説明

紙カートン

【課題】簡単な操作でかつ確実に蓋を開けて起立させることのできるトップオープン型の紙カートンを提供すること。
【解決手段】開封部を形成する左右の破断線L2 の終端からそれぞれ折曲げ線αの左右の端部に至る切込み線βにより、折曲げ線αの両側に折曲げ線αよりも後方に且つ破断線L2 よりも外側に突出する舌片24が区画されており、折曲げ線αは外向きに膨らむように湾曲している。折曲げ線αのところをヒンジとして開封部を破断線L2 のところで破って開け、その開封部を把持したまま斜め後側に引っ張ると、折曲げ線αの両端にある舌片24が天面パネル14から簡単に抜けはずれて天面パネル14の上方に位置し、そのまま手を開封部から離すと、開封部を下方に引っ張る力が働き、舌片24が抜けてできた孔の周囲にに舌片24が起立状態で引っ掛かって係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙からなるカートンの技術分野に属し、詳しくは、直方体形状の板紙製容器であって、菓子類を始めとして、化粧品、医薬品、各種小物などを収納して販売する際に好適に用いられる紙カートンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の紙カートンとして、左右の端部を閉じた横置きタイプであって、天面パネルの中央部を蓋として大きく開封してから内容物を取り出すトップオープン型の紙カートンが知られている。すなわち、天面パネルに2筋の破断線を設けておき、この破断線で囲まれた開封部に繋がる摘み片を引き上げることで、天面パネルの中央部を開けて内容物を取り出すようになっている。
【0003】
このタイプの紙カートンは、開封した後で蓋を手で支えていないと、起立状態に保持することができないため、開けたままで内容物を繰り返して取り出すような場合には不便なことから、蓋を起立状態にできるように工夫したカートンが種々知られている。ところが、従来知られている紙カートンでは、蓋を開けたままの状態にするための操作が煩わしいという問題点があったため、本発明者は、この問題点に鑑み、蓋を開けたままの状態にするための操作を容易とした紙カートンを先に提案している(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の紙カートンは、天面パネルに設けた折曲げ線をヒンジとして起伏する開封部を設けてあり、その開封部を形成する左右の破断線の終端からそれぞれ折曲げ線の左右の端部に至る切込み線により、折曲げ線の両側に折曲げ線よりも後方に突出する舌片を区画し、さらに、折曲げ線より後方にて両方の舌片の後側を結ぶ状態で折曲げ線とほぼ平行な補助折線を設けた構成をしている。
【0005】
そして、折曲げ線をヒンジとして開封部を破断線のところで破って開け、その開封部を把持したまま斜め後側に引っ張ると、天面パネルにおける折曲げ線より後側の部分が補助折線のところで曲がることで開封部が上方に伸び、折曲げ線の両側にある舌片が天面パネルの残った部分の上側になり引っ掛かって係止するので、蓋の開度を180度としなくても、斜め後側に引っ張るだけで容易に開いた状態でロックすることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−7011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の紙カートンは、上記したように、簡単な開封操作で蓋を起立状態で保持させることができるという利点がある。しかしながら、折曲げ線とその後側にある補助折線との折れ角の違いにより、舌片の係止位置が定まらず、場合によっては係止しないことがあった。特に、蓋の開閉を何度か繰り返すと、折曲げ線と補助折線の折れ方に違いが生じ、単に蓋を開けただけでは舌片が係止しない場合があった。また一方では、サック貼り状態から起こして製函するときに、胴部を角筒状に起こすための折線に近い補助折線に折れが生じるという問題点もあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な操作でかつ確実に蓋を開けて起立させることのできるトップオープン型の紙カートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る紙カートンは、天面パネルの後寄りに設けた折曲げ線のところをヒンジとして起伏する開封部を設けてなるトップオープン型の紙カートンであって、開封部を形成する左右の破断線の終端からそれぞれ折曲げ線の左右の端部に至る切込み線により、折曲げ線の両側に折曲げ線よりも後方に且つ破断線よりも外側に突出する舌片が区画されており、折曲げ線は外向きに膨らむように湾曲していることを特徴とする。
【0010】
そして、上記の紙カートンにおいて、折曲げ線はミシン目からなることが好ましいものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紙カートンは、折曲げ線のところをヒンジとして開封部を破断線のところで破って開け、その開封部を把持したまま斜め後側に引っ張ると、折曲げ線が外向きに膨らむように湾曲しているので、折曲げ線の両端にある舌片が天面パネルから簡単に抜けはずれて天面パネルの上方に位置し、そのまま手を開封部から離すと、開封部を下方に引っ張る力が働き、舌片が抜けてできた孔の周囲にに舌片が起立状態で引っ掛かって係止するので、開封部の開度を180度としなくても、斜め上方に引っ張るだけで確実に開いた状態でロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る紙カートンの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す紙カートンを組み立てるブランクの展開図である。
【図3】図2に示すブランクにおける天面パネルの右側の一部を拡大して示す拡大図である。
【図4】図2に示すブランクにおける天面パネルに形成した右側の破断線の一部を拡大した説明図である。
【図5】図1に示す紙カートンをその天面を開けた状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る紙カートンの一例を示すもので、この紙カートンは図2に示すブランクを組み立てて形成されている。
【0014】
図2のブランクは、紙器用の板紙を打ち抜いて形成されたもので、図示の如く、押罫からなる折線a,b,c,dを介して前面パネル11、底面パネル12、背面パネル13、天面パネル14、フラップパネル15が順次連設されている。そして、底面パネル12の左右辺には折線e,fを介してそれぞれ底面側の側面パネル16,17が連設され、背面パネル13の左右辺には折線g,hを介してそれぞれ折込みフラップ18,19が連設され、天面パネル14の左右辺には折線i,jを介してそれぞれ天面側の側面パネル20,21が連設され、フラップパネル15の左右辺には折線k,lを介してそれぞれ折込みフラップ22,23が連設されている。
【0015】
フラップパネル15には、ツナギのある切込みにより先端中央に摘み部分15aが区画されており、その摘み部分15aには、折れ曲がりやすいように中央に押罫からなる罫線mが設けられている。そして、摘み部分15の2箇所の根元を起点として末広がり状に延びる開封用の2筋の破断線L1 が形成されており、天面パネル14には、これら2筋の破断線L1 にそれぞれ連続して同じく開封用の破断線L2 がそれぞれ側辺と平行に背面パネル13の近いところまで形成されている。
【0016】
天面パネル14には、左右の側辺寄りに破断線L2 が形成されているとともに、背面パネル13寄りのところに開封部のヒンジとなる折曲げ線αが左右の破断線L2 の内側に位置する長さで形成されており、左右の破断線L2 とこの折曲げ線αとで囲まれる領域が開封領域(開封部)を形成している。
【0017】
天面パネル14における左右の破断線L2 は、それぞれフラップパネル15側から背面パネル13側に向かって折曲げ線αの手前に至るまで設けられ、その破断線L2 に繋がり外側に凸状に膨らんで折曲げ線αの端部に至る切込み線βが形成されており、その切込み線βにより折曲げ線αの両側に折曲げ線αよりも後方に突出し且つ破断線L2 よりも外側に突出する舌片24が区画されている。そして、開封部のヒンジとなる折曲げ線αは、真っ直ぐな押罫ではなく、僅かに外向きに膨らむように湾曲した状態で、しかも折れ曲がりやすいようにミシン目で形成されている。
【0018】
フラップパネル15の破断線L1 と天面パネル14の破断線L2 は、いずれも連続する複数の切込みからなっている。このうち、フラップパネル15における2筋の破断線L1 は、末広がり状に形成されており、開封時には各切込みに対して内向きの力が掛かって破断されるため、図示のように、破断方向で見て後側が内向きに折れ曲がった形状の切込みを連続させ、破断が途切れないようにしている。
【0019】
一方、天面パネル14における左右の破断線L2 は、連続する複数の切込みが側辺と平行に一列に配列されたものである。そして、図3に右側の破断線L2 の全体を示しているが、図4にその破断線L2 の一部を拡大して示すように、これらの切込みyは、破断方向(矢印方向)と同一方向の主体部y1 と、主体部y1 の破断方向の後端Bから鈍角で斜め外側に突き出た前方屈曲部y2 と、主体部y1 の破断方向の前端Cから鈍角で斜め外側に突き出た後方屈曲部y3 とからなっており、前方屈曲部y2 の先端Aの位置が、後方屈曲部y3 の先端Dの位置より外側にあり、後方屈曲部y3 の延長線が前方屈曲部y2 に突き当たるように、前方屈曲部y2 と後方屈曲部y3 の角度と長さが決められている。さらに、サック貼り工程で、ブランク同士が擦れることで切込みyがささくれ立つことを防止するため、主体部y1 のほぼ中央にツナギuが残されている。
【0020】
前面パネル11には、フラップパネル15の摘み部分15aに対応する位置に差込み部11aが形成されており、組み立てられた紙カートンの開封後において、この差込み部11aに開封部先端の摘み部分15aを差し込んで係止できるようになっている。ここでは、一辺に2箇所のツナギを残した概略矩形状の切込により差込み部11aが区画されており、差込み部11aを押すとツナギのある一辺をヒンジとして撓むことで、摘み部分15aの差込みを容易としている。
【0021】
また、前面パネル11と底面パネル12の境界には、開封時に摘み部分15aに対する指掛けを容易とする窪みを形成するため、折線aの途中に押罫を紡錘形とした凹部形成領域11bが設けられている。なお、この紡錘形の凹部形成領域11bは、前面パネル11側をミシン目として、製函時において前面パネル11と底面パネル12の境界を折り曲げやすくしている。
【0022】
図2のブランクは、前面パネル11の表側にフラップパネル15の裏側を貼り合わせたサック貼り状態とされる。このとき、開封部を除いた部分、すなわち破断線L1 より外側の領域で糊付けする。そして、このサック貼りされたものが複数枚をまとめて製函工程へと送られる。
【0023】
サック貼り状態のブランクから紙カートンを組み立てるには、まず、折り畳んだブランクを角筒状に起こした後、一方の端面側で、折込みフラップ19,23をそれぞれ内側に折り曲げてから、底面側の側面パネル17と天面側の側面パネル21を順次折り曲げて貼り合わせる。
【0024】
このように一方の端面だけを閉じた状態で他方の開いた方から内容物を投入する。そして、他方の端面側で、折込みフラップ18,22をそれぞれ内側に折り曲げてから、底面側の側面パネル16と天面側の側面パネル20を順次折り曲げて貼り合わせる。これにより図1に示す紙カートンが製函される。
【0025】
図1に示す紙カートンから内容物を取り出すに際しては、図5に示すように天面を開ける。このように、紙カートンの天面を開けるには、前面パネル11の下端にある凹部形成領域11bでできた窪みを利用し、フラップパネル15の摘み部分15aを指で把持して引っ張る。このように摘み部分15aを引っ張ることでフラップパネル15の2筋の破断線L1 を破断し、そのまま上方から後方にかけて引っ張ることで天面パネル12の左右の破断線L2 をそれぞれ破断線L1 に連続して破断しながら、破断された開封部を折曲げ線αのところをヒンジとして回動しつつ蓋として開ける。
【0026】
そして、フラップパネル15と天面パネル14の開封部を把持したまま斜め後側に引っ張る。すると、ヒンジである折曲げ線αが外向きに膨らむように湾曲しているので、折曲げ線αの両端にある舌片24が天面パネル14から簡単に抜けはずれて天面パネル14の上方に位置し、そのまま手を開封部から離すと、開封部を下方に引っ張る力が働き、舌片24が抜けてできた孔の周囲に舌片24が起立状態で引っ掛かって係止し、図5に示すように、紙カートンは上部に大きな取出し口が形成され、蓋は後側に少し傾いて開いた状態となる。なお、図5では内容物を省略して図示している。
【0027】
このように開封した後、開けた蓋の部分を斜め上方に持ち上げて舌片24の係止を外し、そのまま前方に倒してから、摘み部分15aを前面パネル11の差込み部11aに差し込んで係止することにより蓋を閉じることができる。
【0028】
図5に示す開封状態では、持ち上げた開封部の周囲に破断線L2 の破断で生じる三角状の突起が残り、天面パネル14に形成された開口の周囲には突起が残らない。すなわち、破断線L2 の破断は、切込みyの主体部y1 の後端から斜め外側に突き出た後方屈曲部y3 の先端Dから、それより先端Aが外側にある次の切込みyの前方屈曲部y2 までの間が繋がることで進行するので、破断が確実に行われるとともに、開封部が開いた後に形成される開口の周縁は三角状の凹みが連続した状態になる。したがって、開口に手を入れて内容物を取り出すときにその手が引っ掛かるようなことがない。
【0029】
以上、本発明を実施するための形態について詳細に説明してきたが、本発明による紙カートンは、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは当然のことである。
【符号の説明】
【0030】
11 前面パネル
11a 差込み部
11b 凹部形成領域
12 底面パネル
13 背面パネル
14 天面パネル
15 フラップパネル
15a 摘み部分
16,17 側面パネル
18,19 折込みフラップ
20,21 側面パネル
22,23 折込みフラップ
24 舌片
1 ,L2 破断線
α 折曲げ線
β 切込み線
a〜l 折線
m 罫線
u ツナギ
y 切込み
1 主体部
2 前方屈曲部
3 後方屈曲部
A 先端
B 後端
C 前端
D 先端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面パネルの後寄りに設けた折曲げ線のところをヒンジとして起伏する開封部を設けてなるトップオープン型の紙カートンであって、開封部を形成する左右の破断線の終端からそれぞれ折曲げ線の左右の端部に至る切込み線により、折曲げ線の両側に折曲げ線よりも後方に且つ破断線よりも外側に突出する舌片が区画されており、折曲げ線は外向きに膨らむように湾曲していることを特徴とする紙カートン。
【請求項2】
折曲げ線はミシン目からなることを特徴とする請求項1に記載の紙カートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76789(P2012−76789A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223633(P2010−223633)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】