説明

紙幣処理機

【課題】紙幣をその長手方向を搬送方向に沿わせて搬送部で搬送する場合であっても、搬送部から放出した紙幣を集積部で良好に集積させることができる紙幣処理機の提供。
【解決手段】紙幣Sをその長手方向を搬送方向に沿わせて一枚ずつ搬送する搬送部の端末に設けられた放出部45から集積部へ放出して集積させるものであって、放出部45は、紙幣Sの放出方向に対する直交方向の中間部を表裏両側から挟持する一対の中間ローラ46a,46bと、前記直交方向における一対の中間ローラ46a,46bの両側にそれぞれ設けられ、一対の中間ローラ46a,46bの紙幣挟持位置に対し互いに表裏方向の同側にオフセットした紙幣挟持位置で紙幣Sを表裏両側から挟持する二対の外側ローラ47a,47bおよび外側ローラ48a,48bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理機に関し、特に折り癖のある紙幣を良好に集積できる紙幣処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
バラ紙幣が一括して装填部にセットされると、これを分離繰出部で一枚ずつ分離して繰り出し搬送部で搬送して一時貯留部に集積させた後に収納部に収納させる紙幣処理機がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平1−9805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した紙幣処理機を含む従来の多くの紙幣処理機では、紙幣を横長の姿勢で装填部に装填させるとともに、紙幣を横長の姿勢で搬送して一時貯留部等に放出させて集積させるようになっているが、最近では紙幣の金種毎の長さが大きく相違しないこと等の理由で、長手方向を搬送方向に沿わせて搬送する方式も採用されるようになってきている。
【0004】
ところで、紙幣を折り畳むとき、通常短手方向に折り線がつくように長手方向に折り畳むことになるが、紙幣を横長の姿勢で搬送すると、搬送部の湾曲部分で、前記のような折り線を、これに直交する方向に沿う中心線を中心に曲げることになって、折り癖を矯正することができ、その結果、搬送部から放出させて集積させる際にも良好に集積させることができることになる。しかしながら、紙幣をその長手方向を搬送方向に沿わせて搬送する方式を採用した場合には、搬送部の湾曲部分が、折り線を、これに沿う中心線を中心に曲げることになって、折り癖を十分に矯正することができない。このように、折り癖が矯正できないと、特に搬送部の端末の放出部から集積部に放出されたときに、折り癖で紙幣が反り、後続の紙幣にぶつかって良好に集積させることができない場合があった。
【0005】
したがって、本発明は、紙幣をその長手方向を搬送方向に沿わせて搬送部で搬送する場合であっても、搬送部から放出した紙幣を集積部で良好に集積させることができる紙幣処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、紙幣をその長手方向を搬送方向に沿わせて一枚ずつ搬送する搬送部の端末に設けられた放出部から集積部へ放出して集積させる紙幣処理機であって、前記放出部は、紙幣の放出方向に対する直交方向の中間部を表裏両側から挟持する一対の中間ローラと、前記直交方向における前記一対の中間ローラの両側にそれぞれ設けられ、前記一対の中間ローラの紙幣挟持位置に対し互いに表裏方向の同側にオフセットした紙幣挟持位置で紙幣を表裏両側から挟持する二対の外側ローラとを有することを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記放出部は、前記直交方向における前記二対の外側ローラの両外側にそれぞれ設けられ、前記二対の外側ローラの紙幣挟持位置に対し互いに前記一対の中間ローラの紙幣挟持位置側にオフセットした紙幣案内位置で紙幣を表裏両側で案内する二対の案内手段を有することを特徴としている。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記放出部には該放出部から放出される紙幣の後端部を下方に叩く羽根車が設けられており、前記放出方向に沿って前下がりに傾斜する集積部ガイドが、前記羽根車の回転時の外周面に対向して設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、搬送部で長手方向に沿う姿勢で搬送される紙幣を搬送部の端末の放出部から集積部へ放出させる際に、放出部は、一対の中間ローラで紙幣の放出方向に対する直交方向の中間部を表裏両側から挟持するとともに、同じ紙幣の前記直交方向における両側を二対の外側ローラで、一対の中間ローラの紙幣挟持位置に対し表裏方向の同側にオフセットした紙幣挟持位置で挟持する。このため、紙幣に短手方向に沿って形成された折り線を、直交する表裏方向に、放出方向前方から見て略V字または略逆V字の段差状に曲げることになって、折れ癖等を矯正できる。したがって、搬送部から放出した紙幣を集積部で良好に集積させることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、搬送部で長手方向に沿う姿勢で搬送される紙幣を搬送部の端末の放出部から集積部へ放出させる際に、放出部は、上記と同様にして一対の中間ローラで紙幣の放出方向に対する直交方向の中間部を表裏両側から挟持するとともに、同じ紙幣の前記直交方向における両側を二対の外側ローラで、一対の中間ローラの紙幣挟持位置に対し表裏方向の同側にオフセットした紙幣挟持位置で挟持することになり、さらに、同じ紙幣の前記直交方向におけるさらに両側を二対の案内手段で、一対の中間ローラの紙幣挟持位置側にオフセットした紙幣案内位置で案内することになる。このため、紙幣に短手方向に沿って形成された折り線を、直交する表裏方向に、放出方向前方から見て略W字または略M字の段差状に曲げることになって、折れ癖等をさらに矯正できる。したがって、搬送部から放出した紙幣を集積部でさらに良好に集積させることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、放出方向に沿って前下がりに傾斜する集積部ガイドが、放出部の羽根車の回転時の外周面に対向して設けられているため、例え折れ癖を矯正しきれないで集積部に放出される紙幣があっても、集積部ガイドによってこの紙幣の後端を羽根車で叩ける範囲に収めることが可能になる。よって、集積部内の紙幣に折れ癖があってもその後端部を羽根車で下方に確実に叩くことができ、後に放出される紙幣との接触を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態の紙幣入金機を図面を参照して以下に説明する。
本実施形態の紙幣入金機11は、バラの紙幣Sを計数して入金および収納する入金収納処理と、バラの紙幣Sを計数して返却する計数処理とを行うことが可能とされるものであるが、さらに収納した紙幣Sを出金させるもの等、種々の紙幣入金機に適用可能である。
【0013】
本実施形態の紙幣入金機11は、図1に概略的に示すように、機体の前面側の上部にバラ紙幣Sが投入される装填部12が設けられ、この装填部12の下側に機体内からリジェクト紙幣Sが繰り出されるリジェクト部13が設けられている。
【0014】
装填部12は、水平に対し若干後ろ下がりに傾斜してその底をなす台部15を有しており、この台部15上に紙幣Sが上下方向に集積された状態で装填される。なお、台部15を水平に配置しても良い。
【0015】
また、装填部12には、台部15の機体奥側上方に機体左右方向に沿って配設された回動軸16と、この回動軸16に回動可能に支持されて台部15の上側で上下に揺動可能とされ、台部15上に装填された紙幣Sを台部15との間で挟持するビルプレス17とが設けられている。
【0016】
装填部12の機体奥側には、このように台部15上に装填されたバラ紙幣Sを、下側のものから一枚ずつ分離して機体内に繰り出す分離繰出部20が設けられている。この分離繰出部20は、装填部12の台部15に、台部15から上部を一部突出させた状態で機体左右方向に沿う軸回りに回転可能に設けられた蹴出ローラ21と、台部15よりも機体奥側に蹴出ローラ21と平行な軸回りに回転可能に設けられた繰出ローラ22と、この繰出ローラ22の上側に繰出ローラ22と平行な軸回りに回転可能に設けられた分離ローラ23とを有している。分離ローラ23は、図示せぬワンウエイクラッチによって繰出ローラ22側が機体奥方に移動する方向の回転が規制され、逆方向の回転のみ許容される。
【0017】
このような分離繰出部20は、台部15上に装填されたバラ紙幣Sの最下のものを蹴出ローラ21で繰出ローラ22と分離ローラ23との間に蹴り出し、この蹴り出し時に最下の紙幣Sに引きずられて繰出ローラ22と分離ローラ23との間に移動した紙幣Sを分離ローラ23で止めて蹴り出された最下の紙幣Sのみを繰出ローラ22で機体方向に繰り出す。
【0018】
この分離繰出部20の機体奥側には、分離繰出部20から繰り出された紙幣Sを搬送する搬送部25が接続されている。この搬送部25は、紙幣を案内する複数のガイド板と搬送ローラと振分部材等で構成されるもので、分離繰出部20から略水平に沿って機体奥側に延出した後に下側に折り返し略水平に沿って機体手前側に延出してリジェクト部13に接続される搬送路26と、この搬送路26の途中から前下がりに延出する搬送路27とを有しており、搬送路26には、搬送中の紙幣Sの金種、真偽、正損および搬送異常の識別と計数とを行う識別部30が設けられている。
【0019】
搬送部25の搬送路27の端末位置には、識別部30により真紙幣かつ正紙幣で正常搬送と識別された紙幣Sを金種混合で一時貯留させる一時貯留部(集積部)32が接続されている。
さらに、一時貯留部32の下側には、一時貯留部32に一時貯留された紙幣Sを上部開口から受け入れて収納させる収納金庫(収納部)33が設けられている。
【0020】
なお、装填部12には、紙幣Sが分離繰出部20の分離繰出方向に長手方向を沿わせる姿勢で装填されることになり、搬送部25は紙幣Sをその長手方向を搬送方向に沿わせた姿勢で搬送し、その長手方向を放出方向に沿わせた姿勢で一時貯留部32およびリジェクト部13のいずれかに放出させる。
【0021】
一時貯留部32は、搬送路27の放出方向前方に鉛直に立設された前壁部35と、搬送路27の放出方向後側に略鉛直に立設された後壁部36と、これら前壁部35および後壁部36の左右同側同士を接続させる鉛直に立設された一対の側壁部37(各図面では断面とした関係上一方のみ図示)とを有する角筒状の壁部構成体38と、角筒状の壁部構成体38の下部開口を開閉させるとともに閉時に一時貯留部32の底部を構成するシャッタ39と、角筒状の壁部構成体38の上部開口を閉塞させる天井面40とを有している。なお、前壁部35は、機体前面の開閉可能な返却扉41の裏側の一部で構成されている。
【0022】
搬送部25の搬送路27は、その端末位置つまり一時貯留部32へ接続する放出部45が、図2および図3に示すように、紙幣Sの放出方向に直交する短手方向の略中央の中間部を上下両側(表裏両側)から挟持する、繰出ローラ22と平行な一対の回転自在の中間ローラ46a,46bと、紙幣Sの短手方向における中間ローラ46a,46bの両側にそれぞれ等距離離れて設けられ、一対の中間ローラ46a,46bの紙幣挟持位置に対し互いに表裏方向の同側である上側にオフセットした紙幣挟持位置で紙幣Sを上下両側(表裏両側)から挟持する外側ローラ47a,47bおよび外側ローラ48a,48bの二対とを有している。つまり、中間ローラ46a,46bの紙幣挟持位置と外側ローラ47a,47bの紙幣挟持位置と外側ローラ48a,48bの紙幣挟持位置とが紙幣放出方向から見てV字状に配置されている。
【0023】
ここで、下側の中間ローラ46b、外側ローラ47bおよび外側ローラ48bは、後壁部36の上部外側に配置された共通の駆動軸50に支持されており、すべて同軸上に配置されている。また、上側の中間ローラ46a、外側ローラ47aおよび外側ローラ48aもすべて同軸上に配置されている。そして、上側の中間ローラ46aは下側の中間ローラ46bに対し若干大径とされる一方、下側の同径の両外側ローラ47b,48bに対して上側の同径の両外側ローラ47a,48aが小径とされることで、紙幣挟持位置が上記したV字状とされている。
【0024】
また、放出部45は、図2に示すように(図3では図示略)、紙幣Sの短手方向における外側ローラ47a,47bおよび外側ローラ48a,48bの二対に対し両外側にそれぞれ羽根車52,53を有している。これら羽根車52,53は、駆動軸50の両外側ローラ47b,48bのさらに外側に支持されており、各羽根車52,53には、それぞれに羽部55が放射状に複数形成されている。これら羽根車52,53は、羽部55を後壁部36から前壁部35側に突出させ、しかも回転時に羽部55の先端がシャッタ39に接触せず且つシャッタ39の近傍で移動するように寸法が設定されている。
【0025】
さらに、放出部45は、紙幣Sの短手方向における外側ローラ47a,47bおよび外側ローラ48a,48bの二対に対し両外側であって両羽根車52,53よりもさらに外側にそれぞれ設けられ、二対の外側ローラ47a,47bおよび外側ローラ48a,48bの紙幣挟持位置に対し互いに一対の中間ローラ46a,46bの紙幣挟持位置側である下側にオフセットした紙幣案内位置で紙幣Sを表裏両側で案内する搬送ローラ(案内手段)56aおよびガイド(案内手段)56bと搬送ローラ(案内手段)57aおよびガイド(案内手段)57bとの二対が設けられている。
【0026】
両搬送ローラ56a,57aは、中間ローラ46a,47a,48aの上側に配置された共通の駆動軸59に支持されており、両ガイド56b,57bは、搬送ローラ56a,57aの外周面に所定の隙間を有して沿うように略円弧状に湾曲し、しかもその一時貯留部32側の端部が水平に近い角度とされている。両ガイド56b,57bは上記した駆動軸50の上側に配置されている。
【0027】
上記した放出部45は、両搬送ローラ56a,57aが駆動軸59に固定されていて図示略のモータによる駆動軸59の回転でそれぞれのガイド56b,57b側を一時貯留部32に向けて移動させるように回転することになり、下側の中間ローラ46b、外側ローラ47b,48bおよび羽根車52,53が駆動軸50に固定されていて図示略のモータによる駆動軸50の回転でそれぞれの上側を一時貯留部32に向けて移動させるように回転することになる。これらに対し、上側の中間ローラ46aおよび外側ローラ47a,48aは、それぞれフリーで回転可能となっており、下側の中間ローラ46b、外側ローラ47b,48bに対して直接接触して連れ回りし、または紙幣Sを介して連れ回りする。
【0028】
そして、一時貯留部32の天井面40には、図4に示すように、水平に対し放出部45の紙幣放出方向に沿って前下がりに傾斜する板状のガイド(集積部ガイド)61が、羽根車52,53の回転時の外周面つまり回転時の羽根55の先端部に近接しつつ対向する位置に設けられている。
【0029】
紙幣入金機11には、図1に示すように、上記した分離繰出部20、搬送部25、識別部30、シャッタ46等を制御する制御部63と、操作者への表示を行う表示部64と、操作者による操作入力が行われる操作部65とが設けられている。
【0030】
以上の紙幣入金機11で紙幣Sの入金収納処理を行う場合について説明する。
操作者が装填部12のビルプレス17を持ち上げてこれと台部15との間に紙幣Sを、その長手方向を機体前後方向に沿わせた状態で装填する。このとき、金種混合の装填および単一金種の装填のいずれも可能である。そして、操作者が操作部65に入金開始を操作を入力すると、制御部63が分離繰出部20と搬送部25とを駆動する。すると、装填部12に装填された紙幣Sが最下のものから一枚ずつ機内に繰り出され、搬送部25で搬送される。その途中で識別部30により受け入れ可能と識別された紙幣Sが搬送路27の放出部45から一時貯留部32内に放出され、それ以外の紙幣Sがリジェクト部13に放出される。なお、リジェクト部13に放出された紙幣Sはそのまま機外へ取り出し可能となる。
【0031】
そして、受け入れ可能と識別された紙幣Sは、搬送路27の端末の放出部45において、搬送ローラ56a,57aの駆動回転によって搬送ローラ56a,57aとガイド56b,57bとで一時貯留部32側に搬送されることになり、これら搬送ローラ56a,57aおよびガイド56b,57bによる搬送の終期に、図2および図5に示すように、これらによる搬送に、中間ローラ46bおよび外側ローラ47b,48bの駆動回転による中間ローラ46bおよび外側ローラ47b,48bと中間ローラ46aおよび外側ローラ47a,48aとによる繰出が加わって、一時貯留部32に放出されることになる。この放出時に、紙幣Sの放出方向つまり長手方向において同位置となる部分が、短手方向の中間位置において放出部45の中間ローラ46a,46b間の紙幣挟持位置を、短手方向のこの中間位置に対し一方の外側位置において外側ローラ47a,47b間の紙幣挟持位置を、短手方向の前記中間位置に対し他方の外側位置において外側ローラ48a,48b間の紙幣挟持位置を、短手方向の前記一方の外側位置に対しさらに外側位置において搬送ローラ56aおよびガイド56b間の案内位置を、短手方向の前記他方の外側位置に対しさらに外側位置において搬送ローラ57aおよびガイド57b間の案内位置を、それぞれ同時に通過した直後に放出部45から外側に突出し、このような放出部45の通過を全長にわたって連続的に行った後に紙幣Sが一時貯留部32に放出され、羽根車35で後端部が下方に叩かれて下降して閉状態のシャッタ39上に順次下から上へと集積される。
【0032】
ここで、放出部45の中間ローラ46a,46bの紙幣挟持位置に対し、外側ローラ47a,47bの紙幣挟持位置および外側ローラ48a,48bの紙幣挟持位置が上側にオフセットされているため、紙幣Sは長手方向において同位置となる部分が、略V字状に若干曲げられ、さらに、外側ローラ47a,47bの紙幣挟持位置および外側ローラ48a,48bの紙幣挟持位置に対し下側にオフセットされた搬送ローラ56aおよびガイド56b間の案内位置と搬送ローラ57aおよびガイド57b間の案内位置とを併せると、略W字状に若干曲げられる。紙幣Sはこのような緩やかな曲げが全長にわたって連続的に行われた後に一時貯留部32に放出される。これにより、折れ癖やカール、しわ等がある紙幣Sが装填部12に装填されたとしても、このような紙幣Sを矯正してから一時貯留部32に放出できる。したがって、搬送部25から放出した紙幣Sを一時貯留部32で良好に集積させることができる。
【0033】
また、図4に二点鎖線で示すように、上記の放出部45の通過では矯正しきれない紙幣Sがあって、このような紙幣Sが放出部45から放出され一時貯留部32に一時貯留されることで、例え、その後端部が上側に反り上がったとしても、放出部45の紙幣放出方向に沿って前下がりに傾斜するガイド61が、放出部45の羽根車52,53の回転時の外周面に近接し対向して設けられているため、ガイド61によってこの紙幣Sの後端を羽根車52,53で叩ける範囲に収めることができる。つまり、一時貯留部32に落下した紙幣の後端部が反り上がってもガイド61に引っ掛かることになってガイド61を超えての反り上がりが規制され、しかも、少なくとも羽根車52,53が回転している間は、羽根車52,53で下方に叩かれ続けることで反り上がった状態にならずに済み、よって、その後に放出部45から放出される後続の紙幣Sとの接触を回避して、その上側に後続の紙幣Sを集積させることができる。
【0034】
上記のようにして、装填部12に装填された紙幣Sが、リジェクト部13および一時貯留部32のいずれかに放出されることですべてなくなると、制御部63は、分離繰出部20および搬送部25を停止させて、識別部30の識別結果に基づいて一時貯留部32に一時貯留された紙幣Sの識別結果を表示部64に表示させる。この表示を見て操作者がキャンセル操作を操作部65に入力すると、制御部63は返却扉41を開放可能とし、操作者が返却扉41を開いて直接一時貯留部32の紙幣Sを取り出すことになる。
【0035】
他方、表示を見て操作者が承認操作を操作部65に入力すると、制御部63はシャッタ39を開作動させることになり、一時貯留部32の下部開口から、紙幣Sが下方に落下して、収納金庫33に収納される。
【0036】
なお、以上の紙幣入金機11で紙幣Sの計数処理を行う場合は、上記と同様にして、装填部12に装填された紙幣Sがすべてリジェクト部13および一時貯留部32に搬送されたら、一時貯留部32から収納金庫33に紙幣Sを収納せずに、返却扉41を開いて一時貯留部32の紙幣を操作者に返却することになる。
【0037】
以上に述べた本実施形態の紙幣入金機11によれば、搬送部25で長手方向に沿う姿勢で搬送される紙幣Sを搬送部25の搬送路27の端末の放出部45から一時貯留部32へ放出させる際に、放出部45は、一対の中間ローラ46a,46bで紙幣Sの放出方向に対する直交方向の中間部を表裏両側から挟持するとともに、同じ紙幣Sの前記直交方向における両側を二対の外側ローラ47a,47bおよび外側ローラ48a,48bで、一対の中間ローラ46a,46bの紙幣挟持位置に対し表裏方向の同側にオフセットした紙幣挟持位置で挟持することになり、さらに、同じ紙幣Sの前記直交方向におけるさらに両側を搬送ローラ56aおよびガイド56bと搬送ローラ57aおよびガイド57bとの二対で、一対の中間ローラ46a,46bの紙幣挟持位置側にオフセットした紙幣案内位置で案内することになる。このため、紙幣Sに短手方向に沿って形成された折り線を直交する表裏方向に、放出方向前方から見て略W字の段差状に曲げることになって、折れ癖等を矯正できる。したがって、搬送部25の搬送路27から放出した紙幣Sを一時貯留部32で良好に集積させることができる。
【0038】
また、放出方向に沿って前下がりに傾斜するガイド61が、放出部45の羽根車52,53の回転時の外周面に対向して設けられているため、例え折れ癖を矯正しきれないで一時貯留部32に放出される紙幣Sがあっても、ガイド61によってこの紙幣Sの後端を羽根車52,53で叩ける範囲に収めることが可能になる。よって、一時貯留部32内の紙幣Sに折れ癖があってもその後端部を羽根車52,53で下方に確実に叩くことができ、後に放出される紙幣Sとの接触を回避することができる。
【0039】
なお、放出部45で紙幣Sを放出する際に、搬送ローラ56aおよびガイド56bと搬送ローラ57aおよびガイド57bとの案内を行わずに、一対の中間ローラ46a,46bによる挟持と二対の外側ローラ47a,47bおよび外側ローラ48a,48bによる挟持のみを行っても良い。この場合でも、紙幣Sに短手方向に沿って形成された折り線を直交する表裏方向に、放出方向前方から見て略V字の段差状に曲げることになって、折れ癖等を矯正でき、搬送部25から放出した紙幣Sを一時貯留部32で良好に集積させることができる。
【0040】
また、搬送部の端末に設けられた放出部から紙幣を放出して集積させる部分であれば、一時貯留部32に限らず、リジェクト部13等の他の種々の部分に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態の紙幣処理機を概略的に示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示す側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の紙幣処理機の要部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0042】
S 紙幣
11 紙幣処理機
25 搬送部
32 一時貯留部(集積部)
45 放出部
46a,46b 中間ローラ
47a,47b,48a,48b 外側ローラ
52,53 羽根車
56a,57a 搬送ローラ(案内手段)
56b,57b ガイド(案内手段)
61 ガイド(集積部ガイド)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣をその長手方向を搬送方向に沿わせて一枚ずつ搬送する搬送部の端末に設けられた放出部から集積部へ放出して集積させる紙幣処理機であって、
前記放出部は、紙幣の放出方向に対する直交方向の中間部を表裏両側から挟持する一対の中間ローラと、前記直交方向における前記一対の中間ローラの両側にそれぞれ設けられ、前記一対の中間ローラの紙幣挟持位置に対し互いに表裏方向の同側にオフセットした紙幣挟持位置で紙幣を表裏両側から挟持する二対の外側ローラとを有することを特徴とする紙幣処理機。
【請求項2】
前記放出部は、前記直交方向における前記二対の外側ローラの両外側にそれぞれ設けられ、前記二対の外側ローラの紙幣挟持位置に対し互いに前記一対の中間ローラの紙幣挟持位置側にオフセットした紙幣案内位置で紙幣を表裏両側で案内する二対の案内手段を有することを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【請求項3】
前記放出部には該放出部から放出される紙幣の後端部を下方に叩く羽根車が設けられており、
前記放出方向に沿って前下がりに傾斜する集積部ガイドが、前記羽根車の回転時の外周面に対向して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の紙幣処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−131428(P2007−131428A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327231(P2005−327231)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(500267170)ローレル機械株式会社 (86)
【Fターム(参考)】