説明

紙工機械の点検システム

【課題】点検作業員の熟練度に関わらず、点検作業を効率良く行うことができ、紙工機械の作動状態をより正確に把握することが可能な紙工機械の点検システムを提供する。
【解決手段】作動状態を検出可能な各種センサを備えた紙工機械5と、点検作業によって得られた情報を入力可能に構成された点検用携帯端末7と、ネットワーク9を介して紙工機械5および点検用携帯端末7に通信可能に接続され、各種センサにより検出された検出結果を紙工機械5の作動情報として取得すると共に点検用携帯端末7への入力情報を点検情報として取得する情報管理装置8と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙工機械の点検を行う際に用いられる紙工機械の点検システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような点検システムとして、例えば、建設機械を点検するための機械の保守点検システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この保守点検システムは、建設機械と、ネットワークを介して建設機械に接続されたメンテナンス端末コンピュータと、ネットワークを介してメンテナンス端末コンピュータに接続されたユーザ端末コンピュータと、ネットワークを介してメンテナンス端末コンピュータに接続されたサーバと、を備えている。そして、この保守点検システムでは、建設機械に設けられた各種センサにより検出した建設機械の稼動情報等の機械情報が、ネットワークを経由してサーバに出力される。従って、ユーザが建設機械の異常を認識すると、ユーザはユーザ端末コンピュータを操作して、異常が発生した建設機械の機種情報を入力する。そして、入力された機種情報はサーバに送信され、サーバは、受信した機種情報に基づいて、異常が生じている建設機械に対応した保守点検用のプログラムを、ユーザ端末コンピュータに送信する。この後、ユーザは、ユーザ端末コンピュータに送信された保守点検用のプログラムに沿って、保守点検を行うことにより、効率良く建設機械を点検することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−178148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の建設機械と同様に、段ボールシートを製造するコルゲートマシン等の紙工機械には、その作動状態を監視するための各種センサが取り付けられている。そして、各種センサによって検出された作動情報は、作動情報を格納するデータサーバへ向けて送信される。ここで、紙工機械では、処理対象物として紙を用いているため、紙の裁断や紙の乾燥といった紙工機械特有の処理を行っている。このため、例えば、紙の裁断を行う部分にセンサを設けた場合、裁断により発生した紙粉がセンサに悪影響を及ぼし、検出精度の悪化を招く。また、例えば、紙の乾燥を行う部分にセンサを設けた場合、乾燥により発生した熱がセンサに悪影響を及ぼし、検出精度の悪化を招く。よって、紙工機械の各部にセンサを設けたとしても、細かなメンテナンスを行う必要があり、また、センサを設けた分、紙工機械の製造コストが増大するため、好ましくない。一方で、紙工機械の各部にセンサを設けない場合、紙工機械の細かな作動状態を監視することができない。このため、紙工機械の点検作業は、データサーバに格納された作動情報を手がかりとして、熟練した点検作業員による目視点検を行う必要がある。これにより、紙工機械の点検作業を行う場合、紙工機械の各種センサから得られた作動情報だけでなく、熟練の点検作業員による目視点検も必要となるため、効率的な点検作業を行うことが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、点検作業員の熟練度に関わらず、点検作業を効率良く行うことができると共に、紙工機械の作動状態をより正確に把握することが可能な紙工機械の点検システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紙工機械の点検システムは、作動状態を検出可能な作動検出手段を備えた紙工機械と、点検作業によって得られた情報を入力可能に構成された点検用携帯端末と、ネットワークを介して紙工機械および点検用携帯端末に通信可能に接続され、作動検出手段により検出された検出結果を紙工機械の作動情報として取得すると共に点検用携帯端末への入力情報を点検情報として取得する情報管理装置と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、情報管理装置は、紙工機械の作動検出手段によって得られた作動情報と、点検作業によって得られた点検情報と、を取得することができる。これにより、得られる情報量を増大させることができるため、情報管理装置は、例えば、不具合判定等の各種分析の精度を向上させることができる。また、点検作業員は、点検用携帯端末を保持して点検作業を行うことができる。このため、点検用携帯端末から出される指示に従って、点検作業を行うことにより、点検作業員の熟練度に関わらず、適切且つ効率良く点検を行うことができる。ここで、点検情報とは、点検作業員が紙工機械を点検することで得られる情報であり、例えば、紙工機械の各部の作動状態を撮像した画像や動画であったり、紙工機械の各部から発せられる作動音であったり、紙工機械の作動中において点検できない部分等である。
【0008】
この場合、情報管理装置は、取得した作動情報および点検情報と、予め設定された不具合判定値とを比較して、紙工機械に不具合が生じているか否かを判定する不具合判定手段を、備えたことが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、情報管理装置は、不具合判定手段により、取得した作動情報および点検情報から、紙工機械に不具合が生じているか否かを判定することができる。これにより、熟練の点検作業者が紙工機械を点検せずとも、情報管理装置で取得した作動情報および点検情報から、紙工機械の不具合を判定することができる。
【0010】
この場合、不具合判定値は、取得される作動情報および点検情報と、紙工機械の不具合発生との相関関係を分析し、得られた分析結果に基づいて導出されることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、実測値となる作動情報および点検情報から、不具合判定値を導出することができる。このため、不具合判定値は、実測値に応じて相対的に適切な値とすることができる。
【0012】
この場合、情報管理装置は、不具合判定手段により紙工機械に不具合が生じていると判定された場合、不具合であると判定された作動情報および点検情報を、不具合情報として蓄積する不具合データベースを、さらに備えたことが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、情報管理装置は、不具合であると判定された作動情報および点検情報を不具合データベースに蓄積することで、不具合情報を用いた分析精度を向上させることができる。
【0014】
この場合、情報管理装置は、不具合データベースに蓄積された不具合情報から、紙工機械を構成する各部品の不具合発生時期を予測する不具合時期予測手段を、さらに備えたことが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、情報管理装置は、紙工機械の各部品の不具合発生時期を予測することができるため、紙工機械の各部品の交換時期を予測することができ、円滑な部品交換を行うことが可能となる。
【0016】
この場合、情報管理装置は、不具合データベースに蓄積された不具合情報と、紙工機械の不具合発生の要因となる不具合要因との相関関係を分析し、得られた分析結果と、取得した作動情報および点検情報とを比較して、不具合要因を特定する不具合要因特定手段を、さらに備えたことが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、情報管理装置は、不具合要因特定手段により、紙工機械の不具合発生の要因となる不具合要因を特定することができ、これにより、紙工機械の不具合要因に的確に対処できる。
【0018】
この場合、点検用携帯端末は、点検作業の作業手順を示す点検プログラムを格納しており、情報管理装置は、不具合要因特定手段により特定した不具合要因に応じて、点検プログラムを選定する点検プログラム選定手段を、さらに備え、点検用携帯端末には、点検プログラム選定手段により選定した点検プログラムが格納されることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、情報管理装置は、不具合要因に特化した点検プログラムを選定し、選定した点検プログラムを点検用携帯端末に格納することができる。このため、点検作業員は、選定された点検プログラムに沿って点検を行うことで、不具合要因と相関性の高い部分を重点的に点検することができる。
【0020】
この場合、情報管理装置は、不具合要因特定手段によって特定された不具合要因を解消する不具合要因解消手段を、さらに備えたことが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、不具合要因特定手段により特定した紙工機械の不具合要因を解消することができ、紙工機械を好適に作動させることができる。
【0022】
この場合、不具合要因として、紙工機械の生産性を阻害する要因となる生産性阻害要因、紙工機械の生産ロスの要因となる生産ロス要因、紙工機械により生産された生産品の品質悪化の要因となる品質悪化要因および紙工機械を構成する各部品の中の不良部品があり、不具合要因特定手段は、不具合データベースに蓄積された不具合情報から、生産性阻害要因を特定するための阻害要因特定モデルを構築すると共に、取得した作動情報および点検情報を阻害要因特定モデルに当てはめて生産性阻害要因を特定する阻害要因特定手段と、不具合データベースに蓄積された不具合情報から、生産ロス要因を特定するためのロス要因特定モデルを構築すると共に、取得した作動情報および点検情報をロス要因特定モデルに当てはめて生産ロス要因を特定するロス要因特定手段と、不具合データベースに蓄積された不具合情報から、品質悪化要因を特定するための品質悪化要因特定モデルを構築すると共に、取得した作動情報および点検情報を品質悪化要因特定モデルに当てはめて品質悪化要因を特定する品質悪化要因特定手段と、不具合データベースに蓄積された不具合情報から、不良部品を特定するための不良部品特定モデルを構築すると共に、取得した作動情報および点検情報を不良部品特定モデルに当てはめて不良部品を特定する不良部品特定手段とのうち、少なくともいずれか1つの手段をさらに備えたことが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、不具合要因として、例えば、生産性阻害要因、生産ロス要因、品質悪化要因および不良部品を特定することが可能となる。これにより、紙工機械に発生したより詳細な不具合要因に的確に対処することが可能となる。
【0024】
この場合、不具合要因解消手段は、阻害要因特定手段によって特定された生産性阻害要因を解消する阻害要因解消手段と、ロス要因特定手段によって特定された生産ロス要因を解消するロス要因解消手段と、品質悪化要因特定手段によって特定された品質悪化要因を解消する品質悪化要因解消手段とのうち、少なくともいずれか1つの手段をさらに備え、阻害要因解消手段は、阻害要因特定モデルから生産性阻害要因と相関性のある紙工機械の各部を調整し、ロス要因解消手段は、ロス要因特定モデルから生産ロス要因と相関性のある紙工機械の各部を調整し、品質悪化要因解消手段は、品質悪化要因特定モデルから品質悪化要因と相関性のある紙工機械の各部を調整することが、好ましい。
【0025】
この構成によれば、紙工機械に不具合が生じても、紙工機械の各部を調整することにより、生産性阻害要因、生産ロス要因および品質悪化要因等の不具合要因を解消することができる。
【0026】
この場合、作動検出手段は、紙工機械の作動情報を周期的にサンプリングしており、紙工機械は、サンプリングした作動情報を格納する情報格納手段と、作動検出手段によってサンプリングした作動情報のうち、その一部を抽出して情報管理装置へリアルタイムに送信するリアルタイム情報送信手段と、情報格納手段に格納された作動情報を、紙工機械の作動停止中に送信する定期情報送信手段と、を備えたことが、好ましい。
【0027】
この構成によれば、作動検出手段によって周期的にサンプリングされた作動情報の情報量が多い場合、リアルタイム情報送信手段により、その一部を抽出することで作動情報の情報量を軽減することができる。これにより、リアルタイム情報送信手段は、抽出した作動情報をネットワーク上におけるデータ送信容量の許容範囲内に収めることができるため、情報管理装置へ向けて好適に作動情報をリアルタイムに送信することができる。一方で、情報格納手段に格納された作動情報は情報量が多いため、定期情報送信手段は、紙工機械の作動停止中に、情報格納手段に格納された作動情報を送信する。これにより、定期情報送信手段は、リアルタイム情報送信手段による作動情報の送信に悪影響を与えることなく、情報格納手段に格納された作動情報を送信することができる。
【0028】
この場合、情報管理装置は、紙工機械を構成する各部品の補修費用に関する情報を蓄積した補修費用データベースと、不具合時期予測手段により予測される各部品の不具合発生時期と各部品の補修費用とに基づいて、紙工機械の使用期間の長さに伴って発生する紙工機械の累積補修費用を導出する累積補修費用導出手段と、をさらに備えたことが、好ましい。
【0029】
この構成によれば、紙工機械の使用期間に応じて必要となる紙工機械の累積補修費用を定量的に算定することができる。
【0030】
この場合、紙工機械を構成する各部品には、各部品に関する部品情報を画像化した情報コードが設けられ、点検用携帯端末は、情報コードを読み取って部品情報を取得するコード読取手段を、さらに備え、情報管理装置は、コード読取手段により読み取った各部品の部品情報に基づいて、見積書を作成する見積書作成手段をさらに備えたことが、好ましい。
【0031】
この構成によれば、紙工機械の各部品に設けられた情報コードを、点検用携帯端末のコード読取手段により読み取って部品情報を取得し、取得した部品情報を点検用携帯端末から情報管理装置へ送信することで、情報管理装置は、部品情報を取得することができる。これにより、情報管理装置は、例えば、交換が必要な紙工機械の部品の部品情報に基づいて、見積書を簡単に作成することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の紙工機械の点検システムによれば、作動情報および点検情報を取得することにより、情報量を増大させることができるため、情報管理装置による不具合判定等の各種分析の精度を向上させることができ、また、点検用携帯端末の指示に従って点検作業を行うことにより、点検作業員の熟練度に関わらず、好適に点検作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本実施例に係る紙工機械の点検システムの概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例に係る紙工機械の点検システムの表したブロック図である。
【図3】図3は、作動情報収集装置から情報管理装置へ向けて送信される作動情報に関する説明図である。
【図4】図4は、紙工機械の使用期間によって変化する累積補修費用のグラフである。
【図5】図5は、紙工機械の点検システムにおける一連の点検動作を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る紙工機械の点検システムについて説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0035】
本発明に係る紙工機械の点検システムは、紙工機械から得られる作動情報と、点検作業員による点検作業によって得られる点検情報とに基づいて、紙工機械に不具合が生じているか否かを判定している。ここで、紙工機械とは、例えば、段ボールシートを製造するコルゲートマシンや、段ボールシートを箱状に加工する製函機である。なお、本実施例では、紙工機械として、コルゲートマシンおよび製函機を適用した場合について説明する。
【0036】
先ず、図1を参照して、本実施例に係る紙工機械5の点検システム1について説明する。紙工機械5の点検システム1は、上記の紙工機械5と、紙工機械5に接続されると共に紙工機械5から送信される作動情報を取得可能な作動情報収集装置6と、点検作業員に携帯される点検用携帯端末7と、作動情報収集装置6から作動情報を取得可能に構成されると共に点検用携帯端末7からの点検情報を取得可能に構成された情報管理装置8と、を備えている。
【0037】
ここで、作動情報収集装置6は、紙工機械5が配設された工場内に配設される一方、情報管理装置8は、工場外に配設され、ネットワーク9を介して作動情報収集装置6に接続されている。具体的に、情報管理装置8は、紙工機械5を製造する製造元に設置されており、作動情報収集装置6は、紙工機械5を購入した購入元に設置されている。なお、点検用携帯端末7は、購入元に配属された点検作業員、および製造元に配属された点検作業員が共に使用可能となっている。
【0038】
紙工機械5は、コルゲートマシン15と製函機16とで構成されており、コルゲートマシン15は、段ボールシートを製造し、製函機16は、段ボールシートを加工して、段ボール箱を製造する。
【0039】
コルゲートマシン15は、裏ライナ紙、芯紙および表ライナ紙を供給する複数のミルロールスタンド20と、裏ライナ紙に芯紙を貼合せて片面段ボールシートを形成するシングルフェーサ21と、片面段ボールシートに表ライナ紙を貼合せて両面段ボールシートを形成するダブルフェーサ22と、を備えている。また、コルゲートマシン15は、形成された両面段ボールシートを所定幅に裁断するスリッタスコアラ23と、所定幅に裁断された両面段ボールシートを幅方向に裁断して板状とするカットオフ装置24と、板状となった両面段ボールシートを積み上げるスタッカ25と、を備えている。さらに、コルゲートマシン15には、裏ライナ紙、芯紙および表ライナ紙を予熱するプレヒータ26が設けられている。
【0040】
従って、コルゲートマシン15において、シングルフェーサ21では、ミルロールスタンド20から供給された中芯(芯紙)を波形に加工し、別のミルロールスタンド20から供給される裏ライナを貼合せて片面段ボールシートが形成される。このシングルフェーサ21で形成された片面段ボールシートは、下流側に設けられたブリッジ部27へ送られ、ここで貯留されながら下流のダブルフェーサ22にその速度に合わせて送られる。ダブルフェーサ22では、ブリッジ部27から送られる片面段ボールシートに別途設けられているミルロールスタンド20から送られる表ライナが貼合わされて両面段ボールシートが形成される。このダブルフェーサ22を通過した両面段ボールシートは、スリッタスコアラ23により搬送方向に所定のスリットや罫線が入れられた後、カットオフ装置24により幅方向に切断されて段ボールシートとされ、スタッカ25に積上げられて順次排出される。
【0041】
製函機16は、段ボールシートを供給する給紙部30と、段ボールシートに印刷を行う印刷部31と、印刷された段ボールシートに罫線加工および溝切加工を行うスロッタクリーザ部32と、段ボールシートの両端部を折り畳んで接合することで扁平状の段ボール箱を製造するフォルディング部33と、段ボール箱を積み重ね、所定数のバッチに仕分けして排出するカウンタエゼクタ部34と、を備えている。
【0042】
従って、製函機16において、給紙部30では、テーブル上に積み重ねられた段ボールシートを、一枚ずつ送り出して一定の速度で印刷部31に送り、印刷部31では、印刷ユニットを有し、段ボールシートに印刷を行う。印刷された段ボールシートには、スロッタクリーザ部32により、折り線となる罫線、およびフラップを成す溝、並びに端部接合用の糊代片の加工が施され、フォルディング部33により、罫線,溝,糊代片が加工された段ボールシートを移動させながら、糊代片に糊を塗布して罫線に沿って折り畳み、糊代片を接合することで扁平状の段ボール箱を製造する。そして、カウンタエゼクタ部34は、段ボールシートが折り畳まれて糊付けされた段ボール箱を積み重ね、所定数のバッチに仕分けして排出する。
【0043】
ここで、図2に示すように、上記のように構成された紙工機械5には、その作動状態を検出する各種検出センサが設けられている。また、紙工機械5には、ミルロールスタンド20に導入される各ライナ紙の紙種や、紙工機械5の各部を設定するための設定パラメータ等を入力する操作パネル等の入出力部40が設けられている。つまり、紙工機械5に設けられた各種検出センサおよび入出力部40は、紙工機械5の作動状態を検出する作動検出手段として機能している。具体的に、紙工機械5は、コルゲートマシン15および製函機16で構成されていることから、コルゲートマシン15および製函機16にそれぞれ各種検出センサが設けられ、また、コルゲートマシン15および製函機16にそれぞれ入出力部40が設けられている。
【0044】
例えば、紙工機械5には、段ボールシートの搬送速度を検出可能な速度検出センサ44、予熱された各ライナ紙の温度を検出する温度検出センサ45、各種ローラ等の回転体の回転数を検出する回転数検出センサ46や、回転体周りの振動を検出する振動検出センサ47等が設けられている。これら各種検出センサは、周期的に検出信号をサンプリングすると共に、作動情報収集装置6に接続されている。このため、各種検出センサによって周期的にサンプリングされた検出信号は、作動情報収集装置6へ向けて送信される。
【0045】
なお、詳細は後述するが、紙工機械5を構成する各部品には、QRコードやバーコード等の情報コードを印刷した貼着シールが貼り付けられており、後述する点検用携帯端末7により、読取可能となっている。
【0046】
作動情報収集装置6は、いわゆるコンピュータであり、キーボードやモニターで構成された入出力部50と、各種プログラムを格納する記憶部51と、各種プログラムを実行する処理部52と、紙工機械5および情報管理装置8との間で情報通信を行う情報通信部53と、サーバ54と、を備え、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。そして、作動情報収集装置6は、HDD等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリおよびCPU等のプロセッサを有し、内部バスを介して、これらを協働させることにより各部を作動させている。
【0047】
具体的に、記憶部51は、各種プログラム等を実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリ、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
【0048】
処理部52は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されており、点検レポートデータを作成する点検レポート作成部60を有している。点検レポート作成部60は、点検作業員による点検作業後に点検レポートデータを生成し、生成した点検レポートデータを印刷することで、点検レポートを作成する。なお、点検作業員による点検作業は、定期的に行われるだけでなく、不具合解消後や、不良部品の交換後にも行われる。
【0049】
サーバ54は、紙工機械5の入出力部50から入力された入力情報および紙工機械5の各種センサから入力された検出信号を、作動情報として格納する情報格納手段として機能している。具体的に、サーバ54は、取得した作動情報の全てを詳細データとして格納しており、この詳細データは、ネットワーク9上を介して情報管理装置8へ送信される。
【0050】
情報通信部53は、取得した作動情報の一部を抽出して情報管理装置8へリアルタイムに送信するリアルタイム情報送信部(リアルタイム情報送信手段)64と、サーバ54に格納された作動情報を情報管理装置8へ定期的に送信する定期情報送信部(定期情報送信手段)65と、を有している。
【0051】
上記したようにサーバ54は、取得した作動情報の全てを詳細データとして格納しているが、詳細データは、情報量が多いことから、ネットワーク9上において情報伝達を行うと、ネットワーク9上における通信許容量を超えてしまい、リアルタイムに送信することが困難となってしまう。
【0052】
このため、図3に示すように、リアルタイム情報送信部64は、所定周期で取得する作動情報を、サンプリング周期に比して長い抽出周期で作動情報を抽出することで、作動情報の情報量を間引きして、リアルタイムに送信可能なリアルタイム用データとする。そして、リアルタイム情報送信部64は、リアルタイム用データをネットワーク9上を介して情報管理装置8に送信することで、通信許容量を超えることなく、好適な情報通信を実現することができる。
【0053】
一方、定期情報送信部65は、サーバ54に格納された詳細データを、紙工機械5の作動停止中に、ネットワーク9上を介して情報管理装置8へ送信する。つまり、定期情報送信部65は、リアルタイム情報送信部64によるリアルタイム用データの送信中に、詳細データの送信を行わず、リアルタイム用データの送信が行われていないときに、詳細データの送信を行うように構成される。
【0054】
従って、作動情報収集装置6は、紙工機械5から作動情報を取得すると、リアルタイム情報送信部64により取得した作動情報の一部を抽出してリアルタイム用データとし、これを情報管理装置8へ送信する。一方、作動情報収集装置6は、紙工機械5から取得した全ての作動情報を詳細データとしてサーバ54に格納すると共に、紙工機械5の作動停止中に、定期情報送信部65により詳細データを情報管理装置8へ送信する。
【0055】
点検用携帯端末7は、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯情報端末であり、ネットワーク9を介して情報管理装置8に接続されている。この点検用携帯端末7は、紙工機械5の点検作業を行う点検作業員に携帯されており、点検作業員は、点検用携帯端末7に格納された点検プログラムに沿って点検作業を行う。
【0056】
点検用携帯端末7は、操作パネル等で構成された入出力部70と、各種プログラムを格納する記憶部71と、各種プログラムを実行する処理部72と、情報管理装置8との間で情報通信を行う情報通信部73と、が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。また、点検用携帯端末7は、情報コードを読み取るコード読取部74と、画像や動画を撮像する撮像部75と、紙工機械5の作動音を収録する録音部76と、を備えている。そして、点検用携帯端末7は、HDD等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリおよびCPU等のプロセッサを有し、内部バスを介して、これらを協働させることにより各部を作動させている。
【0057】
具体的に、記憶部71は、各種プログラム等を実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリ、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。そして、記憶部71には、点検作業員による点検作業の作業手順がプログラミングされた点検用プログラムが格納されている。
【0058】
コード読取部74は、例えば、QRコードやバーコード等の情報コードを読取可能に構成されている。撮像部75は、例えば、カメラ等の撮像装置で構成され、画像および動画を撮像可能に構成されている。録音部76は、例えば、マイク等の録音装置で構成され、録音可能に構成されている。
【0059】
処理部72は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されており、記憶部71に格納された点検プログラムを読み出して展開すると共に、展開した点検プログラムに基づいて、入出力部70の操作パネルに点検作業に関する画像を表示する。そして、点検作業員は、点検プログラムの点検手順に沿って点検を行い、点検用携帯端末7に各種情報を入力する。具体的に、点検作業員は、点検プログラムに沿った点検作業を行い、その点検結果を入出力部70を操作して入力することで、点検用携帯端末7は、入力された情報を入力情報として取得する。また、点検作業員は、コード読取部74により紙工機械5の各部品に貼り付けられた情報コードを読み取ることで、点検用携帯端末7は、読み取った情報を部品情報として取得する。また、点検作業員は、撮像部75により紙工機械5の各部を撮像したり、録音部76により紙工機械5の各部の作動音を録音したりすることで、点検用携帯端末7は、撮像した画像や動画を撮像情報として取得し、録音した作動音を音声情報として取得する。そして、点検用携帯端末7は、取得した入力情報、部品情報、撮像情報や音声情報を点検情報として、情報通信部73からネットワーク9を介して情報管理装置8へ送信する。
【0060】
情報管理装置8は、いわゆるコンピュータであり、キーボードやモニターで構成された入出力部80と、各種プログラムを格納する記憶部81と、各種プログラムを実行する処理部82と、紙工機械5および情報管理装置8との間で情報通信を行う情報通信部83と、を備え、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。そして、情報管理装置8は、HDD等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリおよびCPU等のプロセッサを有し、内部バスを介して、これらを協働させることにより各部を作動させている。なお、上記したように情報管理装置8は、工場外に配置され、紙工機械5の製造元によって管理されている。
【0061】
具体的に、記憶部81は、各種プログラム等を実行するための作業領域となるRAM等の揮発性のメモリ、ROMやハードディスクドライブ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。そして、記憶部81には、取得した作動情報と点検情報とを格納する情報データベース100と、不具合であると判定された作動情報と点検情報とを不具合情報として格納する不具合データベース101と、異なる複数種の点検プログラムを格納する点検プログラムデータベース102と、紙工機械5を構成する各部品の補修費用に関する情報を格納する補修費用データベース103と、が設けられている。
【0062】
処理部82は、各種プログラムを実行するための演算を行うCPU等で構成されており、不具合判定部90と、不具合時期予測部91と、不具合要因特定部92と、不具合要因解消部93と、点検プログラム選定部94と、累積補修費用導出部95と、見積書作成部96と、を備えている。
【0063】
不具合判定部90は、予め設定された不具合判定値をしきい値とし、情報通信部83を介して取得した作動情報および点検情報を、不具合判定値と大小比較することで、紙工機械5に不具合が生じているか否かを判定する。ここで、不具合判定値は、取得される作動情報および点検情報と、紙工機械5の不具合発生との相関関係を分析し、得られた分析結果に基づいて導出されている。そして、不具合判定部90は、紙工機械5に不具合が生じていると判定した場合、取得した作動情報および点検情報を不具合情報として不具合データベース101に蓄積していく。
【0064】
不具合時期予測部91は、不具合データベース101に格納された不具合情報から、紙工機械5を構成する各部品の不具合発生時期を予測する。なお、予測された各部品の不具合時期に基づいて、各部品の交換時期を予測することにより、不具合時期の近い紙工機械5の部品を、予め用意すれば、紙工機械5の各部品の交換を円滑に行うことができる。
【0065】
不具合要因特定部92は、紙工機械5に不具合が生じていると判定された場合、不具合データベース101に蓄積された不具合情報と、紙工機械5の不具合発生の要因となる不具合要因との相関関係を分析すると共に、分析によって得られた分析結果と、取得した作動情報および点検情報とを比較して、不具合要因を特定する。ここで、不具合要因としては、例えば、紙工機械5の生産性を阻害する要因となる生産性阻害要因、紙工機械5の生産ロスの要因となる生産ロス要因、紙工機械5により生産された生産品の品質悪化事象の要因となる品質悪化要因、および紙工機械5を構成する各部品の中の不良部品等がある。このため、不具合要因特定部92には、紙工機械5の不具合発生の要因を特定すべく、阻害要因特定部110、ロス要因特定部111、品質悪化要因特定部112、および不良部品特定部113が設けられている。
【0066】
阻害要因特定部110は、不具合データベース101に蓄積された不具合情報と、紙工機械5の生産性阻害要因との相関関係を分析し、この分析結果から、生産性阻害要因を特定するための阻害要因特定モデルを構築する。つまり、阻害要因特定モデルは、生産性阻害要因と相関性の高い不具合情報をモデル化したものである。そして、阻害要因特定部110は、取得した不具合情報(作動情報および点検情報)に阻害要因特定モデルを当てはめることで、生産性阻害要因を特定する。
【0067】
ここで、生産性阻害要因の一種である芯紙に対するライナ紙の貼着不良を例として、具体的に説明する。生産性阻害要因として、芯紙に対するライナ紙の貼着不良が発生すると、紙工機械5を操作するオペレータは、例えば、コルゲートマシン15における段ボールシートの搬送速度を低下させることによって貼着不良を解消する。このとき、紙工機械5に設けられた速度検出センサ44は、搬送速度が低下していることを検出し、この検出信号は、作動情報収集装置6およびネットワーク9を介して、情報管理装置8の情報通信部83で作動情報として取得される。この後、取得した作動情報に基づいて、紙工機械5に不具合が発生したと判定されると、阻害要因特定部110は、搬送速度の低下によって引き起こされる相関性の高い生産性阻害要因、すなわち芯紙に対するライナ紙の貼着不良を特定する。そして、阻害要因特定部110は、貼着不良という生産性阻害要因を特定すると、後述する阻害要因解消部120において、貼着不良を解消し、搬送速度の低下を解消する。
【0068】
ロス要因特定部111は、阻害要因特定部110とほぼ同様に構成され、不具合データベース101に蓄積された不具合情報と、紙工機械5の生産ロス要因との相関関係を分析し、この分析結果から、生産ロス要因を特定するためのロス要因特定モデルを構築する。つまり、ロス要因特定モデルは、生産ロス要因と相関性の高い不具合情報をモデル化したものである。そして、ロス要因特定部111は、取得した不具合情報にロス要因特定モデルを当てはめることで、生産ロス要因を特定する。
【0069】
品質悪化要因特定部112も、阻害要因特定部110とほぼ同様に構成され、不具合データベース101に蓄積された不具合情報と、紙工機械5の品質悪化要因との相関関係を分析し、この分析結果から、品質悪化要因を特定するための品質悪化要因特定モデルを構築する。つまり、品質悪化要因特定モデルは、品質悪化要因と相関性の高い不具合情報をモデル化したものである。そして、品質悪化要因特定部112は、取得した不具合情報に品質悪化要因特定モデルを当てはめることで、品質悪化要因を特定する。
【0070】
不良部品特定部113は、不具合データベース101に蓄積された不具合情報と、紙工機械5を構成する各部品の中の不良部品との相関関係を分析し、この分析結果から、不良部品を特定するための不良部品特定モデルを構築する。つまり、不良部品特定モデルは、不良部品と相関性の高い不具合情報をモデル化したものである。そして、不良部品特定部113は、取得した不具合情報に不良部品特定モデルを当てはめることで、不良部品を特定する。
【0071】
ここで、例えば、不良部品として、ベアリングに不具合が生じた場合について、具体的に説明する。ベアリングに不具合が発生すると、ベアリングの不具合によってベアリング周りの作動状態が悪化する。このとき、紙工機械5に設けられた振動検出センサ47、回転数検出センサ46や温度検出センサ45は、ベアリング周りの作動状態の悪化を検出し、この検出信号は、作動情報収集装置6およびネットワーク9を介して、情報管理装置8に送信される。一方、点検作業員は、点検プログラムに沿って点検情報を点検用携帯端末7に入力する。具体的には、点検作業員は、ベアリング周りの画像を点検用携帯端末7の撮像部75によって撮像したり、あるいはベアリング周りの作動音を点検用携帯端末7の録音部76によって録音したりする。そして、この撮像情報や録音情報等の点検情報は、ネットワーク9を介して情報管理装置8に送信される。送信された作動情報および点検情報は、情報管理装置8の情報通信部83を介して取得され、この後、取得した作動情報や点検情報に基づいて、紙工機械5に不具合が発生していると判定、つまり、振動検出センサ47によって検出された振動が不安定であると判定、回転数検出センサ46によって検出された回転が不安定であると判定、温度検出センサ45によって検出された温度が異常であると判定されると、不良部品特定部113は、取得した作動情報や点検情報と相関性の高い部品、すなわちベアリングを特定する。そして、不良部品特定部113は、ベアリングという不良部品を特定すると、後述する見積書作成部96において、不良部品の補修に関する見積書を作成する。
【0072】
なお、阻害要因特定モデル、ロス要因特定モデル、品質悪化要因特定モデルおよび不良部品特定モデルは、不具合データベース101に蓄積された不具合情報に基づいて、構築されるため、不具合データベース101に不具合情報が蓄積されるほど、より精度の高いモデルを構築することができる。これにより、不具合データベース101に不具合情報が蓄積されることで、モデルの構築を良好にでき、不具合の特定精度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、不具合要因特定部92は、例示した不具合要因以外の不具合要因についても特定することができ、例えば、品質悪化要因の一種であるシングルフェーサ21の貼り合せ異常を、紙工機械5の各種センサから取得した作動情報と、点検用携帯端末7から取得した点検情報とに基づいて、特定可能となっている。
【0074】
不具合要因解消部93は、上記の不具合要因特定部92によって特定された不具合要因を解消している。ここで、不具合要因は、上記した生産性阻害要因、生産ロス要因、および品質悪化要因等がある。このため、不具合要因解消部93には、阻害要因特定部110によって特定された生産性阻害要因を解消する阻害要因解消部120と、ロス要因特定部111によって特定された生産ロス要因を解消するロス要因解消部121と、品質悪化要因特定部112によって特定された品質悪化要因を解消する品質悪化要因解消部122と、が設けられている。
【0075】
阻害要因解消部120は、上記した阻害要因特定部110で特定した生産性阻害要因を解消する。具体的に、阻害要因解消部120は、特定した生産性阻害要因と、紙工機械5の調節部位との相関関係を分析し、この分析結果から、生産性阻害要因を解消するための調節部位を特定する。つまり、阻害要因解消部120は、生産性阻害要因を解消する相関性の高い紙工機械5の調節部位を特定し、特定した紙工機械5の調節部位を調整することにより、生産性阻害要因を解消する。
【0076】
具体的に、上記した阻害要因特定部110において、芯紙に対するライナ紙の貼着不良という生産性阻害要因を特定すると、阻害要因解消部120は、貼着不良を解消すべく、貼着不良を解消する相関性の高い紙工機械5の調節部位を特定する。貼着不良と相関性の高い調節部位としては、例えば、各ライナ紙の温度を調節する部分や、芯紙にライナ紙を貼着するための糊の量を調節する部分である。そして、阻害要因解消部120は、これらの調節部位を調整することで、貼着不良を解消し、段ボールシートの搬送速度の低下を解消する。
【0077】
ロス要因解消部121は、上記したロス要因特定部111で特定した生産ロス要因を解消する。具体的に、ロス要因解消部121は、阻害要因解消部120と略同様に構成され、特定した生産ロス要因と、紙工機械5の調節部位との相関関係を分析し、この分析結果から、生産ロス要因を解消するための調節部位を特定する。つまり、ロス要因解消部121は、生産ロス要因を解消する相関性の高い紙工機械5の調節部位を特定し、特定した紙工機械5の調節部位を調整することにより、生産ロス要因を解消する。
【0078】
品質悪化要因解消部122は、上記した品質悪化要因特定部112で特定した品質悪化要因を解消する。具体的に、品質悪化要因解消部122も、阻害要因解消部120と略同様に構成され、特定した品質悪化要因と、紙工機械5の調節部位との相関関係を分析し、この分析結果から、品質悪化要因を解消するための調節部位を特定する。つまり、品質悪化要因解消部122は、品質悪化要因を解消する相関性の高い紙工機械5の調節部位を特定し、特定した紙工機械5の調節部位を調整することにより、品質悪化要因を解消する。
【0079】
点検プログラム選定部94は、上記の不具合時期予測部91によって予測した不具合発生時期の早い紙工機械5の各部品を重点的に点検するように点検プログラムを選定する。ここで、点検プログラムは、点検作業の内容に応じて複数種用意されており、複数種の点検プログラムは記憶部81の点検プログラムデータベース102に記憶されている。そして、点検プログラム選定部94が、点検プログラムを選定すると、ネットワーク9を介して点検用携帯端末7に点検プログラムを送信する。
【0080】
累積補修費用導出部95は、補修費用データベース103に蓄積された紙工機械5の各部品の補修費用に関する情報と、上記した不具合時期予測部91により予測した紙工機械5の各部品の不具合時期に関する情報とに基づいて、図4に示すグラフを生成し、このグラフに基づいて、累積補修費用を導出している。このグラフは、その横軸が使用期間となっており、その縦軸が累積補修費用となっている。これにより、累積補修費用導出部95は、紙工機械5の使用期間に応じて発生する紙工機械5の累積補修費用を定量的に推定することができる。以上から、累積補修費用導出部95により累積補修費用を推定することで、例えば、紙工機械5の保守契約等において、適正な契約期間、契約金額および契約内容とすることができる。
【0081】
見積書作成部96は、不良部品特定部113により特定された不良部品の補修費用に関する見積書を作成する。具体的に、点検作業時において、点検用携帯端末7は、コード読取部74により情報コードを読み取ることで、各部品の部品情報を取得する。そして、見積書作成部96は、取得した複数の部品情報のうち、不良部品特定部113により特定された不良部品に対応する部品情報を選定し、選定した部品情報に基づいて、補修費用データベース103から不良部品に対応する補修費用を読み出す。この後、見積書作成部96は、不良部品に関する補修費用を見積書データとして書式化し、書式化した見積書データを印刷することで、見積書を作成可能となっている。なお、書式化した見積書データを、ネットワーク9を介して部品業者に送付することで、部品発注を簡単に行うことができ、不良部品の特定から部品発注に至る工程を効率的に行うことができる。
【0082】
情報通信部83は、作動情報収集装置6から送信された作動情報および点検用携帯端末7から送信された点検情報を取得している。具体的に、情報通信部83は、紙工機械5の作動時において、リアルタイム用データを取得する。一方で、情報通信部83は、紙工機械5の作動停止中において、詳細データを取得する。そして、情報通信部83は、取得した詳細データを記憶部81の情報データベース100へ格納する。
【0083】
次に、図5を参照して、上記した紙工機械5の点検システムを用いて、点検作業を行う一連の点検フローについて、説明する。この点検フローでは、情報管理装置8、作動情報収集装置6および点検用携帯端末7が用いられ、相互に情報通信可能となっている。先ず、情報管理装置8は、作動情報収集装置6において収集する作動情報の種類を予め設定し(ステップS11)、作動情報収集装置6に設定した種類の作動情報の収集を行うように指令する。すると、作動情報収集装置6は、紙工機械5の作動情報の収集を開始し(ステップS1)、収集した作動情報を情報管理装置8へ送信する(ステップS2)。このとき、紙工機械5の作動中においては、作動情報収集装置6から情報管理装置8へリアルタイム用データを送信する。一方で、紙工機械5の作動停止中においては、作動情報収集装置6から情報管理装置8へ詳細データを送信する。
【0084】
一方、点検用携帯端末7を保持した点検作業員は、定期的に紙工機械5の点検作業を行う(ステップS31)。このとき、点検作業員は、点検用携帯端末7に格納された点検プログラムに従って、点検作業を行うと共に、点検結果を点検用携帯端末7に入力する。これにより、点検用携帯端末7は、入力された点検結果を点検情報として取得する(ステップS32)。点検作業の終了後、点検作業員は点検用携帯端末7を操作して、点検情報を点検用携帯端末7から情報管理装置8へ向けて送信する(ステップS33)。
【0085】
作動情報収集装置6から作動情報が送信されると共に、点検用携帯端末7から点検情報が送信されると、情報管理装置8は、作動情報および点検情報を取得する(ステップS12)。そして、情報管理装置8は、不具合判定部90により紙工機械5の不具合判定を行うべく、取得した作動情報および点検情報と、紙工機械5の不具合発生との相関関係の分析を行う(ステップS13)。なお、ステップS12において取得した作動情報および点検情報や、ステップS13において分析して得られたデータは、情報データベース100に記憶保存される(ステップS14)。この後、情報管理装置8は、不具合判定部90により紙工機械5の不具合判定を行い(ステップS15)、紙工機械5に不具合が生じていないと判定すると、作動情報収集装置6は、点検レポート作成部60により点検レポートデータを生成し(ステップS3)、作成した点検レポートデータを印刷する(ステップS4)。
【0086】
一方で、情報管理装置8は、紙工機械5に不具合が生じていると判定すると、不具合要因特定部92により不具合要因の特定を行うべく、不具合データベース101の不具合情報と、不具合要因との相関関係を分析する(ステップS16)。そして、不具合要因特定部92により不具合要因を特定すると、情報管理装置8は、不具合を引き起こす要因となる不具合要因を解消すべく、不具合要因解消部93により不具合要因を解消するための紙工機械5の調節部位を特定したり、あるいは、不具合要因特定部92によって特定された不良部品の交換を指示したりする(ステップS17)。そして、情報管理装置8は、特定した紙工機械5の調節部位を調整する調整指令を点検用携帯端末7へ送信し、また、特定した不良部品を交換する交換指令を点検用携帯端末7へ送信する。
【0087】
続いて、点検作業員は、点検用携帯端末7で受信した調整指令や交換指令に従って、紙工機械5の不良部品を交換したり、紙工機械5の調節部位を調整したりすることで、紙工機械5の不具合を解消する(ステップS34)。この後、点検作業員は、紙工機械5の不具合を解消した修復作業に関する修復情報を、点検用携帯端末7に入力する(ステップS35)。そして、点検作業員は点検用携帯端末7を操作して、修復情報を点検用携帯端末7から情報管理装置8へ向けて送信すると共に、修復情報を点検用携帯端末7から作動情報収集装置6へ向けて送信する(ステップS36)。
【0088】
修復情報を受信した作動情報収集装置6は、点検レポート作成部60により、受信した修復情報に基づいて、点検レポートデータを生成する(ステップS5)と共に、作成した点検レポートデータに基づいて印刷を行うことで、点検レポートを作成する(ステップS6)。一方、修復情報を受信した情報管理装置8は、受信した修復情報を記憶部81の情報データベース100に保存する(ステップS18,19)。
【0089】
以上の構成によれば、情報管理装置8は、紙工機械5の入出力部40や各種センサによって得られた作動情報と、点検用携帯端末7によって得られた点検情報と、を取得することができる。これにより、情報管理装置8は、得られる情報量を増大させることができるため、不具合判定部90による不具合判定を好適に行うことができる。また、点検作業員は、点検用携帯端末7を保持して点検作業を行うことができるため、点検用携帯端末7の点検プログラムに従って、点検作業を行うことにより、点検作業員の熟練度に関わらず、適切且つ効率良く点検を行うことができる。
【0090】
また、情報管理装置8は、不具合データベース101に不具合情報を蓄積し、蓄積した不具合情報に基づいて、不具合時期予測部91による各部品の不具合時期の予測を好適に行うことができる。このため、不具合データベース101に不具合情報が蓄積されるほど、不具合時期予測部91による各部品の不具合時期の予測精度を向上させることが可能となる。
【0091】
さらに、情報管理装置8は、不具合要因特定部92により紙工機械5の不具合発生の要因となる不具合要因を特定し、特定した紙工機械5の不具合要因を不具合要因解消部93により解消することで、紙工機械5を好適に作動させることができる。
【0092】
また、作動情報収集装置6によって周期的にサンプリングされた作動情報を、リアルタイム用データとしてリアルタイム情報送信部64によりリアルタイムに情報管理装置8へ送信する一方で、詳細データとして定期情報送信部65によりを紙工機械5の作動停止中に情報管理装置8へ送信することができる。これにより、作動情報収集装置6の情報通信部53は、作動情報を、ネットワーク9上におけるデータ送信容量の許容範囲内に収めて送信することができ、リアルタイム情報送信部64によるリアルタイム用データの送信に悪影響を与えることなく、詳細データを送信することができる。
【0093】
さらに、情報管理装置8は、累積補修費用導出部95により紙工機械5の累積補修費用を定量的に算定することができるため、例えば、導出された累積補修費用を考慮して、紙工機械5の保守契約の契約期間、契約金額および契約内容を適正なものとすることができる。
【0094】
また、情報管理装置8は、紙工機械5の各部品に付された情報コードを、点検用携帯端末7のコード読取部74により読み取って部品情報を取得し、取得した部品情報に基づいて、見積書を簡単に作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る紙工機械の点検システムは、コルゲートマシン等の紙工機械の点検作業に用いる場合において有用であり、特に、紙工機械の点検作業の効率化を図る場合に適している。
【符号の説明】
【0096】
1 紙工機械の点検システム
5 紙工機械
6 作動情報収集装置
7 点検用携帯端末
8 情報管理装置
9 ネットワーク
15 コルゲートマシン
16 製函機
20 ミルロールスタンド
21 シングルフェーサ
22 ダブルフェーサ
23 スリッタスコアラ
24 カットオフ装置
25 スタッカ
26 プレヒータ
27 ブリッジ部
30 給紙部
31 印刷部
32 スロッタクリーザ部
33 フォルディング部
34 カウンタエゼクタ部
40 紙工機械の入出力部
44 速度検出センサ
45 温度検出センサ
46 回転数検出センサ
47 振動検出センサ
50 作動情報収集装置の入出力部
51 作動情報収集装置の記憶部
52 作動情報収集装置の処理部
53 作動情報収集装置の情報通信部
54 作動情報収集装置のサーバ
60 点検レポート作成部
64 リアルタイム情報送信部
65 定期情報送信部
70 点検用携帯端末の入出力部
71 点検用携帯端末の記憶部
72 点検用携帯端末の処理部
73 点検用携帯端末の情報通信部
74 コード読取部
75 撮像部
76 録音部
80 情報管理装置の入出力部
81 情報管理装置の記憶部
82 情報管理装置の処理部
83 情報管理装置の情報通信部
90 不具合判定部
91 不具合時期予測部
92 不具合要因特定部
93 不具合要因解消部
94 点検プログラム選定部
95 累積補修費用導出部
96 見積書作成部
100 情報データベース
101 不具合データベース
102 点検プログラムデータベース
103 補修費用データベース
110 阻害要因特定部
111 ロス要因特定部
112 品質悪化要因特定部
113 不良部品特定部
120 阻害要因解消部
121 ロス要因解消部
122 品質悪化要因解消部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動状態を検出可能な作動検出手段を備えた紙工機械と、
点検作業によって得られた情報を入力可能に構成された点検用携帯端末と、
ネットワークを介して前記紙工機械および前記点検用携帯端末に通信可能に接続され、前記作動検出手段により検出された検出結果を前記紙工機械の作動情報として取得すると共に前記点検用携帯端末への入力情報を点検情報として取得する情報管理装置と、を備えたことを特徴とする紙工機械の点検システム。
【請求項2】
前記情報管理装置は、
取得した前記作動情報および前記点検情報と、予め設定された不具合判定値とを比較して、前記紙工機械に不具合が生じているか否かを判定する不具合判定手段を、備えたことを特徴とする請求項1に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項3】
前記不具合判定値は、取得される前記作動情報および前記点検情報と、前記紙工機械の不具合発生との相関関係を分析し、得られた分析結果に基づいて導出されることを特徴とする請求項2に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項4】
前記情報管理装置は、
前記不具合判定手段により前記紙工機械に不具合が生じていると判定された場合、不具合であると判定された前記作動情報および前記点検情報を、不具合情報として蓄積する不具合データベースを、さらに備えたことを特徴とする請求項2または3に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項5】
前記情報管理装置は、
前記不具合データベースに蓄積された前記不具合情報から、前記紙工機械を構成する各部品の不具合発生時期を予測する不具合時期予測手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項6】
前記情報管理装置は、
前記不具合データベースに蓄積された前記不具合情報と、前記紙工機械の不具合発生の要因となる不具合要因との相関関係を分析し、得られた分析結果と、取得した前記作動情報および前記点検情報とを比較して、前記不具合要因を特定する不具合要因特定手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項7】
前記点検用携帯端末は、点検作業の作業手順を示す点検プログラムを格納しており、
前記情報管理装置は、前記不具合要因特定手段により特定した前記不具合要因に応じて、前記点検プログラムを選定する点検プログラム選定手段を、さらに備え、
前記点検用携帯端末には、前記点検プログラム選定手段により選定した前記点検プログラムが格納されることを特徴とする請求項6に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項8】
前記情報管理装置は、
前記不具合要因特定手段によって特定された前記不具合要因を解消する不具合要因解消手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項6または7に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項9】
前記不具合要因として、前記紙工機械の生産性を阻害する要因となる生産性阻害要因、前記紙工機械の生産ロスの要因となる生産ロス要因、前記紙工機械により生産された生産品の品質悪化の要因となる品質悪化要因および前記紙工機械を構成する各部品の中の不良部品があり、
前記不具合要因特定手段は、
前記不具合データベースに蓄積された前記不具合情報から、前記生産性阻害要因を特定するための阻害要因特定モデルを構築すると共に、取得した前記作動情報および前記点検情報を前記阻害要因特定モデルに当てはめて前記生産性阻害要因を特定する阻害要因特定手段と、
前記不具合データベースに蓄積された前記不具合情報から、前記生産ロス要因を特定するためのロス要因特定モデルを構築すると共に、取得した前記作動情報および前記点検情報を前記ロス要因特定モデルに当てはめて前記生産ロス要因を特定するロス要因特定手段と、
前記不具合データベースに蓄積された前記不具合情報から、前記品質悪化要因を特定するための品質悪化要因特定モデルを構築すると共に、取得した前記作動情報および前記点検情報を前記品質悪化要因特定モデルに当てはめて前記品質悪化要因を特定する品質悪化要因特定手段と、
前記不具合データベースに蓄積された前記不具合情報から、前記不良部品を特定するための不良部品特定モデルを構築すると共に、取得した前記作動情報および前記点検情報を前記不良部品特定モデルに当てはめて前記不良部品を特定する不良部品特定手段とのうち、少なくともいずれか1つの手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項10】
前記不具合要因解消手段は、
前記阻害要因特定手段によって特定された前記生産性阻害要因を解消する阻害要因解消手段と、
前記ロス要因特定手段によって特定された生産ロス要因を解消するロス要因解消手段と、
前記品質悪化要因特定手段によって特定された品質悪化要因を解消する品質悪化要因解消手段とのうち、少なくともいずれか1つの手段をさらに備え、
前記阻害要因解消手段は、前記阻害要因特定モデルから前記生産性阻害要因と相関性のある前記紙工機械の各部を調整し、
前記ロス要因解消手段は、前記ロス要因特定モデルから前記生産ロス要因と相関性のある前記紙工機械の各部を調整し、
前記品質悪化要因解消手段は、前記品質悪化要因特定モデルから前記品質悪化要因と相関性のある前記紙工機械の各部を調整することを特徴とする請求項9に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項11】
前記作動検出手段は、前記紙工機械の作動情報を周期的にサンプリングしており、
前記紙工機械は、
サンプリングした作動情報を格納する情報格納手段と、
前記作動検出手段によってサンプリングした前記作動情報のうち、その一部を抽出して前記情報管理装置へリアルタイムに送信するリアルタイム情報送信手段と、
前記情報格納手段に格納された前記作動情報を、前記紙工機械の作動停止中に送信する定期情報送信手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項12】
前記情報管理装置は、
前記紙工機械を構成する各部品の補修費用に関する情報を蓄積した補修費用データベースと、
前記不具合時期予測手段により予測される前記各部品の不具合発生時期と前記各部品の補修費用とに基づいて、前記紙工機械の使用期間の長さに伴って発生する前記紙工機械の累積補修費用を導出する累積補修費用導出手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項5ないし11のいずれか1項に記載の紙工機械の点検システム。
【請求項13】
前記紙工機械を構成する各部品には、前記各部品に関する部品情報を画像化した情報コードが設けられ、
前記点検用携帯端末は、前記情報コードを読み取って前記部品情報を取得するコード読取手段を、さらに備え、
前記情報管理装置は、前記コード読取手段により読み取った前記各部品の前記部品情報に基づいて、見積書を作成する見積書作成手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の紙工機械の点検システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−103049(P2011−103049A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257361(P2009−257361)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
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1.QRコード
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】