説明

紙容器

【課題】嵩張らずに所定の防湿性、密閉性が得られ、かつ、閉蓋に際しての係合挿入部への係合片の挿入が容易な紙容器を提供する。
【解決手段】箱体の上面開口を覆う蓋を前記箱体の背面板にヒンジ結合してなる紙容器であって、前記蓋の正面板に係合片を形設するとともに、前記箱体の正面板に閉蓋状態で前記係合片を挿入可能な係合挿入部を形成してなり、前記係合挿入部は箱体の正面板を貫通して形成され、且つ、前記箱体の正面板の裏側から前記係合挿入部を覆う、合成樹脂フィルムが貼着され、前記合成樹脂フィルムの貼着部に囲まれる非貼着領域に係合片を挿入可能としてなる紙容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器に関し、詳しくは、粉末洗剤等の粉体を収納するための紙容器であって、嵩張らずに所定の防湿性、密閉性が得られ、かつ、閉蓋に際しての係合挿入部への係合片の挿入が容易な紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用粉末洗剤等の紙容器として、箱体の上面開口を覆う蓋をその箱体の背面板にヒンジ結合し、開閉自在に形成してなる紙容器が汎用されている。
このような紙容器では、蓋が簡単に開いて内容物がこぼれ落ちたり、水分等が混入することがないように、蓋を箱体の定位置にロックするためのロック機構が設けられているのが一般的である。
ロック機構としては、蓋の正面板に形設した係合片を、箱体の正面板に形成した係合挿入部に挿入する方法が一般的であり、具体的には、蓋の正面板に伸長部を設けることにより形設した係合片を係合挿入部から下方向に挿入する、いわゆる差し込みロック方式と、蓋の正面板に伸長部を設け、前記伸長部を基端部に設けた上向きに凸状の切り込み線により形設した係合片または、前記伸長部を基端部に刻設した折り罫線より内側に折り返すことにより形設した係合片を、係合挿入部から上方向に挿入する、いわゆるコハゼロック方式とが用いられている。
【0003】
このようなロック機構においては、係合挿入部を内側から覆って、内容物の漏洩や水分の侵入を防止する必要があり、箱体の正面板の上方に延在する上部フラップを内側に折り返し、係合挿入部を内側から覆う形に接着する方法が多く用いられている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
しかしながら、この方法の場合は、次のような不都合がある。
(1) 正面板の上部フラップの寸法(上下方法の長さ)は係合挿入部を充分に覆い得る寸法とする必要があり、紙の展開面積が大きくなる。しかも、箱体は所定の展開形状に切り抜かれた紙素材を組み立てて形成されるものであるから、背面板及び両側面板の上部フラップは、正面板の上部フラップと同じ寸法とするか、または、正面板の上部フラップと同じ寸法から切断して所定の寸法にすることとなり、紙素材に無駄が生じる。
(2) 上部フラップが広い範囲で接着されるため、正面板の厚みが増加する。
(3) 係合挿入部を完全に密封するには、接着剤を正面板裏面において係合挿入部の全周に隙間無く塗布しなければないため、コールドグルー(加熱しないでそのまま使用されるエマルジョンタイプの接着剤)のような圧着時間を要する接着剤を使用する必要があり、製造時間が長くなる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−347757号公報
【特許文献2】特開平09−150826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑み、嵩張らずに所定の防湿性、密閉性が得られ、かつ、閉蓋に際しての係合挿入部への係合片の挿入が容易な紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、箱体の上面開口を覆う蓋を前記箱体の背面板にヒンジ結合してなる紙容器であって、前記蓋の正面板に係合片を形設するとともに、前記箱体の正面板に閉蓋状態で前記係合片を挿入可能な係合挿入部を形成してなり、前記係合挿入部は箱体の正面板を貫通して形成され、且つ、前記箱体の正面板の裏側から前記係合挿入部を覆う、合成樹脂フィルムが貼着され、前記合成樹脂フィルムの貼着部に囲まれる非貼着領域に係合片を挿入可能としてなる紙容器を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙容器は、嵩張らずに所定の防湿性と密閉性が得られ、係合片の係合挿入部への挿入も摩擦抵抗なくスムーズに行うことのできるものであり、しかも、小さい展開面積の紙素材から短い製造時間で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の紙容器は、係合挿入部が箱体の正面板を貫通して形成され、且つ、箱体の正面板の裏面に係合挿入部を覆うように、合成樹脂フィルムが貼着され、前記合成樹脂フィルムの貼着部に囲まれる非貼着領域に係合片を挿入可能としてなることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の紙容器の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1〜図10は、本発明の紙容器の実施の形態の例を示す図である。
本発明の紙容器10は、図1〜3に示すように、箱体11と蓋12とからなり、箱体11は上面に開口11Eを有している。その開口11Eは封緘紙14により、正面板11A、背面板11B、両側板11Cからなる全開口縁部の外側面又は蓋12の天板12Dの内面に一定巾を持って貼着、密封され、流通・保管段階において内容物である粉体洗剤等の漏れ防止を可能とする。
なお、紙容器には通常500g〜2.5kg、好ましくは1〜2kg程度の粉体洗剤等を収納する。
【0011】
箱体11の素材としては、対環境性、廃棄時の焼却性の観点から、紙単体、又は紙を主材料としプラスチックフィルムを内層としてラミネートした3層構造等の積層体を用いることができる。使用する紙に特に制限はないが、取扱いの便宜上、坪量350〜700g/m2、厚さ0.3〜1.1mmであることが好ましい。
箱体11は、前記素材を折り曲げて組立てたものであり、正面板11A、背面板11B、両側板11C、底板11Dを有し、上面に開口11Eを有する。図1の形態の場合、箱体11は、正面板11A、背面板11B、両側板11Cを上端辺で内側に折り返し接着してある。
【0012】
蓋12の素材は、箱体11と同様に、紙単体、又は紙を主材料としプラスチックフィルムをラミネートした積層体であることが好ましい。
蓋12は、前記素材を折り曲げて組立てたものであり、前板12A、後板12B、両側板12C、天板12Dを有する。蓋12は、箱体11の背面板11Bに接着されるヒンジ結合部12Eを後板12Bに備え、箱体11の開口11Eを覆う。
図3に示すように、蓋12は、箱体11の背面板11Bを延長し、背面板11Bの上端辺にヒンジ罫線を設け、内側に折り返してヒンジ結合した形態とすることもできる。この形態の場合、通常、箱体11の正面板11A及び両側板11Cは、それらの上端辺で内側に折り返して接着される。
箱体11及び蓋12には、吊り手、把手(取っ手)等の把持部(図示せず)を設けることもできる。取扱いの便宜上、前記把持部は、箱体の両側板11C、蓋の両側板12C、蓋の天板12Dの表面等に付設することができる。
【0013】
蓋12の前板12Aには基端部(略中央部下縁)を介してつまみ片22を突出させて形成する。未使用状態においては、蓋12は、つまみ片22の裏面のタックシール、又は接着剤等によって箱体11の正面板11Aの糊付け部23に貼着固定されており、初回使用時に糊付け部23を剥がすことにより、蓋12と箱体11をつなぐヒンジ結合部12Eを回動支点として開閉できるようになっている。
【0014】
図4は、紙容器10の閉蓋状態の正面図の一例を示す図であり、図5は、箱体11の正面図の一例を示す図である。図4の閉蓋状態において、蓋12の前板12Aには、係合片19が形設されたつまみ片22が表れており、箱体11の正面板11Aに形成された係合挿入部31を覆い隠している。
図5において、係合挿入部31は、閉蓋時に、蓋12のつまみ片22に形設された係合片19と相対する位置に形成されている。
【0015】
係合挿入部31は、蓋12の係合片19が挿入可能な大きさであればよく、その形態は特に限定されない。図6は、係止挿入部の例を示す図である。図6において、係合挿入部31は、略四角形状(a)であってもよく、スリット状(b)であってもよい。また、係合挿入部31の上縁部31Aは、水平線状に限らず、図6(c)、(d)に示すような下に凸の円孤状や帯状であってもよく、図6(e)、(f)に示すような上に凸のかまぼこ状や半円状であってもよい。
【0016】
本発明の紙容器は、箱体の正面板の裏側から係合挿入部を覆う、合成樹脂フィルムが貼着されてなることを特徴とするものである。
【0017】
図7は、係合片を挿入していない状態における、箱体の正面板の裏側を示す図であり、図8は、係合片を挿入した状態における、図7のA−A線における断面図である。
図7及び図8において、箱体の正面板11Aを貫通して設けられた係合挿入部31の裏面に合成樹脂フィルム13が貼着され、かつ、その貼着部に囲まれる非貼着領域に係合片を挿入可能にしている。11Fは箱体の正面板のフラップであり、箱体の内側に折り込まれて、合成樹脂フィルム13の上部を覆う形で、貼着されている。
図8に示したように、閉蓋状態においては、係合片19は係合挿入部31から挿入され、更に、係合挿入部の上縁部31Aより上の箱体の正面板11Aと合成樹脂フィルム13の間にまで挿入され、蓋が固定されている。
なお、フラップ11Fは、箱体の強度を出すために設けられているものであり、所望の強度が得られるのであれば、必ずしも、合成樹脂フィルム13の上部を覆う位置までの長さ(上下方向の長さ)である必要はない。
【0018】
図4、図7及び図8に示した態様においては、係合片は、蓋の正面板に伸長部を設け、その伸長部の基端部周辺に上向きに凸状の切り込み線を刻設することにより形設しているが、図9に示すように、蓋の正面板に伸長部を設け、その伸長部の基端部又は伸長部の基端部より先端方向に基端部に平行に刻設した折り罫線より伸長部を内側に折り返すことにより係合片19を形設した態様であってもよい。
【0019】
また、図8及び図9に示した態様においては、係合片19は係合挿入部31から挿入され、更に、係合挿入部の上縁部31Aより上の箱体の正面板11Aと合成樹脂フィルム13の間にまで挿入されるが、図10に示すように、係合片19の先端を係合挿入部の上縁部31Aに当接させて係止する態様であってもよい。
なお、図8及び図9に示した態様においては、フラップ11Fの係合挿入部31とその上方の係合片19が挿入される領域に内側に向かって凸状のエンボス加工を施して、係合片19の挿入を容易にしているが、逆に、正面板11Aの同様領域に外側に向かって凸状のエンボス加工を施す形としてもよい。
【0020】
更にまた、図8〜図10に示した態様は、いずれも、閉蓋に際しては,係合片を係合挿入部から上方向に挿入する、いわゆる、コハゼロック方式のものであるが、図11に示したような、閉蓋に際しては、係合片を係合挿入部から下方向に挿入する、いわゆる、差し込みロック方式であってもよい。
【0021】
合成樹脂フィルムとしては、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂のフィルムや、それらのフィルムをうす紙にラミネートしたものを例示することができる。
合成樹脂フィルムの厚さとしては、0.01〜0.1mmが適当である。
合成樹脂フィルムには、係合片が押付けられ、摺動するのであるから、適度の剛性が必要であるが、上記の厚みの合成樹脂フィルムは、その剛性を有するものである。
【0022】
合成樹脂フィルムを箱体正面板の裏面に貼着する方法としては、箱体正面板の裏面に適当な糊剤を塗布し、そこに合成樹脂フィルムを貼着する方法と、予め糊剤を塗布した、いわゆる、タックフィルムを貼着する方法とがある。
箱体正面板の裏面に適当な糊剤を塗布する方法の場合は、糊剤は、係合挿入部には塗布せずに係合挿入部を囲んで塗布する。一方、タックフィルムを貼着する方法の場合は、係合挿入部の周辺を包含する形で貼着するが、タックフィルムの係合挿入部に対応する部分は、係合片を円滑に摺動させるため、糊剤を塗布しないか、好ましくは、糊殺し(糊剤層にニスを塗る)をした非貼着領域とすることが必要である。
前記の、図8、図9、及び図11の態様の場合は、係合片が箱体正面板と合成樹脂フィルムの間に挿入されるので、その挿入部分については、箱体正面板に適当な糊剤を塗布する方法の場合は糊剤を塗布せず、また、タックフィルムを貼着する方法の場合は、糊剤を塗布しないか、または、糊殺しをすることが必要である。
【0023】
本発明の紙容器は上記のように構成されているので、以下の作用効果がある。
(1)係合挿入部の背面から合成樹脂フィルムを貼着しているため、嵩張らずに、所定の防湿性、密閉性を得ることができる。
(2)係合挿入部の背面から合成樹脂フィルムを貼着しているため、係合挿入部に挿入した係合片との摩擦抵抗が少なく、挿入をスムーズに行なうことができる。
(3)箱体正面板の上部フラップは、箱体に強度を与えるためにのみ使用され正面板の上部フラップを側面板の他のフラップより延長させる必要がなく、小さい展開面積の紙素材から製造することができる。
(4)箱体正面板の上部フラップを折返して正面板の背面に接着する手段は、従来のようなホットメルトを吹き付ける(直線的塗布)という簡易な方法で行えるため短い製造時間で製造することができる。ここで、ホットメルト接着剤は、熱可塑性樹脂を主成分とした有機溶剤を全く含まない100%固形分の接着剤である。常温では固形または半固形であって、加熱溶融して塗布し、冷却により固化し接着が完了するため、塗布してから接着完了までの時間が短い。なお、箱体の正面板の上部フラップを折り返して係合挿入部の背面を覆って接着する場合は、係合挿入部の周囲を囲むパターンでエマルジョン接着剤を塗布しなければならず、また、乾燥接着まで時間がかり製造時間が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】紙容器の開蓋状態を示す斜視図である。
【図2】紙容器の閉蓋状態を示す背面図である。
【図3】別形態の紙容器の開蓋状態を示す斜視図である。
【図4】紙容器の閉蓋状態の正面図の一例を示す図である。
【図5】箱体の正面図の一例を示す図である。
【図6】係止挿入部の種々な形状を示す図である。
【図7】箱体の正面板の裏側の係止挿入部近傍を示す図である。
【図8】係合の1例の状態を示す断面図である。
【図9】係合の他の例の状態を示す断面図である。
【図10】係合の他の例の状態を示す断面図である。
【図11】係合の他の例の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10:紙容器
11:箱体 11A:箱体正面板 11F:箱体正面板の上部フラップ
12:蓋 12A:蓋の前板
13:合成樹脂フィルム
19:係合片 19A:係合片の基端部
21:係合片の折り罫線
22:つまみ片
31:係合挿入部 31A:係合挿入部の上縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体の上面開口を覆う蓋を前記箱体の背面板にヒンジ結合してなる紙容器であって、前記蓋の正面板に係合片を形設するとともに、前記箱体の正面板に閉蓋状態で前記係合片を挿入可能な係合挿入部を形成してなり、前記係合挿入部は箱体の正面板を貫通して形成され、且つ、前記箱体の正面板の裏側から前記係合挿入部を覆う合成樹脂フィルムが貼着され、前記合成樹脂フィルムの貼着部に囲まれる非貼着領域に係合片を挿入可能としてなる紙容器。
【請求項2】
前記箱体の正面板の上方に延在する上部フラップを内側に折り返して、合成樹脂フィルムの一部を覆って接着してなる請求項1記載の紙容器。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムは、タックフィルムであって、係合片が挿入される非貼着領域にニスが塗布されている請求項1又は2記載の紙容器。
【請求項4】
前記蓋の正面板に伸長部を設け、前記伸長部の基端部周辺に上向きに凸状の切り込み線による係合片を形設し、閉蓋に際して前記係合片を前記係合挿入部から上方向に挿入して係合させる請求項1〜3のいずれかに記載の紙容器。
【請求項5】
前記蓋の正面板に折り罫線を介して係合片を突出させ、閉蓋に際して前記係合片を折り罫線で内側に折返し前記係合挿入部から上方向に挿入して係合させる請求項1〜3のいずれかに記載の紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−238139(P2007−238139A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63773(P2006−63773)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】