紙加工のための組成物および方法
本発明においては、紙またはボール紙を製造するためのプロセスが提供されるが、それに含まれるのは、填料を含んでいてもいなくてもよいセルロース系懸濁液を形成させる工程、そのセルロース系懸濁液を凝集させる工程、スクリーン上でそのセルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程が含まれるが、ここで、そのセルロース系懸濁液が、塩溶液中の、シリカ質物質および有機のカチオン性またはアニオン性のウォータ・イン・ウォータまたは分散体マイクロポリマを、順次または同時に添加することを含む凝集系を使用して凝集される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なマイクロポリマ技術を採用した新規な凝集系を使用する、セルロース系紙料から紙および板紙を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
紙および板紙を製造する際には、セルロース系の低濃度紙料を移動スクリーン(マシンワイヤーと呼ばれることが多い)の上で濾水(drain)して、シートを形成させ、次いでそれを乾燥させる。水溶性ポリマをセルロース系懸濁液に加えて、セルロース系固形物の凝集を起こさせて、移動スクリーン上での濾水性(drainage)を向上させることは周知である。
【0003】
紙の生産性を向上させるために、近代的な製紙機械の多くは、高速で運転されている。機械の速度が高くなった結果、濾水性および製紙成分の歩留り(retention)を向上させる濾水および歩留りシステムが重視されるようになってきた。ポリマ性歩留り助剤(通常、濾水の直前に添加される)の分子量を高くすると、濾水率は上昇するが、地合い(formation)を損なう傾向もあるということは公知である。単一のポリマ性歩留り助剤を添加することによっては、歩留り性、濾水性、乾燥性および地合い性を最適のバランスで得ることは困難となる可能性があるので、2種の異なった物質を、順次または同時に添加することが通常行われる。
【0004】
製紙の際の濾水性および歩留り性を改良するためのさらに最近の試みでは、複数のポリマとシリカ質成分とを使用して、この課題についての変法を使用してきた。それらの系は、複数の成分からなっていてよい。
【0005】
米国特許第4,968,435号明細書(特許文献1)には、懸濁物質の水性分散体を凝集させる方法が記載されており、それに含まれるのは、未膨潤数平均粒子直径が0.5マイクロメートル未満で、溶液粘度が1.2〜1.8センチポワズである、水不溶性で、架橋された、カチオン性のポリマ性凝集剤の水性溶液の分散体固形分が0.1〜50,000パーツ・パー・ミリオンの分散体を、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして4モルパーツ・パー・ミリオン(molar parts per million)を超える架橋剤に添加および混合して、その懸濁物質を凝集させる工程、およびその分散体からその凝集された懸濁物質を分離する工程である。
【0006】
その特許の継続出願である、米国特許第5,152,903号明細書(特許文献2)には、未膨潤数平均粒子直径が0.5マイクロメートル未満で、溶液粘度が1.2〜1.8センチポワズである、水溶性で、架橋された、カチオン性のポリマ性凝集剤の水性溶液の分散体固形分が0.1〜50,000パーツ・パー・ミリオンの分散体を、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして4モルパーツ・パー・ミリオンを超える架橋剤に添加および混合することを含む、懸濁物質の分散体を凝集させる方法が記載されている。
【0007】
米国特許第5,167,766号明細書(特許文献3)にはさらに、水性の紙の完成紙料に、紙の完成紙料固形分の乾燥重量を基準にして0.05〜20ポンド/トンの、イオン性で、有機の、架橋されたポリママイクロビーズを添加することを含む製紙方法が記載されているが、そのマイクロビーズは、750ナノメートル未満の未膨潤粒子直径を有し、少なくとも1%、ただしアニオン性であって単独に使用される場合には少なくとも5%のイオン性を有している。
【0008】
米国特許第5,171,808号明細書(特許文献4)はさらなる例であって、それには、少なくとも1種のモノマの水性溶液を単に重合することにより得られた、架橋されたアニオン性または両性の高分子量マイクロポリマを含む組成物が記載されているが、そのマイクロポリマは、0.75マイクロメートル未満の未膨潤数平均粒子直径と、少なくとも1.1センチポワズの溶液粘度と、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして4〜4000モルパーツ・パー・ミリオン(4 molar parts to 4000 parts per million)の架橋剤含量と、少なくとも5モルパーセントのイオン性とを有している。
【0009】
米国特許第5,274,055号明細書(特許文献5)には、架橋されているならば直径1,000ナノメートル未満の、非架橋ならば直径60ナノメートル未満の、イオン性の有機マイクロビーズを、単独で添加するかまたは高分子量有機ポリマおよび/または多糖類と組み合わせて添加すると、改良された濾水性および歩留り性が得られる、製紙プロセスが記載されている。さらにミョウバンを添加すると、製紙プロセスにおいて使用されるその他の添加剤の有無にかかわらず、製紙紙料における濾水の地合い性と歩留り性とが向上する。
【0010】
米国特許第5,340,865号明細書(特許文献6)には、油相と水相を含む油中水型エマルションを含む凝集剤が記載されており、ここでその油相は、燃料油、灯油、無臭ミネラルスピリッツもしくはそれらの混合物、および総合的なHLBが8〜11の範囲であるもう1種の界面活性剤からなり、その水相は、ミセルの形態であって、40〜99重量部のアクリルアミドと1〜60重量部の、アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル類およびメタクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル類、ならびにそれらの四級塩または酸塩、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド類およびメタクリルアミド類、ならびにそれらの四級塩または酸塩、ならびにジアリルジメチルアンモニウム塩類から選択されるカチオン性モノマから製造された、架橋された、カチオン性、ポリマを含んでいる。そのミセルは、0.1マイクロメートル未満の直径を有し、そのポリマは、1.2〜1.8センチポワズの溶液粘度と、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして10〜1000モルパーツ・パー・ミリオンのN,N−メチレンビスアクリルアミド含量を有している。
【0011】
米国特許第5,393,381号明細書(特許文献7)には、水溶性で分岐状のカチオン性ポリアクリルアミドおよびベントナイトをパルプの繊維質懸濁液に添加することによる、紙またはボール紙の製造プロセスが記載されている。その分岐状のカチオン性ポリアクリルアミドは、溶液重合によって、アクリルアミド、カチオン性モノマ、分岐化剤、および連鎖移動剤の混合物を重合させることにより調製される。
【0012】
米国特許第5,431,783号明細書(特許文献8)には、液状粒子分散体系において、改良された液固分離性能を与える方法が記載されている。その方法には、粒子の乾燥重量を基準にして0.05〜10ポンド/トンの500ナノメートル未満の直径を有するイオン性で、有機の架橋された、複数の微細に分散されたポリママイクロビーズと、同じ基準で0.05〜20ポンド/トンの、ポリエチレンイミン類、変性ポリエチレンイミン類、およびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマ材料とを含む液状系を添加することが含まれる。上述の組成物に加えて、たとえば有機イオン性多糖類のような添加剤をその液状系に組み合わせて、それからの粒子状物質の分離が容易になるようにしてもよい。
【0013】
米国特許第5,501,774号明細書(特許文献9)には、填料入りの紙を製造するためのプロセスが記載されているが、それに含まれるのは、填料(filler)およびセルロース系繊維を含む水性フィード懸濁液を提供する工程、カチオン性凝結剤を添加することによってその懸濁液の中で繊維と填料とを凝結させる工程、その凝結させたフィード懸濁液からなるか、またはそれから生成する高濃度紙料を希釈することによって水性の低濃度紙料懸濁液を製造する工程、その低濃度紙料または、低濃度紙料がそれから形成される高濃度紙料にアニオン性粒子状物質を添加する工程、次いでその低濃度紙料にポリマ歩留り助剤を添加する工程、その低濃度紙料を濾水してシートを形成させる工程、ならびに、そのシートを乾燥させる工程である。
【0014】
米国特許第5,882,525号明細書(特許文献10)には、水を放出させる目的で、溶解度指数(solubility quotient)が30%を超えるカチオン性の分岐状水溶性ポリマを、懸濁固形物の分散体、たとえば製紙用紙料に適用するプロセスが記載されている。そのカチオン性の分岐状水溶性ポリマは、アクリルアミド、カチオン性モノマ、分岐化剤および連鎖移動剤の混合物を重合させることによる、米国特許第5,393,381号明細書(特許文献7)に類似の成分から調製される。
【0015】
米国特許第4,913,775号明細書(特許文献11)には、紙または板紙を製造するプロセスが記載されているが、それに含まれるのは、水性セルロース系懸濁液を形成させる工程、クリーニング、ミキシング、およびポンピングから選択される1段または複数の剪断段階にその懸濁液を通過させる工程、その懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程、およびそのシートを乾燥させる工程、である。濾水される懸濁液には、凝集剤または歩留り助剤である有機ポリマ材料およびベントナイトを含む無機材料が含まれ、その無機材料は、剪断段階の一つの後で、その懸濁液に少なくとも0.03%の量で添加される。その有機ポリマ歩留り助剤または凝集剤には、500,000を超える分子量と、ポリマ1kgあたり少なくとも0.2当量の窒素の電荷密度とを有する、実質的に直鎖の合成カチオン性ポリマが含まれる。その有機ポリマ歩留り助剤または凝集剤は、剪断段階よりは前に、フロックが形成されるような量で懸濁液に添加される。それらのフロックは剪断によって破壊されたマイクロフロックを形成するが、そのマイクロフロックは、剪断によるさらなる分解には抵抗性があり、ベントナイトと相互作用するのに充分なカチオン電荷を担持していて、最後の高剪断よりも後にポリマを単独で添加した場合に得られるよりは、良好な歩留りを与える。このプロセスは、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)によって、ハイドロコール(Hydrocol)の登録商標で商業化されている。
【0016】
米国特許第5,958,188号明細書(特許文献12)にはさらに、デュアル可溶性ポリマプロセスにより製紙するプロセスが記載されているが、そこでは、セルロース系懸濁液(通常、ミョウバンまたはカチオン性凝結剤を含む)を、最初に、高固有粘度(IV)カチオン性合成ポリマまたはカチオン性デンプンを用いて凝集させ、剪断作用を与えてから、その懸濁液を、3デシリットル/グラムよりも高い固有粘度を有し、0.005ヘルツにおけるタンデルタが少なくとも0.5である分岐状アニオン性水溶性ポリマを添加することによって再凝集させている。
【0017】
米国特許第6,310,157号明細書(特許文献13)には、デュアル可溶性ポリマプロセスの記載があり、そこでは、セルロース系懸濁液(通常、ミョウバンまたはカチオン性凝結剤を含む)を、最初に、高IVカチオン性合成ポリマまたはカチオン性デンプンを用いて凝集させ、剪断作用を与えてから、その懸濁液を、3dL/gよりも高いIVを有し、0.005ヘルツにおけるタンデルタ(tan delta)が少なくとも0.5である分岐状アニオン性水溶性ポリマを添加することによって再凝集させている。このプロセスでは、地合い性、歩留り性、および濾水性の組合せが改良されている。
【0018】
米国特許第6,391,156号明細書(特許文献14)には、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙または板紙を製造するためのプロセスが記載されているが、その特徴とするところは、その懸濁液を、クレー、および水溶性エチレン性不飽和アニオン性モノマまたはモノマブレンド物と分岐化剤とから形成させたアニオン性の分岐状水溶性ポリマを含む凝集系を使用して凝集させるが、ここでそのポリマは、(a)1.5dL/gよりも高い固有粘度および/または2.0mPa・sよりも高い塩水ブルックフィールド粘度を有し、(b)0.005ヘルツにおけるタンデルタのレオロジー的振動値が0.7よりも高いか、および/または(c)それに対応する、分岐化剤なしで製造した非分岐状ポリマの塩添加SLV粘度数の少なくとも3倍の脱イオン化SLV粘度数を有している点にある。
【0019】
米国特許第6,454,902号明細書(特許文献15)には、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙を製造するためのプロセスが記載されているが、ここでそのセルロース系懸濁液を、多糖類または固有粘度が少なくとも4デシリットル/グラムの合成ポリマを添加することにより凝集させ、次いでそれに続けて再凝集系を添加することにより再凝集させるが、ここでその再凝集系にはシリカ質物質および水溶性ポリマが含まれている。一つの実施態様においては、そのシリカ質物質を、水溶性ポリマよりも前または同時に添加する。また別の実施態様においては、その水溶性ポリマがアニオン性であって、シリカ質物質よりも前に添加する。
【0020】
米国特許第6,524,439号明細(特許文献16)は、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙または板紙を製造するためのプロセスを提供している。そのプロセスの特徴は、シリカ質物質と未膨潤の粒子直径が750ナノメートル未満の有機ミクロ粒子とを含む凝集系を用いて、その懸濁液を凝集させる点にある。
【0021】
米国特許第6,616,806号明細書(特許文献17)には、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙を製造するためのプロセスが記載されているが、ここでそのセルロース系懸濁液は、a)多糖類またはb)固有粘度が少なくとも4dL/gの合成ポリマから選択される水溶性ポリマを添加することにより凝集させ、次いで再凝集系をそれに続けて添加することによって再凝集させるが、ここでその再凝集系には、i)シリカ質物質およびii)水溶性ポリマが含まれている。一つの態様においては、そのシリカ質物質を、水溶性ポリマよりも前または同時に添加する。それに代わる態様においては、その水溶性ポリマがアニオン性であって、シリカ質物質よりも前に添加する。
【0022】
特開2003−246909号公報(特許文献18)には、特定のカチオン構造単位およびアニオン構造単位を有し塩溶液に可溶性の両性ポリマと、塩溶液に可溶性の特定のアニオン性ポリマを組合せ、それらを塩溶液中で撹拌下に分散重合させることにより製造した、ポリマ分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第4,968,435号明細書
【特許文献2】米国特許第5,152,903号明細書
【特許文献3】米国特許第5,167,766号明細書
【特許文献4】米国特許第5,171,808号明細書
【特許文献5】米国特許第5,274,055号明細書
【特許文献6】米国特許第5,340,865号明細書
【特許文献7】米国特許第5,393,381号明細書
【特許文献8】米国特許第5,431,783号明細書
【特許文献9】米国特許第5,501,774号明細書
【特許文献10】米国特許第5,882,525号明細書
【特許文献11】米国特許第4,913,775号明細書
【特許文献12】米国特許第5,958,188号明細書
【特許文献13】米国特許第6,310,157号明細書
【特許文献14】米国特許第6,391,156号明細書
【特許文献15】米国特許第6,454,902号明細書
【特許文献16】米国特許第6,524,439号明細書
【特許文献17】米国特許第6,616,806号明細書
【特許文献18】特開2003−246909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、濾水性(drainage)、歩留り性および地合いをさらに改良することによって、製紙プロセスをさらに向上させることが依然として必要とされている。さらに、填料含量の高い紙を製造するための、より効果的な凝集系を提供することも必要とされている。それらの改良に、製造装置(make−down equipment)が少なくてすみ、フィード系がより単純で、環境に優しいポリマ、たとえば、揮発性有機化学物質(VOC)が低いかまたは皆無のポリマを使用することが含まれていれば、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の難点および不利な点は、セルロース系懸濁液を形成させる工程と、そのセルロース系懸濁液を凝集させる工程と、スクリーン上でそのセルロース系懸濁液を濾水(drain)させてシートを形成させる工程と、そのシートを乾燥させる工程とを含む紙または板紙を製造するためのプロセスによって緩和されるが、ここで、そのセルロース系懸濁液は、シリカ質物質および有機のアニオン性またはカチオン性のウォータ・イン・ウォータ(water−in−water)または塩分散マイクロポリマを含む凝集系を添加することによって凝集されるが、そのシリカ質物質および有機マイクロポリマは、同時または順次に添加される。それらのウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマが、マイクロポリマのウォータ・イン・ウォータまたは塩分散体の形態ではないマイクロポリマエマルションにおいても、顕著な利点を与えることが見出された。
【0026】
また別の実施態様においては、上述のプロセスによって、紙または板紙が得られる。
【0027】
以下の図面および詳細な説明によって、本発明のさらなる利点を説明し、例示する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】紙および板紙製造プロセスにおいて凝集系の成分を添加することが可能な場所を説明する、製紙プロセスの概略図である。
【図2】非木材パルプ系の完成紙料(non wood containing furnish)についての実施例1の歩留りデータのグラフである。
【図3】非木材パルプ系の完成紙料についての実施例2の歩留りデータのグラフである。
【図4】スーパーカレンダーグレードのための木材パルプ系の完成紙料(wood containing furnish)についての実施例3の歩留りデータのグラフである。
【図5】実施例3におけるようなスーパーカレンダーグレードのための木材パルプ系の完成紙料を再循環させたときの、ダイナミック濾水分析計による濾水応答のグラフである。
【図6】実施例3におけるようなスーパーカレンダーグレードのための木材パルプ系の完成紙料を真空下、ワンパスさせたときの、濾水応答のグラフである。
【図7】実施例4におけるワンパスの際の、濾水応答および歩留り応答のグラフである。
【図8】実施例5におけるワンパスの際の、濾水応答および歩留り応答のグラフである。
【図9】C−Pamおよびベントナイトを組み合わせたものに、CatMP−SSを同時に添加することを示す、実施例6に記載の製紙プロセスを説明する概略図である。
【図10】実施例6において使用されるポリマ添加剤(C−PAMおよびCatMP−SS)の投与量(g/トン)を示す時間経過図である(ベントナイトの量は一定に維持)。
【図11】製紙マシンでのリール速度の経時記録である。
【図12】製紙プロセスにおけるある期間の生産速度を示す図である。
【図13】スチーム/紙(トン)対リール速度によって表した、製紙プロセス総括効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、思いがけないことには、紙または板紙製品の製造において、シリカ質物質と組み合わせて、ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマまたは塩分散マイクロポリマを使用することによって、凝集性が顕著に改良されることを見出した。そのマイクロポリマは有機性であり、カチオン性であってもアニオン性であってもよい。この凝集系を使用すると、シリカ質物質を含まない系や、そのマイクロポリマがウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマの形態ではない系に比較して、歩留り性、濾水性、および地合いにおいて改良が得られる。
【0030】
当業者には公知のように、マイクロポリマは、少なくとも3種の異なった形態、すなわち、エマルション、分散体、およびウォータ・イン・ウォータの形態で得ることができる。
【0031】
エマルションマイクロポリマは、少量の水と連続相としての有機溶媒(通常はオイル)の存在下に反応を起こさせる、重合プロセスによって製造される。その反応剤のモノマは有機溶媒に可溶性であるが、反応生成物のポリマは不溶性である。反応が進行し、生成物のポリマ鎖が長くなるにつれて、それが小さな水滴へと移行し、それらの水滴の中で濃縮される。最終的な反応生成物の粘度が低く、得られるポリマは、典型的には極めて高分子量である。そのエマルションをさらなる水と混合すると、ポリマが転化して(水が連続相となる)、その溶液粘度が極めて高くなる。このタイプのポリマはアニオン性であっても、カチオン性であってもよい。
【0032】
分散体マイクロポリマは沈殿重合プロセスによって製造されるが、その場合、塩溶液が、連続相として、および凝結剤としての両方の役目を果たす。したがって、重合は塩溶液の中で起きるが、塩溶液にはモノマは可溶性であるが、反応生成物のポリマは不溶性である。ポリマが塩溶液の中に不溶性であるために、それが分離した粒子として沈殿し、適切な安定剤を使用すれば懸濁状態に保たれる。その反応生成物の最終的な粘度は低く、そのため取扱いが容易となる。そのプロセスでは、高分子量のポリマを含む均質な(well−defined)粒子が得られる。界面活性剤や有機溶媒(特にオイル)が存在せず、そのポリマは、単に水と混合することによって可溶化される。このタイプのポリマはアニオン性であっても、カチオン性であってもよい。無機塩(凝結剤)と高分子量ポリマとは、相乗的に相互作用する。その系は両性であってもよいが、このことは、その高分子量ポリマがアニオン性の場合には、その無機の鉱物質の凝結剤がカチオン性であるということを意味している。その高分子量ポリマが疎水的に会合性であるのも好ましい。これらのタイプのポリマの記載がある参考文献としては、米国特許第6,605,674号明細書、米国特許第4,929,655号明細書、米国特許第5,006,590号明細書、米国特許第5,597,859号明細書、および米国特許第5,597,858号明細書が挙げられる。
【0033】
ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマは、その反応が水−有機凝結剤混合物(典型的には50:50)の中で起きる重合プロセスによって製造されるが、ここでそれらのモノマおよび反応生成物のマイクロポリマのいずれもが可溶性である。有機凝結剤の例としては、ポリDADMACまたはポリDIMAPAのようなある種のポリアミンが挙げられる。最終的な反応生成物の粘度は高いが、溶液ポリマよりは低く、得られたポリマは典型的には極めて高分子量である。その水−有機凝結剤溶媒系は、粘度抑制剤および凝結剤として機能する。界面活性剤や有機溶媒(オイル)が存在せず、得られるツー・イン・ワン(2−in−1)ポリマは、単に水と混合することによって可溶化される。最終的な反応生成物は、有機液状凝結剤中に溶解された高分子量ポリマのようなものであると考えられる。その低分子量有機ポリマは連続相であり、凝結剤である。その有機凝結剤と高分子量ポリマは、相乗的に相互作用する。このタイプのポリマは、通常カチオン性で、疎水的に会合性である。その高分子量ポリマが疎水的に会合性であるのも好ましい。本明細書で使用するとき「マイクロポリマ」という用語は、「無溶媒」とみなすことができ、低分子量有機溶媒(すなわち、オイル)は存在しない。このタイプのポリマの記載がある参考文献としては、米国特許第5,480,934号明細書および米国特許出願公開第2004/0034145号明細書が挙げられる。
【0034】
したがって、本発明の開示に従えば、紙または板紙を製造するためのプロセスが提供されるが、それに含まれるのは、セルロース系懸濁液を形成させる工程と、そのセルロース系懸濁液を凝集させる工程と、スクリーン上でそのセルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、次いでそのシートを乾燥させる工程とであるが、ここで、そのセルロース系懸濁液は、有機の、アニオン性またはカチオン性のマイクロポリマを含む凝集系とシリカ質物質とを、同時にまたは順次に添加することにより凝集させる。そのマイクロポリマは、ウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマの形態にある。そのマイクロポリマ溶液は、0.2デシリットル/グラム以上、より詳しくは4デシリットル/グラム以上の還元粘度を有している。
【0035】
具体的な例示実施態様においては、紙または板紙を製造するそのプロセスには、水性セルロース系懸濁液を形成させる工程、その水性セルロース系懸濁液を、クリーニング、ミキシング、ポンピングおよびそれらの組合せから選択される1段または複数の剪断段階を通過させる工程、そのセルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程、そしてそのシートを乾燥させる工程が含まれる。シートを形成させるために使用される濾水されたセルロース系懸濁液には、有機の、ウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマ、および無機シリカ質物質を用いて凝集されたセルロース系懸濁液が含まれるが、それらは、剪断段階の一つが済んだあとに、そのセルロース系懸濁液に、乾燥セルロース系懸濁液の全重量を基準にして、少なくとも0.01重量パーセントの量で、同時または順次に添加される。さらに、シートを形成させるために使用される濾水されたセルロース系懸濁液には、有機ポリマ歩留り助剤または500,000原子質量単位以上の分子量を有する実質的に直鎖状の合成カチオン性、ノニオン性、もしくはアニオン性ポリマを含む凝集剤が含まれるが、それは、剪断段階よりも前に、セルロース系懸濁液に対して、そのポリマを添加することによってフロックが形成されるような量で添加され、それらのフロックが剪断によって破壊されてマイクロフロックを形成し、そのマイクロフロックは剪断によるさらなる分解には抵抗性を有しており、そして、シリカ質物質および有機マイクロポリマと相互作用して、高剪断の最後のポイントよりも後に有機マイクロポリマを単独で添加したときに得られる歩留りよりも、良好な歩留りを与えるのに充分な、アニオンまたはカチオン電荷を担持している。
【0036】
いくつかの実施態様においては、1段または複数の剪断段階にセントリスクリーン(centriscreen)が含まれる。セントリスクリーンより前にセルロース系懸濁液にポリマを添加し、セントリスクリーンの後に凝集系(マイクロポリマ/シリカ質物質)を添加する。
【0037】
また別の実施態様においては、1段または複数の剪断段階、たとえばセントリスクリーンを、マイクロポリマとシリカ質物質の凝集系を適用する途中に存在させることもできる。シリカ質物質を、1段または複数の剪断段階の前に適用し、有機マイクロポリマを最後の剪断ポイントより後に適用する。カチオン性、アニオン性もしくはノニオン性のいずれかの電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマの適用を、シリカ質物質よりも前に適用するが、一般的には、最後の剪断ポイントの後で、有機マイクロポリマより前かあるいは有機マイクロポリマと同時かのいずれかで、それを適用するのが好ましい。
【0038】
また別の実施態様においては、1段または複数の剪断段階、たとえばセントリスクリーンを、マイクロポリマとシリカ質物質の凝集系を適用する途中に存在させることもできる。有機マイクロポリマを、1段または複数の剪断段階の前に適用し、シリカ質物質を最後の剪断ポイントより後に適用する。カチオン性、アニオン性もしくはノニオン性のいずれかの電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマの適用を、シリカ質物質よりも前、好ましくは1段または複数の剪断段階の前に適用するが、それには、有機マイクロポリマと同時の添加が含まれていてもよい。
【0039】
本明細書に開示された凝集系には、最小限でも、シリカ質物質と組み合わせて、有機のアニオン性またはカチオン性の、ウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマ溶液が含まれる。先に述べたように、そのようなマイクロポリマには、低分子量の有機凝結剤または無機塩凝結剤のいずれかが含まれる。それらのマイクロポリマ分散体(有機凝結剤および無機塩凝結剤の両方)は、低分子量有機溶媒(すなわち、オイル)がまったく存在しない「無溶媒」とみなすこともできる。したがって、両方のタイプのマイクロポリマ分散体は、揮発性有機化合物(VOC)およびアルキルフェノールエトキシレート(APE)を実質的に含まない。一つの実施態様においては、その分散体はVOCおよびAPEを含まない。その有機マイクロポリマは、直鎖状のポリマおよび/または短鎖で分岐状のポリマの混合物であってもよい。その有機マイクロポリマの水性溶液は、0.2デシリットル/グラム(dL/g)以上、特には4dL/g以上の還元粘度を有している。その有機マイクロポリマは、0.5センチポワズ(ミリパスカル・秒)以上の溶液粘度を示し、5.0パーセント以上のイオン性を有している。それらは、液状で水性のカチオン性またはアニオン性ポリマであって、典型的には、5〜75%モルパーセントの間の電荷密度と、2〜70%の間の固形分含量と、水中1%で10〜20,000mPa秒の間の粘度とを有している。一つの有利な構成においては、その有機ウォータ・イン・ウォータ分散体のマイクロポリマが疎水的に会合する。また別の実施態様においては、塩分散体のマイクロポリマが疎水的に会合する。理論にとらわれることなく言えば、それらの会合または相互作用が極めて高度な構造化ポリマを与え、三次元のマイクロネットワークを作り出していると考えられ、そこではいずれのタイプの分散体におけるポリマ粒子も、ジム(Zimm)分析で求めて、10〜150ナノメートル(nm)、特には10〜100nm、さらに特には約50nmのサイズ剤であると推測される。その構造が、ポリマ成分を化学的に架橋することなく作り出されているので、そのポリマの電荷は極めて接近しやすく、そのため反応性が高くなる。したがって、一つの実施態様においては、そのマイクロポリマが化学的に架橋されていない。また別の実施態様においては、そのマイクロポリマが高度に構造化されたポリマであって、極めてわずかな直鎖性しか示さない。さらにまた別な実施態様においては、特に有機ウォータ・イン・ウォータ分散体のそのアニオン性ポリマが、0.005Hzで、0.7を超えるタンデルタ、および0.5を超えるデルタ値を有することができる。さらにまた別な実施態様においては、特に無機塩分散体のそのアニオン性ポリマが、0.005Hzで、0.7を超えるタンデルタ、および0.5を超えるデルタ値を有することができる。いくつかの好適なポリマの合成法が、米国特許第5,480,934号明細書、欧州特許第0664302B1号明細書、欧州特許第0674678B1号明細書、および欧州特許第624617B1号明細書に記載されている。
【0040】
ひとつの一般的手順においては、無機鉱物質凝結剤の塩または有機凝結剤の溶液中でモノマの水性混合物の重合を開始させて、有機マイクロポリマを形成させることによって好適なマイクロポリマを調製することができる。具体的には、有機マイクロポリマは、多価のイオン性塩または低分子量有機凝結剤の水性溶液中で、少なくとも2モルパーセントのカチオン性またはアニオン性モノマを含むモノマ混合物を重合させることによって調製する。その重合は、モノマの全重量を基準にして、1〜30重量パーセントの分散剤ポリマを含むことが可能な水性溶液の中で実施されるが、その分散剤ポリマは、水溶性のアニオン性またはカチオン性のポリマであって、それは多価のイオン性塩または有機凝結剤の水性溶液の中に溶解可能である。
【0041】
その多価のイオン性凝結剤の塩は、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、たとえばクロリド、またはそれらの組合せ、特に硫酸アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウム(PAC)とすることができる。その低分子量有機凝結剤は、4dL/g未満の固有粘度を有し、一つまたは複数の官能基、たとえば、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン、スルフェートエステル、アミノ、アミド、イミノ、三級アミノおよび/または四級アンモニウム基を有している。その有機凝結剤は、なかでも、ポリアミン、たとえば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリ(DADMAC)、およびポリ(DIMAPA)とすることができる。
【0042】
その重合性モノマはエチレン性不飽和であって、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウムなど、および前述のモノマの少なくとも一つを含む組合せからなる群より選択することができる。
【0043】
米国特許第5,480,934号明細書に記載されているようにして、一つの具体的な実施態様においては、低粘度で水溶性の高分子量ウォータ・イン・ウォータポリマ分散体を以下の工程によって調製する。(i)少なくとも1種のポリマ分散剤(D)の存在下に99〜70重量%の水溶性モノマ(a1)、1〜30重量%の疎水性モノマ(a2)および場合によっては0〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%の両親媒性モノマ(a3)を含む組成物を重合させ、それによってポリマ(A)の分散体を調製する工程;および(ii)その分散体に対して水性溶液中、少なくとも1種のポリマ分散剤(D)を添加する第二の工程である。
【0044】
水溶性モノマ(a1)は、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムなど、さらにはアクリル酸、メタクリル酸、および/または(メタ)アクリルアミド類、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、およびN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどであってよい。タイプ(a1)のモノマのさらに他の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルクロリド、(メタ)アクリル酸3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルクロリド、および(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシル−3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルクロリド、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミドクロリドなどが挙げられる。モノマ成分(a1)としてはさらに、水溶性ポリマを与えることが可能なエチレン性不飽和モノマ、たとえば、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、スチレンスルホン酸、N−ビニルイミダゾール、塩化ジアリルジメチルアンモニウムなども挙げられる。(a1)として列記した水溶性モノマの内の異種のものを組み合わせることも可能である。(メタ)アクリルアミド類の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第15巻、p.346〜276、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、1981を参照されたい。(メタ)アクリル酸アンモニウム塩の調製に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)、第15巻、p.346〜376、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、1987を参照されたい。
【0045】
疎水性モノマ(a2)の例としては、エチレン性不飽和化合物、たとえば、スチレン、アルファ−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ビニルトルエン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロオクタン、イソブテン、2−メチルブテン−1、ヘキセン−1、2−メチルヘキセン−1、2−プロピルヘキセン−1、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−メチルフェニル、(メタ)アクリル酸4−メトキシフェニルなどが挙げられる。その他の疎水性モノマ(a2)としては、エチレン、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、塩化ビニルまたはその他の重合性二重結合を有する主として(アリール)脂肪族の化合物などが挙げられる。異種の疎水性モノマ(a2)を組み合わせて使用することも可能である。
【0046】
任意成分の両親媒性モノマ(a3)は、共重合性エチレン性不飽和化合物、たとえば、親水性基、たとえばヒドロキシル基、ポリエチレンエーテル基、または四級アンモニウム基、ならびに疎水性基、たとえばC8〜32アルキル、アリール、またはアリールアルキル基を含む、アクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。両親媒性モノマ(a3)の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第1巻、p.330〜354(1978)および第15巻、p.346〜376(1981)、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)を参照されたい。異種の両親媒性モノマ(a3)を組み合わせて使用することも可能である。
【0047】
ポリマ分散剤(D)の例は、5×105ダルトン未満の平均分子量(重量平均、Mw)を有する高分子電解質、または分散されたポリマ(A)とは相溶しないポリアルキレンエーテル類である。そのポリマ分散剤(D)は、その化学組成においても、またその平均分子量Mwにおいても、モノマ混合物(A)からなる水溶性ポリマとは大幅に異なっている。ポリマ分散剤の平均分子量Mwは、103〜5×105ダルトンの範囲、好ましくは104〜4×105ダルトンの範囲にある(Mwの測定に関しては、H.F.マーク(H.F.Mark)ら、エンサイクロペディア・オブ・ポリマ・サイエンス・アンド・テクノロジ(Encyclopedia of Polymer Science and Technology)、第10巻、p.1〜19、J.ワイリー(J.Wiley)、1987を参照されたい)。
【0048】
ポリマ分散剤(D)には、エーテル−、ヒドロキシル−、カルボキシル−、スルホン−、スルフェートエステル−、アミノ−、アミド−、イミノ−、三級アミノ−および/または四級アンモニウム基、からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が含まれる。ポリマ分散剤(D)の例としては、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとからのコポリマ、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリビニル−2−メチルスクシンイミド、ポリビニル−l,3−オキサゾリドン−2、ポリビニル−2−メチルイミダゾリン、さらには上述のポリマのモノマ単位の組合せから離れて、以下のモノマ単位すなわち、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩または(メタ)アクリルアミド化合物を含む、コポリマなどが挙げられる。
【0049】
具体的なポリマ分散剤(D)としては、ポリアルキレンエーテル類、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリブチレン−1,4−エーテルが挙げられる。ポリアルキレンエーテル類の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第18巻、p.616〜670、1982、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)を参照されたい。特に好適なポリマ分散剤(D)としては高分子電解質が挙げられるが、そのようなものとしては、(メタ)アクリル酸の塩のようなモノマ単位、アニオン性のモノマ単位または塩化メチルで四量化された誘導体、たとえば、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、N,N−ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアミド、およびN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを含むポリマが挙げられる。ポリマ分散剤として特に好適なのは、5×104〜4×105ダルトンの間の平均分子量Mwを有するポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(ポリ−DADMAC)である。高分子電解質の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第18巻、p.495〜530、1982、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)を参照されたい。さらに、103ダルトン未満の分子量を有する低分子量乳化剤を、ポリマ分散体を基準にして0〜5重量%の量で使用することもできる。
【0050】
これらおよびその他の無溶媒ポリマも、そのモノマの数、タイプ、濃度とは関係なく、本発明の範囲内で加えられる。本発明には、乾燥させて粉体としたカチオン性およびアニオン性の有機マイクロポリマが含まれる。
【0051】
シリカ質物質は、アニオン性のマイクロ微粒子またはナノ微粒子シリカ系の物質である。そのシリカ質物質は、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイト、ラポナイト、セピオライトなどからなる群より選択される。前述のシリカ質物質を少なくとも1種含む組合せを使用することもできる。シリカ質物質はさらに、シリカ系粒子、シリカミクロゲル、コロイダルシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート、アルミノシリケート、ポリアルミノシリケート、ボロシリケート、ポリボロシリケート、ゼオライト、膨潤性クレーなど、ならびに前述のシリカ質物質を少なくとも1種の組合せからなる群より選択される物質のいずれであってもよい。ベントナイト−タイプのクレーも使用することができる。ベントナイトは、粉体またはスラリーの形状のいずれかのアルカリ金属ベントナイトとして加えてもよい。ベントナイトは、アルカリベントナイト、たとえばナトリウムベントナイト、あるいはアルカリ土類金属塩、たとえばカルシウムもしくはマグネシウム塩のいずれかとして天然に産出する。
【0052】
それら凝集系の成分を、セルロース系懸濁液の中に、順次または同時に導入する。シリカ質物質と高分子量マイクロポリマとを同時に導入するのが好ましい。同時に導入する場合、それらの成分は添加まで別々に保管することもできるし、あるいは予備混合しておくこともできる。順次に導入する場合で、最終的な剪断段階の後に有機マイクロポリマとシリカ質物質の両方をセルロース系懸濁液に適用する時には、シリカ質物質よりも前に有機マイクロポリマをセルロース系懸濁液の中に導入する。
【0053】
また別の実施態様においては、その凝集系には3種の成分が含まれるが、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質を導入するより前に、凝集剤を加えて、そのセルロース系懸濁液を前処理しておく。その前処理用の凝集剤は、アニオン性、ノニオン性、またはカチオン性であってよい。それは合成ポリマであっても天然ポリマであってもよいが、特に水溶性で、実質的に直鎖状または分岐状の有機ポリマである。カチオン性の合成水溶性ポリマの場合、そのポリマは、水溶性のエチレン性不飽和カチオン性モノマからか、あるいは、ブレンド物のモノマの少なくとも一つがカチオン性であるかもしくはカチオン性となりうるようなモノマのブレンド物から、作ることができる。水溶性モノマとは、水100立方センチメートルあたり少なくとも5グラムの溶解度を有するモノマである。カチオン性モノマは、塩化ジアリルジアルキルアンモニウム類、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類のいずれかの酸付加塩または四級アンモニウム塩から選択するのが有利である。そのカチオン性モノマは単独で重合させることもできるし、あるいは水溶性のノニオン性、カチオン性、またはアニオン性モノマと共重合させることもできる。そのようなポリマが少なくとも3デシリットル/グラムの固有粘度を有しているのが有利である。詳しくは、18デシリットル/グラムまでである。より詳しくは、7〜15デシリットル/グラムである。その水溶性のカチオン性ポリマはさらに、20重量パーツ・パー・ミリオンまでの分岐化剤を組み入れることによって、わずかに分岐構造を有するようにすることもできる。アニオン性合成水溶性ポリマの場合には、水溶性モノマ、またはその少なくとも1種のモノマがアニオン性であるかまたはアニオン性となりうるモノマのブレンド物から製造するのがよい。そのアニオン性モノマは単独で重合させてもよいし、あるいは、その他の各種好適なモノマ、たとえば各種の水溶性のノニオン性モノマと共重合させてもよい。そのアニオン性モノマが、エチレン性不飽和カルボン酸またはスルホン酸であれば好ましい。典型的なアニオン性ポリマは、アクリル酸または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸から製造される。水溶性ポリマがアニオン性である場合には、それはアクリル酸(またはその塩)とアクリルアミドとのコポリマである。そのポリマがノニオン性である場合には、それは、各種のポリアルキレンオキシドであるか、あるいは各種の水溶性のノニオン性モノマまたはモノマブレンド物から誘導されるビニル付加ポリマであってよい。典型的な水溶性のノニオン性ポリマは、アクリルアミドホモポリマである。その水溶性有機ポリマは、天然ポリマ、たとえばカチオン性デンプンであっても、あるいは合成カチオン性ポリマ、たとえば、ポリアミン類、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリアミドアミン類、およびポリエチレンイミンであってもよい。前処理用凝集剤は、架橋されたポリマであっても、あるいは架橋されたポリマと水溶性ポリマとのブレンド物であってもよい。前処理用凝集剤は無機物質とすることもできるが、そのようなものとしてはたとえば、ミョウバン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、シリケート化ポリ−塩化アルミニウム、塩化アルミニウム三水化物、およびアルミニウム塩酸塩などが挙げられる。
【0054】
したがって、紙または板紙製造プロセスの一つの具体的な実施態様においては、まず前処理用凝集剤を導入することによって、セルロース系懸濁液を凝集させ、次いで、場合によっては機械的剪断にかけ、次いで有機マイクロポリマとシリカ質物質とを同時に導入することにより再凝集させる。別な方法としては、シリカ質物質を導入してから有機マイクロポリマを導入するか、あるいは有機マイクロポリマを導入してからシリカ質物質を導入するかの方法で、セルロース系懸濁液を再凝集させる。
【0055】
前処理には、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質を添加するよりも前のいずれかのポイントで、前処理用凝集剤をセルロース系懸濁液の中に組み入れることが含まれる。ミキシング段階、スクリーニング段階、またはクリーニング段階のいずれか一つよりは前に、そして場合によっては紙料のセルロース系懸濁液を希釈するより前に前処理用凝集剤を添加するのが、有利となる可能性がある。前処理用凝集剤をミキシングチェストまたはブレンドチェストに添加するか、あるいはさらには、セルロース系懸濁液の構成成分の一つまたは複数、たとえばコートブローク(coated broke)、もしくは填料懸濁液、たとえば沈降炭酸カルシウムスラリーの中に添加するとさらに有利となる可能性がある。
【0056】
さらに別な実施態様においては、その凝集系に4種の凝集剤成分を含むが、それらは、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質、水溶性のカチオン性凝集剤、ならびにノニオン性、アニオン性、またはカチオン性水溶性ポリマであるさらなる凝集剤(flocculent)/凝結剤(coagulant)である。
【0057】
この実施態様においては、その水溶性のカチオン性凝集剤は、たとえば有機の、水溶性で、実質的に直鎖状または分岐状のポリマであって、天然(たとえば、カチオン性デンプン)または合成(たとえば、ポリアミン類、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)類、ポリアミドアミン類、およびポリエチレンイミン類)のいずれであってもよい。それらに代えて、水溶性のカチオン性凝集剤を無機物質とすることもできるが、そのようなものとしてはたとえば、ミョウバン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、シリケート化ポリ−塩化アルミニウム、塩化アルミニウム三水化物、およびアルミニウム塩酸塩などが挙げられる。
【0058】
水溶性のカチオン性凝集剤は水溶性ポリマであるのが有利であり、それらは、比較的に高いカチオン性を有する比較的に低分子量のポリマであってよい。たとえば、そのポリマを、重合させると3デシリットル/グラムまでの固有粘度を有するポリマが得られるような、各種適切なエチレン性不飽和カチオン性モノマのホモポリマとすることができる。塩化ジアリルジメチルアンモニウムのホモポリマがその一例である。その低分子量で高いカチオン性を有するポリマは、アミン類を他の適切な2官能または3官能の化学種と縮合させることによって形成される付加ポリマであってもよい。たとえば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチレンジアミン、エピハロヒドリン、エピクロロヒドリンなどから選択される1種または複数のアミン類、または前述のアミン類の少なくとも1種の組合せを反応させることによって、そのポリマを形成させることができる。そのカチオン性の凝集剤/凝結剤が、水溶性のエチレン性不飽和カチオン性モノマから、またはブレンド物中の少なくとも1種のモノマがカチオン性であるかもしくはカチオン性となりうるようなものであるようなモノマのブレンド物から形成されるポリマであるのが有利である。水溶性モノマとは、水100立方センチメートルあたり少なくとも5グラムの溶解度を有するモノマである。カチオン性モノマは、塩化ジアリルジアルキルアンモニウム類、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類のいずれかの酸付加塩または四級アンモニウム塩から選択するのが有利である。そのカチオン性モノマは単独で重合させることもできるし、あるいは水溶性のノニオン性、カチオン性、またはアニオン性モノマと共重合させることもできる。そのようなポリマが少なくとも3デシリットル/グラムの固有粘度を有しているのが有利である。詳しくは、18デシリットル/グラムまでである。より詳しくは、7〜15デシリットル/グラムである。その水溶性のカチオン性ポリマはさらに、20重量パーツ・パー・ミリオンまでの分岐化剤を組み入れることによって、わずかに分岐構造を有するようにすることもできる。
【0059】
そのさらなる凝集剤/凝結剤は、ノニオン性、両性、アニオン性、またはカチオン性の、繊維およびセルロース系懸濁液のその他の成分の凝集(flocculation)/凝結(coagulation)を起こさせることが可能な、天然または合成の水溶性ポリマである。その水溶性ポリマは、2dL/g以上の固有粘度を有する分岐状または直鎖状のポリマである。それは、天然ポリマ、たとえば、天然デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、または両性デンプンなどであってもよい。別な方法として、それを、好ましくはイオン性の特性を示す、各種の水溶性合成ポリマとすることもできる。カチオン性ポリマの場合には、そのカチオン性ポリマには遊離のアミン基が含まれ、それが、充分に低いpHを有していて遊離のアミン基をプロトン化させるようなセルロース系懸濁液の中に導入すると、カチオン性となる。そのカチオン性ポリマが、恒久的なカチオン電荷、たとえば四級アンモニウム基を担持しているのが有利である。水溶性ポリマは、その一つのモノマが少なくともカチオン性であるかもしくはカチオン性となりうる水溶性のエチレン性不飽和モノマからか、または、少なくとも一つのタイプのアニオン性もしくはカチオン性モノマ、またはカチオン性になりうるかもしくはアニオン性となりえて、両性ポリマが得られるようなものを含むエチレン性不飽和モノマの水溶性のブレンド物から形成させることができる。アニオン性合成水溶性ポリマの場合には、水溶性モノマ、またはその少なくとも1種のモノマがアニオン性であるかまたはアニオン性となりうるモノマのブレンド物から製造するのがよい。ノニオン性の水溶性ポリマの場合には、それは、各種のポリアルキレンオキシドであるか、あるいは各種の水溶性のノニオン性モノマまたはモノマブレンド物から誘導されるビニル付加ポリマであってよい。
【0060】
そのさらなる凝集剤/凝結剤成分は、シリカ質物質、有機マイクロポリマ、または水溶性のカチオン性凝集剤のいずれか一つまたは複数よりも前に、添加するのが好ましい。
【0061】
使用する場合においては、その凝集系の全部の成分を、剪断段階よりも前に添加することができる。その凝集系の最後の成分を、プロセス中で、濾水してシートを形成させる前の実質的に剪断がかからないポイントで、セルロース系懸濁液に添加するのが有利である。したがって、その凝集系の少なくとも一つの成分をセルロース系懸濁液に添加し、次いでその凝集されたセルロース系懸濁液を機械的剪断にかけてフロックを機械的に分断させ、次いで、凝集系の少なくとも一つの成分を濾水よりも前に添加してセルロース系懸濁液を再凝集させるのが有利である。
【0062】
一つの例示的な実施態様においては、第一の水溶性のカチオン性凝集剤ポリマをセルロース系懸濁液に添加し、次いでそのセルロース系懸濁液を機械的に剪断させる。次いで、追加の、分子量がより高い凝結剤/凝集剤を添加してから、そのセルロース系懸濁液を第二の剪断ポイントを通過させて剪断させる。最後に、シリカ質物質と有機マイクロポリマとをセルロース系懸濁液に添加する。
【0063】
有機マイクロポリマとシリカ質物質は、予備混合組成物としてでも、あるいは別個ではあるが同時に添加することもできるが、順次に添加するのが有利である。したがって、セルロース系懸濁液は、有機マイクロポリマ、次にシリカ質物質を添加して再凝集させることができるが、好ましくは、シリカ質物質、次いで有機マイクロポリマを添加することによってセルロース系懸濁液を再凝集させる。
【0064】
凝集系の第一の成分をセルロース系懸濁液に添加し、次いで、その凝集されたセルロース系懸濁液を1段または複数の剪断段階に通すことができる。凝集系の第二の成分を添加して、セルロース系懸濁液を再凝集させ、次いで、その再凝集させた懸濁液をさらなる機械的剪断にかけることもできる。その剪断された再凝集セルロース系懸濁液を、凝集系の第三の成分を添加することによって、さらに凝集させることも可能である。剪断段階をはさんで凝集系の成分を添加する場合には、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質を添加する最後の成分として、プロセスのもはや剪断がかからないであろうポイントで添加するのが有利である。
【0065】
また別の実施態様においては、セルロース系懸濁液に凝集系の成分のいずれかを添加した後では、セルロース系懸濁液に実質的な剪断を一切かけない。シリカ質物質、有機マイクロポリマ、および場合によっては凝結物質すべてを、最後の剪断段階の後で濾水よりも前にセルロース系懸濁液に添加することもできる。そのような実施態様においては、有機マイクロポリマを第一の成分とし、それに続けて凝結物質(添加するならば)のいずれか、次いでシリカ質物質を添加してもよい。しかしながら、他の添加順序を使用することも可能であり、全部の成分、またはシリカ質物質と有機マイクロポリマとだけを添加する。たとえば、一つの構成においては、1段または複数の剪断段階を、マイクロポリマおよびシリカ質物質の凝集系を適用する途中に入れる。たとえば、シリカ質物質を、1段または複数の剪断段階の前に適用し、有機マイクロポリマを最後の剪断ポイントより後に適用する。直鎖状合成ポリマと有機マイクロポリマとが同じような電荷を有しているならば、カチオン性、アニオン性、またはノニオン性電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマを、最後の剪断ポイントの後で、有機マイクロポリマより前もしくは有機マイクロポリマと同時のいずれかで適用することができる。また別な構成においては、有機マイクロポリマを、1段または複数の剪断段階の前に適用し、シリカ質物質を最後の剪断ポイントより後に適用する。カチオン性、アニオン性またはノニオン性の電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマは、シリカ質物質よりも前、好ましくは一つまたは複数の剪断ポイントの前、または同様の電荷であるならば有機マイクロポリマと同時に適用することもできる。
【0066】
図1は、ブレンドチェスト12、マシンチェスト14、およびサイロ16を含む製紙系10を一般的に示した概略図である。第一ファンポンプ17を、サイロ16とクリーナー18との間で使用することができる。材料は続いて脱気器20の中を通る。第二ファンポンプ21は、脱気20とスクリーン(1枚または複数)22との間に位置させることができる。この系にはさらに、ヘッドボックス24、ワイヤー25、およびトレー28が含まれる。プレスセクション30の後に、ドライヤー32、サイズプレス34、カレンダースタック36、そして最後にリール26がある。図1のダイヤグラムにはさらに、製紙プロセスにおける各種のポイントが示してあり、さらなる凝集剤/凝結剤(図中「A」)、前処理凝結剤およびカチオン性水溶性凝結剤(図中、「B」)、有機マイクロポリマ(図中、「C」)、およびシリカ質物質(図中、「D」)をそのプロセスの間に添加することができる。
【0067】
凝集系のそれぞれの成分の好適な量は、製造する紙または板紙の特定の成分、組成などの検討事項に依存するであろうが、以下のガイドラインに従えば余分な実験をしなくても容易に決めることができる。一般的には、シリカ質物質の量は、乾燥繊維のメートルトンあたり0.1〜5.0kg活性成分(kg/MT)、特には0.05〜5.0kg/MTであり、有機マイクロポリマ分散体の量は、0.25kg/MT〜5.0kg/MT、特には0.05〜3.0kg/MTであり、そして凝集剤および凝集剤/分散剤のいずれか一つの量は、0.25〜10.0kg/MT、特には0.05〜10.0kg/MTである。溶液または分散体の中の活性成分のタイプと量が各種異なるので、これらの量はガイドラインであって、限定的なものではないことは理解されたい。
【0068】
本明細書に開示されたプロセスは、填料入りの紙を製造するのにも使用することができる。その製紙紙料には各種好適な量の填料(filler)を含む。いくつかの実施態様においては、そのセルロース系懸濁液には、そのセルロース系懸濁液の乾燥重量を基準にして、50重量パーセントまでの填料、一般的には5〜50重量パーセントの填料、特には10〜40重量パーセントの填料が含まれる。填料の例としては、沈降炭酸カルシウム、摩砕炭酸カルシウム、カオリン、チョーク、タルク、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタンなど、ならびに前述の填料の少なくとも1種を含む組合せが挙げられる。したがって、この実施態様においては、填料入りの紙または板紙を製造するためのプロセスが提供されるが、そこでは、セルロース系懸濁液には填料を含み、またそのセルロース系懸濁液は、先に説明したように、シリカ質物質および有機マイクロポリマを含む凝集系を導入することによって凝集される。他の実施態様においては、そのセルロース系懸濁液に填料を含まない。
【実施例】
【0069】
以下、非限定的な実施例を用いて、本発明をさらに説明する。実施例において使用される成分を、表1に列記する。
【0070】
【表1】
【0071】
<実施例1>
以下の実施例では、製紙において、塩溶液の中でシリカ質物質と分散体マイクロポリマとを組み合わせて使用した場合の利点を説明する。そのシリカ質物質はANNPであり、塩溶液中の分散体マイクロポリマはANMPである。このデータは、アルカリ条件下で、100パーセント化学パルプ系(wood−free)の未塗工上質紙完成紙料(uncoated free sheet furnish)を用いて検討したものである。その完成紙料は、その完成紙料の全重量を基準にして29重量パーセントのレベルで、沈降炭酸カルシウム(PCC)填料を含んでいる。表1に、以下で使用する略号のリストを示している。
【0072】
図2には、第一パスの固形分歩留り(FPR)および第一パスの灰分歩留り(FPAR)の歩留りパラメーターについて、未処理系について観察された改良パーセントとして、歩留りデータを示している。この検討における「PAMなし」の部分では、ANMPとANNPの両方を同時に適用すると、効率が明らかに向上したことが観察される。それらの成分の適用比率が低いところでは、性能の改良が特に顕著である。A−Pamの適用が含まれる評価の部分でも、同様の応答が観察される。さらに、A−Pamの存在下でANMPとANNPとを組み合わせると、灰分および全固形分の両方で歩留り応答が最大になる。その上、これらのデータから、ANMPとANNPとを組み合わせたプログラムでは、所望のレベルの全固形分または灰分の歩留りを得るために必要とされるA−Pamのレベルが、ANMPまたはANNPのいずれかを単独で使用した場合よりも顕著に低くなることがわかる。歩留りを向上させようとしたときに、A−Pamのレベルが低いのは望ましいことであるが、その理由は、これによって、地合いにおよぼすマイナスの影響が最小化されるからである。このことは、完成紙/板紙製品における最大の品質目標である。
【0073】
<実施例2>
以下の例においては、米国特許第6,524,439号明細書に記載されている適用法に従ってアニオン性ポリアクリルアミドの存在下にコロイダルシリカと共に水中油型エマルションマイクロポリマを適用することよりも、アニオン性ポリアクリルアミドの存在下に、コロイダルシリカと共に塩溶液中の分散体マイクロポリマを適用することの方が有利であることを示す。このデータは、アルカリ条件下で、100パーセント化学パルプ系の未塗工上質紙完成紙料を用いて検討したものである。その完成紙料には、PCC填料が13重量パーセントのレベルで含まれている。
【0074】
図3におけるデータは、その塩ベースのマイクロポリマおよびコロイダルシリカを適用することで、最高の歩留り応答が得られることを示している。この化学現象における歩留り効率は、米国特許第6,524,439号明細書に記載されている、架橋されたオイルおよび水エマルションを適用する場合よりも高い。
【0075】
<実施例3>
以下のデータは、アルカリ性条件下でスーパーカレンダー(SC)製紙に使用するための、70重量パーセントのサーモメカニカルパルプ(TMP)、15重量パーセントのグランドウッドパルプ、および15重量パーセントの晒しクラフトパルプを含む木材パルプ系の完成紙料(wood containing furnish)を用いて実施した検討からのものである。その完成紙料には、PCC填料が28重量パーセントのレベルで含まれている。
【0076】
この検討の結果は、歩留りおよび濾水率両方のデータを示している。歩留りデータを図4に示し、それに対して濾水率のデータを図5および図6に示す。これらのデータでは、ANNPを適用し、多価の塩の水性溶液中でカチオン性モノマを含むモノマ混合物を重合させることにより得られるCatMPと共存させたPACおよびC−Pam;ANNPを適用し、多価アニオン性塩の水溶液中でアニオン性モノマを含むモノマ混合物を重合させることにより得られるANMPを共存させたPACおよびC−Pam;および米国特許第6,524,439号明細書の記載に従った、膨潤可能な鉱物質を共存させたC−Pamを扱っている。
【0077】
図4における歩留りデータは、C−Pamの存在下にANNPと共に適用したCatMPを使用した適用における性能の改良は、米国特許第6,524,439号明細書に従ってベントナイトとC−Pamとを使用した適用よりは優れていることを示している。さらに、C−Pamの存在下にANNPと共にANMPを使用する適用は、米国特許第6,524,439号明細書に従った適用を含む適用よりも優れている。
【0078】
図5には、DDAを使用しての濾水性評価の結果を示しているが、ここでその濾液は再循環させて、次の繰り返しで使用している。これは、完全にスケールアップしたプロセスに対しての密接なシミュレーションを与える。この検討においては、再循環の数は4であった。示したパラメーターは、濾水時間とシートの透過性である。図5では、C−PamおよびPACの存在下にANMPをANNPと組み合わせて適用すると、C−PamおよびPACの存在下に単独でANMPを適用するよりも優れた性能が達成されることが示されている。ANMP/ANNPプログラムの濾水性能は、米国特許第6,524,439号明細書に記載されているベントナイトC−Pam適用の場合よりも高い。これは、完成紙料の濾水によって生産速度が制限されている製紙マシンでは望ましいことである。
【0079】
図6では、図5で観察されたのと類似の結果が見られる。図6は、VDTを使用した検討の濾水応答結果を示している。これはワンパスの試験であって、DDAの場合と同様に、濾水の時間速度とシートの透過性を与えている。PACおよびC−Pamの存在下にANNPと組み合わせて適用したANMPは、最も高い濾水速度を与える。この速度は、米国特許第6,524,439号明細書に記載の適用に従った、ベントナイトを使用する膨潤性の鉱物質の適用で達成されるよりも高い。
【0080】
<実施例4>
以下の実施例では、塩溶液中の分散体マイクロポリマを単独またはシリカ質物質と組み合わせて適用すると、C−Pamを単独またはシリカ質物質と組み合わせて適用した場合に比較して、紙およびボール紙製造プロセスにおいて性能が向上することを示す。そのデータは酸性条件下で、新聞用紙製造に使用される木材パルプ系の完成紙料についての検討から得られるものである。その完成紙料には、主としてカオリンである灰分が5重量パーセント含まれている。塩溶液における分散体マイクロポリマは、CatMP−SSである。
【0081】
濾水応答は、改良ショッパー・ライグラー(Schopper Reigler)濾水試験器を用いワンパスで測定し、その一方で、歩留り特性は、ダイナミック濾水ジャーを用いて測定した。この検討の結果を図7に示す。
【0082】
図7におけるデータは、CatMP−SSを単独またはANNPと組み合わせて適用したときに、C−Pamを単独またはANNPと組み合わせて適用した場合に比較して、紙およびボール紙製造プロセスにおける性能が向上することを示している。濾水性および歩留り率の両面において改良が観察される。これらのデータはさらに、剪断のポイントより前に、CatMP−SSを適用するのが有利であることも示している。いかなる特定の理論に拘束されるつもりはないが、観察された改良は、当技術で使用されてきたポリマに比較して、CatMP−SSの中の分岐度の程度と電荷が高いためであろうと考えられる。CatMP−SSに剪断をかけると、高いレベルの電荷が得られ、その効果はポリマがイオン性を再取得することに相当する。それらのデータは、CatMP−SSが100%よりも高いイオン性再取得値を与えることを示唆しているが、そのようなことは、C−Pamのような直鎖状のカチオン性ポリアクリルアミドを使用したのでは不可能である。イオン性を再取得したことで、シリカ質物質、たとえばANNPとの反応性が昂進されるが、後者は、当業者では公知のように、酸性条件下では効率が極めて高いというものではない。図7におけるデータによれば、ANNPをC−Pamに添加した場合には、濾水性および歩留り性応答における正味の改良は取るに足らない。他方、ANNPをCatMP−SSに添加すると、その濾水性および歩留り性応答が20%以上改良される。
【0083】
<実施例5>
以下の実施例では、シリカ質物質を、酸性条件下で塩溶液中の分散体マイクロポリマと組み合わせて使用すると、シリカ質物質を、酸性条件下で、当業者によって普通に使用されているポリマと組み合わせて使用した場合に比較して、メリットが得られることを説明する。そのデータは酸性条件下で、新聞用紙製造に使用される木材パルプ系の完成紙料についての検討から得られるものである。その完成紙料には、主としてカオリンである灰分が5重量パーセント含まれている。濾水歩留りおよび応答は、先に説明したのと同様にして測定した。
【0084】
それらの結果を図8に示す。予想された通り、米国特許第4,913,775号明細書では、ANNPまたはIMP−LをC−Pamに添加することに対して、ベントナイトをC−Pamに添加する方が有利であることを示しているが、その理由は、その系が酸性条件下にあるからである。しかしながら、CatMP−SSをC−Pamとシリカ質物質とを組み合わせたものに添加すると、その濾水性能が、IMP−L系を30%超えて、そしてANNP系を40%超えて向上する。CatMP−SSをC−Pamおよびシリカ質物質と組み合わせたものは、米国特許第4,913,775号明細書に記載されているようなCatMP−SS抜きでC−Pamおよびシリカ質物質を組み合わせたものよりも優れている。この結果は、実施例4において説明したCatMP−SSの優れた点を如実に示している。
【0085】
<実施例6>
以下の実施例では、ベントナイトを、アルカリ性条件下でカチオン性塩分散マイクロポリマと組み合わせて使用したときに得られるメリットを説明する。それらのデータは、填料としてPCCを使用し、アルカリ性条件下でSC製品のために使用される木材パルプ系の完成紙料についての、ミル試験(mill trial)からのものである。その試験の目的は、高坪量(60g/m2より大)と高白色度とを有する新規な紙グレードを開発することであった。その完成紙料には、5〜10重量パーセントの主としてPCCを含む
灰分が含まれていた。その完成紙料は、70〜80%PGW、20〜30%クラフト、15〜25%ブロークである。操作pHが7.2〜7.5、カチオン要求量が−100meq/L、遊離カルシウム含量が100〜200ppmであった。マシンの操作パラメーターは以下の通りであった。Bコンシステンシ=1.5%、白水コンシステンシ=0.6%、FPR=50〜55%、FPAR=30〜35%。現行のマシン上での化学物質は以下のとおりであった。加圧スクリーン後では200〜300グラム/トン(g/t)のカチオン性ポリアクリルアミド、加圧スクリーンの前で3kg/tのベントナイト、PGW絶乾フローを基準に計算して12〜15kg/tのカチオン性デンプン、ブレンドチェストポンプのサクションに添加されるOBAの速度が0〜4kg/t。
【0086】
予想された通り、C−PAMをベントナイトに添加すると、それが完成紙料の濾水特性を改良するために、有利であった。しかしながら、CatMP−SSをC−Pamとベントナイトとの組合せ物に添加すると(ここでは、CatMP−SSをC−PAMと同時に添加した、図9参照)、濾水性能が20%を超えて向上した。図9は、C−Pamおよびベントナイトを組み合わせたものに、CatMP−SSを同時に添加することを示す、実施例6に記載の製紙系100およびプロセスを説明する概略図である。製紙系100に含まれるのは、ミキシングチェスト112、マシンチェスト114、ワイヤーピット116、クリーナー118であり、それに続けての脱気器120、ヘッドボックス124、およびセレクティファイヤー(加圧)スクリーン122である。
【0087】
CatMP−SSをC−Pamおよびシリカ質物質と組み合わせたものは、CatMP−SSなしでC−Pamおよびシリカ質物質と組み合わせたものよりは、はるかに優れていた。それらの結果を図10〜13に示す。図10は、実施例6において使用されるポリマ添加剤(C−PAMおよびCatMP−SS)の投与量(g/トン)を示す時間経過図である(ベントナイトの量は一定に維持)。
【0088】
図11に、65g/m2の坪量を使用した製紙マシンにおけるリール速度を経時的(1年間)に記録したものを示す。実施例6は、200で示す期間に実施した。この図からも判るように、実施例6のプロセスを使用することによって、高重量で均一に高いリール速度が可能となった。
【0089】
図12は、製紙プロセスにおけるある期間の生産速度を示している。図12において、その期間(6ヶ月)には、(300で示す)実施例6のプロセスが含まれている。これからも判るように、その期間の間は、生産速度が高くなっていた。
【0090】
図13に製紙プロセスの総括効率を示しているが、ここで実施例6のデータは400で表している。この場合もまた、この期間の間の効率は極めて良好である。
【0091】
不定冠詞の「a」および「an」は、量的な制限を表すものではなく、関連のものが少なくとも一つは存在しているということを表している。「水溶性」という用語は、水100立方センチメートルあたり少なくとも5グラムの溶解性があることを示している。
【0092】
引用したすべての特許、特許出願、およびその他の文献は、そのすべてを、あたかも全文に言及したかのように、参考として本明細書に組み入れたものとする。
【0093】
いくつかの実施態様を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲から外れることなく、各種の変化を加えることが可能であり、またその要素を均等物と置き換えることが可能であるのは、当業者のよく理解するところであろう。さらに、本発明の基本的な範囲から外れることなく、本発明の教示に対して各種の変更を加えて、特定の状況や物質にあてはめることが可能である。したがって、本発明が、本発明を実施するために考案された最良の態様として開示された特定の実施態様に限定されることはなく、本発明には、添付された特許請求項の範囲に入るすべての実施態様が包含されるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なマイクロポリマ技術を採用した新規な凝集系を使用する、セルロース系紙料から紙および板紙を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
紙および板紙を製造する際には、セルロース系の低濃度紙料を移動スクリーン(マシンワイヤーと呼ばれることが多い)の上で濾水(drain)して、シートを形成させ、次いでそれを乾燥させる。水溶性ポリマをセルロース系懸濁液に加えて、セルロース系固形物の凝集を起こさせて、移動スクリーン上での濾水性(drainage)を向上させることは周知である。
【0003】
紙の生産性を向上させるために、近代的な製紙機械の多くは、高速で運転されている。機械の速度が高くなった結果、濾水性および製紙成分の歩留り(retention)を向上させる濾水および歩留りシステムが重視されるようになってきた。ポリマ性歩留り助剤(通常、濾水の直前に添加される)の分子量を高くすると、濾水率は上昇するが、地合い(formation)を損なう傾向もあるということは公知である。単一のポリマ性歩留り助剤を添加することによっては、歩留り性、濾水性、乾燥性および地合い性を最適のバランスで得ることは困難となる可能性があるので、2種の異なった物質を、順次または同時に添加することが通常行われる。
【0004】
製紙の際の濾水性および歩留り性を改良するためのさらに最近の試みでは、複数のポリマとシリカ質成分とを使用して、この課題についての変法を使用してきた。それらの系は、複数の成分からなっていてよい。
【0005】
米国特許第4,968,435号明細書(特許文献1)には、懸濁物質の水性分散体を凝集させる方法が記載されており、それに含まれるのは、未膨潤数平均粒子直径が0.5マイクロメートル未満で、溶液粘度が1.2〜1.8センチポワズである、水不溶性で、架橋された、カチオン性のポリマ性凝集剤の水性溶液の分散体固形分が0.1〜50,000パーツ・パー・ミリオンの分散体を、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして4モルパーツ・パー・ミリオン(molar parts per million)を超える架橋剤に添加および混合して、その懸濁物質を凝集させる工程、およびその分散体からその凝集された懸濁物質を分離する工程である。
【0006】
その特許の継続出願である、米国特許第5,152,903号明細書(特許文献2)には、未膨潤数平均粒子直径が0.5マイクロメートル未満で、溶液粘度が1.2〜1.8センチポワズである、水溶性で、架橋された、カチオン性のポリマ性凝集剤の水性溶液の分散体固形分が0.1〜50,000パーツ・パー・ミリオンの分散体を、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして4モルパーツ・パー・ミリオンを超える架橋剤に添加および混合することを含む、懸濁物質の分散体を凝集させる方法が記載されている。
【0007】
米国特許第5,167,766号明細書(特許文献3)にはさらに、水性の紙の完成紙料に、紙の完成紙料固形分の乾燥重量を基準にして0.05〜20ポンド/トンの、イオン性で、有機の、架橋されたポリママイクロビーズを添加することを含む製紙方法が記載されているが、そのマイクロビーズは、750ナノメートル未満の未膨潤粒子直径を有し、少なくとも1%、ただしアニオン性であって単独に使用される場合には少なくとも5%のイオン性を有している。
【0008】
米国特許第5,171,808号明細書(特許文献4)はさらなる例であって、それには、少なくとも1種のモノマの水性溶液を単に重合することにより得られた、架橋されたアニオン性または両性の高分子量マイクロポリマを含む組成物が記載されているが、そのマイクロポリマは、0.75マイクロメートル未満の未膨潤数平均粒子直径と、少なくとも1.1センチポワズの溶液粘度と、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして4〜4000モルパーツ・パー・ミリオン(4 molar parts to 4000 parts per million)の架橋剤含量と、少なくとも5モルパーセントのイオン性とを有している。
【0009】
米国特許第5,274,055号明細書(特許文献5)には、架橋されているならば直径1,000ナノメートル未満の、非架橋ならば直径60ナノメートル未満の、イオン性の有機マイクロビーズを、単独で添加するかまたは高分子量有機ポリマおよび/または多糖類と組み合わせて添加すると、改良された濾水性および歩留り性が得られる、製紙プロセスが記載されている。さらにミョウバンを添加すると、製紙プロセスにおいて使用されるその他の添加剤の有無にかかわらず、製紙紙料における濾水の地合い性と歩留り性とが向上する。
【0010】
米国特許第5,340,865号明細書(特許文献6)には、油相と水相を含む油中水型エマルションを含む凝集剤が記載されており、ここでその油相は、燃料油、灯油、無臭ミネラルスピリッツもしくはそれらの混合物、および総合的なHLBが8〜11の範囲であるもう1種の界面活性剤からなり、その水相は、ミセルの形態であって、40〜99重量部のアクリルアミドと1〜60重量部の、アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル類およびメタクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル類、ならびにそれらの四級塩または酸塩、N,N−ジアルキルアミノアルキルアクリルアミド類およびメタクリルアミド類、ならびにそれらの四級塩または酸塩、ならびにジアリルジメチルアンモニウム塩類から選択されるカチオン性モノマから製造された、架橋された、カチオン性、ポリマを含んでいる。そのミセルは、0.1マイクロメートル未満の直径を有し、そのポリマは、1.2〜1.8センチポワズの溶液粘度と、ポリマ中に存在するモノマ単位を基準にして10〜1000モルパーツ・パー・ミリオンのN,N−メチレンビスアクリルアミド含量を有している。
【0011】
米国特許第5,393,381号明細書(特許文献7)には、水溶性で分岐状のカチオン性ポリアクリルアミドおよびベントナイトをパルプの繊維質懸濁液に添加することによる、紙またはボール紙の製造プロセスが記載されている。その分岐状のカチオン性ポリアクリルアミドは、溶液重合によって、アクリルアミド、カチオン性モノマ、分岐化剤、および連鎖移動剤の混合物を重合させることにより調製される。
【0012】
米国特許第5,431,783号明細書(特許文献8)には、液状粒子分散体系において、改良された液固分離性能を与える方法が記載されている。その方法には、粒子の乾燥重量を基準にして0.05〜10ポンド/トンの500ナノメートル未満の直径を有するイオン性で、有機の架橋された、複数の微細に分散されたポリママイクロビーズと、同じ基準で0.05〜20ポンド/トンの、ポリエチレンイミン類、変性ポリエチレンイミン類、およびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマ材料とを含む液状系を添加することが含まれる。上述の組成物に加えて、たとえば有機イオン性多糖類のような添加剤をその液状系に組み合わせて、それからの粒子状物質の分離が容易になるようにしてもよい。
【0013】
米国特許第5,501,774号明細書(特許文献9)には、填料入りの紙を製造するためのプロセスが記載されているが、それに含まれるのは、填料(filler)およびセルロース系繊維を含む水性フィード懸濁液を提供する工程、カチオン性凝結剤を添加することによってその懸濁液の中で繊維と填料とを凝結させる工程、その凝結させたフィード懸濁液からなるか、またはそれから生成する高濃度紙料を希釈することによって水性の低濃度紙料懸濁液を製造する工程、その低濃度紙料または、低濃度紙料がそれから形成される高濃度紙料にアニオン性粒子状物質を添加する工程、次いでその低濃度紙料にポリマ歩留り助剤を添加する工程、その低濃度紙料を濾水してシートを形成させる工程、ならびに、そのシートを乾燥させる工程である。
【0014】
米国特許第5,882,525号明細書(特許文献10)には、水を放出させる目的で、溶解度指数(solubility quotient)が30%を超えるカチオン性の分岐状水溶性ポリマを、懸濁固形物の分散体、たとえば製紙用紙料に適用するプロセスが記載されている。そのカチオン性の分岐状水溶性ポリマは、アクリルアミド、カチオン性モノマ、分岐化剤および連鎖移動剤の混合物を重合させることによる、米国特許第5,393,381号明細書(特許文献7)に類似の成分から調製される。
【0015】
米国特許第4,913,775号明細書(特許文献11)には、紙または板紙を製造するプロセスが記載されているが、それに含まれるのは、水性セルロース系懸濁液を形成させる工程、クリーニング、ミキシング、およびポンピングから選択される1段または複数の剪断段階にその懸濁液を通過させる工程、その懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程、およびそのシートを乾燥させる工程、である。濾水される懸濁液には、凝集剤または歩留り助剤である有機ポリマ材料およびベントナイトを含む無機材料が含まれ、その無機材料は、剪断段階の一つの後で、その懸濁液に少なくとも0.03%の量で添加される。その有機ポリマ歩留り助剤または凝集剤には、500,000を超える分子量と、ポリマ1kgあたり少なくとも0.2当量の窒素の電荷密度とを有する、実質的に直鎖の合成カチオン性ポリマが含まれる。その有機ポリマ歩留り助剤または凝集剤は、剪断段階よりは前に、フロックが形成されるような量で懸濁液に添加される。それらのフロックは剪断によって破壊されたマイクロフロックを形成するが、そのマイクロフロックは、剪断によるさらなる分解には抵抗性があり、ベントナイトと相互作用するのに充分なカチオン電荷を担持していて、最後の高剪断よりも後にポリマを単独で添加した場合に得られるよりは、良好な歩留りを与える。このプロセスは、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)によって、ハイドロコール(Hydrocol)の登録商標で商業化されている。
【0016】
米国特許第5,958,188号明細書(特許文献12)にはさらに、デュアル可溶性ポリマプロセスにより製紙するプロセスが記載されているが、そこでは、セルロース系懸濁液(通常、ミョウバンまたはカチオン性凝結剤を含む)を、最初に、高固有粘度(IV)カチオン性合成ポリマまたはカチオン性デンプンを用いて凝集させ、剪断作用を与えてから、その懸濁液を、3デシリットル/グラムよりも高い固有粘度を有し、0.005ヘルツにおけるタンデルタが少なくとも0.5である分岐状アニオン性水溶性ポリマを添加することによって再凝集させている。
【0017】
米国特許第6,310,157号明細書(特許文献13)には、デュアル可溶性ポリマプロセスの記載があり、そこでは、セルロース系懸濁液(通常、ミョウバンまたはカチオン性凝結剤を含む)を、最初に、高IVカチオン性合成ポリマまたはカチオン性デンプンを用いて凝集させ、剪断作用を与えてから、その懸濁液を、3dL/gよりも高いIVを有し、0.005ヘルツにおけるタンデルタ(tan delta)が少なくとも0.5である分岐状アニオン性水溶性ポリマを添加することによって再凝集させている。このプロセスでは、地合い性、歩留り性、および濾水性の組合せが改良されている。
【0018】
米国特許第6,391,156号明細書(特許文献14)には、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙または板紙を製造するためのプロセスが記載されているが、その特徴とするところは、その懸濁液を、クレー、および水溶性エチレン性不飽和アニオン性モノマまたはモノマブレンド物と分岐化剤とから形成させたアニオン性の分岐状水溶性ポリマを含む凝集系を使用して凝集させるが、ここでそのポリマは、(a)1.5dL/gよりも高い固有粘度および/または2.0mPa・sよりも高い塩水ブルックフィールド粘度を有し、(b)0.005ヘルツにおけるタンデルタのレオロジー的振動値が0.7よりも高いか、および/または(c)それに対応する、分岐化剤なしで製造した非分岐状ポリマの塩添加SLV粘度数の少なくとも3倍の脱イオン化SLV粘度数を有している点にある。
【0019】
米国特許第6,454,902号明細書(特許文献15)には、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙を製造するためのプロセスが記載されているが、ここでそのセルロース系懸濁液を、多糖類または固有粘度が少なくとも4デシリットル/グラムの合成ポリマを添加することにより凝集させ、次いでそれに続けて再凝集系を添加することにより再凝集させるが、ここでその再凝集系にはシリカ質物質および水溶性ポリマが含まれている。一つの実施態様においては、そのシリカ質物質を、水溶性ポリマよりも前または同時に添加する。また別の実施態様においては、その水溶性ポリマがアニオン性であって、シリカ質物質よりも前に添加する。
【0020】
米国特許第6,524,439号明細(特許文献16)は、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙または板紙を製造するためのプロセスを提供している。そのプロセスの特徴は、シリカ質物質と未膨潤の粒子直径が750ナノメートル未満の有機ミクロ粒子とを含む凝集系を用いて、その懸濁液を凝集させる点にある。
【0021】
米国特許第6,616,806号明細書(特許文献17)には、セルロース系懸濁液を形成させ、その懸濁液を凝集させ、スクリーン上でその懸濁液を濾水させてシートを形成させ、次いでそのシートを乾燥させることを含む、紙を製造するためのプロセスが記載されているが、ここでそのセルロース系懸濁液は、a)多糖類またはb)固有粘度が少なくとも4dL/gの合成ポリマから選択される水溶性ポリマを添加することにより凝集させ、次いで再凝集系をそれに続けて添加することによって再凝集させるが、ここでその再凝集系には、i)シリカ質物質およびii)水溶性ポリマが含まれている。一つの態様においては、そのシリカ質物質を、水溶性ポリマよりも前または同時に添加する。それに代わる態様においては、その水溶性ポリマがアニオン性であって、シリカ質物質よりも前に添加する。
【0022】
特開2003−246909号公報(特許文献18)には、特定のカチオン構造単位およびアニオン構造単位を有し塩溶液に可溶性の両性ポリマと、塩溶液に可溶性の特定のアニオン性ポリマを組合せ、それらを塩溶液中で撹拌下に分散重合させることにより製造した、ポリマ分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第4,968,435号明細書
【特許文献2】米国特許第5,152,903号明細書
【特許文献3】米国特許第5,167,766号明細書
【特許文献4】米国特許第5,171,808号明細書
【特許文献5】米国特許第5,274,055号明細書
【特許文献6】米国特許第5,340,865号明細書
【特許文献7】米国特許第5,393,381号明細書
【特許文献8】米国特許第5,431,783号明細書
【特許文献9】米国特許第5,501,774号明細書
【特許文献10】米国特許第5,882,525号明細書
【特許文献11】米国特許第4,913,775号明細書
【特許文献12】米国特許第5,958,188号明細書
【特許文献13】米国特許第6,310,157号明細書
【特許文献14】米国特許第6,391,156号明細書
【特許文献15】米国特許第6,454,902号明細書
【特許文献16】米国特許第6,524,439号明細書
【特許文献17】米国特許第6,616,806号明細書
【特許文献18】特開2003−246909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、濾水性(drainage)、歩留り性および地合いをさらに改良することによって、製紙プロセスをさらに向上させることが依然として必要とされている。さらに、填料含量の高い紙を製造するための、より効果的な凝集系を提供することも必要とされている。それらの改良に、製造装置(make−down equipment)が少なくてすみ、フィード系がより単純で、環境に優しいポリマ、たとえば、揮発性有機化学物質(VOC)が低いかまたは皆無のポリマを使用することが含まれていれば、望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の難点および不利な点は、セルロース系懸濁液を形成させる工程と、そのセルロース系懸濁液を凝集させる工程と、スクリーン上でそのセルロース系懸濁液を濾水(drain)させてシートを形成させる工程と、そのシートを乾燥させる工程とを含む紙または板紙を製造するためのプロセスによって緩和されるが、ここで、そのセルロース系懸濁液は、シリカ質物質および有機のアニオン性またはカチオン性のウォータ・イン・ウォータ(water−in−water)または塩分散マイクロポリマを含む凝集系を添加することによって凝集されるが、そのシリカ質物質および有機マイクロポリマは、同時または順次に添加される。それらのウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマが、マイクロポリマのウォータ・イン・ウォータまたは塩分散体の形態ではないマイクロポリマエマルションにおいても、顕著な利点を与えることが見出された。
【0026】
また別の実施態様においては、上述のプロセスによって、紙または板紙が得られる。
【0027】
以下の図面および詳細な説明によって、本発明のさらなる利点を説明し、例示する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】紙および板紙製造プロセスにおいて凝集系の成分を添加することが可能な場所を説明する、製紙プロセスの概略図である。
【図2】非木材パルプ系の完成紙料(non wood containing furnish)についての実施例1の歩留りデータのグラフである。
【図3】非木材パルプ系の完成紙料についての実施例2の歩留りデータのグラフである。
【図4】スーパーカレンダーグレードのための木材パルプ系の完成紙料(wood containing furnish)についての実施例3の歩留りデータのグラフである。
【図5】実施例3におけるようなスーパーカレンダーグレードのための木材パルプ系の完成紙料を再循環させたときの、ダイナミック濾水分析計による濾水応答のグラフである。
【図6】実施例3におけるようなスーパーカレンダーグレードのための木材パルプ系の完成紙料を真空下、ワンパスさせたときの、濾水応答のグラフである。
【図7】実施例4におけるワンパスの際の、濾水応答および歩留り応答のグラフである。
【図8】実施例5におけるワンパスの際の、濾水応答および歩留り応答のグラフである。
【図9】C−Pamおよびベントナイトを組み合わせたものに、CatMP−SSを同時に添加することを示す、実施例6に記載の製紙プロセスを説明する概略図である。
【図10】実施例6において使用されるポリマ添加剤(C−PAMおよびCatMP−SS)の投与量(g/トン)を示す時間経過図である(ベントナイトの量は一定に維持)。
【図11】製紙マシンでのリール速度の経時記録である。
【図12】製紙プロセスにおけるある期間の生産速度を示す図である。
【図13】スチーム/紙(トン)対リール速度によって表した、製紙プロセス総括効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、思いがけないことには、紙または板紙製品の製造において、シリカ質物質と組み合わせて、ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマまたは塩分散マイクロポリマを使用することによって、凝集性が顕著に改良されることを見出した。そのマイクロポリマは有機性であり、カチオン性であってもアニオン性であってもよい。この凝集系を使用すると、シリカ質物質を含まない系や、そのマイクロポリマがウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマの形態ではない系に比較して、歩留り性、濾水性、および地合いにおいて改良が得られる。
【0030】
当業者には公知のように、マイクロポリマは、少なくとも3種の異なった形態、すなわち、エマルション、分散体、およびウォータ・イン・ウォータの形態で得ることができる。
【0031】
エマルションマイクロポリマは、少量の水と連続相としての有機溶媒(通常はオイル)の存在下に反応を起こさせる、重合プロセスによって製造される。その反応剤のモノマは有機溶媒に可溶性であるが、反応生成物のポリマは不溶性である。反応が進行し、生成物のポリマ鎖が長くなるにつれて、それが小さな水滴へと移行し、それらの水滴の中で濃縮される。最終的な反応生成物の粘度が低く、得られるポリマは、典型的には極めて高分子量である。そのエマルションをさらなる水と混合すると、ポリマが転化して(水が連続相となる)、その溶液粘度が極めて高くなる。このタイプのポリマはアニオン性であっても、カチオン性であってもよい。
【0032】
分散体マイクロポリマは沈殿重合プロセスによって製造されるが、その場合、塩溶液が、連続相として、および凝結剤としての両方の役目を果たす。したがって、重合は塩溶液の中で起きるが、塩溶液にはモノマは可溶性であるが、反応生成物のポリマは不溶性である。ポリマが塩溶液の中に不溶性であるために、それが分離した粒子として沈殿し、適切な安定剤を使用すれば懸濁状態に保たれる。その反応生成物の最終的な粘度は低く、そのため取扱いが容易となる。そのプロセスでは、高分子量のポリマを含む均質な(well−defined)粒子が得られる。界面活性剤や有機溶媒(特にオイル)が存在せず、そのポリマは、単に水と混合することによって可溶化される。このタイプのポリマはアニオン性であっても、カチオン性であってもよい。無機塩(凝結剤)と高分子量ポリマとは、相乗的に相互作用する。その系は両性であってもよいが、このことは、その高分子量ポリマがアニオン性の場合には、その無機の鉱物質の凝結剤がカチオン性であるということを意味している。その高分子量ポリマが疎水的に会合性であるのも好ましい。これらのタイプのポリマの記載がある参考文献としては、米国特許第6,605,674号明細書、米国特許第4,929,655号明細書、米国特許第5,006,590号明細書、米国特許第5,597,859号明細書、および米国特許第5,597,858号明細書が挙げられる。
【0033】
ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマは、その反応が水−有機凝結剤混合物(典型的には50:50)の中で起きる重合プロセスによって製造されるが、ここでそれらのモノマおよび反応生成物のマイクロポリマのいずれもが可溶性である。有機凝結剤の例としては、ポリDADMACまたはポリDIMAPAのようなある種のポリアミンが挙げられる。最終的な反応生成物の粘度は高いが、溶液ポリマよりは低く、得られたポリマは典型的には極めて高分子量である。その水−有機凝結剤溶媒系は、粘度抑制剤および凝結剤として機能する。界面活性剤や有機溶媒(オイル)が存在せず、得られるツー・イン・ワン(2−in−1)ポリマは、単に水と混合することによって可溶化される。最終的な反応生成物は、有機液状凝結剤中に溶解された高分子量ポリマのようなものであると考えられる。その低分子量有機ポリマは連続相であり、凝結剤である。その有機凝結剤と高分子量ポリマは、相乗的に相互作用する。このタイプのポリマは、通常カチオン性で、疎水的に会合性である。その高分子量ポリマが疎水的に会合性であるのも好ましい。本明細書で使用するとき「マイクロポリマ」という用語は、「無溶媒」とみなすことができ、低分子量有機溶媒(すなわち、オイル)は存在しない。このタイプのポリマの記載がある参考文献としては、米国特許第5,480,934号明細書および米国特許出願公開第2004/0034145号明細書が挙げられる。
【0034】
したがって、本発明の開示に従えば、紙または板紙を製造するためのプロセスが提供されるが、それに含まれるのは、セルロース系懸濁液を形成させる工程と、そのセルロース系懸濁液を凝集させる工程と、スクリーン上でそのセルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、次いでそのシートを乾燥させる工程とであるが、ここで、そのセルロース系懸濁液は、有機の、アニオン性またはカチオン性のマイクロポリマを含む凝集系とシリカ質物質とを、同時にまたは順次に添加することにより凝集させる。そのマイクロポリマは、ウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマの形態にある。そのマイクロポリマ溶液は、0.2デシリットル/グラム以上、より詳しくは4デシリットル/グラム以上の還元粘度を有している。
【0035】
具体的な例示実施態様においては、紙または板紙を製造するそのプロセスには、水性セルロース系懸濁液を形成させる工程、その水性セルロース系懸濁液を、クリーニング、ミキシング、ポンピングおよびそれらの組合せから選択される1段または複数の剪断段階を通過させる工程、そのセルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程、そしてそのシートを乾燥させる工程が含まれる。シートを形成させるために使用される濾水されたセルロース系懸濁液には、有機の、ウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマ、および無機シリカ質物質を用いて凝集されたセルロース系懸濁液が含まれるが、それらは、剪断段階の一つが済んだあとに、そのセルロース系懸濁液に、乾燥セルロース系懸濁液の全重量を基準にして、少なくとも0.01重量パーセントの量で、同時または順次に添加される。さらに、シートを形成させるために使用される濾水されたセルロース系懸濁液には、有機ポリマ歩留り助剤または500,000原子質量単位以上の分子量を有する実質的に直鎖状の合成カチオン性、ノニオン性、もしくはアニオン性ポリマを含む凝集剤が含まれるが、それは、剪断段階よりも前に、セルロース系懸濁液に対して、そのポリマを添加することによってフロックが形成されるような量で添加され、それらのフロックが剪断によって破壊されてマイクロフロックを形成し、そのマイクロフロックは剪断によるさらなる分解には抵抗性を有しており、そして、シリカ質物質および有機マイクロポリマと相互作用して、高剪断の最後のポイントよりも後に有機マイクロポリマを単独で添加したときに得られる歩留りよりも、良好な歩留りを与えるのに充分な、アニオンまたはカチオン電荷を担持している。
【0036】
いくつかの実施態様においては、1段または複数の剪断段階にセントリスクリーン(centriscreen)が含まれる。セントリスクリーンより前にセルロース系懸濁液にポリマを添加し、セントリスクリーンの後に凝集系(マイクロポリマ/シリカ質物質)を添加する。
【0037】
また別の実施態様においては、1段または複数の剪断段階、たとえばセントリスクリーンを、マイクロポリマとシリカ質物質の凝集系を適用する途中に存在させることもできる。シリカ質物質を、1段または複数の剪断段階の前に適用し、有機マイクロポリマを最後の剪断ポイントより後に適用する。カチオン性、アニオン性もしくはノニオン性のいずれかの電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマの適用を、シリカ質物質よりも前に適用するが、一般的には、最後の剪断ポイントの後で、有機マイクロポリマより前かあるいは有機マイクロポリマと同時かのいずれかで、それを適用するのが好ましい。
【0038】
また別の実施態様においては、1段または複数の剪断段階、たとえばセントリスクリーンを、マイクロポリマとシリカ質物質の凝集系を適用する途中に存在させることもできる。有機マイクロポリマを、1段または複数の剪断段階の前に適用し、シリカ質物質を最後の剪断ポイントより後に適用する。カチオン性、アニオン性もしくはノニオン性のいずれかの電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマの適用を、シリカ質物質よりも前、好ましくは1段または複数の剪断段階の前に適用するが、それには、有機マイクロポリマと同時の添加が含まれていてもよい。
【0039】
本明細書に開示された凝集系には、最小限でも、シリカ質物質と組み合わせて、有機のアニオン性またはカチオン性の、ウォータ・イン・ウォータまたは塩分散マイクロポリマ溶液が含まれる。先に述べたように、そのようなマイクロポリマには、低分子量の有機凝結剤または無機塩凝結剤のいずれかが含まれる。それらのマイクロポリマ分散体(有機凝結剤および無機塩凝結剤の両方)は、低分子量有機溶媒(すなわち、オイル)がまったく存在しない「無溶媒」とみなすこともできる。したがって、両方のタイプのマイクロポリマ分散体は、揮発性有機化合物(VOC)およびアルキルフェノールエトキシレート(APE)を実質的に含まない。一つの実施態様においては、その分散体はVOCおよびAPEを含まない。その有機マイクロポリマは、直鎖状のポリマおよび/または短鎖で分岐状のポリマの混合物であってもよい。その有機マイクロポリマの水性溶液は、0.2デシリットル/グラム(dL/g)以上、特には4dL/g以上の還元粘度を有している。その有機マイクロポリマは、0.5センチポワズ(ミリパスカル・秒)以上の溶液粘度を示し、5.0パーセント以上のイオン性を有している。それらは、液状で水性のカチオン性またはアニオン性ポリマであって、典型的には、5〜75%モルパーセントの間の電荷密度と、2〜70%の間の固形分含量と、水中1%で10〜20,000mPa秒の間の粘度とを有している。一つの有利な構成においては、その有機ウォータ・イン・ウォータ分散体のマイクロポリマが疎水的に会合する。また別の実施態様においては、塩分散体のマイクロポリマが疎水的に会合する。理論にとらわれることなく言えば、それらの会合または相互作用が極めて高度な構造化ポリマを与え、三次元のマイクロネットワークを作り出していると考えられ、そこではいずれのタイプの分散体におけるポリマ粒子も、ジム(Zimm)分析で求めて、10〜150ナノメートル(nm)、特には10〜100nm、さらに特には約50nmのサイズ剤であると推測される。その構造が、ポリマ成分を化学的に架橋することなく作り出されているので、そのポリマの電荷は極めて接近しやすく、そのため反応性が高くなる。したがって、一つの実施態様においては、そのマイクロポリマが化学的に架橋されていない。また別の実施態様においては、そのマイクロポリマが高度に構造化されたポリマであって、極めてわずかな直鎖性しか示さない。さらにまた別な実施態様においては、特に有機ウォータ・イン・ウォータ分散体のそのアニオン性ポリマが、0.005Hzで、0.7を超えるタンデルタ、および0.5を超えるデルタ値を有することができる。さらにまた別な実施態様においては、特に無機塩分散体のそのアニオン性ポリマが、0.005Hzで、0.7を超えるタンデルタ、および0.5を超えるデルタ値を有することができる。いくつかの好適なポリマの合成法が、米国特許第5,480,934号明細書、欧州特許第0664302B1号明細書、欧州特許第0674678B1号明細書、および欧州特許第624617B1号明細書に記載されている。
【0040】
ひとつの一般的手順においては、無機鉱物質凝結剤の塩または有機凝結剤の溶液中でモノマの水性混合物の重合を開始させて、有機マイクロポリマを形成させることによって好適なマイクロポリマを調製することができる。具体的には、有機マイクロポリマは、多価のイオン性塩または低分子量有機凝結剤の水性溶液中で、少なくとも2モルパーセントのカチオン性またはアニオン性モノマを含むモノマ混合物を重合させることによって調製する。その重合は、モノマの全重量を基準にして、1〜30重量パーセントの分散剤ポリマを含むことが可能な水性溶液の中で実施されるが、その分散剤ポリマは、水溶性のアニオン性またはカチオン性のポリマであって、それは多価のイオン性塩または有機凝結剤の水性溶液の中に溶解可能である。
【0041】
その多価のイオン性凝結剤の塩は、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、たとえばクロリド、またはそれらの組合せ、特に硫酸アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウム(PAC)とすることができる。その低分子量有機凝結剤は、4dL/g未満の固有粘度を有し、一つまたは複数の官能基、たとえば、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン、スルフェートエステル、アミノ、アミド、イミノ、三級アミノおよび/または四級アンモニウム基を有している。その有機凝結剤は、なかでも、ポリアミン、たとえば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリ(DADMAC)、およびポリ(DIMAPA)とすることができる。
【0042】
その重合性モノマはエチレン性不飽和であって、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウムなど、および前述のモノマの少なくとも一つを含む組合せからなる群より選択することができる。
【0043】
米国特許第5,480,934号明細書に記載されているようにして、一つの具体的な実施態様においては、低粘度で水溶性の高分子量ウォータ・イン・ウォータポリマ分散体を以下の工程によって調製する。(i)少なくとも1種のポリマ分散剤(D)の存在下に99〜70重量%の水溶性モノマ(a1)、1〜30重量%の疎水性モノマ(a2)および場合によっては0〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%の両親媒性モノマ(a3)を含む組成物を重合させ、それによってポリマ(A)の分散体を調製する工程;および(ii)その分散体に対して水性溶液中、少なくとも1種のポリマ分散剤(D)を添加する第二の工程である。
【0044】
水溶性モノマ(a1)は、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムなど、さらにはアクリル酸、メタクリル酸、および/または(メタ)アクリルアミド類、たとえば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、およびN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどであってよい。タイプ(a1)のモノマのさらに他の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチル、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルクロリド、(メタ)アクリル酸3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルクロリド、および(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシル−3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルクロリド、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、および3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミドクロリドなどが挙げられる。モノマ成分(a1)としてはさらに、水溶性ポリマを与えることが可能なエチレン性不飽和モノマ、たとえば、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、スチレンスルホン酸、N−ビニルイミダゾール、塩化ジアリルジメチルアンモニウムなども挙げられる。(a1)として列記した水溶性モノマの内の異種のものを組み合わせることも可能である。(メタ)アクリルアミド類の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第15巻、p.346〜276、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、1981を参照されたい。(メタ)アクリル酸アンモニウム塩の調製に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)、第15巻、p.346〜376、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)、1987を参照されたい。
【0045】
疎水性モノマ(a2)の例としては、エチレン性不飽和化合物、たとえば、スチレン、アルファ−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ビニルトルエン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロオクタン、イソブテン、2−メチルブテン−1、ヘキセン−1、2−メチルヘキセン−1、2−プロピルヘキセン−1、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロオクチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−メチルフェニル、(メタ)アクリル酸4−メトキシフェニルなどが挙げられる。その他の疎水性モノマ(a2)としては、エチレン、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、塩化ビニルまたはその他の重合性二重結合を有する主として(アリール)脂肪族の化合物などが挙げられる。異種の疎水性モノマ(a2)を組み合わせて使用することも可能である。
【0046】
任意成分の両親媒性モノマ(a3)は、共重合性エチレン性不飽和化合物、たとえば、親水性基、たとえばヒドロキシル基、ポリエチレンエーテル基、または四級アンモニウム基、ならびに疎水性基、たとえばC8〜32アルキル、アリール、またはアリールアルキル基を含む、アクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。両親媒性モノマ(a3)の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第1巻、p.330〜354(1978)および第15巻、p.346〜376(1981)、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)を参照されたい。異種の両親媒性モノマ(a3)を組み合わせて使用することも可能である。
【0047】
ポリマ分散剤(D)の例は、5×105ダルトン未満の平均分子量(重量平均、Mw)を有する高分子電解質、または分散されたポリマ(A)とは相溶しないポリアルキレンエーテル類である。そのポリマ分散剤(D)は、その化学組成においても、またその平均分子量Mwにおいても、モノマ混合物(A)からなる水溶性ポリマとは大幅に異なっている。ポリマ分散剤の平均分子量Mwは、103〜5×105ダルトンの範囲、好ましくは104〜4×105ダルトンの範囲にある(Mwの測定に関しては、H.F.マーク(H.F.Mark)ら、エンサイクロペディア・オブ・ポリマ・サイエンス・アンド・テクノロジ(Encyclopedia of Polymer Science and Technology)、第10巻、p.1〜19、J.ワイリー(J.Wiley)、1987を参照されたい)。
【0048】
ポリマ分散剤(D)には、エーテル−、ヒドロキシル−、カルボキシル−、スルホン−、スルフェートエステル−、アミノ−、アミド−、イミノ−、三級アミノ−および/または四級アンモニウム基、からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が含まれる。ポリマ分散剤(D)の例としては、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとからのコポリマ、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリビニル−2−メチルスクシンイミド、ポリビニル−l,3−オキサゾリドン−2、ポリビニル−2−メチルイミダゾリン、さらには上述のポリマのモノマ単位の組合せから離れて、以下のモノマ単位すなわち、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩または(メタ)アクリルアミド化合物を含む、コポリマなどが挙げられる。
【0049】
具体的なポリマ分散剤(D)としては、ポリアルキレンエーテル類、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリブチレン−1,4−エーテルが挙げられる。ポリアルキレンエーテル類の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第18巻、p.616〜670、1982、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)を参照されたい。特に好適なポリマ分散剤(D)としては高分子電解質が挙げられるが、そのようなものとしては、(メタ)アクリル酸の塩のようなモノマ単位、アニオン性のモノマ単位または塩化メチルで四量化された誘導体、たとえば、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、N,N−ジメチルアミノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアミド、およびN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを含むポリマが挙げられる。ポリマ分散剤として特に好適なのは、5×104〜4×105ダルトンの間の平均分子量Mwを有するポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)(ポリ−DADMAC)である。高分子電解質の製造に関しては、たとえば、カーク−オスマー(Kirk−Othmer)、エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノロジ(Encyclopedia of Chemical Technology)第3版、第18巻、p.495〜530、1982、ワイリー・インターサイエンス(Wiley Interscience)を参照されたい。さらに、103ダルトン未満の分子量を有する低分子量乳化剤を、ポリマ分散体を基準にして0〜5重量%の量で使用することもできる。
【0050】
これらおよびその他の無溶媒ポリマも、そのモノマの数、タイプ、濃度とは関係なく、本発明の範囲内で加えられる。本発明には、乾燥させて粉体としたカチオン性およびアニオン性の有機マイクロポリマが含まれる。
【0051】
シリカ質物質は、アニオン性のマイクロ微粒子またはナノ微粒子シリカ系の物質である。そのシリカ質物質は、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイト、ラポナイト、セピオライトなどからなる群より選択される。前述のシリカ質物質を少なくとも1種含む組合せを使用することもできる。シリカ質物質はさらに、シリカ系粒子、シリカミクロゲル、コロイダルシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート、アルミノシリケート、ポリアルミノシリケート、ボロシリケート、ポリボロシリケート、ゼオライト、膨潤性クレーなど、ならびに前述のシリカ質物質を少なくとも1種の組合せからなる群より選択される物質のいずれであってもよい。ベントナイト−タイプのクレーも使用することができる。ベントナイトは、粉体またはスラリーの形状のいずれかのアルカリ金属ベントナイトとして加えてもよい。ベントナイトは、アルカリベントナイト、たとえばナトリウムベントナイト、あるいはアルカリ土類金属塩、たとえばカルシウムもしくはマグネシウム塩のいずれかとして天然に産出する。
【0052】
それら凝集系の成分を、セルロース系懸濁液の中に、順次または同時に導入する。シリカ質物質と高分子量マイクロポリマとを同時に導入するのが好ましい。同時に導入する場合、それらの成分は添加まで別々に保管することもできるし、あるいは予備混合しておくこともできる。順次に導入する場合で、最終的な剪断段階の後に有機マイクロポリマとシリカ質物質の両方をセルロース系懸濁液に適用する時には、シリカ質物質よりも前に有機マイクロポリマをセルロース系懸濁液の中に導入する。
【0053】
また別の実施態様においては、その凝集系には3種の成分が含まれるが、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質を導入するより前に、凝集剤を加えて、そのセルロース系懸濁液を前処理しておく。その前処理用の凝集剤は、アニオン性、ノニオン性、またはカチオン性であってよい。それは合成ポリマであっても天然ポリマであってもよいが、特に水溶性で、実質的に直鎖状または分岐状の有機ポリマである。カチオン性の合成水溶性ポリマの場合、そのポリマは、水溶性のエチレン性不飽和カチオン性モノマからか、あるいは、ブレンド物のモノマの少なくとも一つがカチオン性であるかもしくはカチオン性となりうるようなモノマのブレンド物から、作ることができる。水溶性モノマとは、水100立方センチメートルあたり少なくとも5グラムの溶解度を有するモノマである。カチオン性モノマは、塩化ジアリルジアルキルアンモニウム類、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類のいずれかの酸付加塩または四級アンモニウム塩から選択するのが有利である。そのカチオン性モノマは単独で重合させることもできるし、あるいは水溶性のノニオン性、カチオン性、またはアニオン性モノマと共重合させることもできる。そのようなポリマが少なくとも3デシリットル/グラムの固有粘度を有しているのが有利である。詳しくは、18デシリットル/グラムまでである。より詳しくは、7〜15デシリットル/グラムである。その水溶性のカチオン性ポリマはさらに、20重量パーツ・パー・ミリオンまでの分岐化剤を組み入れることによって、わずかに分岐構造を有するようにすることもできる。アニオン性合成水溶性ポリマの場合には、水溶性モノマ、またはその少なくとも1種のモノマがアニオン性であるかまたはアニオン性となりうるモノマのブレンド物から製造するのがよい。そのアニオン性モノマは単独で重合させてもよいし、あるいは、その他の各種好適なモノマ、たとえば各種の水溶性のノニオン性モノマと共重合させてもよい。そのアニオン性モノマが、エチレン性不飽和カルボン酸またはスルホン酸であれば好ましい。典型的なアニオン性ポリマは、アクリル酸または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸から製造される。水溶性ポリマがアニオン性である場合には、それはアクリル酸(またはその塩)とアクリルアミドとのコポリマである。そのポリマがノニオン性である場合には、それは、各種のポリアルキレンオキシドであるか、あるいは各種の水溶性のノニオン性モノマまたはモノマブレンド物から誘導されるビニル付加ポリマであってよい。典型的な水溶性のノニオン性ポリマは、アクリルアミドホモポリマである。その水溶性有機ポリマは、天然ポリマ、たとえばカチオン性デンプンであっても、あるいは合成カチオン性ポリマ、たとえば、ポリアミン類、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリアミドアミン類、およびポリエチレンイミンであってもよい。前処理用凝集剤は、架橋されたポリマであっても、あるいは架橋されたポリマと水溶性ポリマとのブレンド物であってもよい。前処理用凝集剤は無機物質とすることもできるが、そのようなものとしてはたとえば、ミョウバン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、シリケート化ポリ−塩化アルミニウム、塩化アルミニウム三水化物、およびアルミニウム塩酸塩などが挙げられる。
【0054】
したがって、紙または板紙製造プロセスの一つの具体的な実施態様においては、まず前処理用凝集剤を導入することによって、セルロース系懸濁液を凝集させ、次いで、場合によっては機械的剪断にかけ、次いで有機マイクロポリマとシリカ質物質とを同時に導入することにより再凝集させる。別な方法としては、シリカ質物質を導入してから有機マイクロポリマを導入するか、あるいは有機マイクロポリマを導入してからシリカ質物質を導入するかの方法で、セルロース系懸濁液を再凝集させる。
【0055】
前処理には、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質を添加するよりも前のいずれかのポイントで、前処理用凝集剤をセルロース系懸濁液の中に組み入れることが含まれる。ミキシング段階、スクリーニング段階、またはクリーニング段階のいずれか一つよりは前に、そして場合によっては紙料のセルロース系懸濁液を希釈するより前に前処理用凝集剤を添加するのが、有利となる可能性がある。前処理用凝集剤をミキシングチェストまたはブレンドチェストに添加するか、あるいはさらには、セルロース系懸濁液の構成成分の一つまたは複数、たとえばコートブローク(coated broke)、もしくは填料懸濁液、たとえば沈降炭酸カルシウムスラリーの中に添加するとさらに有利となる可能性がある。
【0056】
さらに別な実施態様においては、その凝集系に4種の凝集剤成分を含むが、それらは、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質、水溶性のカチオン性凝集剤、ならびにノニオン性、アニオン性、またはカチオン性水溶性ポリマであるさらなる凝集剤(flocculent)/凝結剤(coagulant)である。
【0057】
この実施態様においては、その水溶性のカチオン性凝集剤は、たとえば有機の、水溶性で、実質的に直鎖状または分岐状のポリマであって、天然(たとえば、カチオン性デンプン)または合成(たとえば、ポリアミン類、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)類、ポリアミドアミン類、およびポリエチレンイミン類)のいずれであってもよい。それらに代えて、水溶性のカチオン性凝集剤を無機物質とすることもできるが、そのようなものとしてはたとえば、ミョウバン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、シリケート化ポリ−塩化アルミニウム、塩化アルミニウム三水化物、およびアルミニウム塩酸塩などが挙げられる。
【0058】
水溶性のカチオン性凝集剤は水溶性ポリマであるのが有利であり、それらは、比較的に高いカチオン性を有する比較的に低分子量のポリマであってよい。たとえば、そのポリマを、重合させると3デシリットル/グラムまでの固有粘度を有するポリマが得られるような、各種適切なエチレン性不飽和カチオン性モノマのホモポリマとすることができる。塩化ジアリルジメチルアンモニウムのホモポリマがその一例である。その低分子量で高いカチオン性を有するポリマは、アミン類を他の適切な2官能または3官能の化学種と縮合させることによって形成される付加ポリマであってもよい。たとえば、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチレンジアミン、エピハロヒドリン、エピクロロヒドリンなどから選択される1種または複数のアミン類、または前述のアミン類の少なくとも1種の組合せを反応させることによって、そのポリマを形成させることができる。そのカチオン性の凝集剤/凝結剤が、水溶性のエチレン性不飽和カチオン性モノマから、またはブレンド物中の少なくとも1種のモノマがカチオン性であるかもしくはカチオン性となりうるようなものであるようなモノマのブレンド物から形成されるポリマであるのが有利である。水溶性モノマとは、水100立方センチメートルあたり少なくとも5グラムの溶解度を有するモノマである。カチオン性モノマは、塩化ジアリルジアルキルアンモニウム類、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類のいずれかの酸付加塩または四級アンモニウム塩から選択するのが有利である。そのカチオン性モノマは単独で重合させることもできるし、あるいは水溶性のノニオン性、カチオン性、またはアニオン性モノマと共重合させることもできる。そのようなポリマが少なくとも3デシリットル/グラムの固有粘度を有しているのが有利である。詳しくは、18デシリットル/グラムまでである。より詳しくは、7〜15デシリットル/グラムである。その水溶性のカチオン性ポリマはさらに、20重量パーツ・パー・ミリオンまでの分岐化剤を組み入れることによって、わずかに分岐構造を有するようにすることもできる。
【0059】
そのさらなる凝集剤/凝結剤は、ノニオン性、両性、アニオン性、またはカチオン性の、繊維およびセルロース系懸濁液のその他の成分の凝集(flocculation)/凝結(coagulation)を起こさせることが可能な、天然または合成の水溶性ポリマである。その水溶性ポリマは、2dL/g以上の固有粘度を有する分岐状または直鎖状のポリマである。それは、天然ポリマ、たとえば、天然デンプン、カチオン性デンプン、アニオン性デンプン、または両性デンプンなどであってもよい。別な方法として、それを、好ましくはイオン性の特性を示す、各種の水溶性合成ポリマとすることもできる。カチオン性ポリマの場合には、そのカチオン性ポリマには遊離のアミン基が含まれ、それが、充分に低いpHを有していて遊離のアミン基をプロトン化させるようなセルロース系懸濁液の中に導入すると、カチオン性となる。そのカチオン性ポリマが、恒久的なカチオン電荷、たとえば四級アンモニウム基を担持しているのが有利である。水溶性ポリマは、その一つのモノマが少なくともカチオン性であるかもしくはカチオン性となりうる水溶性のエチレン性不飽和モノマからか、または、少なくとも一つのタイプのアニオン性もしくはカチオン性モノマ、またはカチオン性になりうるかもしくはアニオン性となりえて、両性ポリマが得られるようなものを含むエチレン性不飽和モノマの水溶性のブレンド物から形成させることができる。アニオン性合成水溶性ポリマの場合には、水溶性モノマ、またはその少なくとも1種のモノマがアニオン性であるかまたはアニオン性となりうるモノマのブレンド物から製造するのがよい。ノニオン性の水溶性ポリマの場合には、それは、各種のポリアルキレンオキシドであるか、あるいは各種の水溶性のノニオン性モノマまたはモノマブレンド物から誘導されるビニル付加ポリマであってよい。
【0060】
そのさらなる凝集剤/凝結剤成分は、シリカ質物質、有機マイクロポリマ、または水溶性のカチオン性凝集剤のいずれか一つまたは複数よりも前に、添加するのが好ましい。
【0061】
使用する場合においては、その凝集系の全部の成分を、剪断段階よりも前に添加することができる。その凝集系の最後の成分を、プロセス中で、濾水してシートを形成させる前の実質的に剪断がかからないポイントで、セルロース系懸濁液に添加するのが有利である。したがって、その凝集系の少なくとも一つの成分をセルロース系懸濁液に添加し、次いでその凝集されたセルロース系懸濁液を機械的剪断にかけてフロックを機械的に分断させ、次いで、凝集系の少なくとも一つの成分を濾水よりも前に添加してセルロース系懸濁液を再凝集させるのが有利である。
【0062】
一つの例示的な実施態様においては、第一の水溶性のカチオン性凝集剤ポリマをセルロース系懸濁液に添加し、次いでそのセルロース系懸濁液を機械的に剪断させる。次いで、追加の、分子量がより高い凝結剤/凝集剤を添加してから、そのセルロース系懸濁液を第二の剪断ポイントを通過させて剪断させる。最後に、シリカ質物質と有機マイクロポリマとをセルロース系懸濁液に添加する。
【0063】
有機マイクロポリマとシリカ質物質は、予備混合組成物としてでも、あるいは別個ではあるが同時に添加することもできるが、順次に添加するのが有利である。したがって、セルロース系懸濁液は、有機マイクロポリマ、次にシリカ質物質を添加して再凝集させることができるが、好ましくは、シリカ質物質、次いで有機マイクロポリマを添加することによってセルロース系懸濁液を再凝集させる。
【0064】
凝集系の第一の成分をセルロース系懸濁液に添加し、次いで、その凝集されたセルロース系懸濁液を1段または複数の剪断段階に通すことができる。凝集系の第二の成分を添加して、セルロース系懸濁液を再凝集させ、次いで、その再凝集させた懸濁液をさらなる機械的剪断にかけることもできる。その剪断された再凝集セルロース系懸濁液を、凝集系の第三の成分を添加することによって、さらに凝集させることも可能である。剪断段階をはさんで凝集系の成分を添加する場合には、有機マイクロポリマおよびシリカ質物質を添加する最後の成分として、プロセスのもはや剪断がかからないであろうポイントで添加するのが有利である。
【0065】
また別の実施態様においては、セルロース系懸濁液に凝集系の成分のいずれかを添加した後では、セルロース系懸濁液に実質的な剪断を一切かけない。シリカ質物質、有機マイクロポリマ、および場合によっては凝結物質すべてを、最後の剪断段階の後で濾水よりも前にセルロース系懸濁液に添加することもできる。そのような実施態様においては、有機マイクロポリマを第一の成分とし、それに続けて凝結物質(添加するならば)のいずれか、次いでシリカ質物質を添加してもよい。しかしながら、他の添加順序を使用することも可能であり、全部の成分、またはシリカ質物質と有機マイクロポリマとだけを添加する。たとえば、一つの構成においては、1段または複数の剪断段階を、マイクロポリマおよびシリカ質物質の凝集系を適用する途中に入れる。たとえば、シリカ質物質を、1段または複数の剪断段階の前に適用し、有機マイクロポリマを最後の剪断ポイントより後に適用する。直鎖状合成ポリマと有機マイクロポリマとが同じような電荷を有しているならば、カチオン性、アニオン性、またはノニオン性電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマを、最後の剪断ポイントの後で、有機マイクロポリマより前もしくは有機マイクロポリマと同時のいずれかで適用することができる。また別な構成においては、有機マイクロポリマを、1段または複数の剪断段階の前に適用し、シリカ質物質を最後の剪断ポイントより後に適用する。カチオン性、アニオン性またはノニオン性の電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマは、シリカ質物質よりも前、好ましくは一つまたは複数の剪断ポイントの前、または同様の電荷であるならば有機マイクロポリマと同時に適用することもできる。
【0066】
図1は、ブレンドチェスト12、マシンチェスト14、およびサイロ16を含む製紙系10を一般的に示した概略図である。第一ファンポンプ17を、サイロ16とクリーナー18との間で使用することができる。材料は続いて脱気器20の中を通る。第二ファンポンプ21は、脱気20とスクリーン(1枚または複数)22との間に位置させることができる。この系にはさらに、ヘッドボックス24、ワイヤー25、およびトレー28が含まれる。プレスセクション30の後に、ドライヤー32、サイズプレス34、カレンダースタック36、そして最後にリール26がある。図1のダイヤグラムにはさらに、製紙プロセスにおける各種のポイントが示してあり、さらなる凝集剤/凝結剤(図中「A」)、前処理凝結剤およびカチオン性水溶性凝結剤(図中、「B」)、有機マイクロポリマ(図中、「C」)、およびシリカ質物質(図中、「D」)をそのプロセスの間に添加することができる。
【0067】
凝集系のそれぞれの成分の好適な量は、製造する紙または板紙の特定の成分、組成などの検討事項に依存するであろうが、以下のガイドラインに従えば余分な実験をしなくても容易に決めることができる。一般的には、シリカ質物質の量は、乾燥繊維のメートルトンあたり0.1〜5.0kg活性成分(kg/MT)、特には0.05〜5.0kg/MTであり、有機マイクロポリマ分散体の量は、0.25kg/MT〜5.0kg/MT、特には0.05〜3.0kg/MTであり、そして凝集剤および凝集剤/分散剤のいずれか一つの量は、0.25〜10.0kg/MT、特には0.05〜10.0kg/MTである。溶液または分散体の中の活性成分のタイプと量が各種異なるので、これらの量はガイドラインであって、限定的なものではないことは理解されたい。
【0068】
本明細書に開示されたプロセスは、填料入りの紙を製造するのにも使用することができる。その製紙紙料には各種好適な量の填料(filler)を含む。いくつかの実施態様においては、そのセルロース系懸濁液には、そのセルロース系懸濁液の乾燥重量を基準にして、50重量パーセントまでの填料、一般的には5〜50重量パーセントの填料、特には10〜40重量パーセントの填料が含まれる。填料の例としては、沈降炭酸カルシウム、摩砕炭酸カルシウム、カオリン、チョーク、タルク、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタンなど、ならびに前述の填料の少なくとも1種を含む組合せが挙げられる。したがって、この実施態様においては、填料入りの紙または板紙を製造するためのプロセスが提供されるが、そこでは、セルロース系懸濁液には填料を含み、またそのセルロース系懸濁液は、先に説明したように、シリカ質物質および有機マイクロポリマを含む凝集系を導入することによって凝集される。他の実施態様においては、そのセルロース系懸濁液に填料を含まない。
【実施例】
【0069】
以下、非限定的な実施例を用いて、本発明をさらに説明する。実施例において使用される成分を、表1に列記する。
【0070】
【表1】
【0071】
<実施例1>
以下の実施例では、製紙において、塩溶液の中でシリカ質物質と分散体マイクロポリマとを組み合わせて使用した場合の利点を説明する。そのシリカ質物質はANNPであり、塩溶液中の分散体マイクロポリマはANMPである。このデータは、アルカリ条件下で、100パーセント化学パルプ系(wood−free)の未塗工上質紙完成紙料(uncoated free sheet furnish)を用いて検討したものである。その完成紙料は、その完成紙料の全重量を基準にして29重量パーセントのレベルで、沈降炭酸カルシウム(PCC)填料を含んでいる。表1に、以下で使用する略号のリストを示している。
【0072】
図2には、第一パスの固形分歩留り(FPR)および第一パスの灰分歩留り(FPAR)の歩留りパラメーターについて、未処理系について観察された改良パーセントとして、歩留りデータを示している。この検討における「PAMなし」の部分では、ANMPとANNPの両方を同時に適用すると、効率が明らかに向上したことが観察される。それらの成分の適用比率が低いところでは、性能の改良が特に顕著である。A−Pamの適用が含まれる評価の部分でも、同様の応答が観察される。さらに、A−Pamの存在下でANMPとANNPとを組み合わせると、灰分および全固形分の両方で歩留り応答が最大になる。その上、これらのデータから、ANMPとANNPとを組み合わせたプログラムでは、所望のレベルの全固形分または灰分の歩留りを得るために必要とされるA−Pamのレベルが、ANMPまたはANNPのいずれかを単独で使用した場合よりも顕著に低くなることがわかる。歩留りを向上させようとしたときに、A−Pamのレベルが低いのは望ましいことであるが、その理由は、これによって、地合いにおよぼすマイナスの影響が最小化されるからである。このことは、完成紙/板紙製品における最大の品質目標である。
【0073】
<実施例2>
以下の例においては、米国特許第6,524,439号明細書に記載されている適用法に従ってアニオン性ポリアクリルアミドの存在下にコロイダルシリカと共に水中油型エマルションマイクロポリマを適用することよりも、アニオン性ポリアクリルアミドの存在下に、コロイダルシリカと共に塩溶液中の分散体マイクロポリマを適用することの方が有利であることを示す。このデータは、アルカリ条件下で、100パーセント化学パルプ系の未塗工上質紙完成紙料を用いて検討したものである。その完成紙料には、PCC填料が13重量パーセントのレベルで含まれている。
【0074】
図3におけるデータは、その塩ベースのマイクロポリマおよびコロイダルシリカを適用することで、最高の歩留り応答が得られることを示している。この化学現象における歩留り効率は、米国特許第6,524,439号明細書に記載されている、架橋されたオイルおよび水エマルションを適用する場合よりも高い。
【0075】
<実施例3>
以下のデータは、アルカリ性条件下でスーパーカレンダー(SC)製紙に使用するための、70重量パーセントのサーモメカニカルパルプ(TMP)、15重量パーセントのグランドウッドパルプ、および15重量パーセントの晒しクラフトパルプを含む木材パルプ系の完成紙料(wood containing furnish)を用いて実施した検討からのものである。その完成紙料には、PCC填料が28重量パーセントのレベルで含まれている。
【0076】
この検討の結果は、歩留りおよび濾水率両方のデータを示している。歩留りデータを図4に示し、それに対して濾水率のデータを図5および図6に示す。これらのデータでは、ANNPを適用し、多価の塩の水性溶液中でカチオン性モノマを含むモノマ混合物を重合させることにより得られるCatMPと共存させたPACおよびC−Pam;ANNPを適用し、多価アニオン性塩の水溶液中でアニオン性モノマを含むモノマ混合物を重合させることにより得られるANMPを共存させたPACおよびC−Pam;および米国特許第6,524,439号明細書の記載に従った、膨潤可能な鉱物質を共存させたC−Pamを扱っている。
【0077】
図4における歩留りデータは、C−Pamの存在下にANNPと共に適用したCatMPを使用した適用における性能の改良は、米国特許第6,524,439号明細書に従ってベントナイトとC−Pamとを使用した適用よりは優れていることを示している。さらに、C−Pamの存在下にANNPと共にANMPを使用する適用は、米国特許第6,524,439号明細書に従った適用を含む適用よりも優れている。
【0078】
図5には、DDAを使用しての濾水性評価の結果を示しているが、ここでその濾液は再循環させて、次の繰り返しで使用している。これは、完全にスケールアップしたプロセスに対しての密接なシミュレーションを与える。この検討においては、再循環の数は4であった。示したパラメーターは、濾水時間とシートの透過性である。図5では、C−PamおよびPACの存在下にANMPをANNPと組み合わせて適用すると、C−PamおよびPACの存在下に単独でANMPを適用するよりも優れた性能が達成されることが示されている。ANMP/ANNPプログラムの濾水性能は、米国特許第6,524,439号明細書に記載されているベントナイトC−Pam適用の場合よりも高い。これは、完成紙料の濾水によって生産速度が制限されている製紙マシンでは望ましいことである。
【0079】
図6では、図5で観察されたのと類似の結果が見られる。図6は、VDTを使用した検討の濾水応答結果を示している。これはワンパスの試験であって、DDAの場合と同様に、濾水の時間速度とシートの透過性を与えている。PACおよびC−Pamの存在下にANNPと組み合わせて適用したANMPは、最も高い濾水速度を与える。この速度は、米国特許第6,524,439号明細書に記載の適用に従った、ベントナイトを使用する膨潤性の鉱物質の適用で達成されるよりも高い。
【0080】
<実施例4>
以下の実施例では、塩溶液中の分散体マイクロポリマを単独またはシリカ質物質と組み合わせて適用すると、C−Pamを単独またはシリカ質物質と組み合わせて適用した場合に比較して、紙およびボール紙製造プロセスにおいて性能が向上することを示す。そのデータは酸性条件下で、新聞用紙製造に使用される木材パルプ系の完成紙料についての検討から得られるものである。その完成紙料には、主としてカオリンである灰分が5重量パーセント含まれている。塩溶液における分散体マイクロポリマは、CatMP−SSである。
【0081】
濾水応答は、改良ショッパー・ライグラー(Schopper Reigler)濾水試験器を用いワンパスで測定し、その一方で、歩留り特性は、ダイナミック濾水ジャーを用いて測定した。この検討の結果を図7に示す。
【0082】
図7におけるデータは、CatMP−SSを単独またはANNPと組み合わせて適用したときに、C−Pamを単独またはANNPと組み合わせて適用した場合に比較して、紙およびボール紙製造プロセスにおける性能が向上することを示している。濾水性および歩留り率の両面において改良が観察される。これらのデータはさらに、剪断のポイントより前に、CatMP−SSを適用するのが有利であることも示している。いかなる特定の理論に拘束されるつもりはないが、観察された改良は、当技術で使用されてきたポリマに比較して、CatMP−SSの中の分岐度の程度と電荷が高いためであろうと考えられる。CatMP−SSに剪断をかけると、高いレベルの電荷が得られ、その効果はポリマがイオン性を再取得することに相当する。それらのデータは、CatMP−SSが100%よりも高いイオン性再取得値を与えることを示唆しているが、そのようなことは、C−Pamのような直鎖状のカチオン性ポリアクリルアミドを使用したのでは不可能である。イオン性を再取得したことで、シリカ質物質、たとえばANNPとの反応性が昂進されるが、後者は、当業者では公知のように、酸性条件下では効率が極めて高いというものではない。図7におけるデータによれば、ANNPをC−Pamに添加した場合には、濾水性および歩留り性応答における正味の改良は取るに足らない。他方、ANNPをCatMP−SSに添加すると、その濾水性および歩留り性応答が20%以上改良される。
【0083】
<実施例5>
以下の実施例では、シリカ質物質を、酸性条件下で塩溶液中の分散体マイクロポリマと組み合わせて使用すると、シリカ質物質を、酸性条件下で、当業者によって普通に使用されているポリマと組み合わせて使用した場合に比較して、メリットが得られることを説明する。そのデータは酸性条件下で、新聞用紙製造に使用される木材パルプ系の完成紙料についての検討から得られるものである。その完成紙料には、主としてカオリンである灰分が5重量パーセント含まれている。濾水歩留りおよび応答は、先に説明したのと同様にして測定した。
【0084】
それらの結果を図8に示す。予想された通り、米国特許第4,913,775号明細書では、ANNPまたはIMP−LをC−Pamに添加することに対して、ベントナイトをC−Pamに添加する方が有利であることを示しているが、その理由は、その系が酸性条件下にあるからである。しかしながら、CatMP−SSをC−Pamとシリカ質物質とを組み合わせたものに添加すると、その濾水性能が、IMP−L系を30%超えて、そしてANNP系を40%超えて向上する。CatMP−SSをC−Pamおよびシリカ質物質と組み合わせたものは、米国特許第4,913,775号明細書に記載されているようなCatMP−SS抜きでC−Pamおよびシリカ質物質を組み合わせたものよりも優れている。この結果は、実施例4において説明したCatMP−SSの優れた点を如実に示している。
【0085】
<実施例6>
以下の実施例では、ベントナイトを、アルカリ性条件下でカチオン性塩分散マイクロポリマと組み合わせて使用したときに得られるメリットを説明する。それらのデータは、填料としてPCCを使用し、アルカリ性条件下でSC製品のために使用される木材パルプ系の完成紙料についての、ミル試験(mill trial)からのものである。その試験の目的は、高坪量(60g/m2より大)と高白色度とを有する新規な紙グレードを開発することであった。その完成紙料には、5〜10重量パーセントの主としてPCCを含む
灰分が含まれていた。その完成紙料は、70〜80%PGW、20〜30%クラフト、15〜25%ブロークである。操作pHが7.2〜7.5、カチオン要求量が−100meq/L、遊離カルシウム含量が100〜200ppmであった。マシンの操作パラメーターは以下の通りであった。Bコンシステンシ=1.5%、白水コンシステンシ=0.6%、FPR=50〜55%、FPAR=30〜35%。現行のマシン上での化学物質は以下のとおりであった。加圧スクリーン後では200〜300グラム/トン(g/t)のカチオン性ポリアクリルアミド、加圧スクリーンの前で3kg/tのベントナイト、PGW絶乾フローを基準に計算して12〜15kg/tのカチオン性デンプン、ブレンドチェストポンプのサクションに添加されるOBAの速度が0〜4kg/t。
【0086】
予想された通り、C−PAMをベントナイトに添加すると、それが完成紙料の濾水特性を改良するために、有利であった。しかしながら、CatMP−SSをC−Pamとベントナイトとの組合せ物に添加すると(ここでは、CatMP−SSをC−PAMと同時に添加した、図9参照)、濾水性能が20%を超えて向上した。図9は、C−Pamおよびベントナイトを組み合わせたものに、CatMP−SSを同時に添加することを示す、実施例6に記載の製紙系100およびプロセスを説明する概略図である。製紙系100に含まれるのは、ミキシングチェスト112、マシンチェスト114、ワイヤーピット116、クリーナー118であり、それに続けての脱気器120、ヘッドボックス124、およびセレクティファイヤー(加圧)スクリーン122である。
【0087】
CatMP−SSをC−Pamおよびシリカ質物質と組み合わせたものは、CatMP−SSなしでC−Pamおよびシリカ質物質と組み合わせたものよりは、はるかに優れていた。それらの結果を図10〜13に示す。図10は、実施例6において使用されるポリマ添加剤(C−PAMおよびCatMP−SS)の投与量(g/トン)を示す時間経過図である(ベントナイトの量は一定に維持)。
【0088】
図11に、65g/m2の坪量を使用した製紙マシンにおけるリール速度を経時的(1年間)に記録したものを示す。実施例6は、200で示す期間に実施した。この図からも判るように、実施例6のプロセスを使用することによって、高重量で均一に高いリール速度が可能となった。
【0089】
図12は、製紙プロセスにおけるある期間の生産速度を示している。図12において、その期間(6ヶ月)には、(300で示す)実施例6のプロセスが含まれている。これからも判るように、その期間の間は、生産速度が高くなっていた。
【0090】
図13に製紙プロセスの総括効率を示しているが、ここで実施例6のデータは400で表している。この場合もまた、この期間の間の効率は極めて良好である。
【0091】
不定冠詞の「a」および「an」は、量的な制限を表すものではなく、関連のものが少なくとも一つは存在しているということを表している。「水溶性」という用語は、水100立方センチメートルあたり少なくとも5グラムの溶解性があることを示している。
【0092】
引用したすべての特許、特許出願、およびその他の文献は、そのすべてを、あたかも全文に言及したかのように、参考として本明細書に組み入れたものとする。
【0093】
いくつかの実施態様を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の範囲から外れることなく、各種の変化を加えることが可能であり、またその要素を均等物と置き換えることが可能であるのは、当業者のよく理解するところであろう。さらに、本発明の基本的な範囲から外れることなく、本発明の教示に対して各種の変更を加えて、特定の状況や物質にあてはめることが可能である。したがって、本発明が、本発明を実施するために考案された最良の態様として開示された特定の実施態様に限定されることはなく、本発明には、添付された特許請求項の範囲に入るすべての実施態様が包含されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または板紙を製造するためのプロセスであって、
セルロース系懸濁液を形成させる工程と、
シリカ質物質および有機の水溶性でアニオン性またはカチオン性のウォータ・イン・ウォータまたは分散体マイクロポリマ組成物を含む凝集系を添加することによって前記セルロース系懸濁液を凝集させるが、ここで前記シリカ質物質および前記有機マイクロポリマを同時または順次に添加する工程と、
スクリーン上で前記セルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、
前記シートを乾燥させる工程と、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記分散体マイクロポリマ組成物が、0.2デシリットル/グラム以上の還元粘度を有し、5〜30重量パーセントの高分子量マイクロポリマおよび5〜30重量パーセントの無機凝結性塩を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分散体マイクロポリマ組成物が、水性塩溶液の中で重合性モノマの重合を開始させて、有機マイクロポリマ分散体を形成させることによって調製され、得られる分散体が0.2デシリットル/グラム以上の還元粘度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記塩溶液が、無機の多価イオン性塩の水性溶液であり、塩溶液中の前記モノマの混合物が、前記モノマの全重量を基準にして、1〜30重量パーセントの分散剤ポリマを含み、前記分散剤ポリマが、前記多価イオン性塩の水性溶液中に可溶性である水溶性のアニオン性またはカチオン性ポリマである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記無機の多価のイオン性塩が、アルミニウム、カリウムまたはナトリウムカチオンと、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、またはクロリドアニオンとを含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記分散体マイクロポリマ組成物が、0.5センチポワズ(ミリパスカル・秒)以上の溶液粘度を示す、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記分散体マイクロポリマ組成物の溶液が、少なくとも5.0%のイオン性を有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、0.2dL/g以上の還元粘度を有する高分子量相を含み、4dL/g未満の還元粘度を有する有機凝結剤の中で合成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、水性低分子量凝結剤の溶液の中で重合性モノマの水性混合物の重合を開始させて、0.2dL/g以上の還元粘度を有する有機ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマを形成させることにより調製される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ウォータ・イン・ウォータ溶液が凝結剤の水性溶液であり、凝結剤溶液中の前記モノマの混合物が、前記モノマの全重量を基準にして、1〜30重量パーセントの分散剤ポリマを含み、前記分散剤ポリマが前記凝結剤の水性溶液中に可溶性である水溶性のアニオン性またはカチオン性ポリマである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記凝結剤が、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン、スルフェートエステル−、アミノ、アミド、イミノ、三級−アミノおよび/または四級アンモニウム基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記凝結剤が、ポリDIMAPAまたはポリDADMACである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、0.5センチポワズ以上の溶液粘度を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、少なくとも5.0%のイオン性を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項15】
前記モノマが、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、または前述のモノマの少なくとも1種を含む組合せ物である、請求項2または8に記載のプロセス。
【請求項16】
前記モノマが、モノマの全モル数を基準にして、2モルパーセント以上のカチオン性またはアニオン性モノマを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記シリカ質物質が、アニオン性のマイクロ微粒子またはナノ微粒子シリカ系物質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記シリカ質物質がベントナイトクレーである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記シリカ質物質が、シリカベースの粒子、シリカミクロゲル、コロイダルシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート類、アルミノシリケート類、ポリアルミノシリケート類、ボロシリケート類、ポリボロシリケート類、ゼオライト類、膨潤性クレー、およびそれらの組合せを含み、前記シリカ質物質が、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイト、ラポナイト、セピオライト、または前述の物質の少なくとも1種を含む組合せ物からなるリストから選択される物質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記セルロース系懸濁液の中に、前記有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質を順次または同時に導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記懸濁液の中に、前記シリカ質物質を有機マイクロポリマよりも前に導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記懸濁液の中に、前記有機マイクロポリマを前記シリカ質物質よりも前に導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
凝集剤を導入することによって前記セルロース系懸濁液を処理した後に、前記シリカ質物質および前記有機マイクロポリマを導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
前記凝集剤が、水溶性のカチオン性有機ポリマ、ポリアミン類、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリエチレンイミン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム三水化物またはアルミニウム塩酸塩を含む無機物質、およびそれらの組合せからなる群より選択されるカチオン性物質である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記凝集系が、少なくとも1種の凝集剤/凝結剤をさらに含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項26】
前記凝集剤/凝結剤が水溶性ポリマである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記水溶性ポリマが、水溶性のエチレン性不飽和モノマ、または少なくとも1種のタイプのアニオン性またはカチオン性モノマを含むエチレン性不飽和モノマの水溶性組合せ物から形成される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項28】
前記セルロース系懸濁液が、前記凝結物質を導入することによってまず凝集され、次いで場合によっては機械的剪断にかけられ、そして次いで前記シリカ質物質および前記マイクロポリマ組成物を導入することによって再凝集される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項29】
前記セルロース系懸濁液が、前記マイクロポリマ組成物より前に前記シリカ質物質を導入することによって再凝集される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記セルロース系懸濁液が、前記シリカ質物質より前に前記有機マイクロポリマを導入することによって再凝集される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項31】
前記セルロース系懸濁液が、前記セルロース系懸濁液の全乾燥重量を基準にして、0.01〜50重量パーセントの量の填料を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項32】
前記填料が、沈降炭酸カルシウム、摩砕炭酸カルシウム、カオリン、チョーク、タルク、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタンおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記セルロース系懸濁液が、填料を実質的に含まない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項34】
紙または板紙を製造するためのプロセスであって、
セルロース系懸濁液を形成させる工程と、
0.2dL/g以上の還元粘度を有する水溶性の合成ポリマを添加することによって、前記セルロース系懸濁液を凝集させて、凝集されたセルロース系懸濁液を形成させる工程と、
前記凝集されたセルロース系懸濁液を少なくとも一度機械的剪断にかける工程と、
再凝集系を添加することによって前記機械的に剪断された懸濁液を再凝集させるが、ここで前記再凝集系が、シリカ質物質および水溶性で無溶媒のアニオン性またはカチオン性のウォータ・イン・ウォータまたは分散体マイクロポリマを含む工程と、
スクリーン上で前記セルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、
前記シートを乾燥させる工程と、
を含むプロセス。
【請求項35】
紙または板紙を製造するためのプロセスであって、
セルロース系懸濁液を形成させる工程と、
前記セルロース系懸濁液を1段または複数の剪断段階を通過させる工程と、
スクリーン上で前記セルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、
前記シートを乾燥させる工程と、
を含むが、
前記セルロース系懸濁液が、濾水より前に、0.01重量パーセント以上の、無機塩溶液もしくは有機凝結剤溶液中の有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質を含む凝集系を添加することによって、凝集され、
前記有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質が、前記剪断段階の一つの後に添加され、
前記有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質が、同時または順次に添加され、
前記凝集系が、500,000原子質量単位以上の分子量を有する、実質的に直鎖状の合成カチオン性、ノニオン性、またはアニオン性ポリマを含む有機水溶性凝集剤物質をさらに含むが、前記ポリマは、前記剪断段階より前に前記セルロース系懸濁液に対して、フロックが形成されるような量で添加され、
前記フロックが剪断によって破壊されて、剪断によるさらなる分解には抵抗性を有するマイクロフロックを形成し、かつ前記マイクロフロックが、シリカ質物質および有機マイクロポリマと相互作用するに充分なアニオン性またはカチオン性電荷を担持しているために、前記セルロース系懸濁液に対して前記凝集剤物質を最初に添加せずに高剪断の最後のポイントよりも後に前記凝集系を添加した場合の歩留りよりも、良好な歩留りを与え、
ここで重量パーセントは、乾燥セルロース系懸濁液の全重量を基準にしたものである、
プロセス。
【請求項36】
前記1段または複数の剪断段階が、クリーニング、ミキシング、ポンピング、または前述の剪断段階の少なくとも一つを含む組合せである、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記1段または複数の剪断段階が、セントリスクリーンを含み、前記凝結物質が前記セルロース系懸濁液にセントリスクリーンよりも前に添加され、前記シリカ質物質および有機マイクロポリマが前記セントリスクリーンよりも後に添加される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項38】
前記1段または複数の剪断段階が、前記マイクロポリマの凝集系および前記シリカ質物質を適用する途中に存在させることが可能な、セントリスクリーンを含み、
前記シリカ質物質が、1段または複数の剪断段階の前に適用され、前記有機マイクロポリマが最後の剪断ポイントより後に適用され、
カチオン性、アニオン性、またはノニオン性のいずれかの前記実質的に直鎖状の合成ポリマの適用が、最後の剪断ポイントの後で、前記有機マイクロポリマより前か、または前記直鎖状合成ポリマと前記有機マイクロポリマとが同じような電荷を有しているならば前記有機マイクロポリマと同時か、のいずれかで適用される、
請求項35に記載のプロセス。
【請求項39】
前記1段または複数の剪断段階が、前記マイクロポリマの凝集系および前記シリカ質物質を適用する途中に存在させることが可能な、セントリスクリーンを含み、
前記有機マイクロポリマが、1段または複数の剪断段階の前に適用され、前記シリカ質物質が最後の剪断ポイントより後に適用され、
カチオン性、アニオン性またはノニオン性のいずれかの電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマの適用が、シリカ質物質よりも前、好ましくは一つまたは複数の剪断ポイントの前か、または同様の電荷であるならば前記有機マイクロポリマと同時に適用される、
請求項35に記載のプロセス。
【請求項1】
紙または板紙を製造するためのプロセスであって、
セルロース系懸濁液を形成させる工程と、
シリカ質物質および有機の水溶性でアニオン性またはカチオン性のウォータ・イン・ウォータまたは分散体マイクロポリマ組成物を含む凝集系を添加することによって前記セルロース系懸濁液を凝集させるが、ここで前記シリカ質物質および前記有機マイクロポリマを同時または順次に添加する工程と、
スクリーン上で前記セルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、
前記シートを乾燥させる工程と、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記分散体マイクロポリマ組成物が、0.2デシリットル/グラム以上の還元粘度を有し、5〜30重量パーセントの高分子量マイクロポリマおよび5〜30重量パーセントの無機凝結性塩を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分散体マイクロポリマ組成物が、水性塩溶液の中で重合性モノマの重合を開始させて、有機マイクロポリマ分散体を形成させることによって調製され、得られる分散体が0.2デシリットル/グラム以上の還元粘度を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記塩溶液が、無機の多価イオン性塩の水性溶液であり、塩溶液中の前記モノマの混合物が、前記モノマの全重量を基準にして、1〜30重量パーセントの分散剤ポリマを含み、前記分散剤ポリマが、前記多価イオン性塩の水性溶液中に可溶性である水溶性のアニオン性またはカチオン性ポリマである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記無機の多価のイオン性塩が、アルミニウム、カリウムまたはナトリウムカチオンと、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、またはクロリドアニオンとを含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記分散体マイクロポリマ組成物が、0.5センチポワズ(ミリパスカル・秒)以上の溶液粘度を示す、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記分散体マイクロポリマ組成物の溶液が、少なくとも5.0%のイオン性を有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、0.2dL/g以上の還元粘度を有する高分子量相を含み、4dL/g未満の還元粘度を有する有機凝結剤の中で合成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、水性低分子量凝結剤の溶液の中で重合性モノマの水性混合物の重合を開始させて、0.2dL/g以上の還元粘度を有する有機ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマを形成させることにより調製される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ウォータ・イン・ウォータ溶液が凝結剤の水性溶液であり、凝結剤溶液中の前記モノマの混合物が、前記モノマの全重量を基準にして、1〜30重量パーセントの分散剤ポリマを含み、前記分散剤ポリマが前記凝結剤の水性溶液中に可溶性である水溶性のアニオン性またはカチオン性ポリマである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記凝結剤が、エーテル、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホン、スルフェートエステル−、アミノ、アミド、イミノ、三級−アミノおよび/または四級アンモニウム基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記凝結剤が、ポリDIMAPAまたはポリDADMACである、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、0.5センチポワズ以上の溶液粘度を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ウォータ・イン・ウォータマイクロポリマ組成物が、少なくとも5.0%のイオン性を有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項15】
前記モノマが、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩化メチル四級塩、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、または前述のモノマの少なくとも1種を含む組合せ物である、請求項2または8に記載のプロセス。
【請求項16】
前記モノマが、モノマの全モル数を基準にして、2モルパーセント以上のカチオン性またはアニオン性モノマを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記シリカ質物質が、アニオン性のマイクロ微粒子またはナノ微粒子シリカ系物質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記シリカ質物質がベントナイトクレーである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記シリカ質物質が、シリカベースの粒子、シリカミクロゲル、コロイダルシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリシリケート類、アルミノシリケート類、ポリアルミノシリケート類、ボロシリケート類、ポリボロシリケート類、ゼオライト類、膨潤性クレー、およびそれらの組合せを含み、前記シリカ質物質が、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイト、ラポナイト、セピオライト、または前述の物質の少なくとも1種を含む組合せ物からなるリストから選択される物質である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記セルロース系懸濁液の中に、前記有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質を順次または同時に導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記懸濁液の中に、前記シリカ質物質を有機マイクロポリマよりも前に導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記懸濁液の中に、前記有機マイクロポリマを前記シリカ質物質よりも前に導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
凝集剤を導入することによって前記セルロース系懸濁液を処理した後に、前記シリカ質物質および前記有機マイクロポリマを導入する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
前記凝集剤が、水溶性のカチオン性有機ポリマ、ポリアミン類、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリエチレンイミン、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム三水化物またはアルミニウム塩酸塩を含む無機物質、およびそれらの組合せからなる群より選択されるカチオン性物質である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記凝集系が、少なくとも1種の凝集剤/凝結剤をさらに含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項26】
前記凝集剤/凝結剤が水溶性ポリマである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記水溶性ポリマが、水溶性のエチレン性不飽和モノマ、または少なくとも1種のタイプのアニオン性またはカチオン性モノマを含むエチレン性不飽和モノマの水溶性組合せ物から形成される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項28】
前記セルロース系懸濁液が、前記凝結物質を導入することによってまず凝集され、次いで場合によっては機械的剪断にかけられ、そして次いで前記シリカ質物質および前記マイクロポリマ組成物を導入することによって再凝集される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項29】
前記セルロース系懸濁液が、前記マイクロポリマ組成物より前に前記シリカ質物質を導入することによって再凝集される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記セルロース系懸濁液が、前記シリカ質物質より前に前記有機マイクロポリマを導入することによって再凝集される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項31】
前記セルロース系懸濁液が、前記セルロース系懸濁液の全乾燥重量を基準にして、0.01〜50重量パーセントの量の填料を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項32】
前記填料が、沈降炭酸カルシウム、摩砕炭酸カルシウム、カオリン、チョーク、タルク、ケイ酸アルミニウムナトリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタンおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記セルロース系懸濁液が、填料を実質的に含まない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項34】
紙または板紙を製造するためのプロセスであって、
セルロース系懸濁液を形成させる工程と、
0.2dL/g以上の還元粘度を有する水溶性の合成ポリマを添加することによって、前記セルロース系懸濁液を凝集させて、凝集されたセルロース系懸濁液を形成させる工程と、
前記凝集されたセルロース系懸濁液を少なくとも一度機械的剪断にかける工程と、
再凝集系を添加することによって前記機械的に剪断された懸濁液を再凝集させるが、ここで前記再凝集系が、シリカ質物質および水溶性で無溶媒のアニオン性またはカチオン性のウォータ・イン・ウォータまたは分散体マイクロポリマを含む工程と、
スクリーン上で前記セルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、
前記シートを乾燥させる工程と、
を含むプロセス。
【請求項35】
紙または板紙を製造するためのプロセスであって、
セルロース系懸濁液を形成させる工程と、
前記セルロース系懸濁液を1段または複数の剪断段階を通過させる工程と、
スクリーン上で前記セルロース系懸濁液を濾水させてシートを形成させる工程と、
前記シートを乾燥させる工程と、
を含むが、
前記セルロース系懸濁液が、濾水より前に、0.01重量パーセント以上の、無機塩溶液もしくは有機凝結剤溶液中の有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質を含む凝集系を添加することによって、凝集され、
前記有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質が、前記剪断段階の一つの後に添加され、
前記有機マイクロポリマおよび無機シリカ質物質が、同時または順次に添加され、
前記凝集系が、500,000原子質量単位以上の分子量を有する、実質的に直鎖状の合成カチオン性、ノニオン性、またはアニオン性ポリマを含む有機水溶性凝集剤物質をさらに含むが、前記ポリマは、前記剪断段階より前に前記セルロース系懸濁液に対して、フロックが形成されるような量で添加され、
前記フロックが剪断によって破壊されて、剪断によるさらなる分解には抵抗性を有するマイクロフロックを形成し、かつ前記マイクロフロックが、シリカ質物質および有機マイクロポリマと相互作用するに充分なアニオン性またはカチオン性電荷を担持しているために、前記セルロース系懸濁液に対して前記凝集剤物質を最初に添加せずに高剪断の最後のポイントよりも後に前記凝集系を添加した場合の歩留りよりも、良好な歩留りを与え、
ここで重量パーセントは、乾燥セルロース系懸濁液の全重量を基準にしたものである、
プロセス。
【請求項36】
前記1段または複数の剪断段階が、クリーニング、ミキシング、ポンピング、または前述の剪断段階の少なくとも一つを含む組合せである、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記1段または複数の剪断段階が、セントリスクリーンを含み、前記凝結物質が前記セルロース系懸濁液にセントリスクリーンよりも前に添加され、前記シリカ質物質および有機マイクロポリマが前記セントリスクリーンよりも後に添加される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項38】
前記1段または複数の剪断段階が、前記マイクロポリマの凝集系および前記シリカ質物質を適用する途中に存在させることが可能な、セントリスクリーンを含み、
前記シリカ質物質が、1段または複数の剪断段階の前に適用され、前記有機マイクロポリマが最後の剪断ポイントより後に適用され、
カチオン性、アニオン性、またはノニオン性のいずれかの前記実質的に直鎖状の合成ポリマの適用が、最後の剪断ポイントの後で、前記有機マイクロポリマより前か、または前記直鎖状合成ポリマと前記有機マイクロポリマとが同じような電荷を有しているならば前記有機マイクロポリマと同時か、のいずれかで適用される、
請求項35に記載のプロセス。
【請求項39】
前記1段または複数の剪断段階が、前記マイクロポリマの凝集系および前記シリカ質物質を適用する途中に存在させることが可能な、セントリスクリーンを含み、
前記有機マイクロポリマが、1段または複数の剪断段階の前に適用され、前記シリカ質物質が最後の剪断ポイントより後に適用され、
カチオン性、アニオン性またはノニオン性のいずれかの電荷を有する実質的に直鎖状の合成ポリマの適用が、シリカ質物質よりも前、好ましくは一つまたは複数の剪断ポイントの前か、または同様の電荷であるならば前記有機マイクロポリマと同時に適用される、
請求項35に記載のプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−503777(P2010−503777A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528302(P2009−528302)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/019976
【国際公開番号】WO2008/033490
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(504186286)ケミラ オイ (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/019976
【国際公開番号】WO2008/033490
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(504186286)ケミラ オイ (18)
【Fターム(参考)】
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