリマーを作製するのに使用されるモノマーの全量の少なくとも5%であるのが好ましく、少なくとも7%であるのがさらに好ましく、少なくとも10%であるのがさらに好ましい。この点で、アニオン性モノマー、カチオン性モノマー、および非イオン性モノマーのモルパーセントは、合計して100%とならなければならない。理解しておかなければならないことは、式I中に2種以上の非イオン性モノマーが存在してよく、式I中に2種以上のカチオン性モノマーが存在してよく、そして式I中に2種以上のアニオン性モノマーが存在してよい、という点である。
【0044】
会合性ポリマーの物理的特性は、それがカチオン性コポリマーまたは両性コポリマーであるときは、0.01MのNaCl中にて測定されるハギンス定数(k’)が0.5より大きく、6.3Hzでの1.5重量%活性ポリマー溶液に対する貯蔵弾性率(G’)が50Paより大きい(好ましくは10より大きく、さらに好ましくは25より大きく、あるいは50より大きく、あるいは100より大きく、あるいは175より大きく、あるいは200より大きい)、という点でユニークである。ハギンス定数は0.5より大きく、0.6より大きいのが好ましく、あるいは0.75より大きく、あるいは0.9より大きく、あるいは1.0より大きい。
【0045】
逆エマルジョン重合系において使用される乳化用界面活性剤もしくは界面活性剤混合物は、製造プロセスと得られる生成物の両方に対して重要な影響を及ぼす。エマルジョン重合系において使用される界面活性剤は当業者に公知である。これらの界面活性剤は一般に、全体としての組成に応じて異なる、ある範囲のHLB(Hydrophilic Lipophilic Balance;親水性・親油性バランス)値を有する。1種以上の乳化用界面活性剤を使用することができる。会合性ポリマーを製造するのに使用される、重合生成物である乳化用界面活性剤は、少なくとも1種のジブロックポリマー界面活性剤またはトリブロックポリマー界面活性剤を含む。周知のように、これらの界面活性剤は、極めて効果的なエマルジョン安定剤である。乳化用界面活性剤の種類と量は、重合のための逆モノマーエマルジョンが得られるように選択される。1種以上の界面活性剤は、ある特定のHLB値が得られるように選択される。
【0046】
ジブロックポリマー乳化用界面活性剤とトリブロックポリマー乳化用界面活性剤は、ユニークな物質を得るために使用される。WO03/050152A1およびUS2004/0143039A1(これら特許出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載のように、ジブロックポリマー乳化用界面活性剤またはトリブロックポリマー乳化用界面活性剤が必要な量にて使用されると、ユニークな特性を示すユニークなポリマーが得られる。代表的なジブロックポリマー乳化用界面活性剤およびトリブロックポリマー乳化用界面活性剤としては、脂肪酸のポリエステル誘導体とポリ(エチレンオキシド)をベースとするジブロックコポリマーとトリブロックコポリマー〔例えば、デラウェア州ニューキャッスルのユニケマ社から市販のハイパーマー(Hypermer)(登録商標)B246SF、);ポリイソブチレンコハク酸無水物とポリ(エチレンオキシド)をベースとするジブロックコポリマーとトリブロックコポリマー;エチレンオキジおよびプロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物;ならびに前記物質のいずれかの混合物;などがあるが、これらに限定されない。ジブロックコポリマーとトリブロックコポリマーは、脂肪酸のポリエステル誘導体とポリ(エチレンオキシド)をベースとするのが好ましい。トリブロックコポリマー界面活性剤が使用される場合、トリブロックは、2つの疎水性区域と1つの親水性区域を含有するのが好ましい(すなわち、疎水性物質-親水性物質-疎水性物質)。
【0047】
ジブロックもしくはトリブロック界面活性剤の量(重量%)は、会合性ポリマーを作製するのに使用されるモノマーの量に依存する。ジブロックもしくはトリブロック界面活性剤とモノマーとの比は、少なくとも約3:100である。ジブロックもしくはトリブロック界面活性剤とモノマーとの比は、3:100より大きくてよく、少なくとも約4:100であるのが好ましく、約5:100であるのがさらに好ましく、約6:100であるのがさらに好ましい。ジブロックもしくはトリブロック界面活性剤は、乳化系における基本的な界面活性剤である。
【0048】
二次的な乳化用界面活性剤を加えて、処理や加工を容易にしたり、エマルジョンの安定性を高めたり、および/またはエマルジョンの粘度を変えたりすることができる。二次的な乳化用界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル〔例えばソルビタンモノオレエート(例えば、デラウェア州ニューキャッスルのユニケマ社から市販のアトラスG-946)〕、エトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルフェノールのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、長鎖アルコールもしくは脂肪酸のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、エチレンオキシド/プロピレンオキシド混合ブロックコポリマー、アルカノールアミド、スルホスクシネート、およびこれらの混合物などがあるが、これらに限定されない。
【0049】
逆エマルジョンの重合は、当業者の公知のいずれの方法でも行うことができる。例えば、「Allcock and Lampe,Contemporary Polymer Chemistry,(Englewood Cliffs,New Jersey,PRENTICE-HALL,1981),chapter 3-5」を含めた多くの文献中に例が見られる。
【0050】
典型的な逆エマルジョン重合は下記のように行うことができる。オーバーヘッド・メカニカルスターラー、温度計、窒素スパージ管、および凝縮器を取り付けた適切な反応フラスコに、パラフィン油の油相〔135.0g,エクソゾル(Exxosol)(登録商標)D80オイル,テキサス州ヒューストンのエクソン社〕と界面活性剤(4.5gのアトラスG-946と9.0gのハイパーマーB246SF)を仕込む。次いで、油相の温度を37℃に調整する。
【0051】
53重量%アクリルアミド水溶液(126.5g)、アクリル酸(68.7g)、脱イオン水(70.0g)、およびバーセネックス(Versenex)(登録商標)80(ダウケミカル社)キレート剤溶液(0.7g)を含む水性相を別個に調製する。次いで、水酸化アンモニウム水溶液(33.1g,NH3として29.4重量%)を加えることで水性相のpHを5.4に調節する。中和処理後の水性相の温度は39℃である。
【0052】
次いでこの水性相を、ホモジナイザーで同時的にミキシングしながら油相に加えて、安定な油中水エマルジョンを得る。このエマルジョンを、窒素で60分スパージしながら、4枚羽根のガラススターラーで混合する。窒素スパージ中は、エマルジョンの温度を50±1℃に調節する。その後、スパージを止め、窒素雰囲気の状態にする。
【0053】
重合は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の3重量%トルエン溶液(0.213g)を供給することによって開始される。これは、全モノマーを基準とすると250ppmのAIBN添加量に相当する。供給中に、発熱が起こってバッチの温度が62℃に上昇し(約50分)、その後にバッチの温度を62±1℃に保持する。供給終了後、バッチを62±1℃の温度で1時間保持する。次いで、AIBNの3重量%トルエン溶液(0.085g)を1分未満で加える。これは、全モノマーを基準とすると100ppmのAIBN添加量(第2の添加)に相当する。次いでバッチを62±1℃の温度で2時間保持する。次いでバッチを室温に冷却し、ブレーカー界面活性剤を加える。
【0054】
会合性ポリマーのエマルジョンは一般に、ブレーカー界面活性剤を加えたその場所で逆転し、活性コポリマーの0.1〜1%水溶液が得られる。次いで、歩留りと水切れに影響を与えるべく、会合性ポリマーの希薄溶液を製紙プロセス(paper process)に加える。会合性ポリマーは、濃厚な紙料にも、あるいは希薄な紙料にも加えることができるが、好ましいのは希薄な紙料である。会合性ポリマーは、1つの供給ポイントにて加えてもよいし、あるいは会合性ポリマーが2つ以上の別個の供給ポイントに同時的に供給されるよう、分割して供給してもよい。典型的な紙料供給ポイントとしては、ファンポンプ前の供給ポイント、ファンポンプ後の供給ポイント、および圧力スクリーン前もしくは圧力スクリーン後の供給ポイントなどがある。
【0055】
会合性ポリマーは、凝集を達成するために、いかなる効果的な量でも加えることができる。コポリマーの量は、セルロースパルプ1メートルトン当たり0.5Kg(乾量基準)より多くてよい。会合性ポリマー(活性コポリマー)は、パルプの乾燥重量を基準として、セルロースパルプ1メートルトン当たり少なくとも約0.03ポンド〜約0.5Kgの量にて使用するのが好ましい。活性コポリマーの濃度は、乾燥セルロースパルプ1メートルトン当たり約0.05〜約0.5Kgであるのが好ましい。活性コポリマーは、セルロースパルプ1メートルトン当たり約0.05〜0.4Kgの量にて加えるのがさらに好ましく、セルロースパルプの乾燥重量を基準として1メートルトン当たり約0.1〜約0.3Kgの量にて加えるのが最も好ましい。
【0056】
歩留り・液切り系の第2の成分は、澱粉および澱粉誘導体である。澱粉は、α-1,4結合を含有するグルコースのポリマーに対する一般名である。澱粉は天然に産する物質であり、この炭水化物は、ほとんどの陸生植物の葉、茎、根、および実の中に見出すことができる。澱粉の市販供給源としては、穀物の種子(トウモロコシ、小麦、および米など)や特定の根(ジャガイモやタピオカなど)などがあるが、これらに限定されない。澱粉は、その植物源によって表わされる(例えば、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、および小麦澱粉など)。
【0057】
グルコースは、炭素と水素と酸素から6:10:5の比にて構成されており(C6H10O5)、炭水化物有機化合物の種類に分類されている。澱粉は、グルコースの縮合ポリマーであると見なすことができる。
【0058】
ほとんどの澱粉は、2種の多糖類(実質的に線状のポリマーであるアミロース、および高度に分岐したポリマーであるアミロペクチン)の混合物からなる。アミロースとアミロペクチンの相対的な量は供給源に応じて異なり、アミロースとアミロペクチンとの比は、一般には、タピオカの場合が17:83、ジャガイモの場合が21:79、トウモロコシの場合が28:72、そしてワクシーメイズコーン(waxy maize corn)の場合が0:100である。これらは代表的な澱粉の比であるけれども、本発明においては、アミロース対アミロペクチンのいかなる比も有用でありうる。本発明の目的に適うよう、ワクシーメイズ(waxy maize)はジャガイモ澱粉の1種であると見なす。
【0059】
アミロースは、α-1,4結合によって互いに連結した、グルコース単位の鎖からなる線状ポリマーである。分子量は、約30,000〜約1,000,000の範囲であってよい。
【0060】
アミロペクチンは、極めて複雑で極めて高分子量(10,000,000〜100,000,000)のポリマーを形成するようα-1,6結合を介して連結した、約2000〜約10,000の分子量を有する短いアミロース鎖で構成される高度に分岐した構造体である。
【0061】
澱粉は、植物によって合成され、それぞれの植物にとって特有のグラニュール中に蓄積される。澱粉グラニュールは、粉砕プロセスと微粉砕プロセスを通して植物から分離される。グラニュールは冷水に対して不溶性であり、グラニュールが膨潤して破裂するよう、これによってポリマーが溶液中に溶解するよう、臨界温度より高く加熱しなければならない。
【0062】
澱粉は、選択された用途において有用な特定の特性をもたらすように変性を施すことができる。こうした変性は、物質の物理的構造または化学的構造に対する、あるいはこれらの両方に対する変性を含む。物理的変性法としては、分子量の減少(加水分解によって果たされるのが最も多い)がある。このような変性物質は、誘導体化澱粉(derivatized starch)または澱粉誘導体(starch derivatives)と呼ばれることが多い。
【0063】
化学的変性法としては、酸化澱粉を生成する反応(例えば、次亜塩素酸塩との反応によって);架橋澱粉を形成する反応(例えば、エピクロロヒドリン、三メタリン酸ナトリウム、イソシアネート、またはN,N-メチレンビスアクリルアミド等の架橋剤を使用することによって);澱粉エステルを形成する反応(例えば、酢酸や無水コハク酸との反応によって);ヒドロキシアルキル澱粉を形成する反応(例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドとの反応によって);ホスフェートモノエステルを形成する反応(例えば、トリポリリン酸ナトリウムとの反応によって);カチオン性澱粉を形成する反応(例えば、塩化ジエチルアミノエチル、第三アミンとエピクロロヒドリン、あるいはエチレンアミンとの反応によって);ジアルデヒド澱粉を形成する反応(例えば、酸による酸化(acid oxidation));およびキサントゲン酸澱粉を形成する反応;などがあるが、これらに限定されない。本発明の目的に対しては、いかなるタイプの化学的に変性した澱粉も有用であると考えられる。
【0064】
カチオン性澱粉とアニオン性澱粉のブレンドが、本発明において有用である。低電荷の澱粉(low charge starches)も、本発明において有用である。
【0065】
歩留り・液切り系の第2の成分は、パルプの乾燥重量を基準として、セルロースパルプ1メートルトン当たり最大で20Kgの量にて加えることができ、このとき会合性ポリマーと第2の成分との比は1:100〜100:1である。製紙システムにおいては、2種以上の第2の成分を使用することができる。
【0066】
必要に応じてケイ酸質物質を、紙や板紙を製造する際に使用される歩留り向上剤・液切り助剤の追加成分として使用することができる。ケイ酸質物質は、シリカをベースとする粒子、シリカミクロゲル、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アニオン性コロイダルシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート、およびポリケイ酸などからなる群から選択される物質のいずれであってもよい。これらの物質は、表面積が大きいこと、電荷密度が大きいこと、および粒径がミクロン以下であることを特徴とする。
【0067】
ケイ酸質物質は、球状非晶質シリカ粒子の安定なコロイド分散液(当業界ではシリカゾルと呼ばれている)を含む。“ゾル”という用語は、球状非晶質粒子の安定なコロイド分散液を表わしている。シリカゲルは三次元のシリカ凝集体鎖であって(それぞれの鎖が幾つかの非晶質シリカゾル粒子を含んでいる)、歩留り向上剤・液切り助剤系において使用することができる。これらの鎖は、直鎖状であっても、あるいは分岐鎖状であってもよい。シリカゾルとシリカゲルは、ケイ酸モノマーを重合して環状構造物(この環状構造物は、ポリケイ酸の個別の非晶質シリカゾルとなる)とすることによって製造される。これらのシリカゾルをさらに反応させて、三次元のゲルネットワークを得ることができる。種々のシリカ粒子(ゾルやゲルなど)は、5〜50nmの外径寸法を有することができる。アニオン性のコロイダルシリカも使用することができる。
【0068】
ケイ酸質物質は、セルロース懸濁液の乾燥重量を基準として、1メートルトン当たり少なくとも0.05Kgの量にてセルロース懸濁液に加えることができる。ケイ酸質物質の量は、1メートルトン当たり5Kgという多い量であってもよい。ケイ酸質物質の量は、1メートルトン当たり約0.05〜約25Kgであるのが好ましい。ケイ酸質物質の量は、セルロース懸濁液の乾燥重量を基準として、1メートルトン当たり約0.25〜約5Kgであるのがさらに好ましい。
【0069】
歩留り向上剤・液切り助剤系の追加成分は、必要に応じて従来の凝集剤であってよい。従来の凝集剤は、一般には、アクリルアミドの線状カチオン性もしくはアニオン性コポリマーである。歩留り・液切り系の追加成分は、歩留りと水切れを向上させる多成分系が得られるよう、アルミニウム化合物および会合性ポリマーと併用して加えられる。
【0070】
本発明における従来の凝集剤は、アニオン性ポリマーであっても、カチオン性ポリマーであっても、あるいは非イオン性ポリマーであってもよい。アクリルアミド等の非イオン性モノマーを含んだコポリマーを作製するのに、イオン性モノマーが使用されることが最も多い。これらのポリマーは、懸濁重合、分散重合、および逆エマルジョン重合(これらに限定されない)を含めた種々の合成プロセスによって得ることができる。逆エマルジョン重合に対しては、ミクロエマルジョンも使用することができる。
【0071】
従来の凝集剤のコモノマーは、いかなる比で存在してもよい。得られるコポリマーは、非イオン性であっても、カチオン性であっても、アニオン性であっても、あるいは両性(カチオン性電荷とアニオン性電荷の両方を含有する)であってもよい。
【0072】
本発明の系の一部であってよいさらに他の追加成分は、ミョウバン(硫酸アルミニウム)、硫酸ポリアルミニウム(polyaluminum sulfate)、塩化ポリアルミニウム、およびアルミニウムクロロハイドレート等のアルミニウム源である。
【0073】
歩留り・液切り系の成分は、セルロース系懸濁液に、実質的に同時に加えることができる。“歩留り・液切り系”という用語は、本明細書では、改良された歩留り・水切れを得るべく、製紙用スラリーに加えられる2種以上の特異な物質を包含するように使用されている。例えば、これらの成分は、セルロース系懸濁液に、同じ段階の添加ポイントにて別々に加えることもできるし、あるいは異なった段階の添加ポイントにて別々に加えることもできる。本発明の系の成分を同時に加える場合、任意の2種以上の物質をブレンド物として加えることもできる。この混合物は、これらの物質を、添加ポイントにて混合することによって、あるいは添加ポイントへの供給ラインにおいて混合することによって、その場で作製することができる。これとは別に、本発明の系は、これら物質の予備ブレンド物を含む。本発明の他の態様においては、本発明の系の成分を逐次的に加える。成分の添加ポイントの間に、剪断ポイントが存在していても、あるいは存在していなくてもよい。これらの成分は、いかなる順序でも加えることができる。
【0074】
本発明の系は、一般には、歩留り・水切れに影響を及ぼすように、製紙プロセスに加えられる。本発明の系は、濃厚紙料に加えることも、あるいは希薄紙料に加えることもできるが、好ましいのは希薄紙料である。本発明の系は、1つの供給ポイントにおいて加えることもできるし、あるいは本発明の系が2つ以上の別個の供給ポイントに同時に供給されるよう分割供給することもできる。一般的な紙料付加ポイントとしては、ファンポンプの前の供給ポイント、ファンポンプの後で圧力スクリーンの前の供給ポイント、または圧力スクリーンの後の供給ポイントがある。
【実施例】
【0075】
本発明の性能を評価するために、合成アルカリ性ファーニッシュ(a synthetic alkaline furnish)を使用して一連の水切れ試験を行った。このファーニッシュは、硬材ドライド・マーケット・ラップ・パルプ(hardwood dried market lap pulp)もしくは軟材ドライド・マーケット・ラップ・パルプ、水、およびさらなる物質から製造される。先ず、硬材と軟材のドライド・マーケット・ラップ・パルプを別々に精製する。次いでこれらのパルプを、水性媒体中にて、約70重量%の硬材と約30重量%の軟材との比にて混合する。ファーニッシュを作製する際に使用される水性媒体は、代表的な硬度に応じた脱イオン水と現地の硬水との混合物を含む。無機塩をこの媒体に、CaCO3として75ppmの全アルカリ度およびCaCO3として100ppmの硬度をもたらすような量にて加える。沈降炭酸カルシウム(PCC)を、80%の繊維と20%のPCCフィラーを含有する最終ファーニッシュが得られるように、代表的な重量%にてパルプファーニッシュ中に導入する。水切れ試験は、メカニカルスミキサーを使用して特定のミキサー速度にてファーニッシュを混合することによって、そして種々の化学成分をファーニッシュ中に導入し、個々の成分を所定時間混合してから次の成分を加えることによって行った。具体的な化学成分と投入量レベルを後記のデータ表に示す。
【0076】
真空水切れ試験(Vacuum Drainage Test;VDT)を使用して、本発明の水切れ作用を調べた。この試験の結果から、水切れ時間の長さ比べることで、VDTにより液切り助剤を差別化できることがわかる。装置の構成は、濾過に関する種々の参考図書〔例えば、「Perry’s Chemical Engineers’ Handbook,第7版,(McGraw-Hill,New York,1999)pp.18-78」を参照〕に記載のブフナー漏斗試験の場合と同様である。VDTは、300mlの磁気ゲルマン濾過漏斗、250mlのメスシリンダー、クイック・ディスコネクト、ウォータートラップ、および真空計とレギュレータを取り付けた真空ポンプからなる。VDT試験は、先ず真空計とレギュレータを取り付けた真空ポンプをセットすることによって行う。VDT試験は、先ず真空を所望のレベル(通常は10インチHg)に設定し、そして漏斗をシリンダー上に正しく配置することによって行う。次いで、0.5重量%の紙紙料250gをビーカー中に入れ、処理プログラムに応じて必要とされる添加剤(例えば、澱粉、ミョウバン、および試験用凝集剤)を、オーバーヘッドミキサーで攪拌しながら紙料に加える。次いでこの紙料を濾過漏斗中に注ぎ込み、真空ポンプのスイッチを入れると同時にストップウォッチをスタートさせる。水切れ効果は、230mlの濾液を得るのに必要とされる時間(秒にて表示)として記録される。水切れ時間の値がより小さいということは、水切れもしくは脱水のレベルがより高いということを示しており、これは望ましいことである。
【0077】
本発明の評価において使用した澱粉物質を表1に示す。スタロック(Stalok)とインターボンド(Interbond)はA.E.ステイリー社(イリノイ州ジケーター)の製品の商品名であり;キャトー(Cato)、マイクロキャット(Microcat)、およびオプティプラス(Optiplus)は、ナショナルスターチ・アンド・ケミカル社(ニュージャージー州ブリッジウォーター)の製品の商品名である。評価した澱粉を、製品の名称および澱粉の種類もしくは供給源にしたがって下記に示す。
【0078】
本発明において評価のために使用した澱粉物質を表1に示す。
【表1】

【0079】
本発明の水切れ作用を表2に示す。表に記載の添加剤を、紙ファーニッシュ1メートルトン(MT)(乾量基準)当たりのキログラム数(Kg)として、ファーニッシュに逐次的に加える。表に記載の物質を実施例において使用した。ミュウバンは、硫酸アルミニウム18水和物〔50%溶液として(メリーランド州ボルチモアのデルタケミカル社)〕である。SP9232は、パフォーム(PerForm)(登録商標)SP9232〔特定の条件下で製造される歩留り向上剤・液切り助剤(PCT WO03/050152A1を参照)〕であり;PC8138は、パフォームPC8138(ポリアクリルアミドのカチオン性コポリマー)であり;PA8137は、パフォームPC8137(アクリルアミドのアニオン性コポリマー)である。パフォームは、デラウェア州ウィルミントンのハーキュレス社の商標名である。
【表2−1】

【0080】
【表2−2】

【0081】
表2のデータは、会合性ポリマーと澱粉もしくは澱粉誘導体との相乗的な組み合わせを実証している。データはさらに、低電荷のワクシーメイズ澱粉、およびカチオン性澱粉とアニオン性澱粉とのブレンドが好ましいことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙プロセスにおける歩留りと水切れを改良する方法であって、その改良点が、会合性ポリマーと少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体を製紙用スラリーに加えることを含み、前記会合性ポリマーが、式
【化1】

(式中、Bは、1種以上のエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含んだ非イオン性ポリマーセグメントであり;Fは、少なくとも1種のエチレン性不飽和アニオン性モノマーもしくはエチレン性不飽和カチオン性モノマーを含んだポリマーセグメントであり;B:Fのモルパーセント比が99:1〜1:99である)で示される部分を含み、前記会合性ポリマーが、ジブロック高分子界面活性剤もしくはトリブロック高分子界面活性剤から選択される、有効量の少なくとも1種の乳化用界面活性剤によってもたらされる会合特性を有し、前記少なくとも1種のジブロック界面活性剤もしくはトリブロック界面活性剤とモノマーとの比が少なくとも約3:10であり、そして前記少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体が、約0.15%未満の窒素含量を有する澱粉誘導体およびカチオン性澱粉とアニオン性澱粉とのブレンドからなる群から選択される前記方法。
【請求項2】
少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体が、ジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、前記澱粉の誘導体、および前記物質の組み合わせ物、の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の澱粉誘導体が、酸化澱粉、架橋澱粉、エステル化澱粉、アルキル化澱粉、カチオン性澱粉、ジアルデヒド澱粉、およびこれらの組み合わせ物、の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の澱粉誘導体が、少なくとも1種の物理的に変性した澱粉を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ケイ酸質物質を加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ケイ酸質物質が、シリカをベースとする粒子、シリカミクロゲル、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アニオン性コロイダルシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート、ポリケイ酸、およびこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体および会合性ポリマーを、ブレンドとして製紙用スラリーに同時的または逐次的に加える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
会合性ポリマーがアニオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
会合性ポリマーがアクリルアミドを含み、アニオン性モノマーが遊離アクリル酸またはアクリル酸の塩を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
会合性ポリマーがカチオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
会合性ポリマーがアニオン性モノマーとカチオン性モノマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
会合性ポリマーと少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体とを含む組成物であって、前記会合性ポリマーが、式
【化2】

(式中、Bは、1種以上のエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含んだ非イオン性ポリマーセグメントであり;Fは、少なくとも1種のエチレン性不飽和アニオン性モノマーもしくはエチレン性不飽和カチオン性モノマーを含んだポリマーセグメントであり;B:Fのモルパーセント比が99:1〜1:99である)で示される部分を含み、前記会合性ポリマーが、ジブロック高分子界面活性剤もしくはトリブロック高分子界面活性剤から選択される、有効量の少なくとも1種の乳化用界面活性剤によってもたらされる会合特性を有し、前記少なくとも1種のジブロック界面活性剤もしくはトリブロック界面活性剤とモノマーとの比が少なくとも約3:10であり、そして前記少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体が、約0.15%未満の窒素含量を有する澱粉誘導体からなる群、またはカチオン性澱粉とアニオン性澱粉とのブレンドから選択される前記組成物。
【請求項13】
セルロース系繊維をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体が、ジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、前記澱粉の誘導体、および前記物質の組み合わせ物、の少なくとも1種を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種の澱粉もしくは澱粉誘導体が、酸化澱粉、架橋澱粉、エステル化澱粉、アルキル化澱粉、カチオン性澱粉、ジアルデヒド澱粉、およびこれらの組み合わせ物、の少なくとも1種を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
ケイ酸質物質をさらに含む、請求項12に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−544106(P2008−544106A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518118(P2008−518118)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046105
【国際公開番号】WO2007/001470
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(591020249)ハーキュリーズ・インコーポレーテッド (75)
【氏名又は名称原語表記】HERCULES INCORPORATED
【Fターム(参考)】