説明

紙幣処理装置

【課題】 紙幣を二カ所に分類して収納する場合に機能性を高めることができる紙幣処理装置の提供。
【解決手段】 一方の収納部24F側に移動して紙幣を蹴り出す蹴出ローラ97Fと、これで蹴り出された紙幣を繰り出す繰出ローラ91Fと、他方の収納部24R側に移動して紙幣を蹴り出す蹴出ローラ97Rと、これで蹴り出された紙幣を繰り出す繰出ローラ91Rと、蹴出ローラ97F,97Rを移動させる移動部140と、移動部140による蹴出ローラ97Fの一方の収納部24F側への移動で繰出ローラ91Fを駆動可能となる駆動伝達部材103Fと、移動部140による蹴出ローラ97Rの他方の収納部24R側への移動で繰出ローラ91Rを駆動可能となる駆動伝達部材103Rとを備え、蹴出ローラ97F、蹴出ローラ97R、駆動伝達部材103Fおよび駆動伝達部材103Rを一つの駆動源120で駆動して回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分類して収納した紙幣を出金可能な紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動販売機や両替機に設けられ、入金された紙幣を判別して受け入れ可能な紙幣のみを収納する紙幣処理装置がある。この紙幣処理装置は自動販売機や両替機に設けられることから極力小型化することが望まれている。このような小型化が可能な紙幣処理装置に関する技術として、一対の円柱状をなす回動柱状体を平行に設け、これら回動柱状体に形成された紙幣案内溝に紙幣を受け入れるとともに、これら回動柱状体の回動方向を切り替えることで紙幣を二カ所に分類して収納し、さらに一方側に収納した紙幣のみを紙幣払出ローラで出金可能としたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−285270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記技術は、二カ所に分類して収納した紙幣のうちの一方側に収納した紙幣のみが出金可能となっているため、他方側に収納した紙幣を出金させることができず、機能性が十分ではなかった。
【0004】
したがって、本発明は、紙幣を二カ所に分類して収納する場合に機能性を高めることができる紙幣処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、紙幣(例えば実施形態の紙幣S)を収納する二つの収納部(例えば実施形態の収納部24F,24R)を、収納時の紙幣の集積方向を互いに同方向として該方向に並設させるとともに、これら収納部の間に、これら収納部の両方から紙幣を一枚ずつ分離して繰り出す分離繰出部(例えば実施形態の分離繰出部80)を設けてなり、該分離繰出部は、一方の収納部(例えば実施形態の収納部24F)側に移動して該一方の収納部に収納されている紙幣を蹴り出す第1の蹴出ローラ(例えば実施形態の蹴出ローラ97F)と、該第1の蹴出ローラで蹴り出された紙幣を繰り出す第1の繰出ローラ(例えば実施形態の繰出ローラ91F)と、他方の収納部(例えば実施形態の収納部24R)側に移動して該他方の収納部に収納されている紙幣を蹴り出す第2の蹴出ローラ(例えば実施形態の蹴出ローラ97R)と、該第2の蹴出ローラで蹴り出された紙幣を繰り出す第2の繰出ローラ(例えば実施形態の繰出ローラ91R)と、前記第1の蹴出ローラおよび前記第2の蹴出ローラを移動させる移動部(例えば実施形態の移動部140)と、該移動部による前記第1の蹴出ローラの前記一方の収納部側への移動で前記第1の繰出ローラを駆動可能となる第1の駆動伝達部材(例えば実施形態の圧接ローラ103F)と、前記移動部による前記第2の蹴出ローラの前記他方の収納部側への移動で前記第2の繰出ローラを駆動可能となる第2の駆動伝達部材(例えば実施形態の圧接ローラ103R)とを備え、前記第1の蹴出ローラ、前記第2の蹴出ローラ、前記第1の駆動伝達部材および前記第2の駆動伝達部材を一つの駆動源(例えば実施形態の出金モータ120)で駆動して回転させることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1の蹴出ローラで蹴り出され前記第1の繰出ローラで繰り出された紙幣を搬送する第1の搬送ローラ(例えば実施形態の搬送ローラ84F)と、前記第2の蹴出ローラで蹴り出され前記第2の繰出ローラで繰り出された紙幣を搬送する第2の搬送ローラ(例えば実施形態の搬送ローラ84R)とを前記一つの駆動源で駆動して回転させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、二つの収納部に収納された紙幣は、いずれの収納部に収納されたものも、これら収納部の間に設けられた分離繰出部で繰り出されることになる。したがって、機能性を高めることができる。しかも、二つの収納部の間に各収納部から紙幣を繰り出す分離繰出部が設けられているため、分離繰出部の部品を共用化でき、コスト増を抑制できる。
また、一方の収納部から紙幣を繰り出す際に、分離繰出部は、移動部により第1の蹴出ローラを一方の収納部側に移動させて、一つの駆動源で第1の蹴出ローラ、第2の蹴出ローラ、第1の駆動伝達部材および第2の駆動伝達部材を駆動して回転させると、第1の蹴出ローラが一方の収納部に収納されている紙幣を蹴り出すことになり、第1の駆動伝達部材で駆動される第1の繰出ローラがこの紙幣をさらに繰り出すことになる。他方の収納部から紙幣を繰り出す際に、分離繰出部は、移動部により第2の蹴出ローラを他方の収納部側に移動させて、一つの駆動源で第1の蹴出ローラ、第2の蹴出ローラ、第1の駆動伝達部材および第2の駆動伝達部材を駆動して回転させると、第2の蹴出ローラが他方の収納部に収納されている紙幣を蹴り出すことになり、第2の駆動伝達部材で駆動される第2の繰出ローラがこの紙幣をさらに繰り出すことになる。このように簡素な構造で両収納部からの択一的な蹴り出しおよび繰り出しを行うことができる。
【0008】
請求項2に係る発明によれば、第1の蹴出ローラで蹴り出され第1の繰出ローラで繰り出された紙幣を搬送する第1の搬送ローラと、第2の蹴出ローラで蹴り出され第2の繰出ローラで繰り出された紙幣を搬送する第2の搬送ローラとについても一つの駆動源で駆動して回転させることになるため、簡素な構造で両収納部からの択一的な蹴り出し、繰り出しおよび搬送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態の紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。
この紙幣処理装置は、例えば自動販売機や両替機の機体前面に設けられ、入金された紙幣を判別して受け入れ可能な紙幣を収納するとともに、収納した紙幣を釣銭用紙幣や両替用紙幣として出金させるものである。なお、以下の説明における装置前後方向とは紙幣処理装置における前後方向であり、装置左右方向とは紙幣処理装置における左右方向である。
【0010】
紙幣処理装置11は、図1に示すように、その前面11a側の上部に、紙幣が挿入される入金口12が設けられている。入金口12は、紙幣の短辺長さに相当する横長の形状をなしており、紙幣が、その長辺を装置前後方向に沿わせかつ厚さ方向を上下にした姿勢で一枚ずつ挿入されるようになっている。
【0011】
入金口12の装置前後方向後側には入金口12に挿入された紙幣を、その長辺が搬送方向に沿う姿勢で搬送する入金搬送路15が設けられており、この入金搬送路15は、装置前後方向において後ろ上がりに傾斜して延在し下側に湾曲するように折り返して前下がりに中間位置まで延在した後、鉛直下方に延出している。
【0012】
入金搬送路15には、紙幣を搬送するための搬送ローラ16が適宜の間隔で複数配設されており、また、その入金口12側に、紙幣の真偽、金種および正損を判別する判別部17が設けられている。ここで、判別部17で判別された紙幣Sが偽券である場合には、搬送ローラ16が逆転してこれを入金口12に戻すようになっている。
【0013】
入金搬送路15の末端位置には、装置前後方向の二方向に分岐した分岐搬送路19F,19Rが接続されており、一方の分岐搬送路19Fは、装置前後方向において前下がりに、他方の分岐搬送路19Rは後ろ下がりに傾斜している。そして、これら分岐搬送路19F,19Rの分岐位置には、入金搬送路15から搬送されてきた紙幣を判別部17の判別結果に基づいて分岐搬送路19F,19Rに選択的に振り分ける振分部21が設けられている。
【0014】
そして、分岐搬送路19Fの末端位置は、受け入れた紙幣を一時貯留する一時貯留部23Fに接続されており、分岐搬送路19Rの末端位置は、受け入れた紙幣を一時貯留する一時貯留部23Rに接続されている。図2および図3に示すこれら二つの一時貯留部23F,23Rは、高さ方向の位置および装置左右方向の位置を合わせて装置前後方向に並設されており、これら一時貯留部23F,23Rの相反側には紙幣Sを集積状態で収納する収納部24F,24Rが設けられている。つまり、一時貯留部23Fの一時貯留部23Rとは反対側つまり装置前後方向における前側に収納部24Fが、一時貯留部23Rの一時貯留部23Fとは反対側つまり装置前後方向における後側に収納部24Rがそれぞれ設けられている。
【0015】
二つの一時貯留部23F,23Rの間に、これら一時貯留部23F,23Rにそれぞれ一時貯留された紙幣を一時貯留部23F,23R側に設けられたプッシャ25F,25Rを前進させることで各収納部24F,24Rに押し込む収納プッシャ機構26が設けられている。つまり、収納プッシャ機構26は、プッシャ25Fを前進させることで一時貯留部23Fの紙幣を収納部24Fに押し込み、プッシャ25Rを前進させることで一時貯留部23Rの紙幣を収納部24Rに押し込む。なお、上記した一時貯留部23F,23R、収納部24F,24Rおよび収納プッシャ機構26は上下方向に開口する図2に示す四角筒状のケース28内に設けられている。
【0016】
各一時貯留部23F,23Rは、互いに略鏡面対称の構造となっており、一時貯留部23Fは図1に示す分岐搬送路19Fから搬送されてきた紙幣を一時収容する一時貯留空間30Fを、一時貯留部23Rは図1に示す分岐搬送路19Rから搬送されてきた紙幣を一時収容する一時貯留空間30Rをそれぞれ有している。
【0017】
一時貯留空間30Fは、図2に示すように、収納部24Fと、後退位置にあるプッシャ25Fと、ケース28の装置左右方向両側の壁板部28a,28bとの間に形成されるものであり、一時貯留空間30Rは、収納部24Rと、後退位置にあるプッシャ25Rと、ケース28の壁板部28a,28bとの間に形成されるものである。一時貯留空間30F,30Rは、いずれも、上方から送り込まれた紙幣Sをその長辺方向を上下方向に沿わせその短辺を装置左右方向に沿わせた姿勢で一時収容可能となっている。このような一時貯留部23F,23Rは、一時貯留時の紙幣Sの厚さ方向を互いに同方向として該方向に並設されている。
【0018】
装置左右方向両側の壁板部28a,28bには、一時貯留空間30Fの位置に、図2および図3に示すように、収納部24F側に寄せて、上下方向に延在する略角柱状の紙幣端部押さえ部材31Fが互いの装置前後方向の位置および高さ位置を合わせて固定され、一時貯留空間30Rの位置にも、収納部24R側に寄せて上下方向に延在する略角柱状の紙幣端部押さえ部材31Rが同様に固定されている。両紙幣端部押さえ部材31Fの間の距離は紙幣Sの短辺長さよりも短くされており、両紙幣端部押さえ部材31Rの間の距離も紙幣Sの短辺長さよりも短くされている。
【0019】
また、壁板部28a,28bには、一時貯留空間30Fの位置に、収納部24Fとは反対側に寄せて装置左右方向に延在する上下一対の支持軸33Fが回転可能に設けられており、各支持軸33Fには、各壁板部28a,28bに近接して両側にプーリ34Fがそれぞれ固定されている。上下各組みのプーリ34F間には、それぞれベルト35Fが掛けられている。
【0020】
壁板部28a,28bには、一時貯留空間30Rの位置にも、同様に、収納部24Rとは反対側に寄せて装置左右方向に延在する上下一対の支持軸33Rが回転可能に設けられており、各支持軸33Rには、各壁板部28a,28bに近接して両側にプーリ34Rがそれぞれ固定されていて、上下各組みのプーリ34R間には、それぞれベルト35Rが掛けられている。
【0021】
図3に示すように、上側の支持軸33Fの収納部24F側には、ベルト35の収納部24F側の上端部に接触可能なローラ36Fが壁板部28a,28b間に設けられた支持軸37Fで回転可能に支持されており、図1に示す分岐搬送部19Fで搬送されてきた紙幣Sは、一時貯留部23Fの上部にあるこれらローラ36Fとベルト35Fとで一時貯留空間30F内に押し込まれる。なお、ベルト35Fが図示せぬ電動の押込モータで駆動されると、ローラ36Fは連れ回りする。
【0022】
同様に、上側の支持軸33Rの収納部24R側には、ベルト35Rの収納部24R側の上端部に接触可能なローラ36Rが壁板部28a,28b間に設けられた支持軸37Rで回転可能に支持されており、図1に示す分岐搬送部19Rで搬送されてきた紙幣Sは、一時貯留部23Rの上部にあるこれらローラ36Rとベルト35Rとで一時貯留空間30R内に押し込まれる。なお、ベルト35Fが図示せぬ電動の押込モータで駆動されると、ローラ36Fは連れ回りする。
【0023】
支持軸37Fには、軸線方向における両側のローラ36F(図3において一方のみ図示)の間の中央部となる位置にクリップ(挟持部材)40Fが回動可能に支持されており、支持軸37Rにも、軸線方向における両側のローラ36R(図3において一方のみ図示)の間の中央部となる位置にクリップ(挟持部材)40Rが回動可能に支持されている。クリップ40Fはローラ36Fよりも下方に、クリップ40Rもローラ36Rより下方に延出可能な長さを有しており、クリップ40Fの収納プッシャ機構26側つまり装置前後方向後側には固定受部41Fが、クリップ40Rの収納プッシャ機構26側つまり装置前後方向前側には固定受部41Rが、それぞれケースに図示略の支持部材を介して固定されている。
【0024】
固定受部41Fの収納部24F側に回動可能に支持されたクリップ40Fは、下部が固定受部41Fに当接する方向つまり収納部24Fから離間する方向に図示略のねじりバネで付勢されており、固定受部41Rの収納部24R側に回動可能に支持されたクリップ40Rは、下部が固定受部41Rに当接する方向つまり収納部24Rから離間する方向に図示略のねじりバネで付勢されている。
【0025】
クリップ40Fは、固定受部41Fに当接した状態で固定受部41F側の面部43Fが下側ほどこの固定受部41Fに近接するように傾斜しており、固定受部41Fのクリップ40F側におけるクリップ当接位置よりも上側の面部44Fも下側ほどこのクリップ40Fに近接するように傾斜している。ここで、クリップ40Fと固定受部41Fとは、互いの面部43F,44Fで形成されるV字状の谷の底部が、一時貯留部23Fの、プッシャ25Fを後退させた後退状態にある収納プッシャ機構26側に位置しており、その結果、一時貯留部23Fの上部において、図1に示す分岐搬送路19Fからローラ36Fおよびベルト35Fで押し込まれる紙幣Sを一時貯留部23F内の後退状態にある収納プッシャ機構26側に案内する。
【0026】
ローラ36Fおよびベルト35Fで送り込まれた紙幣Sは、クリップ40Fをねじりバネの付勢力に抗して紙幣Sの厚さ分回動させながらクリップ40Fと固定受部41Fとの間に面部43F,44Fで案内されて良好に入り込むことになり、ローラ36Fから離れて搬送力を受けなくなることで、クリップ40Fと固定受部41Fとで挟持される。つまり、一時貯留部23Fに設けられたクリップ40Fと固定受部41Fとが、一時貯留部23Fの上部において、送り込まれる紙幣Sを後退状態にある収納プッシャ機構26側に案内するとともに、送り込まれた紙幣Sの上端部を挟持する案内挟持部45Fを構成している。なお、クリップ40Fおよび固定受部41Fは、装置左右方向における両側のベルト35Fの間の中央部となる位置に設けられており、よって、クリップ40Fおよび固定受部41Fで構成される案内挟持部45Fは、送り込まれた紙幣Sの短辺側の中央部を案内しかつ挟持する。
【0027】
同様に、クリップ40Rは、固定受部41Rに当接した状態で固定受部41R側の面部43Rが下側ほどこの固定受部41Rに近接するように傾斜しており、固定受部41Rのクリップ40R側におけるクリップ当接位置よりも上側の面部44Rも下側ほどこのクリップ40Rに近接するように傾斜している。この場合も、クリップ40Rと固定受部41Rとは、互いの面部43R,44Rで形成されるV字状の谷の底部が、一時貯留部23Rの後退状態にある収納プッシャ機構26側に位置しており、その結果、一時貯留部23Rの上部において、図1に示す分岐搬送路19Rからローラ36Rおよびベルト35Rで押し込まれる紙幣Sを一時貯留部23R内の後退状態にある収納プッシャ機構26側に案内する。
【0028】
ローラ36Rおよびベルト35Rで送り込まれた紙幣Sは、クリップ40Rと固定受部41Rとの間に面部43R,44Rで案内されて入り込むことになり、ローラ36Rから離れると、ねじりバネの付勢力でクリップ40Rと固定受部41Rとで挟持される。つまり、クリップ40Rと固定受部41Rとが、送り込まれる紙幣Sを後退状態にある収納プッシャ機構26側に案内するとともに、送り込まれた紙幣Sの上端部を挟持する案内挟持部45Rを構成している。なお、クリップ40Rおよび固定受部41Rも、装置左右方向における両側のベルト35Rの間の中央部となる位置に設けられており、よって、クリップ40Rおよび固定受部41Rで構成される案内挟持部45Rは、送り込まれた紙幣Sの短辺側の中央部を案内しかつ挟持する。
【0029】
なお、クリップ40F,40Rを付勢する各ねじりバネは、紙幣Sの挿入および引き抜きが容易に可能であって紙幣Sを確実に挟持可能な比較的弱い付勢力でクリップ40F,40Rを回動させるように設定されている。
【0030】
上記した二つの一時貯留部23F,23Rの間に設けられたこれらに共用の収納プッシャ機構26は、一時貯留部23F側に配設されるプッシャ25Fおよび一時貯留部23R側に配設されるプッシャ25Rの二つのプッシャと、これらプッシャ25F,25Rの間に設けられるとともに図4に示す一つの電動のプッシャモータ(駆動源)47で駆動されて、プッシャ25Fを収納部24Fの方向に、プッシャ25Rを収納部24Rの方向に移動させる複数具体的には二つの上下の移動機構48,49とを有している。なお、上下の移動機構48,49はプッシャ25Fを移動させる時には協働してプッシャ25Fを移動させ、プッシャ25Rを移動させる時には協働してプッシャ25Rを移動させる。
【0031】
プッシャ25Fは、上下に設けられた図示略のガイドで案内されることで装置前後方向にスライド可能に設けられており、図2に示すように、装置左右方向における両側のベルト35Fの間を通過可能かつ同両側の紙幣端部押さえ部材31Fの間を通過可能な大きさとされている。このプッシャ25Fは、図3に示すように、一時貯留部23Fに面するプッシャ板50Fと、プッシャ板50Fの裏側に上下に複数具体的には二つ設けられた同形状のカム51F,52Fとを有しており、カム51Fにはプッシャ板50Fとは反対にカム面53Fが、カム52Fにはプッシャ板50Fとは反対にカム面54Fが形成されている。
【0032】
プッシャ板25Fは、一時貯留部23Fに収容された紙幣Sと平行をなすもので、装置前後方向に対し直交した姿勢で上下方向に延在しており、この姿勢を維持したまま装置前後方向にスライドする。
【0033】
カム51F,52Fは、プッシャ板25Fからの突出量がその上下両側よりも中央側が大きい山形状をなしている。つまり、図4に示すように、カム51Fのカム面53Fは、上下方向の中央部がプッシャ板50Fからの高さが最も高い頂面部55Fとされ、頂面部55Fの上下両側は同角度で高さを徐々に低くするように傾斜する傾斜面部56F,57Fとされている。同様に、カム52Fのカム面54Fは、上下方向の中央部がプッシャ板50Fからの高さが最も高い頂面部58Fとされ、頂面部58Fの上下両側は同角度で高さを徐々に低くするように傾斜する傾斜面部59F,60Fとされている。
【0034】
プッシャ25Rも、同様に、装置前後方向にスライド可能であって、図2に示すように、装置左右方向における両側のベルト35Rの間を通過可能かつ同両側の紙幣端部押さえ部材31Rの間を通過可能な大きさとされていて、図3に示すように、一時貯留部23Rに面するプッシャ板50Rと、プッシャ板50Rの裏側に上下に複数具体的には二つ設けられた同形状のカム51R,52Rとを有しており、一時貯留部23Rに収容された紙幣Sと平行をなすとともに、この姿勢を維持したまま装置前後方向にスライドする。
【0035】
図4に示すように、カム51Rのカム面53Rも、上下方向の中央部がプッシャ板50Rからの高さが最も高い頂面部55Rとされ、その上下両側は同角度で傾斜する傾斜面部56R,57Rとされている。同様に、カム52Rのカム面54Rも、上下方向の中央部がプッシャ板50Rからの高さが最も高い頂面部58Rとされ、その上下両側は同角度で傾斜する傾斜面部59R,60Rとされている。
【0036】
上側の移動機構48は、上側で高さを合わせた装置前後方向の二カ所のカム51F,51Rの頂面部55F,55Rの中央同士を結んだ線上に回転中心が配置される装置左右方向に沿う回動軸61を有しており、下側の移動機構49は、下側で高さを合わせた装置前後方向の二カ所のカム52F,52Rの頂面部58F,58Rの中央同士を結んだ線上に回転中心が配置される装置左右方向に沿う、回動軸61と同径の回動軸62を有している。なお、プッシャ25F,25Rには、これらを相互近接側に付勢することで上側のカム51F,51Rの頂面部55F,55Rを回動軸61に当接させるとともに下側のカム52F,52Rの頂面部58F,58Rを回動軸62に当接させる複数具体的には上下二つの引張バネ63が介装されている。
【0037】
移動機構48は、回動軸61にその半径方向に延出するように固定されたアーム64と、アーム64の先端側に装置左右方向に沿う軸線を中心に回転可能に支持されたカムローラ(旋回部)65と、回動軸61に固定されたギア66とを有しており、移動機構49も、回動軸62にその半径方向に延出するように固定された、アーム64と同形状のアーム67と、アーム67の先端側に装置左右方向に沿う軸線を中心に回転可能に支持された、カムローラ65と同径のカムローラ(旋回部)68と、回動軸62に固定されたギア69とを有している。ここで、ギア66,69は同歯数で互いに噛み合っており、アーム64,66は、例えば同一直線上で相反方向に延出することが可能とされている。
【0038】
また、移動機構48,49は、ギア66に、駆動軸に固定されたギア72を噛み合わせる一つのプッシャモータ47を有している。よって、このプッシャモータ47が駆動されると、ギア72を介してギア66とギア69とが互いに逆回りに回転しアーム64とアーム67とが同期して互いに逆回りに回転する。すると、アーム64,67の先端側に設けられたカムローラ65,68が同一円上を互いに逆回りに同期して旋回する。
【0039】
ここで、移動機構48,49は、図4に示すように、アーム64,67が同一直線上に並んで相反方向に延出した待機状態ではカムローラ65,68をいずれのカム51F,51R,52F,52Rにも接触させておらず、両プッシャ25F,25Rは、引張バネ63の付勢力でカム51F,51Rの頂面部55F,55Rを回動軸61に当接させ、カム52F,52Rの頂面部58F,58Rを回動軸62に当接させている。
【0040】
この状態からアーム64,67が装置前後方向前側に180度旋回するようにプッシャモータ47を駆動すると、図5に示すように、上側のアーム64のカムローラ65が装置前後方向前側のプッシャ25Fの上側のカム51Fの上側の傾斜面部56Fに当接してこの傾斜面部56Fに沿って頂面部55F側に転動して、図6に示すように、頂面部55Fに乗り上げることになり、これと同時に、図5に示すように、下側のアーム67のカムローラ68がプッシャ25Fの下側のカム52Fの下側の傾斜面部60Fに当接してこの傾斜面部60Fに沿って頂面部58F側に転動して、図6に示すように、頂面部58Fに乗り上げることになって、装置前後方向前側のプッシャ25Fを装置前後方向前側に押圧することになる。これにより、装置前後方向前側の一時貯留部23F用のプッシャ25Fが一時貯留部23Fの方向に前進することになる。なお、図6に示すように、アーム64,67が真横に向いた時、つまりカムローラ65,68が最もプッシャ25F側に位置した時に、カムローラ65はカム51Fの最も高さの高い頂面部55Fに、カムローラ68はカム52Fの最も高さの高い頂面部58Fにそれぞれ乗り上げることになる。
【0041】
このようにして、装置前後方向前側のプッシャ25Fが装置前後方向前側の一時貯留部23Fの方向に前進すると、この一時貯留部23Fの図3に示す案内挟持部45Fで挟持された紙幣Sつまり一時貯留された紙幣Sを厚さ方向に押圧することになる。
【0042】
また、上記に続いて、上側のアーム64のカムローラ65がプッシャ25Fの上側のカム51Fの頂面部55Fから下側の傾斜面部57Fに降りこの傾斜面部57Fに沿って転動することになり、これと同時に下側のアーム67のカムローラ68がプッシャ25Fの下側のカム52Fの頂面部58Fから上側の傾斜面部59Fに降りこの傾斜面部59Fに沿って転動することになって、プッシャ25Fを引張バネ63の付勢力で後退させる。そして、図7に示すように、アーム64,67が同一直線上に並んで相互近接方向に延出した状態となると、プッシャモータ47を停止させる。このとき、カムローラ65,68はいずれのカム51F,51R,52F,52Rにも接触しない、もう一つの待機状態となる。
【0043】
なお、移動機構48,49は、アーム64,67が同一直線上に並んで相互近接方向に延出した状態から、上記とは逆にプッシャモータ47を駆動することで、アーム64,67を装置前後方向前側に180度回転させた後に、同一直線上に並んで相反方向に延出する状態で停止させることによっても、装置前後方向前側のプッシャ25Fを一時貯留部23Fの方向に前進させた後に後退させることになる。
【0044】
また、移動機構48,49は、例えば、アーム64,67が同一直線上に並んで相反方向に延出した待機状態から、アーム64,67が装置前後方向後側に180度旋回するようにプッシャモータ47を駆動すると、上側のアーム64のカムローラ65が装置前後方向後側のプッシャ25Rの上側のカム51Rの上側の傾斜面部56Rに当接して傾斜面部56Rに沿って頂面部55R側に転動して頂面部55Rに乗り上げることになり、これと同時に下側のアーム67のカムローラ68がプッシャ25Rの下側のカム52の下側の傾斜面部60Rに当接して傾斜面部60Rに沿って頂面部58R側に転動して頂面部58Rに乗り上げることになって、プッシャ25Rを装置前後方向後側に押圧することになる。これにより、装置前後方向後側の一時貯留部23R用のプッシャ25Rが一時貯留部23Rの方向に前進することになる。なお、この場合も、アーム64,67が真横に向いた時、つまりカムローラ65,68が最もプッシャ25R側に位置した時にカムローラ65はカム51Rの最も高さの高い頂面部55Rに、カムローラ68はカム52Rの最も高さの高い頂面部58Rに乗り上げることになる。
【0045】
このようにして、装置前後方向後側のプッシャ25Rが装置前後方向後側の一時貯留部23Rの方向に前進すると、この一時貯留部23Rの図3に示す案内挟持部45Rで挟持された紙幣Sつまり一時貯留された紙幣Sを厚さ方向に押圧することになる。
【0046】
また、上記に続いて、上側のアーム64のカムローラ65がプッシャ25Rの上側のカム51Rの頂面部55Rから下側の傾斜面部57Rに降りこの傾斜面部57Rに沿って転動することになり、これと同時に下側のアーム67のカムローラ68がプッシャ25Rの下側のカム52Rの頂面部58Rから上側の傾斜面部59Rに降りこの傾斜面部59Rに沿って転動することになって、プッシャ25Rを引張バネ63の付勢力で後退させる。そして、アーム64,67が同一直線上に並んで相互近接方向に延出した状態となると、プッシャモータ47を停止させる。
【0047】
なお、プッシャ25Rの場合も、移動機構48,49は、アーム64,67が同一直線上に並んで相互近接方向に延出した待機状態から、上記とは逆にプッシャモータ47を駆動することで、アーム64,67を装置前後方向後側に180度旋回するように回転させた後に、同一直線上に並んで相反方向に延出する状態で停止させることによっても、装置前後方向後側のプッシャ25Rを一時貯留部23Rの方向に前進させた後に後退させることになる。
【0048】
以上により、プッシャ25Fは、その前進側への移動時において一方向に回転するカムローラ65で押圧されるカム面53Fの傾斜面部56Fが、カムローラ65への当接前部(頂面部55Fとは反対側)に比して当接後部(頂面部55F側)が、プッシャ25Fの移動方向におけるプッシャ板50Fからの高さを高くするように傾斜しており、また、その前進側への移動時において逆方向に回転するカムローラ65で押圧されるカム面53Fの傾斜面部57Fが、カムローラ65への当接前部(頂面部55Fとは反対側)に比して当接後部(頂面部55F側)が、プッシャ25Fの移動方向におけるプッシャ板50Fからの高さを高くするように傾斜している。同様に、プッシャ25Fは、その前進側への移動時においてカムローラ68で押圧されるカム面54Fの傾斜面部59F,60Fが、カムローラ68への当接前部(頂面部58Fとは反対側)に比して当接後部(頂面部58F側)が、プッシャ25Fの移動方向におけるプッシャ板50Fからの高さを高くするように傾斜している。
【0049】
同様に、プッシャ25Rも、その前進側への移動時においてカムローラ65で押圧されるカム面53Rの傾斜面部56R,57Rが、カムローラ65への当接前部(頂面部55Rとは反対側)に比して当接後部(頂面部55R側)が、プッシャ25Rの移動方向におけるプッシャ板50Rからの高さを高くするように傾斜しており、また、その前進側への移動時において、カムローラ68で押圧されるカム面54Rの傾斜面部59R,60Rが、カムローラ68への当接前部(頂面部57Rとは反対側)に比して当接後部(頂面部57R側)が、プッシャ25Rの移動方向におけるプッシャ板50Rからの高さを高くするように傾斜している。
【0050】
また、カム面53Fは、カムローラ65が最もプッシャ25F側に位置するときにプッシャ板50Fからの高さが最も高い頂面部55Fでカムローラ65に当接し、カム面54Fも、カムローラ65が最もプッシャ25F側に位置するときにプッシャ板50Fからの高さが最も高い頂面部58Fでカムローラ68に当接する。カム面53Rも、カムローラ65が最もプッシャ25R側に位置するときにプッシャ板50Rからの高さが最も高い頂面部55Rでカムローラ65に当接し、カム面54Rも、カムローラ68が最もプッシャ25R側に位置するときにプッシャ板50Rからの高さが最も高い頂面部58Rでカムローラ68に当接する。なお、いずれのプッシャ25F,25Rを移動させる場合も、そのときのアーム64,67の待機位置つまり相反側にあるか相互近接側にあるかに基づいてプッシャモータ47の正逆回転を制御する。
【0051】
図2および図3に示すように、収納部24Fは、対応する一時貯留部23Fに設けられた紙幣端部押さえ部材31Fとの間で紙幣Sを集積状態で挟持する受板75Fを有しており、受板75Fは、プッシャ板50Fと平行をなすもので、装置前後方向に対し直交した姿勢で上下方向に延在しており、この姿勢を維持したまま装置前後方向にスライドする。受板75Fの一時貯留部23Fに対し反対側には、ケース28の対向する壁板部28cとの間に、上下二つの圧縮バネ76Fが設けられている。これらの圧縮バネ76Fで受板75Fは、常時一時貯留部23F側に押圧され、収納紙幣Sがない状態では紙幣端部押さえ部材31Fに装置左右方向の両端部で当接し、また収納紙幣Sがある状態では紙幣端部押さえ部材31Fに収納紙幣Sの装置左右方向の両端部を当接させることで収納紙幣Sを紙幣端部押さえ部材31Fとで挟持する。
【0052】
同様に、収納部24Rは、一時貯留部23Rの紙幣端部押さえ部材31Rとの間で紙幣Sを挟持する受板75Rを有しており、受板75Rは、プッシャ板50Rと平行をなし、この姿勢を維持したまま装置前後方向にスライドする。受板75Rの一時貯留部23Rに対し反対側には、ケース28の対向する壁板部28dとの間に、上下二つの圧縮バネ76Rが設けられており、これらの圧縮バネ76Rで受板75Rは、常時一時貯留部23R側に押圧され、収納紙幣Sがない状態では紙幣端部押さえ部材31Rに当接し、また収納紙幣Sがある状態では紙幣端部押さえ部材31Rに収納紙幣Sの装置左右方向の両端部を当接させることで収納紙幣Sを紙幣端部押さえ部材31Rとで挟持する。
【0053】
そして、図1に示す分岐搬送路19Fから装置前後方向前側の一時貯留部23Fに紙幣Sが搬送されてくると、この紙幣Sは、図3に示す一時貯留部23Fにおいて、ローラ36Fとベルト35Fとでクリップ40Fと固定受部41Fとの間に押し込まれ、ローラ36Fから離れると、クリップ40Fと固定受部41Fとで挟持され、一時貯留空間30Fに吊り下げられた状態となる。なお、ローラ36Fおよびベルト35Fによる紙幣Sの押込力の発生位置がクリップ40Fおよび固定受部41Fの直前となっているため、ローラ36Fおよびベルト35Fによって紙幣Sをその上端部まで確実にクリップ40Fおよび固定受部41Fに押し込むことができる。
【0054】
この状態で収納プッシャ機構26の移動機構48,49が装置前後方向前側のプッシャ25Fを前進させると、このプッシャ25Fが一時貯留紙幣Sに当接しこれを押圧方向前方にある装置前後方向前側の収納部24Fに向けて押圧する。すると、このプッシャ25Fは、一時貯留紙幣Sを、一時貯留空間30Fに設けられた両紙幣端部押さえ部材31Fを超えて、これら紙幣端部押さえ部材31Fに当接する収納部24Fの受板75F、またはこの受板75Fと紙幣端部押さえ部材31Fとで挟持された収納紙幣Sに当接させ、これらを一体に、圧縮バネ76Fの付勢力に抗して後退させながら、一時貯留紙幣Sを紙幣端部押さえ部材31Fを超える位置まで装置前後方向前側に移動させる。このようにして、一時貯留紙幣Sが装置前後方向前側の収納部24Fに押し込まれる。
【0055】
ここで、一時貯留紙幣Sは、受板75Fまたは収納紙幣Sに当接すると受板75Fまたは収納紙幣Sとプッシャ25Fとで挟持されることになり、この状態で移動すると、クリップ40Fと固定受部41Fとから引き抜かれて全体としてクリップ40Fよりも装置前後方向前側の収納部24F側に移動させられる。なお、一時貯留紙幣Sは上端が撓みながらあるいはクリップ40Fを回動させながら、クリップ40Fと固定受部41Fとから引き抜かれてクリップ40Fを超えて収納部24F側に位置することになる。
【0056】
続いて、プッシャ25Fが後退すると、一時貯留紙幣Sが圧縮バネ76Fの付勢力によって受板75Fまたは収納紙幣Sとともに前進し、受板75Fまたは収納紙幣Sと一時貯留部23Fの両紙幣端部押さえ部材31Fとで挟持され収納部24Fに収納されて収納紙幣Sとなる。なお、後退するプッシャ25Fが離れると、状態によっては最もプッシャ25F側の収納紙幣Sもプッシャ25F側に突出することがあるが、その上端部はクリップ40Fに当接してそれ以上のプッシャ25F側への移動が規制される。これにより、図8および図9に示すように、収納紙幣S1が波打つ状態であっても一時貯留空間30Fのクリップ40Fよりも収納プッシャ機構26側へ戻ることはなく、クリップ40Fと固定台部41Fとで案内される次の一時貯留紙幣S2に接触することもない。
【0057】
以上のような紙幣Sの一時貯留部23Fへの一時貯留および一時貯留紙幣Sの収納部24Fへの収納を一枚ずつ行うことで装置前後方向に紙幣Sを順次集積させて収納することになる。このとき、一時貯留紙幣Sは、常にクリップ40Fと固定受部41Fとで同位置に吊り下げられた状態となり、しかも収納部24Fへの収納時に当接する受板75Fまたは収納紙幣Sの位置が一定していることから、クリップ40Fおよび固定受部41Fから引き抜かれて収納部24Fに収納される際に、上端部の位置がすでに収納された紙幣と揃えられた状態で収納されることになる。
【0058】
同様に、図1に示す分岐搬送路19Rから装置前後方向後側の一時貯留部23Rに紙幣Sが搬送されてくると、この紙幣Sは、図3に示す一時貯留部23Rにおいて、ローラ36Rとベルト35Rとでクリップ40Rと固定受部41Rとの間に押し込まれ、ローラ36Rから離れると、クリップ40Rと固定受部41Rとで挟持されて、一時貯留空間30Rに吊り下げられた状態となる。
【0059】
この状態で収納プッシャ機構26の移動機構48,49が装置前後方向後側のプッシャ25Rを前進させると、このプッシャ25Rが一時貯留紙幣Sに当接しこれを押圧方向前方にある装置前後方向後側の収納部24Rに向けて押圧する。すると、このプッシャ25Rは、一時貯留紙幣Sを、両紙幣端部押さえ部材31Rに当接する収納部24Rの受板75R、またはこの受板75Rと紙幣端部押さえ部材31Rとで挟持された収納紙幣Sに当接させ、これらを一体に、圧縮バネ76Rの付勢力に抗して後退させながら、一時貯留紙幣Sを紙幣端部押さえ部材31Rを超える位置まで移動させる。このようにして、一時貯留紙幣Sが収納部24Rに押し込まれる。このときも、一時貯留紙幣Sは、受板75Rまたは収納紙幣Sに当接した状態で移動する際に、クリップ40Rと固定受部41Rとから引き抜かれて全体としてクリップ40Rよりも収納部24R側に移動させられる。続いて、プッシャ25Rが後退すると、一時貯留紙幣Sが圧縮バネ76Rの付勢力によって受板75Rまたは収納紙幣Sと両紙幣端部押さえ部材31Rとで挟持され収納部24Rに収納されて収納紙幣となる。
【0060】
以上により、紙幣を収納する二つの収納部24F,24Rは、収納時の紙幣Sの集積方向を互いに同じ装置前後方向としており、この方向に並設されている。なお、二つの収納部24F,24Rのうちの一方である例えば収納部24Rに、紙幣処理装置11内に受け入れた紙幣Sのうち釣銭あるいは両替銭として顧客に対する出金用の紙幣S、具体的には汚損のない千円券紙幣のみを収納し、他方である例えば収納部24Fには紙幣処理装置11内に受け入れた紙幣Sのうちそれ以外の紙幣S、具体的には万円券紙幣、五千円紙幣、二千円紙幣および汚損のある出金に適さない千円券紙幣を金種混合で収納する。
【0061】
次に、収納部24F,24Rの両方から選択的に紙幣を繰り出す分離繰出部80について説明する。
【0062】
図1に示すように、分離繰出部80は、両収納部24F,24Rの間であって収納プッシャ機構26の下側に設けられている。この分離繰出部80は、一時貯留空間30Fの下方位置に設けられた装置前後方向前側の繰出機構部81Fと、一時貯留空間30Rの下方位置に設けられた装置前後方向後側の繰出機構部81Rとを有しており、繰出機構部81Fと繰出機構部81Rとは略鏡面対称となっている。
【0063】
繰出機構部81Fは、図10に示すように、軸線を装置左右方向に沿わせて設けられた回動軸83Fと、この回動軸83Fに固定された搬送ローラ(第1の搬送ローラ)84Fと、回動軸83Fに固定されたギア85F,86Fと、回動軸83Fに固定されたプーリ87Fと、搬送ローラ84Fの装置前後方向前側に平行に配置されてこの搬送ローラ84Fに連れ回りする引抜ローラ88Fとを有している。
【0064】
また、繰出機構部81Fには、搬送ローラ84Fと引抜ローラ88Fとの接触位置の上方に接触位置を配して繰出ローラ(第1の繰出ローラ)91Fおよびその装置前後方向前側の分離ローラ92Fが軸線を装置左右方向に沿わせて設けられている。ここで、繰出ローラ91Fおよび分離ローラ92Fの接触位置は収納部24Fの最前面の紙幣Sの下方となっている。なお、分離ローラ92Fは図示略のワンウェイクラッチによって繰出ローラ91F側を下方に移動させる方向の回転が規制され、これとは逆方向の回転のみ許容されている。
【0065】
繰出機構部81Rも、軸線を装置左右方向に沿わせて設けられた回動軸83Rと、この回動軸83Rに固定された搬送ローラ(第2の搬送ローラ)84Rと、回動軸83Rに固定されたギア85R,86Rと、回動軸83Rに固定されたプーリ87Rと、搬送ローラ84Rの装置前後方向後側に平行に配置されてこの搬送ローラ84Rに連れ回りする引抜ローラ88Rとを有している。
【0066】
また、繰出機構部81Rには、搬送ローラ84Rと引抜ローラ88Rとの接触位置の上方に接触位置を配して繰出ローラ(第2の繰出ローラ)91Rおよびその装置前後方向後側の分離ローラ92Rが軸線を装置左右方向に沿わせて設けられている。ここで、繰出ローラ91Rおよび分離ローラ92Rの接触位置は収納部24Rの最前面の紙幣Sの下方となっている。なお、分離ローラ92Rは図示略のワンウェイクラッチによって繰出ローラ91R側を下方に移動させる方向の回転が規制され、これとは逆方向の回転のみ許容されている。
【0067】
分離繰出部80は、回動軸83Fに一端側が回動可能に支持されるとともに上方に延出する支持アーム95Fと、この支持アーム95Fの他端側つまり上端側に回動軸83Fと平行に設けられた回動軸96Fと、この回動軸96Fに固定される蹴出ローラ(第1の蹴出ローラ)97Fおよびプーリ98Fとを有している。そして、プーリ98Fには、上記した回動軸83Fのプーリ87Fとの間にベルト99Fが掛けられており、よって、常に蹴出ローラ97Fは搬送ローラ84Fと同期して同方向に回転する。
【0068】
支持アーム95Fには、回動軸83Fよりも蹴出ローラ97F側に回動軸83Fと平行な支持軸101Fが装置前後方向の後部に偏って設けられており、この支持軸101Fには回動軸83Fに固定されたギア85Fに噛み合うギア102Fと圧接ローラ(駆動伝達部材)103Fとが固定されている。よって、圧接ローラ103Fは常に蹴出ローラ97Fおよび搬送ローラ84Fと逆方向に回転する。さらに、支持アーム95Fには、装置前後方向の後部の支持軸101Fとは反対側、すなわち、蹴出ローラ97F側に寄った位置に、支持軸101Fと平行にリンク軸104Fが取り付けられている。
【0069】
分離繰出部80は、同様に、回動軸83Rに一端側が回動可能に支持されるとともに上方に延出する支持アーム95Rと、この支持アーム95Rの他端側つまり上端側に回動軸83Rと平行に設けられた回動軸96Rと、この回動軸96Rに固定される蹴出ローラ(第2の蹴出ローラ)97Rおよびプーリ98Rとを有している。そして、プーリ98Rには、上記したプーリ87Rとの間にベルト99Rが掛けられており、よって、常に蹴出ローラ97Rは搬送ローラ84Rと同方向に回転する。
【0070】
支持アーム95Rには、回動軸83Rよりも蹴出ローラ97R側に回動軸83Rと平行な支持軸101Rが装置前後方向の前部に偏って設けられており、この支持軸101Rには回動軸83Rに固定されたギア85Rに噛み合うギア102Rと圧接ローラ(駆動伝達部材)103Rとが固定されている。よって、圧接ローラ103Rは常に蹴出ローラ97Rおよび搬送ローラ84Rと逆方向に回転する。さらに、支持アーム95Rには、装置前後方向の前部の支持軸101Rとは反対側、すなわち、蹴出ローラ97R側に寄った位置に、支持軸101Rと平行にリンク軸104Rが取り付けられている。
【0071】
繰出機構部81Fの搬送ローラ84Fおよび引抜ローラ88Fの下方には、図11に示すように、これらから繰り出される紙幣Sを案内する搬送路107Fが設けられており、繰出機構部81Rの搬送ローラ84Rおよび引抜ローラ88Rの下方には、これらから繰り出される紙幣Sを案内する搬送路107Rが設けられていて、これらの搬送路107F,107Rは合流して合流搬送路108となっている。
【0072】
図10に示すように、繰出機構部81Fの回動軸83Fのギア86Fと繰出機構部81Rの回動軸83Rのギア86Rとは同歯数で互いに噛み合っており、これら回動軸83F,83Rの間の下方には、これらと平行に回動軸110が設けられている。この回動軸110には、ギア86Rと噛み合うギア111と搬送ローラ112とが固定されており、この搬送ローラ112の装置前後方向前側には、回動軸110と平行に支持軸113が設けられている。この支持軸113には搬送ローラ112に連れ回りする従動ローラ116と図11に示す示す羽根車117とが設けられている。なお、搬送ローラ112と従動ローラ116および羽根車117との間に合流搬送路108が設けられている。
【0073】
図10に示すように、ギア111には、電動の出金モータ(駆動源)120の駆動軸に固定されたギア121が噛み合っており、よって、出金モータ120が駆動されるとギア111が一方向に回転しギア86Rが逆方向に回転するとともにギア86Fがギア86Rと逆方向に回転することになり、搬送ローラ112は従動ローラ116側が下方向に移動するように回転することになり、搬送ローラ84Fは引抜ローラ88F側が下方向に移動するように、搬送ローラ84Rも引抜ローラ88R側が下方向に移動するように回転することになる。さらに、このとき圧接ローラ103Fは搬送ローラ84Fとは逆方向に回転することになり、圧接ローラ103Rも搬送ローラ84Rとは逆方向に回転することになる。
【0074】
分離繰出部80は、上下方向に軸線を配置して設けられる電動のリンクモータ125と、このリンクモータ125の駆動軸に固定される図示略のベベルギアと、このベベルギアに噛み合う図示略のベベルギアと、このベベルギアが固定されるとともに上記した回動軸83F,83R間の中央位置に配置される装置左右方向に沿うリンク軸128と、このリンク軸128に固定されるとともにこのリンク軸128を中心とした略扇状をなして上方に延出するリンクプレート129とを有している。リンクプレート129には、中間部に、リンク軸128の軸線方向に沿って貫通する略矩形状のリンク孔130が形成されており、リンク軸128とは反対側の端部に、リンク軸128の軸線方向に沿って立ち上がる複数具体的には三カ所のセンサ検出片部131〜133がリンク軸128を中心として等角度間隔で形成されている。
【0075】
そして、リンクプレート129のリンク孔130に、上記した支持アーム95F,95Rのリンク軸104F,104Rが挿入されている。なお、支持アーム95F,95R同士はこれらの間に介装された図示略の圧縮バネによって相反方向に付勢されている。これにより、リンクプレート129がリンク軸128を中心に回動すると、リンクプレート129のリンク孔130が移動することになり、このリンク孔130に挿入された支持アーム95F,95Rのリンク軸104F,104Rもこのリンク孔130内とともに移動することになって、支持アーム95F,95Rがリンクプレート129と同方向に回動することになる。このとき、リンク軸104F,104Rはリンク孔130の範囲で移動可能となっている。
【0076】
分離繰出部80は、図12に示すように、リンクプレート129のセンサ検出片部131〜133の適宜のもので遮光されることによって、リンクプレート129の回動位置を検出する二つの光学式のリンクセンサ137F,137Rが設けられている。これらリンクセンサ137F,137Rは、図12に示すように、リンクプレート129がリンク軸128から上方に延出する中立位置でリンクセンサ137Fがセンサ検出片部131で、リンクセンサ137Rがセンサ検出片部133でそれぞれ遮光される位置に配置されている。
【0077】
そして、このリンクプレート129が中立位置にある状態つまりリンクセンサ137F,137Rがともに遮光された状態から、装置前後方向前側のリンクセンサ137Fが一旦通光を検出した後にセンサ検出片部132で遮光され、かつ装置前後方向後側のリンクセンサ137Rが遮光されない通光状態になると、図13に破線で示すようにリンクプレート129が装置前後方向前側の蹴出位置に傾動したことを検出することになる。
【0078】
他方、リンクプレート129が中立位置にある状態から、装置前後方向後側のリンクセンサ137Rが一旦通光を検出した後にセンサ検出片部132で遮光され、かつ装置前後方向前側のセンサ137Fが遮光されない状態になると、図14に破線で示すようにリンクプレート129が装置前後方向後側の蹴出位置に傾動したことを検出することになる。
【0079】
なお、図15に示すように、リンクモータ125を正方向に駆動してリンクプレート129を装置前後方向前側の蹴出位置に傾動させると、リンクプレート129のリンク孔130も装置前後方向前側に移動することになり、このリンク孔130にリンク軸104F,104Rが挿入された支持アーム95F,95Rが蹴出ローラ97F,97Rを装置前後方向前側に移動させるように回動する。これにより、装置前後方向前側の蹴出ローラ97Fが、装置前後方向前側の収納部24F側に移動して、図示略の圧縮バネの付勢力で、この収納部24Fに収納されている最前面の紙幣Sに接触しこれを蹴出可能になる。このとき、装置前後方向後側の蹴出ローラ97Rも、装置前後方向前側の収納部24F側に移動するものの紙幣Sの繰り出しには無関係である。なお、蹴出ローラ97Fの回転駆動はリンクプレート129の揺動前に開始される。
【0080】
逆に、リンクモータ125を逆方向に駆動してリンクプレート129を装置前後方向後側の蹴出位置に傾動させると、リンクプレート129のリンク孔130も装置前後方向後側に移動することになり、このリンク孔130にリンク軸104F,104Rが挿入された支持アーム95F,95Rが蹴出ローラ97F,97Rを装置前後方向後側に移動させるように回動する。これにより、装置前後方向後側の蹴出ローラ97Rが、装置前後方向後側の収納部24R側に移動して、図示略の圧縮バネの付勢力で、この収納部24Rに収納されている最前面の紙幣Sに接触しこれを蹴出可能になる。このときも、装置前後方向前側の蹴出ローラ97Fが、装置前後方向後側の収納部24R側に移動するものの紙幣Sの繰り出しには無関係である。以上により、リンクモータ125、図示略の二つのベベルギア、リンク軸128およびリンクプレート129が、蹴出ローラ97F,97Rを移動させる移動部140を構成している。
【0081】
また、移動部140で、支持アーム95F,95Rを装置前後方向前側に回動させ、装置前後方向前側の蹴出ローラ97Fを同前側の収納部24F側に移動させると、図15に示すように、同前側の支持アーム95Fの圧接ローラ103Fが同前側の繰出ローラ91Fに圧接してこれを駆動可能となる。同様に、移動部140で、支持アーム95Rを装置前後方向後側に回動させ、装置前後方向後側の蹴出ローラ97Rを同後側の収納部24R側に移動させると、同後側の支持アーム95Rの圧接ローラ103Rが同後側の繰出ローラ91Rに圧接してこれを駆動可能となる。
【0082】
このような分離繰出部80は、収納部24F,24Rに紙幣Sが収納される際には、リンクプレート129が中立位置にある。この状態で、蹴出ローラ97F,97Rは図示略の圧縮バネの付勢力でリンク孔130の両側に押し付けられて安定しており、蹴出ローラ97Fが収納部24Fの紙幣Sから離間しかつ一時貯留部23Fへの紙幣Sにも干渉せず、蹴出ローラ97Rも収納部24Rの紙幣Sから離間しかつ一時貯留部23Rへの紙幣Sにも干渉しない状態にあって、圧接ローラ103Fも繰出ローラ91Fから離間し、圧接ローラ103Rも繰出ローラ91Rから離間した状態にある。
【0083】
この状態から、装置前後方向前側の収納部24Fの紙幣Sを繰り出させる場合には、出金モータ120を駆動する。すると、出金モータ120の駆動力で搬送ローラ112が従動ローラ116側を、搬送ローラ84Fが引抜ローラ88F側を、搬送ローラ84Rが引抜ローラ88R側を、すべて下方向に移動させるように回転するとともに、蹴出ローラ97Fが収納部24F側を下方向に移動させるように回転し、蹴出ローラ97Rが収納部24R側を下方向に移動させるように回転し、さらに圧接ローラ103Fが搬送ローラ84Fとは逆方向に、圧接ローラ103Rが搬送ローラ84Rとは逆方向に回転することになる。
【0084】
次に、リンクモータ125を駆動してリンクプレート129を装置前後方向前側に傾動させる。すると、リンクプレート129が装置前後方向前側の蹴出位置で停止する前に蹴出ローラ97Fが収納部24Fの最も一時貯留部23F側の紙幣に接触し、リンクプレート129の傾動がさらに進んで蹴出位置で停止する時点では、蹴出ローラ97Fが圧縮バネを縮めることでその摩擦力が増加して所定値以上となるとともに、装置前後方向前側の圧接ローラ103Fが繰出ローラ91Fに接触してその分離ローラ92F側を下方に移動させるように回転させる。
【0085】
これにより、収納部24Fの最も一時貯留部23F側の紙幣Sが、蹴出ローラ97Fで下方に蹴り出され、分離ローラ92Fで重送が規制されながら繰出ローラ91Fで一枚だけ下方に繰り出される。すると、この紙幣Sが搬送ローラ84Fと引抜ローラ88Fとで搬送路107Fから合流搬送路108に送られ、搬送ローラ112と従動ローラ116とで合流搬送路108をさらに下方に送られて下方の集積出金部142に放出される。なお、収納部24Fから繰り出された紙幣Sが、搬送ローラ84Fおよび引抜ローラ88Fの直後の図11に示す搬送路107Fに配置された重送検出センサ141Fで検出されると、リンクモータ125でリンクプレート129を中立位置に戻すことになるが、このタイミングは、分離ローラ92Fで重送が規制された紙幣Sがある場合にこの紙幣Sが繰出ローラ91Fおよび分離ローラ92Fで繰り出される前に、圧接ローラ103Fを搬送ローラ84Fから離間させるタイミングであり、よって、確実に間欠繰り出しを行うことができる。なお、重送検出センサ141Fは、勿論、紙幣Sに重送があった場合にこれを検出する。
【0086】
逆に、装置前後方向後側の収納部24Rから紙幣Sを繰り出させる場合には、出金モータ120を上記と同様に駆動するとともに、リンクモータ125を上記とは逆方向に駆動してリンクプレート129を装置前後方向後側に傾動させる。すると、出金モータ120の駆動力で、上記と同様に、搬送ローラ112が従動ローラ116側を、搬送ローラ84Rが引抜ローラ88R側を、蹴出ローラ97Rが収納部24R側をすべて下方向に移動させるように回転し、さらに圧接ローラ103Rが搬送ローラ84Rとは逆方向に回転することになる。そして、蹴出ローラ97Rを収納部24Rの最も一時貯留部23R側の紙幣Sに接触させる蹴出位置までリンクプレート129が傾動して停止すると、装置前後方向後側の圧接ローラ103Rが繰出ローラ91Rに接触してその分離ローラ92R側を下方に移動させるように回転させる。
【0087】
これにより、収納部24Rの最も一時貯留部23R側の紙幣Sが、蹴出ローラ97Rで下方に蹴り出され、分離ローラ92Rで重送が規制されながら繰出ローラ91Rで一枚だけ下方に繰り出される。すると、この紙幣Sが搬送ローラ84Rと引抜ローラ88Rとで搬送路107Rから合流搬送路108に送られ、搬送ローラ112と従動ローラ116とで合流搬送路108をさらに下方に送られて下方の集積出金部142に放出される。なお、この場合も、収納部24Rから繰り出された紙幣Sが、搬送ローラ84Rおよび引抜ローラ88Rの直後の図11に示す搬送路107Rに配置された重送検出センサ141Rで検出されると、リンクモータ125でリンクプレート129を中立位置に戻す。なお、重送検出センサ141Rも、勿論、紙幣Sに重送があった場合にこれを検出する。
【0088】
以上から、分離繰出部80は、蹴出ローラ97Fと蹴出ローラ97Rとを一つの出金モータ120で駆動して回転させるとともに、繰出ローラ91Fに圧接してこれを回転させる圧接ローラ103Fと、繰出ローラ91Rに圧接してこれを回転させる圧接ローラ103Rとについても、同じ一つの出金モータ120で駆動して回転させることになり、さらには、蹴出ローラ97Fで蹴り出され繰出ローラ91Fで繰り出された紙幣Sを搬送する搬送ローラ84Fと、蹴出ローラ97Rで蹴り出され繰出ローラ91Rで繰り出された紙幣Sを搬送する搬送ローラ84Rとについても、同じ一つの出金モータ120で駆動して回転させることになる。加えて、搬送ローラ84Fおよび搬送ローラ84Rよりも下流側の搬送ローラ112についても同じ一つの出金モータ120で駆動して回転させることになる。
【0089】
次に、上記した分離繰出部80により収納部24F,24Rから一枚ずつ分離して繰り出され合流搬送路108から放出される複数枚紙幣を受け入れて一括して出金する集積出金部142について説明する。
【0090】
集積出金部142は、図16に示すように、合流搬送路108の末端位置に設けられ、合流搬送路108で搬送される紙幣Sを厚さ方向を横にした状態、具体的には厚さ方向を装置前後方向にした状態で下方に放出させる上部の放出口144を有しており、この放出口144に上記した搬送ローラ112、従動ローラ116および羽根車117が設けられている。また、放出口144には通過する紙幣Sを検出する光学式の放出センサ145が設けられている。
【0091】
また、集積出金部142は、放出口144よりも装置前後方向前側の上部に、装置前面11aに斜め上方に向けて開口する出金口146を有しており、放出口144の下方位置と出金口146とを結ぶように装置前後方向に前上がりに形成された前壁部147に沿ってスライド可能な作動部材148とこの作動部材148をスライドさせるスライド機構149とを有している。出金口146には出金口146における紙幣Sの有無を検出する光学式の抜取センサ150が設けられている。
【0092】
作動部材148は、図示略のスライドレールによって放出口144の下方位置と出金口146とを結ぶように装置前後方向における前上がりにスライド可能に支持されており、作動部材148にはこのスライド方向と平行にラックギア151が取り付けられている。これに対して、スライド機構149は、このラックギア151の装置前後方向前側にあってラックギア151に噛み合うピニオンギア152と、このピニオンギア152を駆動する一つの電動のリフトモータ(駆動源)153とを有している。これにより、リフトモータ153の正逆回転の駆動力で作動部材148が図示略のスライドレールに沿って下限位置から出金口146に向けて上限位置まで移動し、また出金口146から離れる方向にも移動する。
【0093】
集積出金部142は、作動部材148の装置前後方向後側において作動部材148と平行にスライド可能となるように図示略のスライドレールに支持されるとともに、下限位置に位置する状態で、放出口144から放出された紙幣の下端部を下方で受け入れる集積ポケット部材155が設けられている。この集積ポケット部材155は、作動部材148と平行に広がる前板部156と、この前板部156の装置左右方向の両側縁部から装置前後方向後側に延出する一対の側板部157(一方のみ図示)と、前板部156の下端縁部から前板部156よりも短い長さで放出口144の方向に立ち上がる後板部158とを有しており、後板部158は両側板部157の下部の装置前後方向後側の縁部にも連結されている。これにより、集積ポケット部材155の下部には、前板部156および両側板部157の下部と後板部158とで下方に凹状をなすポケット部159が形成されている。なお、ポケット部159は複数の紙幣Sの下端部を同時に受けることができるようになっており、この状態で集積ポケット部材155は、紙幣Sを前上がりに傾斜する前板部156上に集積させることができる。集積出金部142には、ポケット部159への紙幣Sの受け入れを検出する光学式の紙幣受入センサ160が設けられている。
【0094】
この集積ポケット部材155は、作動部材148がそのスライド範囲のうちの下部所定範囲にあるときには、作動部材148に当接せずに自重またはバネの付勢力で下端位置にあり、作動部材148は、この下部所定範囲よりも上側の上部所定範囲にあるときには、作動部材148が集積ポケット部材155に当接し係合してこれを一体にスライドさせることになる。
【0095】
集積出金部142は、下限位置にある集積ポケット部材155の装置前後方向後側に、装置左右方向に沿って支持軸162が両壁板部28a,28b(図16では壁板部28aのみ図示)に回動自在に支持されており、支持軸162にはこの支持軸162を中心に回動可能な押さえ部材163が支持軸162における壁板部28a,28b間の中央位置から装置前後方向において前上がりに延出している。この押さえ部材163は略棒状をなしており、支持軸162に固定され、その延出先端側に装置左右方向に沿う軸を中心に回転自在な押さえローラ165が設けられている。
【0096】
集積出金部142は、装置左右方向の両壁板部28a,28bの内側に一対の支持板部167(一方のみ図示)を有する案内部材168が設けられており、案内部材168の各支持板部167の相互近接側における装置前後方向前側には、合成樹脂製の一対のシート部材169が取り付けられている。これらシート部材169は、いずれも装置前後方向において前上がりに傾斜している。これらシート部材169は、互いの間隔が紙幣Sの短辺長さよりも短くなっており、シート部材169よりも放出口144側に放出された紙幣Sの出金口146側への移動を規制する。これらシート部材169は、その放出口144側に出金紙幣の一時貯留空間170を形成し、その出金口146側に出金集積空間171を形成している。
【0097】
図16に示す状態の押さえ部材163は、厚さ方向を装置前後方向にした状態で放出口144から下方に放出させられる紙幣Sの装置前後方向後側となる後端位置に位置して、その装置前後方向前側に位置するシート部材169との間の一時貯留空間170に紙幣Sを案内し、この紙幣Sの下端部を集積ポケット部材155のポケット部159に挿入させる受入状態と、この受入状態からシート部材169を越えて装置前後方向前方つまり出金口146側に位置するように支持軸162を中心に回動して、集積ポケット部材155のポケット部159に受けられた紙幣Sを押圧し、これをシート部材169を乗り越えさせて前壁部147および集積ポケット部材155の前板部156側に位置させるものである。
【0098】
押さえ部材163には、その支持軸162の一端側に固定されたリンク板172の装置前後方向後側と壁板部28aとの間に、押さえ部材163を装置前後方向前側つまり出金口146側に付勢する引張バネ(付勢部材)173が介装されており、またリンク板172の下部には、装置左右方向に沿う軸線を中心に回動するカムローラ174が支持軸162の下側かつ装置前後方向後側に設けられている。
【0099】
上記した作動部材148には、後ろ下がりに傾斜するカム部176が一体に形成されており、このカム部176は、作動部材148が上記した下部所定範囲にあるときにカムローラ174に上側から接触する。作動部材148は、下部所定範囲の上側にあるときにカム部176でカムローラ174に当接し、さらに下側に下がると、引張バネ173の付勢力に抗して、カム部176でカムローラ174を装置前後方向前側に移動させて、図16に示すように押さえ部材163を支持軸162を中心に装置前後方向後側に回動させる。つまり、作動部材148に設けられたカム部176が出金口146とは反対側に移動すると押さえ部材163のカムローラ174に接触して押さえ部材163を引張バネ173の付勢力に抗して装置前後方向後側(出金口146とは反対側)に移動させる。なお、作動部材148が下限位置に位置すると押さえ部材163が上記した後端位置に位置する。また、この状態から作動部材148が上昇すると、図17に示すようにカム部176が引張バネ173の付勢力でカムローラ174を装置前後方向後側に移動させて押さえ部材163を支持軸162を中心に装置前後方向前側に回動させる。
【0100】
なお、作動部材148は、上昇して下部所定範囲から上部所定範囲に至ると、そのカム部176をカムローラ174から離間させることになる。つまり、作動部材148は、出金口146に向けて上昇して押さえ部材163を集積ポケット部材155の前板部156側に回動させた後に、集積ポケット部材155に当接して、図11に示すように集積ポケット部材155を上方の出金口146に向けて上昇させることになる。これにより、作動部材148を駆動する一つのリフトモータ153で集積ポケット部材155と押さえ部材163とが駆動される。
【0101】
ここで、紙幣処理装置11が設けられた自動販売機や両替機の後部あるいは側部の扉が図示略のキーの操作で開放されることで、押さえ部材163は、手動操作により、図1に示すように、上記した後端位置よりもさらに装置前後方向後側に案内部材168とともに回動させられることになり、集積出金部142のメンテナンス等が可能になっている。
【0102】
なお、図16に示すように作動部材148の装置前後方向前側には、作動部材148のスライド方向に間隔をあけて複数の光学式の下部センサ177、中間センサ178および上部センサ179が設けられており、これらのうち一番下側の下部センサ177は、作動部材148が下限位置に位置するときに作動部材148の検出片部180を検出するものであり、中間センサ178は、作動部材148が上記した下部所定範囲の上端位置に位置するときに、図17に示すように作動部材148の検出片部180を検出するものであって、上部センサ179は作動部材148が上限位置に位置するときに作動部材148の検出片部180を検出するものである。
【0103】
図11に示すように、出金口146には、装置前後方向後側に、出金口146を開閉可能なシャッタ184が設けられている。このシャッタ184は、前下がりに傾斜した状態とされ装置前後方向に沿ってスライドすることで出金口146を開閉するシャッタ部材185と、このシャッタ部材185の上側にこのシャッタ部材185と平行に設けられてシャッタ部材185と平行にプランジャ186を進退させるソレノイド(駆動源)187と、このソレノイド187の上側の装置左右方向に沿う支持軸189に回動可能に支持されるとともに途中位置に形成された長穴190をソレノイド187のプランジャ186に設けられた装置左右方向に沿うピン191に係合させるとともに先端位置に装置左右方向に沿って設けられたピン192をシャッタ部材185の上面側の凹形状の係合部193に係合させるリンクアーム195とを有している。なお、ソレノイド187は、駆動されると出金口146を開放する方向に電磁力でプランジャ186を移動させ、駆動停止されると図示略のスプリングの付勢力でプランジャ186を逆方向に移動させる。
【0104】
これにより、シャッタ184は、ソレノイド187の駆動が制御されてプランジャ186が進退させられることで、プランジャ186のピン191がリンクアーム195を長穴190において押し引きして支持軸189を中心に回動させて、リンクアーム195の先端のピン192に係合するシャッタ部材185をスライドさせて出金口146を開閉する。
【0105】
出金口146の下部の装置前後方向後側には、装置左右方向に沿う回動軸198を介してガイド部材199が回動可能に設けられている。このガイド部材199は、回動軸198から互いに直交する方向に延出するガイド板部200および作動アーム部201を有しており、ガイド板部200が出金口146からシャッタ部材185と平行に装置前後方向後側に延出する状態で作動アーム部201がシャッタ部材185と略直交する状態となる。上記したシャッタ部材185の係合部193の装置前後方向前側には、装置左右方向に沿うピン202が設けられており、このピン202に作動アーム部201の中間の長穴203が係合されている。
【0106】
そして、シャッタ部材185が出金口146を閉じた状態では、ガイド部材199は上記したようにガイド板部200が出金口146からシャッタ部材185と平行に装置前後方向後側に延出する状態となり、図11に二点鎖線で示すようにソレノイド187で駆動されてシャッタ部材185が出金口146を開く方向にスライドするとピン202で長穴203が引っ張られることで回動軸198を中心にガイド板部200が出金口146から集積ポケット部材155側に下側ほどシャッタ184の開側に位置するように斜めに突出する状態となる。つまり、ガイド部材199は、シャッタ184の開作動に連動して出金口146から集積ポケット部材155側に斜めに突出する。
【0107】
このような集積出金部142では、図16に示すように、作動部材148を下限位置に位置させた状態で、上記した分離繰出部80で収納部24F,24Rから選択的に繰り出された一枚目の紙幣Sが放出口144から放出されると、この紙幣Sは、後端位置にある押さえ部材163とシート部材169との間に案内されてその下端部が下限位置にある集積ポケット部材155のポケット部159に挿入される。なお、釣銭あるいは両替銭を出金させる場合には、例えば、小額紙幣である千円券紙幣を収納する収納部24Rから一枚ずつ紙幣Sが集積出金部142に送り込まれることになり、例えば、その他の金種の紙幣Sを回収する場合には、収納部24Fから一枚ずつ紙幣Sが集積出金部142に送り込まれることになる。
【0108】
放出センサ145が上記した紙幣Sの放出口144からの放出を検出すると、図示略の制御部がリフトモータ153を駆動してピニオンギア152およびラックギア151を介して作動部材148をその検出片部180が中間センサ178で検出されるまで駆動する。すると、図17に示すように、下限位置にあった作動部材148が下部所定範囲の上端位置まで上昇することになり、その結果、カム部176が引張バネ173の付勢力でカムローラ174を装置前後方向後側に移動させて押さえ部材163を支持軸162を中心に装置前後方向前側に回動させる。すると、押さえ部材163がこれとシート部材169との間にあった紙幣Sを押圧して、この紙幣Sをシート部材169を乗り越えさせ、さらに前壁部147および集積ポケット部材155の前板部156に押さえローラ165で当接させる。
【0109】
上記のように、作動部材148の検出片部180が中間センサ178で検出されると、制御部はリフトモータ153を逆転させて作動部材148が下部センサ177で検出されるまで、つまり下限位置に位置するまで駆動する。これにより、図16に示すように作動部材148のカム部176が押さえ部材163を引張バネ173の付勢力に抗して後端位置まで回動させる。
【0110】
このように、紙幣Sを放出口144から押さえ部材163およびシート部材169の間の一時貯留空間170へ挿入してその下端部をポケット部159に挿入した後、押さえ部材163で集積ポケット部材155の前板部156側の出金集積空間171に押し込むという作動を、放出口144から放出される紙幣Sの一枚一枚に対して行う。これにより、出金させる複数の紙幣Sを装置前後方向に前上がりの姿勢で前後方向に重ねて集積させる。
【0111】
そして、出金に必要な紙幣Sのうち最後の紙幣Sが放出口144から放出されると、制御部は作動部材148をその検出片部180が最も上側の上部センサ179で検出されるまで駆動する。すると、下限位置にあった作動部材148が下部所定範囲の上端位置まで上昇する間に、押さえ部材163が支持軸189を中心に装置前後方向前側に回動して紙幣Sをシート部材169を乗り越えさせて集積ポケット部材155の前板部156側の紙幣Sに当接させて、その紙幣Sを押さえローラ165で押さえることになる。なお、上記の途中、例えば中間センサ178で作動部材148が下部所定範囲の上端位置まで上昇したことが検出されると、制御部は、ソレノイド187を駆動してシャッタ部材185を装置前後方向後方にスライドさせて出金口146を開放するとともにガイド部材199のガイド板部200を下方に突出させる。
【0112】
また、上記のように上昇中にある作動部材148は、下部所定範囲から上部所定範囲に至ると、集積ポケット部材155に当接して集積ポケット部材155を出金口146に向けて上昇させる。すると、集積ポケット部材155に集積されていた紙幣Sが押さえ部材163で押さえられた状態のまま押さえローラ165を回動させながら集積ポケット部材155とともに上昇し、上端側がガイド部材199のガイド板部200で出金口146側に良好に案内されて、図11に示すように出金口146から突出する。なお、上部センサ179で作動部材148が検出されると紙幣Sが出金口146から一部突出する状態となり、この状態で制御部はリフトモータ153を停止させる。また、制御部は上部センサ179で作動部材148の検出片部180が検出されると、ソレノイド187の駆動を停止してシャッタ部材185を図示略のスプリングの付勢力で閉方向に移動させることになり、これにより、出金口146から突出する紙幣Sは出金口146とシャッタ部材185とで挟持される。この状態で、使用者が紙幣Sを出金口146から抜き取る。
【0113】
制御部は、出金口146から突出する紙幣Sがすべて抜き取られたことを抜取センサ150で検出すると、作動部材148をその検出片部180が下部センサ177で検出されるまで下降させる。すると、作動部材148は集積ポケット部材155を下限位置まで下降させた後に、カム部176で押さえ部材163を後端位置まで回動させて停止する。
【0114】
以上に述べた本実施形態の紙幣処理装置によれば、二つの収納部24F,24Rに収納された紙幣Sは、収納部24F,24Rのいずれに収納されたものも、これら収納部24F,24Rの間に設けられた分離繰出部80で繰り出されることになる。したがって、機能性を高めることができる。しかも、二つの収納部24F,24Rの間に各収納部24F,24Rから紙幣を繰り出す分離繰出部80が設けられているため、分離繰出部80の部品を共用化でき、コスト増を抑制できる。
【0115】
また、一方の収納部24Fから紙幣Sを繰り出す際に、分離繰出部80は、移動部140により蹴出ローラ97Fを一方の収納部24F側に移動させて、一つの出金モータ120で蹴出ローラ97F、蹴出ローラ97R、圧接ローラ103Fおよび圧接ローラ103Rを駆動して回転させると、蹴出ローラ97Fが一方の収納部24Fに収納されている紙幣Sを蹴り出すことになり、圧接ローラ103Fに圧接した繰出ローラ91Fがこの紙幣Sをさらに繰り出すことになる。他方の収納部24Rから紙幣Sを繰り出す際に、分離繰出部80は、移動部140により蹴出ローラ97Rを他方の収納部24R側に移動させて、一つの出金モータ120で蹴出ローラ97F、蹴出ローラ97R、圧接ローラ103Fおよび圧接ローラ103Rを駆動して回転させると、蹴出ローラ97Rが他方の収納部24Rに収納されている紙幣Sを蹴り出すことになり、圧接ローラ103Rに圧接した繰出ローラ91Rがこの紙幣Sをさらに繰り出すことになる。このように簡素な構造で両収納部24F,24Rからの択一的な蹴り出しおよび繰り出しを行うことができる。
【0116】
さらに、蹴出ローラ97Fで蹴り出され繰出ローラ91Fで繰り出された紙幣Sを搬送する搬送ローラ84Fと、蹴出ローラ97Rで蹴り出され繰出ローラ91Rで繰り出された紙幣Sを搬送する搬送ローラ84Rとについても、一つの出金モータ120で駆動して回転させることになるため、簡素な構造で両収納部24F,24Rからの択一的な蹴り出し、繰り出しおよび搬送を行うことができる。さらに下流側の搬送ローラ112についても、一つの出金モータ120で駆動して回転させることになるため、さらに簡素な構造にできる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の一実施形態の紙幣処理装置を示す透過側面図である。
【図2】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における一時貯留部、収納部および収納プッシャ機構等を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における一時貯留部、収納部および収納プッシャ機構等を示す透過側面図である。
【図4】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納プッシャ機構の後退状態を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納プッシャ機構の作動時の図4の後の状態を示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納プッシャ機構の作動時の図5の後の状態を示す側面図である。
【図7】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納プッシャ機構の作動時の図6の後の状態を示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における一時貯留部、収納部および収納プッシャ機構等を示す平面図であって紙幣の関係を示すものである。
【図9】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における一時貯留部、収納部および収納プッシャ機構等を示す透過側面図であって紙幣の関係を示すものである。
【図10】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納部および分離繰出部等を示す透過側面図であって、リンクプレートが中立位置にある状態を示すものである。
【図11】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における分離繰出部および集積出金部等を示す透過側面図である。
【図12】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納部および分離繰出部等を示す透過側面図であって、リンクプレートが中立位置にあるときのリンクセンサの検出状態を示すものである。
【図13】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納部および分離繰出部等を示す透過側面図であって、リンクプレートが装置前後方向前側の蹴出位置にあるときのリンクセンサの検出状態を破線で示すものである。
【図14】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納部および分離繰出部等を示す透過側面図であって、リンクプレートが装置前後方向後側の蹴出位置にあるときのリンクセンサの検出状態を破線で示すものである。
【図15】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における収納部および分離繰出部等を示す透過側面図であって、リンクプレートが装置前後方向前側の蹴出位置にある状態を示すものである。
【図16】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における集積出金部等を示す透過側面図であって、作動部材が下限位置にある状態を示すものである。
【図17】本発明の一実施形態の紙幣処理装置における集積出金部等を示す透過側面図であって、作動部材が中間位置にある状態を示すものである。
【符号の説明】
【0118】
11 紙幣処理装置
24F 収納部(一方の収納部)
24R 収納部(他方の収納部)
80 分離繰出部
84F 搬送ローラ(第1の搬送ローラ)
84R 搬送ローラ(第2の搬送ローラ)
91F 繰出ローラ(第1の繰出ローラ)
91R 繰出ローラ(第2の繰出ローラ)
97F 蹴出ローラ(第1の蹴出ローラ)
97R 蹴出ローラ(第2の蹴出ローラ)
103F 圧接ローラ(第1の駆動伝達部材)
103R 圧接ローラ(第2の駆動伝達部材)
120 出金モータ(駆動源)
140 移動部
S 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を収納する二つの収納部を、収納時の紙幣の集積方向を互いに同方向として該方向に並設させるとともに、これら収納部の間に、これら収納部の両方から紙幣を一枚ずつ分離して繰り出す分離繰出部を設けてなり、
該分離繰出部は、
一方の収納部側に移動して該一方の収納部に収納されている紙幣を蹴り出す第1の蹴出ローラと、
該第1の蹴出ローラで蹴り出された紙幣を繰り出す第1の繰出ローラと、
他方の収納部側に移動して該他方の収納部に収納されている紙幣を蹴り出す第2の蹴出ローラと、
該第2の蹴出ローラで蹴り出された紙幣を繰り出す第2の繰出ローラと、
前記第1の蹴出ローラおよび前記第2の蹴出ローラを移動させる移動部と、
該移動部による前記第1の蹴出ローラの前記一方の収納部側への移動で前記第1の繰出ローラを駆動可能となる第1の駆動伝達部材と、
前記移動部による前記第2の蹴出ローラの前記他方の収納部側への移動で前記第2の繰出ローラを駆動可能となる第2の駆動伝達部材とを備え、
前記第1の蹴出ローラ、前記第2の蹴出ローラ、前記第1の駆動伝達部材および前記第2の駆動伝達部材を一つの駆動源で駆動して回転させることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記第1の蹴出ローラで蹴り出され前記第1の繰出ローラで繰り出された紙幣を搬送する第1の搬送ローラと、前記第2の蹴出ローラで蹴り出され前記第2の繰出ローラで繰り出された紙幣を搬送する第2の搬送ローラとを前記一つの駆動源で駆動して回転させることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−4451(P2007−4451A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183444(P2005−183444)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500267170)ローレル機械株式会社 (86)
【Fターム(参考)】