紙容器用トランスファー装置
【課題】テーパー形状紙容器用の被搬送体を変形や姿勢もしくは向きの変化を生じさせないように搬送もしくは移送する。
【解決手段】マンドレル11,19に嵌合させられるテーパー形状紙容器用の被搬送体6を前記マンドレル11から受け取り、あるいは受け取った被搬送体6を他のマンドレル19へ受け渡すトランスファー装置14において、被搬送体6の受け渡しを行う授受位置13,18に停止しているマンドレル11,19の先端側で間欠的に回転するトランスファーターレット15と、そのターレット15の外周部に一定間隔で取り付けられて授受位置13,18におけるマンドレル11,19の先端側にマンドレル11,19と対向するように位置決めされ、かつ被搬送体6の外周面の複数箇所に接触して被搬送体6を把持する複数の把持片17を有するチャック16と、そのチャック16を授受位置13,18においてマンドレル11,19に対して前進させかつ後退させる前進後退機構とを備えている。
【解決手段】マンドレル11,19に嵌合させられるテーパー形状紙容器用の被搬送体6を前記マンドレル11から受け取り、あるいは受け取った被搬送体6を他のマンドレル19へ受け渡すトランスファー装置14において、被搬送体6の受け渡しを行う授受位置13,18に停止しているマンドレル11,19の先端側で間欠的に回転するトランスファーターレット15と、そのターレット15の外周部に一定間隔で取り付けられて授受位置13,18におけるマンドレル11,19の先端側にマンドレル11,19と対向するように位置決めされ、かつ被搬送体6の外周面の複数箇所に接触して被搬送体6を把持する複数の把持片17を有するチャック16と、そのチャック16を授受位置13,18においてマンドレル11,19に対して前進させかつ後退させる前進後退機構とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙を素材として形成された切頭円錐状(以下、「テーパー形状」とも呼ぶ)のシェルやそのシェルの底部に板紙製の底板を取り付けたテーパー形状の紙容器などをその製造過程で各種の成形機の間で搬送あるいは移送するトランスファー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インスタント食品やスナック菓子などの食品用の容器として、コップや椀などのガラス製あるいは陶器製の容器を模して樹脂で作られた容器が使用されていることは周知のとおりである。これらの容器は樹脂製であることにより成形性が良好で、形状の自由度が高いが、最近では環境に対する負荷の低減や加工技術の向上によって、従来樹脂製とされていた容器を紙製とすることが試みられるようになってきている。
【0003】
板紙を素材として、コップや椀などを模した上記の容器を製造する場合、樹脂を素材とする場合とは異なり、複数の部品を予め成形し、それらの部品を組み立てることになる。したがって、それらの部品や組み立てられた中間品などを、各工程の間で搬送もしくは移送する必要がある。このような搬送あるいは移送を行う装置の一例として特許文献1には、板紙をマンドレルに巻き付けて円筒状に形成した容器を、その内部に空気を吹き込んでマンドレルから抜き出させるとともに、その先方に待機させてあるターレットのポケット部に飛び込ませてそのポケット部で受け取るように構成された装置が記載されている。また、特許文献2には、板紙製のブランクをテーパー状のマンドレルに巻き付けるとともに、そのブランクの両端部を重ね合わせて接合されたテーパー形状のシェルを成形し、そのシェルをさらに加工するために、シェルを次工程に移送するための吸引ヘッドをシェルの外周面の一部に密着させてシェルを吸着し、その状態で吸引ヘッドを移動させてシェルをマンドレルから抜き取るように構成されたトランスファー装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3958501号明細書
【特許文献2】特開昭57−17733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載されている装置は、その図に記載されているように、外径に対して長さが長い円筒状の容器を対象とするものであり、したがってマンドレルからその容器の内部に圧縮空気を吹き込めば、容器はマンドレルの軸線方向に比較的安定して飛翔し、次工程のターレット等のポケット部にシェルを受け渡しすることができる。しかしながら、このような装置は、底板が既に取り付けられている容器を対象とする場合に限られるだけでなく、底板が既に取り付けられている容器の場合であっても、安定して受け渡しのできる容器の形状が限定されてしまう。すなわち、テーパー角が比較的大きい容器もしくは容器開口部の外径に対して長さ(容器としては高さ)が比較的短い容器を、上記のように圧縮空気によって軸線方向に飛翔させるとした場合、その飛翔方向が変化するなど不安定になって目標箇所(次工程のポケット等)に到達させることが困難であり、またたとえ目標箇所に到達させることができたとしても、容器もしくは容器シェルの向きが反転するなど、容器の姿勢にズレが生じる可能性が高くなる。さらにまた、容器もしくは容器シェルをターレットのポケット部に収めることができたとしても、容器が飛翔の過程で周方向に回ってしまう虞もあり、ブランクの両端部の合わせ目であるシーム部の位置を確実に一定にすることはできず、後工程での容器の取り扱い(ハンドリング)で支障を来したり、カール等の成形でシーム部のズレに伴う成形不良を起こしたりする場合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載されている紙容器製造装置におけるトランスファー装置は、マンドレルに巻回されて嵌合しているシェルの外周面の一部に吸引ヘッドを吸着させ、その吸引ヘッドによりスピンドル(マンドレル)からシェルを引き出すようにしているため、シェルが歪んで変形してスピンドルから引き出しにくくなる。特に、容器を薄肉化したり、高さに対して外径の大きい形状とした場合には、底板が取り付けられていないこともありシェルの剛性が低くなるので、より変形が生じ真円性が損なわれたりし易くなる。
【0007】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、テーパー形状の紙容器もしくはその中間品などの被搬送体を、変形させたり姿勢にズレを生じさせたりすることなく安定して搬送もしくは移送することのでき、高速化に対応できるトランスファー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、小径側をマンドレルの先端側にした状態でそのマンドレルに嵌合させられるテーパー形状紙容器用の被搬送体を前記マンドレルから受け取り、あるいは受け取った被搬送体を他のマンドレルへ受け渡す紙容器用トランスファー装置において、前記被搬送体の受け渡しを行う授受位置に停止している前記マンドレルあるいは他のマンドレルの先端側で間欠的に回転するトランスファーターレットと、そのターレットの外周部に一定間隔で取り付けられ、前記授受位置におけるマンドレルの先端側に前記マンドレルあるいは他のマンドレルと対向するように位置決めされ、かつ前記被搬送体の外周面の少なくとも周方向の複数箇所に接触して被搬送体を保持するチャックと、そのチャックを前記授受位置において前記マンドレルに対して前進させかつ後退させる前進後退機構とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記チャックは、前記被搬送体の外周面の少なくとも周方向の複数箇所に接触して被搬送体を把持する複数の把持片を有し、前記各把持片の内面は、前記被搬送体のテーパー状の外周面における母線角度に対応する傾斜面とされ、その内面に前記被搬送体の外周面を吸着させる吸引手段が設けられていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記トランスファーターレットは、回転板を有し、前進後退機構は、その回転板の周辺部に取り付けられかつ前記チャックを前記回転板の半径方向に前後動するようにガイドするリニアガイドと、前記チャックに設けられたカムフォロアーと、前記回転板に対向して固定されかつ前記チャックが前記マンドレルから後退した位置で前記回転板と共に回転するよう前記カムフォロアーを係合させてガイドするカムと、前記カムのうち前記チャックが授受位置でマンドレルと対向している状態で前記カムフォロアーが係合している部分が他の部分から分割されている分割カムと、その分割カムごと前記チャックを前記マンドレルに対して前後動させる駆動機構とを備えていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2または3の発明において、前記被搬送体は、板紙製ブランクを丸めてその両端部同士を接合することによりテーパー形状に形成されたシェルであって、前記吸引手段は、前記両端部の互いに接合されたシーム部を挟んだ両側を同時に吸着する吸引口を有する把持片を備えていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明における被搬送体は、テーパー形状紙容器あるいはこれを製造する過程での中間品であり、外周面がテーパー状を成すマンドレルに嵌合させられ、したがってその被搬送体もテーパー形状をなしている。その被搬送体は、マンドレルに対して前後動させられるチャックによってマンドレルから抜き取られてチャックに保持され、あるいはチャックから他のマンドレルに受け渡される。そのチャックは、被搬送体の外周面の複数箇所に密着して被搬送体を保持するように構成されているので、被搬送体の向きや姿勢を変えずにマンドレルから受け取り、あるいは受け取った被搬送体を他のマンドレルへ確実に受け渡すことができる。また、円周方向の複数箇所に密着して被搬送体を把持するので、剛性の低い被搬送体であっても真円性を損なわせるような変形を生じさせることがなく安定した受け渡しができる。特に、請求項2に記載してあるように、吸着して把持するように構成した場合には、テーパー形状の被搬送体の外周面における母線角度に対応する傾斜面とされた把持片で被搬送体の外周面の複数箇所を把持して被搬送体を保持するように構成されているので、被搬送体の変形をより確実に防止もしくは抑制することができる。さらに請求項4に記載されている構成によれば、シーム部の両側が同時に吸着されるので、シーム部に対してバランスの良い吸着が行え、シーム部を剥離させるようなことを防止もしくは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るトランスファー装置を組み込んだ成形ラインの一部を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係るトランスファー装置の主要部を斜め下から見た斜視図である。
【図3】そのスライド機構によるチャックの前後動を説明するための部分側面図である。
【図4】その固定板および溝カムならびに分割カムを斜め下から見た斜視図である。
【図5】そのスライド機構を前後動させるためのリンク機構を示す平面図である。
【図6】チャックの他の例を示す斜視図である。
【図7】そのチャックにおける吸引口の位置を示すための斜視図である。
【図8】シェルフォーミングターレットからシェルを受け取る場合の動作を説明するための模式図である。
【図9】ボトムフォーミングターレットに対してシェルを受け渡す場合の動作を説明するための模式図である。
【図10】この発明で対象とする容器の一例を示す断面図である。
【図11】その成形過程を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、この発明の成形機で成形する容器の一例について説明すると、図10にその容器1の一例を断面図で示してあり、この容器1は外径に対して高さが相対的に低く、開口部が大きい(例えば直径140mm以上)のいわゆるどんぶり型の紙容器であって、胴部2および底板部3のいずれもが紙を主体として構成されている。なお、上側の開口端には、胴部2の上端縁を外側にカール成形することによるカール部4が形成されており、また下端縁は内側にカール成形することにより底板部3に形成されているフランジ部を巻き込んで底板部3を固定している。そして、その胴部2は上側の開口端の径が底部の径より大きい切頭円錐状(テーパー形状)を成しており、その胴部のテーパー角は、現在流通している一般的な紙容器のテーパー角(例えば13°程度)より比較的大きな角度になっている(例えばテーパー角22°程度)。
【0015】
上記の容器1を成形する工程の概略を図11に示してある。先ず、胴部2は、片面あるいは両面に合成樹脂をラミネート(もしくはコーティング)した板紙であるブランク5を筒状に丸めて構成されており、そのブランク5はカール成形する前の胴部2を平面に展開した形状の板紙であり、扇状に開いた(湾曲した)帯状をなし、その幅は容器1の高さ程度になっている。そのブランク5を切頭円錐状に丸め(少なくとも内面側を樹脂面にして丸め)、その両端部を重ね合わせて接合することにより筒状のシェル6が成形される。そのシェル6の内部に底紙7が挿入されてシェル6の底部近くに接合される。すなわち、底紙7は、上記のブランク5と同様の板紙を素材とした円盤状の部材であり、その外周部には下向きに折り曲げて形成されたフランジ部が設けられている。この底紙7が挿入されたシェル6の下端縁を内側にカール成形して底紙7のフランジ部を巻き込んで接合することにより底紙7がシェル6に固定される。なお、上端部側のカール部4は底紙7を固定した後に成形される。
【0016】
この発明に係るトランスファー装置は、上記の容器1やその中間品であるシェル6などの被搬送体を各工程間で搬送もしくは移送するように構成されており、例えばシェル6を成形する工程からそのシェル6に底板7を取り付ける工程にシェル6を受け渡す場合に使用される。その例の全体的な構成を図1に模式的に示してある。
【0017】
図1において、符号10はシェルフォーミングターレットを示し、このシェルフォーミングターレット10は水平軸線を中心に回転するように構成されており、シェルフォーミングターレット10の外周部にはテーパー状の複数のマンドレル11が一定間隔に配置されている。これらのマンドレル11は、板紙製のブランク(図示せず)を巻き付けてシェル6の成形を行うためのものであって、小径側の端部がシェルフォーミングターレット10の半径方向で外側に突出した状態でシェルフォーミングターレット10に取り付けられている。そのマンドレル11の中心軸線が水平になっている一方の位置が、ブランクをマンドレル11に対して供給する給紙位置12であり、かつ他方の位置がシェル6の受け渡し位置13である。図1に示す例では、図1の左側の位置が給紙位置12となっており、これとは反対側の右側の位置が受け渡し位置13となっている。そして、シェルフォーミングターレット10は、マンドレル11が給紙位置12からその下側に向けて旋回して受け渡し位置13に到るように(図1の矢印方向に)回転する。
【0018】
シェルフォーミングターレット10の上記のような回転に伴ってブランクをシェル6に成形する成形加工は、種々の構成によって行うことが可能であり、従来知られている成形加工やその他の新規な成形加工を適宜採用してよい。その一例を簡単に説明すると、まず、両面が熱可塑性樹脂でラミネートされているブランクでは、その樹脂を接着剤として機能させるために、マンドレル11の給紙位置12に送られる前にブランクは、予めヒーター(図示せず)により、一方の端部の表面側と、他方の端部の裏面側とが熱風加熱される。そのブランクは給紙位置12におけるマンドレル11の下側に供給して位置決めされ、その際にマンドレル11のテーパー形状をなす外周面の母線に対してブランクが平行になるようにブランクを位置決めする。そのブランクを、マンドレル11毎に設けられているブランククランプ(図示せず)によってマンドレル11の外周面との間に挟み付けて固定する。そして、その状態でマンドレル11が給紙位置12から下側に移動することによりブランクの中央部を押し下げ、同時にそのブランクの両側に配置されているガイドバー(図示せず)によってブランクの左右の両翼部(両端部)を相対的に押し上げて、ブランクをマンドレル11の外周面に沿わせていわゆる「U」字状に湾曲させる。
【0019】
シェルフォーミングターレット10が1ピッチ回転すると、ブランクを固定しているマンドレル11が給紙位置12からガイドバーの下端部に近い位置まで移動する。このガイドバーの下端部付近には、「U」字状に湾曲させられているブランクの両端部を、マンドレル11の外周面に沿うように押圧してマンドレル11の外周面に密着させる巻き付け爪(図示せず)が進退自在に配置されており、「U」字状に湾曲させられたブランクはその巻き付け爪によってマンドレル11に対して更に巻き付けられてテーパー形状のシェルに形成される。その場合、ブランクの両端部は、互いに重ね合わされる。
【0020】
そして、マンドレル11毎に設けられたシームクランプ(図示せず)が、互いに重ね合わされたブランクの端部をマンドレル11との間に挟み込み、押圧することにより、樹脂を接着剤としてブランクの両端部を互いに接合する。このような成形加工が、受け渡し位置13に到る過程で行われ、受け渡し位置13に到達したマンドレル11においてはブランクの両端部の接合(接着)は完了しており、したがって前述したブランククランプおよびシームクランプが開いてマンドレル11に巻き付けられたシェル6から離れる。
【0021】
この発明に係るトランスファー装置14は、上記のようにして成形されたシェル6を上記の受け渡し位置13においてフォーミングターレット10から受け取るように配置されている。このトランスファー装置14は、垂直軸線を中心に回転するトランスファーターレット15を備えており、そのトランスファーターレット15の外周部に、シェル6を保持するための複数のチャック16が一定の間隔で配置されている。これらのチャック16は、シェル6の外周面の複数箇所に密着することによりシェル6を保持する把持片17を備えている。その把持片17は、シェル6を確実に保持し、同時にシェル6を変形させないようにするために、把持片17の開口部がシェル6の開口部より小さく、かつ内面がシェル6の外周面におけるテーパー角と一致するように傾斜した傾斜面とされ、さらにその傾斜面にシェル6を真空吸着するように構成されている。
【0022】
トランスファーターレット15にとっては前述した受け渡し位置13がシェル6の受け取り位置となっており、その受け取り位置13から180°水平面内で回転した位置が、シェル6を次工程に受け渡す受け渡し位置18となっている。上記のトランスファーターレット15はいずれかのチャック16が上記の受け取り位置13および受け渡し位置18で一時的に停止するように間欠的に回転させられており、さらにその受け取り位置13および受け渡し位置18において、チャック16がトランスファーターレット15の半径方向で外側に一時的に突出し、その後、元の位置に後退するように構成されている。すなわち、受け取り位置13においては、前記マンドレル11に保持されているシェル6の外周側にチャック16が嵌合し、その状態で把持片17によってシェル6の外周面の複数箇所を真空吸着し、ついでチャック16が元の位置に後退することにより、成形の完了したシェル6をマンドレル11から受け取るように構成されている。
【0023】
また、受け渡し位置18においては、シェル6を把持片17によって保持しているチャック16がトランスファーターレット15の半径方向で外側に一時的に突出し、そのチャック16の先端側の同一軸線上に位置決めされている他のマンドレル19にシェル6を嵌合させるようになっている。このマンドレル19は、シェル6の底部の成形を行うためのボトムフォーミングターレット20に取り付けられている。ボトムフォーミングターレット20は、上記のトランスファーターレット15に隣接する位置で垂直軸線を中心に水平面内で間欠的に回転するように配置されたターレットであって、その外周面に複数のマンドレル19が一定間隔で取り付けられ、それらのマンドレル19が上記の受け渡し位置18に、前記チャック16と同一軸線上に位置するように順次割り出されるように構成されている。そして、上記のチャック16は、この受け渡し位置18において前進することにより、シェル6をマンドレル19に嵌合させ、その状態でシェル6の真空吸着を解除し、ついでトランスファーターレット15側に後退することにより、シェル6をボトムフォーミングターレット20側のマンドレル19に受け渡すようになっている。
【0024】
上述したシェル6の移送あるいは搬送を行うトランスファー装置14の構成をより具体的に説明する。図2はトランスファーターレット15の一例を示す斜視図であって、ここに示すトランスファーターレット15は本発明における回転板に相当するスターホイール21を備えており、そのスターホイール21の外周部においてその円周方向に一定間隔を空けた複数箇所にチャック16が取り付けられている。図3はその取り付け構造を示しており、スターホイール21の外周部にはその半径方向に向けたリニアガイド22が取り付けられており、そのリニアガイド22にスライダー23が前後動自在に係合している。そして、そのスライダー23にチャック16が、スターホイール21の半径方向で外側を向いた状態に取り付けられている。そのチャック16には内面に開口した吸引口24が形成され、図示しない真空源の負圧によってシェル6を真空吸着するようになっている。なお、図3において、吸引口24を真空源に連通させる符号25の接続管(図2に図示)は省略されている。
【0025】
スターホイール21が回転することに伴うチャック16の旋回位置を規定し、また受け取り位置13および受け渡し位置18においてチャック16を前後動させる機構について次に説明する。上述したスターホイール21のうち前記リニアガイド22が設けられている面に対向してトランスファー装置の機枠に固定された固定板26が配置されており、その固定板26のうちスターホイール21に対向する面には、スターホイール21の回転中心を中心とした円形(環状)の溝カム27が設けられている。この溝カム27は、図4に示すように、直径方向で対向する二箇所が他の部分から分離して半径方向外側に移動可能な分離カム28として構成されている。すなわち、前述した受け取り位置13および受け渡し位置18に対応する箇所に分離カム28が設けられている。そして、これら溝カム27および分離カム28には、前記スライダー23に取り付けられたカムフォロアー23Aが係合して周回するようにされており、スライダー23がこれらの溝カム27,分離カム28をガイドとして旋回するとともに、カムフォロアー23Aが分離カム28にちょうど位置しているときに、分離カム28が直線的に移動することにより、スライダー23およびこれと一体のチャック16がリニアガイド22に沿って直線的に移動するように構成されている。
【0026】
前記固定板26には分離カム28の直線的な前後動を許容するための長孔29が形成されており、各分離カム28の基部はその長孔29を貫通して固定板26の裏面(溝カム27が設けられている面とは反対側の面)側に突出している。図5に示すように、この固定板26の裏面には、前記スターホイール21の半径方向に前後動するスライド機構30が設けられており、各分離カム28はそれぞれに対応するスライド機構30に取り付けられている。すなわち、各分離カム28は、溝カム27の円弧上の位置と、その円弧から半径方向で外側に突出した位置との間で前後動するように構成されている。このスライド機構30は、前記固定板26の中心軸を中心として往復動する揺動レバー31にテコ33ならびに各ロッド32a,32b介して連結されている。この揺動レバー31は図示しない間欠駆動装置(例えば、オシレータなど)により所定の振り角で揺動する中空軸31aに取り付けられており、これら揺動レバー31およびテコ33ならびに各ロッド32a,32bおよびスライド機構30が本発明におけるチャックをマンドレルに対して前後動させる駆動機構を構成している。
【0027】
この分離カム28の前後動は、スターホイール21の間欠的な回転に連動して行うように構成されており、スターホイール21が一時的に停止している間に所定角度、往復動させられる二本の揺動レバー31により行われる。この揺動レバー31は、前述の通り、固定板26の裏面における中心部に設けられている。それらの揺動レバー31は固定板の中心に対して対称となる位置に配置され、それぞれの先端部は、ロッド32aを介してテコ33の一端部に連結されている。そして、これらのテコ33の他端部が他のロッド32bを介してスライド機構30に連結されている。したがって、図示しない間欠駆動装置により揺動レバー31が一回、往復動することにより、スライド機構30を介して分離カム28が直線的に前後動し、その分離カム28に係合しているチャック16もそれに伴い前後動するように構成されている。
【0028】
ここで、チャック16の他の例を説明すると、図6および図7は上下二枚の把持片17によってチャック16を構成した例を示しており、これらの把持片17の内面はシェル6の外周面に対応して湾曲状に形成されており、かつシェル6の外周面のテーパー形状に即して先端側が開いた傾斜面となっている。また、向かい合う把持片17,17の距離をセットボルト17aによりシェル6に対する位置合わせおよび嵌合性の微調整が可能となっている。そして、各把持片17の内面の中央部には、所定の間隔を空けて左右一対の吸引口24が形成されている。したがって、シェル6に対して下側に位置する一方の把持片17における各吸引口24は、シェル6におけるシーム部(ブランクの端部同士を重ね合わせて接合してある部分)34を挟んだ両側に位置し、シーム部34を真空吸着することにより、ブランクの互いに接合した端部同士の間に、それらを剥離させる荷重が可及的に作用しないようになっている。
【0029】
なお、吸引口24を介したシェル6の真空吸着およびその解除は、スターホイール21の回転および分離カム28によるチャック16の前後動に同期して、図示しないバルブを開閉して行うように構成されている。
【0030】
つぎに上述したトランスファー装置14の作用について説明する。トランスファー装置14におけるスターホイール21は、シェルフォーミングターレット10と同期して回転しており、スターホイール21に取り付けられているいずれかのチャック16は、受け取り位置13においてシェル6が嵌合しているマンドレル11と同一軸線上に対向して位置決めされる。この状態を図8の(a)に模式的に示してある。この状態でシェルフォーミングターレット10およびトランスファーターレット15は一時的に停止し、その間に前述した揺動レバー31が1回揺動(往復動)する。揺動レバー31の揺動動作は、前述したロッド32a,32bおよびテコ33を介してスライド機構30に伝達され、そのスライド機構30が直線的に前後動する。したがってそのスライド機構30に連結されている分離カム28が同様に直線的に前後動し、その結果、受け取り位置13において分離カム28にカムフォロアー23Aを介して連結されているスライダー23、およびそのスライダー23に取り付けられているチャック16が、マンドレル11に向けてリニアガイド22に沿って前進し、その後に後退する。
【0031】
チャック16は、その内側の形状がシェル6の外形に対応する形状とされているので、マンドレル11に向けて前進することによりチャック16の内側でシェル6の外周面を保持する。その状態を図8の(b)に模式的に示してある。その時点で吸引口24が図示しないバルブによって真空源に連通させられて、シェル6がチャック16の内部に真空吸着される。したがって、チャック16が後退すると、図8の(c)に示すように、シェル6はチャック16によって把持されてマンドレル11から抜き取られる。
【0032】
その場合、チャック16を構成している把持片17は、特にシェル6の接合部の両側とそれと相対する複数箇所でシェル6の外周面を真空吸着してシェル6を保持するので、シェル6を撓ませるなど変形させる荷重がシェル6に作用しにくく、シェル6が紙製であって剛性が低いとしてもその変形を回避もしくは抑制することができる。特に、図6および図7に示すように構成した場合には、シーム部34を跨いだ両側を真空吸着するので、シーム部34での剥離や変形を回避することができる。また、マンドレル11に嵌合しているままの状態で、シーム部34を隣り合う把持片17との間に位置させてシェル6をチャック16が保持するので、シェル6の姿勢や向きなどが変化することがなく、しかもブランクが重なって厚みがあるシーム部34に影響されることなく、きっちりとチャック16に保持される。そのため、チャック16に保持されたシェル6の開口端と受け渡したマンドレル11との間隙が小さい場合であっても、受け渡された後の搬送の過程でシェル6がマンドレル11に接触するようなトラブルを避けることができ、チャック6を大きくストロークさせる必要がなく高速化にとって有利となる。
【0033】
前述したようにシェルフォーミングターレット10とスターホイール21とは同期して1ピッチずつ間欠的に回転しているので、スターホイール21におけるいわゆる後続のチャック16においても、上述したようにしてシェルフォーミングターレット10におけるマンドレル11からシェル6が順次受け渡される。シェル6をマンドレル11から受け取ったチャック16は、スターホイール21が間欠的に回転していることにより、所定ピッチ移動した後、ボトムフォーミングターレット20に対する受け渡し位置18に移動する。受け渡し位置18においては、スライダー23に取り付けてあるカムフォロアー23Aが分離カム28に係合しており、したがって揺動レバー31が前述したように1回揺動(往復動)することにより、その分離カム28およびこれに係合しているカムフォロアー23Aならびにスライダー23が、ボトムフォーミングターレット20に向けて直線的に往復動する。
【0034】
スターホイール21とボトムフォーミングターレット20とは同期して1ピッチずつ間欠的に回転しているので、受け渡し位置18においては、チャック16とボトムフォーミングターレット20におけるマンドレル19とが同一軸線上で対向している。その状態を図9の(a)に模式的に示してある。したがってシェル6を保持しているチャック16がスライダー23と共に前進すると、そのシェル6は、図9の(b)に模式的に示すように、マンドレル19の外周側に嵌合させられる。ついで、図示しないバルブが閉じ、またボトムフォーミングターレット20におけるマンドレル19での吸引が行われることにより、シェル6はマンドレル19に吸着される。その後、チャック16は分離カム28およびスライダー23と共に元の位置に後退移動する。その状態を図9の(c)に模式的に示してある。このボトムフォーミングターレット20におけるマンドレル19に対する受け渡しの場合においてもシェル6の姿勢や向きが変化することがないことは説明するまでもない。
【0035】
なお、上記の説明では、シェルフォーミングターレット10からのシェル6の受け取り、およびボトムフォーミングターレット20に対するシェル6の受け渡しが別個に行われるように説明したが、図5に示す機構から明らかなように、それぞれのスライド機構30が、トランスファーターレット15の垂直軸と同軸上にある中空軸31aに取り付けられた揺動レバー31により同時に作動できるようにしているため、揺動レバー31が1回揺動すると、受け取り位置13での分離カム28および受け渡し位置18での分離カム28のそれぞれが1回、直線的に往復動するので、シェルフォーミングターレット10からのシェル6の受け取り、およびボトムフォーミングターレット20に対するシェル6の受け渡しは、時間的に同時に実行される。
【0036】
なお、上記の具体例では、被搬送体であるシェルの受け取りと受け渡しとの両方を、チャックの前後進によって行うように構成された例を説明したが、本発明では、受け取りと受け渡しとのいずれか一方のみを、チャックの前後進によって行うように構成してもよい。また、本発明における被搬送体はテーパー形状の筒状体であるシェルに限られないのであって、そのシェルに底板を取り付けたテーパー形状容器中間製品であってもよい。さらに、チャックは、被搬送体をその外周側から包み込むように保持する構成であればよく、テーパー状の中空形状のものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…容器、 6…シェル、 10…シェルフォーミングターレット、 11…マンドレル、 13…受け取り位置(受け渡し位置)、 14…トランスファー装置、 15…トランスファーターレット、 16…チャック、 17…把持片、 18…受け渡し位置、 19…マンドレル、 21…スターホイール、 22…リニアガイド、 23…スライダー、 23A…カムフォロアー、 24…吸引口、 27…溝カム、 28…分離カム、 30…スライド機構、 31…揺動レバー、 34…シーム部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙を素材として形成された切頭円錐状(以下、「テーパー形状」とも呼ぶ)のシェルやそのシェルの底部に板紙製の底板を取り付けたテーパー形状の紙容器などをその製造過程で各種の成形機の間で搬送あるいは移送するトランスファー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インスタント食品やスナック菓子などの食品用の容器として、コップや椀などのガラス製あるいは陶器製の容器を模して樹脂で作られた容器が使用されていることは周知のとおりである。これらの容器は樹脂製であることにより成形性が良好で、形状の自由度が高いが、最近では環境に対する負荷の低減や加工技術の向上によって、従来樹脂製とされていた容器を紙製とすることが試みられるようになってきている。
【0003】
板紙を素材として、コップや椀などを模した上記の容器を製造する場合、樹脂を素材とする場合とは異なり、複数の部品を予め成形し、それらの部品を組み立てることになる。したがって、それらの部品や組み立てられた中間品などを、各工程の間で搬送もしくは移送する必要がある。このような搬送あるいは移送を行う装置の一例として特許文献1には、板紙をマンドレルに巻き付けて円筒状に形成した容器を、その内部に空気を吹き込んでマンドレルから抜き出させるとともに、その先方に待機させてあるターレットのポケット部に飛び込ませてそのポケット部で受け取るように構成された装置が記載されている。また、特許文献2には、板紙製のブランクをテーパー状のマンドレルに巻き付けるとともに、そのブランクの両端部を重ね合わせて接合されたテーパー形状のシェルを成形し、そのシェルをさらに加工するために、シェルを次工程に移送するための吸引ヘッドをシェルの外周面の一部に密着させてシェルを吸着し、その状態で吸引ヘッドを移動させてシェルをマンドレルから抜き取るように構成されたトランスファー装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3958501号明細書
【特許文献2】特開昭57−17733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載されている装置は、その図に記載されているように、外径に対して長さが長い円筒状の容器を対象とするものであり、したがってマンドレルからその容器の内部に圧縮空気を吹き込めば、容器はマンドレルの軸線方向に比較的安定して飛翔し、次工程のターレット等のポケット部にシェルを受け渡しすることができる。しかしながら、このような装置は、底板が既に取り付けられている容器を対象とする場合に限られるだけでなく、底板が既に取り付けられている容器の場合であっても、安定して受け渡しのできる容器の形状が限定されてしまう。すなわち、テーパー角が比較的大きい容器もしくは容器開口部の外径に対して長さ(容器としては高さ)が比較的短い容器を、上記のように圧縮空気によって軸線方向に飛翔させるとした場合、その飛翔方向が変化するなど不安定になって目標箇所(次工程のポケット等)に到達させることが困難であり、またたとえ目標箇所に到達させることができたとしても、容器もしくは容器シェルの向きが反転するなど、容器の姿勢にズレが生じる可能性が高くなる。さらにまた、容器もしくは容器シェルをターレットのポケット部に収めることができたとしても、容器が飛翔の過程で周方向に回ってしまう虞もあり、ブランクの両端部の合わせ目であるシーム部の位置を確実に一定にすることはできず、後工程での容器の取り扱い(ハンドリング)で支障を来したり、カール等の成形でシーム部のズレに伴う成形不良を起こしたりする場合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載されている紙容器製造装置におけるトランスファー装置は、マンドレルに巻回されて嵌合しているシェルの外周面の一部に吸引ヘッドを吸着させ、その吸引ヘッドによりスピンドル(マンドレル)からシェルを引き出すようにしているため、シェルが歪んで変形してスピンドルから引き出しにくくなる。特に、容器を薄肉化したり、高さに対して外径の大きい形状とした場合には、底板が取り付けられていないこともありシェルの剛性が低くなるので、より変形が生じ真円性が損なわれたりし易くなる。
【0007】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、テーパー形状の紙容器もしくはその中間品などの被搬送体を、変形させたり姿勢にズレを生じさせたりすることなく安定して搬送もしくは移送することのでき、高速化に対応できるトランスファー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、小径側をマンドレルの先端側にした状態でそのマンドレルに嵌合させられるテーパー形状紙容器用の被搬送体を前記マンドレルから受け取り、あるいは受け取った被搬送体を他のマンドレルへ受け渡す紙容器用トランスファー装置において、前記被搬送体の受け渡しを行う授受位置に停止している前記マンドレルあるいは他のマンドレルの先端側で間欠的に回転するトランスファーターレットと、そのターレットの外周部に一定間隔で取り付けられ、前記授受位置におけるマンドレルの先端側に前記マンドレルあるいは他のマンドレルと対向するように位置決めされ、かつ前記被搬送体の外周面の少なくとも周方向の複数箇所に接触して被搬送体を保持するチャックと、そのチャックを前記授受位置において前記マンドレルに対して前進させかつ後退させる前進後退機構とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記チャックは、前記被搬送体の外周面の少なくとも周方向の複数箇所に接触して被搬送体を把持する複数の把持片を有し、前記各把持片の内面は、前記被搬送体のテーパー状の外周面における母線角度に対応する傾斜面とされ、その内面に前記被搬送体の外周面を吸着させる吸引手段が設けられていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記トランスファーターレットは、回転板を有し、前進後退機構は、その回転板の周辺部に取り付けられかつ前記チャックを前記回転板の半径方向に前後動するようにガイドするリニアガイドと、前記チャックに設けられたカムフォロアーと、前記回転板に対向して固定されかつ前記チャックが前記マンドレルから後退した位置で前記回転板と共に回転するよう前記カムフォロアーを係合させてガイドするカムと、前記カムのうち前記チャックが授受位置でマンドレルと対向している状態で前記カムフォロアーが係合している部分が他の部分から分割されている分割カムと、その分割カムごと前記チャックを前記マンドレルに対して前後動させる駆動機構とを備えていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2または3の発明において、前記被搬送体は、板紙製ブランクを丸めてその両端部同士を接合することによりテーパー形状に形成されたシェルであって、前記吸引手段は、前記両端部の互いに接合されたシーム部を挟んだ両側を同時に吸着する吸引口を有する把持片を備えていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明における被搬送体は、テーパー形状紙容器あるいはこれを製造する過程での中間品であり、外周面がテーパー状を成すマンドレルに嵌合させられ、したがってその被搬送体もテーパー形状をなしている。その被搬送体は、マンドレルに対して前後動させられるチャックによってマンドレルから抜き取られてチャックに保持され、あるいはチャックから他のマンドレルに受け渡される。そのチャックは、被搬送体の外周面の複数箇所に密着して被搬送体を保持するように構成されているので、被搬送体の向きや姿勢を変えずにマンドレルから受け取り、あるいは受け取った被搬送体を他のマンドレルへ確実に受け渡すことができる。また、円周方向の複数箇所に密着して被搬送体を把持するので、剛性の低い被搬送体であっても真円性を損なわせるような変形を生じさせることがなく安定した受け渡しができる。特に、請求項2に記載してあるように、吸着して把持するように構成した場合には、テーパー形状の被搬送体の外周面における母線角度に対応する傾斜面とされた把持片で被搬送体の外周面の複数箇所を把持して被搬送体を保持するように構成されているので、被搬送体の変形をより確実に防止もしくは抑制することができる。さらに請求項4に記載されている構成によれば、シーム部の両側が同時に吸着されるので、シーム部に対してバランスの良い吸着が行え、シーム部を剥離させるようなことを防止もしくは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るトランスファー装置を組み込んだ成形ラインの一部を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係るトランスファー装置の主要部を斜め下から見た斜視図である。
【図3】そのスライド機構によるチャックの前後動を説明するための部分側面図である。
【図4】その固定板および溝カムならびに分割カムを斜め下から見た斜視図である。
【図5】そのスライド機構を前後動させるためのリンク機構を示す平面図である。
【図6】チャックの他の例を示す斜視図である。
【図7】そのチャックにおける吸引口の位置を示すための斜視図である。
【図8】シェルフォーミングターレットからシェルを受け取る場合の動作を説明するための模式図である。
【図9】ボトムフォーミングターレットに対してシェルを受け渡す場合の動作を説明するための模式図である。
【図10】この発明で対象とする容器の一例を示す断面図である。
【図11】その成形過程を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、この発明の成形機で成形する容器の一例について説明すると、図10にその容器1の一例を断面図で示してあり、この容器1は外径に対して高さが相対的に低く、開口部が大きい(例えば直径140mm以上)のいわゆるどんぶり型の紙容器であって、胴部2および底板部3のいずれもが紙を主体として構成されている。なお、上側の開口端には、胴部2の上端縁を外側にカール成形することによるカール部4が形成されており、また下端縁は内側にカール成形することにより底板部3に形成されているフランジ部を巻き込んで底板部3を固定している。そして、その胴部2は上側の開口端の径が底部の径より大きい切頭円錐状(テーパー形状)を成しており、その胴部のテーパー角は、現在流通している一般的な紙容器のテーパー角(例えば13°程度)より比較的大きな角度になっている(例えばテーパー角22°程度)。
【0015】
上記の容器1を成形する工程の概略を図11に示してある。先ず、胴部2は、片面あるいは両面に合成樹脂をラミネート(もしくはコーティング)した板紙であるブランク5を筒状に丸めて構成されており、そのブランク5はカール成形する前の胴部2を平面に展開した形状の板紙であり、扇状に開いた(湾曲した)帯状をなし、その幅は容器1の高さ程度になっている。そのブランク5を切頭円錐状に丸め(少なくとも内面側を樹脂面にして丸め)、その両端部を重ね合わせて接合することにより筒状のシェル6が成形される。そのシェル6の内部に底紙7が挿入されてシェル6の底部近くに接合される。すなわち、底紙7は、上記のブランク5と同様の板紙を素材とした円盤状の部材であり、その外周部には下向きに折り曲げて形成されたフランジ部が設けられている。この底紙7が挿入されたシェル6の下端縁を内側にカール成形して底紙7のフランジ部を巻き込んで接合することにより底紙7がシェル6に固定される。なお、上端部側のカール部4は底紙7を固定した後に成形される。
【0016】
この発明に係るトランスファー装置は、上記の容器1やその中間品であるシェル6などの被搬送体を各工程間で搬送もしくは移送するように構成されており、例えばシェル6を成形する工程からそのシェル6に底板7を取り付ける工程にシェル6を受け渡す場合に使用される。その例の全体的な構成を図1に模式的に示してある。
【0017】
図1において、符号10はシェルフォーミングターレットを示し、このシェルフォーミングターレット10は水平軸線を中心に回転するように構成されており、シェルフォーミングターレット10の外周部にはテーパー状の複数のマンドレル11が一定間隔に配置されている。これらのマンドレル11は、板紙製のブランク(図示せず)を巻き付けてシェル6の成形を行うためのものであって、小径側の端部がシェルフォーミングターレット10の半径方向で外側に突出した状態でシェルフォーミングターレット10に取り付けられている。そのマンドレル11の中心軸線が水平になっている一方の位置が、ブランクをマンドレル11に対して供給する給紙位置12であり、かつ他方の位置がシェル6の受け渡し位置13である。図1に示す例では、図1の左側の位置が給紙位置12となっており、これとは反対側の右側の位置が受け渡し位置13となっている。そして、シェルフォーミングターレット10は、マンドレル11が給紙位置12からその下側に向けて旋回して受け渡し位置13に到るように(図1の矢印方向に)回転する。
【0018】
シェルフォーミングターレット10の上記のような回転に伴ってブランクをシェル6に成形する成形加工は、種々の構成によって行うことが可能であり、従来知られている成形加工やその他の新規な成形加工を適宜採用してよい。その一例を簡単に説明すると、まず、両面が熱可塑性樹脂でラミネートされているブランクでは、その樹脂を接着剤として機能させるために、マンドレル11の給紙位置12に送られる前にブランクは、予めヒーター(図示せず)により、一方の端部の表面側と、他方の端部の裏面側とが熱風加熱される。そのブランクは給紙位置12におけるマンドレル11の下側に供給して位置決めされ、その際にマンドレル11のテーパー形状をなす外周面の母線に対してブランクが平行になるようにブランクを位置決めする。そのブランクを、マンドレル11毎に設けられているブランククランプ(図示せず)によってマンドレル11の外周面との間に挟み付けて固定する。そして、その状態でマンドレル11が給紙位置12から下側に移動することによりブランクの中央部を押し下げ、同時にそのブランクの両側に配置されているガイドバー(図示せず)によってブランクの左右の両翼部(両端部)を相対的に押し上げて、ブランクをマンドレル11の外周面に沿わせていわゆる「U」字状に湾曲させる。
【0019】
シェルフォーミングターレット10が1ピッチ回転すると、ブランクを固定しているマンドレル11が給紙位置12からガイドバーの下端部に近い位置まで移動する。このガイドバーの下端部付近には、「U」字状に湾曲させられているブランクの両端部を、マンドレル11の外周面に沿うように押圧してマンドレル11の外周面に密着させる巻き付け爪(図示せず)が進退自在に配置されており、「U」字状に湾曲させられたブランクはその巻き付け爪によってマンドレル11に対して更に巻き付けられてテーパー形状のシェルに形成される。その場合、ブランクの両端部は、互いに重ね合わされる。
【0020】
そして、マンドレル11毎に設けられたシームクランプ(図示せず)が、互いに重ね合わされたブランクの端部をマンドレル11との間に挟み込み、押圧することにより、樹脂を接着剤としてブランクの両端部を互いに接合する。このような成形加工が、受け渡し位置13に到る過程で行われ、受け渡し位置13に到達したマンドレル11においてはブランクの両端部の接合(接着)は完了しており、したがって前述したブランククランプおよびシームクランプが開いてマンドレル11に巻き付けられたシェル6から離れる。
【0021】
この発明に係るトランスファー装置14は、上記のようにして成形されたシェル6を上記の受け渡し位置13においてフォーミングターレット10から受け取るように配置されている。このトランスファー装置14は、垂直軸線を中心に回転するトランスファーターレット15を備えており、そのトランスファーターレット15の外周部に、シェル6を保持するための複数のチャック16が一定の間隔で配置されている。これらのチャック16は、シェル6の外周面の複数箇所に密着することによりシェル6を保持する把持片17を備えている。その把持片17は、シェル6を確実に保持し、同時にシェル6を変形させないようにするために、把持片17の開口部がシェル6の開口部より小さく、かつ内面がシェル6の外周面におけるテーパー角と一致するように傾斜した傾斜面とされ、さらにその傾斜面にシェル6を真空吸着するように構成されている。
【0022】
トランスファーターレット15にとっては前述した受け渡し位置13がシェル6の受け取り位置となっており、その受け取り位置13から180°水平面内で回転した位置が、シェル6を次工程に受け渡す受け渡し位置18となっている。上記のトランスファーターレット15はいずれかのチャック16が上記の受け取り位置13および受け渡し位置18で一時的に停止するように間欠的に回転させられており、さらにその受け取り位置13および受け渡し位置18において、チャック16がトランスファーターレット15の半径方向で外側に一時的に突出し、その後、元の位置に後退するように構成されている。すなわち、受け取り位置13においては、前記マンドレル11に保持されているシェル6の外周側にチャック16が嵌合し、その状態で把持片17によってシェル6の外周面の複数箇所を真空吸着し、ついでチャック16が元の位置に後退することにより、成形の完了したシェル6をマンドレル11から受け取るように構成されている。
【0023】
また、受け渡し位置18においては、シェル6を把持片17によって保持しているチャック16がトランスファーターレット15の半径方向で外側に一時的に突出し、そのチャック16の先端側の同一軸線上に位置決めされている他のマンドレル19にシェル6を嵌合させるようになっている。このマンドレル19は、シェル6の底部の成形を行うためのボトムフォーミングターレット20に取り付けられている。ボトムフォーミングターレット20は、上記のトランスファーターレット15に隣接する位置で垂直軸線を中心に水平面内で間欠的に回転するように配置されたターレットであって、その外周面に複数のマンドレル19が一定間隔で取り付けられ、それらのマンドレル19が上記の受け渡し位置18に、前記チャック16と同一軸線上に位置するように順次割り出されるように構成されている。そして、上記のチャック16は、この受け渡し位置18において前進することにより、シェル6をマンドレル19に嵌合させ、その状態でシェル6の真空吸着を解除し、ついでトランスファーターレット15側に後退することにより、シェル6をボトムフォーミングターレット20側のマンドレル19に受け渡すようになっている。
【0024】
上述したシェル6の移送あるいは搬送を行うトランスファー装置14の構成をより具体的に説明する。図2はトランスファーターレット15の一例を示す斜視図であって、ここに示すトランスファーターレット15は本発明における回転板に相当するスターホイール21を備えており、そのスターホイール21の外周部においてその円周方向に一定間隔を空けた複数箇所にチャック16が取り付けられている。図3はその取り付け構造を示しており、スターホイール21の外周部にはその半径方向に向けたリニアガイド22が取り付けられており、そのリニアガイド22にスライダー23が前後動自在に係合している。そして、そのスライダー23にチャック16が、スターホイール21の半径方向で外側を向いた状態に取り付けられている。そのチャック16には内面に開口した吸引口24が形成され、図示しない真空源の負圧によってシェル6を真空吸着するようになっている。なお、図3において、吸引口24を真空源に連通させる符号25の接続管(図2に図示)は省略されている。
【0025】
スターホイール21が回転することに伴うチャック16の旋回位置を規定し、また受け取り位置13および受け渡し位置18においてチャック16を前後動させる機構について次に説明する。上述したスターホイール21のうち前記リニアガイド22が設けられている面に対向してトランスファー装置の機枠に固定された固定板26が配置されており、その固定板26のうちスターホイール21に対向する面には、スターホイール21の回転中心を中心とした円形(環状)の溝カム27が設けられている。この溝カム27は、図4に示すように、直径方向で対向する二箇所が他の部分から分離して半径方向外側に移動可能な分離カム28として構成されている。すなわち、前述した受け取り位置13および受け渡し位置18に対応する箇所に分離カム28が設けられている。そして、これら溝カム27および分離カム28には、前記スライダー23に取り付けられたカムフォロアー23Aが係合して周回するようにされており、スライダー23がこれらの溝カム27,分離カム28をガイドとして旋回するとともに、カムフォロアー23Aが分離カム28にちょうど位置しているときに、分離カム28が直線的に移動することにより、スライダー23およびこれと一体のチャック16がリニアガイド22に沿って直線的に移動するように構成されている。
【0026】
前記固定板26には分離カム28の直線的な前後動を許容するための長孔29が形成されており、各分離カム28の基部はその長孔29を貫通して固定板26の裏面(溝カム27が設けられている面とは反対側の面)側に突出している。図5に示すように、この固定板26の裏面には、前記スターホイール21の半径方向に前後動するスライド機構30が設けられており、各分離カム28はそれぞれに対応するスライド機構30に取り付けられている。すなわち、各分離カム28は、溝カム27の円弧上の位置と、その円弧から半径方向で外側に突出した位置との間で前後動するように構成されている。このスライド機構30は、前記固定板26の中心軸を中心として往復動する揺動レバー31にテコ33ならびに各ロッド32a,32b介して連結されている。この揺動レバー31は図示しない間欠駆動装置(例えば、オシレータなど)により所定の振り角で揺動する中空軸31aに取り付けられており、これら揺動レバー31およびテコ33ならびに各ロッド32a,32bおよびスライド機構30が本発明におけるチャックをマンドレルに対して前後動させる駆動機構を構成している。
【0027】
この分離カム28の前後動は、スターホイール21の間欠的な回転に連動して行うように構成されており、スターホイール21が一時的に停止している間に所定角度、往復動させられる二本の揺動レバー31により行われる。この揺動レバー31は、前述の通り、固定板26の裏面における中心部に設けられている。それらの揺動レバー31は固定板の中心に対して対称となる位置に配置され、それぞれの先端部は、ロッド32aを介してテコ33の一端部に連結されている。そして、これらのテコ33の他端部が他のロッド32bを介してスライド機構30に連結されている。したがって、図示しない間欠駆動装置により揺動レバー31が一回、往復動することにより、スライド機構30を介して分離カム28が直線的に前後動し、その分離カム28に係合しているチャック16もそれに伴い前後動するように構成されている。
【0028】
ここで、チャック16の他の例を説明すると、図6および図7は上下二枚の把持片17によってチャック16を構成した例を示しており、これらの把持片17の内面はシェル6の外周面に対応して湾曲状に形成されており、かつシェル6の外周面のテーパー形状に即して先端側が開いた傾斜面となっている。また、向かい合う把持片17,17の距離をセットボルト17aによりシェル6に対する位置合わせおよび嵌合性の微調整が可能となっている。そして、各把持片17の内面の中央部には、所定の間隔を空けて左右一対の吸引口24が形成されている。したがって、シェル6に対して下側に位置する一方の把持片17における各吸引口24は、シェル6におけるシーム部(ブランクの端部同士を重ね合わせて接合してある部分)34を挟んだ両側に位置し、シーム部34を真空吸着することにより、ブランクの互いに接合した端部同士の間に、それらを剥離させる荷重が可及的に作用しないようになっている。
【0029】
なお、吸引口24を介したシェル6の真空吸着およびその解除は、スターホイール21の回転および分離カム28によるチャック16の前後動に同期して、図示しないバルブを開閉して行うように構成されている。
【0030】
つぎに上述したトランスファー装置14の作用について説明する。トランスファー装置14におけるスターホイール21は、シェルフォーミングターレット10と同期して回転しており、スターホイール21に取り付けられているいずれかのチャック16は、受け取り位置13においてシェル6が嵌合しているマンドレル11と同一軸線上に対向して位置決めされる。この状態を図8の(a)に模式的に示してある。この状態でシェルフォーミングターレット10およびトランスファーターレット15は一時的に停止し、その間に前述した揺動レバー31が1回揺動(往復動)する。揺動レバー31の揺動動作は、前述したロッド32a,32bおよびテコ33を介してスライド機構30に伝達され、そのスライド機構30が直線的に前後動する。したがってそのスライド機構30に連結されている分離カム28が同様に直線的に前後動し、その結果、受け取り位置13において分離カム28にカムフォロアー23Aを介して連結されているスライダー23、およびそのスライダー23に取り付けられているチャック16が、マンドレル11に向けてリニアガイド22に沿って前進し、その後に後退する。
【0031】
チャック16は、その内側の形状がシェル6の外形に対応する形状とされているので、マンドレル11に向けて前進することによりチャック16の内側でシェル6の外周面を保持する。その状態を図8の(b)に模式的に示してある。その時点で吸引口24が図示しないバルブによって真空源に連通させられて、シェル6がチャック16の内部に真空吸着される。したがって、チャック16が後退すると、図8の(c)に示すように、シェル6はチャック16によって把持されてマンドレル11から抜き取られる。
【0032】
その場合、チャック16を構成している把持片17は、特にシェル6の接合部の両側とそれと相対する複数箇所でシェル6の外周面を真空吸着してシェル6を保持するので、シェル6を撓ませるなど変形させる荷重がシェル6に作用しにくく、シェル6が紙製であって剛性が低いとしてもその変形を回避もしくは抑制することができる。特に、図6および図7に示すように構成した場合には、シーム部34を跨いだ両側を真空吸着するので、シーム部34での剥離や変形を回避することができる。また、マンドレル11に嵌合しているままの状態で、シーム部34を隣り合う把持片17との間に位置させてシェル6をチャック16が保持するので、シェル6の姿勢や向きなどが変化することがなく、しかもブランクが重なって厚みがあるシーム部34に影響されることなく、きっちりとチャック16に保持される。そのため、チャック16に保持されたシェル6の開口端と受け渡したマンドレル11との間隙が小さい場合であっても、受け渡された後の搬送の過程でシェル6がマンドレル11に接触するようなトラブルを避けることができ、チャック6を大きくストロークさせる必要がなく高速化にとって有利となる。
【0033】
前述したようにシェルフォーミングターレット10とスターホイール21とは同期して1ピッチずつ間欠的に回転しているので、スターホイール21におけるいわゆる後続のチャック16においても、上述したようにしてシェルフォーミングターレット10におけるマンドレル11からシェル6が順次受け渡される。シェル6をマンドレル11から受け取ったチャック16は、スターホイール21が間欠的に回転していることにより、所定ピッチ移動した後、ボトムフォーミングターレット20に対する受け渡し位置18に移動する。受け渡し位置18においては、スライダー23に取り付けてあるカムフォロアー23Aが分離カム28に係合しており、したがって揺動レバー31が前述したように1回揺動(往復動)することにより、その分離カム28およびこれに係合しているカムフォロアー23Aならびにスライダー23が、ボトムフォーミングターレット20に向けて直線的に往復動する。
【0034】
スターホイール21とボトムフォーミングターレット20とは同期して1ピッチずつ間欠的に回転しているので、受け渡し位置18においては、チャック16とボトムフォーミングターレット20におけるマンドレル19とが同一軸線上で対向している。その状態を図9の(a)に模式的に示してある。したがってシェル6を保持しているチャック16がスライダー23と共に前進すると、そのシェル6は、図9の(b)に模式的に示すように、マンドレル19の外周側に嵌合させられる。ついで、図示しないバルブが閉じ、またボトムフォーミングターレット20におけるマンドレル19での吸引が行われることにより、シェル6はマンドレル19に吸着される。その後、チャック16は分離カム28およびスライダー23と共に元の位置に後退移動する。その状態を図9の(c)に模式的に示してある。このボトムフォーミングターレット20におけるマンドレル19に対する受け渡しの場合においてもシェル6の姿勢や向きが変化することがないことは説明するまでもない。
【0035】
なお、上記の説明では、シェルフォーミングターレット10からのシェル6の受け取り、およびボトムフォーミングターレット20に対するシェル6の受け渡しが別個に行われるように説明したが、図5に示す機構から明らかなように、それぞれのスライド機構30が、トランスファーターレット15の垂直軸と同軸上にある中空軸31aに取り付けられた揺動レバー31により同時に作動できるようにしているため、揺動レバー31が1回揺動すると、受け取り位置13での分離カム28および受け渡し位置18での分離カム28のそれぞれが1回、直線的に往復動するので、シェルフォーミングターレット10からのシェル6の受け取り、およびボトムフォーミングターレット20に対するシェル6の受け渡しは、時間的に同時に実行される。
【0036】
なお、上記の具体例では、被搬送体であるシェルの受け取りと受け渡しとの両方を、チャックの前後進によって行うように構成された例を説明したが、本発明では、受け取りと受け渡しとのいずれか一方のみを、チャックの前後進によって行うように構成してもよい。また、本発明における被搬送体はテーパー形状の筒状体であるシェルに限られないのであって、そのシェルに底板を取り付けたテーパー形状容器中間製品であってもよい。さらに、チャックは、被搬送体をその外周側から包み込むように保持する構成であればよく、テーパー状の中空形状のものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…容器、 6…シェル、 10…シェルフォーミングターレット、 11…マンドレル、 13…受け取り位置(受け渡し位置)、 14…トランスファー装置、 15…トランスファーターレット、 16…チャック、 17…把持片、 18…受け渡し位置、 19…マンドレル、 21…スターホイール、 22…リニアガイド、 23…スライダー、 23A…カムフォロアー、 24…吸引口、 27…溝カム、 28…分離カム、 30…スライド機構、 31…揺動レバー、 34…シーム部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小径側をマンドレルの先端側にした状態でそのマンドレルに嵌合させられるテーパー形状紙容器用の被搬送体を前記マンドレルから受け取り、あるいは受け取った被搬送体を他のマンドレルへ受け渡す紙容器用トランスファー装置において、前記被搬送体の受け渡しを行う授受位置に停止している前記マンドレルあるいは他のマンドレルの先端側で間欠的に回転するトランスファーターレットと、そのターレットの外周部に一定間隔で取り付けられ、前記授受位置におけるマンドレルの先端側に前記マンドレルあるいは他のマンドレルと対向するように位置決めされ、かつ前記被搬送体の外周面の少なくとも周方向の複数箇所に接触して被搬送体を保持するチャックと、そのチャックを前記授受位置において前記マンドレルに対して前進させかつ後退させる前進後退機構とを備えていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置。
【請求項2】
前記各チャックは、前記被搬送体の外周面の複数箇所に接触して被搬送体を把持する複数の把持片を有し、各把持片の内面は、前記被搬送体のテーパー状の外周面における母線角度に対応する傾斜面とされ、その内面に前記被搬送体の外周面を吸着させる吸引手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紙容器用トランスファー装置。
【請求項3】
前記トランスファーターレットは、回転板を有し、
前進後退機構は、その回転板の周辺部に取り付けられかつ前記チャックを前記回転板の半径方向に前後動するようにガイドするリニアガイドと、前記チャックに設けられたカムフォロアーと、前記回転板に対向して固定されかつ前記チャックが前記マンドレルから後退した位置で前記回転板と共に回転するよう前記カムフォロアーを係合させてガイドするカムと、前記カムのうち前記チャックが前記授受位置でマンドレルと対向している状態で前記カムフォロアーが係合している部分が他の部分から分割されることにより形成された分割カムと、その分割カムごと前記チャックを前記マンドレルに対して前後動させる駆動機構とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙容器用トランスファー装置。
【請求項4】
前記被搬送体は、板紙製ブランクを丸めてその両端部同士を接合することによりテーパー形状のシェルに形成され、
前記吸引手段は、前記両端部の互いに接合されたシーム部を挟んだ両側を同時に吸着する吸引口を有する把持片備えている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の紙容器用トランスファー装置。
【請求項1】
小径側をマンドレルの先端側にした状態でそのマンドレルに嵌合させられるテーパー形状紙容器用の被搬送体を前記マンドレルから受け取り、あるいは受け取った被搬送体を他のマンドレルへ受け渡す紙容器用トランスファー装置において、前記被搬送体の受け渡しを行う授受位置に停止している前記マンドレルあるいは他のマンドレルの先端側で間欠的に回転するトランスファーターレットと、そのターレットの外周部に一定間隔で取り付けられ、前記授受位置におけるマンドレルの先端側に前記マンドレルあるいは他のマンドレルと対向するように位置決めされ、かつ前記被搬送体の外周面の少なくとも周方向の複数箇所に接触して被搬送体を保持するチャックと、そのチャックを前記授受位置において前記マンドレルに対して前進させかつ後退させる前進後退機構とを備えていることを特徴とする紙容器用トランスファー装置。
【請求項2】
前記各チャックは、前記被搬送体の外周面の複数箇所に接触して被搬送体を把持する複数の把持片を有し、各把持片の内面は、前記被搬送体のテーパー状の外周面における母線角度に対応する傾斜面とされ、その内面に前記被搬送体の外周面を吸着させる吸引手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の紙容器用トランスファー装置。
【請求項3】
前記トランスファーターレットは、回転板を有し、
前進後退機構は、その回転板の周辺部に取り付けられかつ前記チャックを前記回転板の半径方向に前後動するようにガイドするリニアガイドと、前記チャックに設けられたカムフォロアーと、前記回転板に対向して固定されかつ前記チャックが前記マンドレルから後退した位置で前記回転板と共に回転するよう前記カムフォロアーを係合させてガイドするカムと、前記カムのうち前記チャックが前記授受位置でマンドレルと対向している状態で前記カムフォロアーが係合している部分が他の部分から分割されることにより形成された分割カムと、その分割カムごと前記チャックを前記マンドレルに対して前後動させる駆動機構とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙容器用トランスファー装置。
【請求項4】
前記被搬送体は、板紙製ブランクを丸めてその両端部同士を接合することによりテーパー形状のシェルに形成され、
前記吸引手段は、前記両端部の互いに接合されたシーム部を挟んだ両側を同時に吸着する吸引口を有する把持片備えている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の紙容器用トランスファー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−24964(P2012−24964A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163763(P2010−163763)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000152930)株式会社日本デキシー (14)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000152930)株式会社日本デキシー (14)
【出願人】(000191180)新日本工機株式会社 (51)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】
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